星の海へ   作:ステルス兄貴

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『さらば宇宙戦艦ヤマト』『宇宙戦艦ヤマト2』に登場した彗星帝国の潜宙艦は船体色を宇宙の闇に同化させ姿を消すカメレオンみたいな設定でしたが、PS版『宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』に登場した彗星帝国の潜宙艦は『宇宙戦艦ヤマト3』のガルマンウルフ号やリメイク版宇宙戦艦ヤマトに登場した次元潜行艦UX型と同じ異次元・亜空間への潜航が可能となっているので、この話に登場する彗星帝国の潜宙艦もゲーム版の潜宙艦設定となっています。


百三十三話 鹵獲・返答

 

 

ここで時間を少し巻き戻す。

 

フェイトとヴィヴィオの帰国手続きが終わり、太陽系内で収容した管理局艦の殉職者たちの棺も管理局側に引き渡し、管理局側は全ての帰国準備が整った。

 

そんな中、

 

「通信長」

 

「はい」

 

「ヴォルフラムへ通信文を送ってくれ」

 

良馬はギンガにヴォルフラムへ通信文を送るように指示を出した。

 

「何と言う文章を送るのですか?」

 

「『貴艦ノ航海ノ安全ヲ祈ル』‥と、送ってくれ」

 

「了解」

 

ギンガは良馬に頼まれた通信文の文章をヴォルフラムへと送る。

 

すると、しばらくしてヴォルフラムから返信が来た。

 

「艦長、ヴォルフラムから返信です」

 

「内容は?」

 

「『此方モ貴艦ラ之航海ノ安全ヲ祈ル』‥‥です」

 

「そうか‥‥」

 

長かったようなフェイトたちのもう一つの地球生活はこれで完全に終了した。

 

ヴォルフラムは出航準備が整い、次元跳躍してミッドを目指して行った。

 

「行っちゃいましたね‥‥」

 

「ああ‥‥」

 

次元跳躍したヴォルフラムがついさっきまで居た宙域を見ながら永倉が呟いた。

 

「できればあの娘たちと敵対する未来が来ない事を祈るよ‥‥」

 

連邦政府、防衛軍共に管理局を不信視している中で、管理局が彗星帝国や暗黒星団帝国の様に太陽系内へ攻め込んできたら防衛軍は管理局を侵略者とみなして、全力でこれを迎撃する。

 

そして、管理局員である以上、フェイトや彼女たちを迎えに来たあの管理局艦の艦長であるはやてと戦う可能性もある。

 

今回の様に知己を得た者同士で殺し合いをする未来なんて考えただけでゾっとする。

 

「そう言えば、管理局からの親書には何て書いてあったんですか?」

 

永倉は艦長であり、親書を受け取った良馬ならば、親書の内容を知っているのではないかと思い訊ねる。

 

「一応、知ってはいるが、内容を口外することは許可されていなくてね‥‥すまない」

 

「い、いえ‥ちょっと気になっただけですから‥‥」

 

永倉としてはまさか本当に良馬が管理局からの親書の内容を知っているとは思わなかった。

 

フェイトたちを無事に管理局の艦へと還したことで任務も終わり、周辺哨戒を行っている畝傍らを呼び戻してあとは地球へ帰還するだけとなったので、ギンガに周辺哨戒を行っている艦に集結指示を出してもらおうとした時、

 

「艦長。パトロール艦、畝傍より通信です」

 

周辺哨戒を行っていたパトロール艦、畝傍から通信が入った。

 

「何かあったんでしょうね」

 

「ああ‥繋いでくれ」

 

「了解」

 

ギンガが畝傍との通信回路を開くとメインパネルに畝傍艦長の美咲が映し出される。

 

「どうしました?美咲艦長」

 

「月村艦長、哨戒中にこのようなモノを発見しました」

 

美咲は畝傍が哨戒中に発見した『あるモノ』を良馬たちに見せた。

 

「っ!?こ、これはっ!?」

 

「彗星帝国の潜宙艦!?」

 

まほろば のメインパネルには美咲の他にもう一つ‥‥宇宙色と同化しているかの様な小型の潜水艦みたいな艦影の艦が映し出されている。

 

ただ、戦闘を行った形跡があり、船体のあちこちには、破孔が確認出来た。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「はい。以前、ヤマトから送られてきた彗星帝国の潜宙艦のデータと一致しましたので‥‥」

 

「美咲艦長。その潜宙艦はそこに潜んでいたんですか?」

 

破孔があるので、映し出されている潜宙艦は畝傍と戦闘して撃破されたのかと思い良馬は美咲に潜宙艦と戦闘があったのかを訊ねる。

 

「いえ、私たちが発見した時には既にこの潜宙艦は漂流していました」

 

「そう言えば、ヤマトがテレザートに向けて航海した時、このプロキオン宙域で彗星帝国の潜宙艦隊と戦ったと報告があったな‥‥」

 

ヤマトはテレザートまでの航海途中、このプロキオン宙域とテレザートから地球へ戻る途中、冥王星宙域でも彗星帝国の潜宙艦隊と戦った経緯がある。

 

これらの戦闘データが防衛軍に潜宙艦と言う艦種の存在を伝える結果となったのだ。

 

「と、するとその潜宙艦は以前、ヤマトと戦った潜宙艦の可能性が高い‥‥と言う訳ですね?」

 

「恐らく」

 

「よく、プロキオンとソーサナーに吸い寄せられなかったな‥‥」

 

「どうしますか?」

 

「‥‥念のため調べてみよう。美咲艦長、畝傍の現在位置の座標をまほろばに送ってくれ」

 

「了解」

 

美咲は畝傍の現在位置を まほろば に転送する。

 

「通信長」

 

「はい」

 

「他の艦に事情を説明し、集結地点を畝傍の現在位置へと変更する旨を送ってくれ」

 

「了解」

 

ギンガは白浜、龍驤、ホワイトアローⅠ Ⅱ Ⅲに畝傍の現在位置と集結地点の変更の通信文を送った。

 

「コスモタイガー隊の収容は?」

 

「既に完了しています」

 

「よし、航海長。針路変更」

 

「了解」

 

まほろば は畝傍が居る宙域へと向かった。

 

 

そして、畝傍が居る宙域へと到着する まほろば だが、まだ他の艦は到着していなかった。

 

「ふむ、確かに彗星帝国の潜宙艦だな‥‥」

 

改めて実物を見ると、どう見ても漂流しているのは彗星帝国の潜宙艦であった。

 

まほろば が来るまで畝傍がこの潜宙艦の様子を窺っていたが、やはりエンジンを損傷しているみたいで亜空間へ潜航または移動する様子もなければ、畝傍に対して攻撃をしてくる様子もなかったので、やはり眼前の潜宙艦は漂流しているみたいだ。

 

「あの様子から完全に漂流しているみたいだな‥‥」

 

「ヤマトとの戦闘経過日数から恐らく艦内に生存者は居ないだろうが、一応調査はしてみるか‥‥」

 

まほろば と 畝傍は注意深く潜宙艦に接近し、艦内へ調査隊を派遣した。

 

艦内はエンジンが停止しているためか明かりが点いておらず物音一つなく暗くて不気味だ。

 

調査隊はヘルメットに懐中電灯を取り付け、手にはコスモガンや自動レーザーライフルを手に潜宙艦の艦内を調査する。

 

破孔が存在しているので、そこから宇宙空間へ吸い出されてしまった乗員もいるのだろうが艦橋部付近は、比較的に損害は少なく、人工重力が働いていない艦橋には乗員の死体が宙を漂っていた。

 

「やはり、生存者は居ないようだな‥‥」

 

艦内を調査しても予想通り生存者は居なかった。

 

「艦に連絡を入れよう」

 

「了解」

 

調査隊は艦へ調査結果を送った。

 

「艦長、調査隊より通信が入りました。予測通り艦内に生存者は居ないとのことです」

 

「そうか‥‥」

 

「艦長、他の艦も集結終了しました」

 

「‥‥では、この潜宙艦の曳航準備を進めてくれ」

 

「えっ?あの潜宙艦を‥ですか?」

 

良馬の言葉に新見が驚いたように聞き返す。

 

「ああ‥‥山南艦長が言っていたように彗星帝国の艦船は高い技術力を持っている。それにヤマトからもたらされた情報では、彗星帝国の潜宙艦はワープに利用される空間歪曲を艦体の遮蔽に応用し、通常空間とは異なる異次元空間への潜航が可能らしい‥‥あの潜宙艦を地球で調査すれば防衛軍でも将来潜宙艦を持つことが出来るかもしれない」

 

「な、なるほど‥‥」

 

防衛軍にはまだ潜宙艦と言う艦種は存在していない。

 

それは、防衛軍に潜宙艦の建造ノウハウがないからだ。

 

しかし、この潜宙艦を鹵獲・曳航し、地球で調査をすれば防衛軍でも潜宙艦を建造し備える事が可能になるかもしれない。

 

やがて、ホワイトアローⅠ Ⅱに曳航用のワイヤーを掛けられた潜宙艦は地球へと運ばれた。

 

ただ、曳航をしているので、ワープはすることが出来ずに、まほろば 以下の艦艇は復路では遅い到着予定となった。

 

 

地球 メガロポリス東京 防衛軍司令部

 

「長官、プロキオン方面へ時空管理局の救助者帰還任務へ向かった まほろば より通信文が入っています」

 

「うむ‥‥」

 

良馬はフェイトたち、時空管理局の救助者を無事に迎えに来た時空管理局側へ引き渡した事、そして畝傍がプロキオン宙域にて彗星帝国の潜宙艦を発見した旨を防衛軍司令部に電文を送った。

 

「何かありましたか?」

 

西郷が藤堂に声をかける。

 

「時空管理局の救助者たちは無事に時空管理局側へ引き渡されたようだ」

 

「そうですか‥‥無事に故郷へ着くと良いんですが‥‥」

 

「そうだな。それと、今回の任務に同行した畝傍が彗星帝国の潜宙艦を発見したらしい」

 

「彗星帝国の潜宙艦ですと!?」

 

ここでまさかの彗星帝国の艦艇の話題が出てきたことで西郷は思わず声が裏返る。

 

「うむ‥まほろば からの報告では以前、ヤマトがテレザートへ向けての航海中に撃破した艦らしい」

 

「それで、まほろば は何と?」

 

「調査をした結果、比較的に損害が少ないので、地球へ曳航するとの事だ」

 

「彗星帝国の艦を‥ですか?」

 

「ヤマトが記録していた交戦データから潜宙艦は星の海における潜水艦の様な艦種みたいだからな、調査をより詳しく行えば防衛軍でも後々潜宙艦を揃える事が出来る可能性があると、月村艦長はそう判断したらしい」

 

「なるほど‥‥」

 

「損傷した潜宙艦を曳航するため、大ワープが出来ず、まほろば を含め今回の時空管理局の救助者の帰還任務に就いた艦艇は少々地球への到着が遅れるとの事だ」

 

「まぁ、曳航中にトラブルが起きても困りますからな」

 

折角、鹵獲出来た潜宙艦を失うのは防衛軍としても惜しい。

 

「鹵獲した潜宙艦の調査については真田君たち科学局と造船局の技師たちに任せよう。連絡を入れておいてくれたまえ」

 

「承知しました」

 

西郷は藤堂の命令を実行し、暗黒星団帝国との戦い後、ヤマトを降り再び科学局勤務になった真田と造船局に連絡を入れた。

 

 

まほろば がプロキオン宙域で彗星帝国の潜宙艦を鹵獲・曳航している中、地球本土では暗黒星団帝国の捕虜に対する処遇が決まった。

 

アルフォンに関しては最終時点の地位が地球占領軍総司令であったが、その総司令官の期間が短い事を含め、メイトリックら死刑を免れた他の捕虜たち同様、古代や雪からの助命嘆願が来たことから死刑を免れた将兵たち同様、地球・太陽系内から追放となった。

 

地球占領のために襲来した暗黒星団帝国の武装艦はその殆どがヤマト追跡に向かい返り討ちにされ、残された中・小の艦艇は防衛軍の残存艦隊の攻撃を受けて壊滅。

 

巨大な輸送艦が地球上にまだ残されていたので、これらの輸送艦を集結させ、暗黒星団帝国の捕虜を乗せる予定だ。

 

もちろん、その決定は現在宇宙へ飛んでいる防衛軍の宇宙艦艇全てに知らされた。

 

よって、地球方面から飛来する暗黒星団帝国の輸送艦を発見しても攻撃してはならないと言う命令が通達された。

 

「艦長、防衛軍司令部より通信文です」

 

防衛軍司令部からの暗黒星団帝国の捕虜たちの処遇はプロキオン宙域から彗星帝国の潜宙艦を曳航中の まほろば を含む艦艇にも伝えられた。

 

「司令部からは何と?」

 

新見が司令部からの通信文の内容を訊ねる。

 

「暗黒星団帝国の捕虜たちの処遇が決まったらしい」

 

「暗黒星団帝国の捕虜たち‥‥」

 

「それで、どうなったんですか?」

 

「彗星帝国の時と同じ、太陽系内からの全面撤退と以降の不可侵らしい」

 

「まぁ、そうなりますよね」

 

流石に地球を占領下に置き、地球への襲来時には軍民問わずに世界中で虐殺行為をした暗黒星団帝国と共存は難しい。

 

被害者や遺族たちには納得できる事ではないが、ガミラスや彗星帝国の時と異なり、地球上に居た為に地球解放後に軍事裁判が行われ、多くの暗黒星団帝国の将兵が裁かれた事が唯一の救いだろう。

 

「それで、太陽系から撤退する暗黒星団帝国の艦艇には攻撃禁止が厳命された」

 

「うーん‥なんか、モヤモヤしますね」

 

永倉も今回の暗黒星団帝国の捕虜たちの処遇についての連邦政府、防衛軍の決定については完全に納得できていない様子だ。

 

「それは、相手側もそうだろう。何しろ我々は彼らの同胞を大勢斃し、母星を滅ぼしたんだ‥‥暗黒星団帝国側から見れば地球側が悪にも見えるだろうさ」

 

良馬は暗黒星団帝国側を弁護するわけではないが、暗黒星団帝国側の視点からの地球を見ると、立場が逆転している事を指摘した。

 

(それに生き残った彼らも彼らで大変だろう‥‥)

 

太陽系からの追放でも生き残ったアルフォンやメイトリックたちの今後を思うと彼らの未来は波乱になることは間違いない。

 

彼らには既に還るべき星はない。

 

しかし、イスカンダルにて対峙したメルダースは、イスカンダリウムを欲する理由が暗黒星団帝国は星間戦争を繰り広げているので、そのエネルギー源としてイスカンダリウムを必要としていた。

 

つまり、かつてのガミラスや彗星帝国の様に暗黒星団帝国にも植民惑星やどこかの星と戦闘を行っているので、デザリアム星人全てが死に絶えた訳ではない。

 

アルフォンたちが運よく各戦線の味方と出会えれば‥‥

 

そして、同胞たちを纏め上げ、新たな星間国家を立ち上げればデザリアム星人の再興も不可能ではないが、身体的問題の解決はまだ先になる事だろう。

 

 

フェイトたち管理局の問題、暗黒星団帝国の捕虜たちの処遇についての問題が解決し、プロキオン宙域にて彗星帝国の潜宙艦を鹵獲・曳航した まほろば 一行は防衛軍司令部に通信で報告した通り、予定より遅れながらも無事に地球へ帰還した。

 

管理局からもたらされた親書は母港で待機していた連邦政府からの使者に託し、すぐに閣僚会議が開かれるらしい。

 

そして鹵獲された彗星帝国の潜宙艦は、防衛軍の艦船ドックへと運ばれた。

 

ドックには既に真田たち科学局の局員と造船局の技師らが待機していた。

 

真田たちは早速、彗星帝国の潜宙艦を調査し始めた。

 

艦内に残っていた乗員の遺体に関しては地球への曳航前に宇宙葬をしており、遺体は艦内には残っていない。

 

「真田先輩」

 

「ん?おう、月村か」

 

良馬は気になって調査が行われている艦船ドックへとやって来て休憩中の真田に声をかけた。

 

「あのお嬢ちゃんたちは無事に還ったのか?」

 

真田はフェイトたちについて訊ねる。

 

「ええ、迎えに来た管理局の艦に引き渡しました」

 

「そうか‥‥無事に故郷へ還れると良いのだがな」

 

「自分もそう思っています。ただ、今後の管理局との付き合い方については上の判断によりますがね」

 

管理局からもたらされた親書の内容によって今後、連邦政府が管理局‥ミッドと交流を持つのかを決めるのだろうし、それを判断するのは政治家と防衛軍上層部だ。

 

ただ、これまでの管理局の所業から交流をするのは難しいのではないかと思う良馬であった。

 

恐らく真田も同じ思いだろう。

 

「そうだな。それにしても、まさか帰りに意外な土産を持って来たな」

 

「畝傍の美咲艦長の担当哨戒宙域に漂っていたのはまさに偶然でした。この潜宙艦はやはり、ヤマトが?」

 

「ああ、テレザートに向かう途中で遭遇した艦の一隻だろう。しかし、これだけ原型を留めていたのは恐らくヤマトからの攻撃ではなく、あの時同行していた巡洋艦 すくね が撃破した艦だろう」

 

「三木君の‥‥」

 

すくね の艦名が出て、テレザートに向かう途中、ヤマトを守るために奮戦し、艦と運命を共にしたかつての戦友の姿が脳裏を過る良馬。

 

「ヤマトの攻撃力ではここまで原型を留めるのは難しいからな」

 

事実、ヤマトはプロキオン宙域、冥王星宙域にて彗星帝国の潜宙艦と遭遇し、これを撃破したが、そのほとんどが原型を留めないくらいの損傷を受けて撃破していたので、今回鹵獲出来たのはヤマトよりも攻撃力が低い巡洋艦である すくね の攻撃を受けたのであるならば、原型を留めて漂流していたのも頷ける。

 

元々大きさが駆逐艦クラスであったので、施されている装甲もそのサイズと同じ駆逐艦クラスだったのがヤマトの攻撃を受け、原型を留める事が出来なかった要因だ。

 

「それで、調査の進捗はどうですか?」

 

「まぁ、まだ初日だし、潜宙艦はその性質上、亜空間に関する事だからな、防衛軍としてもまだまだ未開の域だからもう少し時間をかけた詳しい調査が必要だ」

 

「しかし、イスカンダルから送られた波動エンジン、ガミラスから送られたワープ技術‥‥それらを実現できた地球の技術からしたら、近い将来に防衛軍も潜宙艦を保持することは可能ではないでしょうか?」

 

良馬はこれまでの地球の技術力から防衛軍も潜宙艦を保持できるのではないかと言う可能性を真田に訊ねる。

 

「その可能性は否定しない」

 

真田曰く、良馬の予想通り、この潜宙艦の調査によっては防衛軍も潜宙艦を保持出来る可能性はあると言う。

 

「それにしても、星の海ながら保持する艦船が水上艦艇とあまり変わらない様相になってきましたね」

 

「星の海も海だからな」

 

「そう言えば、ガミラスと言えば、デスラーはあれから新たな星を見つけたのか気になりますね」

 

「うむ、彼の性格から新惑星を発見してそれで終わるとは思えない」

 

「武力によって勢力を広げる‥‥と?」

 

「ああ、十分にあり得るな」

 

「それならまたガミラスが地球を侵略する可能性もある訳ですか?」

 

デスラーが武力による勢力拡大を行うのであるならば、デスラーが再び地球を狙う可能性があるのではないかと真田に訊ねる。

 

「いや、恐らくそれは無いだろう」

 

しかし、真田はデスラーが新惑星を発見後、武力による勢力拡大を行っても地球へ再び侵攻してくる可能性を否定する。

 

「なぜですか?」

 

「地球への侵攻は元々、地球をガミラス人が住める環境へのテラフォーミングと移住が目標だった。新たに住める星が見つかったのならば、地球へ侵攻する理由が無い。それに雪の話ではデスラーは地球にもヤマトにも恨みは無いと口にしたらしいからな」

 

「なるほど‥‥」

 

「だが、新兵器、新造艦を造っている可能性は十分にある」

 

「元々、ガミラスは地球よりも技術力・科学力が高い星でしたからね」

 

「ああ、それにデスラーは一時、彗星帝国と同盟を組んでいた」

 

「あの転送砲搭載艦がその例でした」

 

彗星帝国の科学力・技術力もガミラスに負けず劣らずであった。

 

しかし、メダルーザ級火炎直撃砲搭載戦艦はガミラスからの技術供与があってこそ実現した艦であり、ワープ技術に関してはこれまで地球が遭遇した星間国家の中ではガミラスが一番優れていた。

 

実際に地球側もガミラスの技術供与によって連続ワープ機関の製造が早まった。

 

そして、同盟による技術供与なのだから、ガミラスも彗星帝国から何らかの技術供与を受けた可能性は高い。

 

「もし、デスラーが彗星帝国から技術供与を受けるとしたら、やはり潜宙艦の技術は受け取ると思いますか?」

 

「受け取るだろうな。元々ガミラスは技術力の中でもワープ機関技術が優れた星だ。そのワープ技術に似た亜空間を潜行出来る艦の技術はガミラスとしても興味深い技術に違いない」

 

「もし、ガミラスが既に新惑星を発見し、武力による勢力を拡大しているとしたら、ガミラス製の潜宙艦を既に進宙しているかもしれませんね」

 

「デスラーが彗星帝国から潜宙艦の技術供与を受け、新惑星を発見していたらその可能性は十分にあるな」

 

真田はガミラスの技術力ならば、ガミラス製の潜宙艦の存在は十分にあると肯定する。

 

「地球側も潜宙艦を保持できると今後の防衛軍の戦略も大きく広がりますね」

 

「ああ‥だが、先も言った通り、潜宙艦技術は防衛軍にとってはまだまだ未知の領域だ。今後の調査と試行錯誤の壁を乗り越えなければならない‥‥さて、俺は調査に戻るが、お前さんはこの後の予定は?」

 

「自分はこの後、宇宙開拓局へ向かいます。暗黒星団帝国の侵攻で停滞していたケンタウロス座の開拓が再開するみたいなので」

 

「そうか‥‥」

 

こうして真田は再び潜宙艦の調査へ、良馬はケンタウロス座の開拓業務が再開するとの事で宇宙開拓局へと向かった。

 

しかし、今回のこの潜宙艦が今後の防衛軍における造艦技術の発展に大いに貢献することになった。

 

今回、防衛軍が潜宙艦を手に入れる事が出来たのはいくつかの偶然が重なった事だった。

 

一つ、すくね の攻撃で比較的に原型を留めていた。

 

一つ、プロキオン本星、ソーサナーへ引きずり込まれなかったこと

 

一つ、畝傍の担当哨戒宙域に漂流していたこと

 

これらの偶然が重なったまさに奇跡的な出来事であった。

 

管理局の本局自体が通常空間とは異なる空間に存在するので管理局の艦にも似たような機能は搭載されているが、管理局側から見ても彗星帝国の潜宙艦は技術の塊である事は言うまでもない。

 

もし、発見したのがヴォルフラムであった場合、管理局は絶対に潜宙艦を本局へ曳航していただろう。

 

今回、フェイトたちの引き渡しが行われプロキオン宙域は地球連邦の領海でなければ管理局の領海でもない、公海なので早い者勝ち、見つけた者勝ちだったので、地球側は運がよかったのだ。

 

 

真田が引き続き鹵獲・曳航された潜宙艦の調査を行い、良馬が宇宙開拓局へ出向いている中、地球連邦大統領官邸では、管理局からもたらされた親書による閣僚会議が開かれていた。

 

当初、プロキオンで彗星帝国の潜宙艦を発見し、地球までワープなしの曳航から まほろば一行の到着は予定よりも遅くなるので、親書を持っている まほろば を先行させて地球に返し、潜宙艦の曳航に関しては畝傍に指揮を代行させても良かったので、曳航前に良馬は防衛軍司令部へ通信をいれていたが、司令部からの返答は『予定通り まほろば が指揮を執り地球へ帰還せよ』であった。

 

多少遅れても親書の返答期限まで数日の余裕があった事ともしかしたら、親書の内容がどんな内容にせよ、地球連邦政府も防衛軍も管理局‥ミッドとの交流は最初から見送るつもりだったのかもしれない。

 

しかし、一応各々の意見を聞く必要もあるので、こうして閣僚会議が開かれたのだ。

 

「魔法か‥‥てっきり、おとぎ話や書物の中の産物かと思っていたよ」

 

親書を見た官僚の一人が魔法と言う非科学的で書物の中にしか存在しない能力が実際に存在していた事に意外性を感じていた。

 

何しろいきなり 『自分は魔法使いです』 なんて言われても直ぐにその言葉を信じられないからだ。

 

だが、今回管理局からもたらされた親書の中には魔法に関しての記述が書かれていた。

 

管理局はノアやテリオスが防衛軍に調査され魔法の存在について知っている事を見越して親書の中に魔法についての記述が記載されていた。

 

「いや、テレサの反物質を操る能力など、宇宙にはまだ我々が認知していない能力を有する民族が存在していてもおかしくはないと言うことだ」

 

藤堂がテレサを引き合いに異能力を持つ宇宙人が存在しており、それは地球人が知らないだけで、まだまだそう言った異能力を持つ宇宙人が存在している事を指摘する。

 

とは言え、既に地球には魔導師、そして夜の一族と呼ばれる吸血鬼の一族が一般人の生活の中で普通に溶け込んで生活をしている事を彼らは知らなかった。

 

「それで、大統領はどうなさるおつもりですか?」

 

官僚の一人が地球連邦大統領に今後の方針を訊ねる。

 

「ん?『どう』とは?」

 

「親書には、時空管理局は今後、我が地球連邦との交流を行いたいと記してありますが?」

 

「うーむ‥‥」

 

大統領は腕を組んで考え込む。

 

親書の内容には魔法以外にも管理局の活動概要が書かれており、その中には魔法がいかにクリーンな能力である事、

 

管理局の仕事が宇宙(次元世界)の平和と安定を担っている事、

 

それを踏まえて今後、地球連邦との技術と人材の交流を深めていきたい事が書かれていた。

 

もし、これがガミラス戦役前ならば、連邦政府は管理局と‥ミッドと交流を持っていたかもしれない。

 

しかし、ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国と立て続けに外宇宙から侵略されてから地球連邦は、宇宙開拓は兎も角、文明のある外宇宙からの誘いに対しては慎重と言うか、やや鎖国体制に入りつつあった。

 

しかも連邦政府、防衛軍はノアとテリオスから管理局の闇の一部も既に把握している為、管理局との交流に関してはやはり消極的な姿勢が目立つ。

 

「防衛軍側として、この時空管理局はどうかね?信頼に値する組織に見えるのかな?」

 

大統領は藤堂に管理局の存在を問う。

 

「そうですね‥‥我々はこの時空管理局全てを理解している訳ではありませんが、現時点で有する時空管理局の情報からは残念ながら信頼に値するかと言われると難しい所です」

 

管理局が密かに行っていたダーティミッションに文化の違いとは言え未成年者の危険が伴う宇宙での就労。

 

魔法文化がある世界、そして彼らが必要と認めた世界を管理と言う名の下で植民地支配している体制から管理局=彗星帝国の印象が強く、今は交流とされているがそれがいつ地球に対して牙を向けられるのか分からない。

 

例えにするならば、毒が盛られているかもしれない料理を口にするよりは、そんな料理を出しているレストランへ入らない事が確実に安全である。

 

藤堂は防衛軍の長として管理局との交流は避けるべきであると主張した。

 

そもそも技術交流においても防衛軍が有している管理局の艦の技術調査から、管理局の艦と防衛軍の艦とでは性能に関して圧倒的差がある事も報告されており、管理局が防衛軍にどんな技術を提供できるのかも怪しい所だ。

 

防衛軍側の技術を根こそぎ奪うだけ奪い、地球では既に旧式化された技術を渡されても地球側には何のメリットがない。

 

地球防衛を担う防衛軍の長である藤堂のこの言葉が決め手になったのか、やはり地球連邦政府としては管理局との交流は見送る流れとなった。

 

閣僚会議後に藤堂は管理局との交流がある源三郎を呼んだ。

 

「中嶋君、先ほど大統領官邸にて管理局からもたらされた親書について協議があった」

 

「はい‥‥それで、親書には何と記載されていたのですか?」

 

「時空管理局は地球連邦との技術と人材の交流を求めてきた」

 

「交流ですか‥‥」

 

流石の管理局もフェイトたち救助者を収容した後に掌を返すように地球に対して降伏文章を送って来るほど無神経ではない様だ。

 

「それで、行うのですか?管理局との間で交流を‥‥」

 

「いや、閣議の結果、地球連邦は管理局との交流は見送る事になった」

 

藤堂は源三郎に会議の結果を伝える。

 

「月村君より親書の回答通告期限についても知らせが来ている。中嶋君は管理局との交信の場に出ていたね?」

 

「はい」

 

「ふむ、すまないが、今回の連邦政府からの返答を時空管理局へ伝えてはもらえないかね?」

 

「承知しました」

 

藤堂は源三郎に管理局への返答を頼み、彼はそれを了承した。

 

そして、良馬がリンディへ伝え了承をもらった親書の回答通告期限の日、管理局との交信に使用されたチャンネルを開いた。

 

フェイトたちの帰国から久しぶり鳴る受信を知らせるアラーム音。

 

「っ!?」

 

当直のオペレーターは慌ててコンソールを操作して通信回路を開く。

 

するとモニターには源三郎の姿が映し出される。

 

「地球防衛軍司令部第三部第五課長の中嶋源三郎です」

 

源三郎は敬礼しながら所属と名前を名乗る。

 

「じ、時空管理局、本局通信課オペレーターの‥‥」

 

オペレーターは慌てて敬礼し源三郎に所属と名前を名乗った。

 

「早速ですが、本日は先日時空管理局より頂いた親書の回答をお伝えするために、こうして交信を入れました」

 

「わ、分かりました。では担当の者を此処へ呼ぶので少々お待ちください」

 

「分かりました」

 

オペレーターは急ぎ、リンディに連絡を入れた。

 

リンディが来るまで待つことになった源三郎であるが、それはオペレーターの局員も同じことで、リンディが来るまで二人は互いに無言のまま気まずい時間を過ごすことになった。

 

(早く来てくださいよ、統括官‥‥)

 

一分一秒でも早くリンディに来てもらいたいオペレーターとしては彼女が来る時間が物凄く長く感じた。

 

「あの‥‥一ついいですかな?」

 

「ひゃっ!?は、はい、なんでしょう?」

 

源三郎はこうして管理局との交信をする機会を設けたので、気になった事がありオペレーターへ訊ねてみる事にした。

 

突然、源三郎から声を掛けられたオペレーターは思わず声が裏返る。

 

「先日、プロキオンにてそちらの所属する艦へ引き渡されたハラオウン執務官らは無事にミッドチルダへ着きましたかな?」

 

源三郎はフェイトたちが無事にミッドへ着いたかを訊ねる。

 

恐らくこれが正真正銘、管理局との最後の交信になる。

 

その前に先日、管理局側へ引き渡されたフェイトたちがミッドに帰ってきたのを確認したかった。

 

「ハラオウン執務官たちですか?ええ、無事に帰還しました」

 

「そうですか‥それは良かった」

 

フェイトたちが無事にミッドへ戻った知らせを聞き、一安心する源三郎。

 

(あとで月村の奴にも知らせておくか‥‥)

 

フェイトたちが無事にミッドへ戻れた知らせを源三郎は後で良馬に伝える事にした。

 

そして、リンディがやって来るとオペレーターはホッと胸をなでおろした。

 

「お待たせしてしまい申し訳ありません」

 

「いえ、こちらも何時にそちらへ回答をするのかを伝えておりませんでしたのでお気になさらず‥‥」

 

「それで、親書の回答と言う事ですが‥‥」

 

リンディは地球からの親書の回答が来たという知らせを聞き、表面上は冷静を保っているが、内心ではドキドキしながら地球からの返信を待っていた。

 

「はい‥‥地球連邦政府及び地球防衛軍は閣僚会議の結果、時空管理局から提案があった技術、そして人材の交流について見送らせていただくと言う結果になりました」

 

「‥‥そう‥ですか‥‥分かりました」

 

リンディは管理局ともう一つの地球が交流する事が出来ないと言う結果を聞き、半分がっかり、半分納得と言う心境だった。

 

元々もう一つの地球が管理局に対して不信感を抱いているのは気づいていた。

 

なので、地球側からの返答はある程度の予測は出来ていた。

 

(これでまた上層部連中が騒ぐわね)

 

リンディには今回の地球へ送った親書における返信の結果を報告した時の管理局上層部の姿が容易に想像出来た。

 

彼らとしてみれば、魔法が使えない本来ならば管理するに値しない世界に対して、わざわざ管理局が交流してやるのだからありがたく思えと言う意味合いで親書を送ったにもかかわらず、地球側はそれを断ってきたのだから、プライドを著しく傷つけられたことになる。

 

(自棄を起こしてもう一つの地球へ武力侵攻をしなければいいけど‥‥)

 

リンディとしてはこの後の報告会の事を思うと憂鬱になる。

 

「それでは、小官はこれにて失礼いたします」

 

「は、はい。わざわざありがとうございます」

 

フェイトたちが無事にミッドへ戻れたのかを知り、そして親書に対する連邦政府側の返答を伝えると源三郎は交信を終えた。

 

「はぁ~‥‥」

 

交信を終えたリンディは一つ深いため息をつく。

 

「お疲れ様です、統括官」

 

交信を終えたリンディにオペレーターは労いの言葉をかけるが、

 

「いえ、本当に疲れるのはこれからよ‥‥」

 

「えっ?」

 

しかし、リンディはこの後もっと疲労する事になるとオペレーターに言う。

 

「貴方も聞いていたでしょう?もう一つの地球はミッドとの交流を断った‥‥そして、その提案をしたのは管理局の上層部連中‥‥彼らとしては魔法が使えない本来なら管理外世界の人たちに自分たちの提案を拒否されたのよ?プライドだけが高いあの連中が聞いたらそれこそ、もう一つの地球に武力侵攻をすると言いかねないわ」

 

「‥‥」

 

リンディの言葉を聞いてオペレーターはハッとしてその言葉の意味を理解する。

 

「当然、今回の親書に関する報告もしないといけないし、上層部連中も宥めないといけないわね‥‥」

 

「アハハ‥‥お疲れ様です、統括官」

 

「はぁ~‥‥私もクロノと同じ様に休暇を取ろうかしら?」

 

げんなりした様子で通信室を後にしたリンディの背中には哀愁が漂っているように見えたオペレーターだった。

 

 

管理局側へ親書の返答を伝えた源三郎はその日の夜に良馬へ電話を入れた。

 

「はい、月村です」

 

「おう、良馬か?中嶋だ」

 

「あっ、中嶋さん。お疲れ様です。何かありましたか?」

 

夜に源三郎から電話が来たことで何かあったのかを訊ねる良馬。

 

「今日、管理局へ親書に対する連邦政府からの決定について交信をしたんだ」

 

「それで、連邦政府の決定は?」

 

「管理局との交流は見送るとの決定だ」

 

「そうですか‥‥やっぱり‥‥」

 

「まぁ、大方の予想通りだな。それで、ついでに向こうの人にあのお嬢ちゃんたちが無事に着いたかも聞いておいた」

 

「彼女たちは無事に故郷へ還れましたか?」

 

「ああ、安心しろ、無事に故郷へ着いたみたいだ」

 

「そうですか‥良かった」

 

源三郎からフェイトたちが無事にミッドへ着いたと知らされ良馬もホッとした。

 

そんな二人の会話を聞いていたギンガは、

 

(フェイトさん無事にミッドへ着いたんだ‥‥スバルや向こうのお父さんは手紙を読んでくれたかな?)

 

ギンガはフェイトに託したスバルとゲンヤへの手紙がミッドのナカジマ家に渡され、二人が手紙や写真を見ている事だと思いを寄せるのだった。

 

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