星の海へ   作:ステルス兄貴

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百三十四話 一段落

 

 

管理局の問題、暗黒星団帝国の戦後処理が終わり、地球は戦災の復興と停滞していた宇宙開拓へようやく着手する事が出来た頃、パルチザンとして暗黒星団帝国と戦った戦士たちへある朗報がもたらされた。

 

「えっ?表彰‥ですか?」

 

ミッドへは還らず、もう一つの地球への残留を決めたティアナは、月村邸にてその報告を受けた。

 

一応、この地球で何をやりたいのかのビジョンを持っているティアナであるが、忍からの行為から現在も引き続き、月村邸でお世話になっている。

 

「うん。暗黒星団帝国の占領下の地球で戦った人たちを対象に行われるみたいだ」

 

良馬はティアナに今回の表彰について話す。

 

(ランスターさんが、ミッドに戻っていなくてある意味良かったのかな?)

 

もし、ティアナがフェイトたちとミッドへ戻っていたら今回の表彰に出席できなかったので、ティアナが地球に残ってくれたことはある意味で良かったのかもしれない。

 

暗黒星団帝国と戦ったのは防衛軍の軍人だけではなく、占領下の地球では軍・民と問わずにパルチザンとして戦っており、ティアナも当時は管理局員ながらも民間人の一人として暗黒星団帝国と戦った。

 

よって、今回の表彰にティアナは該当していた。

 

パルチザン入隊の際に志願入隊してきた隊員のリストは作成されており、あの戦いを生き残った者はもとより、戦死者した遺族にも謝礼金が支払われる事になっている。

 

とは言え、流石に人数が多いので、全員が防衛軍司令部の庁舎で表彰式をやると時間がかかるので、リストに明記されている住所を頼りに近くの軍関係の施設や行政施設にて行われ、ティアナは横須賀基地にて表彰が行われる。

 

「表彰か‥‥」

 

機動六課時代にもJS事件を解決したと言う事で管理局から表彰を受けた経験があるが、まさか地球に来ても表彰を受けるとは思ってもみなかった。

 

(もし、フェイトさんたちと一緒にミッドへ戻っていたらどうなっていたんだろう?)

 

ティアナ自身も良馬同様、もし予定通りミッドへ戻っていたら今回の表彰式に地球へ居なかった。

 

別に狙っていたわけではないがこうして自分たちの行動を評価してもらえる事なのでこうして表彰してもらえるのは嬉しかった。

 

忍がその話を聞いて、ティアナに表彰式に着て行く為のレディース・スーツを用意してくれた。

 

民間人であるティアナは当然、軍服はないし、ドレスでは何だか場違いな気がしたので、無難なところでレディース・スーツにしたのだ。

 

「顔の傷はどうする?ガーゼを貼る?」

 

スーツの採寸をしている中、忍はティアナに表彰式当日は顔の傷を隠すためにガーゼを貼っていくかを確認する。

 

「いえ、隠さずにこのままで行きます」

 

しかし、ティアナは敢えて傷を隠さずに表彰式に臨むと言う。

 

暗黒星団帝国との戦いの後、ティアナは敢えて顔の傷を残したのだが、海鳴市とは違う街へ行くと若干周囲の人の視線が気になる事がある。

 

だが、つい最近まで大規模な戦いがあったと言う事で、周囲の人々も戦傷だと理解しているのが唯一の幸いである。

 

 

そして、表彰式当日、忍に用意してもらったレディース・スーツを身に纏ったティアナは横須賀基地に来た。

 

「よぉ、嬢ちゃん」

 

そこへ、ティアナに声をかける者が居た。

 

「えっ?あっ、古野間さん、北野さん」

 

ティアナに声をかけたのはパルチザン活動をしていた時、行動を共にする時間が多かった古野間と北野だった。

 

「ら、ランスターさん!?ミッドへは還らなかったのですか!?」

 

「はい、地球に残留することにしました」

 

北野は暗黒星団帝国との戦いの後、司令部勤務となっていたので、管理局関係の情報も彼の耳には入っていた。

 

しかし、まさかティアナがミッドへは戻らず地球に残っていのは北野としては意外だった。

 

「えっ?そうだったのか?」

 

古野間は空間騎兵隊所属なので、管理局関係の情報が入ってこないので、今回の表彰式の事を踏まえて、まだティアナがミッドに戻っていないだけかと思いきや、既にティアナ以外のミッドの住人がミッドへ帰還している事を知らなかった。

 

「はい、先日、まほろば が時空管理局の関係者をプロキオンにて、引き渡したって聞いたので、てっきりランスターさんも還ってしまったのかと思っていました」

 

「へぇ~そうだったのか‥‥でも、良かったのかい?嬢ちゃん。故郷にはアンタを待っている家族や恋人が居たんじゃないか?」

 

古野間はティアナに故郷であるミッドにいるであろう家族や恋人について訊ねる。

 

「いえ、私は故郷でも天涯孤独でしたし、それに恋人も‥‥居ませんから‥‥」

 

ティアナは家族の有無よりも恋人の有無についての方が何だか言いにくそうだった。

 

「そ、そうだったのか?それはすまなかった」

 

「いえ‥‥」

 

ティアナは恋人の有無の方が言いにくそうだったが、古野間は恋人よりも家族が居ない事の方が彼女の地雷を踏んでしまったと思い謝罪する。

 

「でも、どうして地球に残ったんですか?」

 

例え家族や恋人が居なくとも、故郷へ還る機会があったにもかかわらず、ティアナは敢えて地球に残る選択を取ったので、北野はティアナに何故地球に残る選択を取ったのかを訊ねる。

 

今後、地球とミッドが交流を持てば行き来も行われるだろうから、ティアナは地球とミッドを行き来が可能となるだろうが、防衛軍の中でも管理局との交流には否定的な意見が多かったことから、今後、地球とミッドの行き来は行われない可能性が高く、それはティアナが故郷へ還れない事を意味している。

 

だが、それを承知でティアナは地球への残留を希望しているのだから、二人としては気になるところだ。

 

「そうですね‥‥管理局‥前に所属していた組織なんですけど、そこに居た時よりもこちらの地球に来て、あの戦いに身を投じて管理局の肩書きの意味の無さを感じるのと同時にやりたいことも見つかったので‥‥」

 

「やりたいこと?」

 

「それは何だい?」

 

「私は防衛軍に入隊したいと思いまして」

 

「えっ?防衛軍に!?」

 

「そりゃあ、大きく出たな」

 

わざわざ故郷を捨ててまで地球に残り、防衛軍に入隊したいと言うティアナの姿勢に驚く北野と微笑を浮かべる古野間。

 

表彰式でティアナは謝礼金、感謝状、そして野戦勲章をもらった。

 

機動六課の時は感謝状だったのでまさか、勲章をもらえるとは思ってもみなかった。

 

ティアナにとってこの表彰式で貰った勲章が一生の宝になったのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

ここで、視点は地球からミッドチルダへと移り、時間も少し過去に巻き戻す。

 

 

プロキオン宙域にてフェイトとヴィヴィオを防衛軍側から引き取りミッドへ帰還したヴォルフラム。

 

本局にあるヴォルフラムの母港には沢山のマスコミが駆けつけており、フェイトにもう一つの地球での生活をインタビューしようとしていた。

 

しかし、マスコミがフェイトにインタビューする前に管理局の査察部に所属する局員らがフェイトに駆け寄ると査察部への同行を求めてきた。

 

帰国したら査察部からの事情聴取が行われるであろうことは帰国前からフェイトは予測していたので、フェイトは大人しく彼らの指示に従って査察部へと出頭した。

 

査察部に出頭したフェイトはまさにザ・取調室みたいな机と椅子のみが置かれている小部屋へと通される。

 

「では、お掛け下さい」

 

査察部の局員に促され、フェイトは部屋にあった椅子へ着席する。

 

「帰国したばかりで、お疲れの中、わざわざすみませんね」

 

「いえ、帰国前からある程度は予測していた事なので‥‥それで、あなた方は何をお聞きになりたいのですか?」

 

「お察しが早くて助かります。では、まず確認としてハラオウン執務官が乗艦していた艦を襲撃したのは間違いなく、防衛軍から情報提供があった彗星帝国所属の艦でしたか?」

 

「はい、それは間違いありません」

 

(今更、何を聞いているの?防衛軍に攻撃されたとでも言って欲しかったのかな?)

 

「ハラオウン執務官らを救助後に防衛軍は何らかの任務により、テリオスの遭難現場から移動し、執務官の帰国が此処まで遅くなったと聞きましたが、その時の防衛軍の任務は一体どんな任務だったのですか?」

 

査察部の局員はフェイトにあの時のイスカンダルへの航海について聞いてきた。

 

「さあ、私は防衛軍の軍人ではないので、救助されたとは言え、防衛軍の任務についてそこまで詳しい事は知りません。ただ、一つ言えることは、ある星へ向かったことだけです。それ以上の事は知りません」

 

フェイトは管理局にイスカンダルの情報を知らせては不味いと判断しており、『知らぬ・存ぜぬ』を突き通している。

 

バルディッシュにもイスカンダルでの結婚式の写真やスターシア、そして双子の王女たちについても記録しない様にしたし、交信の時もはやてやなのはにイスカンダルについて何も言っていない。

 

イスカンダルの情報がバレる事は管理局の破滅の序章になる恐れがある事をフェイトはあの時の航海で体験し、学んだからだ。

 

「その防衛軍が向かった星と言うのは?」

 

「共に向かったとは言え、やはり軍務だったので詳しい情報は知りません」

 

「‥‥では、向こうの地球での生活について、何か不自由な事はありましたか?」

 

「いえ、行動に大きな制限を掛けられることは特にありませんでした。もっとも軍事機密に関する情報は規制されていましたけど‥‥」

 

フェイトがそこまで答えた時、ガチャと部屋の扉が開き別の査察部の局員が入ってくると、フェイトの向かいに座っている局員に何か耳打ちをしている。

 

そして、伝える事を伝え終わった局員は部屋から退出していく。

 

「失礼ながら先ほど、執務官のデバイスを調査したのですが、メモリー部分には何も記録されていなかったとのことですが、執務官はもう一つの地球に滞在中、映像や画像の記録をなされなかったのですか?それとも撮影を禁止されていたのでしょうか?」

 

先ほど入って来た局員はバルディッシュの調査結果を伝えに来たみたいだ。

 

その結果を聞いた向かい側に居る査察部の局員は、フェイトにもう一つの地球に滞在中、デバイスに何も記録しなかったのかを訊ねる。

 

これもフェイトは事前に予測していた事なので、バルディッシュに記録されていた映像や記録は全てヴィヴィオのデバイスであるクリスへ転送済みなのでバルディッシュのメモリーには何も記録されていない。

 

その事実を不自然に思った局員はフェイトに訊ねたのだ。

 

「御存知かもしれませんが、かの世界はAMAが星中に充満しており、魔導師にとってはまさに毒沼のような地です。そしてそれはデバイスにも影響を与えるみたいで、滞在中はデバイスが上手く作動しませんでした」

 

フェイトの回答は当然、嘘である。

 

もう一つの地球に充満しているAMAの環境下でもデバイスは普通に機能した。

 

実際に月村邸の地下でフェイトはティアナと模擬戦もしたし、映像も画像もクリスに移動させる前に確認したが、問題なく記録されていた。

 

しかし、イスカンダル同様、もう一つの地球でも管理局に知られては色々と不味い画像や映像が多々あった為、クリスにバルディッシュ内に保存されていた動画や画像を移したのだ。

 

特に死んだとされているギンガの存在ともう一つの地球に居るなのはの子孫である紅葉の存在‥これらも管理局にバレては色々と不味い。

 

「‥‥」

 

フェイトの回答に対して訝しむ査察部の局員。

 

しかし、フェイトの発言における信憑性の確認は実際にもう一つの地球へ行かなければ確認できない。

 

座標も分からないもう一つの地球へ行くのは不可能に近いので確認が出来ないのは査察部の局員としては歯痒い事だろう。

 

魔法があるからと言ってなんでも出来る訳ではない。

 

実際に死者を蘇らせる魔法、時間を過去へ遡る魔法、反対に未来へ行く魔法、不老不死になる魔法が存在しない様に嘘を見抜く魔法、真実しか語らない魔法と言うのは現時点では確認されていない。

 

だからこそ、プレシア・テスタロッサ、モンディアル夫妻は死んだ家族を別の形で蘇らそうとしてクローンを生み出し、かつて存在していた最高評議会メンバーは肉体を捨て脳髄だけで生き長らえていた。

 

 

査察部‥もとい、管理局の上層部としては、自白剤の使用や拷問をしてでも真意を問いただしたいところだろうが、フェイトは血が繋がっていないとは言え、現職の統括官の義娘であり、多くの管理局・一般人からも知られている有名人である。

 

もし、フェイトが取り調べ中に不審な死を遂げれば本局‥リンディやあの三提督が動き出し徹底的に死因の調査を行う可能性が高く、査察部としてもフェイトを無下に扱うことが出来なかった。

 

「執務官の他にティアナ・ランスター執務補佐官にも事情をお訊ねしたかったのですが、彼女はヴォルフラムに乗艦していないと八神艦長から返答がありました‥‥ランスター執務補佐官はどうしたのでしょうか?」

 

査察部の局員は次にティアナの件についてフェイトに質問する。

 

「ランスター執務補佐官はもう一つの地球への残留を決め、かの世界に残りました」

 

ティアナの件については隠しきれない事なので、フェイトはティアナについては正直に答える。

 

フェイトの回答に査察部の局員はピクッと眉を動かす。

 

「執務官はランスター執務補佐官の上官として、彼女を止めなかったのですか?」

 

「勿論、止めました。しかし彼女の意志は固く、私が説得し続けてもランスター執務補佐官の意志を変える事は不可能でした」

 

フェイトは査察部の局員にティアナを説得した旨を伝えるのと同時に彼女の意志が固かったことも伝える。

 

「それでは、防衛軍の艦に救助された時、もう一つの地球に到着した際、執務官らの待遇はどうでした?監禁などされていませんでしたか?」

 

査察部の局員は次に救助された後の生活について訊ねてきた。

 

「そのようなことはありませんでした。行動の制限は一部ありましたが、基本的に自由に過ごせました」

 

フェイトはあくまでも自分たちの待遇は救助者であり、けして捕虜などではない事を強調し、軍事機密に関する情報の規制はあるが、まほろば ヤマト そして月村邸では比較的自由に過ごせたことを話す。

 

 

フェイトが査察部の事情聴取を受けて居る頃、ヴォルフラムの乗員たちは未だに艦を降りていない。

 

それはまだドックにはマスコミ関係者が居るからだ。

 

例えもう一つの地球に滞在していないヴォルフラムの乗員たちでも今、艦を降りればマスコミにもみくちゃにされるのは目に見えているので、無用の混乱を避けるため母港からマスコミが居なくなるまで艦を降りる許可をはやては出さなかった。

 

待機状態が続くヴォルフラム。

 

そんな中、副長のグリフィスがルキノの部屋を訪ねた。

 

「ルキノ、ちょっと良いかな?‥って、何だい?その段ボールは?」

 

「あっ、グリフィス君」

 

ルキノの部屋にはいくつかの段ボールがあり、彼女はそれらの段ボールを積んでいる。

 

部屋にある段ボールを見てグリフィスはこの段ボールの正体をルキノに訊ねる。

 

「コレ?ウフフフ‥‥」

 

グリフィスから段ボールについて訊ねられると、ルキノは顔を嬉しそうに緩める。

 

「これは、ティアナからの地球土産よ」

 

「ランスター執務補佐官の地球土産?」

 

ミッドに戻らなかったティアナからの土産と言われ首を傾げるグリフィス。

 

「そっ、ティアナが向こうの地球で購入してくれた防衛軍のプラモデルで、フェイトさんがティアナから受け取ってくれていたの」

 

「そ、そうなんだ‥‥でも、飾るにしてもあまり他の人の目が届かない様にしなよ」

 

「えっ?どうして?」

 

「強硬派の局員に見つかったら何かしらの理由をつけられて没収されかねないぞ」

 

「えっ?ウソ!?」

 

「十分にあり得るよ」

 

ルキノが貰った地球土産はプラモデルとは言え、防衛軍の宇宙艦船の外見をしている為、強硬派の局員らがそれらを見つければ『新型艦船の設計資料にする』とでも理由をつけてルキノから没収するのは容易に想像がついた。

 

グリフィスはルキノにその点を指摘したのだ。

 

「折角のレアモノなのに‥‥」

 

没収されるかもしれないとグリフィスから指摘を受けたルキノはがっくりと肩を落とす。

 

「ま、まぁ、自分の部屋なら大丈夫じゃないかな?」

 

グリフィスはルキノの落ち込み具合を見て、いくらなんでもミッドにあるルキノの自宅の部屋に飾れば流石に問題はないとアドバイスを入れた。

 

その頃、艦長室では‥‥

 

「ねぇ、はやておねえちゃん、まだなのはママのところに行けないの?」

 

ヴィヴィオがはやてにまだ艦を降りられないのかと訊ねる。

 

「すまんなぁ、ヴィヴィオ。まだマスコミの人たちがぎょうさんおるさかい、今降りるとその人らにもみくちゃにされてまうんよ」

 

「むぅ~‥‥」

 

「本局のテレポート装置を使えば直ぐにミッドへ着くんやし、少しの辛抱や」

 

ヴィヴィオとしては一分一秒でも早くなのはに会いたい様子。

 

何しろ、ミッドとはもう目と鼻の先であったからだ。

 

「なのはママが来たら、あの人たちにバスターやシューターを撃ち込んでこっちに来そうなんだけどね」

 

艦を直ぐに降りられないのは母港に集まっているマスコミ関係者のせいだと判断したヴィヴィオはもし、あの場になのはが居たら邪魔になるマスコミ関係者に対してディバインバスターやシューターを撃ち込んで物理的(?)にマスコミ関係者を黙らせて自分を迎えに来そうだと思った。

 

「ソレ、シャレにならんわ‥‥でも、あのなのはちゃんならやりかねんわ‥‥」

 

はやてがヴィヴィオの予測が中らずと雖も遠からずな事に思わず冷や汗を垂らす。

 

「あっ、そうや、ヴィヴィオ」

 

「ん?なあに?」

 

はやては、なのはの名前を聞いて思い出すかのように話題を変える。

 

「あんな、ヴィヴィオ。ヴィヴィオが向こうの地球に居る間になのはちゃんたちの家を改築する事になってな、そんで今、なのはちゃんは管理局の寮に住んどるんよ」

 

「へぇ~機動六課の時みたい」

 

「そうや、だからマスコミの人たちが居なくなったら、私がなのはちゃんが住んどる寮に案内するわ」

 

「ありがとう、はやておねえちゃん」

 

はやてはヴィヴィオになのはが住んでいる場所がクラナガンにある家ではなく、教導隊の局員宿舎である事を伝える。

 

しかし、本当の理由は流石に話せない。

 

なのはが教導隊の宿舎に住んでいる理由が、ボラー連邦への武力制裁失敗後に民衆が暴徒化して、ミッドにあるなのはとフェイトが同居している家を襲撃して家の中を滅茶苦茶した事をヴィヴィオはタッチの差で知らない。

 

八神家同様、現在なのはとフェイトの家はまだ建て直し中であり住めない。

 

その為、はやてはヴィヴィオに自宅を改装していると言う事にしてなのはが住んでいる場所を伝えたのだ。

 

(あっ、そう言えばフェイトちゃんの家はどないするんやろう?)

 

なのはは、現在教導隊の宿舎に仮住まいしている。

 

ヴィヴィオはなのはの下へ向かえばいい‥‥

 

しかし、フェイトの所属は教導隊ではなく、本局の執務官‥‥

 

なのはが現在仮住まいしている宿舎にはいくらなんでも暮らせない。

 

(リンディさんに相談してみるか‥‥)

 

そこで、はやてはフェイトの養母であるリンディにフェイトの仮住まいについて聞くことにした。

 

幸いリンディはまだヴォルフラムに乗っている。

 

「ヴィヴィオ、ちょっと私はリンディさんと話すことがあるから、リンディさんの所に行くけど、私が戻るまでこの部屋で待っていてや」

 

「うん、分かった」

 

はやてはリンディにフェイトの今後の仮住まいについて訊ねに行く。

 

「リンディさん、はやてです。いいですか?」

 

リンディの居る士官予備室の前に行き、扉をノックしてリンディに入室許可を求めるはやて。

 

艦長とは言え、階級ではリンディの方が上なのでこうしたマナーは公私で交流があるとは言え、メリハリは大事だ。

 

「はい、どうぞ」

 

「失礼します」

 

部屋の中からリンディの返答があったので、はやては部屋に入る。

 

「何かしら?」

 

「リンディさん、一つ聞いておきたいことがありまして‥‥」

 

「ん?」

 

「フェイトちゃんの今後の仮住まいはどないします?」

 

「確かなのはさんは教導隊の宿舎に住んでいるのよね?」

 

「はい。ヴィヴィオもそこで仮住まいさせるつもりですが、フェイトちゃんはなのはちゃんと所属が違いますから‥‥」

 

リンディもミッドにあるはやてとなのは・フェイトの家が暴徒たちの手により焼き討ちされたことは当然知っている。

 

「フェイトは今、査察部で事情聴取中よね?」

 

「はい」

 

「うーん、事情聴取がいつ終わるか分からないし、ミッドにあるフェイトたちの家はあの状態だし‥‥」

 

「あぁ~そうですね‥‥」

 

「それなら今日は本局内にある私の別邸で引き取るわ。それにフェイトがミッドを留守にしている間の事も話さないとね‥‥」

 

ボラー連邦への武力制裁失敗などもう一つの地球との交信の席では話せなかった事など現在のミッドの‥管理局が置かれた現状を話さなければならないので、丁度良かった。

 

交信の席では、もう一つの地球に居るフェイトに要らぬ心配や不安を与える事になるので、リンディたちはあの場では話さなかったのだが、こうして無事にミッドへ還って来たのだからフェイトには管理局の現状を伝えなければならない。

 

「分かりました。フェイトちゃんの事、よろしくお願いします」

 

「ええ、はやてさんの方もヴィヴィオさんの事、お願いね」

 

「はい」

 

とりあえず、フェイトの仮住まい問題についてはリンディが何とかするみたいなので、あっさりと解決した。

 

 

そしてようやく、マスコミ関係者がドックから去るとヴォルフラムの乗員たちは順次、艦を降り始めた。

 

グリフィスはルキノの段ボールを運ぶ荷物持ちになったのは言うまでもない。

 

艦長であるはやてはその役職柄、最後に艦を降りなければならないので、その間に彼女は、自分とヴィヴィオの荷造りと転送先である地上本部からなのはが居る教導隊の宿舎まで移動するためのハイヤーの手配を行った。

 

「さて、ヴィヴィオ。待たせてすまへんな。それじゃあ、艦を降りようか?」

 

「うん」

 

やがて、準備が整いはやてとヴィヴィオはヴォルフラムを降り、本局のテレポート装置へと向かい、ミッドのクラナガンにある地上本部へとやって来た。

 

ヴィヴィオにとっては久しぶりに見るクラナガンの街並みであった。

 

「こっちやで、ヴィヴィオ」

 

「はーい」

 

はやては予め、地上本部に呼んでいたハイヤーに乗る為、地上本部のロータリーへとヴィヴィオと共に向かい、そしてハイヤーに乗り込み、なのはが居る教導隊の宿舎に向かう。

 

なのはが現在住んでいる教導隊の宿舎に近づくと、はやてはなのはに念話を入れる。

 

(なのはちゃん、なのはちゃん)

 

(えっ!?はやてちゃん?ミッドに帰って来ていたの!?)

 

はやてがなのはに念話を入れるとなのはからすぐに返答があり、彼女は少し驚いている様子だった。

 

なのはは、フェイトとヴィヴィオが乗ったヴォルフラムが今日、本局に到着することを知らなかったみたいだ。

 

本局の母港に集まったマスコミ関係者は本局内にある記者クラブに詰めていたマスコミ関係者であり、一早くもう一つの地球から帰ってきたフェイトにインタビューをしようとヴォルフラムの帰還日については戒厳令を敷いていた。

 

この為、なのはは今日、ヴィヴィオたちが帰ってくることを知らなかったのだ。

 

(今、ハイヤーで地上本部からなのはちゃんが住んどる宿舎へ向かっているんやけど、ヴィヴィオにはなのはちゃんたちの家が今、改装しとると言ってあるから、話を合わしてほしいねん。流石に自分の家が暴徒たちに壊されたなんて知るとヴィヴィオもショックを受けると思ってな)

 

(うん、分かった。それで、フェイトちゃんも一緒なの?)

 

なのはは、ヴィヴィオがはやてと居るのであるならば、ヴィヴィオと共にもう一つの地球に居たフェイトも一緒に居るのかと思い、はやてにフェイトについて訊ねる。

 

(あぁ~そのことなんやけど、フェイトちゃんは今、査察部で事情聴取中や)

 

(査察部!?えっ?なんでっ!?)

 

査察部と聞いて念話ではあるが、なのはの声は裏返る。

 

なのはとしては、どうしてフェイトが査察部で事情聴取を受けるのか理解できなかった。

 

(恐らく本局の意向や‥‥)

 

(本局の?)

 

(せや、本局の一部の局員連中としてみれば、フェイトちゃんが忘れる前にもう一つの地球の情報を少しでも得ようとしとるんや)

 

(それで、フェイトちゃんは大丈夫なの?)

 

(フェイトちゃんもどうやら本局に着く前から査察部からの事情聴取があるのは予測しているみたいで、ヴィヴィオについても私に任せるように頼んでいたんや)

 

(フェイトちゃんが‥‥)

 

(まぁ、事情聴取だけやし、手荒な事はされないと思うから多分フェイトちゃんは大丈夫や)

 

(そ、そうだよね)

 

(それで、フェイトちゃんの家はリンディさんに任せてあるから)

 

(リンディさんに?)

 

(うん。フェイトちゃんも家が暴徒たちに壊されたことを知らないから、リンディさんがフェイトちゃんに説明するみたいや)

 

(そうなんだ‥分かったよ)

 

(ほな、もうすぐでなのはちゃんの所に着くから、後は着いてからな)

 

(うん、待っている)

 

はやてはなのはに家とフェイトについて念話で伝え終わると後はハイヤーがなのはの住んでいる宿舎に着くだけとなった。

 

やがて、ハイヤーがなのはの住む宿舎に着くと、宿舎の出入り口でなのはは待っていた。

 

そして、ハイヤーからヴィヴィオが降りると、

 

「ヴィヴィオ!!」

 

声を上げてヴィヴィオに駆け寄る。

 

「なのはママ!!」

 

ヴィヴィオもなのはに向かって駆け寄り、両者は抱き着く。

 

「おかえり、ヴィヴィオ」

 

「うん、ただいま」

 

モニター越しではなく久しぶりの再会に両者の目には光るモノがあった。

 

「よかったな、なのはちゃん‥‥ヴィヴィオ‥‥」

 

そんな二人の様子をはやては少し離れた所から見て嬉しそうに顔を緩ませながらポツリと呟く。

 

その後、なのははヴィヴィオの手荷物を持ち、ヴィヴィオとはやてと共に自身の部屋に向かう。

 

その最中で、

 

「ねぇ、ヴィヴィオ」

 

「ん?なに?なのはママ」

 

「そのヴィヴィオが手に持っている人形‥‥それは熊さん?」

 

なのははヴィヴィオが手に持っている人形について訊ねる。

 

「あっ、これは、クリ‥‥ぼ、ボ〇太くん人形だよ、なのはママ」

 

ヴィヴィオが今手にしているボ〇太くん人形こそ、彼女のデバイスのクリスであった。

 

しかし、フェイトから『クリスの事を話しても良いと言われるまでクリスの事は秘密』と、言われており、もしバレたらクリスを取り上げられてしまう事から、ヴィヴィオはなのはが相手でもクリスの事を誤魔化した。

 

クリス自身も下手に動けばヤバいとデバイスながらも察している様子で動かず、喋らず、人形の振りを貫いていた。

 

「向こうの地球じゃあ、流行っていてフェイトママと買い物に行った時に買ってもらったんだ。どう?可愛いでしょう?」

 

ヴィヴィオはボ〇太くん人形をなのはにズイッと見せつけ人形であることをアピールする。

 

「う、うん、可愛いね‥‥」

 

(か、可愛い‥‥のかな?)

 

口ではヴィヴィオにボ〇太くんが可愛いと言うなのはであるが、正直なところそこまで可愛いとは思えず何だか微妙な感覚だった。

 

「そういえば、ヴィヴィオは向こうの地球でデバイスを作ってもらったんでしょう?そのデバイスはどうしたの?」

 

なのはは、ヴィヴィオに向こうの地球で作ってもらったとされるデバイスについて訊ねる。

 

「む、向こうの地球に忘れてきちゃった。アハハハ‥‥」

 

なのはを相手にどこまで誤魔化せるか分からないが、それでもヴィヴィオはフェイトの言いつけを守った。

 

(あっ、ヤバっ、ヴィヴィオのデバイスについてなのはちゃんにヴィヴィオのデバイスについて口止めするのを忘れたわ‥‥)

 

はやては家については寮に着く前になのはに念話で伝えたが、ヴィヴィオのデバイスについては伝え忘れた。

 

(で、でも、フェイトちゃんの説明から考えるにヴィヴィオのデバイスについては一人でも知っとる人が少ない方が良さそうやし、ここは黙っておこう)

 

しかし、ヴィヴィオのデバイスはもう一つの地球で製作されたデバイスであることから、フェイトが根回しをして公式にクリスがヴィヴィオの物になるまでは、あのボ〇太くん人形がヴィヴィオのデバイスである事を知る人物が一人でも少ない方が無用の混乱を防ぐ手の一つだと思い、はやては、クリスが公になるまでなのはにも黙っている事にした。

 

その日の夕食はヴィヴィオのミッド帰還を祝う事にして、なのはとはやてが腕によりをかけて夕食を作った。

 

テーブルの上に沢山あるご馳走を前にヴィヴィオは目を輝かせるが、

 

「あっ、でもまだフェイトママが戻ってきていない‥‥」

 

未だに査察部で事情聴取を受けているフェイトの身を案じた。

 

「フェイトちゃんが戻ってきたら、また作るよ。今日の主役はヴィヴィオなんだから、沢山食べて良いんだよ」

 

「うん、分かった」

 

ヴィヴィオは久しぶりの養母の心尽くしの料理を堪能した。

 

 

食後、なのはとヴィヴィオは入浴も共にした。

 

そして、疲れたのか入浴後、ヴィヴィオは直ぐに眠ってしまった。

 

「お疲れ様、なのはちゃん」

 

ヴィヴィオが眠ったのを確認したなのはにはやては冷えた麦茶が入ったコップを差し出す。

 

時間も時間なので、はやては今日、なのはの部屋に泊る事になっている。

 

「ありがとう。はやてちゃんもお疲れ」

 

なのはは自分よりも疲れているだろうはやてに労いの言葉をかける。

 

「ヴィヴィオとフェイトちゃんが戻って来て、やっと一段落ついた感じやな‥‥」

 

「うん‥それで、管理局は今後あの地球とはどう付き合うのかな?ティアナとはもう会えないのかな?」

 

「それは今の段階じゃあわからへん。防衛軍に渡した親書の内容にもよるな‥‥」

 

管理局がもう一つの地球を簡単に諦めるとははやてもなのはも思えなかった。

 

しかし、強硬手段を取れば管理局と防衛軍との間で戦争が起こるのは目に見えている。

 

そして、管理局現有戦力と艦の性能ではとても防衛軍には勝てない。

 

二人は管理局、そしてもう一つの地球との行き先に不安を感じながら夜は更けていった。

 

 

なのはたちが宿舎で夜の一時を過ごして居る頃、フェイトは未だに査察部で事情聴取を受けていた。

 

時刻は既に夜中の九時を過ぎている。

 

「本日の聴取は此処までです。後日も聴取を取ることがあるので、連絡は常に取れる状況にしておいてください」

 

「分かりました」

 

「こちらは執務官のデバイスです。問題は見つからなかったので、返却いたします」

 

査察部の局員はフェイトにバルディッシュを返却する。

 

バルディッシュを受け取り、査察部を後にするフェイト。

 

「あぁ~もう、何なんですか!?あの人たちは!!私の彼方此方を弄繰り回して、何もないと知ると、『役立たず』なんて言うんですよ!!酷いと思いませんか!?マスター!!」

 

バルディッシュがグチグチとフェイトに愚直り始める。

 

「もう、今日の事を忘れたいので、この後は例のメンテナンスをお願いします!!アルコール度数が高い奴で浸からなければやってられませんよ!!」

 

(バルディッシュの性格も何だか変わったような気がする‥‥)

 

バルディッシュはフェイトに例のメンテナンスを頼んできた。

 

そんなバルディッシュにフェイトはもう一つの地球に行ってから性格が変わった気がした。

 

「分かった、分かった。とりあえず、家に戻ろう」

 

フェイトがミッドにあるなのはと同居している家に戻る為、本局にあるテレポート装置がある場所まで向かおうとした時、

 

「フェイト」

 

「あっ、リンディ母さん」

 

リンディがフェイトに声をかけた。

 

「どうしたの?まだ仕事があったの?」

 

「いいえ、フェイトを待っていたのよ」

 

「私を?」

 

「ええ、貴女がミッドを留守にしている間の事で交信の席では話せなかったことがあるの」

 

「えっ?」

 

「それを踏まえて、今日は本局内にある私の別邸まで来て欲しいの」

 

「う、うん。分かった」

 

フェイトはリンディについていくことになったが、この後リンディから自分がミッドに居ない間に起こった出来事を聞いて衝撃を受けたのは言うまでもなかった。

 

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