星の海へ   作:ステルス兄貴

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ティアナと土門って互いに喧嘩や口論をしつつも良い凸凹コンビになりそう。

日下部うららの性格が2202と異なりそうですが、まだ訓練生と言う事で原作と性格が異なります。


百三十九話 ティアナの訓練校生活

 

 

ここで時系列は時間をジュラがデスラーに地球への使者を名乗り出る前までに巻き戻す。

 

地球は暗黒星団帝国からの戦災復興と宇宙開拓を再開した中、地球の宇宙防衛を担う宇宙戦士訓練学校の校長室では、校長の榎本勇が一枚の履歴書を見ていた。

 

そして、机の上には四枚の推薦状も置かれている。

 

推薦人は、空間騎兵隊 第一都市防衛師団 第一大隊 大隊長 古野間 卓

 

防衛軍司令部 軍令部 第一部 第一課所属 北野 哲

 

防衛軍 宇宙戦艦 まほろば 艦長 月村良馬

 

防衛軍司令部 軍令部 第三部 第五課長 中嶋 源三郎

 

軍でも現場、司令部からのエリート軍人からの推薦状に履歴書の備考欄には『暗黒星団帝国による地球の占領時、パルチザン活動に参加』と書かれていた。

 

「このお嬢ちゃんがね‥‥でも、顔の傷を見る限り信憑性があるな‥‥それに推薦状にも確かにパルチザン活動に参加していたと書いてあるし‥‥」

 

履歴書の顔写真の部分にはティアナの写真が貼られていた。

 

今回、ティアナは宇宙戦士訓練学校の途中編入試験を受け、その時に必要な書類を訓練学校へと送っていた。

 

その書類を榎本は合否判定をしながら見ていたのだ。

 

なお、編入試験を受ける際、忍は一応ティアナに顔の傷は隠していくように言ってティアナは面接もあるので、顔の傷にはガーゼを貼って受けたが履歴書の証明写真は素顔のまま撮影しており、インパクトを榎本をはじめ教官らに植え付けた。

 

「まぁ、学力も合格点に到達しているしな‥‥」

 

顔の傷は衝撃的だったが、学力、人格、さらにパルチザン活動を経験した事や推薦人が軍の中でもエリート事だったことにより、ティアナは宇宙戦士訓練学校へと入校を果たした。

 

宇宙戦士訓練学校は将来の宇宙戦士を育成する訓練学校であり、多くの若者が入学し、日々厳しい訓練と志を共にする仲間たちと共同生活をしている。

 

そんな訓練学校の学生の一人、土門竜介と日本でも月村家、南部家と並ぶ大財閥である揚羽家のご子息である揚羽武が教室の窓際にて会話を興じていた。

 

「そう言えば、土門。この前、訓練学校の編入試験があったじゃないか」

 

揚羽が土門に編入試験の話題を振る。

 

「ああ、その日は休校だったからよく覚えているよ」

 

「で、その編入試験を覗き見に行った奴がいてな」

 

「へぇ~わざわざ休日を潰してまで他人の試験を見学に行くなんて暇な奴だな」

 

土門は、折角の休校を外で過ごさずにわざわざ自分に関係のない編入試験を覗き見に行くなんて暇人だと呆れる。

 

「まぁ、そいつが言うにはその試験の受験生で凄い奴がいたらしい」

 

「凄い奴?どんな奴なんだ?」

 

「顔立ちは日本人じゃなく、外国人っぽい感じだったらしいが、顔に大きなガーゼを貼っている奴でな」

 

「顔にガーゼ?」

 

「ああ、覗き見に行った奴は気になって後をつけたみたいなんだ。それで、洗面所でガーゼを貼りかえる所を見たんだが、そのガーゼの下には‥‥」

 

「下には?」

 

「下には大きな傷があったんだ」

 

「‥‥そりゃあ、ガーゼを貼っていたんだから、怪我や傷があっても別に不思議じゃないだろう?」

 

「そ、それはそうなんだが‥傷があったのは男じゃなくて女だったらしい」

 

「女!?」

 

てっきり、男だと思っていたのだが、顔に傷を持つ女と言う事で思わず土門の声が裏返る。

 

「気になるだろう?顔に傷を持つ女なんて‥‥」

 

「あ、ああ‥でも、その女が編入試験をパスしたかは分からないんだろう?」

 

「ま、まぁ、そうなんだが‥‥」

 

顔に傷を持つ女に多少の興味を抱く二人であったが、その女が編入試験を合格して訓練学校に編入してくるとは言い切れなかった。

 

そんな中、朝礼を告げるチャイムが鳴り、二人は自分たちの席へと戻る。

 

勿論他の訓練生たちも同様に自分の席に着く。

 

そして教官が教室へと入ってくる。

 

「起立!!」

 

日直が号令をかけると訓練生たちは一糸乱れずに席から立ち上がる。

 

「礼!!着席!!」

 

訓練生たちは教官に一礼し、席へと座る。

 

「おはよう」

 

『おはようございます!!』

 

「さて、諸君らも知っているが、先日我が宇宙戦士訓練学校にて編入試験が行われた」

 

教官は先日行われた編入試験について訓練生たちに確認するかのように伝える。

 

「編入試験において、編入前の学歴・職歴を吟味して編入クラスを決定する。その結果、本日このクラスに編入する新たな訓練生が来る。軍では集団行動、集団生活が基本となる。途中編入だからといって差別することなく、接してもらいたい。以上だ」

 

続いて教官は、土門と揚羽らのクラスに編入試験を突破した編入組が新たに来る旨を伝えると、

 

「では、入り給え」

 

「失礼します!!」

 

「失礼します!!」

 

「失礼します!!」

 

教官が編入組の入室を許可すると、教室の外で待機していた編入組の新訓練生たちが一礼と挨拶をしながら、教室へと入って来る。

 

そんな新訓練生の中で教室に居た訓練生たちがギョッとする人物が教室に入って来た。

 

「失礼します!!」

 

『っ!?』

 

教室に入って来たその人物はオレンジ色の髪に蒼い眼、容姿は日本人ではなく外国人風の女性なのだが、何より目につくのは彼女の左頬に走る魚の骨のような傷。

 

教壇の隣に立つ新訓練生たち。

 

「彼らが新たに諸君らとこれから学生生活、訓練、勉学を共にする。では、一人ずつ自己紹介を‥‥」

 

教官は顔に傷を持つ女性を華麗にスルーして新訓練生たちに自己紹介を促す。

 

新訓練生たちは自己紹介をするが、教室に居る訓練生たちの興味は完全に顔に傷を持つ女性になっている。

 

やがて、顔に傷を持つ女性の番になる。

 

「ティアナ・ランスターです。顔の傷に関しては気にせずに接してもらいたいと思っております」

 

(揚羽、アレが‥‥)

 

(ああ、特徴が一致している。まさか、俺たちのクラスになるなんてな‥‥)

 

土門と揚羽は朝礼前に話していた人物がまさか自分たちと同じクラスになる事に驚いていた。

 

新訓練生、訓練生と混合となったクラスでは互いに物珍しさがあるのか、座学の講義の中でもチラチラと視線が飛び交うが、土門と揚羽たちのクラスではそのほとんどがティアナに向かっていたが、当の本人は視線をものともせずに講義に集中していた。

 

そして、実技訓練では‥‥

 

編入組の多くはコスモガン何て初めて握る者が多かったので、まずはコスモガンについての講義だったが、ティアナに関してはパルチザン活動の際に使用しており、その件についてはティアナを推薦した古野間と北野からの推薦状に書かれていたので、ティアナは訓練生たちと共に射撃場に居た。

 

(お、おい、他の編入組はコスモガンの講義からなのに、どうしてアイツは射撃場に居るんだ?)

 

(俺が知るかよ)

 

揚羽は編入組のティアナが何故、射撃場に居るのか分からず土門に訊ねるが、当然土門もティアナが射撃場に居る理由を知る筈もない。

 

やがて、射撃訓練が始まると土門も揚羽も訓練に集中する。

 

最低限出力に調整されたコスモガンを手にして的に向かって射撃する訓練生たち。

 

電子ボードには訓練生たちのスコアが表示され、もう一つの電子ボードにはクラス内のトップ3の成績が表示される。

 

「相変わらず、射撃が上手いよなぁ~」

 

「射撃に関しては誰にも負けない自信があるからな。でも、揚羽だってなかなかの成績じゃないか」

 

揚羽は電子ボードに表示されている土門のスコアを見て呟くと、土門は自信ありげに言う。

 

「お前に言われても皮肉にしか聞こえないぜ」

 

電子ボードには、

 

土門竜介 497/500

 

揚羽武  457/500

 

と表示され、現在の射撃成績では土門が一位となっていた。

 

そんな中、ブースの一角がざわついている。

 

「ん?なんだ?」

 

「さあ?行ってみるか?」

 

「ああ」

 

二人がざわついているブースへと言ってみると、そのブースにはティアナが居り、コスモガンで次々と的を撃っている。

 

しかも凄い速さでなおかつ、正確に‥‥

 

「す、すげぇ‥‥」

 

「パーフェクト行くんじゃねぇ?」

 

周囲の訓練生たちはティアナの射撃を見て感嘆の声を漏らす。

 

「‥‥」

 

そんな中、土門は悔しそうに顔を歪ませる。

 

やがて、射撃訓練が終わり、ティアナの成績が表示される。

 

ティアナ・ランスター 500/500

 

ティアナの成績は何とパーフェクトだった。

 

「土門‥‥」

 

揚羽が土門の肩に手をポンと置くと、

 

土門は揚羽の手を払いのけ、不機嫌そうにその場を後にした。

 

「あぁ~あぁ~こりゃあ荒れるな‥‥」

 

土門の態度から揚羽は彼が物凄く不機嫌になったと判断する。

 

元々土門は負けず嫌いなところがあったので、自分が得意とする射撃でティアナに‥女性に負けた事が土門のプライドを著しく傷つけた。

 

一方、そんな土門の心情を知る由もなくティアナの方はと言うと‥‥

 

「ふぅ~‥‥」

 

一息つき、

 

(まずまずの成績ね。こっちが止まって射撃するならそれなりの結果が出ると思ったけどまさか全部当たるなんてね‥‥)

 

顔には出さないがティアナ自身もやや驚いていた。

 

しかし、パルチザン活動をしていた時は多数vs少数の戦闘ばかりで撃つ方も撃たれる方も常に動いていたので、今回の訓練で射撃する側のティアナが動かない為に好成績をたたき出すのは別段不思議ではなかった。

 

こうしてティアナにとって人生で二度目になる訓練学校生活が始まった。

 

初日にはティアナの顔の傷のインパクトは凄かったが何日かもすれば周囲の訓練生たちも慣れていく。

 

そして、ティアナにも友人が出来た。

 

管理局の訓練学校でスバルと縁を持った時と同様、寮の同室となった女学生だ。

 

その女学生と共に食堂で昼食を食べている時、

 

「ランスター!!」

 

「ん?」

 

ティアナは突然呼ばれ視線を向けると、

 

「今日の射撃訓練じゃあ、絶対に負けないからな!!」

 

土門がビシッとティアナに指を突きつけ勝負?を挑む。

 

そして、土門は一方的にそう言うとズカズカとした足取りでその場を後にする。

 

「‥相変わらず土門の奴、貴女をライバル視しているわね。ティアナ」

 

「はぁ~毎回挑まれるこっちの身にもなってほしいものだわ」

 

「ご愁傷様~」

 

「まったく、他人事みたいに言うわね。うらら」

 

ティアナは恨めしそうに向かい席に座る女学生‥日下部うららを見る。

 

「まぁ、事実他人事だもんねぇ~」

 

一方のうららはまさにどこ吹く風と言った感じだった。

 

編入後、初めての射撃訓練以降、土門はティアナを完全にライバル視しており、何かにつけてはティアナに勝負を挑んで来ていた。

 

ティアナの実力が高いのは彼女が別の星における治安維持組織で働いていた事やパルチザン活動が大きく影響していた。

 

しかし、そんなティアナの事情何て彼女が語らない限りしらないし、そもそもパルチザン活動については吹聴するような話でもないし、自分が別の星で治安維持組織に従事していたなんて言ったところで信じる者は居ないとは言い切れないがそれでも突拍子のない話だ。

 

言い切れないと言うのはこれまで地球がガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国と外宇宙から侵略を受けた為、人型の宇宙人が存在している事が判明しているからだ。

 

土門に関しては実力でティアナに勝ってやると意気込んでいたのだが、中には邪な手でティアナを蹴落とそうとする者も居た‥‥

 

恐らく編入組であるティアナが好成績を立てているのが我慢ならなかったのだろう。

 

ティアナが訓練校に入校してから少しして訓練校内にて、

 

『ティアナ・ランスターは元レディースの総長で顔の傷はヤクザとの抗争で出来た』

 

『ティアナ・ランスターは中学生時代に援交・麻薬・万引きの常習者で少年鑑別所に収監された過去を持つ』

 

などと、根も葉もない噂ばかり‥‥

 

そもそもこの噂が事実であるならば、訓練校に入校することは出来ない。

 

(あほくさ、此処でもこんなガキみたいなことをする奴が居たのね)

 

管理局の訓練校でも、初めての試験の結果を見に行った時、自分とスバルが好成績の結果を出した時、陰口をたたかれた時があったので、ティアナはありもしない噂に関して特に気にする様子がなかった。

 

だが、学友となったうららはまるで自分がされたかのように烈火のごとく大激怒した。

 

そして、意外なのがこの噂の鎮静化に乗り出したのが土門と揚羽の二人だった。

 

うららがティアナを連れて土門たちに訊ねてみると、

 

「くだらない噂で此奴が勝ち逃げして放校処分になるのが許せなかった」

 

と、土門はティアナから視線を逸らしながら言った。

 

そして、このデマを流した訓練生はティアナではなく自身が放校処分となった。

 

このデマ騒動以降、土門、揚羽、ティアナ、うららの四人の絆が深まったのだが、

 

あるシミュレーション実技講義で土門、揚羽、ティアナ、うららの四人は同じ班になり、艦隊戦のシミュレーション実技を行った。

 

結果的には四人は対戦相手の班に勝つことが出来たのだが、実技後‥‥

 

「あんた、何なの!?あの猪突猛進した動きは!?おかげでこっちにも被害が及んだし、あんたが率いた部隊なんて壊滅状態じゃないの!?」

 

「はぁ!?攻撃は最大の防御って言葉を知らないのか!?これだから女は‥‥」

 

ティアナと土門は先程のシミュレーション実技についての反省会で口論し始めた。

 

「男、女は関係ないの!!あんたのやったことは無駄に味方を殺し、味方を混乱させただけの迷惑行為なのよ!!」

 

六課時代にFW陣のセンターガードを務めていたティアナとしては今回のシミュレーション実技での土門の動きは看過できなかった。

 

やがて、互いの口論が徐々にヒートアップしていきこのままでは殴り合いに発展するのではないかと思われたので、

 

「揚羽、アンタが行って二人を止めなさいよ」

 

「えっ?俺が!?」

 

「あそこまで互いにヒートアップしちゃあ、いつ殴り合いに発展してもおかしくはないでしょう?男なら身体を張って喧嘩を一つでも止めてみなさい」

 

「それって、日下部が火の粉を浴びたくないだけなんじゃあ‥‥」

 

「いいから行く!!」

 

「くそ~」

 

どうも気が強い女性相手には逆らえないのか揚羽は渋々と言った様子で土門とティアナの口論を仲裁する。

 

「まぁ、まぁ、二人ともそこまで熱くならなくても‥‥今回はシミュレーションで人的被害はなかったし、それにチームは勝ったんだから良かったじゃないか」

 

揚羽が恐る恐る二人に声をかけると、

 

「「うるさい!!」」

 

二人は息がピッタリあう形で揚羽に言い放つ。

 

「『シミュレーションで人的被害はなかった』?シミュレーションだからこそ、人的被害が少ないような戦術を導き出さないと将来、下に就く部下や仲間たちを無駄死にさせるじゃない!!」

 

「揚羽は俺の戦術を分かってくれるよな?勝負にも勝ったんだしな!?」

 

「えっと‥‥あの‥‥その‥‥」

 

「どっちの言い分が正しいかなんて火を見るよりも明らかじゃない?ねぇ、揚羽?」

 

「勿論俺だよな?揚羽?」

 

「あの‥‥その‥‥」

 

二人に詰め寄られあたふたする揚羽。

 

「それで、どっちの意見が正しいと思っているの?」

 

「そうだな。白黒つけようぜ。さあ、揚羽どっちだ?」

 

「大体、揚羽、あんたちょっと優柔不断なところがあるわよ」

 

「そだよな、いつまでもなよなよしていないでハッキリと言えよ」

 

「あ、あれ?さっきまで二人とも口論していたよな?何で?いつの間にか矛先が俺に向いているの?」

 

ターゲットが自身に代わっている事に困惑する揚羽。

 

そんな三人の様子を対岸の火事の如くうららは呆れた様子で見ていた。

 

時にはこうして口論をするが、基本四人の仲は悪くはなかった。

 

 

宇宙戦士訓練学校は文字通り、宇宙戦士を育成する学校だが、そのカリキュラムの中には射撃訓練の様に宇宙艦艇の運用以外のカリキュラムもあり、体術訓練の他に野戦訓練もあった。

 

しかも夜間での‥‥

 

この日は夜間の野戦訓練が行われた。

 

対戦相手は何年も訓練生たちを相手にしている教官たちだ。

 

「やれやれ、俺たちは宇宙戦士を目指しているのに何で空間騎兵みたいな事を‥‥特に俺は航空科志望なのに‥‥」

 

模擬戦に使用する装備を点検しながら揚羽がぼやく。

 

「何言っているの?宇宙での戦闘でも艦を降りて戦う事だってあるのよ。ヤマト や まほろば の人たちはあの彗星帝国の戦いで敵の根拠地に侵入して戦ったのよ」

 

ティアナは宇宙とは言え、決して艦や艦載機での戦闘だけではないことを教える。

 

「あれ?ティアナはヤマトかまほろばの乗員に知り合いが居るの?」

 

「えっ?ええ‥それなりに‥‥」

 

知り合いどころかこの地球に来て居住先も提供されていた。

 

しかし、ティアナはお茶を濁す感じで曖昧に答えた。

 

そして、夜間野戦訓練が始まる。

 

会場は林や小高い丘のあるフィールド。

 

訓練生たちは姿勢を低くして進んで行く。

 

「居た‥‥教官連中だ」

 

土門は双眼鏡で対戦相手である教官たちを見つける。

 

「相手との距離は?」

 

ティアナが現在位置から教官たちとの距離を訊ねる。

 

「距離三百‥‥敵数‥‥十ってところだ」

 

土門は双眼鏡から相手との距離と確認できる人数を報告する。

 

「なんか‥ティアナは随分と落ち着いていると言うか‥慣れている感じね」

 

うららが妙に冷静なティアナを見て戦場に慣れている感じがしたので訊ねてみる。

 

「まぁ、色々と経験はしたわね‥‥でも、模擬戦とは言えこうして戦場に立つと自分は生きているって実感が沸かない?」

 

ティアナが不敵な笑みを浮かべながらうららに訊ねる。

 

しかし、うららは、

 

「さ、さあ‥私には分からない‥かな‥‥」

 

「まぁ、うららも経験すれば分かるわ」

 

模擬戦とは言え、うららはこうした野戦は今日が初めてだったので、ティアナの言葉の意味はまだ分からなかった。

 

すると、教官たちも訓練生たちの存在に気づいたのか発砲してきた。

 

「うわっと、あぶね!!」

 

土門は間一髪な所を躱す。

 

「へへへ、派手にぶっ放すか」

 

土門は戦場と言う周りの空気に触発されたのかやや興奮しているように見える。

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「なんだよ?」

 

「下手に応戦するとかえって相手に此方の位置と人数を教える事になるわ」

 

「じゃあ、どうするんだよ?」

 

「戦場では状況を正しく判断した者が勝利する。向こうはまだ正確に此方の位置も人数も把握していない。このまま回り込んで‥‥ん?」

 

ティアナはまだ教官たちが正確に自分たちの位置も人数も把握していないと判断し、相手が気づかない内に側面と背後から強襲しようかと思っていると、

 

ギュピッギュピッ‥‥

 

教官たちの奥から妙な音が聴こえて来た。

 

しかし、ティアナはこの音には聞き覚えがある音だった。

 

(この音‥‥ま、まさかっ!?)

 

ティアナが嫌な予感を覚えると、

 

「もっふる!!」

 

奥から犬だかネズミだかよく分からない茶色の生き物が出て来た。

 

「ぼ、ボ〇太くんスーツ!?」

 

犬だかネズミだかよく分からない茶色の生き物を見てティアナは驚愕の声を上げる。

 

「えっ?ティアナ、アレが何だか知っているの?」

 

「え、ええ‥‥教官連中、まさかあんなモノを模擬戦に投入するなんて大人げない‥‥っ!?や、ヤバい、皆伏せて!!」

 

ティアナは仲間に伏せるように言うが、

 

「はぁ?何言ってんだ?ランスター」

 

「教官連中も焼きが回ったのか?あんな着ぐるみを着てくるなんて‥‥」

 

「ここは遊園地じゃねぇって言うのに」

 

「やっちまおうぜ」

 

しかし、ティアナからの忠告を聞かない訓練生たちも居り、姿勢を低くしながら教官たちの下へと接近していく。

 

「あのバカが‥‥」

 

そんな訓練生たちを見てティアナは思わず毒づく。

 

「おい、ランスター。あの着ぐるみが何だって言うんだ?」

 

土門はティアナの言動が気になり、教官たちの下へ向かはなかった。

 

「いいから、伏せながらこの場を移動するわよ。モタモタしていたらあっという間に全滅するわ」

 

ティアナは匍匐前進しながら移動し始める。

 

うららもティアナの事を信じたのか、彼女も匍匐前進でティアナの後をついていく。

 

「「‥‥」」

 

土門も揚羽も顔を見合わせるが、あのティアナがあんな着ぐるみにビビるなんて何か訳があると思い、彼らも匍匐前進してティアナとうららの後を追う。

 

すると、背後からは‥‥

 

ババババババババ‥‥

 

ダダダダダダダダ‥‥

 

「ぐわっ!!」

 

「ぎゃぁぁー!!」

 

「ぐふっ!!」

 

突撃を行った訓練生たちの悲鳴とビームガンの銃声がした。

 

勿論、この模擬戦に使用するコスモガンも最低出力になっているので、当たっても失神するぐらいの威力になっている。

 

土門と揚羽が後ろをチラッと振り返ると、訓練生たちがバタバタと着ぐるみ一体に殲滅されている光景が目に入った。

 

「なっ、なんだよ‥アレ‥‥」

 

「あんなかわいい顔してやっている事がものすごくえげつねぇ‥‥」

 

着ぐるみの顔とやっている事のギャップに顔を引き攣らせながら匍匐前進を続ける。

 

「それで、ティアナ。あの着ぐるみは何なの?」

 

匍匐前進しながら、うららがティアナにあの着ぐるみの正体を訊ねる。

 

「‥‥」

 

ティアナは説明するかどうか悩んだが、敵の正体を知らなければ協力して倒せないと判断して話すことにした。

 

「あの着ぐるみはただの着ぐるみじゃないわ‥‥あの着ぐるみは月村グループが製作した戦闘スーツよ」

 

「えっ?戦闘スーツ?」

 

「マジかよ‥‥」

 

「あの外見で‥‥」

 

「あんたたちもさっき見たでしょう?あの外見に騙されて突撃していった連中の末路を‥‥」

 

「あ、ああ‥‥」

 

「何だかホラーみたいだったぜ‥‥」

 

「製作者(忍さん)の意図は分からないけど、外装は超アラミド繊維に防弾チョッキの二段構え、指向性マイク・サーマルセンサー・暗視システム、サーモグラフィとかの探知システムが充実して戦術支援AIまで搭載しているのよ」

 

「へ、へぇ~‥‥」

 

ティアナからボ〇太くんの性能を聞いてうららは思考がついて来ていない様子。

 

「あの戦闘スーツの暗視装置やサーモグラフィの前じゃあ、夜の闇なんて無意味だし、この匍匐前進でさえ、向こうには丸見えかもしれないわね」

 

ティアナは匍匐前進しながら苦虫を嚙み潰したように顔を歪ませる。

 

「でも、なんでお前はそんなにあの着ぐるみの事を詳しく知っているんだ?」

 

土門がティアナに何故そこまであの戦闘スーツに詳しいのか訊ねる。

 

あの外見からアレが戦闘スーツなんて分かりづらいし、見ただけで外部の素材、ましてや内部の装備品なんて知る訳もない。

 

「‥‥使ったことがあるからよ」

 

「「「えっ?」」」

 

ティアナの発言に三人は目を点にする。

 

「今まで黙っていたけど、私は訓練校に入る前に戦場を経験しているの」

 

「戦場‥‥?それって‥‥」

 

うららはつい最近起こった戦場に心当たりがあった。

 

当然、土門と揚羽もだ。

 

「ええ、暗黒星団帝国が地球を占領した時、私はパルチザン活動に参加していたのよ」

 

「「「‥‥」」」

 

ティアナの告白に三人は絶句する。

 

暗黒星団帝国が地球へ襲来し、地球を占拠した時、暗黒星団帝国は地球の宇宙戦士を育成するこの宇宙戦士訓練学校にもやってきた。

 

暗黒星団帝国の兵士がやってくると教官、訓練生たちは寮に軟禁されていた。

 

暗黒星団帝国の占領軍将兵たちにとって訓練生たちは将来自分たちの敵となる危険な芽であったからだ。

 

ただ、教官や訓練生たちが殺されなかったのは暗黒星団帝国が抱える身体的問題の解消の為、本星から極力地球人は殺すなと命令されていたからで、暗黒星団帝国の兵士たちは教官と訓練生たちから武器だけを取り上げて、寮に軟禁したのだ。

 

自分たちが軟禁されている頃、ティアナはパルチザンとしてその暗黒星団帝国の占領軍と戦っていたと言うのだから驚きだ。

 

「じゃあ、その顔の傷は‥‥」

 

「占領軍の総司令‥カザンとか言う奴につけられたのよ」

 

「嘘‥‥じゃないんだな?」

 

土門が恐る恐るティアナに訊ねる。

 

「こんなことで嘘を言ってどうするの?」

 

パルチザンには防衛軍の軍人たちも大勢参加していた。

 

調べれば分かる嘘をティアナがわざわざ言う必要性を感じない。

 

「それにしても教官連中ふざけやがって!!そんな高性能の戦闘スーツを自分たちだけで使用するなんてルール違反じゃねぇか」

 

ティアナからボ〇太くんスーツの仕様を聞いてそんな戦闘スーツを訓練生相手の模擬戦にわざわざ持ち出してきた教官たちに土門は声を荒げる。

 

「そうね、とんだ茶番だわ。教官たち、私たちをいたぶって遊んでいるんじゃないの?」

 

うららもやはり、訓練生相手の模擬戦にもかかわらず、自分たちだけ有利な戦闘スーツを使用する教官たちに憤慨している様子。

 

「戦争に綺麗も汚いも無いわよ。実際に暗黒星団帝国も地球に対して奇襲をかけて来たし、パルチザンに居た時はその暗黒星団帝国の占領軍に対してあの戦闘スーツを使っていたしね」

 

「それで、そんな高性能の戦闘スーツ相手にどう対処する?」

 

揚羽がティアナにボ〇太くんの対処法を訊ねる。

 

「一応、対処方法がない訳じゃないわ」

 

「それはどんな方法なの?」

 

「あの戦闘スーツの目玉がカメラになっているの‥‥そこを壊して、転ばせることが出来れば‥‥ひとまず、遮蔽物が多い森へ退避しましょう」

 

対処方法を告げるティアナ。

 

教官チームに勝つには、まずあのボ〇太くんを倒さなければならない。

 

ひとまず、リタイアを免れた訓練生たちはティアナに付き従い森へと退避した。

 

ボ〇太くんスーツを始めとした教官らはそんな訓練生たちを追いかける。

 

「フハハハハハ、学生どもめ無様に逃げていくぞ!!出来れば全員一斉に突撃してくればさっさとケリがついたのだがな」

 

森へと退避していく訓練生たちを見て教官の一人は高笑いをする。

 

しかし、そんな姿勢が教官たちに慢心を生んだのかもしれない。

 

一方、森へ一早く退避したティアナたち訓練生たちは、対ボ〇太くん用の対処方法を立てていた。

 

「まず、隊を三つに分けましょう」

 

「三つ?」

 

「ええ、一つはボ〇太くんを含めた教官たちの注意を引き付ける囮チーム、次に教官チームの側面や背後から襲撃するチーム、そして三つ目は‥ボ〇太くんを仕留めるため一撃必殺の役目‥‥」

 

ティアナが作戦を立てチーム分けをする。

 

囮チームは足の速い訓練生たちを中心に揚羽をリーダーとしたチーム。

 

襲撃チームは射撃を得意とする土門を中心にしたチーム。

 

そして、ボ〇太くんを仕留めるのはボ〇太くんの事を知っているティアナが務めた。

 

本来ならば、ボ〇太くんを仕留める役を土門は自分がやりたかったが、ボ〇太くんの性能を知るのは訓練生たちの中ではティアナだけだったので、仕留め役はティアナに決まった。

 

ボ〇太くんを中心とした教官チームが森の中へ入ると、前方から訓練生たちが教官チームへ攻撃してくる。

 

「ふん、無駄な抵抗を‥‥」

 

ボ〇太くんがビームガンを放つと訓練生たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 

「このまま一気に殲滅してやるわ!!」

 

ボ〇太くんが訓練生たちを追撃しようとした時、

 

バキューン!!

 

「ぎゃああああ」

 

「ん?どうした!?浜北教官!?」

 

「や‥‥やられました‥別方向から‥‥」

 

ドサッ!!

 

一人の教官が別方向から撃ってきた訓練生の攻撃を受け、その場に倒れる。

 

これは土門たち別動隊からの攻撃だった。

 

「ぬぅ~学生どもが、ちょこざいな真似をしおって!!別方向から敵襲っ!!ただちに応戦せよ!!」

 

教官たちが土門たち別動隊へ攻撃を掛けようとした時、散っていた筈の揚羽たち囮部隊は再集結して再び教官チームへ攻撃を仕掛けてくる。

 

「前方の学生たちが集結して反撃してきました!!」

 

挟撃を受け、混乱が生じる教官チーム。

 

そこへ、木の上に居たティアナがボ〇太くんの上に飛び降りて来た。

 

「もふる!?」

 

「いいぞ、ランスター!!そのままその着ぐるみを潰しちまえ!!」

 

揚羽はボ〇太くんの頭部に飛び乗ったティアナを見て、彼女に応援の声をかける。

 

「これで、終わりよ!!」

 

ティアナはコスモガンの銃身を持ち、クリップの部分をトンカチで叩くかのようにボ〇太くんの両眼を叩き割る。

 

「も、も、も、も‥‥ふる‥‥」

 

ドゴンっ!!

 

メインカメラを割られたボ〇太くんは制御不能になり、まるで酔っ払いみたいな千鳥足になるとその場に倒れた。

 

ティアナはボ〇太くんが倒れる前に頭部から飛び降りていたので、転倒した際下敷きになる事はなかった。

 

「ら、ランスター‥おのれ~‥‥」

 

ボ〇太くんを潰したティアナの行動を見た教官は蟀谷に血管を浮き出してティアナにコスモガンの銃口を向ける。

 

しかし、教官のコスモガンからビームが出る事はなかった。

 

何故ならば、

 

「銃を捨てていただきましょうか?教官殿」

 

土門とうららが教官の背後に立っており、コスモガンを突きつけていた。

 

「ぬっ‥‥うぅ~‥‥」

 

撃たれても、銃を捨てても自分は学生に負けてしまう。

 

教官としてのプライドが葛藤する中、野戦訓練の運営本部より終わりを告げる花火が打ちあがり、

 

『制限時間経過の為、現時刻を持って訓練を終了とする!!繰り返す!!訓練終了!!訓練終了!!』

 

模擬戦終了を告げる放送が流れた。

 

訓練終了の放送が流れ、訓練生たちは『終わった』と一息ついたり、緊張から解放された様子でホッとしている。

 

今回の模擬戦は夜間帯で行われた事を含め殲滅戦ではなく、この模擬戦も講義の一環だったので制限時間が設けられていた。

 

教官チーム、訓練生チームが相手チームを殲滅したらその時点で終了していたが、こうして制限時間を越えても両チームが生き残っているので人数が多い方が勝ち‥‥と言う訳ではなく、引き分けとなった。

 

元々、訓練生チームの方が教官チームより人数が多い為であった。

 

「時間切れだ!!私は負けていないからな!!いいか、負けてなんかいないぞ!!ふんっ!!」

 

何だか負け犬の遠吠えみたいな捨て台詞を吐いて教官はズカズカと大股でその場から去っていく。

 

「「「‥‥」」」

 

教官の子供じみた言い訳をティアナ、土門、うららの三人はポカンとした表情で見ていた。

 

やがて、教官が去るとティアナはナイスアシストをしてくれた土門とうららに敬礼すると二人もティアナに返礼した。

 

 

そして、模擬戦が終わり撤収する最中、

 

「あっ、三人とも私がパルチザン活動をしていた事は秘密にしておいてね」

 

ティアナは土門、揚羽、うららの三人に自分がパルチザン活動に参加した事は黙っておいてと頼んだ。

 

「えっ?どうして?」

 

「そうだよ、地球を救うために戦っていたじゃないか」

 

うららと揚羽はどうしてパルチザン活動に参加していた事を秘密にするのか理解できなかった。

 

防衛軍のパルチザンと言えばヤマト同様、地球を救った言わばヒーローみたいな存在なのに‥‥

 

「あまり吹聴されて目立ちたくないの」

 

((いや、十分に目立っていると思うけど‥‥))

 

例えパルチザン活動を秘密にしなくてもティアナの場合、その顔の傷のせいで目立っていると思ううららと揚羽。

 

「ふん、変に格好つけやがって」

 

土門はティアナの経歴を聞いて悔しそうに言う。

 

「あれ?もしかして悔しいの?土門。それに、今日の模擬戦でもティアナが教官チームの切り札を叩き潰したしね」

 

「べ、べつに悔しくなんか‥‥それに俺たちは宇宙戦士になるんだから、宇宙での実績を積んでこそじゃないか。それこそ地球を救ったヤマトみたいに‥‥」

 

「はい、はい。分かったから」

 

うららは土門に生暖かい視線と共に彼の肩をポンポンと叩く。

 

「そ、それよりも次の模擬戦で教官連中があの着ぐるみを出してきたら俺が潰すからな!!ランスターばかりにいい所を取られっぱなしは癪だからな」

 

((やっぱり、悔しいんじゃない))

 

否定しつつも根が馬鹿正直なのはそれとも無意識なのか土門はティアナの実績に対して悔しがっている事を口にしていた。

 

「まぁ、馬鹿正直な所が土門らしいじゃないか」

 

揚羽は苦笑しながら前を歩く土門の性格を褒める。

 

「ええ、そうね」

 

「面倒くさい所もあるけどね」

 

ティアナもうららも揚羽同様、苦笑しつつそれに同意する。

 

 

教官チームのボ〇太くんの投入と言うイレギュラーな事が起きつつもティアナはリタイアを免れた訓練生たちを一つに纏め作戦を立案、実行し、自身はボ〇太くんを撃破すると言う結果を出した。

 

時間切れと言う形で模擬戦は引き分けに終わったが、ティアナの指揮官としての能力は着実に成長していたのだった。

 

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