星の海へ   作:ステルス兄貴

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ボローズ専用艦 ゾルヴァ号


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艦名は島田愛里寿さんより命名していただきました。

島田愛里寿さんありがとうございました。

設定は登場艦船 ボラー連邦に展示してあります。


ベルノフは作者のオリジナル名ですが、ヤマトⅢの冒頭でダゴン艦隊と戦ったバース星軍人です。

リメイク版に登場したら公式の名前も判明するかもしれません。

それまでの仮の名前です。


百四十話 太陽系の破滅

 

 

 

大銀河系星雲‥‥

 

直径10万光年‥‥

 

厚さ1万5000光年‥‥

 

恒星の数、一千億‥‥

 

そこには、今生まれて来た星もある。

 

死んでゆく星もある。

 

宇宙の命は無限だが、その命を受け継ぐ個々の星々の運命は様々である。

 

そして、地球もその様な星々の一つに過ぎない。

 

 

ティアナが宇宙戦士訓練学校へと編入し、人生で二度目の訓練校生活を送りながら宇宙戦士を目指しているその頃、銀河系東部、バジウド星系のバース星では総督のボローズはある決断を下した。

 

それは、迫りくるガルマン帝国軍の魔の手から逃げると言う選択肢であった。

 

ただし、逃げると言ってもボラー連邦本星ではなく、このバジウド星系から更に東進し、オリオン腕方面へと向かい、新たなる惑星国家を作ろうと言う壮大と言うか無茶な計画であった。

 

ただ、ボローズはバース星だけでなく、このバジウド星系におけるボラー連邦系の惑星国家へこの旨を打診し、彼の考えに賛同する同志を集めた。

 

このバジウド星系にいくつもの惑星国家が存在しており、それらの惑星国家が此処、バース星を侵略しようとしていた中、ボラー連邦がバース星を保護星とし、次いで周辺の惑星国家も次々とボラー連邦の領地へ編入していった。

 

しかし、ガルマン星が謎の勢力による電撃戦で解放されて以降、その勢いは銀河系東部方面‥このバジウド星系まで忍び寄っており、統治の維持に関して暗雲が立ち込めていた。

 

しかも銀河系中心部をガルマン帝国軍によって抑えられているので、本星への帰還も不可能。

 

ボローズに突きつけられた選択肢はこのままバース星に留まりガルマン帝国と戦うか?

 

それともまだガルマン帝国が進出していない東部、オリオン腕方面へ逃亡するかの二者択一であった。

 

正直に言ってバジウド星系にあるボラー連邦系の惑星国家すべての宇宙艦隊を集結させてもガルマン帝国に勝てるか不透明であった。

 

ならば、一部の望みをかけオリオン腕方面へ逃亡する方が生き延びる事が出来るのではないかと彼はそう思った。

 

都合が良いことに先日、宇宙艦艇の造艦ドックにて新造艦が完成したばかりだ。

 

 

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ただ、事態が逼迫している中なので華々しい就役式なんて行う余裕も今のボローズたちにはなかった。

 

更にボローズの下には彼の考えに賛同した者たちからの連絡も入っていた。

 

自分のようにこのまま統治している星に留まればガルマン帝国の手により処刑されるか、現地の住人たちがボラー連邦からの独立運動を起こし、現地の住民たちの手により殺されるかもしれないとの事で今回のボローズからの連絡はまさに渡りに船だったので賛同したのだ。

 

ボラー連邦から惑星統治へやってきたボラー星人の他にボラー連邦に協力してボラーからの特権と賄賂などの甘い蜜を吸っていた現地の権力者たちの中にもボローズに賛同する者も居た。

 

話が纏まり、後は賛同者たちと共にバース星から去るだけとなった中、ボローズは総督府にラムを呼び寄せた。

 

「総督、お呼びでしょうか?」

 

「うむ‥ラム君‥‥私は既にこのバジウド星系の命運は既に尽きたと思っている。その理由は分かるだろう?」

 

「‥‥ガルマン帝国‥ですか?」

 

「そうだ。既に奴らは銀河系中心部を完全に掌握し、銀河系東部‥このバジウド星系へ‥バース星へと迫りつつある。もはやガルマン帝国がいつ襲来してもおかしくはない状況となっている」

 

「それについては承知しております」

 

「故に我々はこの星から脱出し、新たな新天地を目指す」

 

「新天地‥ですか?」

 

「うむ、オリオン腕にはまだガルマン帝国の手が及んでいない有人惑星がある筈だ。それらの星々の惑星国家を集結させ、ガルマン帝国と戦うつもりだ。既に此処バース星以外に周辺の星々にて賛同してくれる者も多数居る」

 

ボローズはバース星以外にも周辺の惑星国家にて、自分たちの生まれ故郷の星や統治している星を捨て、オリオン腕方面へ逃亡する者が大勢いる事を語る。

 

「‥‥」

 

ボローズの話を聞き、ラムは神妙な顔つきだ。

 

「そこでだ、ラム君。ぜひとも君にもこの旅と我々の一大事業に参加してもらいたい」

 

ボローズはラムを勧誘し始めた。

 

「軍人としての君の能力と人望があれば今後の対ガルマン帝国との戦いも優位に進められる筈だ」

 

「‥‥総督、申し訳ございません。私はバースの軍人であります。母国バースに危機が迫っている中で、母国を見捨てる訳にはいきません。私はバースの軍人として最後までこの地に踏みとどまりガルマン帝国と戦うつもりです」

 

しかし、ラムはボローズからの誘いを断り、バース星に残りガルマン帝国と戦う決意である事を告げる。

 

ラムの勧誘が失敗したことにボローズはやや顔を歪める。

 

「それにここへガルマン帝国が襲来するのは総督の仰る通りであります。ならば、総督らがオリオン腕へ向かっている中、誰かが殿を努めなければなりますまい」

 

「‥‥」

 

確かにラムの言う通り、自分たちがオリオン腕へ向かっている中、背後からガルマン帝国から攻撃を受けては堪らない。

 

ならば、此処はラムたちに踏ん張ってもらい少しでも自分たちの逃亡と言う名の旅路の時間を稼いでもらおうと考え、ボローズはラムに対して処罰をする事はなかった。

 

それからすぐにボローズは自分の考えに賛同する同志を集め、宇宙港からバース星を見捨てて出て行った。

 

宇宙へ飛び立っていくボローズたちの宇宙艦艇を見上げながら、ラムの副官がポツリと呟く。

 

「総督らボラーの連中が去ったことで、図らずも我がバースはボラーからの独立を果たしたと判断してもよろしいのでしょうか?」

 

「あくまでも形だけな‥‥しかし、それもそう長くはないだろう‥‥」

 

ラムは副官の意見を肯定する。

 

「‥‥」

 

ボローズらボラー連邦の関係者がバース星から去ったことでバース星はボラー連邦から独立した形となった。

 

しかし、ラムは覚悟していたし、分かっていた。

 

この独立が長くない事に‥‥

 

いずれはこのバース星にガルマン帝国の艦隊が大挙して押し寄せてくる。

 

現状のバース星の戦力ではとてもあの大帝国の侵攻を止める事は出来ない。

 

そうなればガルマン帝国はこのバース星を植民地にする筈だ。

 

バース星人である自分たちの主がボラー連邦からガルマン帝国に代わるだけだ。

 

だが、すんなりとガルマン帝国の植民地に成り下がる訳にもいかず、せめて一矢報いてやるつもりであった。

 

「ラム艦長‥‥」

 

「分かっている。我々はやるべき事をやるだけだ。引き続き造艦所では宇宙艦艇の建造を行い、指揮官の一部を乗員の訓練に割り当ててくれ」

 

「承知しました」

 

ラムは副官に焼け石に水だろうが、戦力の増強を指示した。

 

ただ、この他にもラムにはやる事があった。

 

このバース星にはボラー連邦本星を始めとしてボラー連邦系の惑星国家からボラーの政治理念に反対した政治犯やゲリラ活動をしていたレジスタンス、ボラー連邦、ガルマン帝国で禁教とされているシャルバート教の信者を収監する収容所があった。

 

既にボローズらボラー連邦の関係者はバース星を出て行ったので、彼らをこの星で収監する意味も無くなった。

 

ラムは収容所にて、ボローズがこの星を出て行き既にバース星がボラー連邦系の星でない事、バース星からの退去の為に輸送船を与える旨を伝え、この星に残るか?それとも他の星を目指すか?その選択を彼らに与えた。

 

勿論、ガルマン帝国がこの星へ迫っている事も付け加えて‥‥

 

シャルバート教の信者たちはラムの申し出を受け入れ輸送船で自分たちの宗教の母体であるシャルバート星を目指すためにバース星を船出し、レジスタンスや政治犯たちも自分たちの星へ戻り、引き続き自分たちの星からボラーを追い出すため彼らも自分たちの星を目指しバース星から退去した。

 

無関係な人々を出来る限りバース星から退去させる活動をラムは続けつつバース星軍人の訓練も欠かさないと多忙な日々を送る事になった。

 

 

バジウド星系にてボローズたちボラー連邦とソレに付き従う権力者たちがオリオン腕へ向かっている中、ガルマン・ガミラス帝国では総統であるデスラーの娘、ジュラが地球へガルマン・ガミラスの建国と地球との同盟を結ぶ為、地球への旅路に出る少し前、ガルマン帝国銀河系東部方面軍総司令のガイデルは部下のダゴンにジュラの地球への行幸を伝えた。

 

その頃、ダゴンはバジウド星系の攻略に当たっていた。

 

 

バジウド星系 某宙域 ラムール級航宙巡洋戦艦 ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「ダゴン司令、司令宛てに通信です」

 

「誰からだ?」

 

「東部方面軍司令のガイデル提督です」

 

「よし、繋げ」

 

通信士が通信回路を開くとパネルにガイデルの姿が映し出される。

 

「ガイデル提督」

 

ダゴンはガイデルに敬礼する。

 

「ダゴン、今日の軍議である事が決まった」

 

「ある事?何でしょう?」

 

「ジュラ様の行幸が決まったのだ」

 

「ジュラ様の行幸ですか‥‥?」

 

「うむ」

 

「ジュラ様は一体何処へ行幸なされるのですか?」

 

「地球だ」

 

「地球?聞いたことがありませんな」

 

「オリオン腕方面にある最辺境にある惑星だ。私も議題に上がらなければ知りもしなかった」

 

ガイデルもダゴンもガミラス人ではなくガルマン人だったので地球の存在を知らなかった。

 

ガミラス人ならば、地球の存在を知らない訳がないからだ。

 

「しかし、何故ジュラ様がそんな辺境の星に行幸へ行くのですか?」

 

上官であるガイデルさえ知らない星へ総統の娘であるジュラが行幸へ行くのかダゴンには理解できなかった。

 

「どうも、総統と地球には何かしらの因縁があったらしい‥‥もっとも今は和解しているみたいだがな」

 

「は、はぁ‥‥」

 

「それで、今回のジュラ様の行幸はその地球へ総統の名代としてガルマン・ガミラスの建国と地球との同盟の為の使者として向かう」

 

「同盟‥でありますか?辺境の星に‥‥?」

 

「これは総統閣下の決定事項でもある」

 

「‥‥」

 

心の中ではガイデルもダゴンも辺境の一惑星に自分たちと対等の同盟だなんてモヤモヤするところがあるかもしれないが、総統であるデスラーの決定事項に異議を唱えるなんて出来ない。

 

「そして、ジュラ様の行幸航路は我が戦線を横切る」

 

「戦線へ!?それは危険ではないでしょうか?」

 

「当然、ジュラ様の行幸には護衛の艦隊も随伴する」

 

ジュラの行幸にはガルマン・ガミラス本星の第十七空母艦隊を中心とした護衛艦隊も地球へ同行する。

 

「しかし、万が一の事もある。ジュラ様の御身に何かあれば当然、私もお前もどうなるか分かっているだろう?」

 

「は、はい‥‥」

 

「ダゴン、バジウド星系で攻略に時間がかかりそうな星はどこだ?」

 

「バース星でございます。かの星はボラー連邦が銀河系東部方面の橋頭堡として確保した惑星であり、駐屯する艦隊数もバジウド星系では最多規模であるかと‥‥」

 

「ふむ、ではダゴン。ジュラ様がバジウド星系へ到着する前に掃除をするのだ。バジウド星系にボラーの艦一隻もうろつかぬよう彼奴等を殲滅するのだ!!」

 

「はっ、承知しました!!」

 

ガイデルからの要請は無茶ぶりな要請ではあるが、このバジウド星系の攻略が無事に済めばデスラー、ジュラからの心象は良いだろう。

 

そうなれば、自分の昇進にも繋がる。

 

そういった打算がダゴンにはあった。

 

「航海長、針路変更。我が艦隊はバース星へと向かいバース艦隊を殲滅する!!全艦全速前進!!」

 

ダゴン率いる第十八機甲師団は針路をバース星へと向けた。

 

 

ガルマン・ガミラス側のまさかの理由でバース星への攻略が早まったことを当然知る由もないバース艦隊は乗員の育成目的の訓練と周辺のパトロールを行っていた。

 

そんなバース艦隊の一艦隊が小・中程度の無人惑星が多数存在するとある宙域で訓練兼パトロールを行っていると‥‥

 

「敵艦隊、発見!!」

 

「なにっ!?」

 

(ガルマン帝国め、もうここまで進出していたのか!?)

 

この艦隊の旗艦であるセヴァストー級航宙戦闘艦の艦長、ベルノフはガルマン帝国の侵略速度の速さに驚愕した。

 

「位置は!?」

 

「はっ、rーx36座標、軸上Y接点。ポイント81F1。シグナルレッド!!」

 

「スクリーンに投影」

 

「了解」

 

艦橋のメインモニターには艦首が黄色で船体色が深緑色の艦船の姿が映し出される。

 

(来たか、侵略者ども‥‥)

 

「バース星本国へ緊急電!!『我、敵と遭遇セリ』とな、座標も忘れるなよ!!」

 

「はっ、直ちに‥艦隊司令部、此方第三十一養成パトロール艦隊、『我、敵と遭遇セリ』、接触ポイントはrーx36座標、軸上Y接点。ポイント81F1地点!!」

 

ベルノフは敵と接触した旨をバース星の艦隊司令部へと知らせる。

 

バース艦隊がガルマン帝国の艦隊を発見したように、ガルマン帝国‥ダゴンが指揮する第十八機甲師団もバース艦隊を発見・捕捉していた。

 

 

ガルマン帝国 東部方面軍 第十八機甲師団 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「距離10万宇宙キロ前方に敵艦隊発見!!」

 

「解析急げ!!」

 

「エネルギーパターン判明!!ボラー系の艦船です!!」

 

「ふむ、攻撃を開始しろ!!」

 

この宙域で自分たちガルマン帝国の宇宙艦艇のエネルギー反応ではなく、ボラー連邦の宇宙艦艇エネルギー反応が出るのであるならば、敵である事に間違いない。

 

ダゴンは前方の艦隊に対して攻撃命令を下すと艦隊は攻撃を開始する。

 

リンチェント級航宙駆逐艦の回転速射砲塔、ラムール級航宙巡洋戦艦の三連装砲塔、回転速射砲塔からは赤いビームが前方の艦隊に向けて放たれる。

 

そのビームはバース艦隊の前衛に命中する。

 

「三番艦、七番艦被弾!!撃沈されました!!」

 

「応戦!!全砲門発射!!」

 

先手を相手に取られ前方の艦隊に被害が出たが、ベルノフは慌てることなく冷静に全艦に対して反撃を命令する。

 

バース艦隊を構成するアポストロ級航宙戦艦、ロスチラフ級航宙戦艦、グラード級航宙母艦が格納されていた砲塔を出し、第十八機甲師団の艦艇に対して反撃する。

 

バース艦隊から放たれた青緑色のビームが第十八機甲師団の艦艇へと襲い掛かる。

 

バース艦隊の反撃を受け、前衛のリンチェント級航宙駆逐艦とラムール級航宙巡洋戦艦に被弾する。

 

「前衛部隊に多数の被害!!」

 

「ほぉ~なかなかやるではないか‥‥」

 

前衛部隊へ被害を与えた事にダゴンはフッと笑みを浮かべるが、

 

「惑星破壊ミサイル搭載母艦前へ!!」

 

ダゴンは艦隊の後方に控えていた特殊艦を前進させる。

 

艦隊の後方から三隻、前進してきたその艦は艦底部に巨大なミサイルを吊り下げた艦だった。

 

 

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「後方の惑星諸共吹っ飛ばせ!!ミサイル発射!!」

 

特殊艦の艦底部から発射されたミサイルはバース艦隊に向かって突き進んでいく。

 

「敵艦隊より、超大型のミサイルが発射されました!!」

 

「撃て!!撃破しろ!!」

 

ベルノフは迫りくる大型ミサイルの破壊を命じる。

 

しかし、そのミサイルは大きさもさることながら丈夫さでも通常のミサイルより丈夫で数隻のアポストロ級航宙戦艦がミサイルに接触するとミサイルではなく、アポストロ級航宙戦艦の方が傷ついた。

 

バース艦隊を蹴散らしながら進んで行く超大型のミサイルはバース艦隊の後方にあった惑星に着弾する。

 

するとたちまち惑星の表面に幾つもの亀裂が入り始め、地表が盛り上がりながら溶岩が吹き出て惑星全体がオレンジ色に変貌しまるで風船が割れるかのように眩い光と共に爆発する。

 

「そ‥そんな‥‥こんなことが‥‥」

 

いくら大型のミサイルだからと言っても数発着弾しただけで惑星が崩壊するなんて信じられなくベルノフは目を見開いて驚愕する。

 

やがて、惑星が破壊された事により発生した衝撃波と破片がバース艦隊を襲う。

 

(ラム‥‥すまない‥‥俺はここまでの様だ‥‥後は‥後は頼んだぞ‥‥)

 

ベルノフは迫りくる衝撃波を前にバート星の未来をラムに託した。

 

惑星の傍に展開していた事により、バース艦隊の艦船は全てが惑星の崩壊に巻き込まれ、ガラス細工が粉々に砕け散るように崩壊した。

 

無事に退避出来た艦は一隻も居なかった。

 

当然、ベルノフも戦死した。

 

「惑星rー28ーα崩壊!!」

 

「敵艦隊消滅しました!!」

 

「我が方のプロトンミサイル一基が軌道を外れてしまいましたがいかがいたしましょうか‥‥?」

 

今回、第十八機甲師団が使用した惑星破壊プロトンミサイルは三発。

 

その内、二発が惑星に着弾した。

 

だが、一発だけはバース艦隊の艦艇との接触で軌道がズレ、惑星に着弾せずそのまま何処かへ飛んで行ってしまった。

 

副官がダゴンにミサイルの処理を訊ねると、

 

「放っておけ。我々にはジュラ様がバジウド星系へお越しになる前にボラー陣営の戦力を削がなければならんのだ。全艦戦闘態勢解除。指令B-42行動に移れ!!」

 

この時、ダゴンは宇宙の彼方に飛んで行ったプロトンミサイルは適当な惑星に着弾して終わるだろうと思っていた。

 

しかし、このミサイルが後々地球へ‥太陽系へ大災害を引き起こす原因となった。

 

 

太陽系へ危機が迫っている事など知る由もなく、宇宙戦士訓練学校では今日も未来の宇宙戦士たちが勉学に励んでいた。

 

朝食の席にて、土門は普段とは違い物凄い勢いで朝食を搔っ込んでいた。

 

「ちょっと、土門。少し落ち着いて食べなさいよ」

 

ティアナが呆れる感じで注意する。

 

「うるへぇ、今日はちょっと野暮用があって急いでいるんだよ」

 

しかし、土門はティアナの注意などそっちのけで朝食を勢いよく食べている。

 

彼が急いで朝食を食べているのは何か用事がある為の様だ。

 

「野暮用って今日アンタ日直だっけ?」

 

「違う」

 

土門が急いで朝食を食べているのは彼が今日、日直だからと思いティアナが訊ねると土門はそれを否定する。

 

「じゃあ、課題を忘れたの?」

 

「それも違う。見送りに行くんだよ」

 

うららが日直ではないのであるならば、彼が課題を忘れたから今日の講義が始まる前にその課題を終わらせようと急いで朝食を食べているのかと思いきや、それも違い、どうやら彼は誰かを見送りに行く為に急いでいる様だ。

 

「見送り?」

 

「って言うか、授業はどうするの?サボる気?」

 

「ちゃんと教官には外出許可は貰っているよ」

 

見送りと言う事は外出すると言う事だが、今日は平日‥‥

 

当然この後、講義と実習がある。

 

しかし、土門は事前に教官から外出許可を貰っているみたいで今日の講義と実習は休むみたいだ。

 

土門は朝食を食べ終えると食器を返却口へ持っていくと慌ただしく食堂を出て行った。

 

「あんなに慌てて見送りに行くって‥‥彼女かしらね?」

 

うららがニマっとした笑みを浮かべながらティアナに訊ねる。

 

「あいつに彼女?はっ、ありえないわね。あんな粗暴な奴に彼女だなんて」

 

ティアナは小馬鹿にするような目でうららの予想を否定する。

 

「そうよねぇ~」

 

「「あはははは‥‥」」

 

ティアナとうららの二人が土門に彼女なんて出来る訳がないと断言し笑いあう。

 

(土門、お前酷い言われようだぞ‥‥)

 

揚羽は笑い合っている二人を尻目にこの場に居ない土門を憐れんだ。

 

そんな土門はどこへ向かったのか?

 

その答えは宇宙空港だった。

 

東京宇宙空港の出発ロビーは物凄い賑わいだ。

 

ガミラス戦役前は賑わっていた宇宙空港であるが、ガミラス戦役時は当然民間人の宇宙への渡航は出来ず、ガミラス戦役後から彗星帝国戦役前は民間の宇宙旅行が再開されるも白色彗星が地球へ飛来するかもしれないと言う疑いが出た頃から、民間の宇宙渡航はまたもや中止となり、その後も彗星帝国軍の残党、そして暗黒星団帝国の襲来と長い間に渡って民間の宇宙渡航は中止になっていた。

 

だが、彗星帝国軍の残党、暗黒星団帝国の脅威がようやく去り、民間の宇宙渡航が再開されると長い間我慢していた地球の人たちは星の海を目指して旅に出た。

 

東京宇宙空港の出発ロビーには雑踏を縫ってロボット・ポーターに荷物を持たせている人、仲睦まじく手を繋いでいる恋人たち、他の惑星への旅行者や単身赴任、出張等の仕事に出向くサラリーマンたちがチェック・イン・カウンターで行列をなしている。

 

天井部にある出発掲示板の表示が変わり、アナウンスが空港内に流れる。

 

「出発便のご案内を申し上げます。午前十時、東京発、水星経由、太陽観光船、六〇〇便へご乗船のお客様は出発手続きをお急ぎの上、三十八番ゲートへお越しください。ご乗船が始まっております。繰り返しご案内を申し上げます‥‥」

 

アナウンスが流れ、混雑している人混みを縫って土門は空港のロビーを走っていた。

 

「ちょっと通してくれ!すみません、通して‥‥」

 

土門は三十八番ゲートを目指す。

 

(まだ、居るかな‥‥?)

 

そしてようやく三十八番ゲートに着くと、彼の眼前には搭乗手続きをしている一組の夫婦が居た。

 

(良かった、間に合った!!)

 

土門は安堵の表情を浮かべ、その夫婦に近づき声をかけた。

 

「父さん、母さん。いやぁ間に合って良かったよ。見送りに来たんだ」

 

この夫婦は土門の両親だった。

 

土門に声を掛けられた二人は振り向くと、少し驚きの表情を浮かべる。

 

「竜介!?いや、よく来てくれた。しかし、大丈夫なのか?訓練校の方は?」

 

「ああ、教官に話をしたら時間をくれたんだ」

 

「お父さんもお母さんも等々決心しましたよ。一生の思い出に‥身体に気を付けてね、竜介。変な物を食べるんじゃありませんよ」

 

「やだなぁ、母さん。子供じゃああるまいし‥それにたかが十日間、宇宙旅行に出かけるだけじゃないか」

 

「まぁ、母さんにしてみれば十年がかりの大決心なんだからね」

 

「もう、お父さんったら‥‥」

 

息子の土門から見ても自分の両親の仲はいくら年をとってもラブラブに見える。

 

太陽観光はガミラス戦役前から密かに両親が計画していたのだが、自分がまだ幼く、子育てで忙しかったり、父親の仕事が忙しくなかなか二人の日程が合わなかったりで、時間が取れない中、ガミラスが地球へ侵攻し、民間の宇宙渡航が全面中止となり、その後も外宇宙からの侵略で太陽観光が再開されないまま今日まで至り、ようやく今回の旅行へとこぎつけることが出来た。

 

息子の見送りを受け、土門の両親は太陽観光船へと乗り込む。

 

土門が送迎デッキで太陽観光に手を振りながら見送ると、観光船の窓には両親の姿があった。

 

「父さん!!母さん!!行ってらっしゃい!!楽しんでおいでよ!!」

 

「行ってらっしゃい!!気をつけてな!!」

 

送迎デッキには土門の他にも太陽観光船を見送りに来ている人たちが大勢いた。

 

沢山の見送りに来た人たちを前に太陽観光船は出発時刻となる。

 

防衛軍の軍艦と異なり太陽観光船は昔ながらの垂直発射スタイルを採用しており、発射台から勢いよく飛び立った太陽観光船は多くの観光客を乗せて太陽を目指して飛んで行った。

 

(良い旅行になるといいな‥‥)

 

あっという間に飛んで行った太陽観光船を見て土門は両親の土産話を十日後、楽しみに待つことにして訓練校へと戻って行った。

 

土門が両親の旅行へ見送りに行ったその日の夕食、食堂にて、

 

「それで、土門。今日見送りに行くって言っていたけど、誰を見送りに行ったの?」

 

うららはやはり気になったのか土門に訊ねた。

 

「あん?なんだよ?いきなり」

 

「だって気になるじゃん、あんなに慌てて見送りに行くなんて‥ねぇ、ティアナ?」

 

うららはティアナに話を振り、味方を増やそうとする。

 

「えっ?ええ、そうね。それで、誰の見送りに行ったの?」

 

ティアナもやはり気になっていたのでうららと共に今日、土門が講義を休んでまで誰の見送りに行ったのかを訊ねる。

 

「ん?誰って、両親だよ、両親。俺の両親は昔から太陽観光に行きたがっていたんだが、忙しくて時間が取れなかったり、ガミラスの奴らが侵略しに来りと、太陽観光になかなか行けなかったんだけど、今回ようやく行けたんだよ」

 

「えっ?両親?」

 

「それってマジなの?」

 

「あん?何が?」

 

「い、いえ‥‥」

 

「別に‥‥」

 

「何だよ?そのつまらなさそうな顔は?お前らが聞いて来たんだろうが」

 

「い、いや、それはそうなんだけど‥‥」

 

「なんか‥‥ねぇ‥‥」

 

「うん‥‥」

 

朝食の席で土門に彼女なんて居る訳がないと豪語し高笑いをしていた二人であったが、ちょっとは意外性を期待して、こうして土門に聞いてみたのだが、二人の予想はある意味で裏切られ、なんだか拍子抜けをした。

 

土門は馬鹿正直な性格なので、仮に両親を隠れ蓑にして彼女を見送りに行った場合、下手な嘘をつくか、顔に出るのだが、『両親を見送りに行った』と言った時の彼の表情は至って冷静で嘘をついている様子はなかったので、今日土門は本当に両親の見送りに行ったのだ。

 

「あっ、それよりも揚羽、今日の講義分のノートを後で見せてくれねぇ?」

 

拍子抜けしている二人を尻目に土門は揚羽に自分が休んでいる間の講義ノートを見せてくれと頼んだ。

 

「なんか拍子抜けね‥‥」

 

土門の彼女の存在がなかった事にうららはつまらなそうに呟く。

 

「そ、そうね‥‥」

 

「やっぱり、土門に彼女なんて居なかったか‥‥」

 

「だから言ったでしょう?」

 

「ん?あれ?ティアナ、もしかして安心している?土門に彼女が居なくて?」

 

うららがつまらなそうにしていた態度から一転してニヤリとした笑みを浮かべながらティアナに訊ねると、

 

「は、はぁっ!?な、何言ってんのよ!!うらら!!」

 

ティアナは顔をほんのりと赤く染めて声を荒げる。

 

「あれ?あれ?何か顔が赤いよ?ティアナ。もしかして、ZU・BO・SHI?‥なのかな?」

 

「あんたがバカなことをいきなり言うから、驚きと怒りで赤くなったのよ!!」

 

「ん?何やってんだ?あいつら?」

 

「さ、さあ‥‥」

 

うららとティアナがギャアギャアと言い合いをしている中、土門は呆れ、揚羽は関わろうと思わず二人をアウト・オブ・眼中する事を貫いた。

 

また変にあの二人に関われば自分に火の粉が飛んできそうだからだ。

 

 

宇宙戦士訓練学校の食堂にて学生たちのこんなやり取りが行われている頃、今日地球を出発した太陽観光は水星軌道まで来ていた。

 

この後、太陽周辺をぐるりと時間をかけて回り、地球へ戻る予定だ。

 

太陽観光船は観光客たちに太陽を見せる為、停止した。

 

「みなさん、ご覧ください、太陽です。太陽は銀河系を構成する約一千億の恒星の一つで、私たちに熱と光をめぐみ、太陽系の生命を生み育んでいる生命の親とも言える星です。私たちは現在、水星軌道上におります。水星の周辺には複数の太陽エネルギー集積衛星が展開しており、太陽の光を受けたこの衛星は、水星基地、金星基地、月基地を経由して地球へ送られ、今日の私たちの生活に欠かせないエネルギーとなっております。この後、当船は‥‥」

 

「おお‥‥」

 

「すげぇな‥‥」

 

「近くで見るとやはり迫力が違うぜ‥‥」

 

「雄大な宇宙の神秘ね‥‥」

 

太陽観光船の展望室では、観光客たちが集まり、眼前の太陽を見て感嘆の声を漏らし、搭乗員が太陽の説明と今後の予定を観光客たちに伝えている。

 

勿論、この展望室には土門の両親も居り、太陽を見ていたのだが、

 

「あら?」

 

土門の母親は搭乗員の説明も眼前にある太陽もそっちのけで、太陽観光船が来た方向をジッと見ている。

 

「ん?どうしたんだい?母さん。せっかく、太陽の近くへ来たのだから太陽を見ないと‥‥」

 

土門の父親は母親に対してようやく来れた念願の太陽観光なのだからメインの太陽を見てはどうかと言うが、

 

「あれ?何かしら?」

 

土門の母親が窓の外‥星々が煌めく空中空間の一角を指さす。

 

「ん?」

 

土門の父親も目を細めて妻が指さした方向を見る。

 

すると、その方向にはチカチカと光るモノがあった。

 

「最初は流れ星かと思ったんだけど、どんどんこっちへ近づいてくるわ」

 

土門の母親は不安そうに言う。

 

水星、金星には一応基地はあるが、それはあくまでも太陽エネルギー集積基地なので、防衛軍はこの二つの惑星には駐屯していない。

 

だが、エネルギー集積基地があるのでその集積基地に関係する宇宙船かと思ったが違った。

 

「あっ!?」

 

「あれはっ!?」

 

二人が思わず悲鳴を上げた時、接近する光点はその姿を露にする。

 

太陽観光船に接近してきたのは集積基地に関係する宇宙船ではなく、太陽観光船の船体よりも巨大なミサイルだった。

 

そのミサイルは防衛軍に採用されているミサイルとは異なる形状をしていた。

 

そもそも、太陽観光船の船体以上の巨大なミサイルなんて防衛軍は開発をしていないし、周辺で軍が演習をしている事実も予定もない事は事前に軍へ確認できている。

 

だからこそ、太陽観光船はこの宙域に止まり、観光客に太陽を見学させていたのだ。

 

「船長!!未確認物体が本船に接近中!!ぶつかります!!」

 

「か、回避を‥‥機関始動!!」

 

「だ、ダメです!!未確認物体の速度が早すぎて、機関の始動が間に合いません!!」

 

太陽観光船が太陽観光の為、エンジンを切って止まっていた事、

 

接近するミサイルの速度が速すぎた事、

 

この二つの不運が重なってしまった結果、ミサイルは太陽観光船に直撃した。

 

ズガーン!!

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁ-!!」

 

ミサイルと衝突した太陽観光船は真っ二つに折れて爆発をしながら船体はバラバラとなった。

 

太陽観光船の船内は阿鼻叫喚の地獄に代わり、乗っていた乗員・乗客は船体の爆発に巻き込まれ木っ端微塵となり、宇宙空間へと消えた。

 

ミサイルの方は太陽観光船に衝突したが、炸裂する事も無くそのまま太陽へ一直線に進んで行き、やがて太陽の中へ消えて行った‥‥

 

 

 

 

おまけ

 

此処で時間はかなり過去に戻し、視点はイスカンダルへ向かう雪風・改に移す。

 

イスカンダル復興の為、ヤマトを降りた守、サーシア、トチローの三人。

 

そして、暗黒星団帝国の本星、デザリアム星にてサーシアの協力者で彼女と共にデザリアム星から脱出し、今回のイスカンダル復興にも協力を名乗り出た謎の科学者、ジェレミアとその助手のロベル。

 

当初、守もサーシアもこの二人をイスカンダルへ連れて来て大丈夫かと訝しんだが、トチローはイスカンダルの復興には人手が居ると守に助言すると、守も渋々だが彼らの同行を了承した。

 

波動エンジンへ換装したとは言え、デザリアム星があった宙域から大マゼラン星雲のイスカンダルまではワープをしてもそれなりの日数がかかった。

 

しかし、そんな航海中でもイスカンダルの復興方法を考えたりとやる事はあった。

 

そんな中でもトチローとジェレミアは技術談に花を咲かせ二人とも楽しそうな様子だった。

 

トチローとジェレミアの技術談議に守もサーシアも当然理解できず、談議をしている二人を守もサーシアも居ない者と認識していた。

 

それはイスカンダルに到着した時もジェレミアはイスカンダルに残された技術を前に狂喜乱舞していた。

 

「おおおぉぉぉーこれは凄い!!まさに科学技術の理想郷のようなところではないか!!ハハハハハ‥‥凄いぞ!!これは凄い!!」

 

惜しまれるのはイスカンダルへ来る前にトチローから聞いたイスカダリウムが物質偏向されてしまい、偏向前のイスカンダリウムを見てみたかったとジェレミアは嘆いていた。

 

「私ですら、こんな発想には思い当たらなかった‥‥やはり、宇宙は広いなぁ~ハハハハハ!!」

 

「‥‥」

 

そんなジェレミアを見て流石のスターシアも引いていた。

 

「も、申し訳ございません。ドクターは変わった技術を前にすると周囲が見えなくなってしまいまして‥‥」

 

ジェレミアの行動に引いているスターシアにロベルは深々とジェレミアに代わって謝る姿があった。

 

「守の知り合いには面白い人がいるのね」

 

「い、いや、彼は知り合いって訳じゃあ‥‥」

 

(やっぱり、彼を連れて来たのは間違いだったか?)

 

守の本音としては、変人はトチローだけで十分だと言う意味を込めてスターシアの言葉を否定した。

 

何はともあれ、イスカンダルの復興はまだ始まったばかりだった。

 

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