星の海へ   作:ステルス兄貴

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今回の話に登場した倉田博士は旧作のヤマト2の10話に登場したキャラで彗星帝国戦役時には娘夫婦が新婚さんでした。

ギンガがα星系第四惑星で助けた山上さんは旧作のヤマト3でバーナード星の開拓をしていた山上一家です。

原作では山上トモ子さんがあまりにも不遇だったので、本来の歴史とはちょっと異なる展開にしました。


百四十一話 太陽異常

 

 

水星軌道にて、太陽観光船が突如、外宇宙から飛来した大型のミサイルと接触し遭難した翌日‥‥

 

地球連邦中央天文台の所長である倉田博士は太陽を観測した際、妙な事に気づく。

 

倉田博士は彗星帝国戦役の少し前、アンドロメダ星雲から飛来する巨大な白色彗星を発見し、彗星の針路上に地球がある事に気づき、藤堂に報告を上げた人物でもあった。

 

「うーん‥‥おかしい‥‥太陽の核融合数値が昨日と比べると異常に上がっている。たった一日でこんなことが起きるものなのか‥‥?」

 

今日の観測データと昨日の観測データを比較し首を傾げる。

 

倉田博士はさらに一週間前、一ヶ月前、三ヶ月前、半年前、一年前と過去のデータと比較するが、今日観測した太陽のデータはあまりにも異常だった。

 

「僅か一日でここまでの核融合反応が早まるなんてやはり妙だ‥‥」

 

倉田博士は太陽エネルギー省に連絡を入れるか迷い、太陽エネルギー省へ連絡を入れる前に地球連邦大学へ連絡を入れた。

 

「もしもし、地球連邦中央天文台所長の倉田です。宇宙物理学部、学部長のサイモン教授をお願いします」

 

倉田は地球連邦大学宇宙物理学部長で知り合いでもあるサイモン教授へ連絡を入れたのだ。

 

「お電話代わりました。サイモンです。倉田博士、どうしました?」

 

「ああ、サイモン教授。実は今日、太陽の観測データで異常な数値を観測しまして‥‥」

 

「異常な数値?」

 

「はい。詳しくは教授のパソコンに今日の観測データと過去の観測データを送りますので、教授の見解を知りたいのですが‥‥」

 

「分かりました」

 

倉田博士はサイモン教授のパソコンへ観測データを送る。

 

サイモン教授は倉田博士から送られてきたデータに目を通す。

 

「ん?こ、これはっ!?‥‥倉田博士、この観測データに間違いはないのですか?」

 

「はい、こちらでも間違いがないか、何度もチェックしましたが、間違いありません」

 

「むぅ‥‥」

 

電話口からサイモン教授の芳しくない声が聴こえる。

 

「倉田博士、まだ結論を出すのは早計かもしれませんが、この異常な数値が続くようでしたら地球の危機かもしれません」

 

「やはり‥‥」

 

サイモン教授の考えと倉田博士の考えは一致していたが、今日一日の観測データでは早計かもしれないので、倉田博士とサイモン教授は暫しの期間を設け、太陽の観測を続けてからこの異常数値が続くようならば、太陽エネルギー省、防衛軍、地球連邦大統領府に連絡を入れる事にした。

 

 

地球で太陽の核融合の異常増進が観測された頃、開拓が進んでいるケンタウルス座α星系第四惑星では、オスミウムの採掘が進むと同時に鉱山労働者の為の町づくりも進み、何もなかった荒野には住宅団地、商業施設、娯楽施設、病院等の建物が立ち並んでいる。

 

ガミラスとの戦災復興を僅か一年ちょっとで成し遂げ、太陽系内の惑星を開拓した地球の勢いと底力はこのα星系第四惑星でも同じで地球や太陽系内の他の惑星と変わらない居住環境となっていた。

 

そんな開拓が進むα星系第四惑星にて、防衛軍はそんな開拓民保護の為に基地が建設され、まほろば は現在その基地のドックにて整備・補修を受けていた。

 

まほろばの乗員たちもローテーションで勤務、非番を行い非番の乗員たちは開拓されたα星系第四惑星の商業施設でショッピングをしたり、娯楽施設で日々の疲れを癒したりしていた。

 

そんなある日、良馬とギンガは非番でとある商業施設へとショッピングに来ていた。

 

まぁ、ショッピングと言う名のデートでもあるのだが‥‥

 

ギンガがアクセサリーショップにて、良馬と共にアクセサリーを見ていると、

 

「あれ?中嶋さん?」

 

「えっ?」

 

「ん?」

 

ギンガに声をかけて来た女性が居た。

 

その女性は茶髪でショートカットの女性で、彼女の隣には旦那と思われる男性の姿があった。

 

「あっ、山上さん」

 

「知り合い?」

 

「ええ、先日、山上さんのお父さんが居酒屋で酔っ払いに絡まれていたので、その時に‥‥」

 

「あの時は父がお世話になりました」

 

「いえ、流石に一対多数で殴り掛かかっていたのは見過ごせなかったので‥‥お父様はあの後、大丈夫でしたか?」

 

「ええ、すぐに病院で診察を受け、幸い骨折等は無く今も開拓業を続けています。重ね重ね、父を救って頂きありがとうございます」

 

「私からもお礼申し上げます。お義父さんを助けていただいてありがとうございます」

 

山上夫婦はギンガに一礼する。

 

 

山上夫婦と分かれ、ショッピング再開した二人。

 

「まさか、ギンガが居酒屋に行くなんて‥‥ちょっと意外だな」

 

ギンガが山上さんの父親を助けたのが、居酒屋だったと言う事は彼女が居酒屋に居たと言う事なので、ちょっと意外性を感じた良馬。

 

「もしかして一人で行ったの?」

 

「いえ、ディアーチェさんとフェリシアさん、新見さんと行きました」

 

流石にギンガ一人で居酒屋へ行ったわけではなく、艦橋員メンバーの女子会で居酒屋へ行ったみたいだ。

 

「それで、新見さんが結構荒れちゃって‥‥」

 

「‥‥」

 

良馬からしてみればあの新見が自棄酒をする姿なんて想像できない。

 

「何か、『男がぁ~』 『独りだっていいだろう~』って叫びながらお酒をガブ飲みしていました」

 

「‥‥」

 

(きっと仕事やテラフォーミングをしたとは言え、地球と異なる星の生活環境でストレスが溜まっていたんだろう。うん、きっとそうだ‥‥)

 

自分なりの理由をつけ、納得して深く突っ込まない方が彼女の名誉の為なのだろう判断した良馬だった。

 

ギンガと共にショッピングをしてから数日後、まほろばの整備が終了すると、まほろばは僚艦と共にα星系第四惑星周辺のパトロールを兼ねた演習へと出た。

 

 

地球が順調にα星系第四惑星の開拓を行っている頃、バジウド星系ではガルマン帝国、東部方面軍第十八機甲師団は遂にバース星近海へと迫っていた。

 

(遂に来たか‥‥)

 

バース星艦隊旗艦、ラジェンドラ号の艦橋でラム艦長は緊張した面持ちで艦長席から前方の宇宙空間を見つめる。

 

ボローズがバース星を捨ててからも工廠では宇宙艦艇の建造が進められて来たが、短期間で宇宙艦艇がそうホイホイと建造するのは難しい。

 

ただでさえ、ボローズが逃げていく際、バース星からも技術者や軍人らが多数出て行った事もやはり影響していたので、ガルマン艦隊を迎え撃つには心もとなかった。

 

 

バース艦隊が戦場宙域へと着くと、ガルマン艦隊は長距離砲でバース艦隊へと砲撃をしてくる。

 

ガルマン艦隊の攻撃を受けバース艦隊に多数の被害が出る。

 

「ガルマン艦隊の砲撃です!!長距離砲で我が艦隊を攻撃してきます!!」

 

「味方艦に多数の被害!!」

 

「23番艦、17番艦撃沈!!」

 

「19番艦、14番艦、大破!!」

 

「反撃だ!!撃て!!」

 

当然、バース艦隊も反撃するが、ガルマン艦隊は左右に分かれ、バース艦隊を包囲しながら砲撃を加える。

 

「艦長、我が艦隊の被害は甚大です!!」

 

ガルマン艦隊の統制の取れた電撃戦にバース艦隊は翻弄され被害が大きい。

 

「まだ敗れた訳ではない!!体勢を立て直す!!」

 

バース艦隊とガルマン艦隊の初戦はガルマン艦隊に白星がつく結果となった。

 

「バース艦隊が撤退していきます!!」

 

「追撃しますか?」

 

「いや、こちらも一時後退し、陣形を立て直す。それと補給も行う。バース艦隊との戦いはまだまだ続くからな」

 

「はっ、承知しました」

 

ダゴンは陣形を整え補給を行う為に撤退するバース艦隊を追撃はしなかった。

 

 

一方、太陽の異常が出始めた地球では、太陽観光船との連絡が途絶えてから四、五日が経ち、観光船を運航する会社の方もいくら何でもおかしいと思い始め防衛軍へ通報した。

 

当初、観光船からの定時連絡が来なかったのは太陽に近いため、磁場の影響かと思われたが、流石に出発から四、五日経過しても定時連絡が無く、会社側が観光船へ連絡を入れても応答がない。

 

運航会社から観光船が遭難した可能性があると通報を受けた防衛軍は急ぎ、会社から観光船の航路データを受け取ると水星軌道へ捜索隊を派遣した。

 

その捜索隊の中にはヤマトを降りた古代の姿もあった。

 

古代は暗黒星団帝国の戦い後、ヤマト自体が北アルプスにある防衛軍のドックにて整備することになり、暗黒星団帝国戦役前に就いていたパトロール隊の部署へ戻っており、今回の太陽観光船遭難事件の捜索へ参加したのだ。

 

なお、今回のヤマトの整備に関して、地球が現在宇宙開拓を推し進めている事からヤマトには最新鋭の探査用の大型航空機、コスモハウンドが搭載されることが決まり、その改造が行われていた。

 

まほろば に関してはコスモハウンドの搭載改装をする前にα星系第四惑星の開拓団護衛任務が入り、α星系第四惑星における整備でも肝心のコスモハウンド自体がα星系第四惑星に無かったので、改装は見送られた。

 

 

水星軌道周辺では複数のパトロール艇が太陽観光船の予定航路を航行しながら何らかの痕跡が無いかを捜す。

 

やがて捜索隊が水星軌道に達すると残骸らしき破片をいくつか発見した。

 

「艇長、前方に何かの残骸があります!!」

 

「太陽観光船と関係があるかもしれない‥‥艇を止めろ。耐熱宇宙服を用意、ここからは艇ではなく、直接船外に出て捜索する」

 

「了解」

 

太陽の近くと言う事で通常の宇宙服ではなく、耐熱仕様の分厚い宇宙服を着て艇にきつく命綱をつけるとパトロール艇の船外へと出て残骸付近の捜索を行う古代たち。

 

まずはこの残骸が太陽観光船の残骸なのか?

 

それとも廃棄された衛星等のデブリなのかを確認した。

 

古代たちのパトロール艇以外のパトロール艇からも同じ様に耐熱仕様の宇宙服に命綱をつけた防衛軍軍人たちが次々と船外に出て捜索をする姿が見られた。

 

「て、艇長!!コレを見てください!!」

 

捜索をする中、古代と同じパトロール艇の乗員が何かを見つけた。

 

「どうした?」

 

古代が乗員の下へ向かってみると、そこには一つの残骸が宙を漂っていた。

 

「この残骸、文字みたいなのが書かれています!!船名の一部ではないでしょうか?」

 

「ん?こ、これはっ!?」

 

すると、残骸の一つに『太陽観‥‥』と書かれていた事からこの残骸がデブリではなく、太陽観光船の残骸である事が確認できた。

 

「‥‥やはり、この残骸は太陽観光船のモノか‥‥」

 

残骸が太陽観光船の残骸である事が確定されたことに古代は顔を歪める。

 

この状況下では生存者はとてもじゃないが、期待は出来ない。

 

「艇長‥‥?」

 

残骸を見つめながら黙っている古代に対して恐る恐る声をかけるパトロール艇の乗員。

 

「ひとまず、この残骸は艇に収容する。あと、周辺に残骸以外に被害者の痕跡や遭難の原因に繋がる手掛かりがないか引き続き捜索をする」

 

「了解」

 

生存者は期待できないが、それでも乗員・乗客のご遺体や遺品が無いかの捜索は続けられた。

 

そして、事故の原因追究の為に太陽観光船の残骸も同じく幾つか収容された。

 

ご遺体・遺品について、やはり遭難から時間が経過していた為か、それとも爆発の威力が大きかった為か、残念ながらどちらも収容するに至らなかった。

 

 

地球 メガロポリス東京 防衛軍司令部 指令室

 

「長官、太陽観光船捜索に向かった捜索隊より通信です」

 

「繋げ」

 

オペレーターが通信回路を開くとモニターに古代の姿が映し出される。

 

「古代、捜索状況は?何か手掛かりは見つかったか?」

 

「長官、残念ながら太陽観光船は水星軌道辺りで遭難したモノと判断いたします。生存者は‥居ません」

 

「そうか‥‥」

 

古代の報告を聞き、藤堂は顔を俯かせる。

 

「それで、古代。太陽観光船の遭難原因は分かりそうか?」

 

「現状では何とも言えません。現在、太陽観光船の物と思わしき残骸を収容中です。残骸を収容出来次第地球へ帰還します」

 

「うむ、分かった」

 

太陽観光船の残骸は収容出来る限りの残骸を収容し、捜索隊は地球へと帰還し、地球の技術たちの手によって遭難原因の調査が行われるのだった。

 

遭難原因はまだ調査中であるが、少なくとも太陽観光船が遭難し、乗員・乗客が全員死亡した事実は変わらない。

 

観光船の運航会社は防衛軍からの報告を受け、乗船リストから遺族へ連絡を入れる。

 

その中には当然、土門も含まれていた。

 

土門が入校している宇宙戦士訓練学校では、普段と変わらない時間が過ぎていたが、

 

「土門竜介、土門竜介訓練生は居るか!?」

 

休み時間、土門が揚羽、ティアナ、うららのいつものメンバーで駄弁っていると、教官が教室に入って来ると、土門を呼び出す。

 

「は、はい!!」

 

「土門訓練生、至急校長室へ出頭せよ。校長がお呼びだ」

 

「えっ?」

 

突然の校長室からの呼び出しを受けた土門は唖然とする。

 

「ちょっと、アンタなにしたのよ?校長室からの呼び出しなんて相当マズイ事でもやったんじゃないの?」

 

ティアナが土門に校長先生へ呼び出されるほどの何かをしたのではないかと訊ねる。

 

「い、いや、そんな事をした覚えはないぞ!!」

 

当然、土門は否定する。

 

「でも、土門だからねぇ~自分では気づかない内に何かヤバい事をやっちゃっているんじゃない?」

 

うららも訝しむ目線で土門を見る。

 

「だから、知らねぇって!!」

 

「ま、まぁ、何にせよ、校長室に行けば呼び出しの理由も分かる事だし、とりあえず行って来いよ」

 

「揚羽~お前、人の事だと思って‥‥」

 

土門は揚羽を恨めしそうに見つつも確かに彼の言う通り、校長室へ行かなければ呼び出しの理由も分からないので、ひとまず土門は校長室へと向かった。

 

 

「土門竜介訓練生!!参りました!!」

 

土門は校長室の前で自身が出頭した事を告げる。

 

「おう、入ってこい」

 

すると、中から応答があった。

 

「はっ、失礼します!!」

 

校長室の中から校長の榎本の応答を確認すると土門は校長室へと入る。

 

「土門訓練生、君は先日ご両親の旅行の見送りに行ったと担当教官から聞いたが、君のご両親が乗った観光船は太陽観光船六〇〇便で間違いないかね?」

 

「は、はい。間違いありません」

 

榎本は先日、土門の両親太陽観光へ向かった事を確認すると土門は間違いなく自分の両親は太陽観光船六〇〇便に搭乗したと言う。

 

「‥‥」

 

土門からの返答を聞き、榎本は顔を渋らせる。

 

「あ、あの‥何かあったのでしょうか?」

 

土門はそんな榎本の表情を読み取り、両親が乗った太陽観光船に何かあったのではないかと察する。

 

「‥土門訓練生‥‥君には辛い話になるが‥‥」

 

「えっ?」

 

「‥‥先ほど、太陽観光船の運航会社より連絡があった‥‥太陽観光船六〇〇便が遭難した」

 

「えっ?そ、遭難‥‥」

 

土門は榎本が何を言ったのか一瞬理解できなかった。

 

「そ、遭難って‥‥ち、父と母はどうなったんですか!?」

 

土門は榎本に駆け寄り、太陽観光船に乗っていた両親の安否確認をする。

 

「防衛軍が捜索隊を派遣したが生存者は確認できなかったらしい」

 

「‥‥」

 

榎本から両親の生存が絶望的だと聞かされ土門は膝から崩れ落ちる。

 

「‥‥土門訓練生、今日は休みなさい。教官からは私から伝えておく」

 

榎本はポンと土門の肩に手を置き、彼の心情を理解したうえで今日の講義と実技を休むように伝えた。

 

まさか、土門の両親が亡くなった事を知らないティアナたちは‥‥

 

「土門の奴、結局帰って来なかったわね」

 

「まさか本当に何かヤバい事をしたのかしら?」

 

「い、いや、土門の奴に限ってそんなことは‥‥」

 

「このまま放校処分‥‥ってことにはならないと良いけど‥‥」

 

土門が校長室へ呼び出しを受けた後、土門はこの日の講義・実技に戻ってこなかった。

 

その事実に放校処分と言う言葉がチラつく三人だった。

 

 

揚羽が寮の自室に戻るとベッドの中に土門の姿があった。

 

「土門、どうしたんだよ。あれから戻ってこなかったから心配したんだぞ」

 

「‥‥」

 

揚羽は土門に声をかけるが、彼からの返答はない。

 

「‥何かあったのか?」

 

土門の態度に揚羽は彼に何かあったのだと直ぐに察した。

 

「ま、まさかお前、本当に放校処分になったのか?」

 

ティアナやうららが冗談半分で今日、土門が校長室へ呼ばれたのは彼が何かしらヤバい事をしたせいで呼び出され、放校処分になるのではないかと言っていたが、土門の現状を見る限り彼女たちの冗談が事実だったのかと揚羽がそう思うのも無理はなかった。

 

「いや‥違う‥‥」

 

すると、土門がベッドの中から重苦しい声を出す。

 

彼がベッドに沈みながらも放校処分になったのではないと言う。

 

「‥‥じゃあ、何があったんだ?」

 

「‥‥俺の両親が‥‥‥」

 

「土門の両親?」

 

「‥俺の両親が死んだ」

 

「えっ?」

 

土門の告白に揚羽は絶句する。

 

「えっ?死んだ?どういう事だよ?この前、お前は両親の見送りに行ったって‥‥」

 

事態についていけない揚羽は困惑する。

 

「父さんと母さんが乗った太陽観光船が遭難したって‥‥運航会社から連絡があったらしいんだ‥‥」

 

困惑する揚羽に事情を伝える土門。

 

海上の遭難と異なり、宇宙での遭難は死亡率が物凄く高くその反面、生存者や遺体の発見率は極めて低い。

 

それは未来の宇宙戦士を目指している土門も揚羽も当然理解している。

 

「そうか‥‥」

 

揚羽にはこれ以上、土門にかける言葉が見つからない。

 

「明日からは‥‥何とかいつもの俺に戻るつもりだ‥‥でも、今日だけは‥‥」

 

「ああ、分かっている‥‥ただ、土門。あの二人もお前の事を心配していたから、俺から伝えるが良いか?」

 

「ああ‥‥頼む‥‥」

 

揚羽の言う『二人』とはティアナとうららの事だと土門は直ぐに理解する。

 

揚羽はティアナとうららに土門の両親の事を伝えるべく寮の部屋を後にした。

 

 

 

寮の部屋を後にした揚羽は食堂へと向かう。

 

食堂では、ティアナとうららの姿があった。

 

「あっ、二人とも」

 

「ん?ああ、揚羽」

 

「あれ?土門は?」

 

「ああ、その事なんだけど‥‥」

 

「ん?やっぱり土門に何かあったの?」

 

「それが‥‥」

 

揚羽はティアナとうららの二人に土門の両親が亡くなった事を伝えた。

 

「そう‥‥土門の両親が‥‥」

 

「それは‥何というか‥‥」

 

「あいつは明日には元に戻るって言っていたが‥‥」

 

「まぁ、アイツは変に気を使われるのを嫌いそうだけど‥‥」

 

「何か‥ねぇ‥‥」

 

ティアナもうららも勿論、土門の前で彼の両親の事を話題に出すつもりはないが、こうして彼の両親の訃報を知ってしまうと何だか複雑であった。

 

翌日、土門は確かに両親の死が無かったかのように振舞うが、やはり一人で居ると哀愁が漂っていた。

 

 

それから幾日が過ぎ、地球では太陽観光船の遭難原因の調査が進められている中、太陽の観測を続けていた地球連邦中央天文台では‥‥

 

「サイモン教授、やはり太陽の核融合数値は低くなるどころか日を追うごとに増加しています」

 

「うーむ‥‥」

 

倉田博士はサイモン教授に太陽の観測データを見せる。

 

「これは観測ミスや単なる自然現象では片付けられません」

 

「た、確かに‥‥」

 

「このまま太陽の核融合が進めば‥‥」

 

「地球を含む太陽系の危機となる宇宙大災害が起きる可能性が高い‥‥倉田博士、貴方はこのまま太陽の観測を引き続きお願いします。私はこのまま太陽の核融合が進めばどうなるのかをシミュレーションし、連邦大統領府と太陽エネルギー省、防衛軍司令部に伝えます」

 

「分かりました。サイモン教授お願いします」

 

倉田博士はあくまでも観測専門なので、この先に起きる可能性のある未曾有の宇宙災害のシミュレーションは宇宙物理学専門のサイモン教授に任せることになった。

 

サイモン教授は倉田博士から送られる太陽観測のデータを基にこのまま太陽の核融合が進めばどうなるかのシミュレーションを作り、太陽エネルギー省の責任者である黒田博士に事の次第を伝える。

 

「‥‥」

 

黒田博士はサイモン教授からもたらされた太陽の観測データとシミュレーション結果が書かれた報告書を見るが、

 

「サイモン教授。これはあくまでも仮説にすぎないのではないか?」

 

「いえ、そのようなことはありません黒田博士。これまでの太陽の観測データを見る限り、ここ最近における太陽の核融合の数値は異常です。今の内に何らかの手を打っておかなければ手遅れになる恐れがあります」

 

「しかし、相手は自然だ。太陽の全てを現時点で我々人類が解き明かした訳ではない。いたずらにデマを流しパニックを誘発するのはいかがなものかと‥‥?」

 

サイモン教授は黒田博士に現在太陽で起きている異常と将来起きる可能性がある宇宙大災害の危険性を伝えるが黒田博士はあくまでも自然現象だと一蹴した。

 

太陽エネルギー省の黒田博士に信じて貰えなかったので、サイモン教授は次に連邦大統領府にこの話を伝える。

 

大統領が信じてくれれば太陽エネルギー省もサイモン教授の話を信じられざるを得ないと思ったからだ。

 

しかし、大統領はサイモン教授の話が本当なのか太陽エネルギー省へ問い合わせをするがやはり黒田博士はその話を否定した。

 

これにより大統領を主体に対応してもらう手段を失った。

 

連邦大統領府、太陽エネルギー省がこの話を信じて貰えなかった事からサイモン教授は最後の望みをかけて防衛軍司令部の藤堂長官にこの話を持ち掛けた。

 

「ふむ‥‥サイモン教授。この話は事実なのでしょうか?」

 

「はい。かなりの確率で起きる可能性が高く、事態が判明してから対応をしても手遅れになります」

 

「‥‥」

 

サイモン教授としては藤堂がまさに最後の希望であり、彼までもがこの話を信じて貰えなければ、地球人類は滅んでしまう。

 

「分かりました。防衛軍としても手遅れになる前に対処致しましょう」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ただ、パニックを防ぐため、まだ公にすることは出来ません。内密に進めてもよろしいですかな?」

 

「はい。今は少しでも信じて貰っただけでも唯一の救いですから」

 

サイモン教授としては内密に進めると言う事で握りつぶされてしまうかもしれないと言う恐れがあったが、大統領や黒田博士より藤堂のリアクションは自分の話を信じて貰える印象があった。

 

藤堂も彗星帝国の件があったので、地球の危機に対して少しでも危険の可能性があるならば、即座に対処しなければならないと思っていた。

 

藤堂は直ぐに行動し、古代にヤマト乗員の補充の為、宇宙戦士訓練学校の学生を繰り上げ卒業させてヤマトに乗せる旨を命じた。

 

古代としては地上に移転した宇宙戦士訓練学校を訪れる事になった。

 

自分の時は、ガミラスの侵攻で地下都市に築かれた訓練校へ通っていた。

 

その訓練校の半重力ドームの中で宇宙戦闘を模した訓練が行われており、

 

「無重力遊泳隊形をとれ!!一斉射撃をしながら突撃!!」

 

教官の指示で宇宙服を身に纏った訓練生たちがコスモガンで的に向かって射撃していた。

 

その中には両親の死の悲しみをこらえて訓練に臨む土門の姿があった。

 

射撃訓練と言う事でティアナと土門の二人が好成績を叩き出している。

 

やがてすべての的が撃破されると、

 

「よーし、よくやった。反重力解除」

 

ドーム内の反重力が徐々に解除されるとドームの床に訓練生たちと教官が降りたつ。

 

「生命維持装置、コスモガンの点検はじめ!!」

 

訓練生たちは宇宙服を脱ぎ、使用した宇宙服とコスモガンの点検を行い、それが終わると訓練終了となる。

 

器具の点検が終わって訓練生たちが整列すると、

 

「これから名前を呼ぶ者は式服に着替え講堂に集合せよ」

 

教官はタブレットを取り出しそこに表示された訓練生たちの名前を呼び始める。

 

「揚羽武、土門竜介、久家賢次、矢野信一‥‥」

 

次々と訓練生たちの名前が呼ばれる中、揚羽と土門の名前は呼ばれたが、うららとティアナの名前は呼ばれなかった。

 

「一体なんだろう?」

 

「呼ばれたのは全員じゃないみたいだしな」

 

「そうね、私とティアナは呼ばれなかったし‥‥」

 

「とにかく、二人とも行ってらっしゃいよ」

 

「ああ」

 

「そうだな」

 

名前を呼ばれた揚羽と土門は急ぎ着替えて講堂へと向かった。

 

講堂へ集まった訓練生たちは何故自分たちが呼ばれたのか気になっていると、壇上に校長である榎本が姿を現す。

 

「突然の呼び出しに戸惑っているだろうが、諸君らはこの宇宙戦士訓練学校の中から特別に選出された者たちだ。本日、急遽繰り上げ卒業式を行うことになった」

 

『ええっ!?』

 

榎本の発言に驚愕する訓練生たち。

 

その時、後方の出入り口から一人の教官に案内されて古代が入って来た。

 

土門は古代の姿を見て隣に居る揚羽を腕で突っつく。

 

「おい、見ろよ。OBの古代先輩だぜ。確かヤマトの‥‥」

 

古代は榎本に迎えられ壇上へ登った。

 

「すみません。遅くなりました」

 

「いえ、ご苦労様です。さっ、こちらへどうぞ」

 

榎本は壇上の上に用意されていた来賓席へと招く。

 

「一体どういうことだ?突然の繰り上げ卒業式に来賓はOBの古代先輩だけ‥‥あまりにも妙じゃないか?」

 

揚羽がこの事態に対して違和感を覚えて土門に声をかける。

 

そこで、土門はハッとなり、

 

「‥‥なぁ、揚羽。もしかして俺たちヤマトに乗るんじゃないか?」

 

土門の予想を聞いて、揚羽はニヤリと笑みを浮かべ、

 

「そうなりゃあ願ったり叶ったりだ」

 

土門は古代の姿を見て胸の高まりを覚えた。

 

本来よりも早い訓練校の卒業にヤマト艦長代理の古代がこうして来賓として出席しているこの事態に土門がヤマト乗員の為に繰り上げ卒業式を行うのだと思うのも無理はなかった。

 

(もし、ヤマトに乗るのであるなら父さんと母さんに伝えたかったな‥‥)

 

やがて、卒業式は直ぐに終わり、講堂に集まった訓練生たちは一人ずつ校長室へと呼ばれた。

 

やがて、土門の番となる。

 

校長室には両親の件で呼び出された時に入ったが、やはり緊張する。

 

「土門竜介訓練生!!入ります!!」

 

「入れ!!」

 

土門が校長室の扉を開けると、正面の机に榎本、部屋の中心にある応接ソファに古代は座っていた。

 

土門は扉を閉め、直立不動の姿勢を取る。

 

そして、榎本が防衛軍から発行された正式辞令を読み上げる。

 

「地球防衛軍司令部からの緊急辞令を伝える。土門竜介。宇宙戦艦ヤマト乗艦を命じる」

 

「は、はい。謹んで辞令を拝命致します!!」

 

土門の予想通り、あの講堂に集められた訓練生たちはヤマトへ乗艦する者たちだった。

 

「うむ、頑張れ。土門」

 

「は、はい」

 

榎本は土門に声をかける。

 

つい、先日両親を事故で失うと言う悲劇を乗り越えこうしてヤマト乗艦になったのだから、榎本としても彼を誇りに思ったのだろう。

 

「ヤマトでの配属希望はあるか?」

 

古代は土門にヤマトの希望部署を訊ねる。

 

「はい。古代先輩と同じ戦闘班の砲術科を希望します。先輩は自分の憧れでした。お願いします」

 

土門は古代と同じ部署を希望する。

 

「‥‥よし」

 

古代は手にしたタブレットを操作し、土門に配属部署を伝える。

 

「土門竜介。生活班炊事科勤務だ」

 

土門が配属されたのは希望した部署ではなく戦闘に全く関係のない部署であった。

 

自分の配属場所を聞き、土門は自分の耳を疑い唖然とする。

 

「あ、あの‥今何と?」

 

「聞こえなかったのか?君は生活班炊事科勤務だ」

 

「な、何故ですか!?理由を教えてください!!」

 

「答える義務はない!!不服ならばヤマト乗艦を取り消しても良い。君の代わりは居るのだからな」

 

「っ!?」

 

古代から一喝され、これ以上ごねたらヤマト乗艦の話さえ取り消しにされそうだったので、土門はすごすごと引き下がった。

 

そして隣室にて、ヤマトの制服を受け取った。

 

ただし、土門が受け取ったヤマトの制服は戦闘班の赤い制服ではなく、生活班の黄色い制服だった。

 

(くそっ、なんで俺が生活班なんだよ‥‥射撃の腕だって同期の中では上位なのに‥‥)

 

生活班の黄色い制服を見ながら自分の配属先に不満を持っていた。

 

そして訓練校で集合場所とも言えるお決まりの食堂にてティアナとうららは揚羽と土門に一体何の用で呼ばれたのかを訊ねる。

 

「それで、一体何だったの?」

 

「ああ、実は‥‥」

 

揚羽が何故、自分や土門を始めとする一部の訓練生たちが呼び出しを受けたのかをティアナとうららに話した。

 

「えっ?繰り上げ卒業式?」

 

「それにヤマト乗艦だなんて‥‥」

 

繰り上げ卒業をして直ぐにヤマト乗艦の話を聞いてティアナとうららは驚く。

 

もっともティアナはヤマトにゲストとして乗艦した事があるがそれは黙っていたが、目の前の二人はあのヤマトに乗ると言う事で考え深い事だ。

 

「そう言えば、揚羽は何処の部署に配属になったんだ?」

 

土門は揚羽にヤマトの数ある部署の内、どの部署に配置されたのかを訊ねる。

 

「俺は戦闘班だ」

 

「えっ?戦闘班!?」

 

揚羽は当初、自分が希望した戦闘班に配属されたみたいだ。

 

「ああ、戦闘班飛行科だ」

 

揚羽はヤマトのコスモタイガー隊所属となった。

 

「最初に何を希望したんだ?」

 

「勿論、戦闘班飛行科だよ」

 

「それじゃあ、希望通りじゃないか」

 

「そうだよ」

 

揚羽は第一希望通りの配置だった。

 

「そういう土門はどこの配置になったんだ?」

 

揚羽が土門の配属先を訊ねる。

 

「‥‥」

 

配属先を聞かれ不機嫌そうにムスッとした顔になる土門。

 

「えっ?どうしたのよ?」

 

「変な部署にでもなったの?」

 

ティアナとうららは何故土門が不機嫌そうになったのか気になった。

 

「‥‥生活班‥炊事科」

 

忌々しそうに土門は自分の配属先を口にする。

 

「えっ?生活班‥‥?」

 

「炊事科?‥‥アンタ、随分と変わった部署を希望したのね」

 

「そうね、てっきり砲術科を希望すると思ったのに‥‥」

 

揚羽、ティアナ、うららは土門の配属先を聞いて目を点にする。

 

射撃が得意な土門の事だからてっきり砲術科だと思ったのに、戦闘とほぼ無関係な部署に配置されることに驚いたのだ。

 

「ちげぇよ。俺だって最初は戦闘班砲術科を希望したさ、でも、あのOB野郎が俺の希望を蹴って生活班にしたんだよ。しかも、嫌ならヤマトに乗らなくて良いだなんて言ってきたんだぞ!!」

 

「OB野郎?一体誰が来たの?」

 

「ヤマトの人事に関する事だから、ヤマトの関係者よね?」

 

(人事ってことは艦長代理の古代さんかしら?それとも船務長の雪さんかな?あっ、でもOBってことは男の人だから、やっぱり古代さんね)

 

「古代だよ!!古代進」

 

(あっ、やっぱり古代さんだったんだ‥‥)

 

ティアナの予想通り、今回のヤマトの人事を決めたのは古代だった。

 

納得したティアナとは反面、土門の不快指数はまさにMAX状態となりながら古代の名を口にする。

 

「てか、アンタ。料理できるの?」

 

炊事科としては不可欠である料理の腕が土門にあるのかを訊ねるうらら。

 

「ああ、土門はこう見えて料理は出来るぞ。野戦訓練で此奴が作ったカレーを食べたけど、なかなか旨かったからな」

 

揚羽が二人に土門は料理上手だと教える。

 

「「へぇ~」」

 

揚羽から土門の料理の腕前を聞いたティアナとうららは意外そうな顔をする。

 

「まぁ、俺の両親は共働きだったからな、必然的に料理の腕が上手くなったんだよ」

 

一応、土門は自分の料理の腕前は人並みに出来るので炊事科勤務になっても問題ではないと答える。

 

「でも、繰り上げ卒業ってことは揚羽も土門も今日で此処を出て行くってことよね?」

 

不快指数MAXな土門とは裏腹にティアナは冷静に繰り上げ卒業の意味を口にする。

 

「あっ‥‥そう言えばそうね。そう思うと何かこの後の学生生活がつまらないと言うか、競いがいが無くなると言うか‥‥」

 

ティアナもうららも土門と揚羽が居なくなると思うとつまらなそうな様子だった。

 

ティアナの場合途中編入なので、いくらパルチザン活動をしていたとは言え、やはり経験の少なさから今回の繰り上げ卒業から除外され、うららの場合は成績に関係していたのかもしれない。

 

「でも二人にしては良いハンデなんじゃない?せいぜいヤマトでしごかれてらっしゃい。私たちが宇宙へ上がった時に失望はさせないでよね」

 

「そうね。土門も揚羽も意外と抜けている所があるからね。私たちが士官になっても下士官か兵だったら、私たちの下でこき使ってあげるから」

 

ティアナとうららは揚羽と土門に発破をかける。

 

「ほざけ~逆に俺がお前らより先に艦長になって、お前ら二人をこき使ってやるぜ」

 

二人の発破を受け、土門の不快指数は下がり、逆に不敵な笑みを浮かべる。

 

将来の夢を語り合う若き宇宙戦士たち‥‥

 

しかし、この四人が揃う事は今後なく、今日が最後であるとはこの時、四人の誰もが知る由も無かった。

 




アニメの場合、尺の関係で物語の展開が早く描かれていますが、実際は星と星の間の航行は波動エンジンとは言え、それなりに時間がかかるので、ガルマンガミラスを出発したジュラがまだ地球圏に到着していなくても変ではない筈‥‥

ジュラが地球圏へ到着する前に色々とやることがあると言うのもあります。


【挿絵表示】


そのジュラのイラストを作りました。

PS版ではジュラの中の人を井上 喜久子さんが勤めましたが自分の作品のジュラはややはっちゃけた印象があるので、自分はジュラの中の人を雪野五月さんでイメージしながら製作しています。
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