星の海へ   作:ステルス兄貴

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地球側の視点が多くなりすみません。

ただ、太陽の異常が進んでいる地球が現在の所主体なのでこうした視点になりました。


百四十二話 土門ヤマト着任

 

 

太陽にて、異常な核融合の数値が観測され、その現象を危惧した地球連邦中央天文台の所長である倉田博士と地球連邦大学宇宙物理学部長のサイモン教授は観測データを集め、サイモン教授は太陽エネルギー省と連邦大統領府へ直訴するが一蹴されてしまう。

 

サイモン教授は最後の望みをかけて防衛軍司令長官の藤堂へこの話をすると、藤堂はサイモン教授の話を前向きに捉え対策を取ってくれた。

 

藤堂は古代に宇宙戦士訓練学校の一部の訓練生らを繰り上げ卒業させて、ヤマト乗員の補填に当てた。

 

宇宙戦士訓練学校にて、一部の訓練生たちを繰り上げ卒業させ、ヤマト乗員の補填に当てた古代はそのまま宇宙戦士訓練学校から防衛軍司令部へと向かった。

 

古代が司令部に戻る頃には既に日は落ちて夜となっていたが、地球の宇宙防衛を要とする司令部には明かりが灯っていた。

 

その司令部では自身の婚約者である雪が古代を待っていた。

 

暗黒星団帝国戦役後、雪は長官付き秘書官の役職に戻っていた。

 

「雪、藤堂長官に取り次いでくれ」

 

「はい」

 

雪は長官室に入り、

 

「長官、古代進が戻ってまいりました」

 

「そうか、入れてくれ」

 

雪と入れ替わりに古代が長官室に入ると藤堂は窓の外に広がる夜景を見ていた。

 

「長官、ヤマト乗員の補充は完了しました」

 

「うむ、ご苦労」

 

藤堂は長官室の自分のデスクに座ると机の引き出しから一枚の紙を取り出すと古代へと手渡す。

 

「古代、君に当てた辞令だ」

 

古代は一礼して受け取るとそこに書かれていた内容に目を通す。

 

「古代進、ヤマトの艦長を命ず‥‥艦長!?私が!?」

 

その辞令には古代を正式にヤマトの艦長へ昇進する旨が書かれていた。

 

古代はその辞令内容を見て驚く。

 

(月村さんもこんな気分だったのだろうか?)

 

古代が知る艦長は、ヤマトの初代艦長である沖田艦長、かつての恩師であり連合艦隊総司令兼アンドロメダの艦長を務めた土方、巡洋艦すくねの艦長であった三木、春藍艦長の山南、そして まほろば の艦長である月村の五人であり、年齢的にも近い良馬の姿が脳裏を過る。

 

「古代。君はこれまで数々の航海に艦長代理として充分にその責務を果たした。今後のヤマトの扱いに関しては若いながらも経験のある君が適任だと私は判断した。人間、何をやるにしても苦労と経験はつきものだ。一つ頼んだよ」

 

「はい」

 

「次に君を補佐する人物を紹介しよう。ヤマトの副長を入れてくれ」

 

藤堂はインターフォンで長官室の外に居る雪にヤマトの副長を入室するように言う。

 

古代は一体誰がヤマトの副長になったのか気になり、扉へ目を向ける。

 

すると、長官室に入って来たのは真田と島の二人だった。

 

「島、真田さん!!」

 

「古代、艦長就任おめでとう」

 

「おめでとう」

 

「ありがとう。しかし、お互いえらい事になってしまったな」

 

古代としては知らない人物がヤマトの副長になるよりもこうして最初のイスカンダルの航海から自分と共にヤマトに乗っていた島と真田が副長になったことに内心ホッとしていた。

 

通常、艦の副長は一人なのだが、古代の若さから今回、島と真田の二人の副長体制と言う形になったのかもしれない。

 

「よろしく頼む。今度のヤマトの航海はことに重要なのだ」

 

「ヤマトの今度の航海と言いますと?」

 

ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国の様に地球は外宇宙からの侵略を受けている訳ではない。

 

かと言って、雷王作戦・第二次イスカンダル遠征の時の様に正規の時期の宇宙戦士訓練学校の卒業生を受け入れた訳ではなく、今回は卒業を繰り上げてまで乗員を補充したからには何かしらの理由があるのだろう。

 

「三人ともこっちへ来てくれ」

 

藤堂は古代たち三人を隣接する応接室に案内した。

 

応接室には倉田博士とサイモン教授の姿があった。

 

「紹介しよう、地球連邦中央天文台所長の倉田博士と地球連邦大学宇宙物理学部長のサイモン教授だ。倉田博士は以前、白色彗星の針路観測を行った経緯がある」

 

「あの白色彗星を‥‥」

 

古代たちは倉田博士とサイモン教授に会釈を交わした後、自己紹介をして席に着く。

 

そこに雪がファイルを手に持ってやって来ると古代たちにファイルを手渡す。

 

「よろしいですかな?倉田博士、サイモン教授」

 

「はい、大丈夫です」

 

「用意は出来ています」

 

「では、よろしく頼みます。雪、君も聞いていってくれ。君もいずれヤマトに乗艦するのだから」

 

藤堂の発言から次のヤマトの航海時に雪は長官付秘書からヤマトの船務長に復帰するみたいだ。

 

「はい」

 

雪は古代の隣に座ると室内の明かりが消え、スクリーンに太陽の映像が映し出される。

 

「先日、太陽の観測をしていた最中、私は太陽の核融合の異常な数値を観測しました。そこで知人であるサイモン教授に連絡を入れ、教授と共に太陽を観測しておりました」

 

「異常な数値と言いますとどのくらいなのでしょうか?」

 

真田が質問すると、

 

「此処に太陽の観測データがあります」

 

倉田博士が端末を操作すると、スクリーンにはこれまでの太陽の観測データの数値とグラフが表示される。

 

すると、三週間前のある日を境に数値が異常に膨れ上がっていた。

 

「これはっ!?」

 

「数値が物凄く跳ね上がっている‥‥」

 

「もし、このまま太陽の核融合が進めばどうなるんですか?」

 

古代が倉田博士に質問する。

 

「そのシミュレーションはサイモン教授が作成してくれました」

 

「私の計算によれば、このまま太陽の核融合が進めば地球上に生物が生存できる期限はあと一年‥‥三年後には太陽が超新星化して爆発、地球を含めた太陽系内の惑星をすべて道連れにしてこの宇宙から消滅します」

 

「なっ!?」

 

「そんなっ!?」

 

「あと一年で!?」

 

スクリーンには一年後の地球、そして三年後の太陽系のシミュレーション映像が映し出される。

 

その姿はまさに灼熱地獄の様な光景が映し出される。

 

「本当にこんな大災害があと一年後に起きると言うのですか?」

 

古代が倉田博士とサイモン教授に訊ねると両者は確信めいて頷く。

 

「‥‥」

 

二人のリアクションからスクリーンのシミュレーション映像は決してフィクションではなく、未来の出来事なのだと思い知らされる。

 

「私は報告書を纏め、太陽エネルギー省と大統領府を訪れ事の重要さを説明しました。しかし、太陽エネルギー省の黒田博士は『単なる自然現象』だと片付け、大統領も黒田博士の説を信じて私の話を信じていません」

 

「大統領としても地球の危機なんて話を信じたくはなかったのでしょうな」

 

外宇宙からの侵略ではなく、太陽が突如超新星化して太陽系があと三年で滅亡するなんて話をされても信じ難い事なのだろう。

 

「しかし、私も倉田博士もこの仮説には確信がありました。故に私は藤堂長官にもこの話をして、本日倉田博士と共に皆さんに集まって頂いた次第であります」

 

「太陽の核融合増進制御に関して、私とサイモン教授と共にいくつかの制御方法を考えてみましたが、絶対に成功する確証が残念ながらありません」

 

「太陽と共に地球と太陽系内の惑星が破滅するという最悪のシナリオによって、人類絶滅を回避するとしたら、第二の地球を探し当てるしか方法はありません」

 

倉田博士とサイモン教授が事態の説明を終えると一同は配られた資料に目をやる。

 

「サイモン教授からこの話を聞かされた時、私は即座に決断した。人類が地球上で生存できる期間が僅か一年‥いや、正確には十一か月と一週間しかない。連邦政府の判断が誤っていたとしたら時間が足りず、第二の地球探査が間に合わないかもしれない。そこで私は独断でヤマトを第二の地球を探査する特務艦として派遣したい」

 

藤堂の決断を聞き、古代は訓練校の訓練生たちを繰り上げ卒業させてまでヤマトの乗員として補充した訳を理解した。

 

事態は最初のイスカンダルへの航海と似ているが、今回の航海と最初の航海の違いは地球がもう助からない事が前提となっている事だ。

 

「分かりました。長官」

 

藤堂の説明を聞き、古代は頷く。

 

「真田君、ヤマトの改修工事はあと何日かかるかね?」

 

「あと、四週間いただきたいと思います」

 

「駄目だ。あと二週間でやってくれ。多少の作業は航行しながらやってくれないか?」

 

「分かりました」

 

「第二の地球探査ですが、何かしらの条件はあるのでしょうか?」

 

島が倉田博士とサイモン教授に質問をする。

 

「勿論、第二の地球というわけですから、太陽と同じ様な恒星がある事、惑星自体が地球と同じ大きさと重力であり、大気の組成も当然地球と同じでなければなりません」

 

倉田博士が第二の地球となる惑星の条件を説明する。

 

「距離に関しても条件があります」

 

「と、言いますと?」

 

追加でサイモン教授が地球から第二の地球となる惑星の条件の中に距離の問題もあると言う。

 

「銀河系星雲は直径十万光年、厚さ三万光年の星の集合体です」

 

サイモン教授が端末を操作するとスクリーンに銀河系の映像が映し出される。

 

「遠くから見ればその形はレンズ状ですが、細かくは渦巻きの形になっています。この渦の流れには一つ一つ名前がついています。地球を含む太陽系は銀河系の中心から三万光年の位置、オリオン腕と呼ばれる星雲の中にあります。移住用の避難船を建造したとしてその航続距離は一万五千光年しかないと推定されます」

 

連邦政府が倉田博士とサイモン教授の説を信じた頃には太陽の異常が進んでおり、急いで避難用の移民船を建造したところで、建造できる船の数は限られているし、急ごしらえで建造した船の性能何てたかが知れているし、第二の地球と地球との往復時間も考慮しなければならない。

 

サイモン教授はそれらの要素を計算にいれて建造できた移民船の航続距離を一万五千光年程であると距離に関しても制限がある事を説明する。

 

「航続距離が最大で一万五千光年か‥‥」

 

「はい。そこで、第二の地球探査は地球を中心に半径一万五千光年の球形の範囲に限られます。更に太陽の超新星化に伴うハイパーノヴァの影響外でなければなりません」

 

スクリーンには第二の地球探査の範囲が表示される。

 

半径一万五千光年と言う制限があるもののやはり広大な空間であることに変わりない。

 

「ヤマトら戦艦のようなエンジンは無限に近い航続距離がありますが、この範囲外に第二の地球になりえる惑星が見つかったとしても一年以内と言う時間内では移民船の航続距離と時間の関係上、人類の移住には間に合いません」

 

「第二の地球探査は限られた時間内で限られた範囲を有効に使い出来るだけ多くの星を探査する必要があります。星が多く存在するのは銀河系の周外ではなく、銀河系の中心部方向です。夜空に見える天の川と呼ばれる白い川のような流れがあります。これは無数の光輝く星が重なり合って光の川のように見えるもので、つまりこの方向に向が銀河系中心部と言う訳です。ヤマトは天の川を目指し、天の川の中を一万五千光年の範囲にわたって第二の地球となりえる惑星を探査していただきたい」

 

倉田博士とサイモン教授がヤマトの捜索範囲を古代たちに説明する。

 

古代、真田、島、雪たちは事の重大さを理解し顔を見合わせる。

 

(またしても地球の危機か‥‥しかも今度は侵略者ではなく自然が相手‥‥)

 

(別の意味で今度の航海は責任重大だな‥‥)

 

侵略者相手ならば、その侵略者と戦えばいいのだが、今度の相手は太陽と言う自然が相手‥‥

 

太陽相手に戦いようがないが、それでも人類存亡の危機には変わらない。

 

藤堂の言う通り、今度のヤマトの航海は重大である事に変わらない。

 

 

翌日

 

島は早速、ヤマトの航海計画を立てつつ新人の出迎えの為、真田はヤマト改装の為、北アルプスのドックへと赴き作業を指揮している。

 

そんな中、古代と雪の姿は司令部内のレストランにあった。

 

「古代君、ヤマト艦長就任おめでとう」

 

雪からヤマト艦長の祝福を受ける古代であるが、心境は複雑である。

 

「ありがとう‥‥って言うべきなのかな?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、俺に艦長なんてやれるのかどうか‥‥」

 

「大丈夫よ。古代君はこれまで艦長代理として地球を救ってきたじゃない」

 

「だがな、今回の航海はこれまでの航海と違う‥‥それに第二の地球を探すとなると船務長の雪にも頑張って貰わないといけない‥‥データの調査は機械でやれるけど、最後は直接人が降りて判断しなければならない‥‥頼りにしているよ、雪」

 

「ええ、頑張るわ。だから古代君も頑張ってね」

 

「あ、ああ」

 

二人は手を握って見つめ合った。

 

 

ヤマト乗艦の為、訓練校を繰り上げ卒業した元訓練生たちは手早く準備を整えると北アルプスドックで整備されているヤマトへと続々と集合する。

 

その中には土門の姿があった。

 

「ヤマトか‥‥」

 

望んだ部署ではなかったが、こうして念願のヤマトへ乗艦できる事実から複雑そうにヤマトを見上げる土門。

 

船体側面にあるタラップからヤマトへ上げるとそこには乗員名簿を手にした島が待っていた。

 

「よし、次!!」

 

「土門竜介、着任しました!!」

 

「ふむ、土門竜介‥‥君は生活班所属だな‥アナライザー、船務長の所へ案内してやれ」

 

島は隣に居たアナライザーに土門の案内を頼む。

 

「リョウカイ。オイ、コッチダ。ツイテコイ」

 

ロボットであるアナライザーに上から目線で言われたことに土門はムッとするが、これから自分の上官である船務長に会うことになるので、土門は黙ってアナライザーについていく。

 

ヤマトの艦内は急ピッチで出航に向けての準備が進められており、土門よりも先に着任した乗員たちが慌ただしく動いていた。

 

 

土門がヤマトの艦内を歩いている頃、訓練学校では‥‥

 

「そろそろ土門と揚羽がヤマトに乗艦して居る頃か‥‥」

 

「そうね‥‥」

 

ティアナとうららは訓練校にて、土門と揚羽の二人がヤマトに乗り込んでいる頃かと思いふけっていた。

 

「うららはやっぱり訓練校を卒業したらヤマトに乗りたい?」

 

ティアナはうららに訓練校を卒業したら、やはり土門や揚羽の様にヤマトへ乗艦したいかを訊ねる。

 

「うーん‥‥私としてはあまり気にした事はないかな」

 

「えっ?そうなの?」

 

「そう言うティアナはどうなの?やっぱりヤマトに乗りたい?それとも司令部やどこかの基地勤務を希望?」

 

うららは逆にティアナが将来乗りたい艦を訊ねる。

 

「そうね‥‥もし、乗艦するならうららの言う通りヤマト か まほろば かな?」

 

ティアナは乗艦経験があるヤマト か まほろば に乗艦したいとうららに伝える。

 

「へぇ~ まほろば なんて結構マイナーな艦をチョイスするわね。でも、まほろば もヤマトに似ていたわね」

 

うららとティアナが談笑していると、ティアナはある事を思い出す。

 

(あっ、そう言えば土門は生活班所属だったわね‥‥と言う事は、アイツの上官は雪さんになるけど、アイツ大丈夫かしら?)

 

土門の上官が女性の雪である事を知った時、すんなりと受け入れるのかと疑問に思った。

 

そして、ティアナの疑問は今まさに的中しようとしていた。

 

 

その頃、ヤマトでは、

 

「船務長、新人デス」

 

アナライザーが船務長‥つまり雪の部屋に土門を案内してきた。

 

「どうぞ」

 

雪が入室を許可するとアナライザーと土門は船務長室に入る。

 

そして、雪の姿を見た土門は一気に不機嫌になる。

 

「船務長って女じゃないか!?ヤマトに乗っても俺は女の下で働かされるのか!?」

 

望んだ部署ではない部署へ配属され、更に上官が女性である事に土門は思わず怒声を上げる。

 

「コノ野郎、女デ悪イノカ!?女ノ何処ガ悪イ!?女性蔑視ヲスルナ!!謝レ!!ユキサンニ謝レ!!」

 

雪loveなアナライザーは土門の発言にブチ切れ彼に掴みかかる。

 

「うるせぇ!!ポンコツ!!」

 

土門がアナライザーを突き飛ばすと、アナライザーは器用に起き上がり、

 

「ヤルカ!?コノ野郎!!」

 

アナライザーもロボットながら不機嫌そうな電子声を出し、両者は一触即発状態となる。

 

そこへ、

 

「待て、その喧嘩は俺が買おう」

 

土門とアナライザーの怒声を聞きつけた古代が雪の部屋の前に居た。

 

「えっ?古代君?」

 

土門とこれから喧嘩をするという古代に雪は目を白黒させる。

 

「元々そいつは俺に腹が立っている様だからな。殴りたければ殴らせてやろう。ただし、俺も黙って殴られるつもりはない」

 

「こっちこそ望むところだ」

 

希望部署ではなく、しかも女性である雪の下で働く羽目になった原因の古代が殴らせてやると言うのだから土門にとっては願ったり叶ったりだ。

 

「良いだろう。だが、此処ではダメだ。場所を変えるぞ、ついて来い」

 

流石に雪の部屋で殴り合いをするわけにはいかないので、古代と土門は広く邪魔の入らないヤマトの艦首上甲板へと場所を変えた。

 

ヤマトの艦首上甲板では、古代と土門が合図も無しに殴り合いを始める。

 

そこには上官、部下の関係も無く、互いに一人の男同士として殴り合う。

 

やがて、クロスカウンターが決まり古代も土門も甲板上に大の字で倒れる。

 

二人ともボロボロで息も絶え絶えの状態だ。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥強いな‥お前‥‥」

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥先輩の方こそ‥‥」

 

二人の殴り合いは引き分けと言う形になった時、雪と共に二人の殴り合いを見学していたアナライザーのメーターがチカチカと点灯すると突然倒れた。

 

「ピ‥ガガガガガガ‥‥」

 

ドサッ

 

 

「アナライザー!?どうしたの!?」

 

突然倒れたアナライザーに声をかける雪であったが、アナライザーからの返答はない。

 

更に異変はアナライザーだけではなく、近くの森からは突如沢山の鳥たちが鳴きながら飛び立つと崖や木に体当たりをすると言う奇妙な行動を取り始めた。

 

「艦長、此処だったのか?」

 

「真田さん、これは一体‥‥?」

 

「世界規模で電波障害が起き始めた」

 

「電波障害?」

 

「ああ、やはり太陽が原因かもしれない。すぐに収まるだろうが、アナライザーは点検が必要だ。ひとまず工作室へ運ぶ」

 

真田は近くにあった台車へアナライザーを乗せると工作室へと運んだ。

 

この電波障害はヤマトが停泊している北アルプスドックだけではなく、真田の言う通り世界規模で起きており、海鳴市の月村邸でも、

 

「‥‥」

 

「ノエル?ちょっと、ノエル、どうしたの!?大丈夫?」

 

「ハッ!?忍様、私は一体‥‥」

 

ノエルがボォ~っとしてしまう現象が起きた。

 

 

「サイモン教授の説‥‥本当みたいね」

 

「残念ながら‥‥」

 

出来ればサイモン教授の説が外れて欲しいと願ったが突如起きた世界規模のこの電波障害を見て、古代も雪もサイモン教授の仮説が正しく、人類に残された時間がもう一年切っている事に今回のヤマトの航海の重要度を改めて認識させられた。

 

電波障害が収まり、古代と土門は先ほど殴り合いをしていた艦首上甲板にて、夕陽を見ていた。

 

そんな中、古代は土門に語り掛ける。

 

「俺はお前に謝らなければならない」

 

「えっ?」

 

「太陽観光船の事故の後、俺は遭難者の捜索へ向かったのだが、君のご両親のご遺体も遺品も見つける事が出来なかった」

 

「先輩が俺の両親を‥‥知りませんでした」

 

「ご両親はあの太陽で永遠の眠りについたのだろう」

 

「‥‥」

 

「よく見ておけ、土門。今は美しいがあの太陽では恐ろしい事が起きている。今度の航海ではヤマト皆の力を合わせて立ち向かわねばならん‥‥お前は砲術科志望だったな?」

 

「はい」

 

「大砲撃ちの道は険しい。苦労して、どん底から這い上がってこい!!俺はそんなお前を待っている!!」

 

「はい」

 

古代はガッシリと励ますように土門の肩を掴んだ。

 

古代が土門をこうして目をかけているのは彼の境遇が似ている事に共感した為なのかもしれない。

 

 

太陽系の太陽に異常が起き、地球を含む太陽系が徐々に破滅へ進んでいる中、ケンタウロス座では、まほろば が第四惑星防衛艦隊と共に演習を行っていた。

 

第四惑星防衛艦隊はフェイトとヴィヴィオを管理局の艦に送り届けに行く中、まほろばを護衛していた彗星帝国の鹵獲艦を中心とした鹵獲艦隊(通称:ホワイト艦隊)であった。

 

改装したとは言え、元々は異星人が建造した艦なので、地球人である防衛軍軍人が手足の様に扱いきるには時間と訓練が必要だった。

 

前衛の鹵獲駆逐艦、ホワイトパイカー級が射撃の的のアステロイド帯へ砲雷撃を行う光景を まほろば の艦橋で見つめる艦橋員一同。

 

「駆逐艦クラスであるだけあって、機動力は防衛軍の駆逐艦と同等ですね」

 

新見がホワイトパイカー群の動きを見ながら呟く。

 

「うん。乗員たちも段々と扱いに慣れてきているな」

 

良馬もホワイトパイカー級に乗っている乗員たちの練度が上がっている事を実感できる。

 

「でも、主砲の連射速度で言うとやはり改装前の回転式砲塔の方が早い気がします」

 

砲雷長であるフェリシアがホワイトパイカー級の射撃速度に関して、改装前のククルカン級襲撃型駆逐艦の方が上だと感じていた。

 

「確かに砲雷長の言う通り、射撃速度、連射速度に関しては改装前の回転式砲塔の方が早いみたいだが、どうも回転式砲塔は扱いが地球人には難しいみたいだ」

 

鹵獲艦を改修した時、防衛軍はまだ彗星帝国の残党軍との戦闘が続いている中で、取り扱いが難しい武器よりも多少のレベルが下がっても使い慣れている武器を使用して、少しでも早く戦線投入た方が良いとの判断で鹵獲艦は装備していた回転式砲塔を全て撤去して、防衛軍が使用していた砲身付きの砲塔が採用されてソレを搭載している。

 

「ミサイル艦の艦首にあるバカでかいミサイルも今の地球人には過ぎた代物だ。だからこそ、外見だけはそのままにしてミサイル機能を外し、レーダー機能にしたからね」

 

まほろば の隣を航行している鹵獲ミサイル艦であるホワイトランサー級をチラッと見る良馬。

 

ホワイトパイカー級が砲雷撃をくわえた後、ホワイトスカウト級の空母から発艦したコスモタイガーが近接戦をアステロイド帯相手に行う。

 

コスモタイガーの扱いに関しては元々防衛軍の機体なので、問題なく使用でき、ホワイトスカウト級に関しても一応、防衛軍には空母と呼ばれる艦種も存在するので、ホワイトスカウト級に関しては他の鹵獲艦よりもスムーズに使用出来ている。

 

「でも、あのホワイトスカウト級が、防衛軍が保有した初めての純粋な空母じゃないかな?」

 

良馬がホワイトスカウト級についての意見を述べる。

 

「えっ?ですが、防衛軍でも空母は保有していますよ」

 

ギンガが防衛軍の空母について意見を言うと、

 

「いや、これまでの防衛軍の空母はドレッドノート級を改装したモノだから、あれは純粋な空母と言うよりも戦艦空母の部類に入るんじゃないかな?」

 

「しかし、防衛軍が保有した純粋な空母が彗星帝国からの鹵獲艦とはなんともねぇ~」

 

永倉が空母に関して複雑な感じに言う。

 

「まぁ、防衛軍はこれまで純粋な空母を保有していなかったから、ホワイトスカウト級を基に今後、純粋な空母を建造していくかもしれないな」

 

「鹵獲艦と言えば、先日畝傍が見つけた彗星帝国の潜宙艦‥あれはどうなったんですか?」

 

次にギンガが先日、フェイトたちがミッドへ帰還した後、当時護衛でまほろばに同行し、管理局の関係者と帰国手続きをしている最中、周辺宙域を哨戒していたパトロール艦、畝傍が漂流していた彗星帝国の潜宙艦を発見し、それを地球まで回航した。

 

地球へ回航された潜宙艦は技術調査されるが、次元潜行技術は地球でも全くの未知の領域だったので、調査に参加した真田でも早々に結論は出せなかった。

 

「まだ、調査中らしい‥‥でも、次元潜行技術が確立されれば防衛軍でも次元潜行艦を保有することが出来るだろうね」

 

イスカンダルからもたらされた波動エンジン、ガミラスからもたらされた連続ワープ機関、そして彗星帝国の鹵獲艦、これらを防衛軍は‥‥地球人は、自分たちが扱えるように改良し、それを扱えるように努力してきた。

 

真田も良馬もいつかは防衛軍‥地球も次元潜行能力を有する事が出来ると信じていた。

 

 

地球では、太陽の異常が起き、ケンタウロス座では まほろば を含むホワイト艦隊が演習している中、ミッドチルダでは‥‥

 

此処で視点はミッドチルダへと変え、時間は少し過去に遡る‥‥

 

 

マスコミとの協定までに査察部‥もとい、本局の一部の局員たちは何としてでもフェイトからもう一つの地球の情報を得ようとするもそれは徒労に終わり、とうとうマスコミとの協定解禁の日を迎えてしまった。

 

時空管理局本局・第一会見所

 

そこでは、フェイトの帰還を受け、テリオスの遭難事件の経過報告を兼ねた記者会見が行われている。

 

管理局側の出席者はフェイト、リンディ、はやて、に次元航行本部の幕僚と本局広報部の局員が同席したのだが、案の定、会見に先立ち、もう一つの地球と防衛軍関係の質問は受け付けない旨の通告があった。

 

防衛軍について、もう一つの地球での生活、魔法のことが露見したか等、重要事項を質問できないことに当然マスコミからは不満の声は上がった。

 

しかし、管理局側は肝心なもう一つの地球の座標さえ把握していなかったので、マスコミへ正式発表できる段階ではないとの理由説明がなされたが、これはこれで当然な措置と言えよう。

 

管理局が握っているもう一つの地球の情報で、向こうの地球の大気圏全体がAMFならぬAMAのため、AAランクの魔導師ですら無力化される上にオーバーSランク魔導師も大幅に力を減殺されるという事で管理局魔導師にとっては地獄同然の環境である事、

 

防衛軍が保有している主力戦闘機は宇宙空間から大気圏内まで連続して運用できる事、

 

地球防衛軍の戦艦一隻の通常火力が推定ながらも管理局のアインヘリアル三基分を超え、決戦兵器たる波動砲の破壊力に至っては、アルカンシェルの十倍とも百倍とも推定される凶悪極まる戦闘力を持っている等が明らかになろうものなら、管理世界の住民に無用な動揺を与え、管理局への不信感を招きかねない。

 

ただでさえ、ボラーへの武力制裁失敗の尾を未だに引きづっている管理局ならば猶更、もう一つの地球の情報をマスコミへそう簡単に流すわけにはいかなかったのだ。

 

 

会見の様子はテレビ中継されており、フェイトやはやてが出ると言う事で、教導隊の宿舎にて、なのはとヴィヴィオもその様子をテレビで見ていた。

 

「うわぁ~フェイトママ、すごくがまんしているね」

 

「そ、そうだね」

 

テレビ画面の向こう側に居るマスコミからの質問に言葉を選びながら答えるもう一人の母親の姿を見ながらヴィヴィオはボ〇太くん人形を抱きしめながらそう評し、親友が見た目とは裏腹な激情家である事を誰よりも知っている彼女の養母も、同感とばかりに頷きながら、テレビ画面の向こう側の親友の姿を見つめる。

 

もう一つの地球を知り、その世界を体験してきたのはフェイトただ一人なので、マスコミの質問が過熱するのも無理はない。

 

一応、防衛軍軍人と直接接触したリンディとはやてにも質問が飛ぶが、フェイトとの比ではない。

 

フェイトの笑顔が明らかに引き攣っており、彼女が相当我慢している事がテレビ画面越しながらも窺える。

 

フェイトの記者会見を見ながら、なのはの脳裏には、もう一つの地球に居るとされる平行世界の自分の子孫である紅葉ともう一つの地球に敢えて残ったティアナの姿が脳裏を過る。

 

とはいえ、なのはがもう一人の自分の子孫や元教え子と対面するには、クリアしなければならない問題が山積している

 

これまでもう一つの地球に滞在中で会った時のフェイトとの交信で武力衝突なんて事になれば、管理局側が手痛い損害を喰らうのは目に見えている。

 

通常空間での艦船同士の戦闘では話にならない。

 

単艦でも高い戦闘力を持つ地球艦は当然艦隊運用もでき、アルカンシェルの射程外から一方的に撃ち減らされる上、地球の艦載機は対艦攻撃もでき、単独で大気圏に突入し、戦闘を続行できる。

 

いくらシールドやバスター魔法が使える自分でも光速や音速の飛行物体を撃ち落すなんて芸当は難しい。

 

シューターを無差別にばら撒けば、運よく当たるかもしれないが、それでは味方にも当たってしまうだろうし、なにより向こうの世界での戦闘を行えば、かの世界に充満しているAMAで大半の魔導師は無力化され、高ランク魔導師も大幅な能力ダウンは避けられず、並の魔導師と大差ない能力しか出せない。

 

反対に向こうは非魔導師ながらも拳銃を含めてレーザーガンが標準装備だ。

 

亜光速で飛んでくる対人レーザーはほぼ回避不可能で、これまで拳銃弾には通用してきた魔導師の防御障壁やバリアジャケットも対人レーザーに通用する保証はないし、障壁やバリアジャケットを展開する前に狙撃されたらどうにもならない。

 

それは当然、向こうの世界で滞在していたフェイト自身も理解している。

 

だからこそ、管理局がもう一つの地球に手を出さない様にとあれこれ手を打っていた。

 

やがて、本局広報部の局員が、

 

「お時間になりましたので、以上で記者会見を終了させていただきます」

 

時間と言う制限で記者会見を強引に打ち切った。

 

マスコミたちはまだフェイトに質問がしたいのか不満げに『もう少し‥』などと言っているが、フェイトたちはそれは無視して会場を後にした。

 

「ふぅ~‥‥」

 

会場を後にしたフェイトは一息つく。

 

「お疲れフェイト」

 

「お疲れ」

 

そんなフェイトにリンディとはやてが労いの声をかける。

 

「全くだよ。あぁ~疲れた~」

 

マスコミとの協定が解禁されたことでようやくうっとおしい査察部からの監視からも解放され、やっと面倒事から解放されたと疲れながらも解放感を感じるフェイト。

 

そこへ、なのはから通信が入る。

 

「お疲れ様、フェイトちゃん。記者会見、見たよ」

 

「あぁ、なのは‥‥」

 

「フェイトちゃん、随分と我慢していたね」

 

「ホントだよ。今日はもうはっちゃけたい気分」

 

「ほんなら、居酒屋にでも行く?」

 

はやてがフェイトを居酒屋へと誘う。

 

「うん、行く」

 

「なのはちゃんもどうや?」

 

フェイトは居酒屋へ行くと言うので、はやてはなのはも誘う。

 

「うーん‥でも、ヴィヴィオが居るし‥‥」

 

なのはとしてはヴィヴィオが居るのでおいそれと夜間に外出は出来ない。

 

かと言って自分たちが今いるのは教導隊の宿舎なので、そこでどんちゃん騒ぎをするわけにもいかない。

 

「それなら、シャマルとザフィーラを向かわせるで」

 

なのはが来たいと言うのであるならば、はやてはヴィヴィオの下にシャマルとザフィーラをベビーシッターとして派遣すると提案する。

 

「そ、それじゃあ‥‥」

 

シャマルとザフィーラにすまないと思いつつも、なのは自身フェイトとはやてと会って女子会をしたかった。

 

なのははヴィヴィオに説明をして、今日の夜、久しぶりにフェイトとはやてとの夜の女子会に参加した。

 

女子会と言っても居酒屋なのがやや色気が無い気もするが、本人たちが楽しければ良いのだろう。

 

「すみませーん!!ジョッキお代り!!」

 

「はいよ!!」

 

「フェイトちゃん、飲み過ぎだよ……」

 

「せやな‥‥ピッチが速すぎるで、フェイトちゃん」

 

なのはとはやてはフェイトに飲み過ぎだと注意するが、

 

「飲まなきゃやってらんないよぉ~査察部のゴキブリ野郎どもが今日まで付き纏ってホント、迷惑だったんだから」

 

「「‥‥」」

 

フェイトの口からまさかの発言になのはとはやてはドン引き。

 

(フェイトちゃん、相当ストレスが溜まっていたんだね‥‥)

 

(まさか、あのフェイトちゃんが此処まで荒れるなんて珍しいな~)

 

「すみませーん!!お代わりまだですかぁ~!?」

 

「はいよ、お待ち!!」

 

「来た、来たぁ~ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ、ん~、ぷはぁ~あぁ美味しい~」

 

フェイトはお代わりのお酒を一気に煽る。

 

その姿は完全に美人執務官と言うよりもおじさんである。

 

二人の視線を気にせずにお酒をグビグビ飲んでいるフェイト。

 

そんなフェイトにバルディッシュが、

 

「マスター、マスター、私も飲みたいです」

 

と、お酒をフェイトに強請る。

 

「ん?バルディッシュも?どれがいい?」

 

フェイトはバルディッシュにメニューを見せる。

 

「えっと‥‥これを下さい」

 

「うん。すみませーん!!」

 

バルディッシュに酒を選んでもらい、それを注文する。

 

「お待たせしました」

 

やがて、注文したお酒が来るとフェイトはお酒が入っているグラスの中にバルディッシュを入れた。

 

「えっ?フェイトちゃん!?」

 

「一体何をしとるんや?酔っとるんか?」

 

フェイトの行動にギョッとするなのはとはやて。

 

「ん?そこまで酔ってないよ。これはバルディッシュのメンテナンス」

 

「えっ?メンテナンス?」

 

「そんな破天荒な‥‥」

 

なのはとはやては目を白黒させながらお酒のグラスに入ったバルディッシュを見ていた。

 

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