星の海へ   作:ステルス兄貴

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百四十三話 ミッドと地球での出来事

 

 

ミッドにて、フェイトのもう一つの地球での情報について管理局とマスコミとの協定が解禁され、フェイトがもう一つの地球関係についての記者会見を行ったその日の夜、フェイトはこれまでの査察部からの監視と事情聴取からストレスが溜まっている様子だったので、はやてから居酒屋でパァ~っとストレスを発散しないかと提案され、フェイトはその提案に賛成する。

 

フェイトの他にはやて、そしてはやてが誘ったなのはと共に居酒屋へと向かう。

 

フェイトはこれまでのストレスを忘れるかのように居酒屋に着くと浴びるように酒を飲む。

 

そんなフェイトの姿に対して、はやてとなのははややドン引き気味。

 

飲み会が進む中、フェイトは自身の愛機であるバルディッシュを酒の入ったグラスへ入れると言う奇行を行う。

 

はやてもなのはもフェイトが相当酔っているのかと思いきや、フェイトは確かに酔ってはいたが、泥酔するほどではなかった。

 

そこで、はやてがフェイトの奇行を訊ねると彼女はこの行為はバルディッシュのメンテナンスだと言う。

 

フェイトの回答に驚愕するはやてとなのは。

 

「えっ?ちょっと待って、それがメンテナンス?」

 

「ほんまか?」

 

ただ酒に浸けるだけ‥‥そんなメンテナンス方法はこれまで聞いたことがない。

 

なので、はやてとなのはが疑うのも当然の事だ。

 

「うん、ホント、ホント。バルディッシュ自身もすっごく気に入っているんだから」

 

「「‥‥」」

 

はやてとなのははお酒が入ったグラスに浸かっているバルディッシュを見つめる。

 

「ア“ア“ア“~‥‥」

 

確かにバルディッシュは嫌がる様な様子もなく、まるで温泉に浸かっているかのような声を上げている。

 

そして黄色の宝石部分は、最初は黄色く点滅をしていたのが、段々と赤くなっていく。

 

(えっ?バルディッシュ、酔っておるんか?)

 

(デバイスって酔うの?)

 

そんなバルディッシュの様子をはやてとなのはは目をパチクリしながら見ている。

 

そして、

 

(バルディッシュが気に入っているって、リィンも気に入るんか?)

 

はやては自身のデバイスであるリィンが酒風呂に入る様子を想像する。

 

「うぃ~なんか、気持ちいいですぅ~」

 

バルディッシュの様子を見て、リィンが酒風呂に浸かりながら顔を赤くしながらも酒風呂を気に入る様子が脳裏を過るが、その翌日‥‥

 

「うっぷ、気持ち悪いですぅ~」

 

リィンが二日酔いになった姿が容易に想像できた。

 

(うん、ないわなぁ~)

 

リィンが二日酔いになったら大変なので、はやては酒風呂は無いと判断した。

 

「‥‥」

 

一方、なのはの愛機であるレイジングハートもバルディッシュの様子をジッと見ていた。

 

「そんなメンテナンス方法一体どこで教わったの?」

 

なのははフェイトにこんな仰天メンテナンスをどこで教わったのかを訊ねる。

 

「ん~‥‥向こうの地球~‥‥紅葉から‥‥」

 

(えっ?紅葉って確かもう一つの地球に居る私の子孫って言われている子だよね‥‥?)

 

(デバイスのメンテナンスをやるってことはやっぱり‥‥)

 

フェイトがこの仰天メンテナンス方法を教わった場所、そして教えた人を知ったなのはは唖然とする。

 

紅葉がもう一つの地球におけるなのはの子孫ではないかとこれまで薄々思っていたが、この仰天メンテナンスをフェイトに教えたとなるとやはり紅葉は別世界における自分の子孫である他に、自分と同じ魔導師なのだと確信を得る事が出来た。

 

なのはが紅葉の事を思っていると、

 

「‥‥マスター」

 

なのはの首にかけていた待機モードのレイジングハートが声をかけてきた。

 

「ん?何?レイジングハート」

 

「‥‥あの‥私も‥‥あれ‥試してみたいです」

 

「えっ?」

 

何とレイジングハートがなのはにバルディッシュと同じく自分も酒に浸かりたいと言ってきた。

 

「えっ?ちょっと待って、レイジングハート。本気なの?」

 

レイジングハートの頼みに対して、なのはは思わず声が裏返る。

 

「はい。バルディッシュの様子を見る限り、気持ち良さそうなので‥‥」

 

「‥‥」

 

レイジングハートの頼みの言葉を聞き、お酒が入っているグラスに浸かっているバルディッシュを見つめるなのは。

 

(大丈夫なのかな?お酒にデバイスを浸けても壊れないよね?)

 

お酒に浸けてレイジングハートが壊れないか心配になるなのは。

 

「ふぇ、フェイトちゃん。バルディッシュをお酒に浸けて大丈夫なの?壊れない?」

 

そこで、なのははデバイスをお酒に浸けてメンテナンスしているフェイトに訊ねる。

 

「全然、むしろお酒に浸けた方が何故か調子が良いんだよね~」

 

フェイト自身もジョッキに入ったお酒を飲みながら、なのはに対してお酒に浸けてもデバイスは壊れないと答える。

 

「‥‥」

 

(えっ?それってバルディッシュがアル中とちゃうんか?)

 

はやてはフェイトの説明を聞き、バルディッシュが既にアルコール中毒になっているのではないかと思った。

 

「じゃ、じゃあ‥‥」

 

「えっ?なのはちゃん、やるんか?」

 

「うん。レイジングハートがやりたそうだし‥‥」

 

「ほ、ほんまか‥‥」

 

フェイトの言葉を全て信じられる訳ではないが、お酒に浸けても壊れる事は無い事、更に何故かお酒に浸けた後、調子が良いと聞いた事から、なのははレイジングハートにもこの仰天メンテナンスをやってみる事にした。

 

そんな、なのはの態度にはやてはやや引いている。

 

「えっと‥‥レイジングハート‥‥どれがいい?最初はなるべくアルコール度数が低い方が良いんじゃないかな?」

 

「えっと‥‥これにします」

 

なのはがレイジングハートにお酒のメニューを見せるとレイジングハートはなのはの忠告を聞き、アルコール度数が低いお酒をチョイスする。

 

「お待たせしました」

 

やがて、注文したお酒が届くとなのはは恐る恐るレイジングハートをお酒が入ったグラスの中に入れる。

 

ポチャっ‥‥

 

レイジングハートは当初、全体が薄赤色の点滅をしていたのだが、段々と点滅している赤色が濃くなっていく。

 

(レイジングハート、酔っているんか?)

 

(機械である筈のデバイスもお酒に酔うんか‥‥?)

 

バルディッシュやレイジングハートのこの現象に対して、はやては、バルディッシュとレイジングハートがお酒に酔っているのかと思った。

 

デバイスはデバイスでもリィンやアギトの様な人型で感情があり、食事も出来、生物に近いユニゾンデバイスと違い、機械的なインテリジェント、ストレージ、アームドデバイスが酔うなんて非現実的な現象にも感じた。

 

「はふぅ~‥‥これは‥‥確かになかなか気持ちいいですね~」

 

電子声なのだが、レイジングハートは気持ちよさそうにグラスに沈んでいる。

 

テーブルの上にデバイスが入っているお酒のグラスが二つある奇妙な光景の中、飲み会は進んで行く。

 

この時、フェイトは既に五、六杯ジョッキで飲んでおり、顔全体が赤い。

 

そんな中、フェイトがボソッと呟く。

 

「ねぇ~なのは、はやて。私ってどうしてモテないのかな?ルックスには自信があるし、スタイルだって結構いい線いっていると思うんだけど‥‥?」

 

「「えっ?」」

 

フェイトからまさか異性についての愚痴が出るなんて意外であり、思わずフェイトを見るなのはとはやて。

 

「えっ?えっと‥‥フェイトちゃん。それはどういう意味や?」

 

「ん?言葉通りの意味だけど?」

 

「‥‥」

 

はやてとしてもこれまでのフェイトとの付き合いから、彼女はどちらかと言うと年頃の異性に対して興味が無く、むしろ、なのは一筋・なのはLOVEの同性愛者みたいな印象を抱いていた。

 

それが、異性に対しての愚痴をするなんてまさに青天の霹靂である。

 

一方、これまでのフェイトから好意みたいな感情を向けられていたなのは自身は、フェイトのそんな感情をただの友情だと思っていたのだが、はやて同様、これまでのフェイトとの付き合いで異性に対する愚痴を聞いたのはこれが初めてだったので、意外性を感じていた。

 

「で、でもなんでいきなりそんな話をするんや?フェイトちゃん」

 

「ん?‥‥実は向こうの地球で知り合った人が‥‥既婚者だったり、リア充だったりで‥‥」

 

酔って口が多少、軽くはなっていたのだが、フェイトはギンガの名前を口に出すことはなかった。

 

「えっ?既婚者?」

 

「リア充?」

 

(えっ?フェイトちゃん、既婚者の男の人に手を出そうとしたんか!?それとも彼女が居る彼氏を寝取ろうとしたんか!?)

 

「はぁ~‥‥もう少し早く、あっちの地球に行っていたら、結果は違っていたのかな‥‥でも、あんな立派な人が相手じゃあ、私でもやっぱり勝ち目はないか‥‥」

 

フェイトの脳裏には既に大人の階段を昇ったギンガの姿、古代守との仲を引き裂くなんて事実上不可能なスターシアの姿が過る。

 

「えっ?いや、ちょっ‥‥」

 

「フェイトちゃん?」

 

困惑するなのはとはやてを尻目にフェイトは、

 

「すみませーん!!お代わり~」

 

更にお酒を注文する。

 

「で、でも、フェイトちゃんは確かに美人さんやし、男なんてすぐに見つかるんとちゃうか?」

 

はやては無難にフェイトを慰めるが、

 

「あの人みたいな人‥‥管理局には居ないよぉ~」

 

(フェイトちゃん、もしかして失恋したんか‥‥?)

 

フェイトはグテ~っとテーブルに突っ伏す。

 

(しかし、フェイトちゃんがここまでお熱になる人って一体どんな人やったんやろう‥‥?)

 

フェイトの言動から、はやては彼女が向こうの地球で運命的な出会いをするもその人が既婚者だった為に諦めざるを得なく、失恋したのだろうと察した。

 

ただ、なのはLOVEだったフェイトをここまで夢中にさせた男性が一体どんな男性だったのかも気になった。

 

そして、はやてから見てもフェイトは本人が言うように容姿もプロポーションも女性としてはレベルが高い。

 

恋人になりたいと思っている男性局員は沢山居る。

 

しかし、そんなフェイト自身が負けを認めると言うのだから、フェイトの失恋相手のパートナーである女性がフェイト以上の女性である事が窺える。

 

フェイトの失恋相手とそのパートナーの女性も見てみたいとはやては思った。

 

その後もはやてとなのははフェイトから酒の愚痴に付き合わされるのであった。

 

その後、店を出てからも‥‥

 

「ねぇねぇ、はやて、なのは。カラオケに行こう、カラオケ!! ナナ・ミズキの新曲覚えてきたから、二人に披露しちゃうよ~」

 

フェイトは二次会にカラオケに行かないかとなのはとはやてを誘う。

 

しかし、

 

「フェイトちゃんの歌は確かに上手だし、ナナ・ミズキって人に声が似ているけど、私もはやてちゃんも明日お仕事があるからもう帰らないと‥‥シャマルさんとザフィーラにも悪いし‥‥」

 

「ブ~ブ~分かったよ。それじゃあ、かーいさーん!!」

 

フェイトは不満そうであったが、なのはとはやては明日も仕事があり、流石にこれ以上の女子会は明日の仕事に支障をきたすので解散となった。

 

翌朝、フェイトは昨夜の事はバルディッシュをお酒に浸けた後はあまりよく覚えておらず、自分が遠回しになのはとはやてに古代守に抱いた恋心と失恋を口にした事を覚えていなかった。

 

そして、お酒に浸けたレイジングハートであるが、シャーリーにフルメンテナンスをしてもらった時よりも何故か調子が良く、使用していたなのは自身が困惑する事態が起きた。

 

 

ここで時間を昼間まで巻き戻す。

 

ミッドチルダ西部 エルセア ナカジマ家

 

居間のテレビには本局で記者の質問に慎重に答えるフェイト、リンディ、はやてたちの姿が映し出されている。

 

リビングで見入るのは非番で実家に戻っていたスバルと元ナンバーズの姉妹たち。

 

なお、ナカジマ家の大黒柱であり、スバルたちの父親のゲンヤはまだ陸士108隊で勤務中だった。

 

「フェイト執務官、大変そう‥‥」

 

テレビ画面に映るフェイトの姿を見てスバルがヴィヴィオと同じく同情する感じで呟く。

 

一応、一年と言う短い期間の付き合いであったが、人間観察が意外にも上手いスバルから見ても画面の向こうに映るフェイトが不機嫌である事を読み取っていた。

 

「そう言えば、ティアナはどうしたんだ?」

 

ノーヴェがスバルにフェイトと共に遭難し、もう一つの地球に行ったティアナについて訊ねる。

 

ティアナの件もマスコミとの協定が解禁されるまで一部の人間以外は知らなかった。

 

「ティア‥‥もう一つの地球に残ったみたい」

 

スバルはこうしてマスコミとの協定が解禁されたので、ノーヴェたちにティアナがもう一つの地球に残った事を伝える。

 

「えっ?残った!?」

 

「もう一つの地球に‥‥?」

 

「なんでっスか!?」

 

「確か補佐官は執務官志望だったのだろう?もうすぐで、念願の執務官になれそうだと言う時に管理局を辞めてもう一つの地球に残ったのか?」

 

ノーヴェたちもティアナがもう一つの地球に残ったのは意外そうで何故、ティアナがもう一つの地球に残ったのかスバルに訊ねる。

 

「詳しくは教えてくれなかったけど、ティア‥もう一つの地球で本当にやりたい事を見つけたみたい‥‥訓練校時代から目指していた執務官以上の事を‥‥」

 

「そうだったのか‥‥」

 

ノーヴェとしてはティアナの気持ちが何となくだが理解出来た。

 

まだスカリエッティの下に居た頃は、自分は戦闘機人であり、兵器であり、創造主であるスカリエッティの言う事が絶対でただ彼の野望を邪魔するモノを破壊しなければ自分の存在意義がないと思っていた。

 

しかし、JS事件後に更生施設で更生教育を受け、こうしてナカジマ家の養女となってからはノーヴェの世界に対する視界は大きく広がった。

 

最近では格闘技ジムの開設と運営資格取得の為の勉強を頑張っている。

 

そういった点がノーヴェとティアナは似ていた。

 

恐らくノーヴェ以外の元ナンバーズのメンバーも同じ事だろう。

 

セインたち聖王教会に引き取られた教会組も今は教会のシスターとしてその役職を頑張っている。

 

「もし、ティアがフェイト執務官と一緒にミッドに戻って来ても多分、フェイト執務官のことだから、きっとティアをあんな矢面には立たせないと思うな‥‥」

 

スバルは仮にティアナがミッドに戻って来たとしてもフェイトは今回の記者会見の場にティアナを出さなかったと思った。

 

「確かにあの執務官の性格を考えるとスバルの言う通りかもな」

 

チンクもスバルの意見に賛同する。

 

「ああ、あれっスね、『ミッドの借金をヴァイゼンで返す』っていうヤツっスね」

 

「ウェンディ、それを言うなら『親の恩は子に返せ』だよ」

 

ディエチがウェンディの間違いを指摘する。

 

「あれ?そうだっけ?」

 

「やれやれ」

 

チンクは妹の知力に呆れた。

 

「そう言えば、スバルは向こうの地球‥防衛軍の人とも何回か交信したんだよね?」

 

ディエチがスバルに防衛軍の軍人と会った事を確認する。

 

「うん。会ったよ」

 

「守秘義務があるだろうから詳しい事は聞かないけど、スバルはフェイトたちを助けた防衛軍の艦や軍人さんたちをどう思う?」

 

「えっ?防衛軍の艦や軍人さんたち?」

 

「うん」

 

「うーん‥‥一言で言うなら『地球のストライカー』‥かな?」

 

「『地球のストライカー』‥‥」

 

「うん。詳しくは私も知らないけど、向こうの地球は何度か異星人との大きな戦争があったみたい‥‥つい最近じゃあ、地球が占領されちゃったみたいだし‥‥」

 

「おいおいマジかよ‥‥」

 

「もう一つの地球って確か管理局よりも強いって聞いたっス‥‥」

 

「その地球を占領って‥‥」

 

ノーヴェたちはもう一つの地球と交信をした経験が無いながらもスバルやゲンヤからの又聞きで、もう一つの地球は管理局を上回る戦力を有している事は知っていた。

 

その地球を占領した異星人である暗黒星団帝国の事をチラッと聞き、思わず顔を引き攣らせる。

 

「地球を占領したその異星人たちはどうなったの?」

 

「もちろん、防衛軍の人たちが解放したよ。占領中は地球との交信が出来なかったけど、占領した異星人たちを追い出して復興もしたみたい」

 

「占領下の状況から押し返すとはやはり、凄いな」

 

「そうだね。でも、もう一つの地球は何度も存亡の危機になったみたいで、その危機を救ったのはヤマトや防衛軍の人たちで、そのほとんどが何もかもがぶっつけ本番で、負ければ自分たちだけでなく、地球そのものが滅ぶ瀬戸際ばかりな戦いだったって‥‥」

 

「事件の規模を比べるものじゃないが、スバルの話を聞く度にドクターや私らの行為がコソ泥レベルの規模だったんだな‥‥」

 

もう一つの地球での戦争とJS事件の規模があまりにも違いすぎる事を実感する。

 

「ティアナはそんな地球へ残った訳か‥‥」

 

チンクがそんな地球へ残ったティアナが何故、かの世界へ残ったのか分からないが彼女の生活を思うと色々と苦労するだろうとしみじみと察するが、管理局でも苦労するのは変わらない。

 

「それで、管理局は今後どうするんだろう?」

 

ディエチがまだ続いている記者会見が行われているテレビをチラッと見る。

 

「フェイト執務官、ヴィヴィオはミッドに戻って来たけど、もう一つの地球は今後も管理局と付き合うのかな?」

 

そして、今後の管理局ともう一つの地球との付き合いをスバルに訊ねる。

 

「うーん‥‥どうなるんだろう?私は“海”の所属じゃないから分からないけど、フェイト執務官のこの表情から難しいかも‥‥」

 

スバルはテレビに映るフェイトの表情から管理局ともう一つの地球との間に交流が続くのは難しいのではないかと判断した。

 

(交流が続けばティアやギン姉と会えるんだけどなぁ~‥‥)

 

スバル個人とすればミッドともう一つの地球が交流してくれればもう一つの地球に居るティアナやギンガと会える。

 

それはなのはも同じだ。

 

しかし、管理局のこれまでのもう一つの地球へ行った言動から管理局へ不信感を持っているもう一つの地球が交流を持つとも思えない。

 

ゲンヤの言う通り、ギンガ、ティアナと再会するまで多くの障害がありそうだった。

 

 

 

 

此処で視点はミッドから太陽の異常が起き、一部の人間が知らぬ間に破滅へと向かい、管理局が血眼になって探しているもう一つの地球へと移す。

 

そして、時間軸もヤマトが藤堂の密命を受け、出航準備をしている現時刻まで戻る。

 

朝食の時間、ヤマトの乗員たちが食堂にて、朝食を摂っている中、

 

「揚羽、揚羽武は居るか?」

 

ヤマトの新艦長に就任した古代が食堂で揚羽を探す。

 

「は、はい!!」

 

揚羽が食事を中断して古代の下へと向かう。

 

「揚羽、すまないがこの後、新型の探査航空機であるコスモハウンドがヤマトに搭載されるのだが、そのコスモハウンドの試験飛行を頼みたい」

 

「えっ?自分がでありますか?」

 

「ああ、ヤマト航空隊の隊員たちがまだ到着していなくてな」

 

「了解です」

 

「それと、飛行以外にも機銃の試射も行っておきたい。お前の知り合いで射撃が上手い奴も一緒に乗せてやってくれ」

 

古代はそう言うと、チラッと厨房で働いている土門を見る。

 

(ああ、なるほど‥‥)

 

古代の思いに気づいた揚羽。

 

「分かりました!!」

 

「それじゃあ、頼む」

 

古代が去り、揚羽は朝食を食べ終えると、食器を片付けるために食器の回収所へと向かうと、

 

「土門、ちょっといいか?」

 

「ん?なんだ?」

 

土門を呼び寄せた。

 

「実はこの後、新型機のコスモハウンドの試験飛行をやるんだ」

 

「なんだよ?自慢か?」

 

自分と異なり、希望部署へ配属になった揚羽が自慢をしてきたのかと思い不機嫌そうに顔を歪める土門。

 

「違うよ。その際、搭載されている機銃の試射もやるんだよ」

 

「だから?」

 

「だから、コスモハウンドに乗らないか?」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「試験飛行時の機銃手については俺が指名して良いって古代艦長が言っていたんだよ」

 

「えっ?古代艦長が?本当か!?」

 

「ああ」

 

「ちょ、ちょっと、幕ノ内キャップに説明してくる!!幕ノ内キャップ!!」

 

揚羽の誘いを受け、土門は急ぎ厨房責任者である幕ノ内に説明しに行った。

 

古代から幕ノ内にも連絡がいっているみたいで、土門はコスモハウンドの試験飛行の間、厨房勤務から外れることが出来、揚羽と共にコスモハウンドの試験飛行へと臨んだ。

 

ヤマトの改装が進む中、暗黒星団帝国戦役後にヤマトを降り、様々な部署へ配属された元ヤマトの乗員たちは藤堂の命令を受け、続々とヤマトへと戻って来ていた。

 

昼時の少し前、ヤマト空戦隊隊長の山本明夫がヤマトに戻って来た。

 

この時、古代はカタパルト上にある自身の愛機の整備を行っていた。

 

「古代!!」

 

山本はそんな古代の姿を見つけ、声をかけた。

 

「山本、来るのが遅いじゃないか」

 

「すまん、色々と引継ぎの手続きで手間取っちまって、それより聞いたぜ、正式にヤマトの艦長になったって、おめでとう」

 

「ああ、ありがとう」

 

古代と山本がそんなやりとりをしていると、ヤマトの周囲の上空をコスモタイガーよりも大きな航空機が飛んでいた。

 

「ん?あの航空機は?」

 

「コスモハウンド。今度、ヤマトに新しく搭載される惑星探査の地上活動に使う新型機だ」

 

「良い腕だ。誰が乗っているんだ?坂本か?それとも椎名の奴か?」

 

「揚羽武。宇宙戦士訓練学校から繰り上げ卒業させて引っ張って来た新人だ」

 

「へぇ~」

 

古代と共に上空を飛行しているコスモハウンドの動きを見つめる山本。

 

その試験飛行を行っているコスモハウンドのコックピットでは機長席にて、揚羽が操縦桿を握りながらコスモハウンドの操縦を行い、隣の副操縦士席では土門が座っている。

 

コスモハウンドは最大速力での飛行、旋回飛行、急降下、上昇などの運動性の試験飛行を行い、一通りの運動飛行を行い、

 

「よし、次は武装チェックだ」

 

「待っていました」

 

土門は上機嫌で機首に装備されている自衛用の25㎜単装パルスレーザー機銃を稼働させる。

 

標的は地上に設置されている風船状の的で、揚羽は機体を降下させる。

 

土門は地上に設置されている的を次々と撃ち抜いていった。

 

古代と山本がコスモハウンドの試験飛行を見学している頃、山本以外にもヤマトの乗員が集まっていた。

 

その中には医務長の佐渡もヤマトに到着した。

 

「佐渡先生」

 

「おう、船務長、遅くなってすまんのう。佐渡酒造、ただいまヤマト医務長として着任しました」

 

タラップでは雪とアナライザーが佐渡を出迎えた。

 

「サドセンセイ!!」

 

「おぉ~アナライザー!!元気じゃったか!?」

 

佐渡はアナライザーと抱き合う。

 

「ワシは生涯の中で一度はロボットの病気を治したいと思っておるよ」

 

「ボクハシンデモ、センセイ二ミテモライタクハアリマセン」

 

佐渡は一生のうちに一度はコンピューターウィルスに犯されたロボットを診察して治したいと言うが、アナライザーは永久に壊れても佐渡には診てもらいたくはないと拒否する。

 

「ハッ、ハッ、ハッ、言うの~」

 

佐渡はアナライザーの診察拒否を軽く笑いで受け流す。

 

これは佐渡とアナライザーとの間に絆みたいなモノがあるからそこなせるモノであった。

 

そんな中、ヤマトにアナライザー以外のロボットが沢山積み込まれている様子が見えた。

 

「ん?なんじゃ?今度の航海じゃあ、随分と沢山のロボットを乗せるんじゃな」

 

「探査用のロボットです」

 

雪が佐渡にアナライザー以外のロボットを沢山乗せる訳を話す。

 

そんな中、ロボットの乗艦が詰まるとアナライザーが現場に赴き、誘導を行う。

 

「アナライザーはロボット班のリーダーになるので、今から張り切っています」

 

「ハハ、アイツの事じゃから威張るんじゃないか?」

 

後輩のロボットの誘導を行っているアナライザーを見ながら佐渡は、今回の航海におけるアナライザーの様子を想像しながら笑みを浮かべた。

 

 

コスモハウンドは、試験飛行過程を終えて、土門と揚羽は昼食の為、ヤマトの食堂へと戻るが、昼食時と言う事で、厨房はてんてこ舞いとなっており、土門は厨房を手伝う事となり、厨房内へと入る。

 

揚羽は土門にすまないと思いつつも昼食を摂る事にした。

 

揚羽と土門がヤマトの食堂へ来る前、古代と山本が先に昼食を摂っていた。

 

「しかし、さっきのコスモハウンドを操縦していた新人、揚羽?でしたっけ?なかなか良い腕をしていましたね」

 

山本は古代に先ほど見たコスモハウンドの動きから操縦していた揚羽の技量が新人ながらもなかなかの腕であると褒める。

 

「お前もうかうかしていると、飛行科のキャップの座を奪われるぞ」

 

「そう易々と加藤から引き継いだこの座を明け渡すつもりはないさ」

 

古代が茶化すが、山本自身、辞令が無い限りヤマト空戦隊隊長の座を明け渡すつもりはないと強気な発言をする。

 

そんな中、揚羽が昼食が乗ったトレイを持って食堂内を歩きながら席を探していた。

 

「おっ、ちょうどいい所に‥‥おーい、揚羽。こっちで一緒に食べないか?」

 

「えっ?古代艦長?」

 

古代からまたもや呼ばれ驚く揚羽。

 

「揚羽、紹介しよう。ヤマト空戦隊隊長の山本明夫だ」

 

「山本だ。よろしく新人君」

 

「あ、揚羽武です!!よろしくお願いします!!」

 

ヤマトの艦長である古代の他に直属の上官である山本の存在が揚羽をなお一層緊張させる。

 

「それで、コスモハウンドの性能はどうだ?」

 

「大型機ながら、なかなかの運動性能であり、レーダー、武装などの装備も充実していました」

 

揚羽が古代にコスモハウンドの性能を説明する。

 

やがて、昼食も終盤になった頃、

 

「艦長、防衛軍司令部より、緊急通信です」

 

通信科の乗員が古代に司令部からの緊急通信の内容が書かれた紙を手渡す。

 

「なんです?」

 

山本が通信文の内容を訊ねると、

 

「‥‥揚羽武の乗組員解除命令だ」

 

「「えっ?」」

 

古代から通信文の内容を聞いた山本と揚羽は唖然とした。

 

司令部から送られてきた通信文は揚羽をヤマトから降ろせと言う命令だった。

 

何故、司令部から揚羽をヤマトから降りるような命令が来たのか?

 

それは数日前まで遡る。

 

メガロポリス東京の一等地に立つ揚羽の実家である揚羽邸。

 

揚羽邸では、この屋敷の主であり、揚羽の父親である揚羽蝶人が憤慨していた。

 

「どういうことだ!?武が既に訓練校を卒業しているなんて‥‥しかも既に任官しているだと!?」

 

揚羽は父親に繰り上げ卒業をしてヤマトの乗員になった事を知らせていなかった。

 

しかし、蝶人は一人息子である揚羽を宇宙戦士にさせるつもりはサラサラなかった。

 

訓練校を卒業したら、自身が経営する会社へ無理やりにでも入社させ、将来は自分の後を継いでもらうつもりだった。

 

それが自分の知らぬ間に訓練校を卒業して既に任官しているなんて蝶人にとっては寝耳に水だった。

 

「武の奴め、一体何を考えておる‥‥」

 

蝶人は直ぐに防衛軍の人事課へと連絡を入れ、息子の任官解除を要請した。

 

蝶人が経営している会社の機器は防衛軍でも納品されている物があり、彼自身軍にも多少顔が利いていた。

 

軍としても蝶人の会社が特許を持っている機器は必要な物だったので、彼の頼みを無下には出来なかった。

 

ただ、手続きには時間がかかるモノなので、こうして数日の時間差でヤマトへと届いたのだ。

 

 

「揚羽、何か退艦命令を受ける心当たりがあるか?」

 

「い、いえ、ありません」

 

「しかし、急に司令部から乗組員解除命令が来るなんて‥本当に心当たりはないのか?」

 

「はい。ありません‥‥それじゃあ‥‥」

 

揚羽は諦めた様に言うと、力なく肩を落として食堂を去って行った。

 

彼は古代と山本に乗組員解除命令に対して心当たりがないと言うが、内心この命令がどんな経緯で届いたのか心当たりがあった。

 

(やってくれたな、父さん‥‥)

 

ヤマトにおける自分の部屋で私物を含めた荷物をトランクへ詰め込みながら、自分の父親に対して毒づいていた。

 

 

 

 

太陽の異常とヤマトの出航準備が進む中、バジウド星系では‥‥

 

第四惑星、バース星所属の宇宙艦隊は初戦にて、ダゴン率いるガルマン帝国東部方面軍第十八機甲師団と戦い手痛い損害を受けた。

 

現在、バース星は初戦で受けた被害の補修と艦隊の増援を待っていた。

 

「ラム艦長、補修作業完了しました。増援部隊も間もなく到着します」

 

副官がラムに艦隊の現状を報告する。

 

「うむ‥‥」

 

(増援とは言え、一体何隻送られてくるやら‥‥)

 

バース星本土も空にするわけにはいかないので、今回の増援も決して多くは無いだろうと予測するラム。

 

増援を待っている中、バース艦隊の後方から接近する艦影をレーダーが捉えた。

 

増援部隊かと思ったが、味方識別信号に応答がなく、エネルギー反応がボラー系の艦船の反応ではなかった。

 

「敵艦隊!!接近してきます!!」

 

「っ!?」

 

まだ増援部隊が到着する前にバース艦隊の後方からガルマン艦隊が接近してきた。

 

 

ラムール級航宙巡洋戦艦 ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「ダゴン司令、バース星の艦隊らしき反応を捉えました」

 

「ふむ‥‥」

 

(バース星の主力艦隊か‥‥さすがにえらく手間取らせてくれたが、これが最後だ)

 

「全艦、攻撃を開始せよ!!」

 

ガルマン艦隊はバース艦隊へと猛攻を仕掛けてくる。

 

後方から、しかも不意を突かれたような形で攻撃されたバース艦隊は混乱する。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「くっ、こんな時に‥‥」

 

増援部隊の到着前にガルマン艦隊に補足されてしまったことにラムは顔を歪める。

 

「29番艦、8番艦損傷!!」

 

「18番艦、25番艦、撃沈されました!!」

 

僚艦以外にも突然の攻撃と味方の被害からラジェンドラ号の艦橋も混乱し始める。

 

「落ち着け!!各艦、反転し応戦せよ!!」

 

混乱している部下や僚艦を落ち着ける為、ラムは全艦に一斉通信を行い、混乱している僚艦に対して一喝し艦隊の統制を回復させる。

 

ラムの一喝を受け、混乱していたバース艦隊は態勢を整え、ガルマン艦隊に反撃する。

 

 

ラムール級航宙巡洋戦艦 ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「バース艦隊が反撃に出ました!!」

 

「6番艦被弾!!」

 

「ぬぅ~‥‥猪口才な‥‥第三部隊、敵右舷に回り込み攻撃せよ!!」

 

バース艦隊の混乱が短時間だったことにダゴンは忌々しく思いつつも包囲体制を敷き、バース艦隊を一気に殲滅しようとする。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「ラム艦長、敵は我々を包囲殲滅しようとしています!!」

 

ラジェンドラ号のオペレーターがガルマン艦隊の動きから相手の行動を予測し、ラムに報告する。

 

「全艦に通達!!小ワープにて、現宙域から離脱!!増援部隊には合流地点の変更を暗号通信で送れ!!」

 

「了解!!」

 

バース艦隊は反撃しつつ順次、小ワープを行いながら現宙域から離脱していく。

 

 

ラムール級航宙巡洋戦艦 ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「バース艦隊が小ワープして離脱していきます!!」

 

ワープして現宙域を離脱していくバース艦隊を見て、ダンドールのオペレーターがダゴンに報告を入れる。

 

(もろい癖に逃げ足だけは早いな‥‥)

 

初戦の際もバース艦隊はある程度の被害を受けるとワープして逃げて行った。

 

そして、今回の戦いでもワープして逃げていく。

 

(本来ならば、この程度の相手など無視しても構わないのだが、ジュラ様の行幸があるからには無視するわけにはいくまい‥‥)

 

「全艦、追跡!!奴らを逃がすな!!」

 

ダゴンは本来ならば、相手にするような敵ではないと思いつつもジュラが地球までの航路でこのバジウド星系を航行するからにはバース艦隊を殲滅し、バジウド星系の安全を確保しなければならない。

 

万が一、ジュラ一行の前にバース艦隊が現れればジュラの身に危険が生じる。

 

ジュラの安全の為、バース艦隊は何としてでも殲滅しなければならなかった。

 

ダゴンは急ぎ、ワープで逃げたバース艦隊を追った。

 

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