星の海へ   作:ステルス兄貴

154 / 294
あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

新年最初の話なのに主人公が未登場になってしまう残念な話になってしまい申し訳ございません。

ただ、現状の細かな説明を含む形となっているのでこのような形になってしまいました。

至らぬところもありますが今後ともよろしくお願いたします。


百四十五話 バース星陥落

 

 

ガルマン帝国所属東部方面軍第18機甲師団との戦いに連敗したバース艦隊。

 

増援を待つ間に運悪く見つかり、攻撃を受け、増援部隊との合流地点を変更し、小ワープにて戦場から撤退し何とか全滅を回避するが、所詮は全滅する時間が少し伸びただけであった。

 

バース艦隊旗艦、ラジェンドラ号ではこれまでの戦闘で受けた損傷個所の修理をしながら増援部隊の到着を待っていた。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「艦長、修理作業は92%終了しました」

 

「うむ、ごくろう」

 

「なお、本国に問い合わせたところ、これ以上の増援は不可能であるとの回答がきました」

 

ラジェンドラ号艦長、ラムに副官が本国の回答と共に増援部隊の編成表を手渡す。

 

(予定艦艇の三分の一以下か‥‥)

 

合流する増援部隊の数を見て顔をしかめるラム。

 

だが、本星であるバース星の残存兵力をゼロにする訳にもいかなかった。

 

本国としてもバース艦隊への増援も苦渋の決断だったのかもしれない。

 

(敵艦隊の殲滅は例え増援部隊が到着しても不可能だろう‥‥)

 

(ならば、せめて敵旗艦を沈め、敵の司令官を戦死させることが出来れば、指揮系統を混乱させることができるかもしれない‥‥)

 

ラムは現在のバース艦隊とガルマン艦隊との数から既に勝機がないことを察していた。

 

なので、敵艦隊の殲滅ではなく、敵司令官を討つ事を念頭においた。

 

「艦長、増援部隊が到着しました」

 

「本艦も含め、全艦修理作業も終了しました」

 

「うむ」

 

(彼らにはすまない事をしたが、このまま一矢報いることなく敗れる訳にはいかない‥‥)

 

「全艦、発進」

 

「はっ、全艦発進」

 

ラムは次の戦いでラジェンドラ号を含めバース艦隊は全滅するだろうと予測し、折角到着した増援部隊の乗員たちを殺すことになるが、バース星の軍人としてむざむざ降伏するのではなく、一矢報いる覚悟でガルマン艦隊と最後の戦いを挑む覚悟をした。

 

そして増援部隊の合流と損傷艦の修理が終わったバース艦隊はガルマン艦隊との最後の戦いを挑むために発進した。

 

「ガルマン艦隊発見!!」

 

「敵艦隊は現在、ボスドラス星域へ侵入しつつあり!!」

 

「敵は単縦陣にて第二惑星の軌道上を航行中!!」

 

「艦長、おそらく敵の司令官が乗る旗艦は艦隊の真ん中に展開していると思われますが、中央突破を仕掛けた場合、左右両翼からの挟み撃ちに遭う危険性があります」

 

副官がモニターに表示されているガルマン艦隊の動向を見てラムに意見具申する。

 

「恐らく‥いや、疑いなく君の言う通りだが、もはや取るべき戦法は我々には残されていない」

 

「しかし、この戦力差では先ほどの二の舞になるだけです。ここは一旦母国バースに戻り、艦隊の増強をしてからの方がよろしいのではないでしょうか?」

 

「バースにはもはや戦う力は残されていない‥‥それは今、君が報告してくれたばかりではないか‥‥バースにはもう我々しかおらんのだよ‥‥バースを守る為には我々が戦わねばならん。そして、宇宙の平和の為にもガルマンの無法を見過ごすわけにはいかん!!全艦戦闘用意!!」

 

「はっ、全艦戦闘用意!!」

 

「敵の陣形とこのボスドラス星域の地形を利用して、敵の中央を突破、敵旗艦及び、敵艦を各個に撃破する!!」

 

「承知しました」

 

「敵艦隊まで55000!!」

 

「思ったよりも胴体部が厚いですな‥中央突破が不可能とは言えませんが、時間がかかりすぎると敵の左右両翼に包囲される危険が大きくなります」

 

「中央部に敵の司令官がいる証拠だ。ここは敵に先制をさせ、引き付けながら敵の攻撃を受け流し、左右両翼のいずれかに回り込む方が各個撃破しやすいかもしれないが‥‥」

 

左右両翼のどちらかへ攻撃すれば各個撃破はできるかもしれないが、それでは中央に居る敵の司令官を討ち取れない。

 

ラムが戦略を練っていると、

 

「味方の右翼部隊、敵艦隊へ攻撃を始めました!!」

 

「何っ!?まだ攻撃命令は下していないぞ!!」

 

ラムが攻撃命令を下す前に味方の一部が敵へ先制攻撃をした。

 

「艦長‥‥」

 

「訓練不足‥そして混成艦隊の弱みがここで出たか‥‥やむを得ん!!当初の予定通り、このまま中央突破を図り、敵司令官の旗艦を狙う!!全艦攻撃開始!!」

 

バース艦隊が一斉にガルマン艦隊に向けて攻撃を開始する。

 

 

ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「バース艦隊発見!!」

 

「ダゴン司令、バース艦隊が攻撃を仕掛けてきました!!」

 

「ふんっ、死に損ない共め‥今度こそ息の根を止めてくれる」

 

「しかし、手負いの獣は狂暴化しています。数の上では我々が上ですが、連中はどんな手を使ってくるか分かりません」

 

副官がダゴンに忠告を入れる。

 

「ならば、少々連中の動きを探ってみるか?‥‥全艦、敵艦隊に攻撃をしつつ前進」

 

「司令ただこのまま前進ですか?」

 

「なあに、一種の示威行動だ。それで敵の動きを見極める」

 

ガルマン艦隊はバース艦隊の正面から攻撃をくわえながらじわりじわりと接近する。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「敵艦隊、攻撃をしつつ前進してきます!!」

 

「艦長!!」

 

「慌てるな、あれは威嚇だ‥釣られて動けばあっという間に全滅するぞ」

 

ラムは冷静に対処するが、

 

「敵艦隊接近!!」

 

「全砲門を開け!!ミサイルもだ!!撃って、撃って、撃ちまくれ!!」

 

「攻撃しろ!!このまま接近を許せば包囲殲滅されるぞ!!」

 

「撃て!!撃て!!」

 

まだ訓練不足で今回の戦いが初陣であるバース艦隊の乗員たちは接近してくる敵に対してパニックになり、ガルマン艦隊へ砲撃とミサイルを撃ち込む。

 

 

ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「司令!!一部に砲火が集中してきます!!」

 

「このままでは分断されます!!」

 

「なにっ!?」

 

ダゴンはまさか先ほど副官が言ったような事態になるとは思わず、バース艦隊の狂気に憑りつかれたような攻撃に驚愕する。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「敵艦隊に亀裂が生じました」

 

「驚いた‥‥計算されない狂気が戦術や戦略を越えた戦果をあげることがあるとは‥‥」

 

「左右両翼の前衛部隊が前進していきます」

 

「‥‥」

 

敵の接近に狂乱した左右両翼の前衛部隊がガルマン艦隊を迎え撃つかのように高速で接近し攻撃を行う。

 

バース艦隊のまさかの行動にガルマン艦隊の前衛には敵の攻撃を受けて撃沈されるのは勿論の事、味方艦同士の接触や味方の攻撃を受けて沈む艦、バース艦隊の艦と衝突する艦も続出した。

 

 

ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「前衛に多数の被害が出ております」

 

「くっ、まさか、手負いの獣がここまで厄介だとは‥‥」

 

「司令官」

 

「全艦、一時後退しろ!!」

 

「はっ、全艦一時後退」

 

「突出してくるのは敵の一部だ。すぐに行動が限界に達する。その隙を突いて突き崩すぞ」

 

ガルマン艦隊は後退していくが、バース艦隊の一部はそのまま追撃をしてくる。

 

「呆れた見境無しとは‥奴らには計算も計画性もないのか?」

 

ダゴンは顔を歪めながらバース艦隊の行動に忌々しさを感じた。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「このまま勢いに乗って中央突破が可能なのではありませんか?」

 

味方の行動を見て、計画通り中央突破が可能かもしれないと副官はラムに訊ねる。

 

「いや、敵はこちらの行動に戸惑っているだけだ。本気になり体制を立て直されればすぐに全滅させられてしまう。ここは何としてでも無秩序な攻撃を止めなければ逆にこちらが兵力分散の状態に陥りかねん。全艦の通信回路を開き、統制を回復させる」

 

「承知しました」

 

ラムはガルマン艦隊が体制を立て直す前に突出した味方を引き戻す為に全ての艦に通信を入れる。

 

「前進を止めろ!!後退して陣形を編成せよ!!君たちはもう十分に敵を殺したではないか!?」

 

「進撃中止‥後退する」

 

「後退し、陣形を立て直す‥‥」

 

ラムの通信を聞き、冷静さを取り戻したバース艦隊は後退して本隊との合流を図る。

 

しかし、それをすんなりと許すガルマン艦隊ではなかった。

 

 

ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「敵艦隊、後退して行きます!!」

 

「勝ち逃げを許すな!!全艦反転、攻勢に出る!!」

 

「はっ!!」

 

後退していたガルマン艦隊が今度は前進しながら攻撃し、後退していくバース艦隊へ攻撃をしかける。

 

「左右両翼の部隊も前進させ、敵を包囲せよ!!」

 

ダゴンは左右両翼の艦隊にも指示を出す。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「中央の敵艦隊、反転してきます!!」

 

「左右両翼の敵部隊も接近!!」

 

「全艦、密集しつつ第一惑星の軌道上まで後退せよ!!」

 

バース艦隊は全艦が後退するが、やはり突出して後退していた前衛部隊に被害が多く出た。

 

「前衛及び右翼の艦隊に被害が多数出ています」

 

「前衛は本隊の合流を目指し引き続きこのまま後退させ、後衛の部隊を右翼へ回せ」

 

ラムは分断されることを恐れ、後衛の部隊を右翼へと回し、分断の危機を何とか回避しようとする。

 

ラムの機転で右翼を攻撃してきたガルマン艦隊は分断を諦め、分散してバース艦隊への攻撃へと方針転換する。

 

しかし、一部のガルマン艦隊は大きく迂回してバース艦隊の背後を突こうとするが、宇宙潮流がバース艦隊とガルマン艦隊の間で起き、ガルマン艦隊の行く手を遮りバース艦隊は背後からの強襲を防ぐことが出来た。

 

「宇宙潮流のおかげで背後へ回られる事は何とか避ける事ができました」

 

「この兵力差だ。地の利を得られなければ対抗のしようがない‥だが、敵を分断し各個撃破することも中央突破を図る事も既に不可能になったか‥‥」

 

予想外に被害を出すことが早かった事で中央突破して敵司令官を討つ事も各個撃破することも今や不可能となり、バース艦隊は新たな策を練らなければならなくなった。

 

「防御を徹底させろ!!破壊された艦の残骸を盾として使え!!」

 

バース艦隊は味方、敵の破壊された艦の残骸の隙間から攻撃を加える。

 

「空母部隊に下令、艦載機部隊を出せ。それと司令部直属の戦艦は全て前衛に出すのだ。急げよ」

 

「はっ」

 

バース艦隊所属の空母からは次々と艦載機が出撃する。

 

もっともその艦載機でさえ、空母に満足な数を搭載していなかった。

 

 

ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「敵空母より艦載機が射出されました」

 

「何!?艦載機だと!?」

 

これまでのバース艦隊との戦いで、バース艦隊は艦載機を出してくる事はなかった。

 

もっともバース艦隊の空母に艦載機が搭載機数いっぱいに搭載されていなかった事やガルマン艦隊が電撃戦をしたことで射出する隙を与えなかった事も影響している。

 

だが、今回はダゴンが慎重に戦いを進めたことでバース艦隊に艦載機を出撃させる隙を与えてしまった。

 

しかし、慎重に進めた事でまだこれだけの被害だったのかもしれない。

 

もしも短期決戦で数にモノを言わせる戦いをすれば一体どれだけの損害を出したのか分かったものではない。

 

バース艦隊の艦載機は自身を囮にしてガルマン艦隊をクロスファイアポイントへ誘い込みガルマン艦を攻撃したり、ガルマン艦の機関を攻撃し敵艦を航行不能にする。

 

「敵は味方艦の機関をピンポイントで攻撃しています!!」

 

「前方に味方の漂流艦が居て攻撃できません!!」

 

「くっ、小賢しい手を‥‥」

 

(我々も空母を持ってくるべきだったか‥‥)

 

「いかがなさいますか?司令」

 

「こちらも艦載機を出しますか?」

 

空母ほどではないが、一応ラム―ル級航宙巡洋戦艦もわずかながらも艦載機を搭載していた。

 

「いや、下手に艦載機を展開すればこちらは艦砲射撃が出来なくなる。それに相手の艦載機数は僅かだ。ならば、駆逐艦部隊を総動員し、機動力と攻撃力、そして数で敵の艦載機部隊を蹴散らせる」

 

しかし、ダゴンは同士討ちを避けるために艦船で敵艦載機を対処させた。

 

「はっ」

 

ダゴンはリンチェント級航宙駆逐艦の部隊を前面に出し、敵艦載機の殲滅を命じる。

 

ガルマン艦隊は駆逐艦部隊に被害を出しつつもバース艦隊の艦載機を撃墜していく。

 

「右翼方面の艦隊に下令。宇宙潮流を渡河し敵艦隊へ楔を打ち込ませろ」

 

「はっ」

 

味方の駆逐艦部隊がバース艦隊の艦載機部隊を攻撃している中、ダゴンは味方右翼の部隊に宇宙潮流を渡河させ、バース艦隊への攻撃を命じる。

 

 

バース艦隊 旗艦 ラジェンドラ号 艦橋

 

「敵、右翼の艦隊が前進してきます!!」

 

「宇宙潮流を渡河するつもりか‥‥」

 

「やはり、数の上での劣勢は覆すことが困難ですな」

 

「しかし、このまま敵の渡河を許す訳にはいかん。計算しろ、敵は潮流の影響を受け、流されている。敵の進撃速度、潮流の流れの速度をだ。計算すれば敵の渡河ポイントが分かる筈だ」

 

「は、はい」

 

ラムはオペレーターに進撃してくるガルマン艦隊の渡河ポイントを計算させて位置を特定させる。

 

「出ました!!」

 

「よし、全艦、敵の渡河ポイントに向けて砲門を固定!!」

 

前面の敵は艦載機部隊が何とか時間を稼いでいるので、バース艦隊本隊は宇宙潮流を渡河してくるガルマン艦隊へ砲口を向ける。

 

「今だ!!撃て!!」

 

そして、ラムはタイミングを見計らって攻撃命令を下す。

 

宇宙潮流を渡河しているガルマン艦隊はいきなり前方から敵のショックカノンが来て回避のしようもなく、被弾する。

 

「怯むな!!反撃しろ!!」

 

一方のガルマン艦隊もこのまま無抵抗のままやられるはずもなく、反撃してくる。

 

更に前方のガルマン艦隊もバース艦隊の艦載機部隊を駆逐し、全面攻勢にうって出てくる。

 

渡河ポイントで集中攻撃をする為、バース艦隊は密集していた為に逆にガルマン艦隊の集中砲火を受け次々と爆沈していく。

 

「味方の被害甚大!!」

 

「敵艦隊、尚も接近!!」

 

(くっ、こうなれば‥‥)

 

「全艦、全速前進!!突撃だ!!」

 

「か、艦長‥‥」

 

「我々は最後まで戦うぞ!!敵艦に突っ込め!!」

 

「は、はい‥‥」

 

「突撃!!」

 

ラジェンドラ号はダゴン座乗する戦艦へ突っ込んでいく。

 

 

ダゴン艦隊 旗艦 ダンドール 艦橋

 

「敵艦、突っ込んできます!!」

 

「特攻か!?」

 

「何を狼狽えている?艦首高圧直撃砲、発射準備!!目標、敵旗艦!!」

 

波動砲とは異なり、威力と射程は劣るがラム―ル級航宙巡洋戦艦の艦首に装備されている高圧直撃砲にエネルギーが充填される。

 

「無駄死にはせん!!敵戦艦に突っ込め!!」

 

ラジェンドラ号は恐れることなく接近してくる。

 

「艦首高圧直撃砲、エネルギー充填完了!!」

 

「撃て!!」

 

ダンドールからラジェンドラ号に向かって高圧直撃砲が発射されると、直進してきたラジェンドラ号に命中する。

 

「バース‥万歳‥‥」

 

ラムは最後に祖国への万歳を告げ、乗艦であるラジェンドラ号と運命を共にした。

 

こうしてラジェンドラ号を含むバース艦隊は壊滅した。

 

「バース艦隊、全滅を確認」

 

「ふぅ~終わったか‥‥」

 

バース艦隊の全滅が確認され、ダゴンは一息つく。

 

「通信長」

 

「はっ」

 

「ガイデル提督へ打電、『我、バース艦隊ヲ殲滅セリ、直ちに陸戦隊ヲバースへ送り掌握サレタシ』とな」

 

「はっ!!」

 

通信長はガイデルの下へバース艦隊壊滅の旨を打電した。

 

 

「ガイデル提督、ダゴン将軍より電文です」

 

「読め‥‥」

 

「はっ」

 

通信員はダゴンからの電文を読み、バース艦隊壊滅の旨を知る。

 

「ふむ、そうか‥‥東部方面軍要塞へ電信、直ちに陸戦隊をバース星へ送れ」

 

「了解しました」

 

東部方面軍はバース星へ陸戦隊を送り、僅かな抵抗を排除するとバース星を瞬く間に占領した。

 

「これでジュラ様の行幸の障害が一つ消えたな」

 

バース星占領により地球への航路における障害が一つ消えたことにガイデルはホッと胸をなでおろした。

 

 

 

 

バース艦隊が全滅した頃、地球では太陽の核融合の増進が進むと同時にヤマトの出航準備も着々と進んでいた。

 

暗黒星団帝国との戦いの後、ヤマトの乗員たちはヤマトを降り、防衛軍の様々な部署へ配置されていた。

 

『 相原義一 殿 至急日本へ帰国し、ヤマトへの乗艦を命ず』

 

ヤマト通信長の相原義一は、防衛軍の研修の一環で南太平洋にある南国の島、南十字島に来ていた。

 

(いきなりのヤマトへの乗艦命令‥‥地球に何かあったのか‥‥?)

 

(みんな元気にしているかな‥‥?)

 

いきなりのヤマトへの乗艦命令が来たと言う事は地球に何か起きたことを意味しているのではないかと思いつつ相原は研修施設の宿舎で荷物を纏めていた。

 

相原が荷物を纏めていると、当然ビシ、ビシ、と窓ガラスに何かがぶつかる音がした。

 

びっくりしながら窓を見ると、そこには鳥やコウモリが窓や研修施設の壁に体当たりをしていた。

 

(と、鳥やコウモリが‥‥一体なんだ?鳥たちの集団自殺か!?)

 

鳥やコウモリの行動にドン引きする相原。

 

彼は急いで荷物を纏めて宿舎を出て空港へと向かう。

 

空港へ向かう道中も鳥やコウモリ、ネズミの死骸が道にあふれていた。

 

(鳥やコウモリの他にネズミも集団自殺をしているのか‥‥?)

 

(まるで地球の終わりみたいだ‥‥)

 

タクシーの車窓から一見何事も無いような環境だが、周囲の様子と突然のヤマトへの乗艦命令から地球に何かが起きているのだと確信した。

 

相原が空港へ到着すると、空には既に鳥やコウモリの姿は見えず、空港では空港スタッフ、清掃員たちが鳥、コウモリ、ネズミの死骸を片付けていた。

 

「お客様にご案内申し上げます。ただいま滑走路の清掃・点検が終了しました。まもなく空港業務を再開いたします。お客様に大変ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございません。搭乗手続きが始まるまでもう少々お待ちください‥繰り返し申し上げます‥‥」

 

空港業務再開のアナウンスが流れる空港ロビーの床には清掃し損ねたのか一羽の小鳥の死骸が横たわっていた。

 

「あら?」

 

そんな小鳥の死骸をみつけたのは淵の広い白い帽子に白いワンピースを身に纏った女性だった。

 

身なりや仕草から彼女が良家のご令嬢なのだと窺える。

 

周囲の人が小鳥の死骸を見ても何とも思わず精々死骸を踏まない様に気を付ける程度なのだが、彼女は小鳥の死骸を手に取った。

 

(どこかに埋められるところは‥‥)

 

そして、小鳥を埋葬してあげようと土がある場所を探すが、空港周辺は整備され埋葬できそうな場所がない。

 

彼女が困っていると、

 

「どうかしましたか?」

 

一人の軍服姿の男性が声をかけて来た。

 

 

相原が搭乗手続きの再開を空港ロビーで待とうとした時、白い帽子と同じく白いワンピースを身に纏った栗毛色の長い髪の女性が困った様子であたりをキョロキョロ見回していた。

 

(何かあったのかな?)

 

相原は彼女が何か困っている様子から声をかけてみる事にした。

 

一応、今は軍服を纏っているので不審者には思われない筈だという判断もあったからだ。

 

「どうかしましたか?」

 

相原が声をかけると女性が振り向き、目が合う。

 

その瞬間、相原の心臓がドキンと大きく胸を打った。

 

彼のそんな心情を知る由もなく、女性は自らの手の中の小鳥の死骸を示した。

 

「可哀想だからどこかに埋めてあげようと思ったのだけど、どこにも土が‥‥」

 

「ああ、みんな舗装されているから‥‥あっ、そうだ!!滑走路の脇なら芝生があったからそこなら土がある筈だよ」

 

「でも、滑走路の傍なんて一般人の私じゃあ‥‥」

 

「大丈夫、ボクが一緒なら入れてくれるよ」

 

相原は空港の整備員に事情を話し女性と共に滑走路脇の地面に小鳥を葬ることが出来た。

 

空港整備員も流石に軍の士官の頼みを無下には出来なかったのだ。

 

無事に小鳥を葬り、土を盛った小鳥のお墓に女性はポンポンと両手で叩き立ち上がると、ヒュ~と風が吹き彼女の後ろ髪がなびく姿が相原には輝いて見えた。

 

「一人でご旅行ですか?」

 

「はい」

 

「観光‥ですか?」

 

「ええ、私。アメリカの学校に通っておりまして、東京のお爺様に急用が出来たみたいで帰る途中でしたの」

 

「お待たせしました。十時発東京行き日本航空四一三便へご搭乗のお客様は搭乗手続きを開始いたしました。手続きが終了しましたら、二十一番ゲートへお越しください。繰り返しお伝え致します‥‥」

 

東京行きの飛行機の搭乗が始まるアナウンスが流れる。

 

「搭乗が始まったみたいですね」

 

「ええ‥‥あら?」

 

女性は何かに気づき、再び視線を地面に向ける。

 

相原も釣られて地面に視線を向けるとそこには数本の野菊の花が咲いていた。

 

「こんなところに野菊が‥‥」

 

女性は二本の野菊を摘むと、

 

「はい、小鳥さんからのお礼よ。どうもありがとう」

 

一本の野菊の花を相原の胸ポケットに挿した。

 

そして、女性は相原に手を振って二十一番ゲートへ向かって行った。

 

(素敵な人だったな‥‥)

 

相原は暫しの間、呆然としながら女性を見送った。

 

東京行きの飛行機が出て少ししてから、軍が手配した輸送機に相原は搭乗した。

 

離陸した輸送機の窓から先ほどの女性の事を思っていると、

 

「ああ!!名前‥聞いていなかった‥‥」

 

相原は女性に自分の名前を教える事もなければ、女性の名前を聞き忘れた事を思い出した。

 

「はぁ~なにやっているんだ?俺は‥‥」

 

女性に自己紹介をしなかった事、

 

女性の名前を聞き忘れた自分に自己嫌悪を感じながら相原は北アルプスドックにあるヤマトへと向かった。

 

 

此処で視点は地球からミッドチルダへと移す。

 

そして、時系列はフェイト、なのは、はやての三人が居酒屋で女子会を行った次の日となる。

 

時空管理局本局 リンディの公室

 

「フェイト・T・ハラオウン執務官、出頭致しました」

 

女子会の翌日、フェイトは朝食の際、リンディから〇〇時に本局に自分の部屋に来て欲しいと言われた。

 

「わざわざ来てもらってごめんなさい。ささ、どうぞ座って」

 

「はい」

 

リンディの部屋には彼女以外にレティの姿もあった。

 

リンディに促されフェイトはソファーへと腰を下ろす。

 

「お茶飲む?」

 

「ううん、いい」

 

「そう?レティ、貴女は?」

 

「私もいいわ。そっちよりもコーヒーか紅茶の方にしてれくれないかしら?フェイトさんもそっちの方が良いわよね?」

 

「は、はい」

 

「そう?美味しいのに‥‥」

 

リンディはフェイとレティトがお茶を断ったことに少々残念がりながらもリンディ茶を作り始めた。

 

「少しは糖分を控えなさい。近い将来、糖尿になっても知らないわよ」

 

そして、リンディ茶を作り終えると、フェイトとレティのためにドリップコーヒーを淹れた。

 

レティはドリップコーヒーを淹れているリンディに対して糖分を控えるように注意する。

 

やがて、飲み物が用意されるとリンディはフェイトに話を振る。

 

「フェイトにはミッドに戻って来てから査察部の聴取やマスコミへの記者会見とか‥‥」

 

「うん‥まぁ‥‥でも、向こうの世界で体験した事に比べれば大したことじゃなかったよ。それで今日、私を呼んだ要件は何かな?」

 

フェイトはリンディに今日自分をわざわざ部屋に呼び出した要件を訊ねる。

 

「それなんだけど‥フェイト、貴女が話せる範囲と判断した内容で良いわ。向こうの世界での事を色々教えて欲しいの」

 

「えっ?」

 

リンディはフェイトに交信以外で向こうの世界での体験話を聞きたいと言う。

 

一応、フェイトに無理矢理全てを聞くわけではなく、彼女が話したら不味いと思う部分は話さなくてもいいと一言前置きをする。

 

「勿論、貴女から聞いた話を第三者に言うつもりはないわ」

 

リンディもレティもフェイトは、信用はしているので、自分が話せる範囲の事を二人に語り始めた。

 

その中で自分とティアナが遭難し、防衛軍と共に向かったイスカンダル‥‥と言うよりもガミラスについて話した。

 

地球連邦と旧ガミラス帝国、『ヤマト』とデスラー総統の戦いと因縁には自分となのは、シグナムたち、スバルとノーヴェたち旧ナンバーズたちに通ずる部分があったからだ。

 

「私は直接そのデスラー総統と言う人と会った事は無いけど、大丈夫かしら?」

 

レティはフェイトから聞いたガミラス‥デスラーの人となりを危惧する。

 

「ん?どう言う事かしら?レティ」

 

「フェイトさんの話を聞く限り、そのデスラー総統と言う人は、他人の傘下に入るような人ではない事が確かでしょう?」

 

「ええ、そうね」

 

デスラーが‥ガミラスが管理局の傘下になるとはフェイトから聞いたデスラーの人となりを聞く限りそれは絶対に有り得ない。

 

「いずれ管理局にも牙を剥いてこないかと思って‥‥」

 

だからこそ、レティはデスラーとガミラスの存在を危惧したのだ。

 

「でも、レティ‥今の私たちにガミラスと戦う術はないわ。それにフェイトの話では、ガミラスは今や流浪の境遇なのだから、そう簡単に復活できるとは限らないんじゃないかしら?」

 

「ガミラスが放浪しているからこそ、どこかの管理世界に襲来しないとも言えないじゃない?それにボラーの時みたいに星の海で遭遇しないとも言い切れないし‥‥」

 

「それはそうだけど‥‥」

 

レティとリンディは放浪しているガミラスの残党がふとした切っ掛けでどこかの管理世界へ襲来しないとは言えない不安があった。

 

しかし、フェイトからの情報は既に古く、ガミラスは既に第二の本国を築いていた事を知る由もなかった。

 

「デスラー総統たちガミラスの動向がわからない以上、捜索は極めて困難だし、管理局がわざわざ血眼になって追いかける必要は、そこまで重要じゃないと思うけど?」

 

「そ、そうね‥‥」

 

「ただ、レティの言う通り、星の海で偶然遭遇する可能性はあるだろうから、“海”は一層慎重な対応をとらないといけないわね」

 

「ええ‥たとえ相手が単艦で行動していたり、ロストロギアの反応があっても、停船や臨検は控えるようにしないとボラーとの一件の再来になりかねないわね」

 

(ガミラスと地球の戦争の様相を見る限り、ガミラスと戦争になったら、ボラーの時よりも悲惨な惨状になるわね‥‥)

 

もう一つの地球でのガミラスとの戦争の資料とリンディから聞かされたボラーとの戦闘からボラーよりもガミラスと戦争したら管理局にもミッド‥いや管理世界に甚大な被害を及ぼすと予測するフェイト。

 

ガミラスが地球に対して行った遊星爆弾のガミラスフォーミングを含めた攻撃で、資料映像で見たあの赤くなり放射能まみれになった地球みたいにミッドや管理世界もあのような星になってしまう可能性が高い。

 

放射能まみれになってしまえば、ミッドには放射能除去装置であるコスモクリーナーは無いし、予想の範疇であるがコスモクリーナーを使用すれば放射能は除去できるが、周囲の空気は魔導師には禁断とされるAMAに変換される可能性が高い。

 

どちらにしても苦しい状況になるのは変わりなかった。

 

「地球連邦政府と交流が持てれば、ガミラスの情報を得られたんだけどね‥‥」

 

「ええ、そうね‥‥」

 

リンディとレティはもう一つの地球との交流が持てなかった事を残念がる。

 

「仮に地球連邦政府と交流を得られたとしても地球からはガミラスの情報を得られるのは難しいと思う」

 

二人の話を聞いたフェイトは仮に地球との交流があっても地球が管理局に対してガミラスの情報を渡すとは思えなかった。

 

「どうしてかしら?」

 

「デスラー総統自身が、地球とヤマトへの復仇心を昇華させているし、チラッと聞いた話だと地球はガミラスから技術供与も得ていたみたいだから‥‥デスラー総統本人もイスカンダルの危機に因縁がある旧敵のヤマトを名指ししてまで支援を要請したほどだったから‥むしろ、万一、管理局と地球連邦との間に武力紛争が生じた場合、ガミラスが地球の側に立って管理局と敵対する可能性の方が遥かに高いと思う。当然、地球側もそれを知っているから彼の動向に注意しながらも、排除まではせずにいると私はそう思っている‥‥少なくとも、デスラー総統の人となりは、私や管理局よりも地球防衛軍、特にヤマトの人たちの方が十分知っているだろうし、放浪したデスラー総統たちがどこに向かったかは地球の人たちも知らない筈だし‥‥」

 

「因縁‥か‥‥私もそうだけど、フェイト‥貴女にもそう言った事があったわね」

 

リンディとクロノのハラオウン親子には闇の書との因縁があり、先ほどフェイトが思っていたなのはとの因縁を思い出すリンディ。

 

「うん‥それに私見だけど、デスラー総統は敵や戦い方にも美学を求めていると思う」

 

「美学?敵や戦い方に?」

 

レティはフェイトの言葉に首を傾げる。

 

「はい。ヤマトは大切なものを守るために全てを賭けてガミラスと死闘を繰り広げ、地球を救いました。そんな姿にデスラー総統やガミラス軍人は評価したのではないでしょうか?」

 

「デスラー総統やガミラスから見ればそういう事もあり得るだろうけど、もう一つの地球の人たち全員の感情は違うのではないかしら?数多の同胞を殺されているのに、そんな簡単に恨みや憎しみを捨てきれるのかしら?」

 

「もちろん、地球市民の間には今なおガミラスに対して深い恨みを抱いている人もいるけど、それは当然だけど、地球側もヤマトはガミラス本星を死の星にして、数多くのガミラス人を殺めました。ヤマトが行った最初のイスカンダルの航海については地球連邦はその事実も義務教育の授業で教えているみたいだし、私自身も図書館の本でそれを知りました。解決方法は間違っていたけど、ガミラス側も自分たちの星の余命が僅かになり、いつ消滅してもおかしくない状態だったと書かれていました。それに‥‥」

 

「それに?」

 

「それに、恨みを抱くと言えば、管理局が管理世界にした住民たちにも同じ事が言えると思います」

 

「「‥‥」」

 

フェイトはもう一つの地球におけるガミラスと彗星帝国の情報から、管理局だけが全ての人から恨まれることなく崇拝されている訳ではない事を指摘する。

 

フェイトの指摘を受けてリンディもレティも思い当たる節があるのか気まずそうな顔をする。

 

「さっきリンディ母さんが言うように管理局の艦とガミラスの艦が戦っても多分勝ち目はないと思う‥‥ガミラスの艦は地球防衛軍と違って波動砲を標準装備してはいないけど、戦闘力は高いし地球防衛軍に負けず劣らずの機動部隊も有していて、瞬間物質移送装置を使った転送戦闘はヤマトの波動砲さえも封じ込め、二度も撃沈寸前まで追い詰めたほどの戦術であり、地球防衛軍も今なお警戒する戦術だって聞いたよ」

 

ガミラス艦隊は、地球防衛軍と異なり波動砲に相当するデスラー砲を搭載する艦はデスラー本人が座乗する艦の他にまだガルマン本星の一部の艦に留まっている。

 

ガミラスの基本戦術は波動砲の決戦兵器よりもむしろ高機動の艦による電撃戦や瞬間物質移送装置を利用して艦載機を敵の鼻先まで送り込み、近距離からの飽和攻撃で仕留める戦闘・戦術こそがガミラス軍の真骨頂であり、それはガルマンとなった今でもその戦術は健在であった。

 

「波動砲やアルカンシェルみたいな殲滅兵器ではなく、戦闘機や小型快速艦による高機動戦か‥‥確かに今の管理局の艦船では追従すらできないわね」

 

「ガミラスの艦載機も大気圏内で行動できるとなると、航空魔導師でも対応は難しいわね」

 

「“空”の魔導師には納得できない人もいるだろうけど、今後の管理局の事を思うなら、地球やガミラスみたいに大気圏と宇宙空間の両方でも行動可能な航空機の導入も考えるべきだと思う」

 

フェイトは同行したイスカンダルでの航海における地球防衛軍のコスモタイガー、ガミラスのデバッケやスヌーカーの活躍から今後の管理局でもこうした大気圏内・宇宙空間の両方で使用可能な航空機の導入の検討を指摘した。

 

(なのはやはやてはどう思うのかな?)

 

“空”に所属するなのは、次元航行艦の艦長のはやての二人はもしも、大気圏内・宇宙空間の両方で使用可能な航空機の導入を検討する際、二人はどんな反応をするのか?

 

空戦魔導師の立場を危うくするかもしれない航空機の導入何てなのはは反対するかもしれない。

 

反対にはやては次元航行艦乗りとして航空機の導入は賛成するかもしれないがシグナムやヴィータたちの立場を考えれば反対にまわるかもしれない。

 

フェイト自身は自分の空戦能力の立場を無くしてでも航空機の導入に関しては賛成するつもりだった。

 

例えそれで、なのはとはやてからの友情を失っても大勢の局員を守る為ならば、魔導師の面子や立場を守るだけの理由で、本来ならば優位に進められる戦術を棒に振り大勢の局員を危険に晒しては本末転倒だとフェイトは思った。

 

ただ、現状管理局は航空機の導入よりも新型の次元航行艦の建造を優先するだろうとリンディもレティもそう判断した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。