星の海へ   作:ステルス兄貴

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百四十七話 捜し人現る

 

 

バジウド星系からガルマン帝国の追撃の手から逃れるためにバジウド星系から逃げた惑星統治役のボラー連邦の高官と現地の一部権力者たちは地球が開拓したケンタウロス座・アルファ星へ攻撃を仕掛けてきた。

 

戦闘衛星と攻撃ステーション相手では優位だったボラー・バジウド連合艦隊であったが、アルファ星の救援に駆け付けたまほろばをはじめとする守備艦隊に返り討ちに遭いボラー・バジウド連合艦隊はワープにて蜘蛛の子を散らすようにケンタウロス座宙域より撤退して行った。

 

しかし、その中の一隻の宇宙戦艦がワープ計算違いで地球圏へワープアウト。

 

すぐに逃げればいいものをその艦に乗っていた艦長は地球がアルファ星を開拓した母星だと知ると、返り討ちにされた事に対してまるで八つ当たりをするかのように都市部を攻撃し始めた。

 

都市部を攻撃していくボラー・バジウド連合艦隊所属の宇宙戦艦はそのままヤマトが整備している北アルプスドックへと向かって行く。

 

地球‥太陽系が破滅しようとしている現状、今のヤマトは地球の希望である。

 

そんなヤマトを傷つけるわけにはいかない。

 

藤堂は古代にこの宇宙戦艦の迎撃命令を下し、山本らヤマト航空隊はドックに常備していた中型雷撃艇でこの戦艦を撃破した。

 

アルファ星への攻撃、そして地球圏へワープアウトしてきた謎の宇宙戦艦。

 

これらの事態から、自分たちの知らない星の海では星間戦争が起きている可能性があり、今回のヤマトの任務‥第二の地球探しの航海は決して生易しいモノではないことが窺えた。

 

謎の宇宙戦艦が地球圏へワープアウトし、これを撃破したその日の夜。

 

古代はようやく揃ったヤマト全乗組員を前甲板に集め訓示を行った。

 

「艦長に敬礼!!」

 

副長の真田が号令をかけると乗組員全員が古代に敬礼し、古代は答礼し、手を降ろすと乗員たちも手を降ろす。

 

「本艦は明日午前五時二十八分、日の出と共に出航する」

 

古代は乗員たちに明日の日の出と共にヤマトが出航する事を伝える。

 

出航命令を聞き、新人の乗組員は緊張が隠せない。

 

「すでに一部の者は知っているように我々の任務は第二の地球となりうる惑星の探査だ。しかも今回の航海は決して平穏なものではない。先ほど、地球圏に襲来した謎の宇宙艦艇の他にケンタウロス座にある開拓惑星が先ほどの宇宙艦艇を有している惑星国家の攻撃を受けた」

 

古代の話を聞いて乗組員たちの間で今回の任務、そして先程の騒動の他に地球がケンタウロス座にある開拓惑星が謎の勢力に攻撃を受けた事にざわつく。

 

「我々が再び生きて地球へ戻れると言う保証はない。そこで、皆に最後の選択の機会を与える。もし、地球に残りたいと言う者が居れば退艦を許可する」

 

古代は最初のイスカンダルへの航海で沖田艦長が当時の乗組員に訓示した時、彗星帝国の脅威が地球へ向けられている中、それを信じない政府・防衛軍の制止を振り切り、ヤマトを出航する時と同じく、無理に連れて行くつもりはなく、もし行きたくない者は行かなくても良いと退艦の許可を出す。

 

乗組員一人、一人、の顔を見渡す古代。

 

すると、相原は動揺しているのか視線が泳ぎ挙動不審となっている。

 

「相原、どうした?」

 

「‥‥」

 

古代が相原の挙動不審な様子に気づき、真田、島も彼の挙動不審な様子に気づき、

 

「相原、お前‥まさか‥‥」

 

「相原‥これまですっと一緒に戦ってきたじゃないか!?」

 

相原に声をかける。

 

「すまん!!みんな‥‥俺は‥‥今、あることをしなかったら、一生後悔すんだ!!だから‥俺は‥‥俺は‥‥」

 

相原はまるで逃げるようにタラップの方へと走り去っていった。

 

「相原‥‥」

 

皆は彼の様子を唖然として見ていた。

 

ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国が地球へ襲来した時も相原はヤマトと‥‥みんなと一緒に戦ってきた。

 

その相原が、どこかの宇宙で戦争が行われているかもしれないと言う理由で恐れをなして逃げるなんて考えられなかった。

 

過去に一度だけ、最初のイスカンダルへの航海の際、ドメルが策したリレー衛星でヤマト乗組員をホームシックにさせようとした罠で、相原が自身の父親の死を知り、ヤマトから脱走した経緯があったが、今回も残された母親が心配でヤマトを降りたのだろうか?

 

相原の退艦理由が分からないまま、他の乗組員からは退艦者が居ないため、訓示は終わり、古代は艦長室で相原の退艦理由を考える。

 

そんな中、雪が艦長室にやって来た。

 

そして雪は古代に相原の退艦理由を伝えた。

 

相原の退艦理由として雪は南十字島で出会ったとされる女性が原因としか思い当たらなかったからだ。

 

「そうだったのか‥‥」

 

「相原君はあと一年‥万一ということを考えた時、その人を捜さなければならないと思うと、どうしてもヤマトに乗って宇宙へ出る訳にはいかなかったのよ‥‥」

 

「あと一年‥‥万一‥‥」

 

相原が抱える葛藤を雪から聞くと古代にも相原の葛藤が分からない言う訳でもなく、古代にも今になって強烈なプレッシャーが襲い掛かった。

 

「古代君、どうしたの?」

 

「‥‥雪、ヤマトは本当に第二の地球を見つけられるのだろうか?宇宙に地球そっくりな星があり、それを見つける事ができるのだろうか?島は広大な宇宙なのだから、見つかるだろうと楽観視しているが、俺は心配なんだ。もし、見つからなかったら人類は滅亡するんだ。第二の地球探し以前に現在宇宙ではどこかの惑星国家が地球を狙っているのかもしれない。その戦争に巻き込まれ星探しどころではなくなったら‥‥?」

 

最初のイスカンダルの航海でも戦闘によるロスで予定航海日よりヤマトは遅れて地球へ帰還した経緯から、もしヤマトが宇宙戦争に巻き込まれたら?

 

また、先程の騒動からヤマトが留守中にどこかの惑星国家が地球へ侵略の魔の手を伸ばしてきたら‥‥

 

そう考えると古代が不安になるのも無理はない。

 

「『探したけどそんな星はありませんでした』ではすまないんだ‥‥雪‥今、ヤマトを降りたいのは俺の方だよ‥‥俺は沖田艦長のように強くはない‥‥」

 

(あの時の沖田艦長もきっとプレッシャーに押しつぶされそうになっていたに違いない)

 

艦長としての職務、そして今回の任務、どこかの宇宙で起きている宇宙戦争、地球を狙っているかもしれない惑星国家の存在、これらの要因からくるプレッシャーに古代は押しつぶされそうになっており、つい弱音を吐いてしまう。

 

そして、イスカンダルへの航海時の沖田艦長もきっと今の自分の様にプレッシャーに押しつぶされそうになっていただろうに、弱音を吐くことも諦める事もなく、ガミラスとの戦闘にも勝ち、イスカンダルへの航海も成功させている。

 

そう思うと改めて沖田艦長の偉大さが感じられる。

 

「古代君‥‥」

 

雪は古代に思わず抱き着く。

 

「雪‥‥」

 

二人はそのまましばし抱き合う。

 

(俺もこのまま雪と‥‥)

 

相原の話を聞き、自分も雪と共にヤマトを降り、どこか遠くへ‥‥そんな思いが古代の中にあった。

 

しかし、自分の肩に地球人類の未来がかかっていると思うと逃げ出す訳にもいかなかった。

 

「艦長、藤堂長官が見えられたぞ」

 

艦長室の内線スピーカーに真田の声で藤堂が来たことを古代に知らせる。

 

その知らせを聞き、慌てて古代と雪は離れる。

 

今夜はヤマトの出向前の出陣式が行われる予定で、見送りも兼ねて藤堂がヤマトを来訪する予定になっていた。

 

「わ、分かった。直ぐに行く」

 

「雪、出陣式の用意は出来ているか?」

 

「は、はい」

 

「よし、それじゃあ、俺は長官を出迎えてくる」

 

古代、島、真田は藤堂の出迎えの為に後部甲板へと出る。

 

やがて、藤堂を乗せたヘリが着艦した。

 

外は日が落ちると天候が悪化して吹雪になり始める。

 

吹雪の中で古代たちは藤堂を敬礼して出迎える。

 

藤堂は答礼し、ヘリのタラップを降りると外の吹雪を見て、

 

「異常気象だな、これは‥‥」

 

(これも太陽異常が原因か‥‥)

 

季節外れの吹雪に対して呟く。

 

すると、藤堂の後ろにもう一人、ヤマトの甲板に立つ人物が降り、藤堂は古代たちに紹介する。

 

「わしの孫娘でな、晶子と言う」

 

フードをとって顔をあげた藤堂の孫娘である晶子は思わずドキッとなる程の美少女であった。

 

「ヤマトの皆さん、はじめまして。藤堂晶子です」

 

「どうしてもヤマトを見たいと言われてな‥‥」

 

防衛軍司令官と言えど、人の子であり、一人の祖父でもあり、どうも孫娘には弱いみたいだ。

 

「コートをお預かりいたしましょう」

 

「ありがとうございます」

 

晶子は真田にコートを預け、艦内へ入る。

 

古代は藤堂と晶子の二人をヤマトの左舷展望室へと案内する。

 

展望室には出陣式の為のパーティー会場に模様替えされており、新人乗組員をはじめとして当直者を除き、ヤマトの乗員たちで溢れかえっていた。

 

藤堂は上座に設置された演説台に乗り、ヤマトの乗員たちに訓示を行う。

 

「ヤマトの諸君、私が防衛軍司令長官の藤堂平九郎、諸君らを宇宙へ送り出す弔砲人である。地球連邦政府は太陽の異変について再調査に乗り出したが、まだ正式に認めるところとなっていない」

 

藤堂はヤマトの出航準備が行われている間に地球連邦政府に対して太陽の観測調査の再度行うように嘆願していた。

 

もしこれが取り越し苦労で終わるのであるならば、それが一番なのだが、此処に来て非公認ながらも芳しくはない結果が出て今後も太陽の調査を継続して行っていくと言う。

 

「今回のヤマトの出航と第二の地球探査の任務は今の所、私の独断であり、表向きは太陽系周辺のパトロールと言う事になっており、私と孫娘の他に諸君らを見送る者はいない。しかし、私はヤマトに期待している。地球人類に未来を運んできてくれ!!ヤマトの航海の成功と諸君の無事を祈って乾杯!!」

 

『乾杯!!』

 

会場に集まった者たちがグラスを掲げ、グラスの中身を飲み干す。

 

それから暫しの間、パーティーを楽しんだ後、古代は晶子を連れてヤマト艦内の各部署を案内する。

 

藤堂は勿論ヤマト艦内の構造は設計図を何度も見ているので知っているが、実際に艦内をこうして見て歩くのは初めてであった。

 

そして最後に古代たちの部署である第一艦橋を案内する。

 

「ここが私の席、その隣が航海長の島、あちらは技師長の真田さんの席、その隣は航海長補佐の太田、反対側が砲術長の南部、その隣が‥‥」

 

南部の隣は通信長の相原の席であるが、その相原はついさっき‥‥

 

「‥‥長官、相原通信長はヤマトを退艦しました」

 

「退艦?どいう事かね?」

 

「相原は南十字島の空港で一人の女性とであったみたいでその人の事を捜したいと‥‥分かってやって頂けませんか?」

 

地球の危機の中、恋愛に現を抜かすなんて‥‥と思われるかもしれないが、地球の危機だからこそ、その人を捜したいと言う相原の気持ちをフォローする古代。

 

「えっ?南十字島の空港‥‥」

 

『南十字島の空港』と言う単語を聞き晶子には何か思い当たる節がある様子だ。

 

「あ、あのその話、詳しく聞かせてもらえますか?」

 

「え、ええ‥私もまた聞きでよくは知らないのですが‥‥」

 

古代は晶子に雪から聞いた相原と南十字島の空港で出会ったとされる女性のエピソードを晶子に伝える。

 

「‥‥その女性は私です」

 

「えっ!?ええええー!!」

 

「先日、私は南十字島に観光へ出かけ、空港で一羽の小鳥さんが亡くなっているのを見つけ、どこかに葬ろうとしていたんです。ただ周りがコンクリートばかりで困っている中、一人の軍人さんが土のある所を見つけて手伝ってくれたんです」

 

晶子の話と相原が出会ったと言う話は一致していた。

 

古代は急ぎ、パーティー会場に戻り、山本たち飛行科の隊員を集め、相原の捜索を命じた。

 

明日の出航の為にパーティーに出されていた飲み物はすべてソフトドリンクだったので、操縦に関して問題はなく、航空隊の隊員たちは新に搭載された小型ヘリで相原の捜索へ向かった。

 

「面倒をかけてすまない。だが、何としてでも相原を見つけてくれ」

 

「ああ、任せておけ」

 

相原捜索隊のヘリは次々とヤマトの甲板を飛び立って行った。

 

流石に吹雪の中で待っている訳にはいかないので、古代は艦内で吉報を待つことにして踵を返した時、タラップに座り込む人影を見つけた。

 

「ま、まさかっ!?」

 

古代がタラップへ駆け寄ると、そこにはタラップに腰掛ける相原の姿があった。

 

「相原!!降りたんじゃなかったのか!?」

 

古代はタラップに座る相原に声をかける。

 

「降りたよ‥‥だけど、戻って来た。俺が探さなければならないのはあの人じゃなくて第二の地球だって気がどうしても吹っ切れなくてな‥‥あの人はそれからでも‥‥」

 

地球が滅亡してしまってはあの人を捜す事も出来ない。

 

それならば第二の地球を探し終えてからあの人を捜そうと決意した為、相原はもう一度ヤマトに戻って来た。

 

彼は一人の男よりも一人の宇宙戦士としての矜持を選択したのだ。

 

「相原、こっちへ来い、早く」

 

古代は相原の手を引いて艦内へと引っ張っていく。

 

「えっ?えっ?」

 

相原はいきなりの事態で戸惑っている。

 

「お前に合わせたい人がいる‥‥その前に一度着替えてこい」

 

古代は雪で濡れた相原を一度着替えさせて出陣式の会場へと連れて行く。

 

会場では真田たちの談笑の中に居た晶子は相原の姿を見てハッとなる。

 

当然、相原も晶子の姿を見て目を大きく見開く。

 

二人はどちらからともなく歩み寄る。

 

「えっと‥‥あの時、言っていた『お爺様』ってもしかして長官のこと?」

 

晶子は微笑しながら頷く。

 

「し、失礼しました!!」

 

相原は藤堂に一礼する。

 

一同の間に失笑が広がる。

 

「改めまして、藤堂晶子です」

 

「ヤマト通信長の相原義一です」

 

相原はヤマト出航間際に捜し人と出会い、彼女の名前を知ることが出来た。

 

やがて、出陣式は終わり、藤堂と晶子は迎えのヘリに乗ろうとした時、

 

「晶子さん‥これ‥‥」

 

相原は脇に抱えていた手帳を開く。

 

するとそのページには野菊の花が押し花になっていた。

 

それを見た晶子は微笑しながら自らも懐から手帳を取り出し開くとそこには相原同様、野菊の花が押し花になっていた。

 

「私も押し花にしているの‥‥私の宝物よ」

 

「あ、晶子さん」

 

「はい?」

 

「‥‥いえ、お元気で」

 

「はい。相原さんも‥‥」

 

晶子は相原に一礼しヘリの機内へと入っていく。

 

(初心な恋人たちね‥‥)

 

相原と晶子‥二人の様子を見た雪はそんな風に思った。

 

やがて二人を乗せたヘリはヤマトの後部甲板から飛び立っていった。

 

「相原‥‥」

 

「はい」

 

「俺も自信が沸いたよ」

 

「えっ?」

 

古代の言葉の意味が分からず相原は首を傾げる。

 

しかし、古代は奇跡のような偶然から相原の捜し人は見つかった。

 

島の言う通り、宇宙は広大であり、イスカンダルや時空管理局があるミッドチルダがあるように地球に似た惑星もあり、見つかるだろうと言う自信が沸いて来た。

 

その後、ヤマト航空隊の隊員らが戻ってくると、相原は彼らに心配された事と無駄足をさせた事から、ヤマト航空隊全員に食堂の食事を奢る羽目になった。

 

 

ヤマトの出航が目前に迫っている中、ケンタウロス座・アルファ星では‥‥

 

アルファ星は謎の宇宙艦隊より突如、攻撃を受け、そこを まほろば以下の守備艦隊が謎の宇宙艦隊を撃破したばかりで、守備艦隊は被災地救援の為、一部を警戒と敵艦の残骸回収の為に宇宙へ残しアルファ星の基地へと戻った。

 

各艦の主計科の隊員たちは搭載されていたO・M・C・Sをフル稼働させて被災者たちへ炊き出しを行い、医務官たちは総出で負傷者たちの治療にあたる。

 

「あっ、山上さん」

 

通信科の所属しているギンガであるが、クイントが亡くなった後にナカジマ家の炊事を担うようになった彼女は、自分も被災者の為にと炊き出しを手伝っていた。

 

そんな中、炊き出しの列にギンガの見知った人が居た。

 

「中嶋さん‥‥」

 

「ご家族は大丈夫でしたか?」

 

「はい。私は買い物の途中で、近くにシェルターがあり、そこへ避難しまして‥父も主人も会社のシェルターへ無事に避難出来て幸いケガもないそうです」

 

「それは良かったです」

 

ギンガは山上一家がケガもなく無事に今回の事件を乗り切れたことにホッとした。

 

良馬は基地の司令部へ行き、地球へ今回の件とアルファ星への救援を求めたのかを確認した。

 

「司令官、今回の一件は既に地球に報告は?」

 

「通達はした。それと、地球でもどうやら先ほどの勢力と同じ宇宙戦艦が一隻ワープアウトをして都市部へ攻撃をおこなったみたいだ」

 

「地球へ!?それで、被害は?」

 

「一隻だけだったので、大規模な攻撃ではなかったが都市部のライフラインの一部が破壊されたようだ」

 

「それでその戦艦は?」

 

「北アルプスのヤマトが整備しているドックへ向かったようだが、ヤマト航空隊がこれを撃沈したらしい」

 

「そうですか‥‥」

 

「今回の攻撃で戦闘衛星と攻撃ステーションが壊滅したので、当分の惑星守備は守備艦隊に行ってもらう。救援で第十一番惑星、冥王星、アステロイドベルト基地からも増援のパトロール部隊がこちらに向かっている」

 

「承知しました」

 

(パトロール部隊と言うことは、戦艦や空母は望めないか‥‥)

 

(せめてアンドロメダ級が一隻‥‥それが無理なら丙型のドレッドノート級でも良いから三隻~五隻はよこしてもらいたいな‥‥)

 

パトロール部隊の主な編成がパトロール艦、護衛艦、駆逐艦などの中・小艦艇なので、せめて戦艦を少数でも良いので派遣してもらいたいともう良馬であった。

 

おそらく目の前の基地司令官も同じようなことを思っているに違いない。

 

「それで、監視衛星からの映像をモニター越しで見たのだが、実際にあの艦隊と戦った君の意見も聞きたい。今回の襲撃者はやはりこれまで地球が遭遇した事のない未知の惑星国家だと思うか?」

 

「現在、宇宙に漂っている敵艦の残骸を回収中ですが、艦の構造を見る限りではガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国、時空管理局の艦とも形状が一致せず、これらの勢力に所属している艦とは言い難いのですが、詳しい事は残骸を調べてみない事にはまだ分かりません。もしかしたら、これまで地球が接触したいずれかの惑星国家が新型の宇宙艦船を建造した可能性もありますし‥‥」

 

ずんぐりと丸みを帯びた艦影はガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国、時空管理局、それぞれの艦船の特徴からはズレている形状をしていた。

 

しかし、格納式の武装に関しては時空管理局の宇宙艦艇が採用していた武装方式だ。

 

『まさか、時空管理局が?』と言う思いもあるが、時空管理局の場合、ギンガが時空管理局の周波数でも通信を行っても返信することがなかった。

 

主観ながら、時空管理局は自尊心が強い者たちが多い印象があったので、攻撃前に此方に対して降伏勧告ぐらいはしてきそうなので、こちらの通信を一方的に無視するのは合点がいかなかった。

 

「司令官、襲撃した艦の曳航準備をしている守備艦隊より入港許可を求める通信が入っております」

 

オペレーターが司令官に襲撃してきた艦を曳航している味方艦からの通信が入る。

 

「曳航している艦に生存者は?」

 

司令官は曳航されている艦に生存者の有無を訊ねる。

 

「サーチしましたが、生存者はなかったそうです」

 

アルファ星を襲撃し、今現在曳航準備をしている艦は調査・救助活動によって生存者は居なかった事が報告にあがる。

 

「よし、入港を許可する。ドックの整備員や保険部の職員たちには調査準備を指示しろ」

 

「了解」

 

やがて、アルファ星周辺で襲撃してきた艦隊の内、比較的に原型を留めている漂流艦を曳航してきた味方の艦がアルファ星の基地ドックへ戻って来た。

 

ドックには整備員たちが待機しており、準備が整うと曳航された艦の調査に入る。

 

良馬も今回の敵艦と戦った者として曳航された艦の調査に同行した。

 

軍帽から作業用のヘルメットをかぶり、整備員たちと共に撃破された艦内に入る。

 

「この艦の生存者は居ないと聞きましたけど、乗員の遺体も無かったのですか?」

 

「艦橋をはじめ各部署に相当な被害を受け、乗員は宇宙に吸い出されたり、誘爆に巻き込まれたみたいですが、何体かは確認できたみたいです」

 

「検死の方は?」

 

「これから行われるみたいです」

 

良馬がこの艦の乗員について質問をしていると、防護服姿の人間がストレッチャーの上に布が被された何かを乗せて通路を歩いていく。

 

あのストレッチャーに乗っているのがこの艦の乗員の遺体であるのは一目で分かった。

 

それから調査が進んで行くと、

 

「うーん‥‥」

 

「どうしました?」

 

「あっ、月村艦長‥‥実はこの艦のエンジンなんですけど‥‥」

 

「この艦のエンジン?」

 

「はい‥‥これをちょっと見て下さい」

 

「ん?これって‥‥」

 

「はい。この構造は‥‥」

 

調査結果を見せてもらうと、この艦のエンジンがガミラスの宇宙艦艇に使用されている機関と似ていると言う結果が出たのだ。

 

「この艦のエンジンがガミラスと似ている?」

 

「はい。全て一致するわけではないのですが、構造がガミラス製の波動エンジンと酷似している部分があります」

 

「ガミラスの宇宙艦艇が使用しているエンジンも波動エンジンに似ているエンジンなので偶然似ているとか?」

 

「うーん‥その可能性もあるのですが‥‥その点を解明するにはもう少し詳しい調査が必要です」

 

「だろうね‥‥」

 

イスカンダル製の設計図を基に製作した地球製の波動エンジン、ガミラス純正の波動エンジンと宇宙には既に二種類の似た構造の波動エンジンが存在しているので、他にも波動エンジンに似た構造のエンジンを採用している惑星国家があっても不思議ではないのだが、調査に当たった整備員も良馬も煮え切らないモヤモヤした印象を抱いた。

 

ただ、整備員の言うようにこのモヤモヤを解決するにはより詳しい調査が必要なのだが、このアルファ星には防衛軍の基地はあるが、地球の科学局並みの調査機関も調査機器もないので、詳しい調査をするのであるならばこの艦を地球まで曳航するか、科学局の職員と調査機器を持ってアルファ星に来てもらうしかない。

 

リスクや時間を考えると後者の方が、効率が良いだろう。

 

その点も地球に今回の調査報告を入れて指示を仰ぎ、意見を具申しなければならない。

 

次に良馬は、乗員の遺体を検死している保険部へと行き、調査報告を訊ねる。

 

「それであの艦の乗員ですが、検死の結果で何か分かった事がありましたか?」

 

「皮膚の色や血液の色を除けば身体の組成は我々地球人とそっくりな構造をしていました」

 

どうやらあの艦の乗員たちはSFに出てくるようなタコ型の宇宙人や暗黒星団帝国の人たちみたいなグレイと呼ばれる宇宙人に似た姿でもなく、ライトノベルの異世界モノによく登場する獣人みたいな姿でもなく、地球人の様な人型であり、その構造も地球人とほぼ一致していると言う。

 

『ほぼ』と言うのはあの艦の乗員の皮膚と血液の色が地球人類と異なる色をしているみたいだ。

 

「皮膚や血液の色?それってガミラス人や彗星帝国人と同じだったんですか?」

 

皮膚の色が違う地球人類に似ている宇宙人と言えばガミラス人と彗星帝国人ぐらいだった。

 

「いえ、ガミラス人よりもやや薄い色‥水色だったり、彗星帝国の人間に似た皮膚の色をした乗員も居ました」

 

「水色の皮膚に彗星帝国の人間に似た皮膚‥‥その彗星帝国人の皮膚に似た乗員は彗星帝国人だったのですか?」

 

あの艦の乗員の皮膚は水色か彗星帝国人みたいな黄緑色の皮膚をしていた。

 

「こちらも気になり調べたところ、DNAの配列が若干、彗星帝国人と異なっていたので、あの艦の乗員が彗星帝国人とは言い切れません」

 

黄緑色の皮膚の乗員は彗星帝国人と異なる星の住人だと検死をした法医学者は結論を出した。

 

(似た色の皮膚を持つ異星人か‥‥まぁ地球、イスカンダル、ミッドチルダの住人も同じ肌の色をしているし、この広い宇宙、そっくりさんも居る訳だし、似たような肌の色をした人が居てもおかしくは無いか‥‥)

 

「ガミラス人や地球人の様な乗員は居ましたか?」

 

「いえ、そのような特徴の乗員の遺体はありませんでした」

 

(ガミラス人や地球人の特徴を持つ乗員は居なかったとなると、やはりあの艦はガミラス・時空管理局の所属ではなかった事か‥‥)

 

乗員にガミラス人、地球人に似た特徴を持つ者が居なかった事からあの艦がガミラス、そして時空管理局の所属ではない事が窺えるが、それでもあの艦のエンジンがガミラスと似ていた事については疑問が残った。

 

良馬が保険部の建物から艦船ドックの近くで行われている炊き出し所まで戻ってくると、そこではフェリシア、ギンガ、ディアーチェが子供たちの相手をしていた。

 

(守れた‥‥んだよな‥‥)

 

無邪気な笑い声をあげて笑みを浮かべている子供たちの姿を見て、良馬はこの開拓惑星を守れたのだと実感することが出来た。

 

炊き出しの邪魔になってはならないし、現在まで分かっている事を基地司令官と地球へ報告する為、良馬は司令部へと向かった。

 

一方、子供たちの相手をしているフェリシア、ギンガ、ディアーチェの三人は‥‥

 

「王様はやっぱりカリスマ性があるから艦長職とか向いていそうなのになんで目指さなかったの?」

 

と、フェリシアはディアーチェに何故艦長職を目指さずに主計科の隊員に収まっているのかを不思議に思い訊ねた。

 

ディアーチェは子供たちと共に炊き出しの料理に使う為の食材を切りながら料理を教えたり、主計科の隊員に指示を出していた。

 

「あっ、私もそう思いました」

 

(ディアーチェさん、はやてさんにそっくりだし、フェリシアさんが言うようにカリスマ性を感じるし、艦長になっていても不思議じゃないわね)

 

「ん?ああ、我は料理をしつつ宇宙へ行きたかったからな、艦長なんて役職には元々興味がなかったし、今後も目指さすことはない」

 

「ありゃりゃ、そうなんだ‥‥」

 

「でも、ディアーチェさんはお世話好きなんで何となく分かる気がします」

 

ディアーチェの説明を聞いたフェリシアとギンガは何故、ディアーチェが艦長職にならないのかを聞いて納得した二人。

 

その後も三人は子供たちの相手をしていたのだが、不意にギンガは子供たちと触れ合っていて将来について考えた。

 

(もし、将来、良馬さんと結婚出来たら子供は欲しいけど‥‥)

 

将来、良馬と結婚をしたら、ギンガとしては当然、彼との間に子供は欲しい。

 

しかし、ギンガにはどうしても拭いきれない不安があった。

 

(でも、私は戦闘機人だし‥‥子供‥出来るのかな?)

 

それは、ギンガ自身の出生が関係していた。

 

ギンガは死んだクイントのDNAデータを基に生まれた戦闘機人‥‥

 

母の母体から生まれた通常の人と異なる形でこの世に生を受けている。

 

そもそも戦闘機人の特徴が、人体に身体能力を強化するための機械部品をインプラントし、人の身体と機械を融合させ、常人を超える能力を得た者で、鋼の骨格と人工筋肉を持ち、遺伝子調整やリンカーコアに干渉するプログラムユニットが埋め込まれていると言うモノだ。

 

この戦闘機人独自の特徴は勿論、ギンガ本人は知っている。

 

年齢に応じて成長し、普通の人よりはたくさん食べるが、同じ食べ物を食べている事から外見は普通の人と変わらないが、この戦闘機人独特の身体的特徴からギンガは、自分は普通の女性のように妊娠できるのか不安と疑問をもっていた。

 

戦闘機人の開発の歴史は旧暦の頃より幾度も開発が試みられたてきたが、旧暦の時代にあった技術力では、完成の域に達したものはほとんど存在せず、「肉体と機械との間で起こる拒絶反応」や「長期使用における機械部分のメンテナンス」など本来人体に機械を移植・融合させることは免疫を初めとした幾つもの問題があり、実用化は不可能とされていた。

 

また、世間でも倫理的、技術的な問題からタブー視されていた。

 

しかし、スカリエッティがこれまでの戦闘機人の製造理論を基に新たな戦闘機人の製造理論を生み出したことにより、スカリエッティ自身は十二人の戦闘機人、ナンバーズを‥そして彼とは異なるとある謎の組織がギンガとスバルを生み出した。

 

旧暦の頃より研究と開発が進められてきた戦闘機人の研究であるが、そんな長い研究でも、戦闘機人の妊娠・出産の記録が未だに存在していない。

 

もし、過去の古い記録でも戦闘機人の妊娠・出産記録があれば、ギンガもここまでは不安にならないが、旧暦、そして新暦になってもやはり戦闘機人の妊娠・出産記録はない。

 

そもそも戦闘機人を生み出した研究者たちは戦闘機人を兵器として生み出し、妊娠・出産の機能なんて二の次が想定さえしていない可能性が高い。

 

ただ、ギンガはJS事件の事をフェイトとティアナから大まかな概要は聞いたが、細かな詳細は知らされていない。

 

その中で、スカリエッティが生み出した戦闘機人‥ナンバーズの体内には自分のコピー因子が埋め込まれており、例え自分が滅びても一月もすればその誰かが新たなスカリエッティとして記憶を引き継ぎ新生するという機能を植え付けていたが、ナンバーズが全員逮捕された後、この因子は除去されたが、この仕掛けはある意味妊娠に近い仕掛けなのだろうが、ギンガはこの事実を知らない。

 

(リニスさんや忍さんなら、分かるかな?)

 

デバイスを製作できるリニス、そしてこの世界に次元漂流してから自分の身体のメンテナンスをしている忍ならば、例えミッドの技術者でなくとも戦闘機人のギンガが妊娠出来るか分かるかもしれない。

 

(リニスさんならすぐに聞けるから時間があったらまずはリニスさんに聞いてみよう)

 

忍は地球に居るので、すぐに確認する事は出来ないが、まほろばの医務官であるリニスならば、時間を見て話をすることが出来るので、炊き出しが終わったら時間を見てリニスに相談へ行こうと思うギンガであった。

 

 

一方、良馬は基地司令官の下へ行き、今回、艦と乗員の検死調査で判明した結果を地球へ報告する場面にオブザーバーとして参加した。

 

地球との通信が繋がるとモニターの向こう側に出たのは藤堂ではなく、参謀長の西郷であった。

 

「藤堂長官はご不在でしょうか?」

 

「うむ、長官は現在、北アルプスドックのヤマトへ表敬訪問に出ておる」

 

「ヤマトへ?」

 

「ああ、近々ヤマトは太陽系周辺のパトロールの為に出航するためだ」

 

(太陽系周辺のパトロール任務なのに長官自らが表敬訪問?なんか妙だな‥‥)

 

良馬は藤堂の行動に違和感を覚えた。

 

「アルファ星の現状はどうなっておる?」

 

アルファ星が謎の艦隊に突如、攻撃を受けた事は当然、西郷は知っているが、事態は刻一刻変化しているので、現在のアルファ星の状況を訊ねる。

 

艦と乗員の検死前にも地球へ一度、襲撃してきた艦隊の撃破の知らせは送っているが、その後の調査報告はまだ入れていない。

 

「当惑星を襲撃した謎の艦隊は、まほろば以下の守備艦隊が攻撃し、何処へと撤退して行きましたが、今度の襲撃にも備え、守備艦隊の一部が引き続き、軌道上で警戒をしております。住民の方々には炊き出しと無償で負傷者の手当てを行っております」

 

確認の為に司令官は西郷に襲撃してきた艦隊の撃破と現在、被災した住民に対しての支援を行っている旨を報告し、

 

「次に撃破した艦隊の中で、比較的原型を留めている艦をドックまで曳航して調査をした結果、生存者は認められませんでした」

 

「どこの惑星国家に所属しているのかは判明したのか?」

 

「いえ。原型を留めていたとはいえ、艦橋が吹っ飛んでいたので、航海ログなどのデータも吹っ飛んでいたみたいでどこの惑星国家に所属しているのか不明です」

 

「そうか‥‥その他に何か分かった事は?」

 

「エンジンを調査した技師の話では、この艦のエンジンの構造がガミラスの宇宙艦艇のエンジンの構造と酷似していると言う結果が出ました」

 

「ガミラスと!?」

 

ガミラスと似た宇宙エンジンを持つ艦と聞き西郷は驚愕する。

 

「はい。ただ、艦内に残っていた乗員の遺体を検死した結果、ガミラス人の特徴を持った者は居ませんでした」

 

「むぅ~‥‥」

 

この不可解な事態に西郷も唸るしかなかった。

 

ガミラス人が乗っていなかったにもかかわらず、ガミラスの宇宙艦艇と酷似したエンジンを持つ謎の惑星国家‥‥

 

この謎が解明されるのはもう間もなく事であった。

 

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