三笠 は えいゆう 同様、フルメンテナンスとなり別命あるまでは乗員は休暇ないし、地上勤務となった。
そんな中、
「新型機?」
良馬は実家である月村家が所有する会社の一つ、『月村航空』から新型機が出来たので見に来てほしいと連絡があり、地上にある航空機格納庫へ向かった。
良馬は士官学校時代にパイロットコースも受講しており、航空機自体にもそして宇宙空間や空を飛ぶことも大変好きだった。
事実最初に軍に任官した時は、古代守同様、宇宙パイロットだった。
新型機が置いてある格納庫では、月村航空の社員が良馬を待っていた。
「これが‥‥」
「はい、我が月村航空、南部重工そして揚羽電子、日本を代表する三社が共同開発した新型機“コスモゼロ”です」
良馬の目の前には新型機“コスモゼロ”が三機、置かれていた。
「対遊星爆弾用の迎撃機ですか?」
「いえ、艦上戦闘機に開発された機体で、この内、二機は近々完成する新型戦艦に搭載される予定だそうです。残り一機は、良馬さんが使って良いと、月村総帥から指示がきています」
「忍さんから?」
新型機を紹介された良馬は、その後、機体から離れた場所で社員の人からこの新型機のスペック等の説明を聞いていた。
そしてその格納庫では、先日の病院での沖田提督暴行未遂により、格納庫の罰掃除を命じられた古代と島がおり、格納庫の掃除をしていた。
この時、古代と島は良馬から死角の位置にいた為、互いの存在に気付かなかった。
「すまない、島」
古代は格納庫掃除を命じられてからは必ず一度はこうして島に謝罪の言葉をかけている。
島は暴行未遂の件には無関係なのだが、連帯責任と言う形でこうして罰掃除をする羽目になった。
「まぁ、いいさ。これはこれで、学生時代を思い出すし、詫びなら今度、何か奢ってくれ」
「ああ」
しかし、島は古代に文句も言わず、掃除に付き合ってくれた。
「ん?」
掃除をしていた古代がモップを動かしていた手を止めた。
「ん?どうした?古代?」
「これ、見たことのない機体だ‥‥」
古代の目の前には見慣れた100式偵察機ではなく今まで見たことのない機体が置かれていた。
主翼と上下の垂直尾翼の十文字翼。機首部の両側面と下面の計三箇所に、姿勢制御用の噴射ノズルを持つ変わった機体だった。
「防空任務用の試作機じゃないか?」
地上の格納庫に置いてあると言う事は、対遊星爆弾ないし、対ガミラス地上部隊迎撃用の戦闘機かと思った二人だった。
古代は新型機が気になりながらも格納庫の掃除に勤しんだ。
その頃、防衛軍司令部では、
「ニューヨーク交信不能、エネルギーが尽きた模様」
「パリ、正午より沈黙」
「ケニア、パニック状態に陥っています」
「モスクワ、“さよなら”を打ち続けています」
「北京、リオデジャネイロ、出力低下、電波キャッチ不能」
「関東地区、放射能さらに0.5㎞降下」
司令部の通信室では世界各国の情報が寄せられているが、どれも絶望的な知らせばかりであった。
そんな通信室の中を沖田 十三は只管歩き、一番奥の部屋を目指していた。
その奥の部屋では防衛軍司令長官、藤堂平九郎が待っていた。
「沖田君。例のカプセルだが、たった今解析が出来たよ」
部屋の中心にある解析機兼再生装置の中には古代達が火星で回収した例のカプセルがセットされている状態だった。
「そうですか‥‥それで?内容は?」
「うむ、これから再生する‥‥では、頼む」
「はい」
藤堂は部屋にいたオペレーターに再生するように伝えると、オペレーターは、コンピューターを操作してカプセルの内容を再生する。
カプセルは、最初は雑音で音声は聞こえてこなかったが、やがて、綺麗な女性の人の声が聞こえてきた。
親愛なる地球の皆さん‥‥
私はイスカンダルのスターシア‥‥
あなた方の星、地球は今まさにガミラスの手で、滅亡の淵に立たされています。
ガミラスの放射能によって、地球の全生物が滅びるのは後僅かに一年
彼らはそれを待っているのです
しかし、私どもの星には放射能除去装置、コスモクリーナーがあります
これを使う以外に地球を救う道はありません
しかし、残念ながら私がこれを地球に届けることはもう叶いません。
そこで私は、妹サーシアに超光速エンジン‥‥波動エンジンの設計図を持たせました。
運良くこのメッセージがあなた方の手に渡ったら、このエンジンを組み立てて、イスカンダルへ来るのです。
私どもの星は、銀河系から隔てる事14万8000光年の彼方にあるマゼラン星雲にある恒星系サンザーの中にある惑星‥‥。
私はあなた方が未知の苦難を克服し、ここへ来ることを信じています。
私はイスカンダルのスターシア‥‥
スターシアと名乗る女性のメッセージが終わると、続いて通信室の大モニターに宇宙船のエンジンの設計図の様なモノが映し出された。
「沖田君、コレは?」
「光速を可能とするエンジンの設計図の様ですな‥‥」
「信じても良いのだろうか?」
スターシアなる人物からのメッセージに藤堂は怪しむ。
相手は何の見返りも無く、ただイスカンダルと言う星に来れば、地球に充満する放射能を除去できる機械、放射能除去装置(コスモクリーナー)を渡すと言っている。
『無料(タダ)よりも高い物は無い』と言う言葉通り、何か裏があるのではないか思うのも無理はない。
もしかしたら、ガミラスの罠と言う可能性も捨てきれない。
しかし、沖田は、
「今は信じるほかないでしょう。この設計図のエンジンを大至急、製造してください」
と、スターシアのメッセージを信じた。
今の地球は正直に言って形振りなど構っている余裕はない。
地球に充満する放射能を除去する機械があるのであれば、是が非でも手に入れなければならない。
沖田は藁にも縋る思いから、スターシアのメッセージを信じたのだ。
沖田が藤堂にイスカンダル製の波動エンジンの製造を依頼した直後、
ウウウウウ~!!
ウウウウウ~!!
けたたましい警戒サイレンの音が鳴り響いた。
「どうした!?何事だ!?」
「非常警戒指令!!衛星軌道より侵入機を確認!!」
「エネルギー反応から見て、敵の偵察機と思われます!!」
「敵偵察機、防衛ラインを突破!!」
「くっ、こうも易々と迎撃態勢を急げ!!」
司令部では突然来襲した偵察機の対応に蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
その騒ぎの中、土方は慌てふためくこともなく、ただジッと黙ってモニターを見ていた。
「敵偵察機の目標判明!!」
「どこだ!?」
「北緯30度43分 東経128度04分、長崎県男女群島女島南方176km‥‥九州坊ノ岬沖の地点です!!」
(気づかれたか?)
敵偵察機の目標地点を聞き、土方は先程よりも目を細めモニターを睨んだ。
敵偵察機の知らせは格納庫でも放送されていた。
「‥‥」
古代はガミラスが地球に来ているこの状況下、何もできない自分に無力さを感じ、そんな自分が許せないのか、顔を俯かせつつも、拳をグッと握った。
「古代」
そんな古代に島はヘルメットを投げた。
古代は島から投げられたヘルメットを受け取る。
「飛びたいんだろう?」
そう言いながら自分もヘルメットを手にした。
格納庫の整備員とパイロットの詰所にいた良馬の耳に航空機のエンジン音が聞こえてきた。
振り向くと、例の新型機の一機がエンジンを吹かして発進しようとしていた。
「試験飛行でもするのかな?」
「いや、一番機にそんな予定は無い筈ですが‥‥?」
「えっ?」
良馬はてっきりこれから試験飛行するのかと思っていたのだが、社員の話では今、発進しようとしている一番機には今日、試験飛行の予定はないと言う。
良馬が首を傾げると、
「おい!!お前ら!!その機体から、降りろ!!そいつは‥‥!!」
近くにいた整備員が一番機のパイロットに怒鳴っているが、エンジン音で整備員の声はかき消されていた様で、一番機はそのまま格納庫から発進してしまった。
「あぁ~もう‥‥!!」
整備員は、「面倒な事が起きた」とでも言いたげな顔をしていた。
「どうしたんですか?」
そこで、良馬はその整備員に事情を聞いた。
元々試験飛行の予定がなかった一番機がいきなり発進してしまったのだから、何か不測の事態が起きたのかもしてない。
「どうもこうも、さっき此処で罰掃除をしていた新米士官どもが、ガミラスの偵察機が来たっていう知らせを聞いた途端、一番機で出て行っちまったんですよ」
「成程。それで、何か不味いことでも?一応アレは艦上戦闘機だから武装はついているのだろう?偵察機相手なら特に問題ないだろう?」
「それはそうなんですが‥‥」
整備員は何とも歯切れの悪い感じで言う。
「やはり何か問題が?」
「じ、実はあの機体、まだ整備途中でして、武装はおろか、飛行用のエネルギーも少ししか積んでいないんです」
「えっ?マジで‥‥?」
「マジです」
良馬は顔を引きつらせながら整備員に訊ねるが、整備員の方は至って真面目な顔をしているので、整備員が言っている事は間違いではないと言う事が分かる。
「すぐ、飛べそうな機体はあるか!?」
整備員の言葉に良馬は、先ほど飛び出していった新米士官たちを連れ戻そうと、整備員にすぐ飛べる機体は無いかと訊ねる。
「コスモゼロの零番機が整備・補給が完了しています。今日、良馬さんが試験飛行したがるかと思いまして」
「流石だ。後、予備のエネルギーカプセルも積んでくれ、鉄砲玉の様に飛び出していった新米君たちを徒歩で帰すわけにはいかないだろう?」
「分かりましたすぐに用意します」
整備員がエネルギーカプセルを用意している間に良馬はヘルメットを被り、コスモゼロ、零番機に搭乗した。
幸いここは航空機格納庫だったので、航空機用のエネルギーカプセルはすぐに用意出来た。
エネルギーカプセルを積み、良馬は、整備途中の機体で飛び出していった新米士官たち(古代と島)の後を追った。
その頃、格納庫から一足先に発進した古代たちはと言うと‥‥
「良い機体だ。今までのとは全然違う。これなら‥‥」
と、新型機、コスモゼロを称賛した。
「やっとお前らしくなったな」
と、後部座席から島が声をかけた。
この時、古代の表情は、今までの憂鬱感が漂う表情をしていたが、コスモゼロを操縦している古代の顔はまさに晴れ渡っていた。
「島まで来てくれることなかったのに」
「今の精神状態の古代一人を戦場に出すわけにいかないだろう?」
「ところで古代、坊ノ岬ってどこだ?」
「お前、特務航海科主席だろう?」
「日本の地理は宇宙船の操船には重要じゃないのさ」
どうやら島は宇宙海図の方は詳しくても、地球の地理にはあまり詳しくないようだ。
島の言葉を聞き、コスモゼロのコックピット内では笑い声が満ちた。
「まぁ、行けばわかるさ。あと数分だ」
やがて、坊ノ岬近くにくると、
「レーダーに敵影を捕捉」
コスモゼロに搭載されているレーダーが敵の偵察機を捕捉した。
「いた!!あれだ!!」
やがて、肉眼でも敵の偵察機を確認できた。
「高速偵察機か‥‥やれるか?古代?」
「もちろんだ!!」
古代はスロットルを全開に吹かし、高度を上げ、敵偵察機の後方の位置出ると、敵偵察機もコスモゼロの存在に気づき、退避行動をとった。
「逃がすか!!」
古代はその言葉の通り、敵偵察機の後部に食らいつき、照準器で敵偵察機をロック(捕捉)し、武装のパルスレーザーのトリガー(引き金)を引くが、銃口からパルスレーザーが発射されることはなかった。
「あ、あれ?」
古代が慌ててシステムチェックをすると、メーターの一つに『銃撃不可』という文字が表示された。
「こいつ武装が乗ってない!!」
戦闘機なのに非武装状態だった事に古代はイラつく。
「お前らしくないミスだな」
島が古代を茶化す様に言う。
その間に敵の偵察機はオーバーブーストを吹かし、この空域からの脱出を図った。
「クソ、逃げられた」
古代は悔しそうに呟く。
しかし、敵偵察機の上方より、急降下してきたもう一機のコスモゼロからの攻撃を受け、敵偵察機は撃墜された。
「友軍機?」
「しかも、この機体と同じだ‥‥」
古代達が敵の偵察機を撃墜したコスモゼロを見ていると、突然、古代達が乗っているコスモゼロが異常振動を起こし始めた。
「ん?あっ!システムエラーが出ている!!」
「は?」
島が後部座席からこの異常振動の原因を調べると、モニターの中心に「エラー」の文字が大きく表示された。
「すまん、この機体まだ整備途中だったみたいだ‥‥」
「島、オマエ―っ!!」
古代は絶叫しつつも、墜落だけは何とか避けた。
「硬着陸にはならずにすんだけど、こりゃ、怒られるなこりゃ‥‥」
何とか無事に不時着したコスモゼロを見ながら島が呟く。
大破とまではいかないが、不時着したコスモゼロは前輪の部分が拉げっており、左舷の翼部分も少し変形しており、修理が必要なのは明白だった。
「しかし、何でこんな所に敵の偵察機が‥‥?」
古代がその場から少し歩き、小さな丘を越えると、
「あっ!?」
突然声をあげた。
「どうした?」
後を追った島も、古代が見ているモノを見て同じく声をあげた。
「あっ!?」
二人の目の前には、赤い土に埋もれた旧日本海軍の軍艦‥‥それも超弩級の大型戦艦が静かに沈黙を保っていた。
二人が唖然としながら埋もれた戦艦を見ていると、先ほど、敵の偵察機を撃墜したコスモゼロが降りてきた。
パイロットはコックピットから出ると慌てて二人に近づいて来た。
「二人とも!!伏せろ!!」
近づいて来たパイロットはタックルするかのように二人を抱え込こみ、古代と島を強制的に地面に伏せさせる。
やがて、戦艦の主砲が動き出し、砲身から眩い光と共に青白い閃光が放たれると、それは一直線に空へと向かっていった。
すると、空の彼方で小さなオレンジ色の閃光と爆発音が聞こえた。
「い、一体何が‥‥?」
「あの戦艦が何かを撃ったぞ‥‥」
古代と島は何が起きたのか、理解できていない状況だった。
「ガミラスの空母がいたのさ‥‥恐らく先程の偵察機の母艦だったのだろう」
「あ、貴方は?」
「失礼、月村だ。月村良馬と言う者だ」
「月村って、あの有名な月村グループの?」
島は月村と言う苗字に自分が思い当たる月村の名で間違いないかを尋ねる。
「まぁ、そうだけど、俺は俺、月村良馬の何者でもない」
「そ、それで、月村さん、今のは一体?あの艦が撃ったように見えたのですが‥‥?」
「君たちは、防衛軍の軍人かな?そういえば、沖田提督の医務室であったね。所属は?」
格納庫で整備員たちが新米士官と言っていたが、念のため、確認をとる良馬。
「はい、特務空間戦術科の古代 進です」
「同じく特務航海科の島 大介です」
(古代‥‥島‥‥そうか、古代先輩の弟さんに、島中佐の息子さんか‥‥それに特務科か‥‥)
家柄上、様々な情報を知る良馬は彼らならば、話しても問題ないと判断し、まず、あの地面に埋まっている戦艦について話した。
「まず、あの戦艦だが、あれは、旧日本海軍の戦艦 大和 だ」
「やまと?」
「それって大昔に海に沈んだ戦艦の名前じゃあ‥‥?」
「そう、地球連邦政府と防衛軍は、あの戦艦を使って新たな計画案を立てているのさ」
「新たな計画案?」
「それってどういう?」
「“イズモ計画”」
「「“イズモ計画”?」」
「ああ、ガミラスの様に地球以外にも知的生命体の存在が確認できたのだから、宇宙には地球に似た環境の星がある可能性もある。だから、あの艦で地球を脱出しようという計画だ‥‥早い話、地球を捨てて宇宙へ逃げると言う事さ」
「地球を‥‥」
「捨てる‥‥」
良馬から“イズモ計画”の話を聞き、再び唖然とする二人。
「そ、それじゃあ兄さんや今まで死んでいった人たちは‥‥」
「まったくの無駄死にって事になるね。俺もあの冥王星海戦で親友二人を亡くした」
「で、でもあの宇宙船一隻で地球にいる人を全員乗せるなんてとても無理なんじゃあ‥‥?」
「そう、だから、あの艦に乗れるのは選ばれた人間だけ‥‥そして君たちはその選ばれた人間だ」
「そ、そんなっ!?」
本来、自分が選ばれた事に関しては喜ぶべきなのだろうが、大勢の地球の人たちを見捨てて自分たちだけで、地球を見捨てて、逃げ出すという事実を簡単に受け入れられない二人。
「近々、防衛軍司令部から詳しい事が通達されるだろう。それより、これ以上此処に長くいると放射能で体がボロボロになる。俺の乗ってきたコスモゼロには帰りに必要なエネルギーカプセルを積んである。一先ず帰ろう」
良馬が停めてあるコスモゼロの下へ向かうと、二人もその後についていった。
その後、エネルギーカプセルを入れ替えたコスモゼロ一番機は無事に格納庫へ帰ることが出来たが、古代と島は格納庫の整備主任にこってり絞られたのは言うまでもなかった。
「防衛ライン内の敵勢力は完全に排除されました」
「よし、警戒警報解除」
「了解」
防衛軍司令のモニターでは、先程行われていた戦闘の様子が映し出されており、ガミラス軍の空母を撃沈し、周辺に敵影が無いのを確認すると、警戒警報は解除された。
「こんなことでショックカノンの有効性を確認することになったが、迎撃判断は適切だった」
藤堂長官が今回の事態はやむを得ない事だったと呟く。
どの道、ショックカノンの試射もいずれ行わなければならないし、そのショックカノンがガミラス相手に通じるかも検証しなければならなかった。
結果は見ての通り、ショックカノンはガミラスの艦を撃ち抜いたことにより、有効性を証明した。
「ええ、ただ敵に此方の存在が知られたと見るべきでしょう」
土方が、今回の戦闘における短所を指摘した。
冥王星 ガミラス軍基地
地球に派遣した『ポルメリア』級強襲航宙母艦の撃墜は当然ガミラス軍基地でも把握していた。
「分析では、このスクラップに熱源反応と大質量の存在が感知されています」
「連中の脱出移民船の建造ドックか、本土決戦兵器か何かと言う事か」
ガミラス軍冥王星基地司令官、ヴァルケ・シュルツと副官、ゲルフ・ガンツは司令室のメインモニターに映る赤い地面に埋もれた戦艦の残骸を見ながら呟く。
「本国にはなんと報告をいたしますか?」
「報告はいい。強襲空母一隻が最前線で行方不明になることなどありふれた話だ。大きな戦果の前の小事となる。散った同胞には今は、堪えてもらわねばならん」
「では、此処へ艦隊を派遣しますか?」
「いや、動かぬ標的に物量を投じる必要はない。エネルギーの無駄だ」
「では、いかがいたしましょうか?」
「惑星間弾道長距離ミサイルの発射準備をしろ。総統閣下の許可が下り次第発射しろ」
「承知しました」
それから数日後‥‥
良馬の言ったとおり、古代と島は防衛軍司令部の大運動場へ召集を受けた。
古代や島の他にも様々な部署から防衛軍軍人が召集を受けていた。
ただその中に、土方や良馬の姿はなかった。
「いよいよ、イズモ計画が発動するのか?」
「地球脱出船が完成したって事か?」
詳しい召集理由を知らされていない為、皆浮き足立っている。
そんな中、壇上の上に沖田十三が姿を現した。
「古代、沖田提督だ」
島の言葉を聞き、古代が壇上に目をやると、そこには確かに沖田十三の姿があった。
古代としては兄の件があり、沖田を未だに許しておらず、壇上の上の沖田を睨んでいた。
「諸君、今日集まってもらったのは他でもない。諸君らはイズモ計画の選抜者として、これまで特殊訓練を受けてきた者たちばかりである。その諸君に今日此処で正式に辞令を出す」
沖田の言葉を聞き、古代は例のイズモ計画が発動するのだと思った。
地球にいる大勢の人々を見捨てて自分たちだけで地球から逃げ出す計画‥‥。
その計画に使用される艦の艦長が沖田であり、自分もその艦で地球と大勢の人々を見捨てて逃げていくのだと思うと、古代は胸糞が悪くなる気分だった。
しかし、次に発せられた沖田の言葉を聞き、一同は驚いた。
「一つ先に言っておく、今回発動される計画は、先に計画されたイズモ計画とは大きく変更されている」
「変更?」
一部の者たちは知っていたイズモ計画が変更される事に驚愕と戸惑いが生まれる。
地球を脱出する計画ではないとすると、一体どのような計画なのか?
一同は沖田の次の言葉を静かに待った。
「今回の計画内容は、周知の地球脱出移民を目的とした計画ではない。イズモ計画はこれより、ヤマト計画と名を変え、発展・吸収された。諸君らには次の音声映像を聞き、括目してもらいたい。これは先日の冥王星海戦中、火星に不時着したガミラスとも違う別の星の使者からもたらされたものだ」
(あのカプセルの事か‥‥)
古代にはこれから流される音声の出所に心当たりがあった。
それは島も同じ様子だった。
そして、スピーカーとからスターシアのメッセージが流され、用意されたスクリーンにはスターシアの姿が映し出された。
スターシアのメッセージを聞いた古代と島はまさか、あの時のカプセルが地球を救うかもしれない重要な存在なのだと思わなかった。
メッセージを聞いた後、戸惑う者が多かった。
そりゃ、今地球全体を包み込み、地球の地下をも汚染している遊星爆弾の放射能を除去できる装置なんて眉唾物にしか聞こえないからだ。
しかも、その星に行けばタダでそれを渡すと言う。
司令部の幕僚同様戸惑いのも無理はない。
「メッセージにあったようにイスカンダル星からの技術供与を受けて我々は恒星間航行用のエンジンを搭載した宇宙船を完成させた。諸君らの任務はこの宇宙船に乗り込み、イスカンダルへと向かい放射能除去装置、コスモクリーナーを受け取り、地球まで戻る航海だ‥‥これがヤマト計画の全貌だ!!」
ざわめく声は出さぬもやはり皆、戸惑いが隠せない様子だ。
「しかし、往復29万6千光年の旅は、未だ地球人類が経験したことのない航海だ。それを地球人類絶滅前の一年以内に行わなければならない。当然、ガミラスの妨害、未知の宇宙生物や宇宙気象の障害もあり、わしは諸君らの生命の安全を保障できない。故にコレは強制ではなく、志願制である」
太平洋戦争当時、日本軍は特攻隊を志願制と言って隊員を募集したが、その実情はほぼ強制に近いモノだったが、今回のヤマト計画においては、完全な志願制だった。
その根拠は沖田の次の言葉によるものだった。
「出向は明後日、○六○○、坊ノ岬から出航する。遅れた者は残留希望者とみなす。以上だ」
沖田が、集まった者に敬礼をすると、皆は沖田に返礼をする。
やがて、沖田が壇上から姿を消すと、多少のざわつきが起こった。
続いて、ヤマトの各部門の責任者が読み上げられた。
もちろん、これはまだ仮の人事内定であり、ヤマトに乗艦したその時に、正式な人事となる。
もし、ヤマト出航当日にその者がヤマトに乗艦しなければ、即座に別の者がその部門の責任者にあてられる。
艦長 沖田 十三
技術班班長兼副長 真田 志郎
機関長 徳川 彦左衛門
機関長補佐 山崎 奨
次席機関長補佐 藪 助治
航海長 島 大介
航海長補佐 太田 健二郎
戦術班班長(砲雷長) 古代 進
次席砲雷長 南部 康雄
空戦隊長 加藤 三郎
副空戦隊長 山本 明夫
通信長 相原 義一
船務長 森 雪
主計科長 幕ノ内 勉
厨房科チーフ 平田 一
と、各部門の責任者の名前が読み上げられていく中、古代は自分がヤマトの戦術の班長に抜擢されたことに戸惑っていた。