星の海へ   作:ステルス兄貴

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PSソフトの『宇宙戦艦ヤマト 遥かなる星イスカンダル』では、救援物資としてスターシアがカプセルを宇宙へ送っている設定があるので、次元断層へヤマトが落ちた事を考慮して次元断層内にもそこからの脱出ルートを記したカプセルを送った設定となっております。


百五十一話 脱出の手がかりを求めて

 

 

長い休暇期間が明けて、職務に復帰したクロノ。

 

フェイトもしつこいマスコミや査察部から逃すためにリンディはクロノが艦長を務めるクラウディアへ乗艦させた。

 

そして、今回の航海にはクロノの士官学校時代の同期生である二コラウフが艦長を務める次元航行艦、ソラーズもクラウディアに同行することになった。

 

本局を出航した二隻の次元航行艦は今後、管理世界になりうる世界を探査すると共にまだまだ未開域な星の海の海図を製作しながら航海を続けた。

 

しかし、ある宙域にて二隻は宇宙気流に流されてしまい、そのまま次元断層へと落ちてしまった。

 

次元断層内には多数の宇宙船が遭難しており、そこはまさに宇宙の墓場と言える場所だった。

 

クロノはエネルギーの消費を防ぐために流れ着いた箇所から動かない様に指示を出すが、二コラウフは彼の提案とは逆に独自で出口を探しにクロノの忠告を無視して次元断層の奥深くへと行ってしまった。

 

遠ざかって行く二コラウフのソラーズをクロノは追いかけることはなかった。

 

下手にソラーズの後を追い、事態を悪化させてクラウディアの乗員たちを危険に晒す訳には艦長として出来なかったのだ。

 

クロノは事態を打開する為、フェイトに周囲で遭難している宇宙船の探査を命じた。

 

クロノからの命令を受けて、クラウディアに搭載されている小型艇で周囲に漂流している遭難船へ乗り込むフェイトたち。

 

遭難船の船内はまさに船の形をした棺桶状態で、光もなければ音もなく、動くモノもない、暗闇と静寂、そして死の世界が広がっていた。

 

フェイトも管理局で働くようになって様々な事を経験してきたが、此処までの経験は初めてだ。

 

「何か脱出の手がかりになるようなモノはあった?」

 

調査をしていたフェイトが同行していた局員たちに声をかける。

 

「いえ、特にめぼしいモノは‥‥」

 

「こっちもです」

 

「こちらも食料などの物資はありませんでした」

 

自分たち同様、この次元断層へ落ちたばかりの頃はまだ食料もあったのだろうが、脱出の手がかりがなく、次元断層内に留まり続けた結果、積み込まれていた食料も物資も底を尽き最後は飢えによる衰弱死か乗員同士の暴動で命を落としたのかもしれない。

 

(そう言えば、月村艦長とギンガはイスカンダルの航海でガミラスの人たちと一週間共同生活を送っていたって聞いたけど‥‥争いにはならなかったから無事に戻って来たんだけど、私たちは‥‥)

 

シャンブロウで良馬たちは自分たちよりも先に遭難したバーガーたちガミラス人と出会い大和ホテルで一週間の共同生活を送った。

 

そのホテルには水はあったが、その他の食料は見つからず、脱出口もなく、良馬たちが持っていた非常食を全員で分けて食いつなぎながらトンネルを掘って脱出しようとしていた。

 

しかし、良馬たちが経験した大和ホテルでの一週間はホテルの外では数時間しか経っていない不思議な経験だったと言う。

 

限られた空間内で敵対していた人たちの間でよく争いが起きなかったとフェイトは思うが、時間が経てば経つほど、同じ職場の自分たちの中にも疑心暗鬼や不満、恐怖が募り、艦内で争いが起きても不思議ではない。

 

(早く、脱出の手がかりを見つけないと‥‥)

 

此処までの航海でクラウディアの食料もかなり消費しているので、食糧をめぐる問題が起きてもおかしくはない。

 

クラウディアに備蓄されている食糧が無くなる前に何としてでもこの空間から脱出する手がかりを見つけ中ればならなかった。

 

「ハラオウン執務官、この船には脱出に繋がる手掛かりも物資もなさそうです」

 

遭難した宇宙船のブリッジ、機関室、倉庫を調べたが脱出の手がかりや食料などの生き延びる為に必要な物資は見つからず大した成果はなかった。

 

「分かった‥‥まずはクロノに報告を入れるね‥‥あっ、クロノ?うん‥‥この船には脱出の手がかりや使えそうな物資は無かったから次の船に行くね」

 

「ああ、分かった。気をつけてな」

 

フェイトはクロノへ連絡を入れて遭難した宇宙船の探査報告をして大した成果がなかった事と次の船を探査する事を伝える。

 

クロノへ連絡を入れたフェイトたちは別の宇宙船へと調査に向かう。

 

しかし、その船でも大した情報もなく、物資もなく、さらに別の船へと向かう。

 

そんな事を何度か繰り返すもやはり脱出の手がかりも物資も見つからない。

 

脱出の手がかりも物資も見つからず、空振りに終わっていくと次第にフェイト以外の局員らにも焦りの色が見え始めた。

 

もう何隻目になったか分からない探査に入ったある宇宙船‥‥

 

この宇宙船でもやはり乗員たちの白骨化した遺体が船内の彼方此方にあったが、この船の乗員の遺体はこれまで見て来た乗員の遺体と異なり、骨格が人間の形とは少々違う形をしていた。

 

「この船にある遺体、人の形とちょっと違う‥‥」

 

フェイトは恐る恐る遺体に近づきジッと観察するかのように見つめる。

 

「何だか大きな虫みたいな骨だ‥‥」

 

「この船で運搬されていた生物でしょうか?」

 

「まさか、生物兵器?」

 

「うーん、骨だけじゃあ判断がつかないな‥‥」

 

一体の遺体だけでは判断がつかず、いつまでも遺体を見ている訳にもいかないので、フェイトたちは調査を進める。

 

だが、調査を進めていくとこの宇宙船の船内には人の形をした遺体は見つからなかった。

 

「この船に残っている遺体は全部虫っぽい形をしていたね‥‥」

 

「ええ‥‥」

 

「‥‥もしかしたら、この船に乗っていたのは虫に近い姿をした宇宙人だったのかもしれないな‥‥」

 

(ルーテシアの召喚獣、ガリューみたいな姿をした宇宙人だったのかもしれない‥‥)

 

元々管理局は管理世界と呼ばれる有人惑星をいくつも所有している。

 

そして、管理外世界でも地球をはじめとする有人惑星を見て来た。

 

それらの星に住む人々はどの惑星でも人の姿をしていた。

 

違いは魔法が使えるか使えないかぐらいだ。

 

しかし、彗星帝国の艦船に襲われて、遭難して管理局がこれまで認識していなかったもう一つの地球に所属する軍に助けられ、その地球が辿った歴史とイスカンダルへの航海、その後訪れたもう一つの地球で外宇宙からの侵略による占領下で宇宙には肌の色がミッドや地球、管理世界とは異なるカラフルな肌の色をした宇宙人が居る事を経験したフェイトとしては虫型の宇宙人が居ても不思議に思わなかった。

 

実際にルーテシアの召喚獣であるガリューも二足歩行している人に近い虫型の召喚獣なので、ガリューのような虫っぽい姿をした宇宙人がもしかしたらこの広い宇宙に存在するかもしれない。

 

そんな中、フェイトがふと窓の外を見ると、一隻の漂流船で小さな明かりが見えた。

 

「ん?あれ?」

 

「どうかしましたか?ハラオウン執務官」

 

「今、あの宇宙船で何か光ったように見えたんだけど‥‥」

 

 

「どの宇宙船ですか?」

 

「ほら、あの宇宙船」

 

フェイトは近くで漂流している宇宙船の内、ある一隻の宇宙船が一瞬であるが船内で何かが光ったように見えた。

 

傍にいた局員が何事かと声をかけ、フェイトは明かりが見えた宇宙船を指さして何があったのかを伝えるが、光が見えた宇宙船はその後は光らずに周囲にある漂流船同様、沈黙したまま次元断層内を漂っているだけだった‥‥

 

「見間違え‥‥ってことは?」

 

何のリアクションも無い宇宙船を見て局員はフェイトの見間違えではないかと訊ねる。

 

「ううん、確かに光った。それは間違いないよ」

 

しかし、フェイトは確かにあの宇宙船が光ったと言い切る。

 

「ハラオウン執務官、やはりこの宇宙船も手掛かりや物資はありませんでした」

 

すると、この宇宙船を調査している別の局員たちがフェイトたちと合流してこの宇宙船に手掛かりがない事を報告する。

 

「分かりました。では、次はあの宇宙船を探査してみましょう」

 

「うん。そうしよう」

 

次にフェイトたちは一瞬光った宇宙船へと探査へ向かった。

 

そして、フェイトたちが一瞬何かが光った宇宙船へと接舷して内部に入ると、

 

「あれ?この船‥‥」

 

「薄暗いですが明かりが点いていますね」

 

新たに調査へ入った宇宙船はこれまで調査してきた宇宙船と異なり、船内には薄暗いが明かりが灯っていた。

 

「もしかしてこの宇宙船は私たち同様つい最近、遭難した船かもしれない‥‥」

 

明かりが灯っていた事からこの宇宙船の遭難時期がつい最近である事が窺える。

 

「では、船内にはもしかしたら生きている乗員がいるかもしれませんね」

 

「うん。好戦的な人たちじゃあないと良いけど‥‥」

 

もしこの宇宙船の乗員が好戦的な性格だと船内で一戦交えなければならないかもしれない。

 

フェイトとしては出来れば無駄な争いはしたくはない。

 

この宇宙船の乗員とはなのは方式のO・HA・NA・SHIではなく、普通のお話で争いを回避出来れば良いと思いながら艦内を探査する。

 

「ハラオウン執務官」

 

「ん?なに?」

 

「この宇宙船の船内に充満している空気はミッドと同じ酸素の成分です」

 

酸素濃度を調べていた局員がフェイトに船内に充満している酸素がミッドや地球と同じ酸素成分である事を報告する。

 

「うーん‥となると、やっぱりこの宇宙船の乗員は私たちと同じ人型の姿をしているのかな?でも、念のため、宇宙服は脱がない様に‥‥このままの格好で調査をするよ」

 

「了解」

 

船内の酸素成分がミッドと同じなので、宇宙服を脱いでも問題はないが、万が一のために宇宙服は脱がずにそのままの状態でフェイトたちは宇宙船を探査した。

 

「それじゃあ私たちは後ろを調査するから、貴方たちは前を調査してもらえるかな?」

 

「わかりました」

 

フェイトは調査隊を二つに分けてフェイトたちは機関室のある後部を一部の局員らをブリッジがある前部へ調査を命じた。

 

機関室の方へと調査に言ったフェイトらは恐る恐る警戒しながら進んで行く。

 

しかし、この船は非常灯が点いていながらも乗員の姿もその遺体も見つからない。

 

「だ、誰もいませんね‥‥」

 

同行していた局員がフェイトに声をかける。

 

「うーん‥‥乗員全員が船を捨てて脱出したのか‥‥それとも私たちみたいに周囲の遭難船の調査に出ているのか‥‥」

 

乗員が一人もおらず、更に遺体も無い事にフェイトは既にこの船の乗員たちが船を捨てて脱出したか、または今の自分みたいに一度船を離れて周囲にある遭難船の調査に出かけているのか?そんな考察をたてる。

 

「元々この船が無人‥‥ってことはないですかね?」

 

すると、局員の一人がこの船自体が無人船で宇宙を航行している最中にこの次元断層に落ちたのではないかと考察する。

 

「うーん‥‥でも、この船‥造りを見ても無人ではなく人の手を使って動かす感じだし、やっぱり人は居たんだと思う」

 

しかし、フェイトは船の造りからして、この船は無人タイプの宇宙船には見えなく、この船には人が乗っていたのは間違いないと指摘する。

 

そんな中、ブリッジの方へ調査に行った局員から連絡があった。

 

「ふぇ、フェイトさん‥‥緊急‥‥緊‥急‥‥す‥直ぐに‥‥き‥‥て‥‥た、助けて‥‥」

 

「ど、どうしたの!?」

 

フェイトは慌てて返信するが、

 

「‥‥」

 

「応答して!!何があったの!?」

 

しかし、前部へ調査に行った局員らの応答がない。

 

「何かあったんだ‥‥」

 

「ふぇ、フェイトさん!?」

 

「ハラオウン執務官!?」

 

フェイトは前部へ調査に行った局員らの身に何かあったのだと判断し、バルディッシュをライオットフォームに展開して急ぎブリッジを目指す。

 

すると、フェイトの目に局員らを糸でグルグル巻きにしている巨大な蜘蛛のような宇宙生物が映った。

 

「っ!?この化け物めっ!!」

 

フェイトは戸惑うことなく殺傷設定のままでバルディッシュを蜘蛛の姿をした宇宙生物の腹部に突き刺し腸を引き裂いた。

 

「ぐぎゃぁぁぁぁー!!」

 

フェイトから殺傷力のある一撃と致命傷なダメージを負い蜘蛛型の宇宙生物は絶叫を上げながら一瞬で絶命する。

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」

 

見た事もない宇宙生物とそれを一撃で仕留めた事、様々な思いがこんな短時間で脳を巡った事にフェイトは息を荒く呼吸する。

 

「ハラオウン執務官!!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「一体何があったんですか!?」

 

それから少し遅れて他の局員らが合流する。

 

「私は大丈夫‥‥それよりも他の皆の救助を‥‥」

 

「は、はい」

 

「了解」

 

合流した局員らは宇宙生物の糸に捕まった局員らの救助を行う。

 

「た、助かりました。ハラオウン執務官」

 

「ありがとうございます」

 

「それで、一体何があったの?」

 

フェイトは救助した局員に事情を訊ねる。

 

「げ、幻覚を見せられて‥‥」

 

「その隙に糸で‥‥」

 

「なるほど‥‥」

 

地球の植物に虫が好む匂いを出し、虫をおびき寄せてそのまま虫を捕まえて捕食する食虫植物や深海の海底で、自身で生産した発光物質を使い小魚やエビをおびき寄せて捕食するチョウチンアンコウみたいにフェイトが仕留めた蜘蛛型の宇宙生物は幻覚を見せて獲物をおびき寄せ、獲物の動きを止めそこを糸で絡め獲物を捕らえ捕食するタイプの宇宙生物みたいだ。

 

(咄嗟の事とは言え、殺傷設定で生き物を殺めるなんて‥‥)

 

(私もあの世界の影響を受けているのかな?)

 

時間が経ち、冷静さを取り戻すと自分でも初めてではないかと思う殺傷設定で生き物を殺めた事に驚いているフェイト。

 

殺られる前に殺れ‥‥

 

そんな言葉がフェイトの脳裏を過る。

 

ただ、そんな言葉も行動も彗星帝国に襲われた事やもう一つの地球で占領下を間近で経験したからこその言動だったのかもしれない。

 

「この船の乗員が見つからないのは、もしかしたらこの船の人たちは皆、この宇宙生物に捕食されてしまったせいかもしれませんね」

 

宇宙生物の生死を恐る恐る確認している局員がフェイトにこの船の乗員が見つからなかった原因がこの宇宙生物が船の乗員を襲い、捕食してしまったせいなのではないかと指摘する。

 

「う、うん‥‥多分ね」

 

フェイトも先ほど、局員らが襲われていることから船の乗員がこの蜘蛛型の宇宙生物に襲われ捕食されてしまった事について肯定する。

 

恐らくこの船の乗員は武器をもっていなかったのだろう。

 

「まだ、他にもこの生物と同じ宇宙生物が居るかもしれないから、ここからは全員で行動をしよう」

 

この船にあの宇宙生物が‥フェイトが斃した一匹だけとは限らず、また分かれて行動しては襲われる危険性もあるので、ここからは先の探査は全員で行う事にした。

 

ブリッジに近い前部に居たので、まずはブリッジを調査する事にした。

 

宇宙船のブリッジに警戒しながら辿り着いたフェイトたち。

 

しかし、ブリッジにもやはり人の姿はなく、同時にあの蜘蛛型の宇宙生物の姿もなかった。

 

だが、どこから襲ってくるのは分からないので、半数は周囲を警戒し、残りがブリッジの調査を行う。

 

「ハラオウン執務官」

 

「ん?何かあった?」

 

「はい。この船、これまで調査した船と違って明かりが点いていただけあってエネルギーがまだ残っています」

 

「推定されるエンジン出力もそれなりにあります。クラウディアに上手くドッキングすることが出来れば、エネルギー問題からしばらくの間は解決するかもしれない」

 

「分かった。クラウディアに連絡を入れてドッキングの準備をしよう」

 

フェイトはクロノに連絡を入れ、調査をした宇宙船に蜘蛛型の宇宙生物が存在していたが、その宇宙船にはまだエネルギーが残されている事を伝えると、

 

「そうか‥では、こちらでもドッキングの準備をしよう。しかし、まさか幻覚を見せて獲物を捕食する宇宙生物が居たとは‥‥その宇宙船にまだその宇宙生物は残っていそうか?」

 

「それはまだ分からない。機関室とか宇宙船の後部はまだ調査をしていないから」

 

「分かった。気を付けてくれ」

 

「了解」

 

調査している宇宙船とのドッキングをする為にクラウディアはフェイトたちが調査している宇宙船の傍までやって来て、宇宙服と命綱をつけたクラウディアの乗員たちが宇宙船をクラウディアの後部とドッキングさせる。

 

宇宙船とクラウディアがドッキング作業を行っている最中、宇宙船の内部にいるフェイトたちは引き続き調査を行い、船内にあの蜘蛛型の宇宙生物が残っていないか?

 

他にも何が脱出の手がかりに繋がる物や物資が無いか調査を続けていた。

 

あの宇宙生物の危険性を考慮してこれまで調査した宇宙船よりも念入りに調査が行われ、天井部の通風孔も調査されたが、あの宇宙生物は見つからず、フェイトが斃した一匹だけだった。

 

「クロノ、この宇宙生物の死骸だけど、どうする?サンプルとして持っていく?」

 

宇宙船には一匹しか見つからず、その個体はフェイトが殺傷設定のまま斃してしまったので、生きたままの捕獲は出来なかったが、死体は残っている。

 

今後の宇宙開拓の為、この宇宙生物を危険生物のサンプルとしてクラウディアへ持っていくかをクロノに訊ねる。

 

「‥‥うーん‥いや、写真と映像だけを残して死体は宇宙へ投棄してくれ‥死体の体中にその生物の卵や幼虫を宿していたら途中で孵化する可能性もあるからな」

 

生物の中には体内に卵や幼虫を宿し、ある程度体内で成長した後に体外へ放出する生物もいる。

 

既に斃してしまったので、この宇宙生物がどんな方法で出産するのか?

 

性別が雄なのか?雌なのか?不明となっている以上、たとえ死体であっても保管するのは危険だとクロノは判断し、写真と動画を記録として残して記録が出来次第、本体は宇宙へ葬るように伝える。

 

「分かったよ」

 

フェイトはクロノの指示通りに宇宙生物の写真、動画を撮り記録を残すと宇宙船の船外へと投棄した。

 

その後もフェイトたちは周辺の遭難船の調査を続行し、エネルギーが残っている宇宙船を集めてクラウディアとドッキングさせた。

 

「ハラオウン執務官たちの調査によって、エネルギー問題についてはなんとかなりそうだ。しかし‥‥」

 

「この空間からの脱出の手がかりがない‥‥と?」

 

「ああ‥‥エネルギー問題が解決したと言ってもそれは一時的なモノだ」

 

「確かに‥‥」

 

クラウディアの艦内にある会議室では艦長のクロノを含めた幹部会議が行われ、フェイトたちの調査報告が伝えられる。

 

クラウディアの後部には何隻かの宇宙船がドッキングされているやや不格好な状態となっているが、クロノがこれまでエネルギーの節約を行ってきたので、ドッキングした遭難船のエネルギーを合わせてクラウディアのエネルギーは十分な量が溜まった。

 

しかし、エネルギーも消耗品であり、人は船のエネルギーを食べる事は出来ない。

 

エネルギー問題の解決はクロノが言う通り、一時的なモノだった。

 

「ふぅ~‥‥」

 

会議室で幹部会議が行われている頃、フェイトたちは食堂で休憩をしていた。

 

宇宙服を脱ぎ、その解放感と疲労感から調査隊のメンバーはテーブルに突っ伏している。

 

特にあの宇宙生物に襲われた局員はまさに九死に一生を得たのだから無理もない。

 

そこへ、会議を終えたクロノが食堂へとやって来た。

 

「お疲れ様」

 

「あっ、クロノ‥‥何とか脱出のめどはついた?」

 

「いや、こちらでもドッキングした宇宙船の情報を調べたが、脱出の手がかりにはなりそうもない。ただ、当分のエネルギー問題については解決したがな‥‥」

 

「そう‥‥」

 

「でも、時間だけはある。すまないが明日も周辺にある宇宙船の調査を頼めるか?」

 

「うん。分かったよ」

 

こうして今日の成果はエネルギーが残っていた宇宙船を何隻か発見し、それらをクラウディアにドッキングしたことによるエネルギー問題が解決するに至り、この空間からの脱出の手がかりは見つからなかった。

 

翌日、相変わらず外は星の明かりは無く、宇宙船が漂う不気味で寂しい空間だった。

 

クロノ、フェイトを含むクラウディアの乗員たちの誰もが夢だったら‥‥と、思ったに違いない。

 

フェイトは今日の調査隊のメンバーを昨日のメンバーと入れ替えた。

 

宇宙生物に襲われた局員らにしてみればトラウマでしかないし、調査中にパニック状態になっても時間を無駄に消費するからだ。

 

メンバーを変えた調査隊は昨日と同じく周辺に漂う遭難船の調査へと向かう。

 

既に調査をした船には船体に目印を刻んであるので、二度手間にならないようにちゃんと対処していた。

 

昨日はエネルギーが残っていた船を何隻か発見したが、そうした幸運は何度も続くとは限らない。

 

エネルギーも物資も見つからない事の方が当たり前なので、この日も調査した船のほとんどが物資もエネルギーもない宇宙金属の塊と化している物体に過ぎなかった。

 

(食料の備蓄もあるし、早く何とかしないと‥‥)

 

もし、このままこの空間からの脱出の手がかりがないまま食料が無くなればクラウディアでも乗員同士の争いが起きる可能性は十分にある。

 

艦内で暴動が起こる前にこの空間から脱出しなければならない。

 

そんな中、明かりの無い漆黒の空間でまたもや光るモノをフェイトは見つけた。

 

「ん?光‥‥?でも、前の宇宙船よりも小さい様な‥‥」

 

あの宇宙生物が居た宇宙船の光点よりも小さい光源が漆黒の空間を漂っている。

 

それはまるで夜中に懐中電灯を振っているような明かりだ。

 

星明かりがあったら気づかない明かりだろうが、周囲の空間が漆黒の闇だったからこそ、気づいたのだ。

 

「どうかしましたか?」

 

「あれを見て‥‥何か光っている」

 

「えっ?」

 

近くに居た局員がフェイトに声をかけると、フェイトは漆黒の空間に光るモノがあると伝える。

 

局員もフェイトに習って宇宙船の窓から外を見るとそこには確かに漆黒の空間をチカッ、チカッと赤く点滅する光源が存在していた。

 

「一体なんでしょう?」

 

「分からない」

 

光るモノが一切存在しないこの漆黒の空間で何かが断続的に光っている。

 

その正体は当然不明である。

 

しかし、その光源は漂っている感じで生物でも宇宙船の類でもなさそうだ。

 

「ちょっと調べてみる」

 

「えっ?ハラオウン執務官!?」

 

フェイトはチカッ、チカッ光る光源の正体を確かめると言う。

 

局員はギョッとしながらもやはり光源の正体が気になるのか強くフェイトを止める事はなかった。

 

フェイトは宇宙船の内部と自分が着ている宇宙服に命綱を繋ぐと船外へと出る。

 

局員らはフェイトの行動をドキドキしながら宇宙船から見ている。

 

「よっ‥‥とっ‥‥」

 

無重力の空間を平泳ぎするかのように進んで行くフェイト。

 

(ちょっと不格好だけど仕方ないよね‥‥)

 

(大気圏内ならあれぐらいの距離、あっという間に行けるのにな‥‥)

 

フェイトの飛行魔法の速度は空戦属性がある魔導師の中でもトップクラスなのだが、それは空気がある大気圏内の話だ。

 

空気が無い真空の宇宙空間では、バリアジャケットだけではいくら魔導師と言えど死ぬ。

 

なので、魔導師だろうが戦闘機人だろうが宇宙空間で活動するには宇宙服は必須の装備品なのだ。

 

そして、宇宙空間では空戦属性がある魔導師でもやはり大気圏内と環境が異なるためか飛行魔法が使えない。

 

仮に使用する事が出来たとしても装備している宇宙服が飛行魔法の耐熱性とかで耐えきれなかったらいくら高ランクの魔導師と言えど、一巻の終わりである。

 

不格好な平泳ぎでようやく光源へ接近したフェイト。

 

肉眼で確認できる距離まで接近すると、チカッ、チカッ光っていたのはラグビーボールぐらいの大きさをしたカプセルだった。

 

「なんだろう?カプセル?」

 

カプセルを手にとったフェイトは首を傾げる。

 

不審物でもしかしたら、爆弾のような危険かもしれないが、フェイトは一応カプセルを持って調査隊が居る宇宙船へ戻った。

 

「ただいま」

 

「お疲れ様です。ハラオウン執務官‥‥それで、あの光源の正体は一体何だったんですか?」

 

フェイトを出迎えた局員は早速、例の光源の正体を聞いてきた。

 

「コレだった」

 

フェイトは局員に回収してきたばかりのカプセルを見せる。

 

「‥‥ん?なんですか?コレ?」

 

「多分、カプセルの類だと思う‥‥」

 

「カプセル?それが何で外に?」

 

「うーん‥‥どこかの船にあったモノが破孔から外に出たんだと思う」

 

フェイトは外の空間にカプセルが漂流していた仮説を言う。

 

「‥‥でしょうな」

 

局員もフェイトの立てた仮説が至極当然だと納得する。

 

「それで、どうしますか?」

 

「一応、これが何なのかを解析してみよう」

 

「大丈夫でしょうか?もしも爆発物だったら‥‥」

 

「パルディッシュ、解析できる?」

 

もしもこれが爆弾の様な危険物だった場合、このままクラウディアに持ち込むのは危険だ。

 

そこで、フェイトはバルディッシュにこのカプセルの解析を頼む。

 

『何とかやってみます』

 

バルディッシュはカプセルを解析し始める。

 

『‥‥解析完了』

 

「それで、これは何なの?」

 

『これは何らかの音声と画像データが記録されているカプセルで爆弾等の危険物ではありません』

 

解析をしたバルディッシュ曰く、このカプセルの正体は何らかの音声と画像データが記録されているカプセルで危険物ではない言う結果を出した。

 

「音声に画像データ?‥‥なんの音声と画像が記録されているの?」

 

『あまりにも膨大なデータなので、私では解析しきれません』

 

このカプセルの正体が、音声と画像のデータが記録されているカプセルと言う所まで解析は出来たが、一体どんな音声と画像が記録されているのかは記録されているデータが膨大過ぎてデバイスであるバルディッシュでは解析出来なかった。

 

「ま、まさか、遭難した船の乗員の遺書めいた音声や写真のデータだったり‥‥?」

 

「うーん、ありえそう‥‥」

 

こんな宇宙船の墓場みたいな空間にある音声と画像のデータなんて、確かに乗員の最後の言葉や写真が記録されている物だと思うのも当然だ。

 

「それでも一応、調べてみよう」

 

「りょ、了解」

 

とは言え、解析しなければ一体どんな音声や画像が記録されているのか分からない。

 

フェイトは調査を一時中止して、調査隊を引き連れてこのカプセルをクラウディアへと運びそこで解析してもらうことにした。

 

「これが外を漂っていたカプセルか‥‥」

 

クラウディアに戻ったフェイトは早速、クロノに回収したカプセルを見せる。

 

「そう‥‥バルディッシュが解析したら何かの音声と画像が記録されているんだって」

 

「音声と画像?」

 

「うん。中にどんな音声や画像が記録されているのかは、膨大なデータ量みたいでバルディッシュじゃあ解析できなかったから、クラウディアで解析してもらおうと思って」

 

「なるほど」

 

クロノはフェイトから事情を聞き、早速回収したカプセルを解析に回した。

 

クラウディアのCICでカプセルの解析が行われ、その場にはクロノとカプセルを回収したフェイトも立ち会った。

 

解析作業が行われてからしばらくして、

 

「‥‥解析できました」

 

「では、再生してくれ」

 

「了解。再生します」

 

「ああ、頼む」

 

解析を担当していた局員がカプセルの解析が出来た事を報告し、クロノはカプセル内に記録されているデータを再生させる。

 

すると、カプセルが光り始め、スピーカーから声がした。

 

『地球の皆さん‥‥』

 

それは女の人の声だった。

 

『私はイスカンダルのスターシア』

 

「スターシア!?」

 

「な、なんでスターシア陛下の音声が‥‥?」

 

カプセルに記録されていた音声はイスカンダルの女王であるスターシアの声だった。

 

あまりにも意外すぎる人物の音声にクロノもフェイトも驚愕する。

 

『私は、ヤマトがイスカンダルへ来ることを信じています。イスカンダルまで旅路には様々な試練が待ち受ける事でしょう。そこで、私はその試練に打ち勝つための手助けとして、航海に必要な情報をこのカプセルに記録して宇宙へ放ちました。地球を救う為、貴方がたはいかなる試練にも打ち勝たなければなりません。私は貴方がたの愛と勇気と実行力に期待します。私はイスカンダルのスターシア』

 

次に画面には何らかの航路図のようなモノが映し出される。

 

「こ、これは‥‥」

 

「‥‥恐らくこのカプセルはヤマトがイスカンダルに向っている途中で、スターシア陛下がヤマトの為に宇宙へ飛ばしたカプセルなんだと思う。そしてこの航路図は多分、この次元断層内の出口が記録されているんじゃないかな?」

 

「‥‥」

 

フェイトは、このカプセルは本来、イスカンダルを目指すヤマトの為にスターシアが宇宙へ放出したカプセルの一つであり、この次元断層内に万が一ヤマトが迷い込んだ際、此処から脱出する為の情報を記録していた物だと推測する。

 

(きっと、スターシア陛下はヤマトの為にありとあらゆる可能性や事態を考慮していたんだ‥‥)

 

もう一つの地球の歴史を映像で見ていたフェイトは、スターシアがヤマトの為に様々な事態を考慮していたことに驚く。

 

「ヤマトじゃないけど、これで私たちはこの空間から脱出できるかもしれないよ。クロノ」

 

「あ、ああ‥そうだな。直ぐにこの航路図をブリッジの航海計器に転送してくれ」

 

「は、はい」

 

クロノとしては驚愕する事ばかりで脳の処理が追いついていないが、フェイトの言葉を聞き、ぎこちないながらもスターシアが残してくれた航海図をブリッジの航海計器へ転送し、脱出の準備を行う、

 

ヤマトの為に用意されていたスターシアからの救援カプセルであったが、ヤマトはこの次元断層に落ちることなく、無事にイスカンダルへとたどり着き、放射能除去装置を受け取り、地球を救い、今もきっともう一つの地球にいるだろう。

 

故に今回は自分たちがこの次元断層から脱出する為にありがたく使わせてもらう事にした。

 

ただ、この次元断層から脱出する前に一つの問題‥‥と言うか、懸念があった。

 

それは‥‥

 

「周辺にソラーズの反応はないか?」

 

クロノは一応、次元断層からの脱出の手がかりを掴むことが出来たので、一緒にこの次元断層へ落ちた僚艦であるソラーズが近くに居ないか確認を取る。

 

クロノが抱いた懸念は共に遭難したソラーズの事だった。

 

二コラウフの事は個人的にはあまり好感がもてる人物ではなかったが、それでも同僚であり、ソラーズには大勢の乗員が乗っている。

 

救えるのであるならば、彼らを見殺しにはしたくなかった。

 

しかし、

 

「‥‥いえ、反応はありません」

 

オペレーターは近距離のみ働くレーダーを確認して周辺にソラーズが居ないかを確認するが、やはり周辺にソラーズの姿はなかった。

 

「‥‥そうか」

 

近くにソラーズが居ない事を知るとクロノは重々しく報告を受理する。

 

「いかがいたしますか?ソラーズを捜索してからこの空間から脱出しますか?」

 

副官がクロノにソラーズの捜索をしてから次元断層の脱出を図るかを訊ねる。

 

クロノとしては苦渋の決断であった。

 

次元断層からの脱出の手がかりを掴んだのだから、乗員たちの安全を考えるならすぐに脱出したい。

 

だが、未だにこの空間のどこかを彷徨っているソラーズの事を思うと彼らも連れて帰りたい。

 

しかし、恐らく今もソラーズは出口を求めて動き回っているに違いない。

 

互いに動いている状況下でレーダーも通信機も上手く作動しない中でソラーズ一隻を捜すのは難しい。

 

「‥‥針路を航路図に示されている針路へ向けろ」

 

「えっ?」

 

「クロノ?」

 

クロノはソラーズの捜索をせずにクラウディアの脱出を指示した。

 

そんな彼の指示を聞き、クラウディアのブリッジは静まり返った。

 

「て、提督‥それは‥‥ソラーズを‥‥」

 

副官はブリッジに居る乗員を代表するかのようにクロノへ声をかけるが、

 

「副長や皆が言いたい事は分かる。だが、僕にはクラウディアや皆の安全を守る義務がある‥‥未知の空間でむやみに動いて二重遭難の様な事態を招くことは出来ない‥‥もし、この空間から無事に脱出した後、ソラーズの一件が問題になったら全ての責任は僕がとる」

 

クロノの声は重く‥そして辛そうだった。

 

勿論、副長やブリッジに居る乗員たちにはクロノの心中を察した。

 

「いえ‥‥艦長の心中はお察しします」

 

この次元断層から折角、脱出できるかもしれないと言うのにクラウディアのブリッジには重苦しい空気が流れた。

 

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