星の海へ   作:ステルス兄貴

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なのは世界の話ばかりですみません。


百五十四話 あたし、気になります!!

 

 

クラウディアが次元断層からの奇跡的帰還と言う偉業を達成し、本局へ戻ってから数日が経った。

 

そのクラウディアは本局内にあるドックにて整備と補修が行われ、乗員たちもその整備作業の手伝いや報告書等の事務作業を行って次の航海に向けての準備に余念がなかった。

 

本局のドックでクラウディアが次の航海に向けて整備が行われている中、ミッドチルダでは‥‥

 

「うーん‥‥」

 

ミッドチルダ、首都クラナガン‥その一角にあるマンションの一室にて、その部屋の主であるスバルはベッドの上でギンガからの手紙を何度も読み返しながら唸っていた。

 

新暦75年四月に稼働予定だった機動六課に姉妹で所属予定だったが、稼働の少し前にスバルの姉であるギンガは、とある美術品窃盗事件を追いかける中で殉職してしまう。

 

しかも、その事件の指揮を執っていた執務官からギンガの名誉は著しく傷つけられた。

 

スバルたちギンガの家族は彼女の名誉を回復する為に仕事をする傍らでギンガの名誉回復の運動を行っていた。

 

それから幾日かの月日が過ぎ、機動六課の解散後にスバルは特別救助隊に所属する事になった。

 

機動六課前から救助隊に所属していたスバルにとって救助隊の中でもエリートである特別救助隊に所属できた事はとても誇らしかった。

 

所属する部署が変わってもスバルは引き続き、ギンガの名誉を回復する運動は続けていた。

 

そんな中で、訓練校からの付き合いである親友のティアナがフェイトと共に遭難してしまう事態が起きた。

 

結果的にティアナとフェイトは無事に救助され紆余曲折を経て、ティアナは救助されたもう一つの地球への残留を決めて、ミッドにはフェイトと教会の強硬派に襲われ、ジュエルシードの欠片でもう一つの地球に次元転移したヴィヴィオの二人が帰って来た。

 

そして、ミッドに帰還したフェイトは自分と父親であるゲンヤの下にとある人物からの手紙を持って来た。

 

てっきりティアナからの手紙かと思いつつ、手紙を受け取った自分とゲンヤはまさに青天の霹靂であった。

 

自分とゲンヤに手紙を送って来たのはなんと死んだと思われたギンガからだった。

 

ギンガからの手紙には事の真相やギンガの現状が書かれており、写真も何枚か同封されていた。

 

そして、ギンガの生存はごく一部の者の間で秘密となった。

 

スバルはその秘密を今も守っており、JS事件後にナカジマ家へ新たに養子入りした元ナンバーズの姉妹にも黙っていた。

 

 

現在、スバルは特別救助隊に所属しており、実家から離れて暮らしている。

 

スバルの実家があるのはミッドチルダ西部のエルセアであり、父が部隊長を務めている陸士108部隊もミッドチルダの西部にあるが、特別救助隊の隊舎は首都クラナガンにあるので、実家から通勤するのは時間がかかるので、こうしてクラナガンにあるマンションで下宿しているのだ。

 

下宿先のマンションにはスバル一人だけなので、スバルはよくギンガからの手紙や写真を眺めている。

 

親友のティアナ、そして姉のギンガが居るもう一つの地球へ行くにはミッドチルダともう一つの地球との間に交流を持たなければならない。

 

しかし、現状ミッドチルダともう一つの地球が交流を持つのはゲンヤ曰く、望み薄だと言う。

 

スバル自身もそれについては薄々気づいている。

 

なので、こうして夜にスバルはギンガからの手紙や写真を眺め、もう一つの地球に居る姉と親友へ思いを寄せている。

 

そんなギンガからの手紙の中で、スバルは最近気になる一文があった。

 

ギンガがもう一つの地球に残留している理由の一つに『好きな人が出来た』‥‥と言う部分。

 

手紙を貰った時はギンガの生存のインパクトが強くて気付かなかったが、時間が経ちこうして何度もギンガの手紙を読んでいる中で、『好きな人が出来た』の文面を改めて読み返し気づいたスバル。

 

『好きな人が出来た』‥‥それは、もう一つの地球にギンガの好きな人‥‥つまり、姉の恋人が居ると言う事だ。

 

スバルは会えないと知りつつもギンガの恋人がどんな人物なのか?

 

それが気になり始めていた。

 

もう一つの地球で出来た恋人なのだから、当然ギンガの恋人はもう一つの地球に住んでいる人だ。

 

(ギン姉の恋人はギン姉の正体を知っているのかな?)

 

(もし、知らなかったとして、ギン姉の出生の秘密を知った時、その人はギン姉の事を受け入れてくれるのかな?)

 

(ギン姉の正体を知って、もしその人がギン姉を振って、ギン姉が失恋をして傷ついていたらどうしよう‥‥)

 

そんな疑問と不安がスバルの脳内をグルグルと巡る。

 

(何とか確かめる方法はないかな‥‥?)

 

(父さんに相談してもいいけど、誰がギン姉の恋人なんて知る筈がないし‥‥)

 

(ティアはもう一つの地球に居るから確認できないし‥‥)

 

(もう一つの地球とはもう交信は出来ないだろうしな~‥‥)

 

最後の交信の時、これまで交信に使用していた通信ポッドは防衛軍の方で処分すると言っていたので、地球連邦政府・防衛軍側が管理局へコンタクトをとってこない限り交信は出来ないし、恐らく向こうからコンタクトを取ってくることは無いだろう。

 

(ヴィヴィオ‥‥は、まだ恋愛について分からないだろうな‥‥)

 

まだ小等部のヴィヴィオに『ギン姉の恋人知らない?』と聞いても知っているのか分からないし、そもそも恋愛事にはまだ疎そうなので、却下。

 

(と、なると知っていそうなのはただ一人か‥‥)

 

スバルはもう一つの地球へ行き、ミッドチルダに戻り、なおかつギンガの恋人の存在を知っていそうな人物に心当たりがあった。

 

(そう言えば、フェイト執務官、今ミッドに居るのかな‥‥?)

 

(なのはさんならフェイト執務官が何処に居るのか知っているかも‥‥)

 

スバルはフェイトにもう一つの地球に居るギンガの恋人が誰なのかを聞くためにまずはフェイトの所在をなのはに訊ねる事にした。

 

「なのはさん、すみません。スバルです」

 

「あっ、スバル。どうしたの?」

 

「あの、なのはさん。フェイト執務官が今何処に居るのか分かりますか?」

 

「えっ?フェイトちゃん?」

 

「はい。フェイト執務官にどうしても聞きたいことがあるので‥‥」

 

「フェイトちゃんに聞きたい事?」

 

「はい」

 

「それってどんなことなのかな?」

 

なのははスバルがフェイトに一体どんな用があるのか気になった。

 

「えっと‥‥それは‥‥」

 

なのはとギンガとの間に面識も交流もないが、それでもどこからギンガの生存が漏れるか分からない。

 

ギンガの生存はごく一部の者たちのみの極秘事項なので、例えギンガとの面識と交流が無いなのはでも教える訳にはいかない。

 

「あっ、その‥‥交信後のティアの様子が気になって‥‥」

 

スバルは咄嗟にもう一つの地球に居るティアナの事が気になる事にして、ギンガの存在を隠す事に成功した。

 

「ティアナの様子か‥‥」

 

ティアナの名前を聞いてなのはも思う所がある様子。

 

「‥‥スバル、私もティアナの事を知りたいから一緒にフェイトちゃんに聞いてもいいかな?」

 

「えっ?なのはさんも!?」

 

(ヤバいよ、なのはさんが一緒だとギン姉の事を聞けないじゃん!!)

 

なのはの返答を聞き、スバルはドキッとする。

 

(でも、ここで断ると変に思われるし‥‥)

 

(それに本命の前に違う話題を挟んだ方が良いかな?)

 

(なのはさんの会話の後なら、フェイト執務官も気をよくして話してくれるかもしれないし‥‥)

 

なのはが一緒に行くと言った時は、焦ったがなのはを相手にしてくれたらフェイトも油断するかもしれないと思ったスバルは、

 

「分かりました。一緒にフェイト執務官にティアの事を聞きましょう」

 

なのはと一緒にフェイトの下へ向かうことにした。

 

「それで、フェイト執務官は今何処に居るのか分かりますか?」

 

そして、なのはにフェイトの所在を訊ねる。

 

「フェイトちゃんは今、本局に居る筈だよ。数日前にはやてちゃんと一緒に話したから」

 

「分かりました。では、フェイト執務官との時間はなのはさんがとってもらってもいいでしょうか?」

 

「いいよ。フェイトちゃんに暇な時間を聞いて、二人で一緒に会いに行こう」

 

「はい」

 

こうしてなのはがフェイトの予定を聞いて、彼女の都合がいい時間になのはとスバルはフェイトに会いに行くことになった。

 

 

「フェイトちゃん」

 

「ん?どうしたの?なのは」

 

「あのね、今度フェイトちゃんの都合がいい時間で、ちょっと会いたいんだけど」

 

「えっ?まぁ、いいけど‥‥」

 

フェイトは予定を確認してなのはに都合がいい時間を伝える。

 

「ありがとう。あっ、フェイトちゃんに話があるのは私の他にスバルもあるみたいなの」

 

「スバルも?」

 

「うん。最初にフェイトちゃんに話があるのはスバルの方だったから‥‥」

 

「えっ?スバルが‥‥?」

 

フェイトはスバルが自分に用がある事に意外に思うも用があるのだから話を聞こうと判断し、

 

「分かった。じゃあ、待っているから」

 

「うん。それじゃあ‥‥」

 

フェイトとの都合を取り付けたなのははスバルに日時を伝えた。

 

そして、フェイトと会う日、スバルとなのはの姿は本局の中にあった。

 

「あっ、なのは!!スバル!!こっち、こっち!!」

 

本局に着いたなのはとスバルに手を振って二人を呼ぶフェイト。

 

「フェイトちゃん!!」

 

「フェイト執務官」

 

フェイトと合流したなのはとスバルは、先日、フェイトがクロノにリニスが書いたアルフ宛ての手紙を渡した本局内にある個室型の喫茶店へと向かう。

 

本局内に居るとは言え、どこで査察部の目があるか分からないからだ。

 

三人は席に座り、飲み物を注文する。

 

そして、各々が注文した飲み物が届き、店員が個室から出ると、

 

「さて、それじゃあ、二人は何が聞きたいのかな?」

 

フェイトがなのはとスバルに要件を訊ねる。

 

「えっと、フェイトちゃんに聞きたいことはティアナの事なんだけど‥‥」

 

「ティアナの?」

 

「うん‥‥ティアナはフェイトちゃんみたいに執務官になる事を目指していたけど、もう一つの地球でティアナは一体何の心境の変化があってもう少しで執務官になれたのにミッドに戻らず、もう一つの地球に残ったのか分からないけど、ティアナはもう一つの地球で何をしたいのかフェイトちゃんは知らない?」

 

なのははフェイトにもう一つの地球に残ったティアナが一体何をしているのかを訊ねる。

 

あのティアナがもう一つの地球でニートなんてしている訳がない。

 

ギリギリまでティアナと居たフェイトならば、彼女がもう一つの地球で何を目指しているのか知っていると思ったのだ。

 

「私自身、途中で帰っちゃったから詳しい事は分からないけど、ティアナはもう一つの地球で防衛軍の軍人さんを目指すって言っていたよ」

 

「えっ?ティアナが‥‥」

 

「防衛軍の軍人に‥‥?」

 

フェイトからティアナの新たな就職先を聞いてなのはもスバルも唖然とする。

 

スバルとしては本命の質問内容ではないが、もう会うことが無いだろう親友が、管理局のエリート職とも言える執務官を蹴ってまで目指す仕事がもう一つの地球における防衛軍の軍人だったとは予想外であった。

 

「ティアナはスバルもなのはも知っている通り、暗黒星団帝国がもう一つの地球を占領している間にパルチザン活動をしていたからね。もしかしたら、その時にもう一つの地球に残って、防衛軍の軍人さんになろうと決めていたのかもしれない」

 

「「‥‥」」

 

(私もヴィヴィオが次元転移してこなかったら、もしかしたらもう一つの地球に残っていたかもしれないな‥‥)

 

フェイトは心の中でティアナと同じ行動をしていたかもしれない可能性を思う。

 

ティアナと違いフェイトの場合、もう一つの地球に次元転移したヴィヴィオが居た。

 

彼女を無事にミッドへ還すのが、ヴィヴィオの保護者としての役目だった。

 

ミッドにはなのは、はやて、エリオ、キャロ、クロノ、リンディとフェイトにとって親しい者たちが居るが、最近クロノが管理局の存在自体に疑問符を持ち始め、フェイト自身、遭難して、管理局よりも技術が高い星間国家と出会い、占領下を体験して執務官と言う管理局の中でもエリートクラスの役職が紙くず以下の価値しかない事を痛感したからだ。

 

だからこそ、管理局には大規模な改革が必要なのだと思いつつもまだ一執務官の自分にどこまでの改革が出来るのか分からないが、はやても二十歳前に一部隊を設立した事から、自分も周りの人たちを頼り改革を行いたいと思っているフェイトだった。

 

その後、管理局との最後の交信後からフェイトとヴィヴィオがミッドに戻るまでのティアナの様子をフェイトはなのはとスバルに伝えた。

 

自分たちが知らない間、ティアナがもう一つの地球でどんな生活を送っていたのかを知る事が出来てなのはもスバルもなんだか憑き物が落ちたような様子だった。

 

「ティアナとはやっぱり、もう二度と会えないのかな?」

 

「多分‥‥地球連邦政府が管理局と交流を持つとは思えないし‥‥もっとも最悪のケースで再会するかもしれない可能性はあるけど‥‥」

 

「最悪のケース?」

 

「ティアナは防衛軍の軍人さんを目指しているでしょう?」

 

「う、うん‥‥」

 

「万が一、もう一つの地球と管理局が戦争になった場合、戦場に防衛軍の軍人さんになったティアナが出て来て、私たちと対峙した時だよ」

 

「っ!?」

 

「‥‥」

 

フェイトから最悪のケースでのティアナの再会を聞かされ、なのはは驚愕の表情を浮かべ、スバルは強張った顔を浮かべる。

 

「そ、そんな‥‥そんなこと‥‥」

 

なのはは戦場でティアナと対峙する姿を想像したのか声を震わせながら否定をするる。

 

「まぁ、まぁ、なのは。落ち着いて‥‥これはあくまでも可能性の一つだから‥‥地球連邦政府が管理局に対して戦争を仕掛けてくる可能性は低いから‥‥むしろ管理局があの地球にちょっかいを出さない限り、そんな最悪のケースはないよ」

 

そんな、なのはに対してフェイトは管理局があの地球に不可侵の態度を貫けば管理局と地球連邦政府との間で戦争にはならないし、戦場でティアナと対峙する最悪のケースは防ぐことが出来る事を伝える。

 

「そ、そうだよね‥‥」

 

フェイトからの指摘を受けて、なのははどこかホッとした様子だ。

 

(そりゃあ、教導官としては教え子と敵対して、その教え子が自分を殺しに来る姿なんて想像したくはないよね‥‥)

 

教導官と言う生徒を教え、導く職務をしているなのはからすれば、自分の教え子と殺し合いなんてまっぴらごめんだろう。

 

「あっ、ちょっとゴメン。私、お手洗いに行ってくるね」

 

話に一息ついた時、なのははお手洗いへ向かう。

 

「‥‥」

 

スバルはなのはがお手洗いへ向かったのを確認し、

 

「あ、あの‥フェイト執務官」

 

「ん?何かな?スバル」

 

「あの‥実は、あたし、フェイト執務官にティアの他にもう一つ聞きたいことがあるんですけど‥‥」

 

「えっ?ティアナ以外に?」

 

「はい。ですが、この話は、なのはさんに聞かれるとちょっと厄介なので、できれば二人っきりで話したいんですが‥‥」

 

「分かった。それじゃあ、なのはが帰った後でいいかな?」

 

「はい!!」

 

こうしてスバルはフェイトに約束を取り付けることが出来た。

 

その後、なのはがお手洗いから戻って来て、三人はお茶会となる。

 

本命であるギンガの恋人が一体誰なのか?その正体をまだ聞いていないが、ティアナの話を聞けた事とこの後でフェイトと約束事を取り付けた事で一安心したのか、店員を呼んで注文を追加した。

 

「すみません、このサンドイッチのセットを五人前とピザを三人前、野菜とキノコのパスタを大盛りで二つ、あとデザートにこのパフェを四つください」

 

「えっ?」

 

スバルの注文を聞いて店員は困惑する。

 

「えっと‥‥」

 

スバルが注文した内容の料理の量はいくら三人居るとはいえ、女性が完食できるか疑問である。

 

「あっ、大丈夫です。この子、結構食べる子なので‥‥」

 

困惑している店員に気づき、フェイトが注文は間違いないと言う。

 

「わ、分かりました」

 

フェイトから注文は間違いないと言われ店員はオーダーを伝えに厨房へと向かう。

 

「スバルは相変わらずたくさん食べるね」

 

なのはは笑みを浮かべながら六課時代にからスバルが変わっていない事にホッとしている様子だ。

 

「まぁ、食べる事は好きですから」

 

スバルは後頭部を手でかきながら笑みを浮かべる。

 

手紙では姉のギンガはもう一つの地球で恋人が居るのだが、スバルはどうも花より団子みたいなので、彼女に恋人が出来るのはもう少し先になる様だ。

 

「お、おまたせしました」

 

やがて、スバルが注文した品が届くと、

 

「いただきます!!」

 

スバルはサンドイッチに手を付ける。

 

「あっ、なのはさんもフェイト執務官も良かったら食べませんか?」

 

スバルはなのはとフェイトに注文した品をシェアしないかと提案する。

 

「そ、それじゃあ、ちょっともらおうかな?」

 

「私も‥‥」

 

フェイトもなのはも少し小腹が減ったのでスバルの提案を受けて軽食をシェアしてもらった。

 

「ふぅ~ごちそうさまでした」

 

「私たちも食べさせてもらったからお会計、出すよ」

 

なのははスバルの軽食をシェアしてもらったので、軽食代は割り勘にすると言う。

 

「えっ?そんな、いいですよ。元々は私が注文した料理ですし‥‥」

 

「でもスバルは大切な教え子だし、食べさせてもらったんだから、お金を出すのは当然だよ」

 

「そうだよ。スバル。ここは私たちの好意に甘えて」

 

「わ、分かりました」

 

フェイトにも押し切られ、此処の会計は三人の割り勘となり、スバルはやや恐縮してしまった。

 

「それじゃあ、フェイトちゃん。今日はありがとう。ティアナの話を聞けて良かったよ」

 

「ううん。私の方もなのはとスバルと話せて楽しかったよ」

 

「それじゃあね。フェイトちゃん」

 

「またね、なのは」

 

会計を終えて喫茶店を出るとなのははフェイトとスバルに別れの言葉をかけ、ミッドへと戻って行こうするが、

 

「あれ?スバルは帰らないの?」

 

なのははスバルがまだ喫茶店の前に居る事に気づき、彼女に声をかける。

 

スバルもなのはと同じくミッド住まいなので、本局の転送ポートからミッドへ戻るので、ミッドまでは一緒の筈なのだが、帰る素振りがない。

 

「えっ?あ、あたしはその‥て、テイクアウトを頼もうかと思って‥‥今日の夕飯に‥‥」

 

この後、フェイトに話があるのだが、それをなのはが知ると付いてきそうなので、スバルは咄嗟に誤魔化した。

 

「あっ、なるほど‥‥でも、いくらたくさん食べても平気だからって、食べ過ぎは身体に毒だよ。ほどほどにね」

 

「は、はい」

 

なのはもスバルが食べる量は知っているので、スバルの言葉を信じて彼女に注意を入れる。

 

「それじゃあ私はヴィヴィオが待っているから先に帰るね」

 

「はい。ヴィヴィオにもよろしく」

 

「うん。それじゃあね」

 

なのはは先にミッドへと戻って行った。

 

一方、スバルはまだフェイトに話があるので、なのはを見送った後、今度は本局内で今現在フェイトとリンディが暮らしている居住区へと向かった。

 

今はリンディが仕事に出ているので、喫茶店以上に人の目がない。

 

しかし、フェイトは念のために、

 

「バルディッシュ、サーチャーや盗聴器がないか調べて」

 

『了解』

 

バルディッシュにサーチャーや盗聴器の有無を調べさせた。

 

『マスター、サーチャーも盗聴器もありません』

 

「ありがとう、バルディッシュ」

 

この部屋にサーチャーや盗聴器は見つからなかったので一安心し、

 

「さっ、スバル。座って」

 

「はい」

 

フェイトはリビングの椅子にスバルを座らせ、自身は持成しのお茶を用意する。

 

「さっき、喫茶店でお茶を飲んだけど、長くなりそうなら喉が渇くと思ってね」

 

「あっ、どうもありがとうございます」

 

スバルと自分の分のお茶を用意してフェイトはスバルの向かいに座る。

 

「さて、それじゃあ、スバルは私に何を聞きたいのかな?」

 

「えっと‥‥ギン姉のことです」

 

「ギンガの?」

 

「はい」

 

「なるほど、確かにギンガの話題なら、なのはが居たら不味いね」

 

 スバルのこれまでの行動に納得のフェイト。

 

いくらなのはとギンガの間に交流が無くてもなるべくならギンガの生存を知る人は一人でも少ない方が良い。

 

「それで、スバルはギンガの何を知りたいのかな?」

 

スバルはマッハキャリバーに仕舞っていたギンガからの手紙を取り出して、リビングテーブルの上に広げる。

 

「ギン姉の手紙にあったこの部分が気になりまして‥‥」

 

「ん?」

 

スバルはギンガからの手紙の一文を指さし、フェイトはその一文を覗き込む。

 

そこにはミッドへ戻らない理由の一つで『好きな人が出来た』と書かれていた。

 

「‥‥」

 

「ギン姉の好きな人って、ギン姉の恋人ですよね?それってどんな人なんですか?フェイト執務官なら知っていると思って‥‥」

 

「え、えっと‥‥」

 

フェイトはスバルが疑問に思っている答えを当然知っている。

 

しかし、その答えを教えて良いモノかと悩む。

 

「ギン姉の手紙によれば、ギン姉は今、もう一つの地球では防衛軍の軍人さんになっているんですよね?」

 

「う、うん。そうだよ」

 

「じゃあ、ギン姉の恋人も同じ防衛軍の軍人さんなんですか?」

 

「‥‥」

 

スバルの質問にやはり答えるに答えられないフェイト。

 

「どうなんですか?フェイト執務官。ギン姉の恋人が誰なのか知っていますか?」

 

「‥‥」

 

グイグイくるスバルにタジタジなフェイト。

 

ミッドともう一つの地球は交流を持っていないので、スバルがもう一つの地球に行き、ギンガやティアナと出会う事は現状難しいし、恐らくもう二度と会うことは無いだろうと判断したフェイトはグイグイくるスバルに根負けしてしまう。

 

「スバルの質問‥だけど‥‥」

 

「はい」

 

「‥‥ギンガの恋人が誰なのか?について、『知っているか?』と言われると私は知っている」

 

「やっぱり‥‥それで、誰なんですか!?ギン姉の恋人は!?あたし、気になります!!」

 

フェイトが恐る恐る答えるとスバルは目を輝かせて、ギンガの恋人が誰なのかを聞いてくる。

 

(スバルの目が純真無垢なヴィヴィオやエリオたちみたいな綺麗な目‥‥)

 

(そんなスバルにギンガの大人な関係は話せないよね‥‥)

 

向こうの地球に居る間に行った温泉旅行における露天風呂、月村邸でティアナと盗み見たギンガと良馬との間で行われていた濃厚なキスシーンや大人な関係をフェイトはスバルに話す事に戸惑う。

 

とりあえず、ギンガの恋人が一体誰なのかを話せばスバルは納得し満足するだろうと思いフェイトはスバルに話した。

 

「それで、ギンガの恋人は‥‥」

 

「うん、うん」

 

「‥‥スバルも、もう一つの地球の交信の席で何度か会っているんだけど‥‥」

 

「えっ!?交信の時に!?」

 

スバルは既にギンガの恋人とモニター越しとは言え出会っていた事に驚く。

 

「うん‥‥ギンガの恋人は‥‥」

 

「ギン姉の恋人は‥‥?」

 

「ギンガの恋人は‥‥まほろばの艦長を務めている月村艦長だよ」

 

「えっ!?えええー!!月村艦長がギン姉の恋人!?」

 

フェイトからギンガの恋人を聞いてスバルは声を上げる。

 

スバル自身、先ほどフェイトが言ったように、もう一つの地球との交信の席で良馬とは何度か会っているのだが、そんな素振りに全く気付かなかった。

 

良馬が本当にギンガの恋人であるならば、当然ギンガから自分がギンガの妹であると伝えられていたかもしれないからだ。

 

「ほ、本当に月村艦長がギン姉の恋人なんですか!?」

 

「うん。間違いないよ‥‥私とティアナはもう一つの地球に居た頃、月村艦長の実家にお世話になっていたんだけど、その時、ギンガも月村艦長の実家に何日かお泊りしていたし、月村艦長が他の女の人(ユリーシャ殿下) に言い寄られていた時、ギンガは物凄く嫉妬していたってティアナが言っていたし‥‥」

 

フェイトは良馬がギンガとキスをしている所や大人な関係の場面を目撃しているので、良馬がギンガの恋人である事は自信を持って言える。

 

「あのギン姉が嫉妬‥‥」

 

スバルはギンガと過ごした十数年の間で彼女が誰かに嫉妬した姿を目撃した事がないので、ギンガが嫉妬した姿が全く想像できなかった。

 

「‥‥月村艦長はギン姉の事を知っているのでしょうか?」

 

次にスバルは自分たち姉妹の出生を良馬が知っているのかをフェイトに訊ねる。

 

JS事件の最中に、スバルの出生の秘密をフェイトも知る事になり、スバルの姉であるギンガも当然、スバルと同じ出生方法なのはフェイトでも容易に想像がつく。

 

「うん。多分、知っていると思うよ」

 

「えっ?」

 

「次元漂流したギンガを救助したのが月村艦長みたいで、救助した際にギンガの身体検査をしただろうから‥‥防衛軍‥と言うよりももう一つの地球の医療技術はミッドと同等かそれ以上だから、ギンガを身体検査した時にギンガが普通の人じゃないことぐらいは分かると思う。そもそもスバルもマリエルさんの所に何度か行って健康診断をしているでしょう?」

 

「は、はい‥‥」

 

「当然、ギンガだってスバルと同じ健康診断をしないといけないでしょう?」

 

「え、ええ‥‥」

 

「月村艦長の実家は色んな商売を手広くやっていてね。それでギンガの健康診断も月村艦長の実家がやってくれているみたい」

 

「そうですか‥‥月村艦長とギン姉が恋人なのは分かりましたけど、フェイト執務官は月村艦長とギン姉が恋人らしいところを見たりしていませんか?」

 

「えっ?」

 

フェイトの話では、もう一つの地球でもギンガの健康診断は問題なくやっているみたいで、ギンガが普通の人ではないにもかかわらず、偏見を持たれてはいない事にまずはホッとするが、良馬とギンガが恋人なのであるならば恋人らしい場面を見たことがないかとスバルは問うてきた。

 

その質問にフェイトは固まる。

 

「え、えっと‥‥」

 

再起動したフェイトは視線を泳がせながらどう答えれば良いのか悩む。

 

(さ、流石にあの場面はまずいよね‥‥)

 

フェイトの脳裏を過るのは、クリスマスで温泉宿に行った時の露天風呂と良馬の実家で覗き見した際の二人の大人な関係の場面‥‥

 

二度も大人な関係を持つ場面に遭遇したのだから、きっと自分が知らぬ場面で二人はもっと大人な関係を持っているに違いない。

 

いくら花より団子なスバルでも子供がどんな経緯で産まれてくるのかぐらいは知っているだろう。

 

(馬鹿正直に全部言わなくても良いか‥‥)

 

(伝えるこっちも恥ずかしいし‥‥)

 

「えっと、月村艦長の実家でお世話になっている時にティアナと一緒に見ちゃったの‥‥」

 

「えっ?見た?な、なにを‥ですか?」

 

スバルはドキドキしながらフェイトの回答を待つ。

 

もしかしたらスバル自身が、姉の大人な関係を期待しているのかもしれない。

 

しかし、フェイトにはそんなスバルの心情なんて分かる筈もなく、むしろ逆に姉であるギンガが大人の階段をひた走っている事実を知ればスバルが傷つくと思い、そこまで深い内容ではなく、

 

「その‥‥キス‥をね‥‥ギンガと月村艦長がしている所を見ちゃったの‥‥」

 

「えっ?キス‥ですか?」

 

「うん‥‥」

 

「キスだけですか?」

 

「ん?えっ?キスだけ?えっ?」

 

スバルの返しにフェイトは首を傾げる。

 

「スバル。それはどういう意味なのかな?」

 

「えっと、妹のあたしが言うのも変かもしれませんが、ギン姉って年齢の割に大人っぽいじゃないですか」

 

「えっ?ああ、うん‥‥そうだね‥‥」

 

確かにスバルの言う通り、新暦71年に起きた空港火災で助けた時よりも、もう一つの地球で出会ったギンガは自分やなのは、はやてよりも二歳年下なのだが、女性として身体つきは良い方だ。

 

身長もなのはと同じで、胸の大きさに関しても恐らくはやてより大きい。

 

「そんなギン姉を恋人にしているんですから、きっとキスよりも先の展開になっているんじゃないかと思ったんですけど‥‥」

 

「‥‥」

 

(スバルって六課の時にはよくティアナにド突かれていたり、突っ込まれたりしていたから、天然かおバカキャラかと思っていたけど、変なところは鋭いな‥‥)

 

フェイトは六課時代のスバルの言動から、彼女は漫才におけるボケ担当キャラに見えていたが、スバルは意外と知的であり、管理局の訓練校では周囲よりも年下ながら上位の成績をキープしており、今でも救助隊の中でもエリート部隊である特別救助隊に在籍しているので、スバルの知能を彼女の言動から判断してはならない。

 

「え、えっと‥‥私も常にギンガや月村艦長の傍に居た訳じゃないから‥‥月村艦長とギンガのキスシーンも偶然目撃したし‥‥」

 

スバルの疑問にフェイトは当然思い当たる節があり、それを二度も目撃しているが、いくらなんでもそれを口にするのは自身が恥ずかしいので言えない。

 

それにスバルの目的は既に達成されたはずなので、フェイトとしてはこれ以上の事を口にする事はなかった。

 

「そうなんですか‥‥分かりました」

 

スバルもどうやらフェイトのここまでの話でひとまず満足した様子だった。

 

 

ミッドにて、スバルがフェイトにギンガの恋人が誰なのかを訊ねて居る頃、ケンタウロス座・第四惑星のアルファ星の防衛軍基地では‥‥

 

「へっくち!!へっくち!!」

 

ギンガが盛大にくしゃみをしていた。

 

「あれ?どうしたの?ギンガ。風邪?」

 

そんなくしゃみを連発したギンガにフェリシアが訊ねる。

 

「ううん。私は生まれてこの方、病気らしい病気はした事がないし、風邪じゃあないと思う」

 

「それじゃあ、誰かがギンガの噂でもしていたのかな?」

 

「うーん‥どうなんだろう‥‥」

 

まさか、フェリシアの推測が当たっているとは、ギンガは当然知る由もなかった。

 

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