星の海へ   作:ステルス兄貴

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百五十七話 恒例行事

 

 

太陽の核融合異常増進が起き、破滅へと進んでいる太陽系‥‥

 

ガミラス戦役と異なり、天体観測の専門家である倉田博士と地球連邦大学の元教授であったサイモン氏が言うには、地球人類が生き延びるには地球を捨てて第二の地球となる星を見つけそこへ移住するしか方法がないと言う結論が出された。

 

イスカンダルから波動エンジンが齎される前、ヤマトも本来はこうした移住船として建造されたが、イスカンダルから波動エンジンが齎され、更にそのイスカンダルには地球に充満する放射能を除去出来る放射能除去装置、コスモクリーナーがあるとの事で、移住計画は見直された経緯があるが、今回はコスモクリーナーではどうしようもなく、また当時の地球と異なり宇宙船の建造技術が上がった事から、第二の地球を見つけ、地球を脱出する計画が密かに立てられた。

 

密かにと言うのはこの太陽の核融合異常増進‥太陽系の破滅の事実について地球連邦政府及び太陽エネルギー省は単なる自然現象であり、しばらくしたら収まると楽観視していたからだ。

 

もし、地球連邦政府や太陽エネルギー省の見立て通り、核融合異常増進が自然に収まれば取り越し苦労になるが、それはそれで太陽系は破滅しないと言う事なので、楽観できるが、倉田博士、サイモン氏の見立てが正しければそれは太陽系の破滅を意味する事であり、第二の地球を探査する時間が少なくなり、地球人類は滅んでしまう。

 

ヤマトは藤堂の密命を受け、第二の地球探査の為、地球を出航した。

 

ヤマトに乗艦した新人たちの訓練を行いながら太陽系を航行している中、海王星宙域にてガルマン・ガミラスの特使団の先導をしていた まほろば と遭遇し、まほろば も藤堂の密命を受け、第二の地球探査を行っているヤマトの護衛として、第二の地球探査の任務に就くことになった。

 

順調に太陽系を進んで行く中、良馬はふと海王星まで送ったジュラたちガルマン・ガミラスの特使団の事を思う。

 

(そろそろジュラさんたち特使団一行は月に着くころか‥‥)

 

(無事に到着できただろうか?)

 

(地球との同盟も簡単な道のりではないが、それ以前に太陽系の危機に陥っているからな‥‥)

 

海王星にて藤堂から聞かされた太陽系消滅の危機‥‥

 

これが事実であるならば、同盟話なんて締結以前の話だ。

 

(しかし、ジュラさんの話によれば、ガルマン・ガミラスは銀河系中心部を始めとしてかなりの勢力を保有しているらしいから、ガルマン・ガミラスの勢力下から地球に似た星を提供してもらえればあるいは‥‥)

 

(ただその場合、同盟よりも併合の可能性もあるからな‥‥)

 

銀河系中心部を始めとしてガルマン・ガミラスはボラー連邦と共に銀河系でかなりの勢力を有している事がジュラの話から伝えられていた。

 

そのガルマン・ガミラスの勢力下の中でもしかしたら地球の環境に似た星があるかもしれない。

 

地球との同盟において、太陽系の現状を伝えれば、ガルマン・ガミラスからその星を提供する代わりに同盟を締結するかもしれないが、その反面、地球人類が住める星を提供したのだから、今後はガルマン・ガミラスに協力する事を強要されるかもしれないと言う危険もあるので、やはり今回の探査任務で第二の地球となりえる星を見つけることがガルマン・ガミラスとの間に波風を立てない方法などだろう。

 

ただその星が見つかる保証もないし、仮に見つかったとしてもその星がガルマン・ガミラス、ボラー連邦の勢力下に無い事、

 

その星に原住民となる知的生命体が居ない事が前提となるので、今回の任務は前途多難な任務であった。

 

 

ヤマト まほろば が一先ず太陽系内からの離脱の為、太陽系の外縁部を航行している中、ジュラたちガルマン・ガミラスの特使団一行はトリトン基地所属の艦の先導の下、まもなく月に到着しようとしていた。

 

 

ガルマン・ガミラス特使団 旗艦 ガミラシア 艦橋

 

「本星からのデータで見ましたが、こうして本物を見ると青く美しい星ですね」

 

バレルがジュラに初めて本物の地球を見て、第一印象を口にする。

 

「お父様の故郷であるガミラス星‥その隣にあったイスカンダルも地球と同じく青い海が広がる綺麗な星でした‥‥」

 

こうして地球を見ると青い星と言う共通点からイスカンダルを思い出すジュラ。

 

「さて、これからが大変ですな」

 

「そうですね。ですが、地球‥ガルマン・ガミラス‥‥お互いに新たな一歩を踏み出す機会となり得る筈ですから、頑張りましょう」

 

「はい」

 

これから行われる同盟締結についての地球側との話し合いに意気込むジュラであったが、ふと太陽を見て、

 

(あれ?地球の太陽ってあんな大きさでしたっけ?)

 

(心なしか少し大きい様な気が‥‥)

 

事前に見ていた地球のデータからジュラは太陽に違和感を覚えていた‥‥

 

 

ガルマン・ガミラスからの特使団一行が無事に会談場所である月に到着している頃、ヤマト、まほろばも順調な航海を行っており、既に第十一番惑星も既に遥か後方だった。

 

第十一番惑星を過ぎた事で地球の勢力圏外となるが、暗黒星団帝国との戦いが終わった地球はかねてより宇宙開拓を進め、太陽系外でも観測ステーションや無人監視衛星などが点在していた。

 

そして、ヤマト、まほろば ではもはや恒例となっている太陽系赤道祭が行われていた。

 

地球人類の存亡がかかっているとは言え、今まで厳しい訓練を行ってきた新人たちにも休息が必要であるとの事だ。

 

第二次イスカンダル航海時の様にヤマト、まほろば の二隻は横付けし、接舷ハッチが互いの船体に接続され、ヤマト、まほろばの行き来が出来るようになっている。

 

今回の太陽系赤道祭はコスプレ衣装に身を包む者が多く、雪もドーリス式キトーンを身に纏い、頭にはオリーブの造葉で出来た冠を被り、古代もトゥニカの上にトガを纏ったローマ帝国時代の服装をしていた。

 

「こ、古代君、その服装‥どうしたの?」

 

雪は兎も角、あの古代がコスプレなんてしているのだから良馬としては意外性を覚えると同時に驚愕した。

 

そして、何故コスプレなんてしているのかを古代に訊ねた。

 

「い、いや‥俺もこの格好をするのは‥‥でも、この後で祈願の儀式をするみたいで‥‥」

 

「祈願の儀式?」

 

「その‥‥今回の任務が成功する為の祈願儀式みたいで‥‥」

 

「な、なるほど」

 

今回の任務‥第二の地球探査のメインはヤマトであり、その任務の内容が運の要素も絡むが、それでも困難な事には変わらず、ゲン担ぎを含めてこの赤道祭にて祈願の儀式も行うのだと言う。

 

主に日本人クルーで構成されているヤマトで行われる祈願の儀式なので、神社等で行う祈祷かと思い、身に着ける衣装も巫女服や宮司が纏う様な衣装かと思ったのだが、どうやら違うらしい。

 

「ゲン担ぎとは言え、今回の任務の成功を祈る為の儀式だからね。頑張って」

 

「は、はい」

 

古代としては良馬に代役を頼みたかったのだろうが、今回の任務の主役がヤマトであり、ヤマトの艦長と言う立場から良馬に代役を頼みづらかったのだろう。

 

「古代君も大変だな」

 

グラスを片手にこの後に控えている儀式の主役を務める古代に同情している良馬。

 

そこに、

 

「あっ、良馬さん」

 

「ん?えっ?ギンガ?」

 

良馬は声をかけられたので振り向くとそこにはギンガが居たのだが、ギンガの姿を見て良馬は再び驚愕した。

 

「ぎ、ギンガ‥その恰好‥‥」

 

「に、似合いますか?」

 

ギンガはクルッとターンをして、自らが纏っている衣装を良馬に見せる。

 

彼女は第二次イスカンダル航海時にて原田と共にメイド服を着て参加していたが、今回の赤道祭ではチャームポイントであるリボンを解いてイスカンダル風のドレスを着ていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「う、うん。よく似合っているけど‥‥そのドレス、もしかしてイスカンダルの‥‥?」

 

「はい。スターシア陛下のウェディングドレスも素敵でしたけど、普段からお召しになっていたドレスも素敵だったので、そのドレスをモチーフにして作ってみました」

 

やはりギンガも王族であるスターシアに対して憧れの様な感覚があり、今回の赤道祭の様に色んな衣装を堂々と着る事が出来るイベントだったので、ギンガはイスカンダル風のドレスをチョイスしたのだ。

 

祭りの参加者たちが会場に集まると、古代が言っていた祈願の儀式とやらが始まった。

 

「大地に光と実りを与えたもう太陽の子、アポロよ。我らにあた新たなる恵みと加護を与えたまえ」

 

雪が古代の前で祈りの言葉を告げる。

 

すると乗員たちからは拍手が起こった。

 

(なるほど、古代君のコスプレはアポロだったのか‥‥とすると、森さんのコスプレは月の女神であるセレーネかな?)

 

儀式の様子から二人のコスプレの内容を察する良馬だった。

 

祈願の儀式が終わり、乗員たちは料理に舌鼓を打つ者、この後で勤務がない者は明日の勤務に影響がないレベルで酒を飲む者、談笑に華を咲かせる者と各々好きに太陽系赤道祭を楽しんでいる。

 

ヤマトの医務長である佐渡はやはりと言うか当然の如くアルコール提供のコーナーにて酒をかっ喰らっていた。

 

なお、この時の佐渡は古代と同じくトゥニカの上にトガを纏い、頭には雪と同じくオリーブの葉の造葉で出来た冠を被っていた。

 

「佐渡先生は一体何の仮装をしているのですか?」

 

酒を飲んでいる佐渡に良馬は彼が一体何の仮装をしているのかを訊ねる。

 

「ワシか?ワシはバッカスの衣装じゃよ」

 

佐渡はローマ神話におけるワインの神であるバッカスの仮装であると言う。

 

「バッカス‥‥佐渡先生らしい仮装ですね」

 

「そうじゃろう、そうじゃろう。ハハハハハ‥‥」

 

満面の笑みを浮かべ楽しそうに酒を飲む佐渡であった。

 

良馬が再び祭りの会場を歩いていると、

 

「頑張って!!」

 

「次の皿を持ってこい!!」

 

「お水も用意してあげて!!」

 

と、一部の区画にて何やら乗員たちが盛り上がっている。

 

「ん?なんだ?」

 

良馬も気になってその区画へ行ってみると、そこには一つのテーブルに座って食事をしている男女の姿があった。

 

女性の方はギンガであり、男性の方はヤマトの航海長補佐の太田だ。

 

二人は当初、普通に食事をしていたのだが、いつの間にか大食い対決となっていた。

 

太田はヤマトでも大食漢として有名なのだがまさかその太田を相手に女性であるギンガがまったく引けを取らずについている事にヤマトの乗員たち、まほろばの乗員たちも信じられずにヒートアップしているのだ。

 

「太田さん!!頑張って!!」

 

「中嶋さんも頑張れ!!」

 

太田はヤマトの隊員服であるが、ギンガの方はイスカンダル風のドレスを着たままドレスを汚すことなく器用に食べている。

 

女性でありなおかつドレスを着ていると言う点から一見ギンガの方が不利かと思えた。

 

しかし、蓋を開けてみれば両者はペースを崩すことなく一歩も譲らないペースで次々と皿の上の料理を平らげていく。

 

だが、戦闘機人であり、ギンガの元となったクイントが太田に負けず劣らずの大食乙女であった事から、皿の枚数が増えていくにつれ、太田の顔が青くなり、料理を口へ運ぶペースも段々と遅くなって行き、そして‥‥

 

「うっ‥‥ぎ、ギブアップ」

 

「ごちそうさまでした」

 

太田はギブアップして、大食い対決はギンガが勝者となった。

 

「ま、まさかあの太田に勝つなんて‥‥」

 

「しかも相手は女性‥‥」

 

「中嶋さんすげぇ‥‥」

 

「それにあれだけ食べたのにお腹が膨れていない様だぞ‥‥」

 

倒れている太田のお腹はパンパンに膨れているのに対してギンガの方はお腹が膨れている様子が全くない。

 

しかもまだ余裕があるのか、

 

「あっ、まだデザートを食べていなかった」

 

そう言って口元をナプキンで拭うと席を立ちデザートを取りに行った。

 

「あ、あれだけ食べたのに‥‥」

 

「ま、まだ食べるのか‥‥?」

 

「い、一体どんな胃袋をしているんだ?あの人‥‥」

 

まほろばの乗員たちは元々ギンガがよく食べる事を知っていたので、さほど驚いてはいないが、事情を知らないヤマトの乗員たちは、勝者となったギンガに対して驚いているというか引いていた。

 

(そう言えばギンガと加奈江さん‥二人でバイキングレストランの料理を食べ尽くしたことがあったからな‥‥太田君もよく戦ったけど、相手が悪かったな)

 

ギンガを相手に大食いで奮闘して、倒れている太田に心の中で合掌する良馬だった。

 

 

ギンガと太田の大食い対決の他に盛り上がっていた箇所が赤道祭の会場にあった。

 

「ヤマト航海科主催、艦内相撲大会!!決勝戦をこれより開始します!!」

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁー!!』

 

「ひぃ~がぁ~しぃ~永倉やぁ~まぁ~‥‥にぃ~いぃ~しぃ~雷電のぉうぅ~みぃ~」

 

相撲大会の決勝戦では、まほろば の航海長の永倉とヤマト航海科の新人、雷電五郎の対決となった。

 

「先輩と言えど、全力で挑ませてもらいますよ」

 

「おう、受けて立つぜ」

 

雷電も永倉も闘志が宿った目で互いを見つめ、開始の合図を待つ。

 

「両者、見合って、見合って‥‥はっけよい‥‥のこった!!」

 

「うぉぉぉぉぉ!!」

 

「おりゃぁぁぁ!!」

 

行司役の隊員が合図を出すと両者は思いっきりぶつかり合う。

 

「のこった!!のこった!!」

 

「永倉さん!!いけぇー!!」

 

「頑張れ!!雷電!!」

 

「踏ん張れ!!」

 

「ど根性を見せろ!!」

 

ヤマト、まほろば、互いの乗員たちがそれぞれ永倉と雷電に声援を送る。

 

「うぐぐぐ‥‥」

 

「ぐぬぬぬ‥‥」

 

永倉、雷電の両者は互いに譲らず土俵の中心で踏ん張っていたが、

 

「どりゃぁぁぁ!!」

 

「ぬおっ!?」

 

永倉の一瞬の隙を突いて雷電が永倉を上手投げで転がした。

 

「勝者、雷電のぉうぅ~みぃ~」

 

『わぁぁぁー!!』

 

勝者の名が呼ばれ、周囲は歓声をあげる。

 

「いやぁ~参ったぜ~‥‥やっぱ若さには勝てねぇなぁ~‥‥」

 

「そんなことないですよ。今回は俺が勝ちましたが、勝負は時の運‥先輩も中々の強さでした」

 

「ふっ、次は負けねぇぞ」

 

「自分もです」

 

雷電が永倉を励まし互いに健闘を称えると、再び拍手と喝采が起きた。

 

 

赤道祭の会場で様々な大会や出来事が起きている中、

 

「ふぅ~‥‥」

 

祈願の儀式を終えた古代は壁際にて一息つく。

 

儀式の後、太田が記念写真を撮ろうと言い、第一艦橋のメンバー合同で記念撮影をしたり、雪とのツーショット写真を撮られたりと何かに絡まれていた。

 

「お疲れ様」

 

そこへ、良馬がウーロン茶の入ったグラスを古代に手渡す。

 

「あっ、ありがとうございます」

 

古代はグラスを受け取るとグイッとグラスの中のウーロン茶を一気に飲み干す。

 

変な格好で儀式に参加してヤマト、まほろばの大勢の乗員たちに見られ、記念写真の撮影、絡まれてと色々あって喉がカラカラだった様だ。

 

「この祭りをやると太陽系ともお別れか‥‥と思うよ‥‥前回は山南さんたち春藍の皆とやってね‥‥」

 

赤道祭の会場で祭りを楽しんでいるヤマト、まほろばの乗員たちを見渡しながら以前行った赤道祭について語る良馬。

 

「自分たちはそんな余裕がありませんでしたけど、こうして まほろば の皆さんと赤道祭をやるとあの時の航海の事を思い出します」

 

暗黒星団帝国が地球へ襲来する少し前に春藍のテスト航海に同行した、まほろば は太陽系を出た際、春藍の乗員たちと太陽系赤道祭を行った。

 

しかし、ヤマトの時は地球が暗黒星団帝国襲来を受け、イカルス天文台から発進したヤマトはミヨーズ率いる暗黒星団帝国地球侵攻軍・第二特務艦隊の追撃を受け、更に地球が暗黒星団帝国に占拠されてしまったので、赤道祭を行う余裕がなかった。

 

なので、こうしてまほろばの乗員たちと赤道祭をやると第二次イスカンダル航海の時を思い出す古代。

 

「ただ、この先近い将来に太陽系とは永遠にお別れになると思うと無慈悲な話だ」

 

「ええ‥‥ですが、今回の件はどうしようもありません。相手は侵略者ではなく、太陽と言う自然相手なんですから‥‥自分たちに出来る事は一日も早く第二の地球を見つけることです」

 

「ああ‥‥デスラーが第二の故郷を見つけられたのだから、自分たちも見つけられる筈、この広い宇宙なら地球と似た星だってある筈‥‥そんな楽観視をする反面、現在銀河系で起きているガルマン・ガミラスとボラー連邦との星間戦争の状況から色々と厳しい状況だ」

 

「と、言いますと?」

 

「ガルマン・ガミラスについては一応、デスラー総統との間に知己があるからそこまでは揉めないかもしれないが、もしボラー連邦の勢力下の宙域に第二の地球となる星が見つかった場合、地球は必然的にボラー連邦との星間戦争に突入する訳だ」

 

「そうなりますね‥‥」

 

「それにいくら知己があるとは言え、ガルマン・ガミラスの勢力下で地球に似た星が見つかった場合、当然ガルマン・ガミラスと交渉しなければならない‥‥今はジュラさんたちが地球との同盟締結のために交渉しているが、ガルマン・ガミラスの勢力下で地球に似た星が見つかった場合、同盟ではなく、ガルマン・ガミラスの傘下に入らなければならなくなるかもしれない」

 

「‥‥」

 

良馬は今回の任務で抱いた疑問を古代に吐露する。

 

「ガルマン・ガミラスとしては戦って犠牲を出した上で得た勢力下に無断で入り込み、『この星は本日より地球連邦政府の所有とする』なんて一方的に言われたらガルマン・ガミラス側もいい気分ではないだろう?」

 

「た、確かに‥‥」

 

「今回の任務は星の探査は勿論の事、こうした外交問題も絡んでくる部分もある点、やはり厳しい状況であり、困難な任務だ‥‥」

 

「‥‥」

 

古代は良馬が抱く不安を聞き、改めて今回の任務の困難度を感じた。

 

「あっ、ごめん‥なんか不安にさせてしまって‥‥」

 

「い、いえ‥‥月村艦長の言う事も最もです」

 

ヤマトの艦長として初の任務がこんなにも困難な任務に対して余計なプレッシャーを与えてしまったと良馬は古代に謝る。

 

しかし、良馬からの指摘を受け、現在の銀河系の状況から古代はただ単に地球に似た星を探すだけではないと自覚させられた。

 

「それにしても太陽系の破滅か‥‥にわかには信じられない話だが、これが本当に取り越し苦労だったら良かったんだがな‥‥藤堂長官の話‥間違いないのかい?」

 

「自分も当初は信じられない話でしたが、専門家である倉田博士とサイモン教授の話を聞く限り間違いないと思います。真田さんも同じ意見でしたから‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

古代も良馬同様、太陽系の破滅話が取り越し苦労だったらどんなに楽だろうと思っていたが、あの真田も倉田博士とサイモン氏が立てた太陽系の破滅説は信憑性が高いと判断しているので、やはり太陽系の破滅は事実のようだ。

 

(地球と同じ星か‥‥)

 

そんな二人の艦長の話を土門は偶々聞こえてしまい、古代と良馬の話を複雑な思いで聞いていると、ポンと肩を叩く者が居たので振り向くとそこには坂東の姿があった。

 

「土門、仲間に入らないのか?この機会を逃したら次はいつ、こんな祭りをやるのか分からないんだぞ」

 

「とてもそんな気分になれないよ」

 

他の同期は日ごろの訓練のガス抜きを兼ねて赤道祭を楽しんでいるみたいだが、土門の気分は古代と良馬同様、未来に不安を覚える。

 

「地球の事を考えているのか?」

 

「まあな‥‥地球のこと、太陽のこと、それにあのガルマン・ガミラスって星のこと、色々とな‥‥」

 

「土門、俺たちは地球を救うためにこうしてヤマトに乗り、広大な宇宙へ乗り出したんだ‥‥未知への挑戦に不安も感じるのは当然だが、それと同時に胸が躍り、血が騒ぐのは当然だろう?今日だけは地球の事は忘れて、皆と一緒に楽しもうじゃないか」

 

「あとでな‥‥」

 

そう言って土門は赤道祭の会場を後にした。

 

赤道祭の会場を後にした土門はあてもなく艦内をブラブラと歩いていると、大切そうに何かを持った相原が通路を歩いていくのを見つけた。

 

しかもこれから外に出るのか、船外装備を装着している。

 

「相原通信長」

 

「ん?ああ、土門君か」

 

「今は赤道祭の最中ですよ」

 

「うん。でも、今の内にやっておきたい事があるんだ」

 

「やっておきたい事?」

 

「ああ‥‥土門君もやるかい?」

 

「えっ?何をです?」

 

「一種のおまじないだよ」

 

「おまじない?」

 

「ああ」

 

特にやる事も無かったし、祭りを楽しむ気分でもなかった土門は相原と同じく船外装備を用意して相原についていく事にした。

 

 

相原と土門と言う珍しい組み合わせとなった二人はヤマトの後部甲板へと出る。

 

「地球の宇宙船乗りの間にはこうやってコインを投げるとまた地球へ帰って来れるって言う伝説があるんだ」

 

そう言って相原は身体を後ろに反らして遥か彼方の太陽を仰ぎ見ながらコインを宇宙空間へと弾き飛ばした。

 

「何か、ローマにある『トレヴィの泉』みたいですね。あそこの泉に背を向けてコインを一枚投げ入れるとローマへの再訪が叶うって話を聞いた事があります」

 

「俺が聞いた話では、大切な人と永遠に一緒にいることができるって話だったな」

 

「相原通信長は地球に誰か大切な人でも待っているんですか?」

 

「そうだな‥‥待っているかは分からないけど、会いたい人は居るかな」

 

流石に藤堂長官の孫娘である晶子とは言えず、やんわりと誤魔化す相原。

 

「良いですね。俺には地球で待っている人や会いたい人なんて‥‥居ませんから」

 

両親は既に他界し、近しい親戚もガミラスとの戦いで亡くなっているので、土門は既に天涯孤独の身なので、相原と違って地球で自分の帰りを待っている人なんて居ないと答える。

 

「君の両親の事は艦長から聞いているよ。確か太陽観光船の事故で亡くなったって‥‥」

 

「はい。親戚の人たちもガミラスの戦争で死んでいるので‥‥」

 

「本当に居ないのかい?」

 

「ええ‥‥」

 

「‥‥確か土門君は宇宙戦士訓練学校を繰り上げ卒業をしてヤマトに乗ったんだよね?」

 

「はい」

 

「訓練校に親しい友達は居ないのかい?」

 

今回のヤマトの新人たちは北野や徳川たちと異なり、まだ在学期間がある中で繰り上げ卒業をしたが、訓練校の学生全員が繰り上げ卒業をした訳ではない。

 

地球にある宇宙戦士訓練学校には土門の同期がまだ在席しており、今も座学と訓練をしている。

 

「えっ?」

 

相原の問いに土門の脳裏にはティアナとうららの姿が思い浮かんだ。

 

「あっ‥‥」

 

「その様子だと居るみたいだね」

 

「は、はい。日々の訓練やヤマトの任務の重要性からすっかり忘れていました」

 

「おい、おい、それは酷いなぁ~」

 

土門の態度を見て相原は苦笑する。

 

「相原通信長、俺もやってみます。太陽の近くでは両親が眠って、地球にはアイツらが待っているので‥‥」

 

「ああ、やってみるといい」

 

そう言って相原は土門にコインを渡す。

 

相原からコインを受け取った土門は先ほど、相原がやったように身体を後ろに反らせ宇宙空間へコインを弾き飛ばした。

 

男同士と言うのも何やら妙な光景ではあるが、相原と土門は各々の思いを抱きながら離れてゆく太陽系を見つめていた。

 

まほろば、ヤマト、両艦にある交信室では、乗員たちが家族や恋人など地球に残してきた大切な人たちとの通信のやり取りが行われていた。

 

やはり地球に残してきた家族を心配する者が当然多く居り、交信希望者が多数居る為、一人五分と言う短い時間ながらも互いに思い思いの言葉を酌み交わす。

 

特に、まほろば の乗員たちはアルファ星に赴任してから突然の第二の地球探査任務をヤマトと合同にやる事になったので、地球に居る家族との対面はかなりご無沙汰となっているし、これからもそうなりそうだった。

 

ただ、地球連邦政府からの公式発表が未だに無いため、ヤマト、まほろばの今回の任務‥第二の地球探査、そして太陽系の消滅の件については戒厳令が敷かれているので、伝えるのは厳禁とされた。

 

良馬も地球に残してきた忍たちの事を心配して通信を入れた。

 

「あら?珍しいわね。良馬が宇宙に居る時、家へ連絡を入れてくるなんて」

 

良馬からの交信に忍は意外だった。

 

「それで、アルファ星の開拓はどう?順調?」

 

「ええ、食糧生産、水源確保も出来、ショッピングモールや飲食店も出来たので開拓に来た人々の生活も地球と変わらない生活になりつつあります」

 

アルファ星の開拓には良馬の実家である月村グループも出資しているので、総帥である忍がアルファ星の開拓の現状に興味を持つのは当然だった。

 

しかし、そのアルファ星は先日ボラー連邦の攻撃を受け、少なからず被害を受けていた。

 

更に太陽系が破滅へ進んでいる事から忍を心配させまいと良馬はアルファ星が攻撃を受けた事を黙っていた。

 

「それで忍さんの方はどう?」

 

「‥‥これは私の勘なんだけど、今地球で何かが起こっている様な気がするのよ」

 

「えっ?どうしてそう言えるの?」

 

「実は先日、ノエルが突然機能を停止する事があって‥‥それが何度も‥‥ちゃんとメンテナンスはしている筈なのに‥‥それにノエル以外にも鳥や犬猫、そしてネズミも何かせわしない行動をとっているし‥‥」

 

(ノエルの不調や動物たちの異変は長官が言っていた電波障害の影響か‥‥)

 

忍の話を聞き、ノエルの不調、動物たちの挙動不審な行動は太陽の核融合異常増進における影響で起きた電波障害だろうと判断する良馬。

 

(やはり、地球の終末が近づいていると言う事か‥‥)

 

(この状況下なのに何故、政府は対策を取らないんだ?)

 

電波障害は機械や動物に影響を与えているみたいだが、人間にはまだ影響が出ていない。

 

その為、地球連邦政府も太陽エネルギー省も太陽の核融合異常増進を未だに自然現象だと信じ込んでいる様だ。

 

「そうですか‥‥」

 

「それで、良馬はいつ地球に戻る予定なの?」

 

「それが、まほろば は、長期の任務を受けまして正確に地球への帰還日時が不明でして‥‥」

 

「そう?ユリーシャも貴方に会いたがっているから、なるべく早くに戻って来てね」

 

「はい」

 

忍との交信を終え、真実を口に出来ない申し訳なさと同時に自分を慕う家族たちの為にも新たなる移住先を見つめなければと自身を奮い立たせた。

 

なお、良馬との通信の後、良馬から通信が来たことを知ったユリーシャは忍に『何故呼んでくれなかったのか?』と詰め寄った。

 

 

赤道祭も無事に終わり、ヤマト、まほろば はケンタウロス座アルファ星へと向かう。

 

アルファ星に向かっている中でもヤマト、まほろば はただ航海をするだけではなく、互いの艦を仮想敵艦に見立てての実戦形式の訓練等を行った。

 

そんなある日、古代は自室となった艦長室で訓練経過についての報告書を纏めていると、

 

コン、コン、

 

艦長室のドアがノックされた。

 

「森雪です。入室してもよろしいですか?」

 

やって来たのは雪みたいだ。

 

「どうぞ」

 

古代が入室の許可を出すと雪は何かを乗せたお盆を持ち入って来た。

 

「ご苦労様、お腹が空いていると思ってお夜食を持って来たわ」

 

「ああ、ありがとう」

 

雪は古代の為に夜食を持って来た。

 

そしてティーポットからカップに紅茶を注ぎ、次いでカップの中にレモンを淹れる。

 

「‥‥えっと‥この紅茶はもしかして雪が淹れたのかい?」

 

古代はカップに入っている紅茶を一目見た後、雪を見る。

 

「違うわ。土門君が淹れた紅茶よ」

 

「そ、そうか」

 

雪がカップに注いだ紅茶は、雪ではなく土門が淹れた紅茶であると知り、古代は何だか安心した様子でカップに口をつける。

 

平田から古代が飲むレモンティーを淹れる役を引き継がせてもらった土門は今回の夜食の紅茶もちゃんと淹れてくれたみたいだ。

 

雪は、料理の腕は問題ないのだが、コーヒーやお茶を淹れる事に関しては何故か物凄く下手なのだ。

 

将来、喫茶店である翠屋の再興を目指している紅葉曰く、雪の淹れたコーヒーは『泥水』と言う評価であり、第一次イスカンダルの航海からヤマトに乗艦している乗員たちとって雪の淹れるコーヒーや紅茶、お茶類は不味い事を知っており、彼女が淹れた飲み物を飲むことはある種の罰ゲームの様なモノだった。

 

「何か古代君、ホッとしてない?」

 

自分が淹れた紅茶ではなく土門が淹れた紅茶であると知り、安心して飲んでいる古代に対してジト目で見てくる雪。

 

「そ、そんな事は無いぞ。それに雪も知っているだろう?俺が夜にレモンティーをよく飲んでいる事を‥‥疲れた身体にこうして温かいレモンティーを飲むと心が落ち着くんだ」

 

慌てて雪に弁解する古代。

 

「それに土門の奴が平田に直接頼み込んだんだ‥‥俺が飲むレモンティーを淹れさせてくれって‥‥アイツは着実に成長しているよ‥‥立派な宇宙戦士に‥‥」

 

あの時の食堂での一件を間近で見ていた古代は土門の成長に嬉しさを覚える。

 

レモンティーと雪が用意した夜食を食べ終えた後、不意に古代は雪にある違和感を話す。

 

「なぁ、雪‥‥」

 

「ん?なに?古代君」

 

「島の事なんだが‥‥」

 

「島君?」

 

「ああ‥‥アイツ、ここ最近なんか変じゃないか?」

 

「変って?」

 

「うーん‥‥俺も確証があって言える訳じゃないんだが、なんだか最近、アイツに避けられている様に感じるんだが‥‥いや、必要な事はちゃんと受け答えしてくれるんだが、それ以外だと何か素っ気ない態度をとってくるように感じるんだ」

 

古代が覚えていた違和感‥‥それは自分に対する島の態度であった。

 

「きっと気が立っているのよ。新しい星を一年以内に見つけないといけないし」

 

「そうなんだろうか?‥‥もしかしたら、島は俺がヤマトの艦長になったのが面白くないのかもしれないんじゃないだろうか?実際にこの前の赤道祭じゃあ、島は俺に一言も声をかけなかった‥‥」

 

古代と島は宇宙戦士訓練学校の同期でずっと一緒にヤマトに乗り戦ってきた。

 

役職も互いに航海長と戦術長と同列だった。

 

第一次イスカンダルの航海の途中から長い期間、艦長代理として一時的に指揮を執った事はあるが、今回は正式な辞令を受けて、自分はヤマトの艦長となり、役職では島よりも上になった。

 

同期で長い間、同じ艦に乗っていたからこそ、島にとっては今回の人事に関して不満があったのかもしれない。

 

「そんな筈はないわ。みんな、貴方が一番適任だと思っているわよ。だからこそ、藤堂長官は貴方をヤマトの艦長にしたんじゃない」

 

「そうだと良いんだが‥‥」

 

雪は古代を励ますが、それでも心の中のモヤモヤは晴れない古代。

 

「今度の任務があまりにも重大だから、みんな神経が知らず知らずの内に苛立ってしまうのよ。貴方だってそうじゃない?」

 

「そんなものかな‥‥」

 

「そうよ。艦長として任務の重大性を深く受け止めているのかもしれないけど、航海長の島君だって、人類が住める星を最短で見つけるコースを策定しなければならないって言う大事な仕事を託されているのだから、島君だってきっと神経を尖らせているのよ」

 

「‥‥」

 

「新しい星が見つかれば、きっと何もかも元通りになるわよ」

 

「そ、そうだな‥‥」

 

その後、話題を変えて古代と雪は談笑をし、しばらくして雪は帰って行った。

 

 

古代が島に対する自分の態度や任務の重大さなど悩んでいる中、まほろばの艦橋では、

 

「もうすぐケンタウロス座、アルファ星か‥‥」

 

「この辺の宇宙も何だか見慣れた感じになりましたね」

 

良馬はケンタウロス座宙域を見ながら呟くと舵を握っていた永倉も太陽系同様、ケンタウロス座宙域も見慣れた宙域となりつつあった。

 

「ああ‥‥海王星で補給した救援物資を降ろし、代わりに修理用のオスミウムを搭載したら、まほろば もヤマトも未知なる宇宙への旅だ‥‥それも一年以内に地球に似た星を見つける為のな‥‥」

 

「何かヤマトの第一次イスカンダル航海に似ていますね」

 

「うん。だが、第一次イスカンダル航海と異なり、今度の航海は目的地が不明な点だな」

 

一年以内と言うタイムリミットは同じであるが、第一次イスカンダルの航海は大マゼラン星雲、サンザー星系の中にあるイスカンダルを目的地にする航海であったが、今度のヤマト、そしてまほろばの航海は目的地を探す航海なので、第一次イスカンダル航海と異なる。

 

だからこそ、両艦の乗員たちの不安もあったが、地球の危機が迫っている以上、手を拱いて太陽系の最後を座して死を待つよりも僅かな可能性に賭けて、地球人類の明日を得るために行かなければならなかった。

 

ヤマト、まほろばの近距離にはケンタウロス座第四惑星のアルファ星が見えて来た。

 




ギンガに引き続き、艦長服を纏う可能性があるキャラクターとしてあげるのがティアナとなります。

彼女は機動六課時代にセンターガードを務めており、作戦の立案・指揮能力があるので、宇宙戦士訓練学校にて彼女のこの能力が磨かれれば将来ティアナが艦長服を纏う可能性は十分にあります。


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