ガルマン・ガミラスと地球の両星間国家との間における同盟を締結する為に月へとやってきたジュラたちガルマン・ガミラスの特使団一行。
その一行を月で出迎えたのは軍部代表では藤堂長官‥ではなく山南司令が‥‥
地球連邦政府の代表では大統領ではなく、連邦政府首相のジョアン・レベロが今回のガルマン・ガミラスとの会談に臨んだ。
「遠路はるばるようこそ太陽系へ」
「こちらこそ、会談の機会を設けていただきありがとうございます」
「いえ、折角のご来訪にもかかわらず、このようなお忍びみたいな形で出迎える事をご容赦ください」
「地球側の事情も理解しております」
ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国と地球は何度も外宇宙からの侵略を受けているいため、いきなり地球に外宇宙からの来訪者なんて来れば連邦市民はパニックに陥る恐れがあるので、ジュラたちの来訪はこうしてひっそりと行われるモノとなった。
ジュラたちも当然、地球側の事情は知っていたので、地球側が自分たちの来訪を隠すかのように対応してきた事に関して抗議等は行わなかった。
山南、レベロの地球側、ジュラ、バレルのガルマン・ガミラスの代表は互いに握手を交わして会談会場へと向かう。
今回のガルマン・ガミラスとの会談は非公式な為、地球側のマスコミには完全に伏せられていたので会談会場に記者の姿は見られない。
むしろ、記者が居て記事に書かれれば地球で大規模な反ガミラスの抗議運動が起きる可能性がある。
会談会場へ向かう最中、
「あの‥すみませんが、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「なんでしょう?」
ジュラが地球側の代表に声をかけてきた。
「地球の太陽では今、何か起こっているのでしょうか?」
「?何故、そのような事を?」
「ガルマン・ガミラスで保存されていた地球を含む太陽系のデータと比べますと、何だか太陽の大きさが異なっている様に見えまして‥‥」
「異なるとは?」
「観測データよりもなんだか大きくなっている様に見えるんです。地球でここ最近、何か異常な事が起きていませんか?」
「「‥‥」」
ジュラの問いに山南、レベロが真っ先に思い浮かんだのが先日来より突発的に起きる世界規模の電波障害だ。
もし、ジュラの言う事が正しければ、自分たちが知らぬ間に太陽で何かが起きており、世界各地で起きている電波障害もその太陽の異常から起きている現象ではないかと推察される。
「君、すまないが太陽エネルギー省に確認をとって来てもらえるか?」
「は、はい」
レベロが傍に控えていた秘書官に太陽エネルギー省へ太陽の観測データを確認するように伝えた。
彼らが太陽で起きている異常を知るのはこの後すぐの事であった。
ジュラの予感はまさに当たっており、太陽は今、地球人類に対して牙をむこうとしていた。
太陽はジュラの言う通り従来の大きさから核融合が進んだことにより膨張し始め、その影響を受けて地球の気温は上昇して北極、南極の氷河が溶け始めた。
太陽エネルギー省 黒田博士 執務室
「黒田博士、この観測データを見ても貴方は太陽では異常は起きておらず、ここ最近地球で起きている異常気象や電波障害は単なる自然現象と片付けるおつもりですか!?そして、それは直ぐに終息するとお思いですか!?」
「‥‥」
地球連邦中央天文台から半ば監視の為、太陽エネルギー省へ異動となった倉田博士がここ最近における太陽の観測データを黒田博士に見せながら彼に詰問する。
倉田博士は地球連邦中央天文台から太陽エネルギー省に異動になった後、太陽エネルギー省の職員らに監視されていた為、太陽を観測する事は出来なかったが、倉田博士は太陽エネルギー省へ異動になる前、地球連邦中央天文台の部下たちに引き続き太陽の観測を続けるよう命じており、倉田博士から命を受けた天文台の部下たちは太陽の観測を続け、観測データを倉田博士に送っていた。
そして、倉田博士は送られたデータを纏め上げ、こうして黒田博士に提出したのだ。
黒田博士は倉田博士から見せられた観測データが記されている資料を悔いるように見つめている。
資料に記載されている観測データが示す異常数値は、収まるどころか日に日に増加している。
「このまま太陽の核融合が進めば地球は生物が住めない灼熱の星へと変わります」
「‥‥」
「黒田博士!!至急、大統領にこの事態を知らせ、急ぎ対策を講じていただきたい!!」
「う、うむ‥‥わ、分かった、急ぎ大統領に事の次第を伝えよう‥‥」
黒田博士としては自分と大統領が異端だと判断した倉田博士とサイモン氏の定説があっていた事に悔しさがあったが、確かにこのまま放置しては倉田博士が言うように地球人類の存亡にかかる。
黒田博士は観測データを纏めた資料を持ち、大統領府へと赴いた。
地球連邦政大統領府 大統領執務室
「黒田博士、この観測データとその先に待つ結論に間違いはないのかね?」
太陽エネルギー省から齎された資料に目をやった大統領は当初、この異常事態は単なる自然現象であり、しばらくすれば収まると聞いていたが、資料に書かれている数値や地球で起きている異常気象、電波障害が収まる気配がない事にようやく太陽の異常に気付き、地球が破滅の道を進んでいる事をようやく認識した。
「は、はい。残念ながら‥‥」
「では、ここ最近頻発している異常気象や電波障害も‥‥」
「太陽の核融合異常増進の影響かと‥‥」
「うーむ‥‥黒田博士、急ぎ太陽の核融合異常増進を止める手立てを講じてくれたまえ」
「は、はい。私も当初、この現象に関して楽観視し過ぎていたきらいがありました‥‥急ぎ対策を講じたいと思います」
太陽エネルギー省でも此処に来てようやく太陽の異常を認め、対策を講じる事にしたが、この時点ではあくまでも太陽の異常を止める対策であって、現在ヤマト、まほろば が行っている第二の地球探査と言う大掛かりなモノではなかった。
月面 防衛軍基地 会議室
「レベロ首相、こちらを‥‥」
「うむ‥‥」
月では太陽エネルギー省へ問い合わせたところ、同省の責任者である黒田博士、そして地球連邦大統領が太陽で異常が起きている事を認めた。
「どうかされましたか?レベロ首相」
太陽エネルギー省からの通達が書かれたメモを見て顔をしかめるレベロ。
そんなレベロの様子を見て何かがあったのだと察する山南。
「‥‥どうやら特使がおっしゃった事が当たっていたようです‥‥現在、太陽にて核融合の異常増進が確認されたとの事です」
「核融合の異常増進‥‥」
「それは少々厄介な事ですな」
現在、太陽系の太陽で起きている異常についてバレルがポツリと呟く。
「厄介と言いますと?」
「私も仮説としか言い切れませんが、このまま太陽の核融合が進めばいずれは太陽が爆発する恐れがあります」
「そ、そんなっ!?」
「バカなっ!?」
「しかし、実際に太陽は以前より膨張している筈です」
「「‥‥」」
バレルの指摘を受け、地球の危機があるのではないかと不安視する山南とレベロであった。
「勿論、地球側も何かしらの対応策を取ると思いますが、ガルマン・ガミラスの方でもその手助けは勿論行う所存であります」
「ありがとうございます。バレル大使」
藤堂は既に対処を取っているが、それを知る者は軍でも政府でもごく一部の者であり、この後で行うであろう太陽エネルギー省の太陽制御の対策が失敗した場合、ガルマン・ガミラスでもその対策に協力するとバレルは伝える。
勿論、ジュラも父であるデスラーに地球の状況を報告し、太陽制御の手伝いを行う所存であった。
「しかし、太陽が大変な時に貴国との同盟についての会談を出来るか分からなくなってきましたな‥‥」
山南の言う通り、地球に危機が迫っている中でのんびりと会談を行っている余裕はなさそうだ。
「そうですね。太陽の一件が落ち着くまでこの話は保留にした方がいいかもしれません」
ジュラも山南の提案には同意した。
「大使の方々には申し訳ない形となりましたが折角、月までいらして下さったので、しばらくは月にご逗留下さい。出来る限りのおもてなしをさせていただきます」
「地球の方々のお心遣い感謝いたします。私どもも折を見て一度、本国へと戻り、太陽制御の方法を検討してみます」
太陽の異常とそれに伴う地球の危機と言う事態が起きた事により、同盟についての会談は保留となった。
地球、ガルマン・ガミラスとの同盟が一時保留となりジュラたち特使団一行が暫しの間、月に逗留して居る頃、ヤマト、まほろば はケンタウロス座・第四惑星のアルファ星に近づいていた。
まほろば 第一艦橋
「アルファ星周辺に敵影なし」
数週間前の攻撃以降、アルファ星が攻撃を受けた形跡はないが完全に敵を殲滅するまでは油断できない。
「うん‥だが、油断は出来ない。警戒態勢のまま航行を続けよ」
「了解」
「通信長、アルファ星基地に入港許可を要請してくれ」
「はい」
良馬がギンガにアルファ星へ入港許可を求める通信を送らせる。
アルファ星は現在、ボラー連邦の攻撃に備えて臨戦態勢を取っている。
いくら友軍艦艇とは言え、連絡なしに接近するのはフレンドリーファイアを引き起こしかねない。
「アルファ星基地、アルファ星基地、こちら戦艦 まほろば 繰り返します。こちら戦艦 まほろば、現在、戦艦ヤマトと共にアルファ星へ接近しつつあり、ヤマトと共に入港許可を求めます」
「こちらアルファ基地、まほろば、ヤマトの入港を歓迎する。第二、第三ドックへ入港せよ。繰り返す、まほろば、ヤマトは第二、第三ドックへ入港せよ」
「こちら戦艦 まほろば。ヤマトと共に第二、第三、ドックへ入港します‥‥艦長、アルファ星基地より入港許可が下りました」
「よし、ヤマトにも通信で入港許可が出た事を知らせよ」
「了解」
「これより、アルファ星基地へ入港する」
まほろば、ヤマトはアルファ星の大気圏へと突入する。
やがて地表が肉眼でも確認できる距離になるとヤマトの乗員たちにとっては初めて地球人類が太陽系外で開拓を開始したアルファ星の姿が映りだす。
(なるほど、これでは、資源を採掘する事は出来ても人類の居住地としては適さないな‥‥)
(それに星の彼方此方に爆撃で出来たと思われるクレーターが出来ている‥‥)
(ボラー連邦‥‥酷い事をする連中だ‥‥)
星全体に広がる荒野を見て古代は、アルファ星は地球人類が住む星には適さないと判断したが、都市部では開拓が今も進められており、少しでも人類が住める環境になりつつあったが、都市部の郊外には先日のボラー連邦‥正確にはボラー・バジウド連合からの攻撃の爪痕がまだ残っている有り様だった。
やがて、基地からは中型雷撃艇が三機、誘導の為に接近し、まほろば、ヤマトを基地へと誘導する。
そして、まほろば は第二ドックへ‥ヤマトは第三ドックに入港した。
入港したまほろば、ヤマトに基地司令官であるキャゼルヌ自らが出迎えた。
「お待ちしておりました。アルファ星基地司令官のアレックス・キャゼルヌです」
「ヤマト艦長の古代進です」
「当基地は、ヤマトの入港を心より歓迎いたします」
「ありがとうございます」
キャゼルヌと古代は握手を交わす。
「月村艦長もご苦労様です。特使団の方々は無事に月へ辿り着けましたか?」
「その件を含めて諸々キャゼルヌ司令にお話があります」
「分かりました」
「それで、あれから敵の攻撃はありましたか?」
良馬はキャゼルヌにまほろばが留守の間にボラー・バジウド連合からの攻撃があったかを訊ねる。
「いえ、あの攻撃以降、攻撃はありません。嵐の前の静けさの様です」
「ですが、完全に敵勢力を排除した訳ではありません。敵は第二、第三の攻撃をかけてくる可能性は十分あります」
「月村艦長のおっしゃる通りです。よって、我々も警備を担います」
「感謝いたします。では、警備の打ち合わせを‥‥それに月村艦長からも話があるみたいですし‥‥」
キャゼルヌは良馬と古代をドック内にある事務所の応接室へと案内する。
「まず、特使団一行についてですが、海王星宙域まで先導した後、当艦はそこでヤマトと合流しました。特使団一行の先導と護衛は海王星トリトン基地所属の艦に引き続きました」
良馬はまず特使団の件とヤマトと合流した経緯を話す。
「そして、当艦は藤堂長官よりある任務を拝命する事になりました」
「ある任務と言うと‥‥?」
「この任務にはヤマトも関係している任務です」
「ヤマトと?」
「それについては自分が説明します」
古代がキャゼルヌにヤマトが受けた任務について説明をする。
「太陽系ではそんなことが‥‥」
「はい。故に我々は地球人類が滅ぶ前に人類が移住できる星を見つける必要があります。ただ、地球が開拓を始めたこの星が攻撃を受けた以上、まずはその対処を取りたいと思っています」
「時間が無い中にもかかわらず、ありがとうございます」
「それと、トリトン基地にて戦災復興のための物資を運んできましたので、復興に役立てて下さい。ただ、その代わり採掘したオスミウムを分けて頂きたいのですが‥‥」
良馬がキャゼルヌにトリトン基地にて復興物資を運んできた旨を伝える。
「分かりました。そちらは手配いたしましょう」
「ありがとうございます。後、ヤマトの任務に同行するため、長期間アルファ星を留守にすることになるので、代わりの援軍についても藤堂長官が手配して下さるそうです」
「そうですか‥まほろばが留守になると言う事で不安でしたが更なる援軍が来るのならば、民間の方々の不安も多少は払拭する事が出来ます」
「それでもし、敵が襲ってくるとしたらの話ですが‥‥」
タブレットにはアルファ星から観測出来た範囲の宇宙海図が表示される。
「敵はこの方角へ撤退して行きました」
「となると、第一候補はこの方角から攻撃してくる可能性が高いですね」
「そして第二候補はこちらの方角だな‥‥」
キャゼルヌとの話し合いが終わり、良馬は まほろば、古代はヤマトへと戻った。
良馬、古代の二人がそれぞれの艦に戻っている中、
「古代君から見てこのアルファ星はどう見える?」
良馬は古代にアルファ星についての意見を聞いて来た。
「えっ?この星について‥ですか?」
「うん。率直な意見を聞かせてほしい」
「‥‥では、言わせていただきますが、正直に言って人類が住むには厳しい環境のように思える星です」
「ハハ、まだ星の大半が荒野だからね‥‥でも、開拓事業の人たちが頑張っているおかげで都市部は開発が進んでいるし、かつてのアメリカ大陸もヨーロッパからの移民たちが長い時間をかけて開拓をして今のアメリカを築き上げた‥‥まぁ、先住民との間にいざこざや独立戦争があったけど、この星には先住民は居ないからそうした問題はないな」
「確かに最初のイスカンダルの航海後、地球人類は太陽系の惑星を開拓していきましたからね」
「‥‥もし、第二の地球探査が失敗した場合、地球人類の移住先の候補はこのアルファ星になると思っている」
「それは‥‥ですが‥‥」
「分かっている。太陽系から4.5光年しか離れていないこの星にも太陽系の消滅の際に生じたハイパーノヴァの影響もあるだろう‥‥でも、その影響が来るまでに約50年ほどの歳月がかかる。少なくとも人類には半世紀の時間があるのかもしれないが、先延ばしに出来る問題ではないことはちゃんと理解しているよ」
第二次イスカンダルへの航海の際、地球から約600光年離れたペテルギウスにて、暗黒星団帝国はエネルギー採取を行っていた。
しかし強引なエネルギー採取は星の寿命を縮め、ハイパーノヴァを引き起こす危険があった。
ペテルギウスにてエネルギー採取を行っていた暗黒星団帝国の艦隊を撃破した後、ハイパーノヴァが起こる寸前、初代ヤマト機関長の徳川彦左衛門が残したデータにより、かつてペテルギウスにてヤマトの航路妨害をしていたガミラスのバリアーユニットのおかげでハイパーノヴァを防ぐことが出来た。
だが、ハイパーノヴァがもし起きてしまった場合、ペテルギウスから地球にその影響が出るのは約500年後と推定された。
ケンタウロス座にあるこのアルファ星は太陽系から4,5光年しか離れていないので、太陽系が消滅した際に起こるハイパーノヴァの影響はペテルギウスの時よりも早くに訪れるが、それでも約半世紀先になる。
そう考えると、地球はあと一年、太陽系はあと三年の寿命となるが、このアルファ星は半世紀の寿命がある。
万が一、第二の地球となる星が見つからなかった場合、地球人類はこのアルファ星に一時的に避難をして、ハイパーノヴァが迫る約半世紀の間に再び第二の故郷となる星の探査をすれば良いと思われるが、それでも先送りには出来ない問題である。
「ですが、月村さんが言う事も的を射ています。最悪の場合、地球人類を一時的に避難出来そうな星はこのアルファ星ぐらいでしょうから‥‥それでもちゃんと宇宙を探査すれば、地球とそっくりな星が見つかる可能性はあります。自分はその可能性を信じています」
「そうだね。その為に俺たちは星の海へと行くのだからその可能性を信じよう‥‥古代君が赤道祭でちゃんと願掛けをしてくれたのだからね」
「つ、月村さん、あの時の事は‥‥」
やはり古代としてはあの時の赤道祭での祈願の儀式は恥ずかしかったようだ。
その頃、へびつかい座にある第一惑星、バーナード星では‥‥
バーナード星はボラー・バジウド連合軍がアルファ星の攻略基地を急ピッチで建築しており、ガミラスの冥王星基地程の規模ではないが、地下に艦船を収容できるドック、惑星表面には攻撃手段の砲台等が設置されていた。
「なに!?例の戦艦が!?」
「はい。例の戦艦の他に同型艦と思われる戦艦の艦影も補足しました」
意気揚々とアルファ星を攻撃するも思わぬ まほろば 以下のホワイト艦隊の出現に大敗し、返り討ちに遭ったボラー・バジウド連合軍は蜘蛛の子を散らすかのように撤退した。
ただ、撤退する前にゾルヴァ号はアルファ星の監視のために小型のスパイ衛星をばら撒いていた。
そのスパイ衛星の一つがアルファ星に降下して行く まほろば 、ヤマトの姿を捕捉していた。
レバルスはボローズにさっそくこの情報を報告する。
「フフフ、我々が受けた屈辱を返す時が来たぞ、レバルス」
「はっ」
「彼奴等をこの星へ誘い込むのだ!!」
「承知しました」
ボローズの復讐の牙は今まさにアルファ星‥‥まほろば へと向こうとしていた。
キャゼルヌと良馬との話し合いを終え、ヤマトに戻った古代は、
「総乗組員に告ぐ。只今より、偵察行動を兼ね、半舷上陸を許可する。ただし、この星は臨戦態勢下にあり、いつ敵の攻撃を受けてもおかしくはない状況下である、故にいつでも迅速かつ機敏な行動が出来るように心掛けておくこと、以上だ」
乗員たちに半舷上陸を許可した。
まさかの半舷上陸の許可に上陸許可が下りた乗員たちは歓喜する。
ただ工作班はヤマトの補強作業とオスミウムの受け取り作業があるので、その大半が居残りとなってしまった。
そんな工作班の中で坂東は上陸許可のクジを引き当てたのだが、彼の姿はアルファ星の街の中ではなく、ヤマトの機関室にあった。
「坂東、お前上陸しないのか?」
艦内を見回っていた真田がせっかく上陸許可をもらったにもかかわらず、上陸をせずに補強作業をしている坂東に声をかける。
「あっ、技師長‥その‥自分の担当箇所の補強作業が思ったほど捗らないモノですから‥‥」
仕事がまだ残っていたので坂東は上陸せずに残業をしていたのだ。
「よし、俺も手伝ってやろう」
「すみません」
見かねた真田が坂東を手伝った。
やがて、上陸準備が整ったのかヤマトからは次々とエアーバイクに跨った乗員たちがアルファ星の街へと降り立って行った。
(雪はみんな神経が苛立っていると言っていたが、羽目を外し過ぎて乗員同士の揉め事が起きなければいいが‥‥)
ヤマトから降りていく乗員たちの姿を見ながら古代は一抹の不安を抱いていた。
海王星トリトン基地にてアルファ星への救援物資を積んでいた まほろば にはコンベアが接続され、救援物資が次々と降ろされていく。
「ヤマトの方では乗員への半舷上陸を許可したみたいだな‥‥乗員のケアも兼ねてこちらもそうするか‥‥」
ヤマトから降りていくヤマトの乗員たちの姿を見た良馬も古代同様、まほろば の乗員たちへ半舷上陸を許可した。
ヤマトの乗員同様、まほろばの乗員たちも歓喜して早速上陸の準備をすると次々とエアーバイクに跨りアルファ星の街へと降りていく。
半舷上陸で乗員たちが次々と艦を降りていく中、救援物資の搬出が終わるとコンベアは逆運転し、今度は まほろば に加工されたオスミウムの積み込み作業が始まる。
それはヤマトでも同じで接続されたコンベアの上には加工されたオスミウムが次々とヤマトへと積み込まれていく。
半舷上陸の許可が下りたヤマト、まほろば の乗員たちがアルファ星の街を思い思いに探索をしている中、上陸許可を得たギンガの姿は都市部の中にあるショッピングモールにあった。
ボラー・バジウド連合からの攻撃がいつ再開するのか分からない中でもこの星に住んでいる人々の為にショッピングモールはこうして開店していた。
アルファ星を出たら、まほろば はヤマトと共に第二の地球探査を行う為、次はいつ買い物ができるのか分からない。
その為、ギンガは生活必需品や消耗品を買いだめしようと来たのだ。
長距離航海が可能な まほろば の艦内でもある程度の消耗品や生活必需品は生産できるが、やはり艦内で生産した物とこうして店に売っている物とでは質が異なるので、調達できる時には調達しておきたかった。
ギンガが生活必需品を見て、選び、買っていると、
「あら?もしかして中嶋さん?」
「ん?」
ギンガは声をかけられたので、振り向くとそこには山上夫婦が居た。
「あっ、山上さん。どうもこんにちは」
「こんにちは。中嶋さんも買い物ですか?」
「はい。次の航海が長くなりそうなので、今の内に生活に必要な物や消耗品を買いだめしておこうと思って」
「そうですか‥‥やはり軍は大変なお仕事ですね」
「長い航海と言うことは防衛軍の軍艦がこの星を離れると言う事ですか?」
山上トモ子の夫が不安そうに訊ねる。
「はい。ですが、私が乗艦している艦の艦長が藤堂長官と話をしてこの星に援軍を向かわせてくれるみたいです」
「そうですか‥‥」
ギンガの話を聞いてトモ子の夫は少しホッとした様子だった。
「山上さんたちも生活品の買い物ですか?」
「ええ‥‥あと‥‥」
「‥‥」
山上夫妻もギンガ同様、生活必需品の買い物に来たようだが、それ以外にも何か買う物があるみたいなのだが、山上夫妻はなんだか照れくさそうに顔をほんのり赤らめている。
「?」
ギンガがそんな山上夫妻の態度に首を傾げていると、
「じ、実は‥‥」
「俺たちの間に子供が出来たんです‥‥」
「えっ?」
トモ子の夫が妻であるトモ子の妊娠をギンガに伝えた。
トモ子の妊娠を伝えられたギンガは一瞬、目が点になるも、
「それはおめでとうございます」
妊娠したトモ子を祝福した。
「ありがとうございます。まだ妊娠の初期段階なんですが、先日の健康診断で知りまして‥‥」
「それで、生活必需品の他にベビー用品も今の内に揃えておこうと思って、こうして二人で見に来たんです‥‥」
トモ子の妊娠が判明したので今日、山上夫妻は生活必需品の他に子育てに必要なベビー用品を買いに来たのだ。
「お父さんなんて、おもちゃ屋さんに行って沢山のおもちゃを買い込んで来るって張り切っちゃって‥まだ性別も分かっていないのに‥‥」
トモ子は苦笑しながら自分の父がまだ生まれぬ孫の為にはりきっておもちゃ屋でおもちゃを買っている事を伝える。
彼女の父親は強面で頑固な一面があるのだが、そんな父親がおもちゃ屋で赤ん坊のおもちゃを買っている姿を想像すると確かにトモ子が苦笑してしまうのも分かる。
「でも、いいお父さんじゃないですか」
トモ子の父親も気が早いが、山上夫妻もこの時点でベビー用品を揃えようとしているので、山上夫妻も気が早いと思いながらも初めての妊娠なので、山上夫妻もやはり浮かれているのだろう。
「ええ‥きっとこの子が生まれた時、爺馬鹿なおじいちゃんになるのが目に見えていますけどね」
父親の話題が出てギンガの脳裏にはミッドに居るゲンヤの姿が過る。
(爺馬鹿か‥‥)
自分がまだ管理局員だった頃、ゲンヤは自分が所属する部隊の部隊長で公私をちゃんと分けていたが、私生活におけるゲンヤは自分を大切に育ててくれた。
(父さんもきっと私やスバルに子供が出来たら爺馬鹿になっていたんだろうな‥‥)
トモ子の父親の話からゲンヤも同じく孫には甘くなりそうだと思うギンガ。
自分はゲンヤに子供を見せる事は叶わないがミッドにはスバルや養女となった元ナンバーズの子らが居るので、孫をゲンヤに見せる役目はスバルと彼女たちへと託された。
「では、私たちはこれで‥‥」
「はい。体調には十分気をつけてくださいね」
「ええ‥‥」
山上夫妻は仲睦まじい様子でショッピングモールの奥へと消えて行った。
「赤ちゃん‥か‥‥」
ゲンヤの次にギンガの脳裏を過ったのは照れくさそうに自らの下腹部に優しく手を置くトモ子の姿であった。
まだ赤ん坊だった時のサーシア、ユリーシャ、そして妊娠したトモ子の姿を見て、ギンガとしてはますます将来における自分の子供に対しての欲求は高まった。
それはやはり自分が戦闘機人と言う特殊な人種である事を気にしている一面があったからだ。
(あっ、そう言えば前の航海で‥‥)
そして、ギンガは前回の航海中にあった出来事を思い出す。
前回の航海‥‥それは地球を占領した暗黒星団帝国の本星を突き止める航海の中で、一度だけ良馬とギンガは関係を持った。
艦に乗っている以上、良馬とギンガは上官と部下の関係でいようと互いに誓っていたのだが、やはり長い航海でなおかつ地球人類の命運がかかっていると言う大きな不安の中で、互いに不安を払拭したかったと言う所があった。
そして今回の航海も宇宙の何処かにある地球に似た星を見つける事、
地球人類の命運が掛かっている点が前回の航海と似ている点があった。
(な、長い航海、何があるか分からないからね‥‥)
そう自分に言い聞かせつつ、ギンガはショッピングモール内にあるドラッグストアにて密かに避妊具も購入した。
幸いにしてドラッグストアのレジはセルフレジだったので、ギンガは店員に避妊具を購入する姿を見られることはなかった。
ヤマト、まほろば の乗員たちへの半舷上陸許可が下りてから数時間後‥‥
乗員たちの中にはギンガの様に買い物を行い満足して艦に戻る乗員たちが現れ始めた頃、一軒のバーにて二人のヤマトの乗員たち酒盛りをしていた。
酒盛りをしていたのは、ヤマトの第一砲塔のキャップである坂巻と第一砲塔の砲手である仁科春夫の二人だった。
「お代わり!!」
「俺も!!」
坂巻も仁科もグラスを手に上機嫌になっていた。
バーのマスターが二人に酒の入ったグラスを出すと、二人は一気に煽る。
「もう一杯」
「面倒だ!!瓶ごともらうぜ!!」
「お客さん、そんなに飲んで良いんですか?」
バーのマスターは酒を提供しておいて今更ながらも公務中に酒を飲んで良いのかと二人に問う。
「いいって、いいって」
「ああ、これも偵察行動の一環だ」
酒を飲んで気が大きくなっているのか飲酒している自らを肯定している二人。
そこへ、島がバーに入って来て飲酒をしている坂巻と仁科の姿を見て眉をひそめる。
島はつかつかと二人に歩み寄り、
「こら!!酒なんか飲んでいいとは言っていなかったぞ!!」
と、二人を窘める。
「あん?何だ、航海長さんか‥‥」
「固いこと言わないで、どうです?一杯?」
坂巻は島に一緒に飲まないかと誘うが、
「いい加減にしろ!!」
島は声を荒げ、坂巻の手から酒瓶を取り上げた。
「な、何するんだ!?」
いい気分で酒を飲んでいたにもかかわらず、酒瓶を取り上げられた坂巻は声を荒げる。
「今すぐ艦に帰れ!!」
「艦長の命令なら聞くけど、アンタの指図は受けねぇよ!!」
(くっ、此処でも古代かよ‥‥)
島は心の中で古代に対して毒づく。
坂巻と仁科は酒瓶を取り返そうと島に飛び掛かる。
「お、おい、よせ!!」
島はひらりと二人を躱すが、狭い店内ではそれはいつまで続くか分からない。
しかし、突如、坂巻と仁科は後ろ首をつかまれ放り投げられる。
「てめぇら、航海長様に何て真似をしやがる」
二人を投げ飛ばしたのは航海科の雷電だった。
「艦内相撲大会チャンピオンの雷電五郎が相手になってやるぜ」
「おう!!望むところだ!!」
突然の雷電の登場に坂巻と仁科は唖然とする。
何しろ雷電の身長は島よりも大きく、先日の赤道祭で永倉と相撲を興じて新人ながらも彼を倒した猛者であり、身長もさることながら体格もまさに力士の様に大きかった。
しかし、酒が入っていた坂巻は雷電を恐れることなく彼に駆け寄り、二、三発雷電の腹にパンチを浴びせる。
だが、坂巻のパンチは雷電には全く効いておらず、倒れるどころか痛がる様子もない。
それどころか一歩も引いてさえいない。
続けてパンチを連打する坂巻であったが、ついには顔を歪めて痛そうに手を振り始めた。
雷電にダメージを与えるどころか自分の拳にダメージがきたみたいだった。
「ハハハ、どうした?それだけか?それじゃあ、今度はこっちの番だぜ、覚悟しな!!」
雷電がバキバキと手を鳴らしながら坂巻と仁科に近づくと、二人は思わず後退る。
「待った!!その喧嘩、俺が買ったぜ!!」
すると別の人物が現れ三人の中に割って入って来た。
「誰だ?テメェ?」
「元輸送船機関長、宇宙のトラック野郎、赤城大六とは俺の事よ!!喧嘩をやめて仲直りしねぇと俺のド根性を見せることになるぜ」
ヤマトの乗員には土門たち、宇宙戦士訓練学校の繰り上げ卒業者たち以外にも赤城の様に別部署のベテラン乗員も新人の負担軽減のために少なからず採用されていた。
「うるせぇ!邪魔するな!」
気が立っていたのか雷電は赤城を突き飛ばす。
「野郎!!やりやがったな!?仲裁人を殴るとは何事だ!?」
喧嘩を止めようとしたのにいきなりド突かれた赤城は憤慨し雷電に殴りかかる。
すると、坂巻と仁科も雷電に殴りかかる。
「は、始めやがった‥‥」
バーのマスターはヤマトの乗員たちが殴り合いをしたので、自分も被害を受けてはたまらんとカウンターの下に避難した。
バーはたちまち怒号と悲鳴が交錯し、坂巻が殴り飛ばされ机が壊れ、仁科が酒瓶で雷電を殴りつけ、その隙を突いて赤城が雷電に飛び掛かるが、赤城は投げ飛ばされる。
酒瓶や椅子までもが武器となる中、誰かが投げた椅子がビール樽に当たり、そこからビールが勢いよく漏れ出す。
「ああ、ビールが、ビールが!!」
マスターが手で壊れたビール樽を抑えるが焼け石に水であった。
ついで、雷電が坂巻をなげると坂巻はカウンターの上を滑り、その勢いを殺すことなくガラスを突き破り店の外に転がる。
そこに古代が通りかかりいきなりバーの中から坂巻がガラスを突き破って外に転がって来たので驚いた。
「坂巻?お、おい‥‥」
「やろう!!」
坂巻は立ち上がり再びバーの中へ入っていく。
「い、一体何が‥‥」
バーの中で何か起きているのだと察した古代はバーの中へと入って行く。
バーの中では坂巻、仁科、雷電、赤城の四人がハチャメチャの大乱闘を繰り広げていた。
そんな中でカウンターを背に島がゲラゲラと笑っていた。
喧嘩を止める訳でもなくただ笑っているだけの島の姿を見て古代は、
「島!!何故止めない!?」
と、声を荒げる。
「ん?止められるならとっくに止めているよ」
「みんな!!止め‥‥」
島は止める気が無い様なので、古代が声をあげて止めようとするが、途中で声をあげるのを止める。
そして島と同様、ゲラゲラと笑い出し、
「エネルギーの発散だ。大目に見てやろう」
と、坂巻たちの喧嘩を不問にした。
バーの中で大乱闘が続く中、
ズドーン!!
突如、都市部の郊外で閃光が走り、地震のような振動が辺りを揺るがした。
この轟音と振動に大乱闘をしていた坂巻たちも流石に気付き、殴り合いを止める。
古代たちが窓の外を見ると、空の彼方からミサイルが雨の様に降り注ぎ始めた。
「敵襲だ!!」
「ミサイル弾だぞ!?」
「ヤマトに戻るぞ!!」
『おう!!』
古代たちは急ぎバーを出て店の前に止めてあるエアーバイクに跨りヤマトに戻った。
エアーバイクの運転は自動制御に設定可能なので、酒を飲んだ坂巻と仁科も事故ることなくヤマトに向かうことが出来た。
そして、このミサイル攻撃は復讐に燃えるボローズの牙がアルファ星に向けられたモノだった。