星の海へ   作:ステルス兄貴

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百五十九話 アルファ星出航

 

 

太陽の核融合異常増進に伴い、破滅の道へと進んでいる太陽系‥‥

 

地球人類の存亡をかけてヤマトとまほろばは星の海に第二の地球となる惑星を求めて太陽系を出た。

 

第二の地球となる惑星を探査する前、ヤマトとまほろばは、地球が初めて太陽系外に開拓したケンタウロス座第四惑星のアルファ星に立ち寄った。

 

アルファ星は数週間前に突如、地球がまだ邂逅した事の無い星間国家の宇宙艦隊より攻撃を受けた。

 

そして、未だにアルファ星はこの星間国家からの脅威が去っていない状況下であった。

 

まほろばは海王星トリトン基地にて積み込んだアルファ星への救援物資の荷下ろしと共に修理に必要な加工されたオスミウムの積み込み作業を行った。

 

ヤマトもこの先の長い航海の為にまほろば同様、修理用のオスミウムを積み込んだ。

 

その際、両艦の乗員たちには半舷上陸が許可され、上陸許可が下りた乗員たちは歓喜してアルファ星の都市部へと繰り出して行った。

 

半舷上陸の許可が下りてから数時間後、アルファ星は再びミサイル攻撃を受ける事になるのだが、時系列はアルファ星が二度目の攻撃を受ける少し前に戻る。

 

この後に控えている長い航海に備えてショッピングモールへ生活必需品と消耗品の買い出しに来たギンガ。

 

そのショッピングモールにてギンガはこのアルファ星で知り合った山上夫妻と出会った。

 

山上夫妻もギンガ同様、買い物に来ていたのだが、普段の生活必需品の他にベビー用品も買いに来ていた。

 

それによると、山上トモ子が先日健康診断を受けた際、妊娠が判明したのだ。

 

その為、山上夫妻は気が早いと思いつつも今の内にベビー用品を揃えておこうとし、こうして夫婦でショッピングモールにベビー用品を買いに来たのだ。

 

なお、トモ子の父親も娘が出産する孫の為におもちゃ屋へ出向き、おもちゃを大量買いしているのだと言う。

 

山上夫妻と別れ、自分の買い物を終えたギンガはフードコートにて休憩していた。

 

そんなギンガに、

 

「あら?中嶋さん?」

 

またもや声をかける人物が居た。

 

「えっ?あっ、森さん」

 

山上夫妻に続いてギンガに声をかけたのは雪だった。

 

雪もギンガ同様、この後に控えている長い航海に備えて生活必需品と消耗品を買いに来たみたいだ。

 

「森さんも買い物に?」

 

「ええ、この後の航海に備えてね。中嶋さんも?」

 

「はい」

 

雪の両手には沢山の生活必需品や消耗品が入った袋が握られている。

 

目的が同じで、買い物を終えた二人は今、フードコートにある一つのテーブルに座りささやかな茶会をしている。

 

「まだ開拓したてって聞いたけど、街中は整備されていてビックリしちゃったわ」

 

「開拓業を生業にしている人たちや地球の様々な企業が資金援助をしてくれたおかげです」

 

先ほど出会った山上夫妻の夫とトモ子の父親もこうした未開の惑星開拓業の仕事をしている。

 

「なので、そんな人たちの努力を無に帰すような攻撃を仕掛けてきたボラー連邦に関しては腸が煮えくり返る思いですよ」

 

ボラー連邦‥‥ボラー・バジウド連合からの攻撃はそんな開拓業を生業にしている人たちの生命を危険に晒すのと同時に彼らの努力を無駄にする行為だ。

 

「ボラー連邦‥‥確かアルファ星を攻撃してきた星間国家だったわね」

 

「はい‥‥ジュラさんから聞いた話では今、銀河系で起きているガルマン・ガミラスとボラー連邦の戦争からヤマトとまほろばが巻き込まれる可能性があると思うとこの後の航海が不安もありますが、それと同時にまほろばが留守の間にこの星が再びボラー連邦から攻撃を受けないか心配です」

 

「まほろばは確かアルファ星の開拓初期からこの星の守備に就いていたのよね?」

 

「はい。だからこそ、この星で頑張っている人々を私たちは見てきました‥‥開拓したばかりの頃、この星は厳しい自然環境下でした。それでも人々は諦めることなく大地を開拓して街を作り、鉱山で鉱石を採掘して開拓の基盤を築き上げました。それに知り合いの方々も出来ました‥‥」

 

「なるほど、知り合いの方が出来たのなら、中嶋さんが心配になるのも分かるわ」

 

「はい‥‥」

 

ギンガの脳裏に山上夫妻の姿が過った時、ギンガはふと雪にある事を聞いてみた。

 

「あ、あの、森さん」

 

「ん?何かしら?」

 

「話は変わるんですが、森さんと古代艦長は婚約者の仲なんですよね?」

 

「え、ええ、そうよ」

 

「あ、あの‥森さんは結婚や出産についてどう思いますか?」

 

「えっ?」

 

ギンガからの質問に雪は一瞬啞然とする。

 

「ど、どうして、そんなことを?」

 

「あの‥‥ついさっき、この星で知り合った夫婦の方々と出会って、その奥さんが妊娠したみたいで‥‥」

 

「そうなんですか‥‥あ、あの‥失礼ながら、中嶋さんにはその‥‥彼氏とかいるんですか?」

 

雪は結婚や出産以前に相手が居なければ話にならない。

 

なので、雪はギンガにまずは相手が居るのかを訊ねた。

 

「は、はい。私にも森さんと同じく婚約者の方が居ます」

 

(婚約者‥‥で良いんだよね?あの時、良馬さんの家に挨拶に行ったし、良馬さんも忍さんに『結婚前提』って言っていたし‥‥)

 

雪に自分は婚約者が居るとは言え、内心では自分は本当に良馬と婚約者の関係なのか?とやや自信がないギンガであった。

 

「あら?そうだったの?」

 

雪は当然乗艦している艦が異なっているので、ギンガと良馬の関係を知る由もなく、今ここでギンガに婚約者が居ると知り驚いていた。

 

「それで、中嶋さんの婚約者って誰なの?」

 

「えっと‥‥この話はオフレコにして頂きたいのですが‥‥その‥‥まほろばの艦長の‥‥月村艦長です」

 

雪と古代が婚約者であることはヤマトの第一艦橋のメンバーや佐渡、藤堂は知っているが、ギンガの場合、良馬とギンガが婚約者であることを知っているのは当人と忍、そしてギンガの養母である加奈江と言ったごく一部の人しか知らない。

 

やはり、良馬の実家である月村家が地球でも有数の大財閥なので、その家の者の結婚・婚約となるとマスコミが飛びついてくるだろうし、他の企業からも祝福以外に月村家の後継ぎとなる良馬の妻を自らの娘、身内に据え置こうとする家も無いわけではなく、そうした家にとってギンガは邪魔な存在となる。

 

よって、まだ完全に身を固める結婚ではなく婚約段階ではギンガを排除、もしくは中嶋家の家族に危害を与える輩が居る可能性もあるので、大っぴらに公表出来ていない。

 

「えっ?中嶋さんの婚約者が月村艦長!?」

 

「も、森さん!!声が大きいです!!」

 

「あっ、ごめんなさい‥‥でも、まさか、月村艦長と中嶋さんが‥‥」

 

ギンガに彼氏を通り越して、婚約者が居た事にも驚いたが、その相手が良馬である事についても驚く雪。

 

(そっか、中嶋さんの婚約者って月村艦長なんだ‥‥ん?あれ?そうなると、中嶋さんって私と何だか似ているわね)

 

雪は自分の状況とギンガの状況が似ている事に気づく。

 

雪の婚約者は言わずもがな古代であるが、その古代の現在における防衛軍の役職はヤマトの艦長‥‥

 

そして、ギンガの婚約者はまほろばの艦長である良馬‥‥

 

雪とギンガは自身が乗艦している艦長が婚約者であると言う共通点があった。

 

「えっと、それで結婚と出産についてよね?」

 

「はい」

 

「‥‥実は、私と古代艦長は結婚直前って所まで行ったの‥‥」

 

雪は普段、古代の事を『古代君』と呼んでいるが、この場ではあえて古代の事を『古代艦長』と呼んだ。

 

それはギンガがヤマトの乗員ではなく、まほろばの乗員‥‥他艦の乗員なので、ちゃんと公私を分けたためだ。

 

 

雪と古代はガミラス戦役後、地球が復興の道を歩んでいた中、あと三日で結婚式を控えている間柄になっていた。

 

だが、もうすぐで結婚式という時に地球に新たな脅威が迫っていた。

 

白色彗星帝国が地球人類を奴隷化しようとアンドロメダ星雲から太陽系に侵攻してきたのだ。

 

その時の地球連邦政府も防衛軍も地球が新たな侵略者に狙われているなんて信じてはいなかった。

 

しかし、古代たちヤマトの乗組員たちは地球の危機を察し、その原因解明のために改装が終わったばかりのヤマトを強引に出航させてテレザートへと向かった。

 

その後、彗星帝国の存在が明らかになり、地球はそのまま彗星帝国との戦いに突入し、ヤマトも地球を守る為にその戦いに身を投じていった。

 

彗星帝国との戦いはテレサの命を懸けた祈りにて彗星帝国の切り札とも言える超巨大戦艦、ガトランティスは消滅。

 

国家元首のズォーダーもガトランティスと共に消滅し、地球は再び滅亡の危機を免れた。

 

彗星帝国との戦いの後、生き残ったヤマトの乗員たちはてっきり雪と古代は直ぐに結婚をするのかと思いきや、二人は結婚式を延期して今でも婚約関係を続けている。

 

結婚式を挙げずに婚約関係になっているのは雪も古代も互いに思う所があるのだろう。

 

雪としては別に結婚をせずとも古代の婚約者と言う立場でも満足していた。

 

「森さんと古代艦長にそんな事が‥‥でも、森さんは良かったんですか?」

 

ギンガは雪に折角結婚直前の所まで関係が進んだにもかかわらず、結婚せずに婚約関係のままでいる事について質問する。

 

「ええ、私も古代艦長も結婚というのはあくまでも建前であって、一番肝心なのは『互いに一緒に居ること』なんだって分かったのよ。それに今思うと彗星帝国との戦いの直ぐ後に結婚式を挙げなくて良かったと思っているわ」

 

雪の言う通り、彗星帝国との戦いの後に地球は暗黒星団帝国との戦いへと突入し、雪は地球を脱出する際にアルフォンからの狙撃を受けて、負傷して地球に残留する事になった。

 

地球に残留した雪は当初、捕虜という扱いだったが、アルフォンが雪に一目惚れした事から通常の捕虜とは異なる扱いになっていた。

 

雪はその立場を利用して地球を占領している暗黒星団帝国に抵抗しているパルチザンへ占領軍の情報を流していた。

 

やがてパルチザンと暗黒星団帝国の占領軍との決戦が間近に迫っている時、アルフォンは雪を解放すると、彼女はパルチザンの一員として占領軍と戦った。

 

そして暗黒星団帝国の戦いが終わり、やっと地球は平和になり、彗星帝国戦役前からの目標であった宇宙開拓への道を進もうとしたら、太陽異常が起きヤマトは第二の地球探査と言う長い航海をすることになった。

 

もし、彗星帝国との戦いの直ぐ後に古代と結婚していたら新婚生活を満喫できたとは思えなかった。

 

勿論、雪も古代も暗黒星団帝国との戦いや太陽異常の事を予見していた訳ではないが、現状を鑑みると古代と結婚していなくて良かったと思う雪であった。

 

「互いに一緒に居る事‥‥」

 

「ええ。中嶋さんの言う通り、私も将来的には古代艦長との子供は欲しいけれど、地球の現状を考えるとどうしてもね‥‥きっと古代艦長も私と同じことを思っている筈よ。だから今は結婚や子供についてはまだ考えていないわ」

 

「あっ‥‥そ、そうですよね」

 

地球の現状を考えると今の自分たちの役目は第二の地球となる星を見つける事‥‥

 

第二の地球となる星が見つからなければ、地球人類は破滅するのだから今は新たなる星の探査に集中しなければならない。

 

「でも、長い航海になるのだから、やっぱり甘えたい時は甘えても良いと思うわ。私だって多分、そう思ってしまうもの」

 

「森さんも‥ですか?」

 

「ええ‥‥互いに艦長と部下で居ようと決めたけれど、古代艦長だって今回の航海にはきっと不安もあるだろうから‥‥その不安を共有し、少しでも古代艦長の不安を癒す事が出来ればと思っているわ」

 

まだヤマトが北アルプスのドックに入っている時、古代は雪に今回の航海に対する不安を愚痴った場面があったし、先日は島との関係も雪に相談していた。

 

公私はちゃんと割り切らなければならないが、艦長たる古代が不安を抱き続ければそれは艦全体の士気にも繋がる‥‥

 

古代の不安を緩和する役割を担うのは自分の役目であると雪は思っており、それをギンガに伝える。

 

「そ、そうですね」

 

「ええ、だから中嶋さんも頑張ってね」

 

「は、はい!!」

 

(やっぱりアレを買っておいて良かったかも‥‥)

 

雪からのアドバイスを貰いギンガは雪と会う前にドラッグストアにて密かに購入した避妊具を買っておいて良かったと思っていた。

 

その後、ギンガと雪は二人でドックへと戻った。

 

二人がドックへ戻ってから少ししてアルファ星は突然のミサイル攻撃を受けたのであった。

 

 

へびつかい座 バーナード星系 第一惑星 ソルヴァ号 艦橋

 

「総督、アルファ星攻撃隊から連絡が入りました」

 

「よし、繋げ」

 

「はっ!!」

 

ゾルヴァ号の艦橋にあるメインモニターにはアルファ星攻撃隊隊長の姿が映る。

 

「バルスキー君、君たちの任務は危険が伴うが、例の戦艦をこの星へおびき寄せる為の大変重大な任務だ」

 

「はっ!!承知しております総督。必ずやあの戦艦をおびき寄せてみせます!!」

 

「うむ、吉報を待っている」

 

「はっ!!」

 

ボローズからアルファ星へ攻撃を命じられたアルファ星攻撃隊隊長であるバルスキーは、ロスチラフ級航宙戦艦を十数隻率いてアルファ星の近海まで進出し、搭載されているミサイルの射程にアルファ星を捉えた。

 

「バルスキー隊長、全艦攻撃配置に着きました!!」

 

「ミサイル発射準備完了!!」

 

「よし、全艦、攻撃開始!!」

 

ロスチラフ級航宙戦艦の艦首にあるミサイル発射管からミサイルが次々と発射され、アルファ星へと降り注いだ。

 

 

再びアルファ星へ降り注いだミサイル攻撃にヤマト、まほろば の乗員たちは、

 

「敵襲だ!!」

 

「敵は!?どこからミサイル攻撃をしている!?」

 

色めき、浮足立った。

 

都市部の方でも、

 

『空襲警報!!空襲警報!!現在、当惑星はボラー連邦と思われるミサイル攻撃を受けています!!路上や地上の建物に居るのは非常に危険です!!住民の皆さんは最寄りのシェルター、もしくは地下道へ速やかに避難してください!!走行中の車両は直ちに停車してください!!繰り返しお伝えします!!‥‥』

 

と、住民に避難を促す警報が流れる。

 

その警報は、まほろば にも聞こえていた。

 

(山上さんたち無事に避難出来たかな‥‥?)

 

ギンガはショッピングモールで出会った山上一家が無事に避難出来ているのか気になったが、この状況下では確認は出来ない。

 

彼女に出来たことは山上一家の無事を祈ることしか出来なかった。

 

都市部で警報が流されているのと同じく、アルファ星基地、ヤマト、まほろば でも警報が鳴り響いている。

 

「基地からも迎撃ミサイルを打ち上げろ!!これ以上、ボラーの連中に好き勝手をさせるな!!」

 

「了解!!」

 

「周辺のパトロール艦隊もすぐに呼び戻すのだ!!」

 

「はっ!!」

 

司令室ではキャゼルヌが基地に設置されている迎撃ミサイルの発射の命令と同時にアルファ星周辺哨戒をしているパトロール艦隊にも引き返すように命令を下す。

 

 

まほろば 第一艦橋

 

「至急、応戦態勢をとれ!!砲術班にかかわらず、他の部署の乗員も敵ミサイルの迎撃に専心せよ!!」

 

この時点で、ヤマトもまほろばも半舷上陸を行っている乗員全員がまだ戻っておらず、両艦の迎撃能力は通常よりも下がっていたが、『砲術員が不足しているので砲は撃てません』なんて、言える筈もなく良馬は部署・階級に関係なく、砲を撃てる乗員に対して迎撃命令を下令する。

 

「主砲、副砲、対空砲、ミサイル発射管全ての火器を使用し、敵ミサイルを撃ち落せ!!」

 

主砲制御室では発射準備に少人数の留守砲術員が突然の攻撃であたふたしていると、ギンガや玲たちが駆け付けた。

 

ギンガはまほろばでは通信長を務めているが士官学校では通信科、医務科、そしてパイロット養成科を受講していたので、多少なりとも砲の扱いは出来た。

 

「通信科でもミサイルぐらい撃ち落せるところを見せてやる!!」

 

「砲身が焦げ付くまで撃ちまくってやるわ!!」

 

アルファ星に居る大切な人たちをミサイルから守る為、ギンガはまほろばの主砲のトリガーを弾き、玲も艦載機で敵を撃つ要領で敵ミサイルを迎撃する。

 

艦橋では新見がレーダーを操作して敵ミサイルの襲来方向を主砲制御室へと伝える。

 

「敵ミサイル、右舷上方三十度!!下方三十度!!左舷上下角五十度!!」

 

「各砲塔発射角、右舷上方三十度!!下方三十度!!左舷上下角五十度!!発射!!」

 

まほろばにある五基の主砲、ヤマトにある三基の主砲を始めとして両艦からは多数のショックカノンとミサイルがアルファ星に降り注ぐ敵ミサイルに向かって行くと、アルファ星の空には雷鳴のような轟音と共にいくつもの爆炎で出来た閃光と煙が上がる。

 

やがて、半舷上陸をしていた乗員たちが艦に戻り、本来の砲術員が迎撃を行うと敵ミサイルへの命中率も上がっていく。

 

「敵ミサイル、攻撃を停止した模様!!」

 

「ミサイルの発射源は分かったか!?」

 

「‥‥ミサイルの発散源はアルファ星軌道上に展開していた敵艦船によるものだと判明!!」

 

「敵の動きは!?」

 

「ミサイルを撃ち尽くしたのか撤退していきました」

 

「‥‥」

 

まほろばの艦橋にあるメインモニターにはアルファ星を攻撃し、ミサイルを撃ち尽くしたと思われるボラー連邦の艦船が悠々と引き返していく光景が映し出される。

 

「ボラーめ‥‥」

 

メインモニターに映るボラー連邦の艦艇を見て、良馬はかつてのガミラス戦役時におけるガミラスへの憎しみと同等の怒りと憎しみをボラー連邦に抱く。

 

「艦長、今回の敵の攻撃ですが‥‥」

 

「ああ、威力偵察なのかもしれないな‥‥」

 

新見が良馬に今回のボラー連邦の目的を訊ねと、良馬は今回のボラー連邦の目的が威力偵察ではないかとにらむ。

 

「‥‥敵が撤退した方向は?」

 

「へびつかい座、バーナード星方面です。艦長」

 

「わざわざ航跡を残しての撤退‥‥」

 

「こりゃあ、ただの威力偵察ではなさそうじゃのう」

 

暗黒星団帝国戦役における暗黒星団帝国の動きを経験したまほろばの乗員たちにとって、挑発的とも言える攻撃とあえて航跡を残しての撤退‥‥

 

何か罠があると思わせるには十分だった。

 

「通信長」

 

良馬は主砲制御室から戻って来たギンガに声をかける。

 

「はい」

 

「ヤマトに通信回路を開いてくれ」

 

そして、ヤマトとの間に通信回路を開かせた。

 

「了解‥‥ヤマトとの通信回路開きました」

 

「古代艦長、ヤマトの方でも先ほどアルファ星を攻撃したボラー連邦の艦船がバーナード星方面に撤退して行った事は探知していると思う」

 

「はい」

 

「‥‥今回のボラー連邦の攻撃は威力偵察‥‥もしくは我々をバーナード星へ引き込む罠であると思う」

 

「ええ、敵艦隊の行動から敵は、アルファ星を攻撃する事によって我々を挑発してバーナード星方面に誘っているのは明白ですね」

 

「‥‥古代艦長、バーナード星方面は確か最初の惑星探査予定地だった筈だ」

 

「敵がバーナード星方面に撤退して行ったとなると、そこには敵の基地があるとみていいでしょう」

 

「バーナード星方面へ行けばボラー連邦との戦闘が予想されるが、ヤマトの方針を聞きたい」

 

今回の任務‥‥第二の地球探査のメインはヤマトであり、まほろば はそのヤマトの護衛‥‥航路の選択はヤマトにある。

 

よって、良馬はヤマトの今後の予定を古代に訊ねた。

 

敵が罠を張っている可能性が高いバーナード星方面へ敢えて行くのか?

 

それとも戦闘を回避してバーナード星方面を避けて行くのか?

 

古代が出した結論は‥‥

 

「確かに月村艦長のおっしゃる通り、敵がバーナード星方面へ撤退して行ったと言う事はバーナード星に敵の基地があり、当然そこへ行けば戦闘が予測されますが、このまま回避してもアルファ星が再び攻撃をされる可能性が高く、我々も後方から攻撃を受ける可能性があります。ここは後顧の憂いを断つと言う事で、敢えてバーナード星方面へ発進して、敵を発見次第、撃滅したいと思います」

 

第一次イスカンダルでの航海で、沖田艦長はタイムロスを承知の上で、当時冥王星にあったガミラス軍の基地を敢えて攻略してから太陽系外へ出た。

 

冥王星のガミラス基地攻略は当時の防衛軍にとっては長年の宿願でもあり、ヤマトが留守の間に地球が冥王星基地からの遊星爆弾の攻撃で地球人類滅亡の時間が一年よりもさらに早く短縮される恐れもあり、また背後から襲撃を受ける可能性もあったからだ。

 

そして、今回もバーナード星にあると思われるボラー連邦の基地をそのまま放置すれば、アルファ星がいつまた攻撃を受けるか分からず、古代の言う通り背後から襲撃を受ける可能性がある。

 

それならば、バーナード星にあると思われるボラー連邦の基地を攻略してから第二の地球探査を行おうと古代はそう決めた。

 

それに基地があると言う事は人類が住める環境の星かもしれないからだ。

 

もっともバーナード星も地球から9.5光年と太陽系消滅時に起こるハイパーノヴァの影響圏であるが、ケンタウロス座第四惑星であるアルファ星よりも太陽系から離れているので、僅かならもハイパーノヴァの影響が来るまで時間がある。

 

「分かりました。では、出航準備が整い次第、バーナード星方面へ向かいましょう」

 

「はい」

 

アルファ星を出航してからの方針が決まり、

 

「通信長、艦内放送を」

 

「はい‥‥どうぞ」

 

「艦長の月村だ。本艦とヤマトは一時間後にバーナード星方面へ出航する。なお、先ほどの攻撃を行ったボラー連邦の艦隊はアルファ星を攻撃後、バーナード星方面へ撤退して行くのが確認できた‥‥よって、バーナード星方面にてボラー連邦との戦闘が予測される」

 

バーナード星宙域にてボラー連邦との戦闘が起きる可能性が高いと言われ、互いに顔を見合わせたり、ざわつくまほろばの乗員たち‥‥

 

「しかし、我々が留守の間にアルファ星がこれ以上、ボラー連邦からの攻撃を受けない為にもバーナード星に居るであろうボラー連邦の勢力は殲滅する。総員、出航準備!!」

 

乗員たちはバタバタと走り回り、出航準備を行う。

 

「通信長、アルファ星基地のキャゼルヌ司令に通信回路を開いてくれ」

 

「はい」

 

続いて良馬はアルファ星基地司令官のキャゼルヌと交信する。

 

「キャゼルヌ司令、これよりヤマト及びまほろばはボラー連邦が駐屯しているであろうバーナード星方面へ向かい、敵の殲滅を計ります」

 

「了解した。ヤマト、まほろばの健闘を祈る。ご武運を‥‥」

 

「ありがとうございます」

 

良馬とキャゼルヌはモニター越しに敬礼を交わした。

 

そして一時間後、ヤマト、まほろばはケンタウロス座第四惑星アルファ星を出航し、へびつかい座のバーナード星方面へ向かった。

 

 

アルファ星を出航し、バーナード星方面へ向かっている中、ヤマトの艦橋では‥‥

 

「古代、ちょっと話があるんだが‥‥」

 

島が古代に遠慮しがちな様子で声をかけてきた。

 

「ん?何だ?」

 

「いや、ここではちょっと‥‥」

 

「‥‥わかった」

 

第一艦橋ではどうも話しづらい内容らしく、島はヤマトの舵をオートモードにして、古代と共に第一艦橋を降りた。

 

そして、二人の姿はヤマトの艦橋後部にある展望室にあった。

 

「それで島、話ってなんだ?」

 

「古代‥‥すまなかった。俺の負けだよ」

 

「えっ?」

 

島の突然の謝罪に古代は唖然とする。

 

「正直に言って、俺はお前がヤマトの艦長になった事が内心面白くなかった」

 

やはり島は古代が思っていた通り、ヤマトの艦長となった古代に対して不満があったみたいだ。

 

「いや、口惜しかったのかもしれない。だが、アルファ星のバーで乗組員たちが大暴れした時、お前は俺と同じ立場に立ってくれた。お前が止めて騒動が収まったら、副長としての俺の立場がなかった‥‥お前が止めずに俺と一緒に笑ってくれて助かった‥‥古代、やっぱりお前は艦長の器だよ」

 

アルファ星のバーであったヤマトの乗員同士による大乱闘‥‥艦長の古代が一喝すればあの騒動はすんなりと収まっただろう。

 

結果的にボラー連邦のミサイル攻撃であの騒動は強制的に収まったが、もしも古代が止めていたら、ヤマトの副長でもある島の立場が無かった。

 

だが古代はあの時、島の立場を考慮して注意することなく島と共に笑っていた。

 

古代の行動に島は彼の器の大きさと感銘を受けて、こうして古代に謝って来たのだ。

 

「島‥‥」

 

「古代、改めてすまなかった。ガキみたいな態度をとって‥‥」

 

島は古代にペコッと頭を下げる。

 

「何を言うんだ島。お前が居てくれるから、俺も艦長の勤めが果たせるんだ。これからも力を合わせて頑張ろう!!」

 

「ああ、頑張ろう!!」

 

古代と島はがっしりとかたい握手を交わした。

 

(ヤマト全員のチームワークがあれば、絶対に今回の使命を果たす事が出来る!!)

 

こうして島とのわだかまりを解消したことにより、古代は今回の任務成功の確信と希望を持つことが出来た。

 

 

まほろば、ヤマトがアルファ星を出航し、バーナード星方面へ向かっている中、地球では大統領と黒田博士が太陽の異常を認めてから、黒田博士を中心に太陽異常の解消プロジェクトチームが組まれ、様々なケースが検討されこの日、いよいよ太陽制御の試みが行われようとしていた。

 

太陽エネルギー省庁舎には大統領と藤堂が呼ばれた。

 

太陽エネルギー省庁舎内にある指令室にて、黒田博士は大統領と藤堂に今回行われる太陽制御計画についての説明をする。

 

「現在、太陽エネルギーはこの図解の順序で行われ地球に送られています」

 

スクリーンには太陽、水星、金星、月、地球の位置が表示されている。

 

現在、地球が行っている太陽エネルギーの採集方法は、まず太陽周辺に展開している太陽エネルギー採集ステーションが太陽からエネルギーを採取し、それを水星、金星、月面上にある中継ステーションを経由させて、地球へ太陽エネルギーを送っている。

 

「今回、我々が試みる制御方法はこの太陽エネルギーステーションシステムをそのまま転用しようと言う事なのです。つまり、地球上で受けた太陽エネルギーをマイナスの方向に転換させ、冷却ビームとして太陽へと送り、太陽そのものを冷却させ太陽の異常エネルギーの増進を止めると言う訳です」

 

黒田博士の説明を聞き、

 

(風邪やインフルエンザで高熱を出した時、額に冷却シートや氷枕を使うのと同じような事か‥‥)

 

(果たしてそう簡単にいくものだろうか‥‥?)

 

藤堂は高熱を出した際、額に冷却シートや氷枕で冷やすのと同じ要領だと思うのと同時にどうもこの太陽制御方法に対して懐疑的であった。

 

とは言え、この方法で太陽が制御出来れば、ヤマト、まほろばの任務は地球、アルファ星にとって脅威となるバーナード星に存在するであろうボラー連邦の勢力を排除すれば今回の任務は終了となるので、成功するに越したことはない。

 

「第八ブロック作業急げ!!」

 

「AZ・62箇所の規準範囲がオーバーしているぞ!!」

 

「最終チェック、確認急げ!!」

 

まず、太陽へ冷却ビームを照射する地球にある太陽エネルギー配送システム基地では作業員や技術者たちが作業の最終確認を行っていた。

 

「黒田博士。冷却ビーム準備完了しました」

 

「よし、秒読みに入ってくれ」

 

やがて、冷却ビームの発射準備が整ったと連絡が入るといよいよ太陽制御プランが実行に移された。

 

「カウントダウン、オールチェック、オーバー‥‥10‥‥9‥‥8‥‥7‥‥6‥‥5‥‥4‥‥3‥‥2‥‥1‥‥0‥‥発射!!」

 

太陽エネルギー配送システム基地からまずは月へ冷却ビームが照射され、月面上にある中継ステーションへと配送る。

 

「月面中継ステーション、冷却ビームの通過を確認!!ビーム減衰率コンマ3以下、許容範囲です!!」

 

地球から発射された冷却ビームは月を経由し、次で金星、水星にある中継ステーションへと配送されると最後は太陽の近くにある多数の太陽エネルギー採集ステーションに配送され、採集ステーションは太陽に向けて冷却ビームを照射する。

 

黒田博士、大統領、藤堂、太陽エネルギー省の職員たちは固唾を飲んでモニターを見ている。

 

やがて、水星にある観測所から報告が入る。

 

「こちら、水星観測基地、太陽が‥‥太陽の反応が‥‥収まっていきます!!成功です!!」

 

水星観測基地からの報告は太陽制御が成功したと言う報告だった。

 

「やった!!」

 

「成功だ!!」

 

水星観測基地からの成功報告を受け、太陽エネルギー省の職員たちは歓喜し、大統領と黒田博士もホッとした表情となる。

 

周囲が歓喜に満ちている中、藤堂はただ一人表情をかたくしていた。

 

(どうも嫌な予感がする‥‥)

 

藤堂の予感は直ぐに的中する事になった。

 

先ほど、太陽制御が成功した報告を入れた水星観測基地が一度おさまった太陽の温度が再び上昇する兆候を捉えた。

 

「ま、待ってください!!再チェックを‥‥う、うわっ!?」

 

「こちら水星軌道第二ステーション、だ、だめです!!エネルギーが‥‥」

 

突如、水星軌道の観測基地から慌てた様子の報告が入って来た。

 

「どうした!?何があった!?」

 

黒田博士がオペレーターに事態の説明を求めた。

 

「中継ステーションが爆発しました!!」

 

「安全弁閉鎖!!急げ!!」

 

「太陽エネルギー採集ステーションも次々と爆発しています!!」

 

「水星、金星、月面、地球の配送システム基地でも装置が爆発しています!!」

 

「作業員に退避命令を出せ!!」

 

「システムの被害状況はどうなっている!?」

 

太陽エネルギー省の職員たちは先ほどの歓喜から一転、黒田博士に報告をする者、配送システム基地に居る作業員へ退避命令を伝える者、被害状況を確認する者とてんやわんやの混乱となった。

 

「な、何故だ!?爆発の原因は一体なんだ!?」

 

黒田博士には何故、採集ステーションや配送システムが爆発したのか理解できなかった。

 

「冷却ビーム発射のオーバーロードかと思われます!!」

 

職員が黒田博士に爆発した原因を報告すると、

 

「な、何!?すぐに冷却ビームの発射を中止しろ‥‥」

 

「は、はい」

 

黒田博士は太陽制御作業の中止を指示した。

 

(ば、バカな‥‥ありとあらゆる可能性をシミュレートしたにもかかわらず、このような事が‥‥)

 

太陽制御プランを立てている中、黒田博士たちプロジェクトチームのメンバーは勿論様々な事態を考慮していた。

 

それにもかかわらず今回の太陽制御は失敗に終わった。

 

黒田博士は頭を抱え、力なく椅子にもたれかかり、大統領は太陽制御が失敗した事実に啞然とした。

 

(失敗に終わったか‥‥ヤマト、まほろば、地球を救うにはやはり君たちに頼るしかないのかもしれないな‥‥)

 

藤堂は今回の結果から現在、ヤマトとまほろばが進めている第二の地球探査こそが地球人類が生き残る術でしかないと心の中で思った。

 

太陽と言う宇宙自然は地球人類の英知よりも未知数であったと言う事だ。

 

今回の太陽制御の失敗は単なる太陽制御の失敗だけではなく、太陽エネルギー採集ステーションを始めとする太陽エネルギーの採集システムを失うと言う大きな損害を被る事になった。

 

 

今回の太陽制御の様子は月面にある防衛軍の基地にて、ジュラたちガルマン・ガミラスの特使団もその様子をモニターで見ていた。

 

しかし、結果は失敗に終わり、月面にある配送システムの中継基地でも爆発が起き、月基地でも地震のような揺れが観測された。

 

太陽制御の失敗は太陽配送システムの破損以外にもガルマン・ガミラスの特使団に地球側の恥を晒してしまう醜態となった。

 

「バレル大使」

 

「はっ」

 

「ご足労をかけますが、大使は直ぐにガルマン・ガミラスへと戻り、お父様にこの件を報告していただけますか?」

 

「えっ?」

 

「成功するか分かりませんが、ガルマン・ガミラスでも地球の太陽制御のプランを検討してもらってください」

 

「はっ、承知しました」

 

「ジュラ特使‥‥」

 

「地球との同盟を結ぼうとしている大事な時、そしてこれは私たちガミラスの償いの時でもあります‥‥私たちも太陽制御に協力を致します」

 

「ありがとうございます。ジュラ特使」

 

「ありがとうございます」

 

ジュラは地球が行った太陽制御の失敗を嘲笑うことなく、バレルに一時、ガルマン・ガミラス本星へ帰国してもらい、地球の現状をデスラーに伝えてもらい、太陽制御のプランをガルマン・ガミラスでも検討してもらおうと決めた。

 

ジュラの行動に山南とレベロは彼女に礼を言う。

 

そして、ジュラからの命を受けたバレルは、ジュラが地球の現状を認めた特書を持ち、今回特使団一行の護衛として随員していた三隻のゲルバデス級航宙戦闘母艦の中の一隻に飛び乗り、急ぎガルマン・ガミラス本星へと戻って行った。

 

ただ、地球側も今回の太陽制御の失敗から大統領は方針を一転させて、ヤマト、まほろばが現在行っている第二の地球探査へと舵をきることになる。

 

それはやはり太陽エネルギーの配送システムが破損してしまった事が一番の原因であり、もはや地球の科学技術では制御が仕切れないと言う諦めだったのかもしれない。

 

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