星の海へ   作:ステルス兄貴

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百六十三話 牙をむくボラー次元潜行艦隊

 

 

本局内にある個室型の喫茶店。

 

スバルとフェイトにとってはもはや馴染みの店になりつつある喫茶店の一室にフェイト、チンク、そしてスバルの姿があった。

 

スカリエッティが生み出した戦闘機人‥元ナンバーズⅤ、チンク‥‥JS事件後は海上更生施設にて更生教育を受けた後、ナカジマ家に養女として引き取られ現在はチンク・ナカジマとして嘱託局員になり働いているのだが、彼女は最近、自らの将来について悩んでいた。

 

そんな彼女を見かねたスバルはフェイトに相談をすると、フェイトはチンクと会って彼女の相談に乗ると返答が来た。

 

そしてフェイトは時間を取り、こうしてチンクと会った。

 

スバルがこの場に居るのはフェイトとチンクの仲介役であり、基本二人のやり取りを見守るつもりでいた。

 

「わざわざ私の為に時間を割いて申し訳ない。フェイト執務官」

 

「ううん、そんなことないよ。私自身もつい最近、自分の将来について考えていたところだし」

 

「フェイト執務官も将来について悩むのか?」

 

チンクから見たフェイトはまさに絵に描いたような管理局のエリート街道を突き進んでいるエリート局員の様に見えていたので、そんなフェイトが将来について一体何を悩んでいるのか不思議に思った。

 

「私だって人だもの、悩む事だってあるよ。それよりもまずはチンクの悩みを解決する事が先だから、話してくれる?もし、言いづらい所が有れば全部は言わなくてもいいから‥‥」

 

「う、うむ‥‥」

 

チンクはフェイトにここ最近自分が思っている事を語る。

 

チンクから話を聞いたフェイトは、

 

「もしかしたら、チンクは今、燃え尽き症候群になっているんじゃないかな?」

 

「も、燃え尽き症候群?」

 

「えっ?チンク姉、どこか燃えていたの?それなら急いでマリーさんに診てもらった方が‥‥」

 

フェイトが口にした『燃え尽き症候群』と言う単語にスバルが反応して、チンクの身体を案じる。

 

「違うよ、スバル。『燃え尽き』って単語は入るけど、身体が燃えたりする訳じゃなくて、『燃え尽き症候群』って言うのは、意欲を持って一つのことに没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、社会的に適応できなくなってしまう状態の事だよ」

 

「そんな病気があるのか‥‥」

 

「うん。主に仕事一筋で定年退職した人がなりやすいみたい」

 

「じゃあ、父さんもそうなる可能性が‥‥」

 

スバルは父親のゲンヤが管理局を定年退職した後にフェイトが言う燃え尽き症候群になるのではないかと心配した。

 

「何か趣味があれば大丈夫かも」

 

フェイトも仕事一筋のゲンヤが定年退職後、燃え尽き症候群になるかもしれないと思い今の内に何か趣味があれば防ぐことが出来るかもしれないとアドバイスをする。

 

「じゃあ、チンク姉も何か趣味があれば治るの?」

 

「うーん、チンクの話を聞くと、チンクは妹であるノーヴェたちが自立して自分の役割が無くなったと感じて燃え尽き症候群になったように思えるんだよね‥‥チンクって結構世話好きじゃない?」

 

「うん。確かにチンク姉は世話好きだね」

 

「そ、そうなのか?」

 

チンク自身はあまり自覚していないようだが、フェイトの指摘にスバルは頷く。

 

「お世話をするのが好きなら、そう言った部署‥‥例えばなのはやヴィータみたいな教導隊とか目指してみる?」

 

フェイトはチンクに生徒に教える仕事‥なのはやヴィータが所属している教導隊を提案する。

 

「いや、私の戦闘スタイルは独特で私と同じ戦闘機人向きだから、普通の魔導師に教えられるかは‥‥」

 

「あっ‥‥」

 

チンクがこれまで世話を焼いていたのは自分と同じ戦闘機人の妹たち‥‥

 

やはり通常の魔導師と戦闘機人とでは似て異なる存在なのだとチンクの様子から実感するフェイト。

 

若干気まずい空気の中、スバルがそれを察して、

 

「そ、そう言えばさっきフェイト執務官も将来について悩んでいると言っていましたが、フェイト執務官の方はもう解決したんですか?」

 

話題をチンクからフェイトに移した。

 

「ああ、うん。私の方は解決?したよ。もっともこの後は私自身の努力次第だけどね」

 

「ん?それってどういう事ですか?」

 

「私、今度管理局の士官学校を受験しようと思っているの」

 

「えっ?士官学校!?フェイト執務官が!?」

 

スバルはクロノ同様、フェイトが士官学校を受験すると言う事実に驚く。

 

「ん?フェイト執務官は士官学校を卒業していないのか?」

 

一方、チンクの方はJS事件前のフェイトの経歴をあまり知らず、執務官でありエリート局員なのだからてっきり士官学校を卒業したのかと思いきや、フェイトの口ぶりから士官学校を卒業していない様に見えた。

 

「あっ、うん。私は海鳴での事件後に嘱託局員として働いて、なのはと一緒に訓練校を三ヶ月の短期プログラムを受けた後で正式に管理局の局員になったから士官学校は出ていないよ」

 

「でもなんで今更士官学校を受験しようと思ったんですか?」

 

「うむ、私から見てもフェイト執務官はもう十分なキャリアを積んでいるのではないか?」

 

スバルもチンクもフェイトが士官学校を受験し直す意図が掴めず、何故今になって士官学校を受験するのかをフェイトに訊ねる。

 

「私、次元航行艦の艦長を目指そうと思っているの」

 

「えっ?次元航行艦の艦長!?」

 

「フェイト執務官が!?」

 

フェイトが士官学校を受験する理由を聞きスバルもチンクも驚く。

 

「フェイト執務官はどうして次元航行艦の艦長を目指そうと?」

 

「やっぱり、向こうの地球に関係しているんですか?」

 

そして、フェイトに次元航行艦の艦長を目指す理由を訊ねる。

 

スバルとしてはフェイトもティアナ同様、遭難しもう一つの地球で過ごした事に何か関係があるのかと思った。

 

「うん。スバルの言う通り、やっぱりもう一つの地球‥‥防衛軍の軍艦に乗って航海した事が起点かな。ティアナも多分そうだったと思う」

 

「フェイト執務官、もしよければその話を聞かせてはくれないか?」

 

スバルは防衛軍との交信の席に何度か出席した事でもう一つの地球での生活や防衛軍の艦に乗った時の航海についての大まかな内容を知っているが、チンクは触り程度の事しか知らなかったので、エリート局員であるフェイトが途中で自身の進路を変更するほどの影響を与えたもう一つの地球に対して興味が沸いてきた。

 

「チンクはスバルから聞いていないの?」

 

「うむ、もう一つの第97管理外世界の存在とその星を守備する防衛軍の存在は知っているが、フェイト執務官たちがどんな事を経験したのかは知らない」

 

フェイトは下宿して実家から出ているとは言え、てっきりスバルは家族に話しているかと思ってスバルをチラッと見る。

 

「えっと‥もう一つの地球の事はあまり吹聴しない方がいいかな?と思って‥‥」

 

スバルはもう一つの地球にはギンガが居るので、もう一つの地球に関して詳しい事情を家族とは言えあまり吹聴するのはマズイと思い、チンクたちにもそこまで詳しい内容は話していなかった。

 

「なるほど。まぁ、私自身もスバルと同じであまりもう一つの地球に関して話しにくい部分もあるけど、スバルが知っている範囲なら話せるよ」

 

「ぜひ聞かせてくれ」

 

「それじゃあ、まず私とティアナが遭難して防衛軍の人たちと出会った時から話すね」

 

フェイトは『スバルが知っている範囲』とは言うが、やはりギンガの事は除き、チンクに自身が体験したもう一つの地球での出来事を話した。

 

「‥‥その後、私とヴィヴィオはミッドに戻って来たの」

 

「壮絶な体験をしたのだな、フェイト執務官は‥‥」

 

フェイトの話を聞いたチンクは振り絞るような声で感想を呟く。

 

「うん。一見すると嘘のようにも聞こえるし、自分でも夢じゃないかと思う様な体験だったけど、これは全部本当の出来事だよ」

 

「そ、そうか‥‥しかし、フェイト執務官一ついいだろうか?」

 

「ん?なに?」

 

「そのような体験をしたにもかかわらずフェイト執務官は敢えて危険な次元航行艦の艦長を目指す理由は一体なんだ?」

 

一つ間違えれば死にそうな程の危険な目に遭遇したにもかかわらずフェイトは敢えてその世界へ深く足を踏み入れようとしている。

 

その理由をチンクはフェイトに訊ねる。

 

「理由はいくつかあるかな。まず一つは、まだ見ぬ世界を見てみたい。次元の海‥宇宙にはこれまで管理局が知らない世界が‥星がたくさんあると言う事をあの時の体験で知った‥だからこそ私はそんな世界を見てみたい。次はミッドを守る為かな」

 

(『新しい世界を見てみたい』って言う思いは何かスカリエッティみたいなところが癪なんだけどね‥‥)

 

フェイトは自分が次元航行艦の艦長を目指す理由の一つにスカリエッティと似たような所があるのが複雑な気持ちだった。

 

と言うのも、スカリエッティ自身がフェイトのように純粋な人間ではなくアルハザード時代の技術を用いて生み出した人工的な生命体であり、彼の開発コードネームが『無限の欲望(アンリミテッドデザイア)』であり、彼自身がその名を体現するように飽くなき欲望と探究心を持ち現在はイスカンダルにて当星の復旧を行っているのだが、フェイトは宇宙に存在する沢山の星を見てみたいと言う思いがスカリエッティと何となくだが被っていると思ったからだ。

 

「ミッドを守る?」

 

「うん。宇宙には管理局よりも技術が高い星が幾つもある事が分かった。今後ミッドがそうした勢力に脅かされないとも言い切れない‥‥もう一つの地球でさえ暗黒星団帝国に一時とは言え占領されてしまったのだから‥‥」

 

「‥‥」

 

「だからこれからの管理局はそうした世界と対等のパートナーが必要だと思っている。もう一つの地球はパートナーにふさわしい世界だったのだろうけど、残念ながら管理局は信頼を得る事は出来なかったからね」

 

フェイトが次元航行艦の艦長を目指す理由を聞きチンクは啞然とする。

 

そんなフェイトにスバルは、

 

「フェイト執務官‥何か人が‥性格が変わったような気がします‥‥」

 

スバルが知るフェイトは真面目ではあるが肝心なところは抜けていて子供が大好きな印象が強かったのだが、今のフェイトは何だか別人に見えた。

 

「うーん‥これはクロノにも言ったけど、やっぱり九死に一生を得たからだと思う」

 

「えっ?それってどういう意味ですか?」

 

スバルの疑問にフェイトは否定をせずに自らの性格が変わった理由を話す。

 

「九死に一生を得ると人生観が変わるって事だよ。もしもあの時、遭難をせずにもう一つの地球へ行かなければきっと私は何も変わらなかっただろうし、次元航行艦の艦長を目指す事も無かったと思う」

 

「まさに人生の転換点と言う事か‥‥フェイト執務官にとってもう一つの地球との遭遇は‥‥」

 

「うん。そういう事になるね。勿論、ティアナもね」

 

「そうか‥‥」

 

フェイトの話を聞き、チンクは店に入って来た時と異なり何かを決意したような表情で、

 

「フェイト執務官」

 

「ん?なに?」

 

「その‥‥わ、私も入れるだろうか?その‥‥士官学校に‥‥」

 

「えっ?」

 

「チンク姉?」

 

「私もフェイト執務官の話を聞いて、私もまだ見ぬ世界を見てみたくなった‥‥」

 

「でも、チンク姉大丈夫?客船の救助活動の時に過呼吸になったって聞いたけど?」

 

「あれは私自身の過去の行いが原因だ。私がどれだけ人を救おうとそれは偽善と自己満足なのだろうが、それでも償いたいし、それに私たちを引き取ってくれた義父上や妹たちが居るこのミッドを守りたい言う思いはこんな私にもあるのだ」

 

「だけどチンク姉、士官学校を受験するにはもう一つ問題が‥‥」

 

スバルが指摘する士官学校への受験の壁‥それは‥‥

 

「フェイト執務官、チンク姉は魔導師じゃないけど士官学校を受験する事が出来るのでしょうか?」

 

チンクたちナンバーズはスカリエッティが生み出した戦闘機人でインヒューレントスキル(Inherent Skill、通称:IS)と呼ばれる先天固有技能を持っており、その能力は一見魔法に見えるが、彼女たちのIS能力は魔力とは異なるエネルギーを使用しているため、彼女たちは正確には魔導師ではない。

 

それは誕生にギンガ、スバル同様クイントのDNAデータを基に生まれたノーヴェも例外ではない。

 

一方、同じ戦闘機人でもギンガとスバルはナンバーズとは異なる誕生の仕方をしており、スバルは魔法とISの両方を使用できる特殊な戦闘機人となっている。

 

そして管理局の士官学校の受験条件は魔力レベルが一定以上のランクがある者とされている。

 

かつてティアナも士官学校と首都防空隊を受験したのだが、士官学校は魔力レベルが低いと言う理由で、首都防空隊は空戦属性が無いために落とされた経緯がある。

 

フェイト程の魔力レベルの魔導師ならば受験できるのだが、ティアナと言う前例があるので、チンクが士官学校を受験できるのかが問題でありスバルはフェイトに意見を求める。

 

「多分、大丈夫じゃないかな」

 

スバルの心配を他所にフェイトは魔導師ではないチンクでも士官学校を受験することは出来るのではないかと言う。

 

「えっ?大丈夫なんですか?」

 

「確実‥とは言えないけど、管理局の‥ううん、“海”の現状を考えてみると‥ね‥‥」

 

「“海”の現状?」

 

フェイトの返答に首を傾げるスバルとチンク。

 

「そう‥ボラー連邦への武力制裁の失敗で“海”は沢山の艦船と人材を失い、その後も“海”からは人材の流出が止まらないみたいだからね。そんな現状で魔力レベルがどうだとか選り好みをしている余裕なんて管理局にはもう無いだろうからね」

 

フェイト曰く、もはや管理局‥特に“海”には人材を選り好みしている余裕などなく、来る者は拒まず状態となっており、“海”所属の士官局員を多く輩出している士官学校も同様の理由で入学者を増やしているとフェイトは予想していた。

 

その為、魔導師ではないチンクも士官学校を受験できると判断したのだ。

 

もっとも受験ができると言う事で通常通り試験には合格ラインは設定されている筈なので、士官学校へ入学できるかはフェイト同様、チンク自身の今後の努力が必要不可欠である。

 

「そ、そうなのか‥‥」

 

「うん。もしチンクが本気で士官学校を受験する気なら必要書類を用意するけど?」

 

「ありがとう。フェイト執務官‥よろしく頼む」

 

「分かった」

 

こうしてチンクの悩みは解決し、それと同時にフェイトと同じく士官学校を受験する事になった。

 

フェイトとチンクは受験生となり受験が終わるまではライバルとなった。

 

チンクが士官学校を受験する事にスバル以外のナカジマ家の面々は驚いた。

 

「えええー!!チンク姉が士官学校を受験する!?」

 

「どういう事っスか!?」

 

「そのままの意味だ」

 

「でも、突然だね」

 

「スバルの奴が最近、お前さんが悩んでいるんじゃないかと言っていたが、士官学校の受験で悩んでいたのか?」

 

「えっ?ああ‥‥はい‥‥」

 

フェイトから自分が燃え尽き症候群になっていたとはいえず、士官学校の受験の件で悩んでいる事にした。

 

「それで、スバルがフェイト執務官に話をして必要書類とかを用意してくれるとの事なんですが‥‥」

 

受験となると受験料が必要となる。

 

一応、チンクも嘱託局員として働いているので正規の局員ほどではないが管理局から給料は出ているので、受験料は自分で賄えるが一応家族には報告を入れる必要はある。

 

「そもそも何でチンク姉は士官学校を受験しようと思ったの?」

 

ディエチがチンクに士官学校を受験しようとする切っ掛けを訊ねる。

 

チンクは家族にフェイトの話を聞いて感化された事で士官学校を受験して、ゆくゆくは“海”の次元航行艦乗りになりたい事を告げる。

 

「そうか‥‥チンクは“海”の士官を目指したいのか‥‥」

 

「は、はい。“陸”所属の義父上には申し訳ありませんが‥‥」

 

「いや、お前さんが決めたのなら止めはしないさ」

 

ゲンヤは当初、ギンガとスバルには管理局員ではなく普通の人生を歩んでもらいたかった。

 

それは勿論、彼女たちの出生が関係していた。

 

しかし、クイントが所属していたゼスト隊事件でクイントが殉職してから、ギンガは母親の事件の真相を突き止める為、スバルは巻き込まれた空港火災の時に自分を助け出してくれたなのはに憧れ、自分も人を助ける事を目標にして、二人は管理局へと入った。

 

そしてスバルは目標を達成して、今では特別救助隊へと入隊を果たした。

 

一方、ギンガの方は母親の事件の真相を突き止める前に不慮の事故で遠くの世界へ跳ばされてしまったが、フェイトが自分たちに届けてくれたギンガからの手紙で、ギンガはギンガなりの幸せを遠くの世界で手に入れることが出来た。

 

もし、ギンガが管理局員になっていなければ、彼女が遠くの世界へ跳ばされることはなかったのかもしれないが、それと同時に彼女が今手に入れている幸せも無かった事になるので、父親であるゲンヤとしては複雑である。

 

(チンクの奴が“海”へ行きたがるか‥‥)

 

(しかし、今の“海”は危険な職場だからな‥‥)

 

(チンクもギンガみてぇにならなければ良いが‥‥)

 

しかし何はともあれチンクの悩みが解決し、彼女の新たなる目標が出来たことに関しては養父として嬉しい反面、今の“海”の現状を知るとすべてに対して喜ぶことは出来ないゲンヤであった。

 

 

フェイトとチンクがそれぞれ自身の将来に新たな目標を立てて、その目標に向かおうと決めた頃、遠く宇宙の彼方にあるボラー連邦の本星では‥‥

 

 

ボラー連邦 本星 首相官邸 首相執務室

 

「ゴルサコフ‥‥」

 

「はっ!!」

 

「それで、例の新鋭艦隊の戦果はどうかね?」

 

ベムラーゼはゴルサコフに実戦投入したばかりの次元潜行艦隊の戦果を訊ねる。

 

「はっ、その件につきましては、着々と戦果は上がっております。現在、東部戦線へ投入したスペース・サブ艦隊は集団戦法により通商破壊行為を行い、ガルマン帝国の輸送船及び護衛艦を多数葬っております」

 

ゴルサコフは執務室にあるモニターに次元潜行艦隊の戦果を表示し、同艦隊の戦果を報告する。

 

「ふむ、弱小な時空管理局の技術から建造した艦であるので、役立つのか疑問であったが、どうやら杞憂だったみたいだな」

 

ベムラーゼとしてはやはり管理局の技術を疑問視していたのだが、こうして敵対するガルマン・ガミラスへ着実に被害を与えている報告に満足している様子だ。

 

「よろしい。新鋭艦隊には引き続きガルマン帝国の戦力を削ぐ‥いや、ガルマン帝国の艦隊を殲滅するよう攻撃を命じ給え」

 

「はっ!!」

 

一方、ボラー連邦の次元潜行艦隊の実戦投入を受けたガルマン・ガミラス東部方面軍では、

 

 

ガルマン・ガミラス 東部方面軍司令部 宇宙要塞

 

「昨日来より我が輸送船団が正体不明の攻撃を受け、輸送船団及び護衛艦艇に大きな損失を受けている。これは明らかに我々ガルマン・ガミラス東部方面軍への挑戦である」

 

ガイデルは現在、ガルマン・ガミラス本星に居るのだが、輸送船団への正体不明の攻撃の報告を受け、要塞へ通信を送りダゴンを始めとする東部方面軍の将兵たちへ檄を飛ばす。

 

「我々はガルマン・ガミラスの栄光を背にしておるのだ。これ以上無様な姿を晒す訳にはいかん。何としてでも襲撃した敵の正体を突き止め撃滅するのだ!!」

 

ガイデルの演説が終わると、東部方面軍の将官たちはまず敵の正体を掴む調査から始めた。

 

敵がどういった性能を持つ艦なのかそれが分からなければ対策の打ちようがないからだ。

 

当然、東部方面軍の将官たちはこの時、まさかボラー連邦が自分たちが保有する次元潜行艦とほぼ同じ能力を持つ艦がボラー連邦で建造され実戦投入されているとは知る由もなかった。

 

「回収したブラックボックスを解析した結果、輸送船団は突然の攻撃を受けたようです」

 

「レーダーは何も捕捉していなかったのか?」

 

「はい。レーダーには何の艦影も無かったみたいです」

 

「敵は高度なステルス機能を持つ艦なのでしょうか?」

 

会議室では将官たちの様々な意見が飛び交う。

 

そして当面の作戦行動は正体不明の敵の正体を突き止める事を念頭に威力偵察を行い輸送船の出航を中止する事を決定した。

 

 

そんな東部方面軍管轄が亜空間からの襲撃者がうろつく宙域へヤマト、まほろば、アルバレスはまさに入ろうとしていた。

 

バース星の寄港期間が終わり、出航しようとしていたのだ。

 

 

まほろば 第一艦橋

 

「出航準備。艦内、システムチェック」

 

「システムチェック」

 

「‥‥システムチェック終了、オールグリーン!!」

 

「総員、出航配備!!」

 

「機関始動、圧力上昇中」

 

「艦長、出航準備整いました」

 

「ヤマト、アルバレスも同じく出航準備が完了したとの事です」

 

「うん。あっ、通信長」

 

「はい」

 

「出航前に総督府へ寄港許可を出してくれたお礼の電文を送ってくれ」

 

「了解」

 

ギンガはドロッペの下にお礼の電文を送った。

 

「艦長、総督府より返信です」

 

「内容は?」

 

「はい‥『貴艦ラノ航海ノ安全ヲ祈ル』‥以上です」

 

「分かった。出航する!!ガントリーロック解除!!」

 

「ガントリーロック解除!!」

 

「微速上昇」

 

「微速上昇」

 

総督府へのお礼を終え、ヤマト、まほろば、アルバレスの三隻はバース星のドックを離れて、星の海へと乗り出した。

 

この先に潜む脅威があるとは知らずに‥‥

 

 

ヤマト、まほろば、アルバレスの三隻がバース星を出航し、航路上の惑星探査を行いつつ東部方面軍の宇宙要塞を目指して航行している中、地球から定時連絡の時間が近づいていた。

 

 

ヤマト 第一艦橋

 

ヤマトの第一艦橋では通信長の相原が口笛を吹きながら通信機を操作していた。

 

相原は何やら機嫌が良さそうであるが、古代にとっては地球との定時報告は苦痛であった。

 

その理由はやはり第二の地球となる星が未だに見つからないからである。

 

一方、第二の地球が未だに見つからないにもかかわらず相原の機嫌が良いのは晶子の顔を見て話す事が出来るからである。

 

「艦長、地球との定時交信の時間です」

 

「うむ、通信回路を開いてくれ。それにしても手回しがいいなぁ。相原」

 

「相原通信長の楽しみの時間だからな」

 

古代が相原の手際の良さを褒め、太田が冷やかす。

 

やがて第一艦橋のメインパネルに孫の晶子の姿が映る。

 

「はい。こちら、宇宙移民本部長室」

 

「こちら、宇宙戦艦ヤマト。定時報告の為、通信を入れました。藤堂長官をお願いします」

 

「分かりました。少々お待ちください」

 

晶子は藤堂へ通信を繋ぐ。

 

藤堂の執務机は沢山の書類に埋もれており多忙そうであったが、ヤマトからの定時報告と言う事で通信に出た。

 

「いやぁすまん。地球防衛軍の職務に加えて宇宙移民本部の部長職も引き受けてしまったので、忙しくてな」

 

執務机の上の書類の量を見る限り藤堂が多忙である事が容易にうかがえる。

 

藤堂以外でも新惑星探査チームの全員が忙しそうだ。

 

「それで古代、現時点までの調査報告を聞こう」

 

「はい。本艦はバジウド星系第四惑星のバース星を出航後、昨日より宇宙経度四十度、経度二十度、百万宇宙キロを銀河系中心部方面へ進み、探査予定のN8081星系を調査しましたが、この星も人類の移住には適さない星と判断いたしました。その理由は大気中の酸素の含有率が極めて低い結果が出たためです‥‥」

 

古代は探査した星が地球人類の移住に適さない理由を報告する。

 

古代の報告を聞き、藤堂は少し沈んだ表情になる。

 

「そうか‥ご苦労、ではまた探査を続けてくれたまえ。次の定時報告を待つ」

 

「はい。定時報告を終わります」

 

定時報告が終わり地球との通信回路が閉じる。

 

宇宙移民本部の宇宙海図にはこれまでヤマトが探査した結果が表示されるが全て移住不可の赤印ばかり‥‥

 

「移住に適さずの赤印ばかりが増えていく一方だ‥‥」

 

宇宙海図に表示されている赤印を恨めしそうに見ながら呟く藤堂。

 

「ですが、間もなく他の国の探査船団も出航なさるのでしょう?お爺様」

 

「こら、仕事中は、お爺様はよせ」

 

「ごめんなさい」

 

藤堂は窓際に立ち沈みゆく太陽を見る。

 

もっとも沈んだとしても太陽が膨張しているので以前のような夜の闇はなく、夕方か日の入りのようなぼんやりとした明るさが残っている。

 

「二倍は膨らんだな」

 

(頼むぞ‥‥ヤマト‥まほろば‥‥)

 

膨張している太陽を見て地球に残されている時間が着実に削られていく危機感を抱きながら藤堂は呟いた。

 

地球との定時報告を終え、探査も宇宙気象の影響もなく平穏な航海が続いている中、通常空間とは異なる亜空間から三隻の動向を窺うモノが居た。

 

 

ボラー連邦 B型次元潜行艦 B-001 艦橋

 

「ハーベリー少尉、見てみろ。新たな獲物だ」

 

B型次元潜行艦、B-001の次元潜行艦隊司令官兼艦長のボグダークシュは副長のハーベリーに潜望鏡を見てみるよう勧める。

 

「あれはガルマン帝国のゲルバデス級に‥‥ん?あとの二隻は見慣れない艦影ですね」

 

「ああ‥だが、明らかに武装している艦であり、尚且つゲルバデス級と行動を共にしていると言う事はあの二隻はガルマン帝国の新型艦の可能性が高い」

 

ボグダークシュはアルバレスと行動を共にしている事からヤマトとまほろばをガルマン・ガミラスの新鋭艦と判断した。

 

事情を知らない彼らからすればヤマトとまほろばがガルマン・ガミラスと異なる星に所属する宇宙戦艦だとは気づかない。

 

そもそも彼らは地球と言う星が存在している事さえ知らなかったのだ。

 

「次元潜行艦隊同時攻撃を行うぞ」

 

「飽和攻撃ですな」

 

「各艦に通達する。亜空間暗号通信ブイ、射出」

 

「はっ!!亜空間暗号通信ブイ、射出」

 

B-001から僚艦に向けて暗号通信を行う亜空間暗号通信ブイが射出される。

 

 

まほろば 第一艦橋

 

「ん?‥‥艦長、何かの通信波を受信しました」

 

B-001が発した暗号通信はまほろばの受信機でも受信された。

 

「通信?内容は?」

 

「そ、それが‥‥」

 

ギンガは通信機を操作して受信した通信内容を解読しようとするが、

 

「すみません。どうやら暗号通信みたいで解読不能です」

 

「暗号通信‥‥通信長、アルバレスのバレル大使と通信を繋いでくれ」

 

「了解」

 

ギンガはアルバレスへ通信を入れる。

 

「アルバレスのバレル大使、出ました」

 

まほろばの第一艦橋のメインモニターにはバレルの姿が映し出された。

 

「バレル大使、先ほど妙な暗号通信を傍受しましたが、そちらでも傍受しましたか?」

 

「ええ、傍受しました」

 

「この暗号通信はガルマン・ガミラス軍で使用されているモノですか?」

 

「いえ、このような暗号通信は初めて見ました」

 

この辺の宙域で活動しているのはガルマン・ガミラス軍の東部方面軍なので、この暗号通信もガルマン・ガミラス軍の暗号通信かと思い良馬はバレルに確認をしたのだが、バレル曰くこのような暗号通信はガルマン・ガミラス軍では使用されていないモノだと言う。

 

「‥‥一応、警戒した方が良いみたいですね」

 

「そのようですね」

 

ガルマン・ガミラスではない暗号通信を傍受したと言う事はガルマン・ガミラスではない艦船が暗号通信をこの近くで発信されたと言う事だ。

 

「通信長、ヤマトにも確認を!!」

 

「は、はい」

 

ギンガが急ぎヤマトに確認の通信を送るとやはりヤマトでも先ほどの暗号通信を傍受していた。

 

「艦長、やはりヤマトでも傍受していたみたいです」

 

「ヤマトにも先ほどのバレル大使の内容を伝え、全方位の警戒を伝えてくれ!!」

 

「了解!!」

 

ギンガはヤマトにも先ほどの暗号通信はガルマン・ガミラス軍で使用されている者ではない事を伝え、三隻は周囲を警戒しながら航海を続ける。

 

 

ボラー連邦 B型次元潜行艦 B-001 艦橋

 

「敵艦隊本艦の真上を航行中‥例の新型艦はかなりの大きさの戦艦です」

 

「司令官、凄い獲物ですな」

 

「うむ‥敵が我々に気づいている様子は?」

 

「ありません」

 

「ふっ、鼠共は罠にかかったな‥‥」

 

「はい。後は罠のバネを外すだけです」

 

ボグダークシュは既に勝利でも確信したのか不敵な笑みを浮かべる。

 

「よし、追跡に入るぞ」

 

「はっ、機関始動。微速前進」

 

B-001はヤマト、まほろば、アルバレスの三隻を追尾する。

 

そして、その三隻の前方にはB-001の僚艦が待ち受けていた。

 

 

ボラー連邦 B型次元潜行艦 B-003 艦橋

 

「B-001より連絡があった敵艦隊接近中」

 

「よし、亜空間魚雷発射準備!!」

 

「はっ!!亜空間魚雷発射準備!!」

 

B-003の艦首部にある魚雷発射管には次々と亜空間魚雷が装填されていく。

 

「亜空間魚雷装填完了!!」

 

「秒読み開始」

 

「発射五秒前、四‥‥三‥‥二‥‥一‥‥零」

 

「発射!!」

 

「発射!!」

 

B-003を始めとしてヤマト、まほろば、アルバレスの前面に潜んでいた五隻の次元潜行艦から亜空間魚雷が一斉に発射された。

 

亜空間に潜む次元潜行艦から発射された魚雷は強力な推進力で亜空間を突き破り通常空間へ出るとヤマト、まほろば、アルバレスへと襲い掛かる。

 

先頭を航行していたヤマトとまほろばが亜空間魚雷をもろに喰らった。

 

被弾した事で艦全体は大きく揺れ、艦内には警報が鳴りひびく。

 

「こ、航海長!!艦の姿勢を制御しないと危ない!!」

 

「りょ、了解!!」

 

永倉は必至に操縦舵を操作して艦の姿勢を傾かない様に制御する。

 

「レーダーはどうした!?敵の反応はなかったのか!?」

 

新見がレーダーの記録を遡って探査するが、

 

「それがレーダーのログには敵の接近反応がありません!!」

 

「こんな至近距離で攻撃を受けているのに本当に反応はないのか!?」

 

「はい!!」

 

「攻撃でレーダーが壊れたんですか!?」

 

「異常も破損もないわ!!」

 

ギンガが新見にレーダーの異常を問うがレーダーには異常も破損も無かった。

 

 

ボラー連邦 B型次元潜行艦 B-001 艦橋

 

「司令官、B-002~B-006までの第一波攻撃は成功したもようです」

 

「よし、こちらも攻撃するぞ」

 

「諸元入力完了、亜空間魚雷発射準備完了!!」

 

「発射!!」

 

B-001も亜空間魚雷を発射し、その魚雷は後方に居たアルバレスへと迫る。

 

 

アルバレス 艦橋

 

「本艦の後方より魚雷接近!!」

 

「回避!!取舵一杯!!」

 

アルバレスは回避行動をとるが間に合わず、

 

ズガガーン!!

 

「左舷艦尾付近に被弾!!」

 

「火災発生!!」

 

「消火急げ!!」

 

「応急修理班は現場へ急行せよ!!」

 

「くっ‥‥」

 

バレルは被弾の衝撃で床に倒れた。

 

「ば、バレル様!!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「だ、大丈夫だ‥‥イテテ‥‥」

 

バレルは痛む身体を起こし、身体は打ったが怪我はない事を乗員たちに伝える。

 

アルバレスは被弾をしたが、ゲルバデス級は空母でもあり戦艦でもあるので、装甲板はそれなりの厚さがあったので、航行に支障はなかった。

 

ボラー連邦の次元潜行艦からの亜空間魚雷一斉攻撃を受けた三隻では被弾箇所の消火と応急修理が行われる。

 

消火作業と応急修理作業が行われている中、まほろばの食糧庫付近が被弾し火災が起きた。

 

「消火作業かかれ!!」

 

「こっちだ!!急げ!!少しでも多くの食料を移動させろ!!」

 

火災現場の中、ディアーチェたち生活班の炊事科の乗員たちは必死に消火作業と食料が入ったボックスを火災現場から遠ざける。

 

「ん?」

 

そんな中、作業を指揮していたディアーチェは窓外の宇宙空間に何かがあるのを見つけた。

 

「な、なんだ?」

 

ディアーチェがソレを注視してみるとソレは潜水艦の潜望鏡のようなモノが宇宙空間に存在していた。

 

潜望鏡らしきモノは左右に動き、宇宙空間を滑るように動くとやがて水に沈むように消えた。

 

「あ、あれはっ!?」

 

ディアーチェは急ぎ艦橋へ連絡をいれた。

 

「艦長!!」

 

「えっ?潜望鏡?」

 

「ああ、間違いない!!」

 

「潜望鏡って潜水艦に着いているあの潜望鏡!?」

 

「潜望鏡の下は?」

 

「何もなかった。あれは彗星帝国の潜宙艦と同じだ」

 

「潜宙艦‥そうか!!通信長、ヤマトとアルバレスに通信を!!」

 

「は、はい」

 

艦影が捕捉できず、いきなりの攻撃とディアーチェが見たとされる潜望鏡で全ての辻褄があい良馬は急ぎ古代とバレルに通信を入れた。

 

「なに!?潜宙艦!?」

 

「ええ、ウチの主計長が宇宙空間に潜望鏡らしきモノを見たと言ってきた。それに艦影のない攻撃は瞬間物質転送機か潜宙艦特有の攻撃方法だ」

 

「なるほど、最初は瞬間物質転送機でミサイルを送り込んできたのかと思ったが、レーダーのログを見ると、ミサイルの出現パターンが不規則で空間歪曲反応もなかった」

 

真田もこれは潜宙艦‥次元潜行艦からの攻撃で間違いないと断言する。

 

「ガルマン・ガミラスが次元潜行艦を保有していたが、バレル大使の艦が居るにもかかわらず攻撃してくるとは思えない。勿論、時空管理局も違うだろう」

 

ガルマン・ガミラスは友軍のアルバレスを攻撃してくるとは思えず、管理局の方も質量兵器を持っていない為、魚雷攻撃なんてしてくるとは思えない。

 

「まさか彗星帝国の残党が‥‥?」

 

残るは彗星帝国であるが、これもはっきりと断言はできない。

 

しかし、どの勢力が保有する次元潜行艦だろうと負ける訳には行かない。

 

地球にはヤマト、まほろばの成果を期待している大勢の人々が待っているのだから‥‥

 




なのはINNOCENTにて、中島チンクは海賊船に物凄く興味がある子だったので、こちらのなのは世界のチンクもフェイトからの体験談で星の海に興味を抱くと思い、今回彼女もフェイトと共に士官学校、次元航行艦乗りを目指すことになりました。
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