バース星を出航して、ガルマン・ガミラス東部方面軍司令部の宇宙要塞を目指す途中で、突如亜空間からの襲撃者の攻撃を突如受けたヤマト、まほろば、アルバレス。
良馬はヤマトとアルバレスを戦闘宙域から逃し、まほろば一隻で亜空間に潜む次元潜行艦の相手をすることを決断する。
複数で襲撃してきた次元潜行艦を相手に奮戦するまほろばであったが、敵の次元潜行艦は決死の行動でまほろばへ一矢報いた。
その結果、まほろばは艦橋部を被弾し、艦長である良馬は負傷して、彼と魔力リンクで繋がっているリニスも良馬の負傷に連動して昏睡状態となってしまった。
しかし、まほろばの奮戦の甲斐もあり敵は撤退し、ヤマトは救援に戻ってきた。
負傷者の手当て、まほろばの損傷個所の修理、敵の残骸の回収を終えると、一行はガルマン・ガミラス東部方面軍司令部の宇宙要塞へと向かった。
まほろば 第一艦橋
「アレがガルマン・ガミラスの宇宙要塞か‥‥」
「やはり軍事技術が優れているだけあって凄い要塞だ‥‥」
「あんな要塞と戦うことにならなくて本当に良かったよ」
ヤマト同様、ガルマン・ガミラスの宇宙要塞を初めて見たまほろばの乗員たちもその大きさに圧巻されている。
宇宙要塞へ入港したまほろばはドックにて本格的な修復を受ける事になった。
まほろばが修復を受けている中、リニスは良馬の病室を見舞った。
「マスターが倒れたと言うのに肝心な時に役に立てずに申し訳ございません」
リニスは良馬に深々と頭を下げる。
「いや、リニスとの契約上これは仕方がない事さ。俺の方こそ負傷者が居た中で、リニスを昏倒させてしまう事になって申し訳ない」
良馬としてもリニスが医務長と言う負傷者にとっては最後の希望である役職に就いている中で自分が負傷してしまった事により負傷者たちを不安にさせ、場合によってはリニスの立場さえも危うくさせてしまう事に繋がる所だった。
「しかし、今思うと軍人になってここまでの大怪我を負ったのは今回が初めての事だな」
士官学校、軍に任官してから、かすり傷、切り傷、打ち身等の軽傷は負った事があったが、病室に入院するほどの大怪我を負ったのは今回が初めてであり、リニスもマスターが負傷して昏睡状態になったのも今回が初めてだった。
「だが、リニスが昏睡状態となっても山猫の姿に戻らなかったのは不幸中の幸いだったな」
「ええ、そうですね」
ギンガからの話ではリニスは山猫ではなく、人の姿のままで昏睡状態となったので、リニスの本当の姿を知らないまほろばの乗員たちに正体はバレていない。
「まぁ、原田くん辺りなら驚きはするだろうけど、その後でリニスを撫でまくる姿が想像できる」
「た、確かに‥‥」
良馬とリニスの脳裏には山猫の姿となったリニスを満面の笑みで抱きしめながら撫で、リニスの身体に顔を埋める原田の姿が浮かんだ。
リニスが良馬を見舞っている頃、真田は戦場で回収した敵の残骸をガルマン・ガミラスの技術者たちと共に調査していた。
なお、この時の真田は宇宙服を着てガルマン・ガミラスの技術者と調査していた。
残骸に放射能が付着している可能性と同時にガミラスと同じ民族であるならば、その体質は放射能・硫化水素を含む空気が彼らにとっては普通の空気だからだ。
「この材質は間違いない、ボラー連邦の宇宙艦船に使用されているモノだ!!」
ガルマン・ガミラスの技術者はまほろばが戦った次元潜行艦をボラー連邦所属の次元潜行艦であると結論付けた。
「ボラー連邦の次元潜行艦‥‥」
(そう言えば、ガルマン・ガミラスも既に次元潜行艦を保有していたからな‥‥)
(ガルマン星を占領していたボラー連邦ならば次元潜行艦を保有していてもおかしくはないか‥‥)
真田はガルマン・ガミラスの建国の歴史からボラー連邦が次元潜行艦を保有していても不思議ではないと思われたが、
「くそっ、ボラーの奴らは一体どこで次元潜行艦の技術を手に入れたんだ‥‥?」
「味方の次元潜行艦でボラーに鹵獲された艦は?」
「そんな報告上がってはいないぞ!!」
「じゃあ、一体奴らはどうやって次元潜行艦の技術を!?」
ガルマン・ガミラスの技術者たちはボラー連邦が次元潜行艦を保有している事に驚き、その技術をどこから手に入れたのか疑問を抱いていた。
「えっ?」
ガルマン・ガミラスの技術者たちの発言から真田は元々ボラー連邦では次元潜行艦の技術を有していない様に聞こえた。
「あの、失礼ですがボラー連邦は次元潜行艦の技術を持っていなかったのですか?」
そこで、真田は技術者たちにボラー連邦の次元潜行艦について訊ねた。
「ええ、ボラー連邦は次元潜行艦を保有してはいませんでした。ですから次元潜行艦を保有していた我々が亜空間戦闘においては優位にたっていたのです」
「それがいつの間に‥‥」
「連日当管轄内で起きていた輸送船団の襲撃犯はどうやらあなた方が遭遇したボラー連邦の次元潜行艦で間違いないな」
「ガイデル提督とダゴン将軍に急ぎ報告をいれなければ!!」
(ボラーは当初、次元潜行艦の技術を有してはいなかった‥‥)
(先ほどの話の中ではボラーに鹵獲されたガルマン・ガミラスの次元潜行艦は存在しない)
(‥‥ガルマン・ガミラスの次元潜行艦は、元々はデスラーが彗星帝国の潜宙艦の技術から得たものだ)
(となると、ボラーの連中はガルマン・ガミラスではなく我々と同じく彗星帝国の潜宙艦を鹵獲して次元潜行艦の技術を得たのだろうか?)
(彗星帝国は宇宙を回っていた星間国家だ。銀河系のどこかで彗星帝国はボラー連邦と接触をしていてもおかしくはないか‥‥)
真田はまほろばがプロキオン宙域で彗星帝国の潜宙艦の船体を鹵獲してきたようにボラー連邦も同じく彗星帝国の潜宙艦を鹵獲して今回の次元潜行艦を建造したのではないかと推測した。
流石の真田もまさかボラー連邦が時空管理局の次元航行艦の技術から次元潜行艦を造り上げたとは分かる筈も無かった。
ボラー連邦側に確認をとりたくてもとれない情報なのは真田もガルマン・ガミラス側も当然分かり切っている。
そもそも次元潜行艦の建造技術はガルマン・ガミラスでもボラー連邦内でも恐らくトップシークレットに近い情報だろう。
それに地球とボラー連邦とは直接宣戦布告をして戦争状態となった訳ではないが、アルファ星とバーナード星での一件からボラー連邦とは相容れないだろうと真田でも簡単に分かった。
真田が敵の残骸を調査している時、古代と負傷した良馬の名代として新見、そしてバレルはダゴン将軍とモニター越しで面会していた。
「私はガルマン帝国東部方面軍のダゴンだ」
「地球防衛軍、宇宙戦艦ヤマト艦長の古代進です」
「同じく地球防衛軍、宇宙戦艦まほろば副長の新見薫です」
「副長?艦長はどうしたのかね?」
「当艦の艦長、月村良馬は先の戦闘で負傷し、現在治療中です」
ダゴンは当然、まほろばの艦長ではなく副長がこの場に来たことから新見に艦長の行方を訊ねる。
そこで新見がダゴンに良馬の事を伝える。
「そうか‥‥それで、貴官らが遭遇したとされる敵の正体であるが‥‥」
新見から良馬の事を伝えるとダゴンは既に興味を無くしたかのように話題を変える。
(このダゴンとか言う軍人、なんか無駄に偉そうだな‥‥)
(目つきも何だかこちらを小馬鹿にしている様な感じだし‥‥)
古代はダゴンの言動に嫌悪感を抱く。
最もダゴンの方も古代たち地球人の事を良くは思ってはいないだろう。
地球で反ガミラス感情がある様に、ガミラスの中でも反地球、反ヤマト感情を未だに持っている者も居るだろうが、それでも第二次イスカンダル航海に参加したガミラス軍人ならば、此処まで地球‥ヤマトの乗員に対してマウントを取ろうとはしないだろう。
ならばこそ、ダゴンはガミラス出身の軍人ではなくガルマン出身の軍人である事が窺える。
ダゴンにしてみれば辺境の田舎惑星の戦艦とその星の住人なんて客人として扱うに値しないのだろう。
古代がダゴンに対する印象を思っていると、ダゴンは今回まほろばが相手をした正体不明の次元潜行艦について話した。
「あなた方が撃破した次元潜行艦の残骸を調査の結果、ボラー連邦が建造した次元潜行艦であると判明した」
嫌っている相手とは言え、ちゃんと襲撃者たちの正体を伝えてきたダゴン。
しかし、『あなた方が撃破した次元潜行艦』と言う部分を言うダゴンの声は少し震えていた。
自分たちのお株を田舎惑星所属の戦艦が先に撃破してしまったのだからダゴンとしてはこの件に関しても屈辱的な出来事だったのだろう。
調査結果をこちらに伝えてきたのも『調査をしたが分かりませんでした』と言う結果では、ガルマン・ガミラスが下に見られると思い襲撃者の正体を伝えたのかもしれない。
「ボラー連邦‥‥」
「彗星帝国じゃあなかったのか‥‥」
襲撃してきた次元潜行艦が所属していた勢力に真田同様意外性を覚える古代と新見。
「ダゴン将軍、ボラーはこれまでの戦いで次元潜行艦を実戦投入した事はあるのですか?」
バレルがダゴンにボラー連邦の次元潜行艦の戦線投入について訊ねる。
自分たち特使団一行が地球に向かってこの東部戦線を通過した時はボラー連邦の襲撃はなかったのだが、それは偶々ボラーの次元潜行艦隊の襲撃が無かっただけだったのかを問う。
ジュラはまだ地球に居るので、今回の件で地球からガルマン・ガミラス本星への帰り道で襲撃を受ける事も十分に考えられる。
「いえ、ボラーの次元潜行艦が確認できたのは今回が初めてです」
同じガルマン・ガミラスの人間で外務省の上級役人と言う事でダゴンもバレルに対しては失礼な態度は取れない様だ。
襲撃者の正体が判明した時、
「ダゴン将軍。本国より通信が入っております」
オペレーターがガルマン・ガミラス本星から通信が入った事をダゴンに報告する。
「本国から?ガイデル提督か?」
ダゴンはガルマン・ガミラス本星からの通信は、現在本星に戻っているガイデルからと思ったが、通信はダゴンにとっては意外な人物からの通信だった。
「い、いえ、それがデスラー総統からです」
「で、デスラー総統だと!?す、すぐに繋げ!!」
デスラーから通信が入った事にダゴンは思わず声が裏返りすぐにモニターへ転送するように言うとモニターにはデスラーの姿が映し出された。
ここで視点と時系列は少し時間を巻き戻し、ガルマン・ガミラス本星へと移る。
デスラーが東部方面軍司令部の宇宙要塞に通信を入れる少し前、ガルマン・ガミラスの総統府では戦勝報告が齎されていた。
総参謀長のキーリングがうやうやしく進み出て、デスラーに深々と一礼する。
「総統、この度の西部戦線、南部戦線の勝利を全国民に代わって心からお祝い申し上げます」
「うむ、全ては両方面軍の将兵の奮闘のたまものだ。私からも礼を言うおう。ヒステンバーガー、クロッペン、両将軍ともに御苦労であった」
「「はっ!!」」
デスラーから直接名指しで呼ばれた二人の将軍は感激に頬を紅潮させた。
特に西部戦線司令のヒステンバーガーは担当する管轄内で62%の支配権を獲得したが、そこまでの戦果で三分の一の師団を喪失すると言う大失態を犯しており、あと二回の失敗で死刑と言う判決をデスラーから言われていたので、今回の勝利はヒステンバーガーにとっては汚名返上の機会となった。
「では、両将軍の栄誉を称え、ガルマン・ガミラス帝国の限りなき発展を祈って乾杯!!」
『乾杯!!』
キーリングの音頭でグラスを上げるデスラーと参列した将軍たち。
デスラーがグラスに入っている酒を一気に煽った後、
「ガイデル」
「はっ!!」
東部方面軍司令のガイデルに声をかけた。
「東部方面軍では最近、謎の襲撃事件が多発していると聞くが、その後の戦況はどうなっている?」
東部方面軍において輸送船団を襲う謎の敵の情報はデスラーの下にも報告が上がっていた。
デスラーとしてはこの襲撃者の正体が気になるのも当然の事だった。
結果によっては東部戦線だけではなく他の戦線にも影響が出る可能性があったからだ。
「その件に関してございますが、現在鋭意調査中で間もなく敵の正体は判明するモノであります」
この時点では、謎の襲撃者の犯人がボラー連邦の次元潜行艦である事は分かっていないが、デスラーの前で『まだ分かりません』と馬鹿正直に言える筈もなく、とりあえずこの場は調査している格好を示すガイデル。
とは言え、こうしてデスラーに言ってしまった以上、近々デスラーに謎の襲撃者の正体を報告しなければ自らの首を絞めることになる。
「ですが、総統よりお預かりした貴重な艦艇を喪失する失態についてはまことに面目次第も無く、申し訳ございません」
結果的に損失を出しているのは事実なのでガイデルはデスラーに深々と頭下げて謝罪する。
「そう力を落とす事は無い。銀河系東部方面は進化した星が多い。攻略が困難な事は事前に分かっていた。それでもバジウド星系を含む約80%以上の支配権を獲得したことはまさに偉業と言わねばなるまい」
「総統‥‥」
「ガイデル。私は君に期待しているよ」
「ありがとうございます!!」
ガイデルは再びデスラーに深々と頭を下げて礼を言った。
そんな中、デスラーの小姓が彼の下へと来て、
「総統、ただいま東部方面軍司令部よりバレル様が総統に火急の知らせがあるとの事で通信が入っております」
「バレルから?確か彼はジュラと共に地球へ赴いている筈だが?」
娘のジュラと共に地球へ赴いたはずのバレルが何故、東部方面軍司令部の宇宙要塞に居るのか不思議に思いつつ通信に出る事にした。
そして場面は東部方面軍司令部の宇宙要塞へと移る。
東部方面軍司令部の宇宙要塞の指令室には自分に火急の要件があると通信を送ってきたバレルと東部方面軍所属の第18機甲師団司令官のダゴン、そしてデスラーにとっては友人とも言える古代の姿が映るモニターがそこにあった。
「ん?もしかして古代なのか?」
「デスラー‥久しぶりだなぁ。元気そうでなによりだ。それにしてもあれから直ぐに新たな国を作るとは大きな仕事を成し遂げたんだな」
(コイツ、総統閣下を馴れ馴れしく名指するとは失礼な異星人だ)
ダゴンはデスラーの名前だけを呼んだ古代を心の中で毒づく。
「ありがとう古代。しかし、何故君がそこへ?それにバレル。ジュラと共に地球へ赴いていた筈の君もだ」
「それについて俺から説明する」
古代はデスラーに自分とバレルが何故東部方面軍司令部の宇宙要塞に居るのかを説明する。
地球の太陽で核融合の異常増進が起き、あと一年以内で地球は人類を始めとする生物が生存不能な星に代わり、そして三年以内に超新星化し太陽系の惑星全てを道連れに爆発する事、
地球でも何とか太陽制御を行うも失敗に終わった事、
ヤマトは地球人類の為、第二の地球となるべく新惑星探査の為に地球を発進した事、
そしてバレルは地球へ赴いていたジュラからガルマン・ガミラスでも地球の太陽制御を出来ないかデスラーに頼むために伝令としてガルマン・ガミラス本星へ向かわせた事、
古代はデスラーにそれらの事を伝えた。
ただ一つ黙っていたのは今回の太陽の核融合異常増進の原因がガルマン・ガミラスの大型ミサイルかもしれないと言う点についてだ。
地球にはまだデスラーの娘のジュラが居り、自分たちもこうしてガルマン・ガミラスの宇宙要塞に居る。
此処で太陽の核融合異常増進の原因がガルマン・ガミラス側にあると主張すれば大きな問題となる。
「そうか‥まさか地球でそのような事が‥‥」
デスラーとしても自分が知らぬ間に地球が危機に陥っている事を此処で初めて知り驚愕する。
「どうだろう?古代。ガルマン帝国へ君とヤマトを招待したい。地球の太陽制御に関してもモニター越しではなく直接会って話したのだが、受けてくれないか?」
「ああ。喜んで、ガルマン帝国を訪ねさせ貰うよ」
本来ならば一艦長の一存で決める事ではないが、デスラーの言う通りガルマン・ガミラス側で行う地球の太陽制御に関してもやはり直接話す方が良いだろうと判断した。
「よかった‥バレル」
「はっ!!」
「君は引き続きヤマトをガルマン帝国へ案内してくれ」
「承知しました!!」
「総統、私からも一つご報告することがございます」
「何だね?ダゴン」
「実は我が東部方面軍の管轄内で頻繁に起きております輸送船団の襲撃犯でございますが、その正体が判明いたしました」
「ほう?一体誰かね?」
「ボラー連邦でございます」
「やはりボラーの連中か‥‥」
ダゴンから謎の輸送船団襲撃犯の正体を聞かされ、その正体がボラー連邦であると知るとデスラーは僅かに顔を歪めた。
「して、連中はどんな兵器を使用して我が軍の輸送船団を襲撃していたのかね?」
「次元潜行艦でございます」
「次元潜行艦‥‥確かボラーの連中は次元潜行艦の建造技術など保有してはいなかった筈だが‥‥?」
デスラーの記憶でもボラー連邦がこれまでのガルマン・ガミラスとの戦いで次元潜行艦を使用しているケースなどなかった。
故にボラー連邦は次元潜行艦の建造技術を持っていないモノと判断していた。
「は、はい。それが、ボラーの連中はどこからか次元潜行艦の建造技術を入手したようで、それを元に次元潜行艦を建造し実戦投入してきた様です」
「くっ、相変わらず忌々しい連中だ。至急各戦線と部隊に情報を共有し、対策を立てろ」
「はっ!!承知しました!!」
「古代、ガルマン・ガミラスまでの航路も決して安全とはいいがたくなったが、道中気を付けてくれ」
「ありがとうデスラー」
「それでは、古代。君たちと会える日を楽しみに待っている」
こうしてヤマトはバレルと共にガルマン・ガミラス本星へ向かう事になった。
「新見副長、聞いての通りです。ヤマトはこのままガルマン・ガミラス本星へ向かいます。まほろばにもガルマン・ガミラス本星へ同行してもらいたいので、この件を月村艦長に伝えてもらえますか?」
「分かりました」
古代は新見にまほろばの病室に居る良馬にガルマン・ガミラス本星へ向かう旨を伝えるように頼んだ。
まほろば 病室
ボラー連邦との次元潜行艦の戦闘により負傷した良馬は佐渡が行った手術後、こうして病室に入院している。
「‥‥」
ベッドに横になっていると外からはまほろばの船体を修理している作業音が聴こえてくる。
良馬の意識が戻った事でリニスも医務長の仕事に復帰し、負傷した乗員たちの診察を行っている。
「‥‥暇だ」
入院中の良馬自身、こうして皆が艦の為に働いている中、艦長たる自分がベッドに横になっていていいものなのかと自問する。
リニスや原田からは絶対安静と言われているのだが、それでも何かできる事は無いかと模索していると、
「艦長」
タブレット端末に新見の姿が映し出される。
「あっ、副長。何かあったのか?」
「はい。先ほど、古代艦長とガルマン・ガミラス側と話し合った結果、ヤマトはガルマン・ガミラス本星へ向かうことになりました」
「ヤマトがガルマン・ガミラスの本星へ?」
「はい。話し合いの最中、デスラー総統から通信が入り、ガルマン・ガミラスとの間で太陽制御の話し合いも兼ねてとの事です」
「そうか‥分かった。それでまほろばの修理状況は?」
「既に九割は終わっていますので、明日の早朝に出航します」
「此処からガルマン・ガミラスまでの距離は?」
「連続ワープを行って数日の予定です」
「分かった。ガルマン・ガミラスに着くまでには何とか退院できるよう医務長に掛け合う。それまでの間、副長に艦の運用を任せる」
「わ、分かりました」
病室から流石に指揮はとれないので、良馬は退院するまで、まほろばの指揮権を副長の新見に預けた。
(ガルマン・ガミラスか‥‥デスラーが居ると言う事はフォムトやネレディアさんも居ると言う事だ‥‥二人とも元気だろうか?)
古代、そしてデスラーが再会を楽しみにしているように良馬もシャンブロウで知り合いガトランティス相手に共闘したバーガーとネレディアとの再会を楽しみにしていた。
早朝、ヤマト、アルバレス、まほろばの三隻は東部方面軍司令部の宇宙要塞を出航し、連続ワープで距離と時間を短縮しガルマン・ガミラス本星を目指す。
宇宙要塞を出航してから二日後、良馬は身体の所々に包帯を巻いている姿ではあるが病室から退院し、艦橋へ上がった。
「艦長、大丈夫なんですか?」
「ああ、医務長から退院許可も下りた。皆、色々と心配をかけてすまなかった」
「いえ、無事に戻って来てなによりです」
「おかえりなさい、艦長」
「艦長、指揮権をお返ししますね」
「ああ、指揮権を受け取った」
こうして負傷した身体ながらも復帰した良馬。
その後、ボラーの次元潜行艦からの攻撃もなく、順調に三隻はガルマン・ガミラス本星への航海を続けた。
「まもなく銀河系中心部です」
「地球の艦で銀河系の中心部へ来たのはヤマトと本艦が初めての偉業じゃな」
宇宙空間に青白い若い恒星が密集し、煌めいている姿が見えてきた。
「ガルマン・ガミラス本星まであとどれくらいだ?」
「あと三時間です」
「三時間か‥‥」
やがてガルマン・ガミラス本星が見えてきた。
「二連星か‥‥マゼラン星雲のイスカンダルとガミラスの様だ‥‥」
ガルマン・ガミラスはマゼラン星雲にあったガミラスとイスカンダルの様に二連星で、ガルマン・ガミラスの星表面の色は緑でもう一つの二連星の星は青く、まさに銀河系版のガミラスとイスカンダルに見えた。
ヤマト 第一艦橋
ヤマトの方でもガルマン・ガミラス本星の姿が見え、やはりマゼラン星雲のイスカンダルとガミラスに見えた。
古代はデスラーとの再会にこれまでの彼との想い出に耽っていた。
そんな中、
「艦長!!」
突然声をかけられ古代は想い出の中から現実へ引き戻される。
古代は振り向くとそこには土門、揚羽、坂東の三人が険しい顔で立っていた。
「艦長、なぜデスラーの招待なんか受けたんですか!?」
「僕たちは反対です!!ガルマン・ガミラスはあのガミラスが樹立させた新国家‥すなわちガミラスそのものじゃないですか!?」
「ガミラスは地球をめちゃめちゃにした奴らなんですよ!?艦長だって忘れた訳じゃあないでしょう!?」
「‥‥」
ガミラス戦役時はまだ学生だった土門たちだったからこそ、未だに反ガミラス感情が残っていた。
「そう艦長を責めるなよ。デスラーもあの時の事を悪いと思っているからこそ、今では地球との同盟を結ぼうとし、今回の太陽異常の件に関しても何とかしようと協力を求めてきたからこそ、我々を招待したんじゃないか」
「君たちはしらないだろうが、我々は何度もデスラーに救われているんだ‥‥あの彗星帝国の弱点を教えたのはデスラーであり、ヤマトが連続ワープする事が出来るのもデスラーからの技術提供なのだ」
島と真田は古代を弁護する。
「しかし、ガミラスが地球を滅ぼそうとしたのは事実じゃあないですか!!」
「確かに一度は地球を滅ぼそうとした。しかし、ガミラス側にも‥デスラーにも戦うべき理由があった。あの時の戦いは民族の存亡をかけた戦いだったのだ」
「では、何故新国家を樹立した後でもデスラーは宇宙のあちこちに戦乱を引き起こしているんですか!?」
ガミラス戦役時のガミラスも自分たちが住む星が寿命で長く住むことが出来ず、その為に地球をガミラス人が生きられる環境へテラーフォーミングを行い移住しようとしていた。
しかし、現在ガルマン・ガミラスと言う新国家を樹立させた後もデスラーは宇宙の各所で戦乱を引き起こしている。
既に居住できる星を見つけたにも関わらずに‥‥
揚羽の指摘に島も真田も言葉に詰まる。
二人の様子を見て古代は口を開く。
「太陽制御の協力以外に揚羽の指摘する答えを知る為に招待を受けたんだ。デスラーの真意を確かめなければ今後の探査任務にどんな支障が起きるかわからないからだ」
古代の回答を聞き、渋々ながらも納得した土門たちであった。
やがて、ガルマン・ガミラス本星の絶対防衛領空内へ入るとそこには沢山の戦闘衛星が配備されていた。
「凄い数の戦闘衛星だ‥‥」
「地球よりも数が多いな‥‥」
戦闘衛星の数に圧倒されていると、
「こちらガルマン・ガミラス宇宙管制室。ヤマト、まほろば、アルバレスに告ぐ。貴艦らは第三宇宙港へ着陸せよ」
ガルマン・ガミラス側から着陸指示が来た。
三隻は管制室へ返信した後、着陸予定地である第三宇宙港へ着陸態勢を取る。
「着陸まであと三十分四十五秒‥‥コースはそのまま」
管制室からは着陸コースと時間が知らされる。
ガルマン・ガミラス 総統府デスラーパレス
ガルマン・ガミラスの総統府であるデスラーパレスにはガルマン・ガミラスの同盟国の首脳、外務大臣、外務省の役人、軍の幹部たちが集まっていた。
そのデスラーパレス内にあるデスラーの居室では、デスラーが小姓たちの手で式典用の大礼服を整えていた。
そこにデスラーの副官であるタランが入って来た。
「デスラー総統、お誕生日おめでとうございます!!」
「タランか、ありがとう」
「本日、総統の誕生日をもってガルマン・ガミラス建国紀元一年となり華々しく記念式典が催されますことを不肖タラン、心よりお喜び申し上げます!!」
「うむ」
「すでに式典の参加者は集まっており、ヤマトも間もなく到着する予定です」
「‥‥タラン」
「はっ!!」
「外出の準備をしてくれ給え」
「は?外出の準備でございますか?既に総統を表敬訪問したいと言う希望者が多数おりますが?」
タランがデスラーの言葉に唖然としている中、デスラーはスタスタと扉の方へ向かっている。
「そ、総統。一体どちらへ‥‥?」
「ヤマトが‥‥古代が来るのだ。直接彼らを出迎えたい」
「そ、総統~!!」
デスラーが足早に部屋を出て行くとタランは慌てて後を追った。
ヤマト、まほろば、アルバレスが指定されたガルマン・ガミラスの第三宇宙港へ着陸しようとしていると、古代の目はある人物の姿を捉えた。
その人物は身じろぎもせずヤマトを見上げているデスラーだった。
「デスラー‥‥」
やがて三隻は第三宇宙港へ着陸し、ガントリーロックで船体を固定する。
デスラーが立っている位置はヤマトの上甲板と同じ高さの位置であった。
ガルマン・ガミラス星へ降りる前、ヤマト、まほろばの乗員たちにはある薬が配られる。
これは第二次イスカンダルへの航海で佐渡がガミラス側に提供した酸素適合薬の逆バージョンで放射能・硫化水素の適合薬で、地球人の様に放射能や硫化水素に耐性がない星の住人の為にガルマン・ガミラスで作られた薬であった。
土門や揚羽、坂東たち新人の乗組員の中には毒薬じゃないかと不安視する者が居たが、古代たち幹部乗員たちが率先して適合薬を飲み、毒薬ではない事を自らの身体で証明した。
ガミラスと同じ環境下であるガルマン・ガミラスの大気は宇宙服なしの地球人にとっては有害な大気なので、宇宙服なしでガルマン・ガミラス内を活動するにはこの薬が必要不可欠であったのだ。
当然それは魔導師、戦闘機人でも例外ではない。
適合薬を飲んだことで放射能が含まれる大気内でも宇宙服なしで活動することが出来るようになり、古代たちは上甲板へと上がり、出迎えたデスラーへ敬礼をする。
するとデスラー本人と護衛の親衛隊員たちも返礼した。
「ヤマトの諸君‥‥地球の諸君‥‥我々は諸君らの来訪を歓迎する」
タランが出迎え用のエアーカーのドアを開け、デスラーは一同を促すとヤマト、まほろばの乗員たちは出迎えのエアーカーへ順次乗っていく。
エアーバイクに乗った親衛隊の先導と護衛を受けながら、古代はデスラーと共にリムジン型のエアーカーに乗っていた。
「ゴルバとの戦い以来だな」
「この星も二連星だな。ガミラスとイスカンダルに似ていたから驚いたよ」
古代は空を見上げガルマン・ガミラスの直ぐ近くにある青い星を見つめる。
「私はあの星をスターシアと名付けた」
デスラーも古代同様、ガルマン・ガミラスの兄弟星である青い星を見つめながら、その星の名前を口にする。
「スターシア?イスカンダルの女王の‥‥?」
「そうだ‥‥私はスターシアをこよなく愛していた‥‥」
「それであの星の名前を‥‥」
「ああ‥‥」
第二次イスカンダル航海での暗黒星団帝国との戦いでイスカンダルとスターシアを何とか救う事は出来た。
そして、こうしている間もスターシアたちはイスカンダルの復興をして居る頃だろう。
しかし、デスラーにとってスターシアへの想いは永遠に届かない。
それならば、スターシアの事をいつでも思い出せるよう、イスカンダルに似た青い星にスターシアの名を授けたのだ。
一行の車列はやがて空港から都市部へと入る。
すると歩道には沢山のガルマン・ガミラスの市民たちが手を振っている。
「凄い都市だ‥‥短期間でこれだけの国家を築き上げるとはデスラー総統のカリスマ性はもしかしたら宇宙一なのかもしれないな‥‥」
ガルマン・ガミラスの近代化された都市を見ながら良馬はガルマン・ガミラスの建築技術と手を振っている市民の反応からデスラーのカリスマ性にも驚く。
「ええ、ミッドを始めとして私が知る限りの管理世界でも此処までの都市は見たことがありません」
ギンガも故郷であるミッドチルダ、そして自分が知る限りの管理世界でも此処までの近代都市は見た事もない。
「バース星と同じ様にガルマン・ガミラスもボラー連邦に一時支配されていたと聞いたけど、本当にボラー連邦に支配されていたとは思えないな」
同じボラー連邦に支配されていたバース星と比べるとガルマン・ガミラスの技術は雲泥の差である事が窺える。
「でも、地球もガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国との戦いの後に復興しました。第二の地球となる星を見つけることが出来れば、地球の人たちはいずれその星もガルマン・ガミラスに負けないくらいの都市を築けるのではないでしょうか?」
「そうだな」
ギンガももう一つの地球に住む人類の底力を見てきた。
第二の地球となる星が見つかった時、きっとその星は何もない星だろうが、地球人類の力をもってすれば住みよい星になるだろうと信じていた。
そして祝賀会の会場となるデスラーパレスが見えて来ると、一同はその高さと大きさにも驚く。
(凄く高くて大きい‥‥ミッドにある地上本部ビルよりも大きく高いんじゃないかな‥‥)
ミッドチルダの首都クラナガンの中央部に聳え立つ“陸”の総本山でありミッドチルダの象徴とも言える地上本部ビル‥‥
しかし、今自分たちが向かっているデスラーパレスはその地上本部ビルよりも大きく高い。
(“海”の人が見たらこの星を欲しがるのかな‥‥?)
(でも、この星の大気は通常は有毒だから技術のみを欲しがるのかな‥‥)
ガルマン・ガミラスの技術力ならば当然管理局でも欲しがる技術の筈であるが、星ごとの場合、適合薬が無ければ管理局の人間でもこの星で過ごすことが出来ない。
ならば管理局とすればガルマン・ガミラスの技術力だけでも欲するだろう。
ギンガがミッドチルダとガルマン・ガミラスの技術を比較しながらデスラーパレスを見ていると、やがてエアーカーはそのデスラーパレスへと到着した。