星の海へ   作:ステルス兄貴

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百六十八話 宇宙の巡礼者たち

 

 

ガルマン・ガミラスが自信を持って実施した地球の太陽制御は残念ながら失敗に終わった。

 

ヤマト、まほろばは再び第二の地球となる新惑星探査の航海へ出る事になった。

 

そんな中、デスラーから自軍の観測ステーションが地球そっくりな星を発見したと言う報告を受け、ヤマト、まほろばはその地球そっくりな星‥ファンタム星へと向かう事にした。

 

ヤマト、まほろばがデスラーからの情報を頼りに惑星ファンタムへと向かっている頃、地球にある宇宙戦士訓練学校では‥‥

 

訓練校の敷地内にある大講堂にて、訓練生全員が集められた。

 

大講堂内はエアコンがガンガンに利かせている筈なのだが、外が異常な残暑なため、何だか生暖かい。

 

「いきなりの集合だけど何なんだろうね?」

 

「さあ?でも、こうして全員が集められたんだから何かあった事には間違いないわね」

 

うららもティアナも当然、何のために集められたのか分からなかったが、全学年の訓練生が集められたのだから何かあったのは間違いないので、校長か教官ならば理由を知っているので、それを待った。

 

やがて、壇上に訓練校の校長である榎本が登壇する。

 

「えぇー早速ではあるが、諸君らも現在、太陽で起きている異常とそれに伴う地球の異変は知っていると思う」

 

ヤマト、まほろば以外の国の所属の探査船団が第二の地球となる新惑星探査が開始された頃、連邦政府は連邦市民に今、太陽で起きている異常が知らされ防衛軍と宇宙開拓局が第二の地球となる新惑星の探査を行っている事も同時に知らされた。

 

「現在、日本をはじめとして各国が第二の地球となる新惑星の探査を行っているが、今の所、第二の地球となる新惑星は見つかっていない。そして太陽の異常も続いている」

 

『‥‥』

 

榎本の話を訓練生たちは静聴しているが、不安に思っているのは彼らの表情を見れば容易に窺える。

 

「本日、防衛軍司令部より、地上での宇宙戦士訓練学校の訓練カリキュラムを全て中止し、地下都市にある地下校舎へ移動せよとの通達があった。各自、直ちに荷物を纏め地下校舎への移動準備を行うこと‥以上だ」

 

榎本の話が終わると一同は榎本に敬礼する。

 

そして、榎本が返礼し壇上を降りると訓練生たちはざわつく。

 

「地下校舎へ移動だってよ‥‥」

 

「またあの穴蔵生活か‥‥」

 

「それ以前に地球は大丈夫なのか?」

 

今も続いている太陽の異常と急に地下都市にある地下校舎への移動‥‥

 

訓練生たちが不安になるもの当然だ。

 

「やっぱり、土門や揚羽たちが繰り上げ卒業してヤマトに乗ったのはこういう事情があったのね‥‥」

 

「新人だからそこまでの責任はないと思うけど‥‥」

 

「土門の奴は変なところが真面目だからね。第二の地球となる星が見つからない事に焦ってなければいいけど‥‥」

 

「でも、悠長に構えている余裕‥ないかもね‥‥」

 

「‥‥」

 

うららが窓の外から空を見上げる。

 

彼女に釣られてティアナも同じく空を見上げる。

 

冬とは思えない暑さと膨張した太陽‥‥

 

うららの言う通り、地球に残された時間はそう多くは無かった‥‥

 

宇宙戦士訓練学校以外でも連邦政府の発表により、連邦市民には地下都市への避難警報が発せられた。

 

海鳴にある月村邸でも避難準備が行われている中、今日は電波障害が起きていなかった事もありノエルは通常通りに動いていた。

 

「忍様。忍様もアルファ星へ避難されてはいかがでしょう?」

 

ノエルは忍に滅亡へ突き進んでいる地球からケンタウロス座アルファ星への避難を促す。

 

「ノエル。私よりも会社の従業員やその家族を優先に避難をさせて」

 

忍は月村グループが所有する宇宙船で会社の人間とその家族を優先的に避難させていた。

 

「しかし‥‥」

 

「総帥たる私が地球を離れるのは一番最後よ‥‥船でも船長は最後に退船するでしょう?上に立つ者が行動で示さなければ誰もついてこないわ」

 

「忍様‥‥承知しました。無粋な発言をお許しください」

 

「いいのよ、ノエル。ノエルも私の為を思って言ってくれたのだから‥‥さあ、急いで荷物を纏めてしまいましょう」

 

「はい」

 

忍とノエルは引き続き地下都市への引っ越し作業を進めた。

 

 

地球で連邦市民に対して地下都市への避難警報が発せられた頃、ヤマト、まほろばがガルマン・ガミラスを出航してから一週間の時が経過していた‥‥

 

そして現在、ヤマト艦内にある中央作戦室では古代を始めとして良馬、島、真田が集まりファンタム星への航海について会議が行われていた。

 

「デスラーから提供された資料によれば我々が目指す惑星ファンタムは球状散開星団の外れ、星間座標G三Y五―β付近にあります。つまり我々の現在位置から距離九九五〇光年、ワープ三回分の地点にあると言う事です」

 

島が宇宙海図を指し示しながらファンタム星の位置とヤマト、まほろばの現在位置からファンタム到着の予定等を説明する。

 

「うーん‥‥」

 

そんな中、良馬はファンタム星の位置を凝視していた。

 

「ん?どうかしましたか?」

 

古代は良馬の様子に気づき声をかける。

 

「いや、デスラー総統から齎されたファンタム星の情報から、ファンタム星がある位置はギリギリ、ガルマン・ガミラスの勢力圏だけど、ボラー連邦との国境もギリギリの位置だ。この先、ファンタム星に近づけば近づくほど、ボラー連邦の威力偵察の部隊と遭遇する可能性があると思ってね。まぁ、例え出くわしたとしても向こうが引くならばそれで良いし、攻撃してくるのであるならば迎え撃つだけだ」

 

ファンタム星の位置はガルマン・ガミラスとボラー連邦の国境付近であった。

 

良馬の指摘に一同は顔を見合わせ、土門はハッとなり、

 

「もしかすると、デスラーは‥‥」

 

「ん?デスラーがどうした?」

 

「いや、デスラーは我々に第二の地球を教えると称して実はボラーの連中と戦わせようと画策しているんじゃあ‥‥」

 

ヤマトの強さはガルマン・ガミラスの中ではデスラーが何より知っている。

 

だからこそ、デスラーはヤマトをボラー連邦との戦闘に巻き込んで、ボラーの戦力を削ろうと画策したのではないかと土門の発言を聞いて勘繰ってしまう。

 

「あり得ない‥‥とは言い切れないな‥‥」

 

「やっぱりデスラーの罠だったのか!?」

 

「道理で‥‥おかし過ぎると思ったぜ」

 

「ちくしょう。地球の危機に漬け込みやがって!!」

 

あちこちからデスラーに対する不満が噴出する。

 

「いや、流石にデスラー総統もそこまでは考えてはいないと思えない。そもそも今のデスラー総統がヤマトを罠にかける必要がないし、彼の性格上ボラーを倒す事にヤマトの力を借りようとは思えない。ボラーを倒すのは自分たちガルマン・ガミラスだと言う信念が彼にはあると思う‥‥かつて執念でヤマトを狙っていたようにね」

 

彗星帝国戦役時にデスラーは自身が受けた屈辱を晴らすべく様々な罠を駆使してヤマトを追いつめた。

 

そんな性格の彼がボラーを倒す役目をヤマトへ譲るなんて事は絶対にしない。

 

デスラーのそんな性格を読み取り良馬はデスラーを擁護する。

 

「月村艦長の言う通りだ。推測でモノを言うのはよせ!!」

 

そんな中で古代は一喝する。

 

「しかし、艦長‥‥」

 

「いいか、たとえ我々の赴くところがどんな危険なところであろうとも、それが人類にとって必要ならば万の一つの可能性がある限り、その目的地に向かうのが、我々に課せられた任務である。本艦はこのまま予定通り惑星ファンタムへ向かう!!以上だ!!」

 

古代はそう言って踵を返すと中央作戦室から出て行った。

 

「古代の奴、だんだんと沖田艦長に似てきたな」

 

「それだけに苦しいだろうな」

 

「かつての沖田艦長も同じ気持ちだったのだろうな」

 

第一次イスカンダル航海の時、地球も一年と言うタイムリミットの中、大マゼラン星雲の中にあると言うだけイスカンダルの正確な位置も分からず、ガミラスの妨害もあった。

 

そんな中で一年以内と言うタイムリミットの中でイスカンダルへ行き、放射能除去装置コスモクリーナーを手に入れて地球へ戻ならければならなかった。

 

今回の第二の地球となる新惑星探査も第一次イスカンダル航海に似ている部分があり、古代にはあの時の沖田艦長と同じくらいの重圧と責任が伸し掛かっていた。

 

ファンタムへの航路確認を終えた後、良馬はまほろばへと戻りファンタムへと向かう。

 

ファンタムへの航海中に地球との定時報告の時間となった。

 

「波長修正完了、出力調整完了」

 

相原が通信機を操作して通信回路を開く。

 

「藤堂長官‥‥」

 

「古代。そちらの状況は?」

 

「はい。ヤマト、まほろばは現在、デスラーから情報を受けた惑星ファンタムへ向かっております。ガルマン・ガミラスが観測したデータではその惑星は地球型の惑星との事ですが、詳しい詳細は実際にその惑星に立ち寄り調査をしなければ何とも言えませんが、調査する価値はあると思います」

 

「そうか‥‥地球は今、終末の様相を呈している」

 

藤堂はヤマトとまほろばに現在の地球の惨状を送る。

 

北極と南極は残りわずかな氷河と氷山を残すのみとなり、全ての氷が溶けるのも時間の問題となっている。

 

アジア大陸は強い熱風の嵐が吹き荒れ、湖、河川が干上がっている。

 

ヨーロッパ、米国では熱波の影響で山火事が多発。

 

沿岸部の都市は氷河が溶けた影響で海面水位が上昇し水没。

 

内陸でも地殻変動で火山の爆発を誘い、麓の街が溶岩に飲み込まれる惨事が起きた。

 

ガルマン・ガミラスを出発してから一週間で地球の惨状は拍車がかかっている。

 

「酷いな‥‥」

 

「人々はかつてガミラスとの戦いで使用した地下都市に避難している。我々も地下都市にある旧防衛軍司令部で指揮を執っている」

 

「藤堂長官、人々は全員地下都市に避難したんですか?宇宙へ避難した人は?」

 

良馬は藤堂に地球人類全員が地下都市に避難したのかを問う。

 

「うむ、ガルマン・ガミラスの太陽制御が失敗した後、民間の宇宙船と建造出来たばかりの移民船で冥王星、第十一番惑星、そしてケンタウロス座のアルファ星へ避難した人たちもいる。そして現在、地下の宇宙船建造ドックでは移民船の建造を急がせている。これらの移民船の建造が出来次第、地下都市の人々も地球以外の星へ順次避難させるつもりだ」

 

続いてヤマトとまほろばのパネルには建造中の移民船の映像が映る。

 

「他の国の探査状況はどうなっていますか?」

 

古代が他の国の探査状況を訊ねる。

 

(まぁ、探査停止の命令が下っていない現状、他の国の探査も行き詰っているのだろうが‥‥)

 

未だに自分たちに探査停止の命令がない以上、他の国もまだ第二の地球となる新惑星は発見されていないのだろうと推測する古代。

 

「こと座、ベガ方面、カシオペア方面、エリダヌス、イプシロン星、シリウス方面に向かった探査船団からも希望の持てる報告はまだ入っていない」

 

(やはり‥‥)

 

古代の予測通り、他国の探査船団も自分たち同様、未だに第二の地球となる惑星の発見に至っていなかった。

 

プロキオン、ふたご座のポルックス、カストル、ヒアデス方面に関してはヤマトがテレザート星へ向かう航海で、人類が居住できる星がない事が判明しているので、これらの星系は今回の探査区域から外されている。

 

特にふたご座方面は、彗星帝国が光子砲要塞を設置したことによりある程度の大きさの星は全て破壊されてしまった。

 

その後、光子砲要塞に関してはポルックスとカストルに設置されていた要塞同士で互いに光子砲を撃ち合い自滅したが、真田はふたご座宙域に生命が存在する星は今後、存在しないだろうとさえ断言した。

 

 

ヤマト、まほろばの第一艦橋にあるメインパネルには銀河系の星図と各惑星探査船団の航海探査エリアが映し出された。

 

「射手座、銀河系中心部を担当する諸君らがこれより探査する惑星ファンタムの情報が吉報であることをひたすら祈って待つのみだ。以上」

 

一同は敬礼して応えた。

 

「以上で定時報告終わります」

 

映像が消える寸前、藤堂の後ろに居る晶子がチラッと野菊の押し花をかざす。

 

ヤマトでも相原がそれに応えるかのように手帳に挟んでいる野菊の押し花を晶子にかざした。

 

「通信長。今の何ですか?何かの合図ですか?」

 

晶子と相原のやり取りを見ていた土門が相原に訊ねる。

 

「えっ?何?」

 

相原は当然とぼける。

 

「あっ、ずるいなぁ。ねっ、太田さん、南部さん、今の見たでしょう?」

 

「そうだな。何か花のようなモノをチラッとこう‥ねぇ‥‥」

 

「ああ、あれはその‥‥ほら、地球とヤマトが通信する時だけ、一瞬咲く花なのよね?相原くん?」

 

太田と南部がからかうように相原に訊ねる。

 

「ああ、恋の‥‥」

 

土門が手をポンと叩くと先ほどの晶子と相原とのやり取りに合点がいった。

 

「お、おい、よせよ‥‥あ、相原、通信室へ行ってきます!!」

 

これ以上第一艦橋に居ると全員から、からかわれるので、通信室へと逃げた。

 

「あっ、逃げた‥‥」

 

「相原にもようやく春が来たってことだ」

 

一同がドッと湧き、未だに第二の地球となる惑星が見つからない状況、地球の惨状からくる重苦しい空気はこの時だけは和らいだ。

 

しかくあくまでも一時的であり、すぐさま皆は真剣な表情となる。

 

「本艦はこれよりワープに入る。総員、ワープ準備にはいれ!!」

 

古代は艦内にワープ準備に入るように下令する。

 

やがて、ワープ準備が整うとヤマトとまほろばは惑星ファンタムに向けての一回目のワープへと入った。

 

しかし、ヤマトとまほろばの行動はゴルサコフが命じたボラー連邦の監視衛星にばっちりと監視されていた。

 

 

ボラー連邦 本星 首相官邸

 

「何?例の地球戦艦が‥‥?」

 

「はっ、我がボラー連邦に近いM16783方面に向かい移動中でございます」

 

ゴルサコフは早速ヤマトとまほろばの動向をベムラーゼに知らせる。

 

「たかが辺境の宇宙戦艦‥‥だが、あの戦略砲の威力を持つ戦艦がデスラーの手先となると目障りだな‥‥ゴルサコフ参謀長」

 

「はっ!!」

 

「我がボラー連邦の支配圏には例え虫一匹、うろつくことは許さん。直ちに始末しろ!!」

 

「承知いたしました」

 

ベムラーゼからの命を受けたゴルサコフは首相官邸から直ぐに国家中央作戦室へと戻り、ヤマト、まほろばの進行方向に一番近いボラー連邦の基地へと連絡を入れる。

 

「ハーキンス中将です。いつもながらご壮健なお姿で」

 

「挨拶はよい。首相閣下の命令だ。地球の戦艦、ヤマト、まほろばの撃破に出撃せよ!!」

 

「はっ!!」

 

ヤマト、まほろばの攻撃に出撃したのはかつて管理局と初邂逅をしたハーキンスが司令官を務める部隊、第八打撃艦隊であった。

 

ゴルサコフはハーキンスにヤマトとまほろばの艦影と進行方向のデータを送り、データを受け取ったハーキンスは自身の艦隊旗艦のバイオン号ではなく、基地に係留されているラザレフ級航宙戦闘艦に乗艦し、同型の戦闘艦を多数率いて出撃した。

 

この時の彼は、辺境の惑星国家が保有する戦艦などこれで十分だと言う慢心があったのかもしれない‥‥

 

 

ハーキンスの艦隊がまさか自分たちを狙って出撃したとは知る由もなく、ヤマト、まほろばは惑星ファンタムへと向かっていた。

 

一回目のワープアウトを終えたヤマト、まほろばはガスが濃い暗黒星雲の宙域へたどり着く。

 

 

まほろば 第一艦橋

 

「ワープアウト‥通常空間を確認」

 

「ヤマトもワープアウトを確認」

 

まほろばの近くでもワープアウト反応があり、ヤマトも無事にワープアウトした様だ。

 

「航海班、艦位の測定と確認を急げ」

 

「了解。航海班、艦位の測定と確認を急ぎます!!」

 

「うわぁ~外は真っ暗だ‥‥」

 

航海班が現在位置を確認している中、フェリシアは窓外の光景を見て感想を述べる。

 

「濃密なガス状暗黒物質が水に近い密度だ‥‥」

 

「何だか暗黒星団帝国の母星を目指していた時を思い出しますね」

 

「ただ待ち伏せもあり得るな‥‥あの時もそうだった‥‥全方位警戒しつつ進め」

 

「了解」

 

ボラー連邦の警備部隊が潜んでいる可能性もあるので、良馬は警戒態勢を命じた。

 

そんな中、

 

「ん?‥‥これは‥‥艦長!!」

 

ギンガは微弱ながらも通信波を捉えた。

 

「ん?どうした?」

 

「微弱ながらも通信波を捉えました!!」

 

「通信波?内容は?」

 

「えっと‥‥救難信号みたいです」

 

「救難信号!?発信場所は?」

 

ギンガは通信機を操作して救難信号を発信している場所の特定を急ぐ。

 

「発信場所は‥‥距離四千宇宙キロ、十一時方向‥‥靄の様な星雲に包まれている小惑星からです」

 

「メインパネルに投影」

 

「了解」

 

続いてギンガは救難信号を発信している場所らしき宙域をメインパネルに映す。

 

パネルには薄暗い靄が漂っている宙域に小惑星がいくつも漂う空間であった。

 

「小惑星って言ってもかなりの数があるな‥‥」

 

「どこの救難信号か所属は分かるか?」

 

「‥‥申し訳ありません。どこの救難信号なのかは分かりません。ただ、ガルマン・ガミラス、ボラー連邦、時空管理局、彗星帝国、暗黒星団帝国でもありません」

 

これまで地球が邂逅した星間国家のモノとは異なる救難信号‥‥

 

「ヤマトに繋いでくれ」

 

「了解」

 

まほろばで受信したのだから、当然この救難信号はヤマトも受信している筈だ。

 

パネルには周辺宙域の映像からヤマトの第一艦橋へと変わる。

 

「古代艦長、ヤマトの方でも救難信号を受信しましたか?」

 

「ええ、先ほど‥‥」

 

「これまで地球と接触した星間国家とは異なる救難信号です。罠の可能性もありますが、本当に救助を求めている可能性もあります」

 

「私も同意見です。ですが、信号の正体を確認しないまま進む訳にもいかないので、偵察をしようと思います」

 

「偵察?」

 

「ええ、コスモハウンドで偵察行動をとります」

 

「分かりました」

 

古代は救難信号を送っている正体を突き止めるために偵察隊を出すことにした。

 

偵察要員はアナライザー、土門、揚羽の三人をコスモハウンドに乗せてまず、救難信号を送っている小惑星を探査させた。

 

ヤマトからコスモハウンドが発進した時、通信波が切れた。

 

「通信波、切れました」

 

「偵察隊が出たタイミングで?」

 

「コスモハウンドを戻しますか?」

 

「いや、彼らなら大丈夫だ」

 

偵察隊が出たタイミングで通信波が切れた事から罠かと思われたが、古代はそのまま偵察行動を続行させた。

 

 

暗黒物質の靄が漂う宇宙空間をコスモハウンドは飛行する。

 

コスモハウンドは無数に存在している小惑星を避けながら先ほど通信を送った人物が居る星を探査する。

 

「何か見えるか?」

 

コスモハウンドの操縦桿を握る揚羽が補助席に座る土門に訊ねる。

 

「いや、ダメだ」

 

双眼鏡で周囲を覗く土門は通信を送って来た施設または宇宙船を探すが、それらしいモノは見つからない。

 

「くそっ、通信波が続いていたら‥‥」

 

通信波が続いていたらそれを逆探知して簡単に位置を特定することが出来たのだが、肝心の通信波が途絶えてしまったので、こうして有視界で通信源を探しているのだ。

 

「ン?近ク二金属反応アリ‥‥」

 

そんな中、アナライザーが金属反応を探知した。

 

「どこだ?アナライザー」

 

「前方ノ小惑星ニ何カガアリマス!!」

 

「よし、行ってみよう」

 

コスモハウンドは金属反応が出た小惑星へと接近する。

 

「金属反応ガ段々ト強クナッテイマス‥‥アッ、アソコニ何カアリマス」

 

アナライザーが指さした一つの小惑星にあるクレーターには球体型の宇宙船らしきモノがあった。

 

「あれは‥‥宇宙船の様だ‥‥」

 

「見た事の無い型だな‥‥」

 

「着陸して確認してみよう」

 

「ああ。でも、気をつけろよ」

 

「了解」

 

何者かがヤマトとまほろばへ通信波を送り、こうして宇宙船があったのだから、あの宇宙船には誰かが乗っている事が予測された。

 

その為、土門と揚羽は直接あの宇宙船の内部を調査することにした。

 

揚羽はクレーターの近くにコスモハウンドを着陸させる。

 

コスモハウンドを降り、宇宙船へと近づく土門、揚羽、アナライザー。

 

クレーターに鎮座している宇宙船は航海灯などの明かりはなく、中で機械が動いている気配もなく、さながら幽霊船の様だ。

 

「ひどく傷んだ宇宙船だな‥‥」

 

「マサニウゴクノガ不思議トイウ奴デスネ」

 

「エンジンが故障しているんじゃないか?もっと近づいてみよう」

 

土門、揚羽、アナライザーは警戒しながら宇宙船へと近づく。

 

クレーターに鎮座している宇宙船は外見のあちこちに錆があり、船体の至る所に傷や凹み、応急修理を行ったであろう形跡がいくつもあり、長い期間使用された老朽船である事が窺える。

 

宇宙船の外見を一通り見た後、エアコックから土門、揚羽、アナライザーは宇宙船の船内へと入る。

 

「ン?近クニ生命反応デス」

 

船内でも警戒しながら進んで行くと、アナライザーが生命反応を探知した瞬間、通路の左右から無言で黒い影の集団が土門と揚羽に襲い掛かって来た。

 

「むっ!?」

 

「くっ!?」

 

しかし、そこは宇宙戦士である土門と揚羽。

 

二人は自分たちを襲ってきた襲撃者を背負い投げで撃退したのだ。

 

「何なんだ!?コイツ等は!?」

 

「助けを求めておいて襲い掛かって来るなんて‥‥やっぱり罠だったのか!?」

 

揚羽と土門は襲撃されたことであの通信は罠だったのかと思った。

 

アナライザーは襲撃者の正体を探る為に身体に装備されていたライトを点灯させる。

 

土門と揚羽はアナライザーのライトで照らされた光芒の中を見て思わず息を呑んだ。

 

光芒の中には寄り添うように固まっている人の一団があった。

 

その人々は生きているのが不思議なくらい痩せている人、疲労困憊な様子の人たちだった。

 

(こ、この人たちは一体‥‥)

 

(そう言えば、さっき投げ飛ばした人もやけに軽かったな‥‥)

 

「アナライザー、ヤマトとまほろばに通信を送ってくれ」

 

「了解」

 

アナライザーはヤマトとまほろばに通信を送った。

 

ヤマト、まほろばの第一艦橋のメインパネルには宇宙船内部の光景と共に土門がこの宇宙船の正体を伝える。

 

「なに!?シャルバート教の信者たちの船!?」

 

「はい。彼らは長い間、シャルバート星を探している巡礼者たちなのです」

 

「巡礼者‥‥」

 

「長い間って一体どれだけの旅をしてきたのだろう‥‥」

 

(何だかジレルの人たちみたいだな‥‥)

 

長い間、どこにあるのか分からないシャルバート星を探し求めながら宇宙を彷徨っている彼らとシャンブロウで出会った女王レーレライたちジレル人と重なった。

 

(いや、タイムリミットはあるが自分たちも似たようなモノだな)

 

「地球の皆さんお聞きください」

 

そこへ、この巡礼団の代表者らしき長老が話しかけてきた。

 

「今はガルマン・ガミラスとボラー連邦とが銀河系で争いごとをしていますが、それ以前から銀河系では争いが絶え間なく続いていました。力なき人々は長きに渡る無用の苦痛に喘いでおります。私どもは銀河で起きているこの戦乱をマザーシャルバートに鎮めて頂こうと思い、こうして宇宙を彷徨いつつシャルバート星を探しているのです。あと何年かかるのか分かりませんが、私たちの世代が倒れても次の子の世代、そしてそのまた子の世代とシャルバート星が見つかるまで、宇宙を彷徨う覚悟です」

 

「やはり、今の我々とあなた方は同じだな‥‥我々にはタイムリミットがありますが、今のあなた方と同じく星を求めて宇宙を彷徨っている巡礼者の様な者です」

 

良馬は長老の言葉を聞き、内心抱いていた彼らの境遇と今の自分たちの境遇が似ている事に共感を抱く。

 

バレルの話ではシャルバート教の一部の信者には過激な思想からテロ活動をする信者もいるらしく、先日起きたボラーのガルマン・ガミラス本土攻撃にはガルマン・ガミラス軍内部に居るシャルバート教の信者が防衛システムは破壊した事でヤマト、まほろばが居なければガルマン・ガミラスは滅んでいたかもしれなかった。

 

バレルの言う通り、シャルバート教の信者の一部にはテロ活動を行う過激派が居るが、ガルマン・ガミラスの広場、そして宇宙船に居る巡礼者たちを見る限り本当のシャルバート教の信者は思慮深い大人しい人たちなのだろう。

 

「ありがとうございます。今思うとこうしてあなた方と出会う事が出来たのもマザーシャルバートのお導きかと存じます」

 

「すると救難信号を発していたのはやはり‥‥」

 

「はい。宇宙船のエンジンが故障してしまい、この小惑星に不時着したのですが、ガルマン・ガミラスやボラー連邦に気づかれる訳にはいかず、救難信号を送るに送れない状況下だったのですが、子供の一人が通信機を弄って救難信号を発したところ、あなた方とこうしてお会いする事が出来ました」

 

「事情は分かりました。早速宇宙船の修理を行いましょう」

 

「それと長い航海になるのですから、航海に必要な物質や機械も設置しましょう」

 

「ありがとうございます。何とお礼を申し上げてよいか‥‥」

 

長老は深々と頭を下げ、礼を言った。

 

やがて、ヤマトとまほろばから修理に必要な物資と技術班の隊員たちと運搬ロボが駆け付け、下がドリルになっている鉄柱の柱を小惑星に埋め込み、その柱に足場となる鉄板を固定し、足場を作り技術班が宇宙船の外部修理と船体の補強を行う。

 

勿論内部も同様に修理と補強を行う。

 

技術班の他に佐渡、リニスたち医療科の隊員たちも宇宙船に乗っていた巡礼者たちの健康診断を行う。

 

そして、ディアーチェたち主計科の隊員らも彼らの食生活を確認すると、

 

「貴様らの目的が達成するまで宇宙を旅する決意は認めよう‥‥だが‥‥こんな貧弱な施設でどうやって食っていくつもりだったのだ!?」

 

ディアーチェが巡礼者たちの厨房担当の信者に詰め寄っている。

 

「むしろ、こんな脆弱な設備でよくこれまで生きてこれたな!?」

 

彼女がそれくらい呆れるほどに宇宙船の厨房設備は長距離航海に向いていないモノだった。

 

「おい、ヤマトの真田技師長を呼んで、この船にもO・M・C・Sを設置してもらえ。物資ついてはガルマン・ガミラスで補給してもらったのがあるだろう」

 

「は、はい」

 

ディアーチェは傍に居た主計科の隊員に事情を話して、真田を呼びに行ってもらった。

 

「えっ?まほろばの主計長が?」

 

「はい。ヤマトの真田技師長を呼んでくれと‥‥」

 

「なんでまたまほろばの主計長が俺を呼んでいるんだ?」

 

「なんでもこの宇宙船の厨房施設があまりにも脆弱な為、O・M・C・Sを設置してもらいたいそうです」

 

「なるほど‥坂東」

 

「はい!!」

 

「俺は船内設備の強化に向かうが、外部修理と補強の作業を任せていいか!?」

 

「はい、大丈夫です!!」

 

真田は外部作業を坂東に任せて宇宙船の中にある厨房施設へと向かった。

 

そして、真田の手腕とガルマン・ガミラスで補給した物資で宇宙船の厨房施設にO・M・C・Sが設置された。

 

「使い方は地球のO・M・C・Sと同じだから、使い方を教えてやってくれ。俺はまた外部の修理・補強作業に戻る」

 

「うむ」

 

宇宙船の厨房施設にO・M・C・Sを設置した後、O・M・C・Sの使い方のレクチャーをディアーチェに任せて真田は外部作業へと戻った。

 

「いいか?では、使い方を教えるぞ」

 

「は、はい」

 

ディアーチェは厨房担当者にO・M・C・Sの使い方を教えた。

 

「‥‥と、こうやるのだ。分かったか?」

 

「はい。ありがとうございます‥‥それにしても凄い機械ですね、このO・M・C・Sというのは‥‥一体何を原料にしているんですか?」

 

O・M・C・Sの使い方と性能を知った厨房担当者は驚愕すると同時にO・M・C・Sの原理をディアーチェに訊ねてきた。

 

「‥‥それは知らない方が幸せだと思うぞ」

 

「は、はぁ‥‥」

 

使い方を覚えれば今後の航海での食生活が改善されるのだから、O・M・C・Sの詳しい詳細までは知らなくても良いとディアーチェは厨房担当者に助言した。

 

やがて、外部、内部の修理、補強が終わり、ヤマトとまほろばから長航海に必要な物資を分けてもらい、巡礼者たちの宇宙船は発進準備を行う。

 

「地球の皆さん、ありがとうございます。おかげで出発する事が出来ます」

 

長老がヤマト、まほろばの乗員たちに礼を述べる。

 

「今後の航海の無事を祈ります」

 

「お元気で‥‥」

 

「ありがとうございます。では‥‥」

 

宇宙船のエンジンが点火してゆっくりと小惑星から発進していく。

 

「親から子、子から孫か‥‥我々には時間がないが、せめてあの巡礼者たちの執念を見習って第二の地球を探さないとな」

 

「これから向かう惑星ファンタムがその第二の地球となりうる星ならば良いのですけどね」

 

宇宙へ旅立って行く巡礼者たちの宇宙船を見ながら古代と良馬が呟いた時、ヤマト、まほろばのレーダーが小惑星に接近して来る艦隊を捕捉した。

 

「十二時の方向に艦影を捕捉。距離六千宇宙キロ。船籍は不明です」

 

「此処はガルマン・ガミラス、ボラー連邦との国境線に近い宙域だからな‥‥ガルマン・ガミラスの艦隊なら話せば通してくれるのだろうけど、ボラーの場合だとちょっと厄介だな」

 

「ええ‥ひとまず小惑星に居る作業班を呼び戻しましょう」

 

「それと船籍が分からない以上、交戦の可能性もある。戦闘の用意も‥‥」

 

「ええ」

 

ヤマト、まほろばの艦内に警報が鳴り、乗員たちは戦闘配置につく。

 

小惑星からは急ぎ作業にあたった技術班がヤマト、まほろばへと戻る。

 

「くそっ、やけに忙しい日だ」

 

「いや、いや、そうこなくっちゃ面白くない」

 

コスモハウンドもヤマトに帰投し、搭乗していた土門たちは急ぎコスモハウンドから急いで降りる。

 

真田もヤマトの第一艦橋へと戻ると、

 

「雪、巡礼船の位置は!?」

 

雪に巡礼者たちが乗った宇宙船の現在位置を訊ねる。

 

「まだ戦闘圏内にいます」

 

接近して来る艦隊がボラー連邦の場合、この宙域で戦闘が予想される。

 

巡礼者たちが乗った宇宙船はまだ戦闘圏内に居た。

 

此処でボラー連邦の艦隊と戦闘が起きたら巡礼者たちが乗った宇宙船が戦闘に巻き込まれる可能性が高かった。

 

いくら補強したとはいえ、宇宙船は非武装船なので、攻撃を受ければあっという間に撃沈されてしまう。

 

いくら地球とは何の関係もない人々でも救助して知己を得た人々が目の前で宇宙船諸共吹き飛ばされるのはあまりにも目覚めが悪い。

 

「艦長、巡礼船に護衛が必要だな」

 

「コスモタイガー発進!!巡礼船を戦闘圏外まで護衛してくれ」

 

「了解」

 

巡礼者たちが乗った宇宙船を守る為にヤマト、まほろばのコスモタイガーが発進し、その護衛に就く。

 

その間にも艦隊はヤマト、まほろばへと接近して来る。

 

「戦闘艦隊、距離五千宇宙キロまで接近‥‥戦闘艦の識別判明‥ボラー連邦の戦闘艦です!!」

 

「ガルマン・ガミラスだったらまだ話し合いの余地があったがよりにもよってボラー連邦の艦隊とは‥‥」

 

「相原、交信回路を開け」

 

「了解」

 

古代は無駄かもしれないが、一応ボラー連邦の艦隊指揮官と話し合ってみようと通信回路を開く。

 

「ボラー連邦戦闘艦隊指揮官に告ぐ!!こちらは地球の宇宙戦艦ヤマト!!諸君らと戦う理由は無い!!すみやかに戦闘態勢を解かれたし!!繰り返す。すみやかに戦闘態勢を解かれたし!!」

 

古代が接近して来るボラー連邦の艦隊へ通信を送ると、意外にも相手側から返答があった。

 

もっともその内容は古代が期待する内容ではなかった。

 

「こちらはボラー連邦第八打撃艦隊司令、ハーキンス中将。問答無用だ」

 

接近して来るボラー連邦の艦隊はベムラーゼが刺客として送り込んだハーキンス中将の艦隊であった。

 

ヤマト、まほろばの撃破を命じられたハーキンスとしてはいくらヤマト、まほろばに戦闘の意思がなくとも自分たちには戦闘を行う理由があった。

 

「やはり、聞き入れてもらえませんでしたね」

 

良馬が古代とハーキンスのやりとりを見て古代に声をかける。

 

此方が戦う意思が無くとも向こうは戦う気満々であった。

 

「ええ、全くボラーの連中は融通が利かない連中だ」

 

「敵艦隊、戦闘態勢をとり接近してきます!!」

 

「古代艦長、不本意かもしれませんが、ここは戦うしか無いようです。それに近くには巡礼船が居る‥‥彼らを守る為にも此処で足止めをしなければなりません」

 

「そうですね‥‥総員、応戦準備!!」

 

ヤマト、まほろばはボラー連邦の艦隊をこの宙域で足止めするよう戦闘態勢をとった。

 

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