ヤマトがマゼラン星雲にあるイスカンダルへの長い航海へ旅立って行った後、防衛軍の人事にちょっとした異動があった。
防衛軍日本宇宙軍連合艦隊司令長官が沖田から士官学校の校長を務めていた土方になった。
沖田は言うまでもなくヤマトの艦長へ就任した為、地球には不在なので、その後釜には彼の同期であった土方に決まるのも別に不思議ではなかった。
その理由は土方が沖田同様、経歴、能力も申し分がない人物だったからだ。
しかし、今の防衛軍が有する艦船は非常に少なく、また艦隊行動を取るような大規模な作戦もなく、土方が艦隊を率いるのはまだまだ先の事になるだろう。
そして、空席となった士官学校の校長職には宇宙戦艦 えいゆう 艦長の山南 修が校長職についた。
山南はこの戦争のご時世、人員が枯渇する中、新しい世代の人間教育をモットーに教育者としての仕事に就いていった。
ヤマトがイスカンダルへ向けての出航の際、ガミラスの大型ミサイル軌道変更作戦に従事した三笠は強烈な衝撃波を受け、再びドックへとその身を横たえ、別命あるまで待機となった。
三笠を一時降りた良馬は、作戦の指令があるまで、地上勤務となったがその辞令を受けた時、良馬は少し顔を青くした。
しかし、その様子に気が付く者は誰もいなかった。
だが、地上勤務をこなしていく内、良馬の異変に気が付いたのは良馬の下宿先の中嶋家の母、加奈江だった。
朝食の席で日に日に目の下の隈を濃くしていく良馬に違和感を覚え、ある日、加奈江は良馬に訊ねた。
「ねぇ、良馬君」
「なんでしょう?」
「良馬君、ちゃんと寝ている?」
加奈江の質問に、その場にいたみんなの視線が良馬に集中する。
みんなの視線は良馬を気遣っている。
「えっ?ええ‥でも、なんでそんな事を?」
「良馬君。この頃、目の下の隈が少しずつ濃くなってきているから‥‥」
「だ、大丈夫ですよ。俺は軍人ですよ。体調管理ぐらいちゃんと出来ますから」
「そう?それならいいんだけど‥‥」
加奈江は煮え切らない様子でこの話題を止めたが、他のみんなは未だに心配そうな目で良馬を見ていた。
その後も、良馬の目の下の隈はより一層色を濃くしていくが良馬は「大丈夫」の一点張りでみんなの心配を払いのけた。
事実、仕事に関しては何の支障もなく行っていたが一度、源三郎が強引に医者の下へ向かわせた。
医者からは「倒れないのが不思議なくらいです。睡眠薬を処方するので、それを使ってゆっくり眠ってください」と、診断された。
しかし、人間用の薬物では夜の一族である良馬にはあまり効果が無かった。
星が瞬く宇宙を三笠はガミラス軍の猛攻を受けていた。
味方の艦船は既になく、三笠ただ一隻がガミラスの弾雨の中に居た。
「味方艦、全滅!!残っているのは本艦だけです!!」
「取り舵15!!針路273!!」
「取り舵15!!針路273!!宜候!!」
永倉は良馬の指示通りのコースをとる。
しかい、ガミラスの猛攻の前には回避運動など意味をなさず、船体に次々と穴が開く。
「第23ブロック火災発生!!」
「第8ブロック隔壁閉鎖します!!」
「機関室力30%ダウン!!速度落ちます!!」
被害が機関室に及び、三笠の速度が遅くなり始めた。
動きが鈍くなった三笠はガミラスにとって絶好の鴨となった。
「直撃弾きます!!」
「回避!!」
「ダメです!!間に合いません!!」
永倉が必死に舵を動かすが、被弾し鈍足となった三笠は思うように上手く動かない。
そんな瀕死の三笠にガミラスのショックカノンが迫る。
そして、それは三笠の艦橋へ命中した。
「うわぁぁぁぁぁー!!」
良馬の眼前に広がる爆風と体を燃やし尽くす爆炎。
全身を獄炎に焼かれながら、良馬はもだえるが、それも一瞬の出来事、三笠は大爆発を起こし、宇宙の塵となった‥‥
「うわぁぁぁぁぁぁぁー!?」
良馬がバッと目を開けると、そこは見慣れた中嶋家の自分にあてがわれた部屋の天井が目に映った。
この日の夜も、良馬は寝室で悪夢に魘されていた。
良馬は使い魔のリニスや中嶋家の皆、ギンガや紅葉に悟られぬようにしていた。
もっとも目の下の隈はどうしようもなかった。
「ハァ、ハァ、ハァ‥‥‥‥」
寝汗をびっしょりかいた体をベッドから起こす。
顔を右手で覆い、呼吸を整えようとする。
すると、今度は、部屋に恭介や一、今までガミラスとの戦いで死んでいった部下や戦友の姿があった。
「っ!?」
慌てて、ベッドの隣にあるサイドテーブルの上にあるスタンドライトを慌ててつけると、部屋には恭介達の姿はどこにもいなかった。
そりゃ、宇宙で戦死しているのだから此処に居る筈はないのだが良馬の目にはしっかりと見えていた。
「ハァ、ハァ、ハァ‥‥‥‥」
身体はびっしょりと寝汗をかき、息を荒げた良馬はそのまま部屋に備え付けの冷蔵庫までフラフラとまるで夢遊病患者の様に近づくと冷蔵庫の扉の前でペタンと座り、冷蔵庫の中からアルコール度数が高い酒を取り出し急かす様に蓋を開け、それを一気に煽った。
「うっ‥‥うぷっ‥‥グビ‥グビ‥グビ‥‥」
(良馬さん、大丈夫かしら?)
中嶋家の夜の廊下をギンガは歩いていた。
深夜、トイレに行きたくなりその帰りふと良馬の事が気になったのだ。
目の下に隈を作ると言う事は、睡眠不足だと言う事だ。
それは夜、ちゃんと眠れていないと言う事を意味する。
今も起きているのだろうか?
気になったギンガはそっと良馬の部屋の前まで来た。
すると、中から、
「うっ‥‥ゴホっ‥‥ゴホっゴホ‥‥グッ‥‥ウェ‥‥」
良馬のむせる声と、吐き気を我慢しているようなうめき声が聞こえてきた。
ギンガがそっと部屋のドアを開けると、
「っ!?」
そこには無理矢理、酒を飲んでいる良馬の姿があった。
良馬の近くには既に沢山の酒瓶や缶が落ちていたが良馬はまるでアルコール中毒者の様に酒を飲むことを止めない。
しかし、飲みなれていないのか時折むせて口から酒を吐き出している。
それでも良馬は、酒を飲むのを止めようとしない。
「な、何をやっているんですか!?」
見るに見かねてギンガは良馬の部屋へ入り、手に持っていた酒瓶を取り上げる。
「か、返してくれ、こうでもしないと眠れないんだ‥‥」
弱弱しくギンガに酒を返してくれと頼み込む良馬。
しかしギンガは、
「ダメです!!」
ギンガは、良馬に酒を返さず、
「どうしてこんな無茶な飲み方を?」
何故良馬が飲みなれていなさそうな酒をこんなにも無理して飲んでいるのかを聞いた。
「酒でも飲んで無理矢理眠らないとみんなが来るんだ‥‥目を閉じるとみんなが‥‥みんなが俺を責めてくるんだ‥‥『なんでお前は生きているんだ』って‥‥」
良馬曰く、艦を降りると、どうしても眠れなくなるのだと言う。
その理由は、眠ると夢の中で今までガミラスとの戦いで死んでいった戦友たちが出きて、良馬を責めてきたり、乗艦している艦がガミラスの攻撃で撃沈される夢を見るのだと言う。
医者から処方された薬では自分の体質に合わず効かない。
故にアルコール度数が高い酒を飲んで無理矢理にでも酔いつぶれて眠るしか方法がないが、これも体質のせいなのかなかなか酔いつぶれる事が出来ない。
だからこそ、こんな無茶ぶりな飲み方になってしまう。
でも、眠るために無茶な飲み方をしなければならないのだと言う。
まさにマイナス循環に陥っていた。
「こんな飲み方をしていたら、眠るどころか、体を壊しちゃいますよ!!」
「でも、眠れないんだ‥‥こうでもしないと‥‥」
すると、ギンガがギュッと良馬を抱きしめた。
「一人で眠るのが怖いなら、私が一緒に寝てあげます」
「えっ!?」
ギンガのこの提案に流石の良馬も驚愕した。
「い、いや、でも‥‥」
「さあ、行きますよ」
ギンガは強引に良馬の手を引いてベッドへと導く。
この時、良馬はギンガって見かけによらず、力が強いんだと思った。
同時に心が強い人物だと思った。
自分の知り合いが一人も居ない世界に放り込まれ、しかも、その世界は戦争中で、自分が居る陣営は敗色が濃厚。
そんな環境ならば、不安な筈がない。
恐怖を抱かない筈がない。
それにも関わらず、彼女はそのような素振りは見せない‥‥いや、もしかしたら、自分の様に一人の時には、泣いているかもしれない。
それでも、彼女はこうして他人に、気を配る事が出来る。
それに比べて自分はどうだろうか?
年下の彼女に此処までされて‥‥。
本当に情けない‥‥。
そう思いながらギンガに引かれて行った。
なんだか変な展開となってきたが良馬は今、ギンガと共にベッドの中にいる。
ベッドの中でギンガは良馬の事を包み込む様に抱きしめる。
「私の妹も昔は寂しがり屋の甘えん坊で、こうしていると安心して眠っていたんですよ」
そして、母が夜泣きをする子供をあやすかのように良馬の頭を優しく撫で始めた。
ギンガはこうした行為を昔、妹のスバルに何度もしてやった経験がある。
ナカジマ家は元々両親が局員のため、二人が定時上がりの時もあれば、夜遅くまで残業ということもなり、夜遅くなれば、スバルは一人で眠るのが怖いのか、よくギンガのベッドに潜り込んできた。
そんな時、ギンガはきまってスバルを優しく抱きしめ、頭を撫でた。
抱きしめられたスバルは姉のぬくもりに安堵し、やがて静かに寝息を立て、眠る。
ギンガの母、クイントが亡くなってからはそれが一層多くなった。
母に二度と会えない悲しさと寂しさ、そして辛さでスバルはほぼ毎夜ギンガの部屋に行き、ギンガに泣きついた。
本音を言うとギンガ自身も声をあげて泣きたかった。
しかし、姉と言う立場上、妹の前で泣くことはどうしてもできなかった。
その後、ギンガはスバルの姉でもあり、母親的な存在となっていった。
それはギンガから子供らしい一面を失わせる反面、女性らしさ‥‥母性本能を大きく成長させる要因となっていた。
ギンガに抱きしめられながら、横になっていると、昔、幼少期時代に忍やリニス、ノエルと一緒に寝た記憶と共に暖かい安らぎが良馬を包み込んだ。
すると、いつもの悪夢を見ることもなく、深い眠りにつくことが出来た。
久しぶりの熟睡なのだろう。
今、自分の腕の中では一人の青年が気持ちよさそうに眠っている。
その様子から相当無理をしていたのだと分かる。
漂流者として救助され、何もする事の出来なかった日々を送るギンガにとって、彼に安らぎと眠りを与えることが出来た事に満足なギンガも彼と共に眠りについた。
翌朝
「おはようございます。マスター」
リニスが良馬を起こしに部屋へと来た。
普段ならば、良馬が眠そうな声で返事をするのだが、この日は眠りが深いのか、なかなかベッドから出てこない。
「まったく、もう‥‥」
リニスは良馬の部屋と入り、ベッドに近づく。
すると、
「えっ!?」
リニスは乾いた声をあげる。
ベッドには良馬以外にもう一人、他の人物が一緒に眠っていたのだ。
リニスはそれを見た瞬間、ピシっと固まった。
やがて、良馬が目を覚ました。
久しぶりに熟睡出来たのか目の下の隈も薄くなっていた。
しかし、熟睡出来た良馬が見たのは、顔を引きつらせているリニスの姿だった。
「ま、マスター‥‥」
「えっ!?り、リニス?」
「貴方と言う人は!!」
「ひぇ~~!」
起きたばかりだと言うのに良馬はリニスにお説教をされた。
「マスター、貴方だって年頃の男の人なのだから女の人に興味があると思いますが、救助者である女性をベッドに連れ込むとはどういう事ですか!?ギンガさんは別世界の人間なんですよ!!一歩間違えれば、地球とミッドで大問題になり兼ねないのですよ!!」
リニスが良馬にお説教をしていると、
「うっ‥‥う~ん‥‥」
当事者のギンガが目を覚ました。
「ギンガさん、これは一体どう言う事なんですか?」
「こ、これは、その‥‥」
ギンガは目を覚ました後、リニスにお説教をされている良馬を見て、その弁護に回った。
そして良馬が夜な夜な魘され、睡眠不足に陥っている事を知ったリニスはそれが事実なのか良馬に問う。
「ええっと‥‥それは‥‥その‥‥」
良馬はリニスから視線をそらし、どうするどうやって誤魔化すか考えを巡らせた。
しかし、寝起きでこれまでの睡眠不足がたたっていい考えが思いつかない。
しかも、
「良馬さん、誤魔化したら‥‥分かりますよね?」
ダークオーラ全開のリニス相手ではあまりにも分が悪い。
結局、良馬は洗いざらい話した。
「全く、貴方と言う人は、何故その事を私に言わなかったのですか?」
「そ、それは‥その‥‥リニスにあまり心配や迷惑をかけたくなくて‥‥」
「黙っていて、それで体を壊された方が余計に心配しますし、迷惑です」
「‥‥」
「それとも、私はそんなに頼りないですか?」
「い、いや、違う。リニスには感謝している。その‥‥リニスは僕にとってお母さんみたいな存在だから‥‥」
良馬の言葉はかつて自分がデバイスを与え、魔法を教えたあの子の事を思い出させる。
「ならばなおさら、私に頼って下されば良かったのに」
だからこそ、リニスは自分の事を頼って欲しかった。
「で、でも、これは俺が負うべき問題だし‥‥」
あくまで今回の事は自分でカタを付けようとする良馬をリニスはギュッと抱きしめる。
「私は貴方(マスター)の使い魔なのですから、貴方(マスター)の負うべき事は私も一緒に償います。ですから、今度からはちゃんと言って下さいね?それとギンガさんにもちゃんとお礼を言いなさい」
「う、うん、分かった‥‥ギンガさん」
「は、はい」
「昨晩はありがとう。久々に熟睡出来たよ。貴女のおかげだ」
「い、いえ、そんな‥‥お役に立てて良かったです」
ともあれ、良馬の睡眠に関しての問題はこれにてかたが付きそうだった。
ただその後、
「ギンガさん、今日は私が良馬さんと寝ますのでご自分の部屋にお戻りください」
「リニスさんには悪いですけど、良馬さんは、私の方が熟睡できるみたいですから、私が良馬さんと一緒に寝ます」
と、何故かリニスとギンガとの間で、良馬の争奪戦が行われていた。
リニスの言い分は、自分は良馬の使い魔なのだから当然良馬と一緒に寝るのは自分だと言う事。
一方、ギンガは自分と一緒に寝た方が良馬は熟睡出来ているのだから、良馬の事を思うのならば、自分が良馬と一緒に寝ると言いだした。
何故、ギンガがここまで良馬の事を気遣う理由は、良馬は自分の命の恩人だし、なによりギンガは良馬に対し、母性本能を著しく、くすぐられたためであった。
リニスとギンガ、どちらと寝たにせよ、良馬がこの後、夜魘されることが少なくなったのは言うまでもなかった。
しかし、その反面、必死に理性を働かせることにも繋がった。
ヤマトが無事に地球を発進し、イスカンダルへの長い航海へ向かった中、太陽系を抜ける前にヤマトは地球に対して、最後の通信を送ってきた。
乗員は地球に残してきた家族や恋人に通信を送り、地球に居る家族もヤマトに乗艦している乗組員も互いに涙を流し、家族との暫しの別れをした。
通信内容その他にも太陽系内でのヤマトの行動も報告された。
それによると、ヤマトは火星軌道の沖合で、地球人類初のワープを行い無事に成功し、一気に木星まで辿り着いた。
そして辿り着いた木星にて、浮遊大陸上にガミラスの基地を発見。
そこで、初めて艦首次元波動収束砲‥‥通称、波動砲の試射を行い、ガミラス基地を攻撃したが、波動砲はヤマトの乗員が考えていた以上の破壊力を有しており、オーストラリア大陸程の浮遊大陸と木星の一部をその一撃で消滅させてしまった。
以後、波動砲の使用に関しては十分に配慮しなければならなかった。
ワープ航法、そして波動砲を使用したヤマトには機関部大きな負荷がかかり、機関に不具合が生じたため、修理に必要な宇宙金属コスモナイトの採掘を土星の衛星、タイタンにて行った。
そのタイタンで、採掘中にガミラスのパトロール部隊と陸戦となり、辛くも勝利、無事にコスモナイトの採掘を続けていた中、タイタンの雪原で不時着した宇宙駆逐艦、雪風を発見した。
雪風の船体は風穴だらけで、艦内に生存者はいなかった。
コスモナイトで修理を終えたヤマトは冥王星ガミラス基地の攻略に踏み切った。
沖田自身はなるべく戦闘は避けたかったが、冥王星ガミラス基地だけはどうしても見過ごす事は出来なかった。
ヤマトがイスカンダルへ向かっている最中に冥王星ガミラス基地からの遊星爆弾により、折角イスカンダルへ行き、放射能除去装置を貰って地球へ戻ってきても冥王星ガミラス基地からの遊星爆弾により人類が絶滅していました‥‥なんて事になっては身も蓋もない。
よって、ヤマトは冥王星ガミラス基地攻略に関しては積極的だった。
ヤマトの乗員にしてみれば、冥王星ガミラス基地の攻略は、家族や恋人、友人の仇でもあった。
こうして冥王星ガミラス軍基地の攻略に踏み切ったヤマトであったが、冥王星ガミラス基地が設置した新兵器、反射衛星砲により、ヤマトは手痛い傷を負うことになり、乗員に少なからず死傷者を出す結果となったが、苦労の末、基地は攻略され、地球はようやく遊星爆弾からの脅威から解放された。
この事実に防衛軍、地球連邦政府の官僚、幕僚達は歓喜に沸いた。
そして、この知らせは臨時ニュースとして連邦市民にも知らされ、市民達もヤマトの幸先の良い知らせに歓喜した。
ヤマトは冥王星ガミラス基地の反射衛星砲によって受けた傷を第十番惑星のなれの果て、アステロイドベルトにて癒していたが、そこへ冥王星ガミラス基地から脱出したシュルツ率いるガミラス軍の残存艦隊が襲い掛かった。
しかし、真田の考案した反重力感応機によって周りの隕石(アステロイド)を防御シールドにし、ガミラスの攻撃を防いだ。
思いもよらない方法により、決定的なダメージを与えられないガミラスは、旧日本軍の十八番、特攻をかけてきた。
彼らは長い年月をかけて築き上げてきた冥王星の基地をヤマト一隻により破壊され、敵前逃亡をした身、もはや生きて再び母星の土を踏むことは出来ない。
残されているのは死のみ‥‥。
ならば、名誉ある死か不名誉の死か、そのどちらかであった。
しかし、艦隊はヤマトが纏ったアステロイドのせいで特攻に失敗し、味方艦同士で衝突したり、アステロイド自体に衝突して冥王星のガミラス艦隊は壊滅。
司令官のシュルツも「デスラー総統万歳!!」を叫び、座乗する艦でヤマトに体当たりを行うも、逆に船体にロケットアンカーを撃ち込まれ、突入針路をずらされ、小惑星に激突し、無念の戦死を遂げた。
以上がヤマトから送られた太陽系内における戦闘報告だった。
冥王星ガミラス軍基地、そこの駐屯艦隊を撃滅したヤマトは太陽系を抜け、未だ地球人類が行ったことのない未知なる星の海へ‥‥マゼラン星雲、イスカンダルを目指し旅立って行った。
ヤマトが旅立った後、ガミラスが再び艦隊を派遣し、冥王星基地を再建する可能性は十分にあり、防衛軍としては基地の再建は何としても阻止しなければならなかった。
そのためには、強力な宇宙艦隊の再建が急務であった。
幸い、地球側にはイスカンダルから送られてきた波動エンジンの設計図がある。
波動エンジン搭載艦(ヤマト)の実力はヤマトからの報告で既に明白となっており、これならばガミラスと十分渡り合える。
後は艦を建造するための資材とエネルギーの確保にあった。
ヤマトから送られてきた戦闘報告書により、土星衛星タイタンにおけるコスモナイトの鉱脈の位置は既に判明しているので、防衛軍は早速、コスモナイトとその採掘ルートの確保にのりだした。
当然、良馬が艦長を務める三笠も動員された。
三笠は地球でも稼働できる数少ない宇宙船であるので、この任務に抜擢されるのは当然と言えば当然だった。
「それじゃあ、行ってきます」
「ええ、気を付けてね」
「冥王星のガミラス基地と艦隊はヤマトが撃破したと言うが、まだ残党が潜んでいるかもしれないからな、気をつけろ」
「はい」
中嶋家の玄関先で良馬とリニスは中嶋家の皆とギンガ、紅葉に別れを告げていた。
「良馬さん、そろそろ‥‥」
中嶋家の前に迎えの車が来たのを確認したリニスは良馬に出発を促す。
「ああ、それじゃあ‥‥」
良馬が家を出ようとした時、
「待って下さい」
ギンガが良馬を呼び止めた。
「コレを持って行ってください」
ギンガは待機状態のデバイスを良馬の首に下げた。
「コレは?」
「私の大切なお守りです。良馬さんが無事に帰って来れるようにと‥‥」
「でも、大切な物なら君が持っていた方が‥‥」
「危険かもしれない場所へ行く良馬さんだからこそ、持って行って欲しいんです」
「分かった。ありがとう」
良馬はギンガから待機状態のデバイス(お守り)を受け取って、車に乗り込み宇宙船ドックへと向かった。
ギンガが自分の大切な相棒(デバイス)をお守りと偽って渡した理由は、少し時間をさかのぼる。
あの夜の一件依頼、ギンガとリニスは互いにシフトを組みながら良馬と就寝しているが、ある日、ギンガは思い切って、良馬が夜、魘されていた事実を源三郎に打ち明けた。
すると、源三郎は、薄々そんな事なんじゃないかと思っていた。
そしてギンガに
「恐らくアイツは死にたいのだろう」
と、今の良馬の心中を察した。
「戦友や部下を大勢亡くしたのに自分一人が生き残っている事に罪悪感を感じているんだろうなぁ‥‥だが、自分一人のエゴの為、三笠の乗員も道連れにすることも出来ず、親友から託された紅葉ちゃんの事もあって死ぬに死ねない原因なのだろう。そんな板ばさみ状態で奴は今、物凄く苦しんでいる」
「そんな‥‥」
「だが、何とか奴に生きる糧を与えれば、奴は立ち直るだろう。紅葉ちゃんだけでは、まだまだ足りない様だ」
源三郎の話を聞き、自分を助けてくれた彼の為にも何か彼の役立ちたいと言う思いから、ギンガは彼に自分の大切な相棒(デバイス)を託したのだ。
待機状態のデバイスには母の形見であるリボルバーナックルも収納されている。
きっと母が彼の事を守ってくれるとそう信じていたのだ。
三笠は地球を出発すると、土星圏へと向かった。
土星は太陽から六番目の惑星で、太陽系の中では木星に次いで二番目に大きな惑星である。
平均半径は地球の約九倍に当る。
平均密度は地球の1/8に過ぎないため、巨大な体積のわりに質量は地球の95倍程度である。
内部には鉄やニッケルおよびシリコンと酸素の化合物である岩石から成る中心核があり、そのまわりを金属水素が厚く覆っていると考えられ、中間層には液体の水素とヘリウムが、その外側はガスが取り巻いている。
惑星表面は、最上部にあるアンモニアの結晶に由来する白や黄色の縞が見られる。金属水素層で生じる電流が作り出す土星の固有磁場は地球磁場よりも若干弱く、木星磁場の1/12程度である。
外側の大気は変化が少なく色彩の差異も無いが、長く持続する特徴が現れる事もある。風速は木星を上回る1800km/hに達する。
土星の大きな特徴は恒常的な輪を持ち、9つが主要なリング状、3つが不定的な円弧である。
これらはほとんどが氷の小片であり、岩石のデブリや宇宙塵も含まれる。
その周りには多数の衛星があり、今回、三笠が向かっているタイタンは土星の衛星の中では最大で太陽系全体でも2番目に大きな衛星(一番は木星の衛星ガニメデ)であり、水星よりも大きく、衛星としては太陽系でただひとつ有意な大気を纏っている。
土星衛星タイタンに到着した三笠は早速、採掘用の重機を降ろし、採掘作業へと移った。
その最中、タイタンの地でガミラス軍のデラメヤ級強襲揚陸艦とサルバーS-Ⅵ型重戦車が発見された。
ヤマトとの陸戦の後、乗っていたガミラス兵は全員斃されたが、乗ってきた艦はそのままの状態で放置されていたのだ。
地球側としてはガミラスの技術を知る格好のサンプルでもあり、さらに強襲揚陸艦と言う事で艦内には収納スペースもある事から武装輸送艦としても使えると判断し、この艦を鹵獲した。
これが、地球人類がはじめて無傷で鹵獲したガミラス製の艦だった。
採掘作業と鹵獲したガミラス艦の調査が行われている中、良馬は三笠に搭載したコスモゼロで宇宙駆逐艦、雪風の不時着地点まできていた。
ガミラスの攻撃により、船体はボロボロになり、太陽の熱が届かないため、船体を厚い氷で覆われた雪風に対し良馬は黙祷を捧げた。
近くには古代が作ったとされる雪風乗員の墓と思しきモノもあり、良馬はそこにも黙祷を捧げた。
三笠の収納スペース、そして鹵獲したガミラス艦にも採掘をしたコスモナイトやその他の宇宙金属を満載した船団はタイタンを後にし、一路地球への帰還行動へと入った。
そして、木星軌道を過ぎた時、先行していた鹵獲艦のレーダーが木星のアステロイドベルトから船団に接近してくる艦影を捉えた。
鹵獲艦は発光信号にて、護衛の三笠に不明艦接近の報を知らせる。
「流石、ガミラス製のレーダーだ、地球のモノとは性能が違う。それで?艦種は?」
「ケルカピア級航宙高速巡洋艦です!!数は‥‥一隻です!!」
(冥王星ガミラス軍基地の残党の残党か‥‥本星に帰る事も出来ず、孤立無援の中、こうしてゲリラ戦をしかけつつ、味方を待っているのか、それとも死なば諸共‥‥か)
敵の心情を察するも真実は分からない。
兎も角、今、三笠の任務は無事この船団を‥‥採掘した物資と鹵獲艦を地球へ届ける事。
しかし、ケルカピア級航宙高速巡洋艦一隻とは言え、今の船団には十分脅威であった。
「副長、此処は任せる」
「えっ?艦長?」
「俺はコスモゼロで出る。少しでも距離と時間を稼ぐ」
「し、しかし艦長」
「大丈夫だ、副長」
三木の制止を振り切り、良馬は格納庫へと向かった。
そして、対艦装備をしたコスモゼロで出撃した。
敵は当初、船団を撃沈しようとしたがコスモゼロが上手く相手を挑発し敵は船団よりもまずは先にこの目障りな艦載機(ハエ)を撃ち落す事にした。
しかし、良馬も古代 守と並ぶ優れたパイロットセンスを有しておりそう簡単に撃墜されることは無かった。
だが、船団から離すために挑発で撃った対艦用のミサイルもあと両翼にそれぞれ一発ずつを残すのみとなった。
(くっ、このままじゃあ‥‥)
ジリ貧になりかけている戦況に良馬は歯を喰いしばる。
そして、
「‥‥高町‥‥すまない。お前との約束はどうやら守れそうにない‥‥」
そう、呟くと敵の艦橋へ猛スピードで突っ込んでいった。
突っ込んでいく間、良馬の脳裏に、過去の出来事が蘇る。
之が走馬灯と言うヤツなのだろうか?
そう思っていると、
「良馬さん!!」
ギンガの声が聞こえた。
此処いる筈のないギンガの声が‥‥
その声を聞いた途端ハッと我に返る良馬。
目の前には敵巡洋艦の艦橋がある。
この至近距離‥‥
しかも、場所が艦橋ならば‥‥
「喰らえ!!」
良馬は装備されていた対艦ミサイルの発射ボタンを押し、操縦桿を思いっきり、左上へと捻る。
その直後、ミサイルは敵巡洋艦の艦橋に命中し、敵の巡洋艦は忽ち爆発と炎に包まれた。
「えっ?」
爆沈する敵の巡洋艦を見ていた良馬の下に、奇妙な通信が舞い込んだ。
通信の発信元は目の前で沈んでいく、敵の巡洋艦で内容は分からなかったが、ガミラス人の悲痛な叫び、嘆きが聞こえた。
おそらく故郷の両親や恋人の名前を叫んでいるのだろう。
これまでガミラス人は悪魔か獣、エイリアンの類だと思ってきたが、この時、良馬はガミラス人もまた人間なのだと知った。
爆沈する巡洋艦に敬礼し、良馬は無事に三笠へと戻った。
コスモゼロは最後のミサイル攻撃の衝撃で機体が少し変形して、応急修理となった。
コックピットから降り、整備員がコスモゼロの応急修繕をしている中、良馬はギンガから出発時に渡されたお守り(デバイス)をジッと見ていた。
あの時、確かにギンガの声が聞こえた。
それは間違いなかった。
しかし、ギンガのお守りは何も言わず淡い紫色の輝きを放っているだけだった。
その後、無事に地球へ帰還した良馬は敵艦の鹵獲、船団護衛と敵巡洋艦を撃沈した功績により、昇進した。
2199ではタイタンの戦いでデラメヤ級強襲揚陸艦とサルバーS-Ⅵ型重戦車はヤマトとコスモゼロの攻撃で撃破されましたが、旧作では乗員は古代の手によって斃されましたが、ガミラスのパトロール艇と戦車はそのままタイタンに放置されたままだったので、艦種は2199、展開は旧作の流れとなっております。