星の海へ   作:ステルス兄貴

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百七十二話 ルダ王女

 

 

デスラーからの情報提供を受け、地球そっくりだと言われた惑星ファンタムへとやってきたヤマトとまほろば。

 

調査をしてみると大気の組成、惑星の大きさ、自転周期、重力など惑星ファンタムはまさに第二の地球と言える惑星であった。

 

ヤマト、まほろばの乗員たちはようやく見つけた第二の地球とも言える惑星の発見に歓喜するが、良馬、ギンガ、リニス、そしてアナライザーは惑星ファンタムに対して懐疑的な思いがあった。

 

そして、アナライザーは惑星ファンタムの地上調査を行わせないために暴れるも乗員たちの手により身柄を拘束されてしまう。

 

アナライザーが暴れた理由は、ヤマトのコンピューターの全てが『惑星ファンタムは地球とそっくりな惑星』という結果にロボットながら不信感を抱いたからだ。

 

アナライザーだけが異なる結果を主張した事から電子頭脳に異常があるのではないかと疑われ分解されそうになったが、そこを佐渡が通りがかりアナライザーの身請け古代たちは惑星ファンタムへの地上調査へと向かう。

 

実際に惑星ファンタムの地上を調査してみると宇宙から探査衛星で得たデータよりも詳しいデータが得られ、結論から惑星ファンタムは第二の地球と成り得る惑星と言う結果が得られるも調査をしていた古代たちの前に異星である惑星ファンタムでありえない人物や建造物の幻が出現する現状が起きた。

 

幻が出現する原因を調査するも調査メカには原因を解明できず、この星の情報提供をしたデスラーに訊ねるも、デスラー自身惑星ファンタムに幻が出現する事を知らなかった。

 

そこで、ガルマン・ガミラスでも惑星ファンタムの調査を念入りに行うことを決め、地質学のベテランであるヘルマイヤーを惑星ファンタムへと派遣した。

 

古代たちの方でも幻が出現する原因を調査しようとする中、唯一異なる結果を導き出したアナライザーならば何かわかるかと思いアナライザーを惑星ファンタムに来てもらおうとするが、アナライザーは医務室にて酔いつぶれていた。

 

アナライザーが酔いつぶれて起きる気配がなく、調査が行き詰るかと思った中、古代は良馬がアナライザー同様、惑星ファンタムへの地上調査に消極的だったことや過去にトチローに変装した敵の変装ロボットを見抜いた事から良馬に惑星ファンタムの調査を依頼した。

 

そして、法術にて良馬は惑星ファンタムの正体を突き止めた。

 

ちょうどその時にガルマン・ガミラスから惑星ファンタムへやって来たヘルマイヤーが到着した。

 

良馬は惑星ファンタムの正体を古代たちヤマトの乗員、そしてヘルマイヤーに伝えた。

 

良馬が法術で得た惑星ファンタムの正体‥それは星の姿をした生き物‥‥コスモ生命体であった。

 

しかし、ヘルマイヤーは科学者としてのプライドからか自分で立証すると意気込んで惑星ファンタムの地中へ調査ドリルを打ち込む調査を行うと言い出す。

 

コスモ生命体である以上、地中へドリル何て打ち込めば一体どんな事態になるのか分からない。

 

良馬はヘルマイヤーを止めるも彼は良馬の言葉を聞くことはなかった。

 

ガルマン・ガミラスの調査船が調査ドリルを準備している中、

 

「古代艦長‥‥」

 

「はい」

 

「急いで撤収準備をした方が良い」

 

良馬は古代に急ぎファンタムから離れた方が良いと提案する。

 

「撤収‥それはまたどうして?」

 

「さっきも言った通り、ファンタムは惑星に見えるが生き物だ。打ち込まれるドリルがどのくらいの大きさで、地中へどれくらいの深さに打ち込むのか分からないが、それでも十分に危険だ。万が一にもそのドリルがファンタムのコア‥人間で言う心臓にドリルが達して、コアを傷つけたらファンタムが崩壊するかもしれない」

 

「「‥‥」」

 

良馬の仮説に古代も真田も否定できなかった。

 

「ベースキャンプ‥の全てを片付けるには時間がない。最低限の必要なモノを持って撤収した方が良い」

 

「わ、分かりました」

 

まだ惑星ファンタムの正体がコスモ生命体なのかやや懐疑的なところもあるが、万が一、良馬の言っている事が事実の場合、ファンタムの崩壊に巻き込まれる可能性もある。

 

取り越し苦労だったら、また戻ってくればいい。

 

古代たちは急ぎ撤収準備を行った。

 

ベースキャンプ全てを片付けるのは時間的余裕がなかったので、調査結果のデータが記録されているハード・メモリーを調査メカから外してコスモハウンド、上陸用舟艇へと運び込む。

 

勿論、良馬とバトライザーも撤収作業を手伝う。

 

急ぎ撤収準備が進められている中、揚羽が突然、フラフラとまるで夢遊病患者の様にどこかへと歩き出す。

 

「ん?おい、揚羽!!どこに行くんだよ!?まだ作業は終わってないぞ!!」

 

そんな揚羽の様子に気づいた土門が彼に声をかけるが、揚羽はそれを無視しどこかにフラフラと歩いていく。

 

「彼は俺に任せて」

 

「し、しかし‥‥」

 

「土門、ちょっとこっちを手伝ってくれ!!」

 

良馬が土門に揚羽は自分が連れ戻すこと伝える。

 

土門はやや不満そうであったが、坂東が土門に声をかける。

 

時間が限られている中での撤収作業中で、相手は先輩であり他艦とは言え上官なので異議を唱えづらく更には手伝いに呼ばれてしまったので、

 

「分かりました。揚羽の事をよろしくお願いします」

 

と、揚羽の事を良馬に託すしかなかった。

 

「バトライザー、君も撤収作業が終わって俺と揚羽君が戻らなくても待たずに撤収しろ」

 

「‥リョーカイシマシタ」

 

バトライザーも良馬を残して撤収するのは不満があるのかもしれないが、良馬からの命令と言う事で了承した。

 

そして良馬は急ぎ揚羽の後を追う。

 

ただ良馬は揚羽の後を追いながらも、

 

(おい、ファンタム‥揚羽君をどこにやるつもりだ!?)

 

法術によりファンタムに声をかける。

 

(分かっているんだぞ!!お前が特殊な波長で揚羽君を誘い出している事を‥‥目的を話さないと言うのであるならば、俺の法術でお前が送っている波長を消失させることもできるのだが?)

 

揚羽が突然フラフラとどこかに歩き出したのはファンタムが揚羽をどこかに呼び出している事を良馬は既に見抜いていた。

 

そして、自身の法術でファンタムが揚羽に送っている特殊な波長を消失させ、揚羽を正気に戻すことがいつでも可能である事を伝える。

 

すると、

 

(マ、マッテクダサイ。ツキムラサン)

 

ファンタムが良馬に念話で話しかけて来た。

 

(アゲハサンヲヨンデイルノハ、『アルカタ』ヲアズカッテモライタイカラデス)

 

(ある方?)

 

ファンタムが言うにはこの星には自分たちが来る前に誰かが居るみたいだ。

 

(ハイ。クワシイコトハ、ワタクシノモトニキテカラオハナシイタシマス)

 

ファンタムは揚羽をある人の迎えとして選んだみたいであり、彼に危害を加える様ではないが、それでも心配だったので良馬は揚羽を追いかけた。

 

(今、ガルマン・ガミラスがお前さんの身体にドリルを打ち込むみたいだが、大丈夫か?)

 

良馬はファンタムにヘルマイヤーがこれから探査ドリルを打ち込む件について訊ねる。

 

(ガルマン・ガミラスノヒトニ、コノカタヲワタスワケニハイカナイノデ、オヒキトリシテモライマス)

 

(ファンタムは何かする気だな‥‥)

 

ファンタムはガルマン・ガミラス所属のヘルマイヤーがファンタムに来た時から既に危機感を覚え始めていた。

 

(それにしてもガルマン・ガミラスに渡す訳にはいかない人間って誰だ?‥‥?)

 

(まさか、ボラー連邦の要人とかじゃないよな‥‥)

 

ガルマン・ガミラスと敵対している星間国家と言えばまっさきに思い浮かぶのはボラー連邦であったので、ファンタムが匿っている人がボラー連邦の要人なのではないかと思ってしまう。

 

ファンタムはガルマン・ガミラスと自身が匿っている人物との関係がよろしくない事は理解しているみたいだ。

 

そして、ファンタム周辺ではガルマン・ガミラスとボラー連邦がドンパチしている事も恐らくファンタムは理解しているのだろう。

 

そうした関係からコスモ生命体ながらファンタムは銀河系でナニが起こっているのかも知っているのかもしれない。

 

(まだボラー連邦の要人と決まった訳ではないから、ひとまず急ぐか‥‥)

 

ヘルマイヤーが探査ドリルを打ち込もうとしているので、急ぎファンタムが匿っているとされる人の下へと向かう。

 

揚羽と良馬の二人が、ファンタムが匿っているとされる人の下へと向かっている頃、そのヘルマイヤーは探査ドリルの発射準備を着々進めていた。

 

 

ガルマン・ガミラス 調査船 艦橋

 

 

「探査ドリル、打ち込み準備!!」

 

「探査ドリル、回転出力アップ!!」

 

「探査機器全て正常に稼働!!」

 

「探査ドリル、打ち込み準備完了!!」

 

「よし、探査ドリル、打ち込み開始!!」

 

調査船の艦底部にあるハッチが開くとそこから探査ドリルが勢いよく回転しながらファンタムの地面に突き刺さるとそのまま地中へ姿を消す。

 

すると、地球人にとっては地球に‥‥ガルマン・ガミラスの人間にはガルマン・ガミラス本星に見えていた大地が一瞬にして怒り狂ったかのように豹変する。

 

「ど、どうしたんだ!?」

 

「あ、あれはっ!?」

 

ファンタムの大地は植物の様な触毛がまるで生きているかのように広がりながらヤマト乗員たちのベースキャンプとヘルマイヤーの調査船へと迫って来る。

 

「て、撤退だ!!急げ!!」

 

良馬から事前に撤収準備をしていた古代たちは急ぎコスモハウンドと上陸用舟艇へと駆け込む。

 

「脱出だ!!緊急発進!!」

 

ヘルマイヤーが乗艦していた調査船の船体にも触毛が絡んできたが、調査船はエンジンをフルパワーにして船体に絡まって来た触毛を強引に引きちぎって惑星ファンタムの地表から脱出して一気に宇宙空間へと上がった。

 

デスラーから命じられた惑星ファンタムの正体についてはこの豹変した惑星ファンタムの様子と良馬からコスモ生命体であると言う結論が出ている。

 

出来れば自分の手でファンタムの正体を立証したかったが、このままファンタムに残ればどんな事が起きるのか分からない。

 

ヘルマイヤーは自身と調査船の乗員たちの安全の為に逃げるように惑星ファンタムから離脱したのだ。

 

しかし、ファンタムがこの後にどのような変化をするのか地質学者として気になったので、しばらくはファンタム近海で待機して、ファンタムの様子を観察していた。

 

 

平和そのものだった惑星ファンタムの草原は今や草原全体が威嚇する蛇のような姿となり蠢いていた。

 

その様子はまるでギリシャ神話に登場する怪物‥メデューサの頭髪にいる蛇の様だ。

 

古代たちが乗ったコスモハウンドとファンタムの調査に参加したヤマトの乗員たちが乗った上陸用舟艇も無事に惑星ファンタムの地表から離脱することが出来た。

 

「艦長、揚羽を見ませんでしたか?」

 

そんな中、土門が古代に揚羽の行方を訊ねる。

 

「えっ?揚羽?乗っていないのか?」

 

「はい‥‥月村艦長が揚羽の奴を追いかけて行ったんですけど‥‥」

 

土門は最後に揚羽を見た時、彼はフラフラとどこかに歩いて行ったのを良馬が自分の代わりに追いかけて行った。

 

しかし、コスモハウンドの中に揚羽の姿は見えない。

 

「上陸用舟艇の方か?」

 

古代は上陸用舟艇の方に連絡を入れて揚羽が乗っていないかを訊ねるが、上陸用舟艇の方にも揚羽は乗っていなかった。

 

良馬が乗って来た上陸用舟艇もバトライザーしか乗っておらず良馬の姿も見えなかった。

 

「ま、まさか、二人はまだファンタムに!?」

 

良馬と揚羽の姿が見当たらない事に古代は二人がまだファンタムに居るのだと判断した。

 

(事前に月村艦長から警告を受けていたのに‥‥)

 

(あの時、もっと強引にヘルマイヤー少佐を止めておけばよかった‥‥)

 

二人を助け出したいが、豹変したファンタムの様子から今、ファンタムに降りたらどんな危険があるのか分からず、そんな危険が孕んでいるかもしれないファンタムへ、艦長としては乗員を向かわせる訳にもいかない。

 

後悔をしながらもコスモハウンドと上陸用舟艇はヤマトへ帰還し、バトライザーもまほろばに戻った。

 

「相原、まほろばに通信を入れてくれ」

 

「はい」

 

第一艦橋に上がった古代はまほろばの乗員たちに事態の説明をする為にまほろばへ通信を入れた。

 

「そんなっ!?」

 

「艦長がまだファンタムに!?」

 

「‥‥」

 

良馬がまだ惑星ファンタムに居る事を古代から伝えられたまほろばの第一艦橋の乗員たちは絶句する。

 

その中でもギンガは一番ショックを受けていた。

 

ヤマト、まほろばの第一艦橋にあるモニターには現在の惑星ファンタムの地表の映像が映し出されている。

 

惑星ファンタムの地表は触毛で覆われており、当初の自然な姿は一切見えなかった。

 

そんな豹変した惑星ファンタムの様子を一同は沈鬱な表情で見守っている。

 

「月村艦長と揚羽の姿はまだ見つからないか?」

 

「は、はい。まだどこにも‥‥」

 

「この触毛の海では‥‥」

 

「主砲かミサイルを撃ち込んで、触毛を燃やしますか?」

 

南部が触毛ならば、ショックカノンやミサイルを撃ち込めば燃えるかもしれないので、惑星ファンタムの地表へ攻撃をしてみるかと古代に訊ねる。

 

「いや、もし着弾地点に二人が居たら大変だ‥‥くそっ、一体どうしたら‥‥」

 

下手に惑星ファンタムの地表へ攻撃をして着弾地点に良馬と揚羽が居たら二人は一瞬で木端微塵になってしまうので、ファンタムへ攻撃をしたくても出来ない。

 

(もしかして、惑星ファンタムのあの平和な風景の偽装はファンタムを訪れた者を油断させて地表へとおびき寄せ、食料とするための罠だったのではないだろうか‥‥?)

 

良馬からファンタムが惑星の姿をした生き物‥コスモ生命体である事を伝えられた古代は、地球でも獲物を捕らえ、捕食する為に擬態する生物や植物の様にファンタムも平和そうな風景や故郷に似せた幻術を見せて、宇宙からの訪問者を捕食しているのではないかと今の惑星ファンタムの豹変ぶりを見るとそう思ってしまう。

 

その豹変したファンタムの地表では‥‥

 

 

ファンタムから発する周波数と偶然にもマッチした揚羽と彼の後を追う良馬は、触毛がうねる海を歩いていたが、いつの間にか触毛が絡み合う地下道の様な通路を歩いていた。

 

(地下に向かっているのか‥‥)

 

(まぁ、人を隠す定番だな)

 

やがて周囲の様子がまた変わって来た。

 

周囲は碁盤の目の様に区切られ、幾何学的な模様が浮かんでいる。

 

だが、冷たい印象はなく全体的に温かく柔らかい印象を受ける不思議な空間だ。

 

その空間まで来ると、

 

「はっ!?お、俺は‥‥こ、此処は一体‥‥」

 

揚羽は正気に戻った。

 

「あっ、正気に戻った?」

 

そんな揚羽に良馬は声をかける。

 

「つ、月村さん‥‥此処は何処なんですか?」

 

正気に戻った揚羽はこの事態についていけず若干混乱している様だ。

 

まぁ、揚羽のリアクションも無理はない。

 

撤収作業をしていた筈なのに、気づけば訳の分からない空間に居たのだから‥‥

 

(ファンタム、揚羽君に事情を話す‥‥少し待ってくれるか?)

 

(ワカリマシタ)

 

ファンタムには揚羽へ事態を説明する為に少し待ってもらった。

 

「此処はファンタムの地下‥‥恐らくコアの近くだ」

 

「えっ?此処が惑星ファンタム!?」

 

揚羽はあまりにも様子が違い過ぎるファンタムの姿に困惑しながら周囲を見渡す。

 

撤収作業中、ファンタムは地球にそっくりな風景であったが、今自分が居る空間はとても地球にあるような空間ではない。

 

「ああ‥ファンタムの正体は惑星ではなく、惑星の姿をした生き物‥‥コスモ生命体だったんだ」

 

「コスモ生命体!?この星は生き物なんですか!?」

 

ヘルマイヤーにファンタムの正体を話している時、揚羽と土門は傍に居なかったので、ファンタムの正体がコスモ生命体である事を知らず、良馬からファンタムの正体を聞いて揚羽は驚いている。

 

「そうだ。皆がファンタムの地表で見たとされる幻はファンタムが皆に見せていたモノで、それはファンタム自身が宇宙からの脅威から自分の身を守る為のモノだったんだ」

 

「そ、そうだったんですか‥‥それで、何故俺たちは此処に?」

 

「ファンタムが言うには、ファンタムが特殊な波長の信号を送っていたみたいで、その信号の波長と揚羽君の気の相性が良かったみたいで、君はファンタムに此処まで呼ばれたみたいだ。俺は君が突然フラフラと歩き出したので、追いかけたんだ」

 

「ファンタムが言った?それにファンタムは何のために俺を此処へ呼んだんですか?」

 

良馬の説明の所々に疑問を覚えつつもファンタムが何故、自分を此処へ呼んだのか良馬は事情を知っていそうだったので、揚羽はソレを訊ねる。

 

「なんでもファンタムはある人を匿っているみたいで、その人を我々に保護してもらいたいみたいなんだ」

 

「ある人‥‥?一体誰なんですか?」

 

「それはまだ分からない。この先で待っているみたいだ。とりあえず行ってみよう」

 

「は、はい」

 

此処までの説明を終えた良馬は揚羽と共にファンタムが匿っている人の下へと向かう。

 

「ん!?」

 

「何だ!?あれはっ!?」

 

ファンタムのコア空間を進んで行くと、空間の中央部に網目の様なモノが張り巡らされた繭の様なモノが鎮座していた。

 

「アゲハサン、ツキムラサン、ヨウコソ」

 

すると繭が青白く点滅しながら言葉を発した。

 

「ま、繭から声が!?」

 

「おそらくアレがファンタムの本体だ」

 

「あ、アレが‥‥」

 

ファンタムは念話ではなく、直接声を発して二人に話しかけて来たのだ。

 

揚羽はこの現象に驚いていたが、念話でファンタムと話してきた良馬は大して驚く事は無かった。

 

「あ、あんたが‥ファンタム‥‥なのか?」

 

事前に良馬から惑星ファンタムが惑星の姿をした生き物‥コスモ生命体である事を知っていたとは言え、あまりにも非現実的な現象であった。

 

揚羽はこの声を発するモノがファンタムなのかを訊ねる。

 

「ハイ。ワタシガ、ワクセイファンタムノ、チュウシンセイメイタイデス」

 

この点滅している繭がファンタムの心臓であり脳みたいだ。

 

「月村さんから聞いたが、俺たちに誰かを会わせたいって‥‥」

 

「ソノトオリデス」

 

「ファンタム、アンタが匿っている人って一体誰なんだ?」

 

良馬がファンタムに誰を匿っているのかを訊ねる。

 

「ワタシガカクマッテイルノハ、『ルダ王女』ヲアナタガタニアズカッテイタダキタカッタカラデス」

 

「ルダ王女?ファンタムの王女なのですか?」

 

「イエ、ワタシドモノオウジョデハアリマセン。ワタシドモモ、オウジョヲホゴシテカクマッテイタダケニスギマセン」

 

ファンタム曰く、ルダ王女とやらは別の星からファンタムへ来て、ファンタムが保護していたみたいだ。

 

「そのルダ王女は何処の星の王女なんですか?」

 

「まさか、ボラー連邦‥‥ではないよな?」

 

「ルダオウジョハ、シャルバートセイノオウケノチヲヒクオカタデス」

 

「「シャルバート星!?」」

 

ファンタムの回答に思わず良馬も揚羽も驚いた。

 

「シャルバート星‥‥本当にあったんだ‥‥」

 

「驚いたな‥‥シャルバート星は実在するのか‥‥」

 

一説にはシャルバート星は地球で言うアトランティスやムー大陸の様にその存在自体があやふやで、本当は存在しないのではないかと言われていたが、ファンタムが保護して匿っている人物はそのシャルバート星の王女であることからシャルバート星は実在するみたいだ。

 

「シャルバート星は何処にあるのですか?」

 

揚羽がファンタムにシャルバート星の場所を訊ねる。

 

シャルバート星の王女を保護しているのだから、ファンタムはシャルバート星の場所を知っていると思った。

 

しかし、

 

「ワカリマセン。シャルバートセイノバショヲシッテイルノハ、ルダオウジョダケデス」

 

ファンタムはあくまでもシャルバート星の王女を保護して匿っていただけなので、シャルバート星の座標は知らなかった。

 

そして、ファンタムはルダからシャルバート星の場所を聞いたりはしなかったみたいだ。

 

「しかし、何故我々にその王女を託すんですか?」

 

揚羽は自分たちにシャルバート星の王女を預ける理由を訊ねる。

 

「それは多分、ガルマン・ガミラスにファンタムの存在を知られてしまったからだと思う‥‥それにファンタムが惑星ではなくコスモ生命体であると言う事も恐らくヘルマイヤー少佐の報告からデスラー総統の耳に入るのも時間の問題だろう‥‥こんなことならヘルマイヤー少佐にファンタムの正体を教えるんじゃなかったな‥‥」

 

良馬はヘルマイヤーにファンタムの正体を教えたことを後悔した。

 

「ソノトオリデス。オウジョハ、ココニイテハ、キケンナバカリカ、ウチュウノキュウセイシュトシテヒヤクスルコトガデキマセン」

 

「宇宙の救世主?」

 

「ソウデス。キュウセイシュデス。デスカラ、ゼヒトモ、アナタガタニオウジョヲアズカッテイタダキタイノデス」

 

「でも、どうして我々を選んだのですか?」

 

「アナタガタハ、コノホシニオリテカラ、クサヤハナヲカワイガッテクレテイマシタ‥ソレニキオクヲノゾカセテモライマシタガ、ココヘクルマエニ、シャルバートキョウノシンジャノカタガタヲタスケテイタノデ、ルダオウジョヲタクセルヒトタチデアルトハンダンイタシマシタ」

 

「しかし、そう言われても俺たちには俺たちの事情がありますし‥‥」

 

シャルバート星の王女を託されても自分たちには期限内に第二の地球を探さなければならない使命がある。

 

ファンタムがコスモ生命体である以上、ファンタムも第二の地球とは成り得ない。

 

となれば、自分たちは急ぎ艦に戻り、第二の地球を探さなければならない。

 

とは言え、ガルマン・ガミラスにファンタムの正体がバレてしまった以上、ファンタムの言う通り、シャルバート星の王女を此処に置いていくわけにもいかない。

 

チラッと揚羽と良馬が繭の中に居るルダを見ると、彼女は悲しげに目を伏せた。

 

(ん?あの子は‥‥)

 

ルダを改めてまじまじと見てみると、揚羽は彼女の容姿が草原で見たあの少女であることに気づいた。

 

「それで何故、シャルバート星の王女が此処に?」

 

揚羽がルダの事を見つめている中、良馬はファンタムにルダがシャルバート星ではなくファンタムに居る理由を訊ねる。

 

「ソレハデスネ‥‥」

 

ファンタムは良馬と揚羽にルダがファンタムへ来ることになった理由を話し始めた。

 

 

ファンタムにて良馬と揚羽がシャルバート星の王女であるルダと邂逅している時、ガルマン・ガミラス本星では‥‥

 

 

ガルマン・ガミラス本星 デスラーパレス デスラーの居室

 

「なに!?コスモ生命体だと!?」

 

「は、はい」

 

良馬の予測通り、ファンタムから離脱したヘルマイヤーはデスラーにファンタムの正体を報告していた。

 

「むぅ~‥‥キーリング!!」

 

「はっ!!」

 

「このデスラーと我が帝国に泥を塗ったファンタムを許す訳にはいかん!!古代たちがファンタムを去った後、ファンタムを破壊しろ!!」

 

自信をもって伝えた惑星ファンタムが実は地球そっくりな星ではなく幻影を見せるコスモ生命体であった事に憤慨したデスラーはファンタムの破壊命令を下す。

 

「はっ!!北部方面艦隊のグスタフ中将に出動を命じます!!」

 

キーリングはファンタムに近い戦線の艦隊へファンタム破壊の命令を伝えた。

 

デスラーがファンタムを破壊することを決めた事を知り由もなく、ヤマト、まほろばはファンタムの上空で待機を余儀なくされた。

 

第一艦橋のパネルをジッと凝視しても良馬と揚羽の姿を確認する事が出来ない。

 

そんな中、ギンガはある可能性に賭けてみた。

 

「副長」

 

「ん?何かしら?通信長」

 

「ファンタムに通信を送ってみてはどうでしょう?」

 

「えっ?ファンタムに通信を?」

 

「はい。ファンタムはコスモ生命体と言う生き物であるならば‥‥私たちの言葉を理解する事が出来るなら、通信を送れば何かしらの返答をしてくれるかもしれません」

 

「そうね。やってみて頂戴」

 

「はい」

 

ギンガはファンタムに向けて通信波を送信し始めた。

 

「それから砲雷長」

 

「はい」

 

「万が一の事を想定して、戦闘の用意はいつでも出来るようにしておいて」

 

「は、はい」

 

「ん?あっ、副長待って下さい!!」

 

「えっ?」

 

「あそこに!!」

 

パネルを見ていた永倉がある箇所を指さす。

 

そこには良馬と揚羽、そして見知らぬ一人の少女の姿があった。

 

「副長、ヤマトの方でも艦長の姿を確認したみたいで、ヤマトの方で救助するみたいです」

 

「分かりました。では私たちは艦長の帰りを待ちましょう」

 

良馬の無事とヤマトから救命艇がファンタムへ向かうのを確認したまほろばの艦橋メンバーはホッと胸を撫で下ろした。

 

ヤマトからの救援を待っている中、

 

「ルダ王女の事は揚羽君に任せるよ」

 

「えっ?」

 

良馬はルダの一件を揚羽に一任した。

 

「ど、どうしてですか?」

 

若干狼狽えながらも揚羽は理由を訊ねる。

 

「元々、ファンタムがコアに呼んだのは揚羽君だったみたいだし、今回の航海の主役はヤマトであり、まほろばはその護衛だからね」

 

「は、はぁ‥‥」

 

若干煮え切らない感じではあるが、揚羽はルダの件を了承した。

 

やがて、ヤマトの救命艇が見えて来るとファンタムの触毛は三人を優しく持ち上げる。

 

まほろば、ヤマトの一同がパネル越しにその様子を凝視していると、救命艇は触毛の助けを借りて無事に三人を収容することが出来た。

 

「救命艇よりヤマトへ、まほろばの月村艦長、揚羽隊員、他一名の収容を完了しました」

 

「よし、直ちに帰還せよ」

 

「了解」

 

救命艇の窓からはファンタムの触毛がまるでルダとの別れを惜しむかのように手を振っているかのように見えた。

 

ファンタムの触毛の群れに見送られ、救命艇はヤマトへと向かう。

 

良馬と揚羽の無事な姿を確認出来、ホッとしたのはヤマトの乗員たちも同じで、

 

(やれやれ、心配したが、ファンタムは我々に敵意を持ってはないようだ‥‥)

 

探査ドリルを打ち込まれた時、ファンタムの触毛は自分たちに襲い掛かって来る様に見え、しかもその形状から食虫植物みたいに見えたので、ファンタムに残された二人のみを案じるのも当然であった。

 

ヤマトに戻った救命艇は揚羽とルダの二人を降ろした後、もう一度ヤマトを発進し、まほろばへと向かい、良馬を降ろした後でヤマトへと戻った。

 

ヤマト艦内の中央作戦室にて古代、真田、雪が待っていると、ルダをエスコートして来た揚羽が事情を説明する為にやって来た。

 

「揚羽武、ただいま帰還しました。ご心配をかけ、申し訳ございません」

 

揚羽は古代たちに一礼し、古代は頷き揚羽を迎える。

 

「それで、そちらの方は?」

 

古代は揚羽の後ろに居る少女について訊ねる。

 

「この人はシャルバート星のルダ王女です」

 

「シャルバート星の王女!?」

 

「シャルバート星は実在するのか!?」

 

ファンタムのコアでルダと初邂逅した時の良馬と揚羽同様、古代たちもルダがシャルバート星の王女である事に驚く。

 

揚羽から紹介をされたルダは貴族らしい気品のあるお辞儀をする。

 

シャルバート星の王女と言うのは、間違いないようで、彼女からはイスカンダルの女王であるスターシアと同じ気品を感じる。

 

「ヤマト艦長の古代進です」

 

「同じくヤマト副長兼技師長の真田志郎です」

 

「同じく生活班班長の森雪です」

 

ルダに自己紹介をした後、何故シャルバート星の王女がファンタムに居たのか?

 

その事情を訊ねる。

 

「しかし、何故シャルバート星の王女がどうしてファンタムに居たんだ?」

 

「ルダ王女はファンタムに保護されていたんです」

 

「保護?」

 

「はい。実はルダ王女はボラー連邦の手によって惑星ファンタムへ流刑にされていたみたいなんです」

 

「流刑‥‥」

 

「はい。ボラー連邦の連中にはファンタムが極寒の氷ばかりの星に見えたので、流刑地として丁度いい様に見えたのかもしれません」

 

「ところが、事実は惑星ファンタムの温かい自然に保護され、匿われていたと言う事だな?」

 

「はい」

 

真田の見解に揚羽は頷く。

 

「分かった。詳しい事は後で伺うことにして、ひとまずルダ王女は休ゆっくり休んで下さい。雪、頼む」

 

「はい」

 

古代はルダのお世話係に同性である雪を指名し、

 

「それから揚羽」

 

「はい」

 

「お前は以後、ルダ王女の護衛に任命する」

 

「は、はい」

 

ルダ王女のボディーガード役に揚羽を指名した。

 

(月村艦長の言う通り、地球への報告をいれなくて良かった‥‥)

 

良馬が古代に対してファンタムが第二の地球になりうる星なのかどうかについて、最終探査が終わってから報告した方が良いと言っていたので、古代は地球へファンタムについての報告を入れていなかった。

 

もし最初の衛星調査の結果を地球へ報告した後で、ファンタムがコスモ生命体で地球人類の移住に適さないと追加報告を入れていたら、藤堂を始めとして、地球に居る大勢の人々をぬか喜びさせている所であった。

 

 

まほろばでも良馬が第一艦橋へと戻ると、ファンタムで一体何があったのかを艦橋メンバーに説明をした。

 

「シャルバート星の王女がファンタムに!?」

 

「それ以前にシャルバート星って本当にあったんですね」

 

「ああ、二重の意味で驚いたよ。それで今、ルダ王女はヤマトの方で保護されている」

 

(問題なのはヘルマイヤー少佐にルダ王女の姿を見られていないかだ‥‥)

 

(伝説とされるシャルバート星の存在はルダ王女が実在した事で、星自体も存在する証明となってしまった‥‥)

 

(宇宙制覇を目標としているガルマン・ガミラスならば、当然シャルバート星の技術と兵器は喉から手が出る程欲しがる筈だ)

 

(ファンタムもシャルバート星の座標は知らなかった‥‥シャルバート星の位置を知るのはルダ王女だけ‥‥)

 

(もし、ヘルマイヤー少佐にルダ王女の存在がデスラー総統の耳に入れば、ルダ王女を手に入れるために艦隊を派遣してくる可能性が高い‥‥)

 

(そうなれば、ガルマン・ガミラスと‥‥デスラー総統と敵対する事になる‥‥)

 

(それにルダ王女をファンタムに流刑にしたのはボラー連邦だ‥‥)

 

(そのボラー連邦がルダ王女の生存を知れば、ガルマン・ガミラスとボラー連邦もルダ王女を狙ってくるだろう‥‥)

 

(そもそも、ボラー連邦はルダ王女を捕らえた時にシャルバート星の位置を尋問しなかったのか?)

 

(いずれにせよ、今後の航海はガルマン・ガミラスとボラー連邦の三つ巴の戦いに巻き込まれる可能性が高くなるな)

 

良馬はルダ王女を抱えての今後の航海に暗雲を覚える中、

 

「艦長、ヤマトから通信で次の惑星探査宙域へ向かうようです」

 

ヤマトから入った通信をギンガが報告する。

 

「やはり、ファンタムは移住候補には無理だったか‥‥」

 

この宙域から離れると言う事で良馬はファンタムが地球人類の移住には適さない星なのだと判断した。

 

「コスモ生命体であり、幻を見せるのではな‥‥」

 

井上もファンタムが移住に適さない星なのも無理はないと首を振る。

 

「はぁ~‥あの星が第二の地球だったら良かったのになぁ~」

 

フェリシアもファンタムが第二の地球と成れなかった事に対して残念そうに呟く。

 

「まぁ、愚痴ったところで仕方がない。新しい星探しに行くぞ。出航準備」

 

出航準備が整うとファンタムからヤマト、まほろばからゆっくりと動き出す。

 

第一艦橋のパネルには次第に遠ざかって行くファンタムの姿が映し出される。

 

「あっ、ファンタムの姿が‥‥」

 

一同の眼前で、触毛の海だったファンタムの姿は見る見るうちに地球の姿へと変化し始めた。

 

ファンタムなりの激励のつもりなのだろう。

 

ファンタムを背後にヤマト、まほろばが次の探査惑星の宙域を目指して航行していると、別方向の宙域に複数のワープアウト反応があった。

 

「右舷後方にワープアウト反応多数‥‥艦隊反応です。艦隊はファンタムへ接近しています」

 

「艦籍は?」

 

「‥‥ガルマン・ガミラスです」

 

「ガルマン・ガミラス?何故、ガルマン・ガミラスの艦隊がまたファンタムへ‥‥?」

 

「‥‥」

 

(まさか、ルダ王女を狙って来たのか‥‥?)

 

新見は何故、ガルマン・ガミラスの宇宙艦艇‥しかも艦隊を派遣してきた理由に疑問を覚えている様子だが、良馬はヤマトに居るルダを奪いに来たのかと思った。

 

ヤマトでもガルマン・ガミラス艦隊の存在はレーダーで捕捉したが、その目的に対して新見同様、困惑していた。

 

しかし、それから直ぐにガルマン・ガミラス艦隊のファンタム来訪の目的を一同は知る事になる。

 

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