星の海へ   作:ステルス兄貴

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ベムラーゼの性格上、折角捕らえたルダ王女からシャルバート星の情報を聞かずにファンタムへ流刑にするとはちょっと考えにくかったので、ルダをファンタムへ流刑にしたのはベムラーゼの前任者と言う設定となっております。

後半部分、ユーノたちが遺跡調査を行った世界の名称はOVA版『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』にて起きた惨劇の地であるバシュタールから採用しました。


百七十三話 さらば幻の星・遺跡調査

 

 

惑星ファンタムは当初、その大きさ、重力、大気の組成、自転周期が地球とそっくりな惑星であり、第二の地球と成り得るかもしれない惑星であった。

 

しかし、地表探査を行ったヤマトの乗員たちの前に次々と本来であるならば、異星である惑星ファンタムではあり得ない人物、建造物等の幻が出現した。

 

そこで、良馬が法術により調査をしてみた所、惑星ファンタムは惑星の姿をした生き物‥コスモ生命体であることが判明した。

 

惑星ファンタムの調査を命じ現地へ派遣したヘルマイヤーより、惑星ファンタムがコスモ生命体である事を知ったデスラーは大激怒し、北部方面艦隊所属のグスタフにファンタムの破壊命令を下した。

 

ファンタムがコスモ生命体である事以外にファンタムには、もう一つの秘密があった。

 

それは、ファンタムのコアにシャルバート星の王女であるルダがボラー連邦・ガルマン・ガミラスからバレないよう密かに匿われていた事だ。

 

ファンタムはその王女、ルダを地球人に託した。

 

ルダがヤマトに乗艦し、再び第二の地球の探索を行おうとした時、デスラーの命令を受けたグスタフが率いる艦隊がファンタム近海に姿を現した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「っ!?」

 

ヤマトに保護され、用意された女性士官予備室にて、雪と共に居たルダはハッと顔を上げる。

 

「どうしました?」

 

ルダの様子に気づいた雪が声をかける。

 

「ファンタムに危険が迫っています」

 

「ファンタムに危険?」

 

「はい。ファンタムがガルマン・ガミラスの艦隊に狙われています。早く艦長に‥‥古代さんに伝えて下さい」

 

「分かりました」

 

ルダの護衛として控えていた揚羽が急ぎ第一艦橋へと上がる。

 

部屋に残ったルダは祈るように手を組み、雪はそっと彼女の手に自らの手を重ねる。

 

しかし、雪がルダへかける言葉が見つからなかった。

 

ヤマト、まほろばが突如出現したガルマン・ガミラスの艦隊にどう対処すれば良いのか困惑していると、ヤマトの第一艦橋に揚羽が息を切らせながら入って来た。

 

「艦長!!」

 

「どうした?揚羽」

 

「ファンタムがガルマン・ガミラスの艦隊に狙われているそうです!!ルダ王女がそう言っていました」

 

「なに!?ルダ王女が!?」

 

「はい!!艦長、ガルマン・ガミラスの艦隊に攻撃中止を伝えて下さい!!」

 

「くそっ、やっぱりそうだったのか‥‥」

 

真田が大きくうめいた。

 

「分かった。相原、ガルマン・ガミラスの艦隊旗艦に通信を繋いでくれ」

 

「了解」

 

相原は急ぎガルマン・ガミラスの艦隊旗艦へ通信を入れた。

 

その頃、デスラーからファンタムの破壊命令を受けたグスタフは自身の乗艦に装備されている惑星破壊ミサイルの発射準備をしていた。

 

「惑星破壊ミサイル発射用意!!目標、惑星ファンタム」

 

「了解、惑星破壊ミサイル発射用意。目標、惑星ファンタム」

 

「ん?‥グスタフ司令、宇宙戦艦ヤマトより司令官宛てに通信が入っております」

 

「ヤマトから?よし、繋げ」

 

「はっ!!」

 

通信士がヤマトとの通信回線を開くと艦橋にあるパネルに古代の姿が映し出される。

 

ヤマトがガルマン・ガミラスの艦隊旗艦へ通信を送っている事はまほろばでも傍受が出来た。

 

「艦長、ヤマトがガルマン・ガミラスの艦隊旗艦へ通信を送っています」

 

「分かった。こちらもパネルに投影して艦隊旗艦へ通信を入れられるようにしておいてくれ」

 

「了解」

 

ギンガが通信機器を操作するとまほろばの第一艦橋にあるパネルに古代、そしてガルマン・ガミラスの艦隊司令官であるグスタフの姿が映し出され二人のやり取りを見る。

 

「ガルマン・ガミラス北部方面第七艦隊司令官のグスタフだ。それで、わざわざ通信を入れてくるとは一体何用だ?」

 

グスタフは古代に通信を送ってきた要件を訊ねる。

 

「宇宙戦艦ヤマト艦長の古代進です。グスタフ司令に要望します。惑星ファンタムへの攻撃を中止してください」

 

「なに!?攻撃を中止しろだと!?」

 

古代の要望にグスタフは思わず声が裏返る。

 

古代とグスタフとの通信を聞いた良馬は、

 

(あの艦隊の狙いはファンタムの方か‥‥)

 

(ルダ王女を狙って来た訳ではなさそうだが、ヘルマイヤー少佐はルダ王女の存在を確認できなかったみたいだな‥‥)

 

グスタフの狙いがルダではなく、ファンタムである事が古代とのやり取りで判明したので、ヘルマイヤーはデスラーにファンタムがコスモ生命体である事を伝えたが、ルダの存在は確認できなかったのだと良馬はこの時はそう思っていた。

 

その間も古代はグスタフへファンタム攻撃中止を要望していた。

 

「重ねて要望します。惑星ファンタムは貴方たちが思う様な危険な星ではありません!!」

 

「グスタフ司令、私からも要望します」

 

良馬も古代と共にグスタフへ、ファンタムへの攻撃中止を要望する。

 

「貴官は?」

 

「地球連邦、防衛軍所属。宇宙戦艦まほろば艦長の月村良馬です。自分からも重ねてファンタムへの攻撃の中止を要望致します」

 

「我々はデスラー総統からの命令を受けて出撃したのだ!!地球人である貴官らの命令を受ける理由は無い!!」

 

「グスタフ司令の言う事は分かっております。ですから我々は命令ではなく要望をしているのです」

 

「もし、グスタフ司令が攻撃を撤回できないと言うのであるならば、私がデスラーと直接話をしますので、ファンタムへの攻撃を少し待ってください」

 

「ファンタムへの攻撃命令を受けたと言う事はデスラー総統からファンタムについては聞いている筈です。ファンタムはあのような姿ではありますが、生き物なのです。そして、コスモ生命体は、もしかするとこの宇宙でファンタムが最後の生き残りの可能性もあります。そんな貴重な生物を一個人のプライドの為に絶滅させるのはあまりにもエゴが過ぎます」

 

古代と良馬が必死にグスタフを説得するが、

 

「御二人の要望は理解したが、我々はデスラー総統から命令の変更を受けない限り、当初の任務を果たすまでです!!」

 

「ですから、デスラーとは私が話をします!!なので‥‥」

 

「古代艦長、月村艦長、これ以上の申し出は地球からのガルマン・ガミラスに対する内政干渉と見なしますぞ!!」

 

「な、内政‥‥」

 

「干渉‥‥」

 

グスタフから内政干渉と言われてはこれ以上、彼にファンタムへの攻撃中止を強くは言えなくなる。

 

「その通りだ。では失礼する」

 

そして、グスタフは一方的に通信を切ってしまった。

 

「グスタフ司令!!待ってくれ!!」

 

古代は再びグスタフへの通信を試みるも向こうが着信拒否をしているのか、グスタフの姿が再び第一艦橋のパネルに現れる事は無かった。

 

「あっ、ガルマン・ガミラスの艦隊より大型のミサイルが!!」

 

「なにっ!?」

 

グスタフが座乗している艦からファンタムに向けてプロトンミサイルが放たれた。

 

プロトンミサイルは一直線にファンタムへと向かって行く。

 

「しまった!!砲撃だ!!あのミサイルを撃ち落せ!!」

 

「だ、ダメです!!もう間に合いません!!」

 

南部の悲痛な声と共に一同はただ、パネルを見ているだけしか出来なかった。

 

「地球がやられる‥‥」

 

揚羽は思わず苦痛の様なうめき声を上げる。

 

この時のファンタムはまだ地球の姿になっていたので、ヤマト、まほろばの乗員たちには地球へ向けてプロトンミサイルが向かっている様に見えた。

 

やがて、プロトンミサイルがファンタムへと着弾すると、

 

「っ!?」

 

ルダは涙を流してその場に崩れ落ち、

 

「ぐっ‥‥」

 

良馬は両手で両耳を抑えながらコンソールの上に突っ伏す。

 

法術を通じてファンタムの悲鳴が聞こえたからだ。

 

(こ、これが死にゆく星の断末魔か‥‥)

 

コスモ生命体とは言え、星一つを破壊する目的のプロトンミサイルの威力には成す術もなくファンタムの大地は引き裂かれ、地表で蠢いていた触毛は燃え尽き大小規模の爆発を繰り返しながらファンタムは大爆発を起こして消滅した。

 

「デスラー‥‥」

 

消滅したファンタムを見て古代は無意識のままデスラーの名を口にする。

 

デスラーの命令を実行したグスタフ艦隊はファンタムの破壊を確認すると再びワープをしてこの宙域から去って行った。

 

ファンタムはヤマト、まほろばを見送る為に地球の姿に変身していたので、プロトンミサイルを受けて破壊された光景は地球がプロトンミサイルの攻撃を受けて破壊された様な光景であったので、地球人であるヤマト、まほろばの乗員たちからしてみれば縁起が物凄く悪かった。

 

「み、ミサイル一発で星が‥‥」

 

今回、初めてプロトンミサイルの威力を目の当たりにしたヤマト、まほろばの乗員たち。

 

永倉は声を殺すようにプロトンミサイルの威力を見て唖然とする。

 

「もし、ガミラスとの時の戦いの時に、あのミサイルが使用されていたら‥‥」

 

「一日で決着がついたのう‥‥」

 

ガミラス戦役時、ガミラスはプロトンミサイルを開発・保有していなかった。

 

もしもガミラスが地球との戦争時にプロトンミサイルを保有していたと思うと地球との戦争は一日で終わっていたかもしれないが、元々ガミラスは地球への移住の為に遊星爆弾を使用していたので、プロトンミサイルを保有していたとしても地球に対して使用はされなかったかもしれないが、それでもあの威力は脅威である。

 

フェリシアも井上も唖然としながらプロトンミサイルの威力に肝を冷やす。

 

 

「‥‥相原、ガルマン・ガミラスへ‥デスラーに通信を入れろ」

 

「は、はい」

 

古代は冷たい声で相原にデスラーとの通信回線を開かせた。

 

「古代か?」

 

「デスラー、何故あのような無法な命令を下した?」

 

古代はデスラーにファンタムの破壊命令の真意を訊ねる。

 

「無法な命令?」

 

デスラーとしてみれば、古代が一体何を言っているのか理解できていない様子だった。

 

「何故、惑星ファンタムを破壊したんだ!?あの星を滅ぼす必要は無かった筈だ!!」

 

「それはどうかな?古代」

 

「何故!?」

 

「惑星ファンタムは私とガルマン・ガミラスに泥を塗った星だ。いや、それだけではない。古代を始めとして第二の地球を探している君たち、そして地球で新たなる故郷となる星を待っている大勢の地球人の信頼を裏切った不埒な星だ。私はそれがどうしても許せなかったのだ」

 

デスラー古代にファンタムを破壊した理由を述べると通信を切った。

 

「古代、デスラーにはデスラーのプライドがあるんだ。過ぎ去った事は仕方がない。俺たちは俺たちで第二の地球となる星を探そうじゃないか」

 

未だにファンタムの破壊について納得がいかない古代に対して島は割り切って新たな星を探そうと提案する。

 

確かに島の言う通りであり、今更デスラーに抗議したところでファンタムはもう蘇らない。

 

ならば、ここで根に持っているよりも地球で新たに故郷となる星を待っている地球の人々の為に一分一秒でも早く第二の地球となる星を見つけなければならない。

 

「そうだ。古代」

 

真田も島の意見に同意する。

 

「やりましょう!!艦長!!」

 

「艦長!!」

 

南部と相原も古代に声をかける。

 

「そうだな‥‥これより本艦は第二の地球となる星を探すため、再出発だ」

 

『はい!!』

 

古代の号令の下、ヤマトは発進する。

 

 

「はぁ~あの星が第二の地球となる星だったら、今頃地球は歓喜の渦になっていただろうな~」

 

ファンタムが消滅してしまった今、ヤマト、まほろばは再び第二の地球となる星を探さなければならない。

 

地球にはもう残された時間が少ない。

 

そんな辛い現実と今回の残念な結果にフェリシアはぼやいてしまう。

 

「ぼやいた所で始まらないさ。この先の予定されている調査宙域に第二の地球となる星がある事に期待するしかない。航海長、ヤマトに続くぞ」

 

「了解」

 

ヤマト、まほろばは再び第二の地球となる星の探査へ本来の予定航路へと針路を戻した。

 

 

その頃、ボラー連邦本星では‥‥

 

ボラー連邦本星 首相官邸

 

「なにっ!?ルダ王女だと!?」

 

首相官邸にてベムラーゼはハーキンスより、ファンタムにてシャルバート星の王女であるルダがヤマトに収容された報告を受けた。

 

ボラー連邦でもヤマト、まほろばの動向は監視されており、ファンタムにてヤマト、まほろばが待機している間、ハーキンスはファンタムへ密かにスパイ衛星を派遣しており、その動向を監視していた。

 

ヤマト、まほろばの動向が判明しているにもかかわらず、艦隊を派遣しなかったのは、ベムラーゼがハーキンスに艦隊派遣の命令を下していなかったからだ。

 

もし、勝手に艦隊を派遣して再びヤマト、まほろばに敗北するような事があれば、ゴルサコフは自分を庇う事はせずにベムラーゼの怒りを買い、粛清されると判断したハーキンスはスパイ衛星の派遣に留まっていた。

 

そんな中で、派遣したスパイ衛星がファンタムの地表にてルダの姿を捕捉して、彼女の生存確認とヤマトに収容された事実を突き止めこうしてベムラーゼに報告を入れたのだ。

 

「はっ!!確か首相閣下の前任者が何年か前に惑星ファンタムへ流刑にしたシャルバート星の王女です」

 

ルダをファンタムへ流刑にしたのはベムラーゼではなく、ベムラーゼの前の政権の首相であった。

 

「そうか、思い出したぞ!!惑星ファンタムは王女の流刑地であった‥‥」

 

惑星ファンタムの名前を聞いた時からベムラーゼはどこかでその名前を聞いた星だと思っていたが、その時は思い出すことが出来ず、こうしてハーキンスからの報告を受け、ファンタムがルダの流刑地である事を思い出した。

 

「しかし‥あの時の王女が生きていたとは‥‥信じられん‥‥」

 

前政権とはいえ、その頃からボラー連邦における政治運営に関わっていたベムラーゼが過去の記憶から惑星ファンタムの事を引っ張り出すと、報告を受けた際、惑星ファンタムはボラー連邦本星よりも厳しい極寒で劣悪な環境であり、人が住むにはあまりにも過酷な環境の星であった筈だ。

 

そんな環境の星へ、衣食等の生活物資も居住する家もなく、放り出した一人の少女が未だに生存していた事にベムラーゼは信じられなかった。

 

「いかがいたしますか?」

 

仮に何らかの奇跡でルダが今日まで生存していたとして、やはり彼女の故郷であるシャルバート星の技術・軍事力は侮れない。

 

もしもその技術が地球、ガルマン・ガミラスへ流れたりでもしたら、ボラー連邦は一気に窮地へ陥る。

 

現にハーキンスからの報告ではルダはヤマトに収容されているのだから‥‥

 

「もし、事実なら我がボラー連邦の命運に係わる一大事だ。ハーキンス中将、第八打撃艦隊は直ちにヤマトを追跡し、確認せよ。そしてもし、当の人物がルダ王女の場合は即刻引き渡しを要求せよ」

 

「はっ!!」

 

「援軍として我がボラー連邦の第一、第二主力艦隊を派遣する。ゴルサコフ、よいな?」

 

「はっ!!速やかに本国の第一、第二主力艦隊を出動させます!!」

 

ゴルサコフはかつて管理局の武力制裁艦隊を殲滅したバルコム率いる本国の第一、第二主力艦隊をハーキンス率いる第八打撃艦隊の援軍として派遣した。

 

かつて第八打撃艦隊所属のスペース・デストロイヤー部隊を破った事から、たった二隻の宇宙戦艦相手に今回ボラー連邦が派遣した戦力はまさに過剰とも言える戦力であった。

 

「まったく、あの弱腰のエーリッツめ‥‥あの時、ルダ王女を拷問にかけてでもシャルバート星の位置を掴んで入ればこんな面倒な事にはならなかったのだ。やはり奴には国家の主導者としての器も度量も足らなかった訳だな‥‥」

 

折角捕らえたシャルバート星の王女を大した尋問もせず、ファンタムへ流刑にした前任者の事を思い出したベムラーゼは国家元首として自分と前任者との違いを比較した。

 

ボラー連邦でルダの生存確認がされ、ヤマトに対して追跡隊が派遣された時を同じくして、ファンタムへ調査に赴いていたヘルマイヤーの調査船がガルマン・ガミラスへと帰還した。

 

「総統閣下、ヘルマイヤー。只今惑星ファンタムの調査より戻りました」

 

「惑星ファンタムか‥その話は不愉快だ」

 

デスラーとしてはファンタムは自身の面子を潰した星の名なので、彼としてはその名前さえ聞くのも不快であった。

 

「申し訳ございません。ですが、一つだけ気になる事がありまして‥‥」

 

「なんだ?」

 

「惑星ファンタムが我が艦隊から攻撃される寸前、シャルバート星の関係者らしき人物がヤマトに乗り込んだようです」

 

「なに?シャルバート星の関係者だと?」

 

「はい。はっきりと確認はできなかったのですが、その人物が身に纏っていた衣装が、シャルバート教の信者共が崇拝しているマザー・シャルバートの衣装にそっくりでしたので、おそらくシャルバート星でも高貴な地位の人物ではないかと‥‥」

 

ボラー連邦ではファンタムへ流刑にしたのはシャルバート星のルダ王女である事が判明しているが、ガルマン・ガミラス側ではその事を知らず、ヘルマイヤーが展開していた調査衛星で捉えたルダが着ている衣装が、シャルバート教の信者たちが崇拝し、空に姿を浮かべているマザー・シャルバートが身に纏っている衣装と似ていた事からヘルマイヤーはヤマトに乗り込んだ人物がシャルバート星の関係者‥しかもそれなりに地位が高い人物であると判断し、その旨をデスラーへ報告した。

 

「何故、そのことを早く言わない」

 

「も、申し訳ございません」

 

「キーリング!!」

 

「はっ!!」

 

「北部方面艦隊のグスタフ中将を呼び戻して確認させろ!!」

 

「はっ!!」

 

シャルバート星の関係者となれば、放っておくわけにはいかず、デスラーは先ほど、ファンタムを攻撃したグスタフを急ぎ呼び戻してヤマトへ確認に向かわせる旨をキーリングへ命じた。

 

キーリングがグスタフへデスラーの命令を伝達して居る頃、グスタフは後方で待機させていた補給部隊からプロトンミサイルを再装填している頃であった。

 

「グスタフ司令、本国のキーリング総参謀長より通信です」

 

「キーリング閣下から?よし、繋げ」

 

「はっ!!」

 

グスタフが乗艦している艦橋のパネルにキーリングの姿が映し出される。

 

「キーリング閣下、いかがされましたか?」

 

「実は先ほど、ヘルマイヤーより入った情報で‥‥」

 

グスタフは通信回線を開き、キーリングからの要件を聞く。

 

「‥‥と言う訳だ」

 

「分かりました。ヤマトが拒否した場合、攻撃し強制接舷する事になりますが、よろしいでしょうか?」

 

「構わん。頼んだぞ」

 

キーリングはヤマトに攻撃を加えれば、当然地球との関係に亀裂が生じ、地球との同盟締結のために現在、太陽系に居るジュラの心象が悪くなることが予測されたが、この時は、あの伝説の星であるシャルバート星の位置を掴めるかもしれない事にすっかり失念していた。

 

「はい‥‥ヤマトか‥‥フフフ‥‥相手に取って不足無し‥‥」

 

ガルマン星出身のグスタフはヤマトと戦ったことは無かった。

 

しかし、ガミラス出身の軍人からヤマトの実力は聞いていた。

 

そしてファンタムで出会った際、武人としてヤマトと戦ってみたいと言う思いはあった。

 

だが、ファンタムの時はデスラーからの命令を受けていた為にそちらを優先したが、今回舞い込んできたルダの一件では堂々とヤマトと戦う大義名分を手に入れた。

 

「補給作業を急がせろ!!補給完了と共に全速でヤマトを追う!!」

 

「はっ!!」

 

(ファンタムの時は総統からの勅令を受けていたから剣を交えることは出来なかったが、今度は違う。ヤマトと堂々と戦える‥‥武人としては血がたぎる思いだ!!)

 

グスタフはヤマトと戦えるかもしれない事実に思わず武者震いをした。

 

補給を終え、補給部隊と別れたグスタフ艦隊はヤマトを追尾し始める。

 

こうしてルダの存在はガルマン・ガミラスの方でも確認され、ボラー連邦、ガルマン・ガミラスの双方から追跡をされることになった。

 

ファンタムの一件でデスラーはもしかしたらヤマトと訣別をしたのかもしれない。

 

となると、ガルマン・ガミラスからの援助はもう期待できない。

 

いや、ルダ王女と言う『爆弾』を抱えてしまった事で、彼女を巡って再びデスラーが敵に回る可能性も十分ある。

 

デスラーもシャルバート星の伝説くらいは耳にしている筈だ。

 

これまでは、シャルバート星なんて実際に存在するのかもわからない星の事など、デスラーは気にも留めていなかったかもしれないが、今回、ヘルマイヤーから齎された情報から、シャルバート星の関係者の存在が確認された事で、シャルバート星が実在することが証明された。

 

故にデスラーもきっとルダの身柄を要求してくるだろう。

 

古代としては当然、デスラーに‥ガルマン・ガミラスにルダを引き渡すつもりはない。

 

ファンタムの一件からガルマン・ガミラスの支援の期待は無いモノだと判断され、ルダを巡って例えデスラーが再び敵に回る可能性が高い中で、地球に残されている時間は少なく、その間に第二の地球となる星を見つけなければならない。

 

だが、ヤマトとまほろばは地球に居る人々たちの為に最後の最後まで希望を捨てずに頑張るしかなかった‥‥

 

しかし、第二の地球となる星を探査してからヤマト、まほろばは百三十二の恒星系を探査していた。

 

だが、これだけの恒星系を探査するも第二の地球となる星は見つからなかった。

 

こうしてみると、銀河系には地球人類が住めるような環境の星が少ないのかもしれない。

 

その反面、ミッドチルダ周辺は人類が居住できる星が多数あるので、地球連邦政府がその事実を知れば、もしかしたら管理局との国交が結ばれる可能性があったのかもしれない。

 

そして、そのミッドチルダでは‥‥

 

ユーノの職場である無限図書館、そこで司書長を務めているユーノの下にユーノ宛てに一通のメールが届いた。

 

「ん?僕宛てのメール?‥どれどれ‥‥」

 

件名に『仕事の依頼』と書かれていたので、管理局のどこかの部署から資料請求のメールかと思い、ユーノはメールを開き、内容を確認する。

 

「ん?スピアーノ教授から?えっと、なに、なに‥‥えっ、遺跡発掘調査の助っ人!?」

 

ユーノにメールを送って来たのは先日、無限図書館を訪問して来たランティスであった。

 

彼が言うには大学における考古学の実習で、とある世界にある遺跡の発掘作業を行うので、ユーノにも手伝いに来て欲しいと言う内容であった。

 

そこで、ユーノはランティスに直接電話を入れた。

 

「もしもし、スピアーノ教授ですか?」

 

「ああ、スクライア君。メールは読んでくれたかな?」

 

「はい。それで、早速メールの件なんですが‥‥」

 

「ふむ、メールで送った通りだ。今度の遺跡発掘調査に君も助っ人として手伝ってもらいたいのだよ。勿論、バイト代もちゃんと払う」

 

「メールでは発掘調査の世界がミッドではない事が書かれていましたが、どの世界での発掘になるのですか?」

 

メールでは『とある世界』としか書かれていなかったので、ユーノはランティスにどの世界で遺跡発掘調査をするのかを訊ねる。

 

「バシュタールと言う世界だ」

 

「バシュタール‥確か大昔に大規模な惨劇が起きたとされる世界ですね」

 

「ああ。バシュタールに住んでいた民族がその惨劇で全て滅亡してしまった為に彼らがどんな文明を築いていたのが不明であり、我々スクライア一族も度々この世界へ赴き、遺跡の発掘と調査を進めているのだが、未だに明確な答えは出ていない。だからこそ、今回私もこの世界へ赴むくことにしたのだが、君も来ないかと誘ったのだよ」

 

「そうなんですか‥‥」

 

「それで、どうだい?君も来るかい?」

 

ランティスの話を聞いて、ユーノもスクライア一族として興味がないわけではなかった。

 

「分かりました。僕も行かせていただきます」

 

ユーノはランティスの誘いを受けてバシュタールにおけるかの世界の遺跡発掘に参加することにした。

 

後日、ランティスにバシュタールでの遺跡発掘調査に参加する為にユーノは無限図書館に有給届けを出して、ランティスたちと共にミッドチルダを後にして現場であるバシュタールへと向かった。

 

次元航行船に乗って、やってきたバシュタールは水と緑の美しい星であった。

 

「ミッドと比べると涼しいな‥‥」

 

バシュタールの次元航行船の発着場にて初めてバシュタールの地に降り立ったユーノはバシュタールの気候の感想を口にする。

 

「ここは一年を通して最高気温が25度ぐらいで、平均気温が20度前後の世界だからね。故にミッドが夏の際には避暑地として人気のある世界みたいだ」

 

ランティスがユーノにバシュタールの気候を説明する。

 

「避暑地となるとこの世界は観光資源で成り立っている世界と言う事ですね」

 

「ああ、冬はウィンタースポーツも出来るから冬でもそれなりに人が来るみたいであるが、観光地として栄えるのは良いのだが、そのせいでこの世界の自然や生物の生態系、そして遺跡を壊されてはたまらないのだがね‥‥」

 

ランティスは観光開発による自然や生態系への影響、そして観光客らが遺跡を壊したり、いたずらする事への懸念を口にする。

 

「確かに‥‥でも、それはこの世界だけではなく、どこの世界でも言えることですね」

 

「ああ、そうだな」

 

「この光景を見ると、大昔にこの世界で惨劇があったなんてとても信じられません」

 

「惨劇が起きて、住んでいた人々が死滅して死の世界になった後、誰も居なくなった世界を自然は長い時間をかけて緑の世界へ戻したのだから、自然の力は高ランクの魔導師よりも偉大なのかもしれない」

 

ユーノとランティスは緑の広がるバシュタールの大地を見て呟く。

 

いくら高ランクの魔導師でも死の世界となった星を蘇らせることは出来ない。

 

(もう一つの地球は高度な科学技術で蘇ったって、なのはたちが言っていたな‥‥)

 

ユーノは以前、なのは、はやて、フェイト、クロノたちからもう一つの地球が辿った歴史をチラッと聞いており、その話の中では、もう一つの地球は異星ガミラスからの遊星爆弾の攻撃で、海は干上がり、大気中には生物に有毒な放射能塗れになるも、イスカンダルから供与されたコスモクリーナーで大気中に広がる放射能を全て除去し、人類を始めとする生物は再び地上で生活できるようになった。

 

その話を聞いた時は、そんなバカなことがあるかと思ったが、実際にもう一つの地球で生活したフェイトがなのはに話し、なのはからその話を聞いた時は、強力な科学技術力は魔法を上回る技術であり、まさに魔法の様な技術なのだと言う印象を受けた。

 

「さて、学生や他のスクライア一族の皆も待っているし、行こうか?」

 

「はい」

 

学生たちと共に車で遺跡の発掘現場へと向かうと、発掘現場には既に遺跡の発掘に集まっていたスクライア一族の人たちが来ていた。

 

その中にはユーノやランティスの知り合いも居た。

 

「おぉー!!ユーノ、ランティス、久しぶりだな!!」

 

「元気だったか!?」

 

「みんな!!」

 

「久しぶりだな~」

 

ユーノとランティスも久しぶりの再会に嬉しくなり、知り合いとハグをする。

 

やがて、遺跡発掘の手順や発掘箇所、注意事項を説明した後に遺跡の発掘作業が開始される。

 

発掘作業が開始されてからしばらくして‥‥

 

「教授、今回の発掘でもし、ロストロギアが出たらやはり管理局へ提出するのですか?」

 

ランティスの近くで発掘作業をしていた学生が質問をする。

 

「まぁ、ロストロギアが出たらな‥‥」

 

かつて海鳴市で起きたPT事件の発端であるジュエルシード‥‥

 

ユーノが偶然発掘したロストロギアであるが、遺跡の発掘をしたからと言って絶対にロストロギアが出てくるとは言い切れない。

 

「しかし、ロストロギアとは言え本来ならば博物館やその民族の末裔、もしくは我々の様な考古学の機関で保管、保有したいのだがな‥‥」

 

ランティスは発掘で出て来たロストロギアに関しては、管理局ではなく本来そのロストロギアを受け継ぐ者、もしくは考古学の研究機関が保有をするべきだと言う。

 

「管理局は古代からの発掘物を何でもかんでも一方的にロストロギアに指定して我々から奪っていく。そのくせ管理は不十分な所がある」

 

「と言うと?」

 

「あそこで作業をしているユーノ君‥かつて彼はジュエルシードと呼ばれるロストロギアを発掘した‥‥その後、ちょっとしたアクシデントがあったが、ジュエルシードは管理局が保管・管理していたが、君もJS事件は知っているだろう?」

 

「ええ、確か広域指名手配犯が起こした大規模なテロ事件ですよね?」

 

「ああ。その際、そのテロリストの主犯が製作したガジェットと呼ばれるロボットの中にジュエルシードが組み込まれていたらしい」

 

「ジュエルシードが!?でも、ジュエルシードは管理局が保管していたんですよね?別のジュエルシードですか!?」

 

「いや、どうやら管理局で保管されていたモノらしい」

 

「でも、管理局で保管されていたジュエルシードがどうしてテロリストの手に?」

 

「管理局の人間が密かに保管庫から持ち出してテロリストに売り渡したのだろう」

 

「えええー!!それってかなり問題じゃないですか!!」

 

「『ロストロギアは我々管理局が管理すべきだ』とか言いながら、大金欲しさに管理していたロストロギアを密かに売りさばいているのだからな。そう言った不正と汚職のせいで古代の貴重な研究資料がどこの誰かわからない者の手に渡っていくと思うと考古学者としては腸が煮えくり返る思いだ」

 

「確かに」

 

「全ての局員がやっているとは思ってはいないが、ロストロギアの管理を主張するならば、そうした点を厳重にしてもらいたいものだ」

 

「そうですね」

 

ユーノの知り合いに管理局員が大勢いる事からランティスは管理局員全員がロストロギアを横流しするような者たちではないと理解はしているが、大規模な組織では様々な考えを持つ人たちがおり、中にはどうしてもそうした邪な考えを持ち、それを実行してしまう者も居ることが否めなかった。

 

その後、遺跡の発掘作業が進んで行くと、

 

「ん?‥‥これは‥‥」

 

ランティスが砂の中から何かを見つけた。

 

「どうしました?」

 

「刷毛を‥‥」

 

「は、はい」

 

学生がランティスに刷毛を手渡すと、ランティスは丁寧に砂を払いのけていく。

 

すると、黒い石の板の様なモノが出て来た。

 

「な、なんですか?それは‥‥」

 

「う~ん‥‥どうやら、粘土板の様だ」

 

ランティスが発掘したのは一枚の粘土板であった。

 

「この粘土板、何か絵みたいなモノがびっしりと書かれていますね」

 

「恐らくこれはこのバシュタールの民たちが使用していた文字だろう」

 

ルーペで粘土板に描かれている絵の様なモノを見ながら、この絵がバシュタールに住んでいた人々の文字であると推測するランティス。

 

「何て書いてあるかわかりますか?」

 

「流石にこの場での解読は無理だ。そもそも、ここに住んでいた人々の文字の解析はまだまだ解析中だからな‥でも、この粘土板の文字を読み解くことで、ここに住んでいた人々の生活がどのようなモノだったのかを紐解くカギになるだろう」

 

「まさか、この粘土板もロストロギアに認定されて管理局に持っていかれるなんてことは‥‥」

 

学生が先ほどの管理局の話からこの粘土板も管理局からロストロギアに認定されて持っていかれないか不安になる。

 

「いや、いくら管理局でも何が書かれているのか分からない粘土板をロストロギアに認定はしないだろう‥‥」

 

ランティスはいくら管理局でも粘土板をロストロギアに認定して没収するとは思えず、学生の意見を否定する。

 

「そ、そうですよね」

 

「兎に角、壊れない様に、慎重に搬出してくれ」

 

「分かりました。おーい、手伝ってくれ!!」

 

ランティスが発掘した粘土板は学生、スクライア一族の手で搬出されていった。

 

後に解読されたこの粘土板の一部の文章がミッドチルダに降りかかる宇宙からの厄災を根拠づけるモノになるとは発掘者のランティス自身もこの時にはまだ知る由もなかった。

 

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