星の海へ   作:ステルス兄貴

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百七十六話 シャルバート星の秘密

 

 

スカラゲック海峡星団においてルダの身柄をめぐっての地球、ガルマン・ガミラス、ボラー連邦における三つ巴の戦いはグスタフへデスラーからの命令もあり、地球とガルマン・ガミラスの連合艦隊とボラー連邦との戦いになり、ボラー連邦は第八打撃艦隊、本国の第一、第二主力艦隊の全滅と言う手痛い結果で幕を下ろした。

 

しかし、生き残ったグスタフ艦隊も残存艦がわずかとなり、旗艦であるグスタフが座乗する戦艦を含めて残存艦は全て損傷が酷く撤退することになった。

 

グスタフ艦隊からの支援があったとは言え、ヤマト、まほろばも艦隊戦を二戦繰り広げただけあって当然無傷と言う訳はなく、両艦は現在、技術班を中心として全部署の乗員たちの手によって応急修理が行われている。

 

戦いに勝ち、ルダの事を守り通したヤマトであったが、既に自分たちが探査する惑星はもうない。

 

周辺に輝く銀河の星々のどれもが地球人類を受け入れてはくれなかった。

 

これだけ広い宇宙には地球と同じような星くらい一つは見つかるだろうと楽観視していた部分もあったが、いざこうして実際に探してみると限られた探索範囲とは言え地球にそっくりな星は存在しないと言う辛い現実を突きつけられてしまった。

 

 

艦の修理が進められる中で、この後の方針について艦橋で古代と良馬が意見交換をしていた時、揚羽は古代からルダの警護の任を命じられ、戦闘中はルダと行動を共にしていたがこうして戦闘が終わるとルダは今回の戦闘による戦死者たちの為に祈りを捧げたいと揚羽に嘆願してきた。

 

ヤマトの艦外へ出る訳ではないので、揚羽はルダを展望室へと案内した。

 

展望室にて床に両膝をつき、手を組んで祈りを捧げるルダ。

 

すると、宇宙空間にマザー・シャルバートの姿が映し出される。

 

「マザー・シャルバート‥‥」

 

宇宙空間に浮かび上がったマザー・シャルバートはまるで何かを語りかけるかのように揚羽の事を暖かく見つめている。

 

「マザー・シャルバート‥‥マザー・シャルバート‥‥」

 

揚羽はシャルバート教の信者ではないが、マザー・シャルバートの姿を見て彼はいつしか片膝をつき、マザー・シャルバートへの祈りの言葉を唱えていた。

 

「マザー・シャルバート、お助けください!!マザー・シャルバート、どうか地球を助けて下さい!!」

 

揚羽の言葉を聞いてルダはゆっくりと振り向く。

 

それと同時に宇宙空間に浮かび上がっていたマザー・シャルバートの姿は消える。

 

立ち上がったルダはニッコリと笑みを浮かべて片膝をついている揚羽の手を取ると、

 

「参りましょう‥‥」

 

「えっ?」

 

「シャルバート星へ‥‥ご案内いたします」

 

「シャルバート星は今でも実在している星なんですか!?」

 

「はい」

 

ボラー連邦もガルマン・ガミラスも‥そしてシャルバート教の信者ですら、所在が分からず探し求めている星、シャルバート星‥‥

 

シャルバート星の王女であるルダが存在するのだから、存在するのかもしれないが、その一方でもしかしたら、シャルバート星は既に滅んでしてしまい、ルダはそのシャルバート星から脱出したところをボラー連邦に捕まってしまった可能性もあったがルダの言葉からシャルバート星はちゃんと存在するみたいだ。

 

「どうしてもっと早く言ってくださらなかったんですか!?」

 

思わず声が裏返る揚羽。

 

「気を悪くしないでください。私はあなた方を見ていたのです」

 

「‥‥我々はルダ王女の信用を得られたと言う事ですか?」

 

「それ以上です。感謝をしていいます。だからこそあなた方をシャルバート星へご招待したいのです。私を古代艦長の下へ連れて行ってください」

 

「は、はい!!」

 

ルダの言葉の意味を理解した揚羽はルダを第一艦橋へと案内した。

 

その第一艦橋では古代が良馬と意見交換をして、地球へ帰還する事に決まりかけていた。

 

「古代艦長」

 

「揚羽‥それにルダ王女も‥どうしたんですか?」

 

「艦長、ルダ王女が我々をシャルバート星へ案内してくれるそうです」

 

「えっ!?シャルバート星に!?」

 

揚羽の言葉に古代は驚愕する。

 

パネル越しではあるが、良馬もこれには驚いた。

 

「‥‥ルダ王女の御厚意はありがたいと思いますが、我々には時間が残されていないのです」

 

古代としてはルダを故郷の星があるのであるならば、彼女を故郷の星へ還さなければならないが、今の地球は時間が残されていない。

 

であるならば、良馬が言うように今は地球へと戻り、地球に居る人類と動植物をケンタウロス座のアルファ星へと避難させなければならない。

 

「‥‥いや、古代艦長。此処はルダ王女の招待に乗ろう」

 

そんな中、良馬はルダの招待を受けてシャルバート星へ行こうと言う。

 

「えっ?ですが、地球には時間が‥‥」

 

「分かっている。でも、俺たちはファンタムからルダ王女の事を託された。これまでは第二の地球探査を優先してきたが、探査担当宙域には第二の地球になりうる星は存在しなかった。地球は滅亡を待つだけだ‥‥それならば、ルダ王女にはそんな地球の厄介事に巻き込まないようシャルバート星へ送り届けた方がいいのではないか?それに、もしシャルバート教の信者の人たちが言うようにシャルバート星が技術に優れている星ならば、太陽の制御方法を知っているかもしれないし、もしくは地球にそっくりな星の位置も知っているかもしれない」

 

良馬は敢えて古代との会話でシャルバート星の事を『技術に優れている星』と評した。

 

ガルマン・ガミラスもボラー連邦もルダを欲しがったのは、シャルバート星の位置というよりはシャルバート星の軍事技術であることは先ほどの戦いで明白であった。

 

それにルダ本人の前で彼女の故郷の星を『軍事技術が優れた星』と言うのはいささか失礼に当たる事も含まれる。

 

ガルマン・ガミラスが行った太陽制御の様にシャルバート星がガルマン・ガミラスよりも技術に優れている星ならば、ガルマン・ガミラスとは異なった方法や技術で太陽制御が出来るかもしれないと言う可能性も秘めていた。

 

「‥‥そうですね。地球にとっては悲しい事ですが、月村さんの言う通りですね‥真田さん、島‥‥」

 

「分かっている。俺たちに出来る最善の勤めを果たそう」

 

「そうだな」

 

古代同様、真田も島も納得した。

 

「ありがとう。真田さん、島‥‥ルダ王女、シャルバート星へ行くにはどこに向かえば良いんですか?」

 

古代は改めてルダにシャルバート星の位置を訊ねる。

 

「宇宙の難所を通らなければなりません。まずは私が指定する座標までワープをしてください」

 

「分かりました。まほろばはヤマトにワープを同調させて下さい」

 

「了解」

 

ルダの指示の下、まほろば、ヤマトはワープ準備に取り掛かった。

 

まほろば、ヤマトの両艦はワープ準備が整うとルダの指定した座標まで二隻の宇宙戦艦はワープを行った。

 

そして誰もいなくなったスカラゲック海峡星団であったが、ボラー連邦の宇宙艦船の残骸の中で小さく点滅する光点があった事にヤマト、まほろばの乗員たちの中で気づく者は誰も居なかった。

 

 

ボラー連邦 本星 首相官邸

 

「ゴルサコフ」

 

「はっ!!」

 

「ルダ王女の一件であるが、どうなっておる?ハーキンスからもバルコムからも連絡が無いようだが?」

 

「はっ‥‥その件につきまして首相閣下には不愉快な情報をお耳に入れる事をご容赦ください」

 

「むっ?それはどういう事かね?」

 

「ハーキンス中将の第八打撃艦隊、そしてバルコム提督率いる第一、第二主力艦隊‥共に全滅です」

 

「な、なにぃ!?全滅だと!?」

 

ゴルサコフの報告を聞き、ベムラーゼはそれこそ目玉が飛び出るほど驚愕した。

 

そしてその驚愕は直ぐに憤怒へと変わる。

 

「何故だ!?我がボラー連邦が誇る精鋭艦隊に本国の主力艦隊を二個艦隊も投入した結果、地球などと言う田舎戦艦相手に小娘一人奪い返すことも出来ず、全滅するとは何たることか!?」

 

ハーキンスとバルコムに命じた時は、たかが戦艦二隻に対して過剰戦力であると思っていたが、ゴルサコフからの報告を受け、過剰戦力どころか戦力不足だった事実について、ベムラーゼを始めとしてボラー連邦の誰もが驚愕する事実であろう。

 

実際にゴルサコフ自身も今回の結果には驚きが隠せない。

 

「して、何故そのような結果となった?」

 

いくら憤慨したところで結果は変わらないので、ベムラーゼはひとまず、今回の戦いにおける敗因をゴルサコフに訊ねる。

 

「はっ、どうも接敵したスカラゲック海峡星団にてガルマン・ガミラスの艦隊も居たようです」

 

「なにっ!?ガルマン・ガミラスの艦隊だと!?」

 

「はい。連中の狙いも恐らく我々と同じく‥‥」

 

「ルダ王女だな?」

 

「御賢察の通りです。ガルマン・ガミラスの艦隊は地球の戦艦と協同し、我が艦隊を殲滅した様です」

 

「くぅ~デスラーめ‥‥どこまでも私の邪魔を~‥‥」

 

ゴルサコフからスカラゲック海峡星団における戦いの報告を受けてデスラーの予想通りベムラーゼは悔しがる。

 

「それで、地球の戦艦は何処へ向かっておる?彼奴等の母星である地球か?」

 

「それが、どうも地球とは異なる空間へワープをした様でして‥‥」

 

バルコムは自身の艦隊がまほろばの拡散波動砲を受けた時、心のどこかで敗北を察していたのか、乗艦が撃沈される前に密かにスパイ衛星を射出しており、戦闘後のヤマト、まほろばの行動は逐次ボラー連邦へ筒抜けとなっていた。

 

「どこだ?」

 

「おそらくですが、ルダ王女の母星、シャルバート星と思われます」

 

「なんだと!?シャルバート星!?」

 

「はい。バルコム提督が戦場に残したスパイ衛星から地球の戦艦が行ったワープの空間トレースは出来ています。かくなる上はこの私自ら、シャルバート星へと赴き、かの星を占領してみせます」

 

ゴルサコフ自身もこのままでは自分に今回の敗戦の責任を押し付けられると感じ、自ら志願してシャルバート星へ向かう旨をベムラーゼに伝える。

 

「よろしい。君がそこまで言うのであるならば、此度のシャルバート星に関する作戦はゴルサコフ君。君に一任しよう」

 

「はっ。では、早速出撃の準備を致します」

 

ゴルサコフはベムラーゼに一礼してその場からいそいそと去って行った。

 

(ルダ王女の身柄は抑えられなかったが、シャルバート星の位置さえ摘めれば、十分だ)

 

(シャルバート星を手中に収めた後はガルマン・ガミラスも地球も一気に滅ぼしてくれるわ)

 

何度も自分に煮え湯を飲ませて来たガルマン・ガミラス。

 

そしていきなりポンと出て自分の貴重な戦力を削った地球。

 

ベムラーゼにとっては報復するには十分な理由だった。

 

 

ゴルサコフがヤマト、まほろばを追いかけ、シャルバート星を目指している中、先にルダの案内の下、シャルバート星を目指しているヤマトとまほろばは、ルダに指定された座標にワープアウトをするとその空間には暗褐色の冷たい印象をうける小さな星が眼前に現れた。

 

「前方に惑星を確認」

 

「あれがシャルバート星なのか?」

 

幻の星と言うにはあまりにも質素と言うかあっけない印象であり、パネル越しに見る星の様子から人が住んでいる様な星には見えない。

 

誰もが『あの星がシャルバート星なのか?』と言う疑問を抱いていると、

 

「いいえ、あれはシャルバート星への門です」

 

「門?」

 

星が門とはどういう事なのか?

 

ルダの言葉の意味が分からず、一同がルダの言動に注目する。

 

しかし、肝心のルダ本人は詳しい事は言わずに両手を胸の前に組み、静かに祈り始める。

 

すると、暗褐色の星がまるで蘇生するかのように輝きだした。

 

「星が‥‥」

 

「光りだした!?」

 

「まるで星が生き返ったみたいだ」

 

そして次の瞬間、星全体が収縮し、亜空間へと反転し始めた。

 

反転した後、亜空間へのトンネルのような不思議な空間が宇宙空間に生じた。

 

「なるほど、あれがシャルバート星の入り口‥‥これじゃあ誰も分からない筈だ」

 

ここまでの現象を見てルダの言葉の意味を理解し、同時にシャルバート星が幻の星である意味も判明した。

 

シャルバート星へ行くにはシャルバート星人の協力がなければシャルバート星へ辿り着くことが出来ない様だ。

 

まほろばとヤマトは亜空間トンネルへと吸い込まれるように入った。

 

亜空間とは言え衝撃や船体に何らかの異常はない。

 

どれだけの距離を通過するのか分からないがこれが人の手によって造られたのであるならば、驚くべき技術だ。

 

かつて暗黒星団帝国がヤマト、まほろばの乗員たちを欺くため、地球(偽)を太陽系から他の星系に移動させたと言う嘘もシャルバート星の技術なら可能かもしれない。

 

(シャルバート星の技術はジレル人の技術と同等かそれ以上かもしれないな‥‥)

 

シャンブロウで出会ったジレル人も地球より高度な技術を有していた。

 

この門の技術からシャルバート星の技術力はジレル人の技術と同等かそれ以上のモノだと予測する良馬。

 

(ボラー連邦とガルマン・ガミラス共にシャルバート星の技術を恐れ、ソレを手に入れたいと思う訳だ)

 

それと同時にボラー連邦、ガルマン・ガミラスの両陣営がシャルバート星の技術を欲するのも理解した。

 

やがて亜空間トンネルから出たヤマト、まほろばの眼前には淡い光に包まれた一つの星が見えた。

 

「見えました。あれがシャルバート星です」

 

「あれがシャルバート星‥‥」

 

眼前の星こそルダの故郷であり、幻の星、シャルバート星であった。

 

「これより着陸態勢に入る」

 

ヤマト、まほろばは応急修理をしたとはいえ、痛んだ船体をギクシャクさせながらシャルバート星へと降下していく。

 

パネルにはシャルバート星の地表の光景が映し出され、エーゲ海近辺のギリシャを思わせる美しい環境であるはあるが、宇宙戦艦が着陸できるようなドック等の施設は確認できなかったので、地表に流れる大きな川へと着水する事にした。

 

そんなヤマト、まほろばの姿をシャルバート星の人たちは当然空の彼方から降りて来た二隻の巨大な宇宙戦艦の存在に気づく。

 

しかし、ヤマト、まほろばが侵略者ではないとまるで分かっているかのようにシャルバート星の人たちは狼狽える様子もパニックになる様子もなく、逆に手を振っている人たちもいる。

 

やがてヤマト、まほろばが川へと着水し、暫くすると一隻のボートが岸からヤマトへと向かってくる。

 

そのボートには数名の男性が乗っていた。

 

やがてボートはヤマトが下ろしたタラップに接舷して長老らしき老人とお付きの若者二人がヤマトの甲板へと上がる。

 

ヤマトの方も古代、雪、真田がルダと共に甲板で彼らを出迎える。

 

「姫!!よくぞご無事で!?」

 

「貴方も元気そうでなによりです」

 

「いえ、姫様が行方不明となってから幾年月‥‥不安と心労と戦う日々でした」

 

「ごめんなさい。ご心配をおかけしました」

 

「いえ、こうして無事に戻って来て何よりです」

 

「こちらはシャルバート星をおさめる長老です」

 

ルダは古代たちに長老を紹介する。

 

「外遊の為にシャルバートの外へ出た姫様がボラー連邦と言う無法者の衝撃を受け、絶望しておりました。姫様をお連れいただきまして、心より感謝いたします」

 

長老は深々と頭を下げて礼を述べる。

 

「いえ、私たちは当然の事をしただけです」

 

「姫様を連れ戻してくださったのです。あなた方は大事なお客様です。どうぞ、シャルバートで旅の疲れを癒していってください」

 

こうして一同はシャルバート星にある王宮へと招かれた。

 

もっとも王宮と言っても地球のバッキンガム宮殿やイスカンダルの王宮とは違い、古代ローマ時代にアテネやギリシャ、ローマにあった大理石で出来た様な宮殿であった。

 

(これがシャルバート星なのか?本当に‥‥?)

 

ファンタムでも一部の乗員しか上陸できなかった事からガルマン・ガミラス以降久しぶりの上陸‥‥

 

しかも環境が地球そっくりな星と言う事でシャルバートへ上陸した乗員たちは祝賀会を楽しんだ。

 

(マスター‥‥)

 

そんな中、ギンガのデバイスであるブリッツ・キャリバーがギンガに声をかける。

 

「ん?何?ブリッツ・キャリバー」

 

(この星の人たちですが、個人差はありますがほぼ全員が魔力を秘めております)

 

「えっ?この星の人全員!?」

 

(はい‥‥)

 

魔法文明発祥の地とされるミッドチルダでも魔力保有者と非魔力保有者が入り乱れている。

 

現状大きな対立は生じていないが、非魔力保有者と比べてやや魔力保有者が優遇されている面がある。

 

そんなミッドチルダと異なり、このシャルバート星では住人のほぼ全員が魔力保有者だと言うのだから驚愕だ。

 

『ほぼ』が付くのはこの宮殿にシャルバート星の住人全員が集まっている訳ではないので、確証がないのだが、宮殿にいるシャルバート星人全員が魔力保有者なので、ミッドチルダと比べ魔力保有者の人口はシャルバート星の方が多いと予測される。

 

ギンガがこの星の住人のほぼ全員が魔力保有者である事に驚愕している中、古代は祝賀会をこっそりと抜けて宮殿のバルコニーから眼前に広がるシャルバート星の外を眺める。

 

(此処は本当にシャルバート星なのか?)

 

古代は信じられない様子で外を見ていると、

 

「信じられないって顔をしているね」

 

「ん?あっ、月村艦長」

 

良馬が古代に声をかけた。

 

「はい。デスラーやシャルバート教の信者が言うシャルバート星の印象とは全然違います」

 

「ああ‥‥シャルバート星に関する噂やシャルバート星への門の技術を見た後でこの星の光景を見るとな‥‥」

 

「‥そうですね‥‥それに見た所、地球の様な多国籍国家ではなく、ガルマン・ガミラスの様にシャルバートは一つの統一国家として成り立っているようですが、イスカンダル同様人口はそんなに多くは感じられません」

 

「それならば、どうしてこの星が銀河系最強の星だなんて噂が立ったのか‥‥」

 

「やはり気になりますか?」

 

「ああ‥‥火のない所に煙は立たないからね」

 

当初はシャルバート星の現状を見てギャップを感じた良馬であったが、やはりあの門の技術を見るとどうしても目の前の光景に対してシャルバート星には何か秘密があるように思えてしまう。

 

「暗黒星団帝国は我々を騙すために偽物の地球を用意していたが、シャルバート星に関しては、悪意は無いみたいだが、やはり何か大きな秘密を持っているのだと思う」

 

「秘密‥ですか?」

 

「ああ。シャルバート星に入る為の門の技術‥‥それに、ルダ王女は宇宙へ外遊している最中にボラー連邦に捕らわれた‥‥となるとシャルバート星には宇宙空間を航行する能力がある宇宙船がある筈だ」

 

「なるほど‥‥」

 

良馬の指摘を受け、古代はシャルバート星は地球よりも文明が劣る星‥‥と言う印象が変わる。

 

だとすると表向き、文明が遅れた星の様に振舞うのはやはりシャルバート星には何か秘密があるのだろう。

 

「艦長」

 

古代と良馬がシャルバート星の外を眺めていると土門が来た。

 

「土門か」

 

「艦長、これが宇宙のいたる所で救いを求めて信仰を集めている星ですか?地球よりもずっと文明も技術も遅れた‥‥力なんか何にもなさそうな星じゃないですか」

 

「うむ、そうだな」

 

「艦長、このままシャルバート星を占領しましょう。そしてシャルバートを第二の地球に‥‥」

 

「土門君、それはダメだ。惑星探査の規定で知的生命体が存在する星は第二の地球候補として除外されている」

 

良馬は慌てて土門に物騒な事は控えるように窘める。

 

「月村艦長、何をそんな綺麗ごとを!?地球にはもう時間が無いんですよ!?」

 

「土門。恥ずかしながら俺もそんな考えが脳裏を過ってしまった。だが、そんな事をしてしまったら、俺たちはかつてのガミラスや白色彗星の様な侵略者に成り下がってしまう」

 

「だったらどうすれば!?移住先が無ければ地球人類は終わりなんですよ!?」

 

「それは分かっている。ただ占領はダメだ。どうしてもシャルバートに地球人類を住まわせるには、ルダ王女と会談して地球人類の移住先として土地を提供してもらうとかの平和的な移住案を提示するとかだ」

 

良馬は土門に妥協案を言うが、

 

「そんなのんびり会談だなんて‥‥」

 

時間がおしている中で、会談ですんなりと決まらなければそれだけでも貴重な時間をロスする。

 

「まぁ、実際にルダ王女らシャルバート星の人たちが地球人類を受け入れてくれるのかも不明だ。仮に移住案を受け入れて地球人類をシャルバート星へ移住させた後、シャルバート星人と地球人類との間に土地や鉱物等の物資、宗教を巡って確執が生まれないとは言い切れないしな」

 

「‥‥」

 

良馬の提示する地球人類のシャルバート星への移住案もやはり、短期間で決められるモノではなく、移住後も地球人類とシャルバート星人との間で様々な問題が起こる可能性を示唆する古代。

 

地球でもアメリカの先住民とヨーロッパから入植してきた白人との間に大きな確執を生んだ。

 

南米では侵攻してきたスペイン人を神の使いと間違えたアステカ文明とインカ帝国は疫病と略奪の憂き目に遭い滅んだ。

 

こうした地球の歴史から地球人類がシャルバート星へ移住した後、シャルバート星人と地球人との間に確執が生まれない確証もない。

 

ましてやシャルバート星の人口は流石にイスカンダルよりは多いが、小国並みの人口しかいない印象があり、彼らを少数民族としてカテゴリーに入れそうだ。

 

故に惑星探査規定に知的生命体が住んでいる星は除外されていた。

 

ファンタムとは異なり今度こそ見つけた第二の地球にそっくりな星は既に先住者が居たので地球人類の移住は不可能‥‥

 

目の前にお宝があるのにそれを手に入れることが出来ないもどかしさがある中、古代が持っていた携帯通信機が受信を知らせる。

 

「相原か?古代だ。どうした?」

 

「デスラーの艦隊が亜空間トンネルを通ってシャルバート星に近づいています。あっ、今、デスラーから通信が来ました。そちらに転送します」

 

携帯通信機のモニターにはデスラーの姿が映し出される。

 

「古代」

 

「デスラー」

 

「古代、その星は本当にシャルバート星なのか?」

 

「そうだが‥‥どうして?」

 

「その星の何処に宇宙最強に君臨する程の軍事力がある?」

 

「どうやらそれはただの伝説に過ぎなかったらしい。僕たちも驚いている」

 

古代は携帯通信機でシャルバート星の地表の様子をデスラーに見せる。

 

良馬が予測しているようにシャルバート星には何らかの秘密がありそうではあるが、それは確証を得ていないし、古代としてはシャルバート星の軍事技術をガルマン・ガミラスへ渡したくは無いと言う思いもあった。

 

「ふむ‥私もボラーも誤解していたと言う事か‥‥」

 

「どうやらその様だ」

 

シャルバート星の地表の光景を見たデスラーもシャルバート星が自分たちの星や地球よりも文明が遅れている星と言う印象を持ち、シャルバート星の宇宙最強伝説はシャルバート教の信者たちが勝手に膨らませた妄想であったと言う認識を持つ。

 

そんな中、デスラーが乗艦しているノイ・デウスーラ二世の艦橋に警報が鳴る。

 

「そのボラーがいよいよお出ましだ。我々同様、亜空間トンネルに入って来たようだ」

 

「デスラー総統!!ボラー連邦の艦載機群が接近してきます!!」

 

「なに‥‥?」

 

デスラーは冷静であったが、タランの報告を通信機越しに聞いた古代は思わず空を見上げる。

 

デスラー艦隊の後方に出現したボラー艦隊はゴルサコフ率いるシャルバート星制圧艦隊であった。

 

ゴルサコフの方でも前方にデスラー率いる艦隊の存在は認識していたので、第一次攻撃隊の艦載機群はデスラー艦隊へと襲い掛かる。

 

「フフフ‥‥電撃作戦で一気にシャルバート星を制圧する!!別働隊、攻撃開始!!」

 

第一陣の艦載機群がデスラー艦隊の足止めをしている間にゴルサコフは第二陣の艦載機群と地上制圧の為の上陸用舟艇をシャルバート星の地表を目指して降下させる。

 

「デスラー総統は兎も角、ボラー艦隊が来たとなると此処が戦場になる可能性があるな」

 

「ええ、すぐに戦闘準備をしないと!!」

 

「それとシャルバート星の人たちも避難させないとこの星の人たちにも被害が出る」

 

「そうですね」

 

スカラゲック海峡星団でボラー艦隊の物量を目の当たりにしていることから今回もボラー連邦はかなりの大軍をシャルバート星へ送り込んで来る可能性がある。

 

直ぐに戦闘準備とシャルバート星の人たちを避難させなければならない。

 

古代は長老に事態の説明をして、良馬はギンガから通信機を借り、ヤマト、まほろばに戦闘準備をさせると同時に会場に居るヤマト、まほろばの乗員たちにシャルバート星の人たちを避難させるように指示を出す。

 

ヤマト、まほろばは一度川から浮上してコスモタイガーを発進させて大気圏外で戦っているデスラー艦隊の支援に回る。

 

コスモタイガーが上昇をしていると、シャルバート星の地表に降下していくボラー連邦の艦載機群と上陸用舟艇の姿を捕捉した。

 

「隊長、アレは!?」

 

坂本がボラー連邦の地上攻撃部隊に気づき、山本に報告する。

 

「地上攻撃の部隊か!?」

 

「どうしますか?」

 

「隊を二つに分ける。ヤマトのコスモタイガー隊はこのまま上昇してデスラー艦隊を支援、まほろばのコスモタイガー隊は地上に向かっているボラーの艦載機を相手にしてくれ」

 

「了解」

 

山本が指示を出すとヤマト所属のコスモタイガー隊は上昇し続けデスラー艦隊の支援に向かい、まほろば所属のコスモタイガー隊は上昇を取りやめて反転し、地上攻撃に向かっているボラーの地上攻撃部隊の迎撃へと向かう。

 

「来た‥対空戦闘用意!!」

 

「パルスレーザー砲一斉射撃!!」

 

ヤマト、まほろばはパルスレーザー砲でボラーの地上攻撃に向かう艦載機群を迎撃するが、何せ数が多い。

 

パルスレーザー砲の迎撃網を掻い潜った艦載機群はヤマト、まほろばを攻撃するよりも地上への攻撃と制圧を優先とする。

 

逃げ惑うシャルバート星の人たちに対してボラーの艦載機群は上空から機銃斉射や爆撃を行い、民間人を次々と虐殺していく。

 

更に上陸用舟艇からも降下兵が次々と地上に降下して行き、艦載機同様、逃げている人たちをまるで狩猟でもするかのように手にしたレーザー銃で射殺していく。

 

「あいつら民間人を!?」

 

「ボラーめ!!」

 

「くそっ、一機も還すな!!」

 

ボラーの地上攻撃隊に追いついたまほろばのコスモタイガー隊はボラーが行っている虐殺行為を見て、腸が煮えくりかえる思いで、ボラーの艦載機群や上陸用舟艇へ攻撃を加える。

 

上空でボラーの艦載機群とまほろばのコスモタイガー隊が戦っている中、地上でも既に降下したボラーの兵は宮殿に迫って来た。

 

「撃て!!」

 

古代や良馬たちはコスモガンで応戦する。

 

「やめなされ!!」

 

そんな中、長老が両手を振りながら丸腰でボラー兵の前に立ちはだかる。

 

「ちょっとおじいさん!!何をしているんですか!?」

 

長老の行動を見た良馬が急ぎ、長老を柱の陰へと引っ張る。

 

「丸腰で武器を持った相手に‥一体何を考えているんですか!?」

 

ボラーはどう考えても話し合いで理解して分かる相手ではない。

 

「私たちシャルバート人は戦いを捨てたのです」

 

良馬の問いに長老は自分を含め、シャルバート人の決意を口にする。

 

「何を言っているんですか!?このままだと殺されてシャルバートの文明が滅んでしまうかもしれないんですよ!?」

 

「かまわん」

 

「えっ?」

 

長老は自分たちが殺され、シャルバートが滅んでも良いと断言した。

 

彼の言葉に思わず良馬は唖然とした。

 

 

シャルバート星の大気圏外では、デスラー艦隊とゴルサコフ艦隊が激しい戦闘をしていた。

 

ただデスラー艦隊は空母を有していなかったのか艦載機相手に苦戦をしていた。

 

ヤマトのコスモタイガー隊はゴルサコフ艦隊の艦船ではなく、艦載機を主に相手をしていた。

 

そんな中、ゴルサコフ艦隊がデスラー艦隊へと接近してきた。

 

一気にデスラー艦隊と決着をつけようとしていたのか?

 

それとも地上制圧部隊から戦況が不利であると言う連絡が入ったからなのかは不明であるが、デスラーはこれを好機と見た。

 

「ボラー連邦にガルマン・ガミラスの真の力を見せてやろう‥‥ハイパーデスラー砲用意」

 

「はっ、ハイパーデスラー砲用意」

 

ノイ・デウスーラ二世の艦橋にハイパーデスラー砲のトリガーが床下よりせり上がって来ると、デスラーはその照準を近づいてくるゴルサコフ艦隊へと合わせる。

 

「ハイパーデスラー砲‥‥発射!!」

 

「ガルマン艦隊より高エネルギー反応!!」

 

「か、回避を!!」

 

「だ、ダメです!!艦隊が密集して回避できません!!」

 

「そ、そんな‥‥こ、こんなところで‥‥」

 

ノイ・デウスーラ二世の艦首からはハイパーデスラー砲が放たれ、それはゴルサコフ艦隊を飲み込む。

 

 

「うわあぁぁぁぁー!!」

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「ぬわぁぁぁぁぁー!!」

 

ハイパーデスラー砲に飲まれたゴルサコフ艦隊はゴルサコフ艦を含め壊滅。

 

当然、ゴルサコフも戦死した。

 

「艦長、デスラーがボラーをやりました」

 

「よし、コスモタイガー隊は地上に戻って救命活動を手伝ってくれ」

 

「了解」

 

戦いが終わり、ヤマト、まほろばの乗員たちは負傷者の救命活動を始める。

 

デスラーはボラーの増援を危惧して亜空間トンネルのシャルバート星側出入り口付近で警戒態勢をとっている。

 

宮殿の近くにはテントが幾つも張られた野戦病院が出来あがり、負傷者が次々と運ばれ、佐渡とリニスが応急処置や手術を行い、医療班と生活班は忙しそうに駆け回っている。

 

「負傷者の収容ほぼ完了しました」

 

「よし」

 

「次はご遺体の埋葬か‥‥」

 

「ボラーの連中も含まれているのは何か癪ですが、このまま遺体を放置しておくわけにはいかないからな」

 

戦後処理をしていると、

 

「古代さん、月村さん」

 

ルダが二人に声をかけて来た。

 

「ルダ王女」

 

「お怪我はありませんでしたか?」

 

「はい。揚羽さんのおかげで‥‥そして、シャルバート星を守っていただき、ありがとうございます」

 

「いえ、そんな」

 

「我々は当然の事を下までですから」

 

「古代さん、月村さん。これから私についてきてください。お見せしたいモノがあります」

 

ルダは踵を返して長老と共に歩き出す。

 

「「‥‥」」

 

古代と良馬は顔を見合わせながらもルダの後を追う。

 

川辺に係留されているボートに乗り、川を遡っていきボートを降り、山合の道を抜け、しばらく歩くとそこにはエジプトの王家の墓を思わせるピラミッド群が姿を現す。

 

「此処は?」

 

「一体‥‥?」

 

「此処はシャルバートの代々の王族が眠る王家の谷です」

 

ルダがこのピラミッド群の説明をし、とあるピラミッドの前に立ち手をかざすと、ピラミッドの扉が開く。

 

中に入ると床の一角がそのままエレベーターになっており、地下深くに降りる。

 

そして、地下にも大きな扉があり、ルダが手をかざすとその扉が開く。

 

「着きました」

 

そこはとてつもなく大きく広い空間であり、そこには圧倒するような沢山の兵器がまるで博物館の展示品の様に置かれていた。

 

「こ、これは!?」

 

「ハイペロン爆弾にプロトンミサイル‥‥いや、地球の科学技術では作れなければ説明も出来ない兵器ばかりだ‥‥」

 

背筋がゾッとする思いで古代と良馬は並んでいる兵器を見つめる。

 

「あなた方はこんなにも立派な武器があるにもかかわらずそれを使わなかった‥‥何故です?」

 

そして、古代は長老にこれらの武器を使えば簡単にボラーを追い返せたにもかかわらず使用せずにただ無抵抗にやられるだけであった疑問を長老に訊ねる。

 

「そちらの方にも申し上げましたが、私たちシャルバート人は戦う事を止めたのです。この星は昔、これらの兵器を使い銀河系に君臨していました。宇宙のあちこちには未だにその頃のシャルバートの力が伝説となって残っています」

 

(やはり、シャルバート教の信者やデスラー総統やボラーの連中が思っていたシャルバート最強伝説は事実だったのか‥‥そしてその力を信仰するのがシャルバート教って訳か‥‥)

 

長老の説明とこれらの兵器を見ると伝説だと思われていたシャルバートの力は事実であった。

 

(これがシャルバート星の秘密か‥‥)

 

何らかの秘密がこのシャルバート星にはあると思ったが、この兵器の性能と秘匿がシャルバート星の秘密なのだと古代と良馬は判断した。

 

「しかし、私たちは気づいたのです。武力で戦争をすることによって平和や幸せは訪れない事を‥‥相手に恐怖を与えるだけの空しい行為であると言う事を‥‥それ以来、私たちは武器をこの王家の谷に埋葬し、封印したのです。そして他の惑星からの干渉を防ぐためにシャルバート星を亜空間に移動させました」

 

「ですが、今回の様に亜空間の外から敵が攻めて来たらシャルバート星が滅んでしまいます。そうなってしまっては意味がないではないですか?」

 

「構いません。例え私たちが滅んでも私たちの考えは銀河系の人々の間に伝えられて残ります。そしていつの日か第二、第三のシャルバートとなる星が現れる筈です。そうなった時、初めて宇宙に真の平和が訪れるのです」

 

「私たちはいつも平和の為に戦ってきました。でも平和を得る為の本当の戦いは敵と戦うのではなく、自分との戦いと言う訳ですね?」

 

「その通りです」

 

「ですが、今の我々にとっては難しい事です」

 

誰もが幸福・平和を願う事は間違いではない。

 

しかし、他者を見下し、羨み、妬む感情をあるまではシャルバートの考えは理想論でしかない。

 

シャルバートの人たちが望む平和はあまりにも困難過ぎる道のりだ。

 

「誰もがすぐに出来るとは思いません。いつかそうなるよう、努力していただければそれでいいのです」

 

「しかし、地球にはもはやその時間も残されてはいません」

 

「ルダ王女よりその話は聞きました。故に皆様を此処へ案内したのです。太陽の核融合を制御できるハイドロコスモジェン砲‥‥これがあれば太陽を制御できるはずです。持って行ってください」

 

「えっ!?」

 

「太陽制御が可能!?」

 

長老は一門の砲台を指さしてその砲台の能力を説明する。

 

(あの砲台一門で太陽制御が可能って‥‥)

 

(まさにオーバーテクノロジーじゃないか‥‥)

 

地球、そしてガルマン・ガミラスの技術をもってしても制御できなかった太陽があの砲台一門で出来ると言うのだからまさに驚愕だ。

 

「感謝いたします」

 

「ありがとうございます」

 

古代と良馬は深々と頭さげてルダと長老に礼を述べた。

 

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