星の海へ   作:ステルス兄貴

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原作におけるヤマトⅢの24話におけるルダについて、彼女は王家の谷にてマザーシャルバートと融合?した事で新たなマザーシャルバートとなり、長老からも『全ての人々の心の中に生きる』とあり、25話のラストでも戦死した揚羽の魂と共にシャルバートへと還ると言っていたので、彼女は肉体を捨て、魂だけの存在へ昇天したのかと思いましたので、零戦さんと意見交換をした結果、マザーシャルバートとは融合せずに人のままで居る展開にしてあります。


百七十七話 あの太陽を撃て

 

 

ルダの案内の下、宇宙最強の星と言われているシャルバート星へやって来たヤマトとまほろば。

 

シャルバート教の信者やガルマン・ガミラス、ボラー連邦からは宇宙最強の軍事惑星国家と噂されていたが、実際にシャルバート星の地へ降り立ってみると、そこに広がる文明は古代ローマ時代並みの文明だった。

 

一同が困惑する中、ルダをシャルバート星へ送り届けた礼にと宮殿では歓迎会が開かれる。

 

歓迎会が進む中、デスラー率いる艦隊がシャルバート星の出入り口である亜空間トンネルへとやって来た。

 

デスラーもシャルバート星に伝わる最強の軍事技術を目的としていたが、古代からシャルバート星の地表の様子を見て肩透かしをくらった様子だった。

 

更にシャルバート星へ来たのはデスラーだけではなく、ゴルサコフ率いるボラー連邦の艦隊もやって来た。

 

ボラー艦隊はシャルバート星が伝説の軍事技術を持つ星だろうが、そうでなかろうが、構わずにシャルバート星を攻撃し、地上に兵を降下させて民間人を虐殺する行為を行う。

 

その後、デスラー艦隊とヤマト、まほろばがゴルサコフ艦隊を殲滅し、負傷者の救助活動も一区切りついた時、ルダは古代と良馬にシャルバート星の秘密とも言える王家の谷に眠る超兵器を見せる。

 

シャルバート星に伝わる宇宙最強伝説は事実であったが、シャルバート人は戦争の勝利から来る虚しさに気づき、同時に戦う事に対して嫌気がさし、戦いを捨てた民族となり、戦う術である兵器を全て王家の谷に封印した。

 

その封印された兵器の中に現在、太陽系の太陽に起きている核融合の異常増進を食い止めるハイドロコスモジェン砲を譲ってくれた。

 

このハイドロコスモジェン砲を使えば地球を救うことが出来る。

 

しかし、ハイドロコスモジェン砲をヤマトに搭載する作業、ボラーとの戦闘で負傷して、野戦病院に収容されている負傷者を艦に移送する作業は夜間ではリスクがあるので、夜が明けるまで待つことになった。

 

王家の谷から運ばれたハイドロコスモジェン砲には防水シートがかけられる。

 

もっとも地球やガルマン・ガミラスよりも優れた科学技術を持つシャルバートが作り上げた兵器が雨で濡れた程度で壊れる訳がないが念のためと言う承知だ。

 

地上に降下してきたボラーは一掃したが、万が一にも敗残兵が居た場合、折角手に入れたハイドロコスモジェン砲が破壊されたり、動かす事が出来ない負傷者の身が危険なので、夜は交代制でヤマト、まほろばの戦闘班が武装して歩哨活動を行う。

 

「歩哨なんて訓練校以来だぜ」

 

レーザーライフルを手に周囲を見渡しながら揚羽は隣にいる土門に声をかける。

 

「まぁ、懐かしいって言えば懐かしいが、まさか宇宙に出てもやるとは思わなかったぜ」

 

「でも、本来ならばお前は生活班所属だから歩哨なんてやらなくていいのになんでわざわざやっているんだ?」

 

揚羽は戦闘班飛行科所属なので、こうして歩哨を勤めているが、土門は生活班炊事科所属なので、本来は歩哨に参加しなくても良い部署にもかかわらず、彼はこうして歩哨活動に参加している。

 

揚羽はそれが気になり、土門に理由を訊ねる。

 

「元々、俺は戦闘班志望だったし、ちゃんと艦長からの許可も貰っている」

 

「全く物好きな奴だな」

 

「それにちょっとお前に聞きたい事もあったしな」

 

「聞きたい事?なんだよ?」

 

土門が敢えて歩哨に参加したのは揚羽に何か聞きたいことがあったからだ。

 

「明日にはヤマトはあのハイドロなんとか砲を積んで地球に戻るみたいだ‥‥」

 

「ああ、あの砲台は太陽の核融合を制御できる何かスゲェ能力を大砲みたいだな。坂東の奴が言っていたよ。原理は分からないみたいだがな」

 

「それで、お前は良いのか?」

 

「ん?何が?」

 

「あの王女様の事だよ」

 

「‥‥」

 

「お前、あの王女様にホの字なんだろう?」

 

揚羽とルダの行動から、土門は揚羽がルダに惚れていると判断していた。

 

これも訓練校からの付き合いが深い土門だからこそ分かっていた。

 

「いいのか?告らなくて‥‥」

 

「おい、おい、相手は王女なんだぞ?それに俺と彼女とでは住んでいる星も違う‥‥」

 

自分とルダの身分が違う点、住んでいる星が異なる点から、揚羽はルダに対する思いを口にすることなくこの思いを自分の胸の内に封じ込めるつもりだった。

 

古代の兄である古代守も今の揚羽と同じ境遇であり、彼は地球への帰還よりも愛する人と生涯を共にする選択を選んだが、揚羽も土門もそんな守の事は知らない。

 

もし、知っていたら揚羽はこの星に残留する選択をしたかもしれない。

 

しかし、守と揚羽の違いは家族環境である。

 

守はガミラス戦役時、家族は弟の古代だけになっていたが、揚羽には経営者の父親に病気の母親が居り、地球に残した病気の母親の事が心配なのも揚羽がシャルバート星に残留する選択を消していた要因でもあった。

 

「‥‥」

 

揚羽は口では諦めている様に言っているが、それが無理に強がっている事を土門は察していた。

 

そんな中、

 

「揚羽様ですかな?」

 

「「えっ?」」

 

ト―ガの様な服を纏った一人のシャルバート人の男が揚羽と土門に声をかけてきた。

 

「揚羽は俺ですけど、何か用ですか?」

 

突然シャルバート人が声をかけて来たので若干訝しむ揚羽。

 

「私は宮殿で働かせていただいている者です。ルダ様が揚羽様をお呼びなので、私が揚羽様を迎える用を仰せつかりました」

 

「ルダ王女が?」

 

「はい」

 

「いや、でも‥‥」

 

いくらルダからのお呼びでも今は公務中であり、おいそれと持ち場を離れる訳にはいかない。

 

揚羽はチラッと土門へ視線を向ける。

 

「いいって、行って来いよ」

 

「えっ?でも‥‥」

 

「歩哨の件は、俺が何とか誤魔化しておくよ。そもそもお前、艦長からルダ王女の護衛の任を解かれていないだろう?そんで、その護衛対象の王女様からのお呼び何だから行くのは問題ないだろう?」

 

「それって屁理屈じゃあ‥‥」

 

「いいから、早く行って来いって!!」

 

土門は揚羽の背中を押すと、彼は宮殿の使用人と共に再びルダが待つ宮殿へと向かった。

 

 

「こちらの部屋でルダ様はお待ちしております。それでは私はこれで‥‥」

 

使用人は宮殿内にあるルダの部屋の前まで揚羽を案内するとススッとその場から立ち去る。

 

「よ、よし‥揚羽です。ルダ王女がお呼びとの事で参りました!!」

 

揚羽は緊張した面持ちでルダが待つ部屋の扉をノックする。

 

「はい。どうぞ」

 

すると部屋の中からルダの声がして揚羽は部屋の中へと入る。

 

「どうぞ、こちらへ‥‥」

 

「は、はい」

 

ルダは部屋に備え付けのテーブル席へ揚羽を誘う。

 

「明日、地球へ戻られるとお聞きしました」

 

揚羽が席に着くとルダは揚羽に明日の朝にヤマトが出航する事に間違いないかを問う。

 

「はい。頂いたあのハイドロコスモジェン砲があれば地球を救えます。ルダ王女を始め、シャルバート星の人々の御厚意には感謝いたします」

 

「これで、あなた方をこの星へお連れした目的は全て果たしました‥‥お別れ‥‥ですね」

 

「ルダ王女‥‥」

 

ルダに対する思いを必死に堪えてきた揚羽であったが、こうして目の前にルダ本人がいるとどうしてもその思いが込み上げてきてしまう。

 

彼女から明日には別れる事を言われるとその感情は我慢できなくなる。

 

「ルダ王女‥‥ぼ、僕は‥僕は貴女を愛しています」

 

そして、揚羽はルダに対する思いを我慢できず、彼女に告白する。

 

「私もです。揚羽さん」

 

一方、ルダの方も揚羽に対して恋愛感情を抱いていた。

 

二人はそのままお互い駆け寄り抱き合う。

 

「いつまでも、いつまでも、こうして貴方と一生を送りたい‥‥でも、私には出来ない。私はシャルバート王家の娘‥‥全ての人の心の中に生きなければならないのです‥‥でも‥でも、今夜一晩だけ‥私はシャルバート王家の娘ではなく、一人の女として貴方と‥‥」

 

ルダは潤む目で揚羽を見つめる。

 

「本当に良いんだね?ルダ」

 

「はい‥‥」

 

ルダの言葉に揚羽は彼女の覚悟を問うとルダは頷く。

 

そして、二人はそのまま寝台へと向かうのだった‥‥

 

 

此処で少し時間を巻き戻し、視点をボラー連邦の本星にてシャルバート星制圧の吉報を待つベムラーゼへと移る。

 

 

ボラー連邦 本星 首相官邸

 

 

「ゴルサコフからの連絡はまだ入らんのか?」

 

「はっ、先ほど定時連絡にて、『これより亜空間トンネルを通り、シャルバート星へ向かう』と連絡が入ってから未だに連絡は‥‥」

 

「ぬぅ~ゴルサコフめ、何をモタモタしとるか‥‥」

 

ゴルサコフからシャルバート星制圧の連絡が無い事にベムラーゼは段々とイライラしてくる。

 

しかし、シャルバート星は宇宙最強の伝説がある星‥‥

 

いくらゴルサコフが率いる艦隊でも少々てこずると予想はしていたが、あまりにも連絡が遅い。

 

イライラしながら待つベムラーゼの下へ彼にとっては凶報とも言える報告が齎された。

 

「しゅ、首相閣下、ゴルサコフ艦隊所属の通報艦ペチュンガより入電です!!」

 

「ようやく来たか」

 

この時、ベムラーゼはゴルサコフがシャルバート星を制圧した報告かと思っていた。

 

しかし、報告を入れて来たのがゴルサコフではなく、彼の麾下の通報艦であった事にベムラーゼは違和感を覚えていなかった。

 

「ペチュンガ艦長のオゾネフ大佐であります」

 

「御苦労、それでシャルバート星は制圧できたのであろうな?」

 

「そ、それが、我が艦隊はシャルバート星に辿り着くもガルマン・ガミラスの新兵器の前に壊滅!!ゴルサコフ閣下も戦死なさいました!!」

 

「な、何だと!?」

 

通報艦ペチュンガの艦長、オゾネフ大佐から齎された報告にベムラーゼは血管がブチ切れる程の凶報であった。

 

「我が艦隊の残存艦は僅かとなっており、これ以上の戦闘続行は困難となっています。首相閣下、撤退の許可を求めます!!」

 

「何っ!?撤退だと!?ならぬ!!撤退などあり得ぬ行動だ!!現有戦力で作戦を続行し、シャルバート星を制圧せよ!!以後の通信は作戦達成以外の通信は受け付けん!!良いな!?‥‥くぅぅ~デスラーめぇ~」

 

(しかし、シャルバート星にデスラーが既に存在しているとなると、ガルマン・ガミラスにシャルバートの技術が既にわたっている可能性もある‥‥)

 

(こうなれば、せめてデスラーの命だけでも‥‥)

 

(うまく事を運ぶことが出来れば、地球もデスラー共々滅ぼす事が出来るな‥‥)

 

ベムラーゼはオゾネフからの通信を聞き、シャルバート星の軍事技術が既にガルマン・ガミラスの手に渡っている事を考慮して、この星間戦争が今後、ガルマン・ガミラスに有利な形で進んで行くと踏んだ。

 

ならば、国家元首であるデスラーを葬ればガルマン・ガミラスは混乱し、多少は時間を稼ぐことが出来るかもしれないと予測し、ついでに自分たちに散々煮え湯を飲ませて来た地球を滅亡させる事も出来ないかと画策する。

 

「衛星軌道上にあるゼスパーゼの整備は整っておるか?」

 

ベムラーゼはオペレーターにボラー連邦の切り札とも言える機動要塞、ゼスパーゼの状態を訊ねる。

 

「はっ、ゼスパーゼは既に整備を終え、自走及びワープは可能となっております。勿論、搭載されている兵器も全て使用可能です」

 

「よろしい、ではゼスパーゼにありったけの艦載機を搭載させろ。それとゼスパーゼの随伴として本国の第三主力艦隊を同行させる。至急出撃準備をさせろ!!」

 

「はっ!!」

 

ベムラーゼはシャルバート星に展開しているゴルサコフ艦隊の残存艦にあまりにも無茶難題な事を命令するが、これは自らの出撃準備が整うまでの時間稼ぎと同時にシャルバート星の占領と言うガルマン・ガミラスとの星間戦争における天王山とも言える重要な戦いで敗北した敗残者たちへの粛清を兼ねた一罰百戒でもあった。

 

シャルバート星近海でゴルサコフ艦隊の残存艦隊が絶望的な戦いをデスラー艦隊へ挑む羽目になっている中、ベムラーゼは自らが出陣する準備を進めていた。

 

 

そして、翌朝‥‥

 

「ん?‥朝か?」

 

ルダの居室にある寝台で揚羽は目を覚ます。

 

彼の隣には一糸まとわぬ格好のルダが静かに寝息を立てている。

 

かく言う自分もルダ同様、服を身に着けていない。

 

(そうか、俺は昨夜ルダと‥‥)

 

自分とルダの現状から揚羽は昨夜の事を思い出す。

 

揚羽が昨夜のルダとの一夜を思い出していると、

 

「んっ‥‥」

 

ルダが身をよじりながら目を覚ます。

 

「あっ‥ルダ王女‥‥その‥お、おはよう」

 

揚羽もルダが目を覚ました事に気づき、声をかける。

 

「お、おはようございます。揚羽さん‥‥」

 

目を覚まし、揚羽の姿を見て、ルダも昨夜の事を思い出したのか頬を赤く染める。

 

そんなルダの姿に揚羽はますますルダを愛おしく思い、次第に二人の顔は近づいていき‥‥

 

「「んっ‥‥」」

 

唇を重ねた。

 

とは言え、いつまでも寝台に居る訳にはいかないので、揚羽もルダもこの時間が永遠に続けば良いと思いつつも互いに服を身に着ける。

 

「揚羽さん、私は決して貴方の事を忘れません」

 

「ルダ王女‥‥僕も愛した貴女を忘れません‥‥永遠に‥‥」

 

二人は夢の様な一夜を過ごした後、揚羽はヤマトに戻った。

 

「よお、朝帰りとは随分と遅かったな」

 

そんな揚羽に土門は声をかける。

 

「ん?あ、ああ‥まあな‥‥」

 

揚羽は土門に曖昧な感じで返答する。

 

「あれ?お前、何か様子が変わったか?」

 

「えっ?どこが?」

 

揚羽は内心、ドキッとしながらも土門に自分の何処が変わったのかを訊ねる。

 

「いや、明確に何処がって言えないけど、何か雰囲気が変わった様に見えるんだが‥‥」

 

「そ、そうか?ま、まぁ、俺たちも今回の航海で一皮剥けたって事だろう?」

 

「そうなのか?」

 

土門は何か煮え切らない様子ではあるが、揚羽の何処が変わったのか明確に答えられなかったので、揚羽の言葉に一応、納得した。

 

 

日が昇り、ハイドロコスモジェン砲は早速真田たちヤマトの技術班の手によってヤマトの艦首部にあるカプセル状の突起内に搭載され、射撃回路は応急の管制コンピューターを通して艦橋の波動砲発射システムと連動するように設定された。

 

負傷者たちも生活班を中心に手空きの乗員たちがストレッチャーと内火艇に乗せて艦内の医務室へと運ぶ。

 

作業が行われている中、亜空間トンネル内にてボラー連邦の残存艦を追撃、殲滅にあたっていたデスラー艦隊へ古代は通信を入れる。

 

古代はデスラーにシャルバート星の秘密を語る。

 

「そうか、そういう星だったのか‥シャルバート星は‥‥」

 

デスラーはシャルバート星の秘密を聞き、複雑な表情で頷く。

 

「どうする?我々が立ち去った後、この星を侵略するか?」

 

「いや、私も栄光あるガルマン・ガミラスの総統だ。丸腰の者を攻めたりはせぬ。古代、太陽制御の成功を祈る」

 

デスラーはシャルバート人の心情を理解し、攻め込めばシャルバートの超兵器を楽に入手できるにもかかわらず、敢えてシャルバート星には手を出さない事を古代に誓う。

 

プライドが高いデスラーなので、一度言った言葉は必ず守る男であると古代はデスラーの人となりを理解しているので、彼の言葉を信じた。

 

「では、さらばだ。古代」

 

シャルバート星周辺に居たボラーの残存艦隊を完全に殲滅したデスラー艦隊は去っていく。

 

 

まほろば 第一艦橋

 

「デスラー艦隊、亜空間トンネルを通り、通常空間へ戻って行ったみたいです」

 

「ヤマトの方でもハイドロコスモジェン砲の搭載が終了しました」

 

「当初の目的とは異なりましたが、これで地球を救う事が出来ますね」

 

「ああ。シャルバート星に来た時は、色々と考えさせられたけど、最終的に地球を救うことが出来るのであるならば、シャルバート星に来たかいがあったよ」

 

第二の地球を見つけると言う任務は達成することは出来なかったが、太陽制御が可能なハイドロコスモジェン砲があれば地球を救うことが出来る。

 

目的が異なっても地球を救うことが出来るのであるならば、結果オーライである。

 

「本艦、及びヤマトの発進準備整いました」

 

「よし、では急いで太陽系に戻るぞ!!通常空間へ出た後、連続ワープをし、全速で太陽へと向かう!!」

 

無事に地球を救うことが出来る事実に艦内では新たな活気がみなぎりヤマトとまほろばは急ぎ地球を救うため太陽系へと戻る。

 

「さようなら‥私の揚羽‥‥」

 

川から浮上し、太陽系へと戻るヤマト、まほろばの姿をルダは宮殿のバルコニーから見送りながら揚羽に別れの言葉を呟く。

 

一方でヤマトの展望室では、揚羽が段々と遠ざかるシャルバート星を眺めており、

 

「ルダ‥‥さようなら‥‥」

 

揚羽もルダに別れの言葉を呟いた。

 

 

その頃の太陽系では、太陽の核融合異常増進はいよいよ高まり、地球滅亡まで残り二週間と迫っていた。

 

太陽は視直径が四倍に達し、地球の表面はガミラス戦役時には放射能汚染されていたが、今回は別の意味で生物の生存を許さない灼熱地獄の環境下になっており、地表の都市は荒廃・廃墟と化し、人類を始めとする動植物は地下都市及び他の惑星へ避難していたが、地下都市の方では刻一刻と最後の時が迫っていた。

 

地下都市にある防衛軍司令部では宇宙移民局の業務も兼務しており、職員たちは半袖の制服に汗まみれになりがなら通信と観測作業をしていた。

 

中央の席には宇宙移民局の責任者でもある藤堂が居たが、彼の様子は憔悴していた。

 

そんな藤堂を心配するかのように傍には秘書である晶子の姿もあった。

 

「地上温度140度を記録」

 

「地下都市の温度、34度」

 

地表はもとより地下にもかかわらず、地下都市の温度は真夏日並みの気温になっており、病院には脱水症状や熱中症の患者が運び込まれている。

 

「冷却装置のエネルギー残量は?」

 

「フル運転であと十日、三分の一に節約しても一ヵ月が限度です」

 

「その後は此処も70度越えの灼熱地獄となるか‥‥人類も‥もはやここまでか‥‥」

 

「その事ですが、長官。悪い知らせが‥‥」

 

「なんだ?」

 

「太陽の膨張スピードが予想よりも増しており、この分ではあと十二日ほどで冷却装置を使用しても地下都市は人類の生存に適さない温度になります」

 

観測手からは地球があと一ヵ月もたない報告が入る。

 

「‥‥他の地下都市の‥様子は?」

 

「各地下都市共に冷却装置への運転を優先している様で、エネルギーをそちらに回しているためか交信が出来ません」

 

他の国の地下都市の様子が不明の為、不安感が増す。

 

もしかしたら、地球人類で生き残っているのは自分たちだけなのではないかと言う不安が‥‥

 

「ヤマト、まほろばはどうしている?」

 

「それが、通信を送っておりますが応答がありません」

 

シャルバート星は通常の空間と異なる亜空間にあった為、地球がヤマト、まほろばに通信を送ってもヤマト、まほろばは応答することが出来なかった。

 

同じ亜空間内に居た場合は通信が可能だったので、デスラーは古代に通信を送ることが出来、ヤマト、まほろばもコスモタイガー隊へ通信を送ることが出来たのだ。

 

「‥‥送り続けろ‥通信を‥‥」

 

藤堂が通信士にヤマト、まほろばへ通信を送るように指示を出した時、藤堂の息遣いが荒くなり、彼は前のめりに倒れた。

 

「お爺様!!」

 

「長官!!」

 

晶子が悲鳴のような声を出し、職員の一人が慌てて藤堂を抱き起した。

 

「お爺様、少しお休みにならないと」

 

この真夏日並みの気温に職務の責任から藤堂は精神的・肉体的疲労が蓄積して倒れてしまったのだ。

 

晶子はそんな藤堂の身を案じ、休むように進言するが、

 

「市民が‥‥大勢の市民が苦しんでいるというのに私一人、休むわけにはいかん」

 

藤堂は無理をしてでも休む事は無く、職務を全うしようとしていた。

 

そんな中、オペレーターがある反応を捉えた。

 

「ワープアウト反応を確認!!ワープアウトしたのは戦艦クラスの宇宙船です!!数は二隻!!地球へ接近してきます!!」

 

「パネルに投影しろ!!」

 

地球の近海に突如、ワープアウトして接近して来る宇宙船の正体を知る為、衛星の映像をパネルに映すと、そこに映っていたのはヤマトとまほろばであったが画像はカラーからモノクロになったり、カラー状態でも画像が乱れて映る。

 

しかし、それでも地球に接近して来る艦影がヤマト、まほろばであることは何とか確認出来た。

 

「ヤマトとまほろばです!!」

 

「無事に帰って来たのか!?」

 

「ヤマトより通信が入っています」

 

「通信回線を開け」

 

「しかし、エネルギー不足で映像がはっきりと映るか分かりません」

 

「音声だけでもいい!!」

 

「了解」

 

ヤマトとの通信回線を開くがやはり、地球側のエネルギー不足のためかパネルは真っ黒な映像しか映らない。

 

「地球防衛軍司令部、こちら宇宙戦艦ヤマト艦長の古代進。地球防衛軍司令部へ、本艦はシャルバート星にて太陽の核融合が制御可能なハイドロコスモジェン砲を受領した。これより太陽へと向かい、核融合制御作業を行う」

 

「太陽の制御が可能!?」

 

「出来るのか?そんなことが‥‥」

 

地球、そしてガルマン・ガミラスの技術をもってしても不可能だった太陽制御をヤマトはこれより行うと古代は言うのだから、その場に居た職員たちの困惑は当然の反応だ。

 

「諸君‥信じよう‥‥ヤマトを‥‥」

 

「は、はい」

 

地球にはもうはや時間も事態を収拾させる手段も残されていない。

 

ならば、最後の賭けにヤマトがこれから行おうとしている太陽制御の成功を祈る事しか自分たちに出来る事がないのも事実であった。

 

 

シャルバート星を出航し、亜空間トンネルを通った後、連続ワープを行う強行軍で太陽を目指した。

 

途中、地球へ太陽制御を行う旨を伝え太陽に向かった。

 

そして金星付近までやって来ると膨張した太陽はまさに水星を飲み込む勢いの大きさとなっていた。

 

白色彗星は人工物であり、別の意味で脅威を覚えたが、眼前の太陽の姿は自然の神秘というよりは自然の驚異であった。

 

そしてヤマトはハイドロコスモジェン砲を使用しての太陽制御を行うための準備に取り掛かった。

 

 

ヤマト 第一艦橋

 

「父さん、母さん、俺は戻って来たぜ‥‥」

 

土門は自身の両親が眠る太陽を見て、あの日の事がこみ上げてくる。

 

古代はそんな土門の肩にそっと手を置く。

 

「土門、お前の両親の御霊がきっと導いてくれる。ハイドロコスモジェン砲のエネルギーは一発分‥‥つまり射撃は一回だけだ。しっかり射撃準備をやってくれ」

 

「はい!!」

 

「ハイドロコスモジェン砲、最終チェックに入る」

 

「機関室。エネルギー・ジェネレータの作動状態は?」

 

エネルギー調整を行っている機関室にエネルギー状況について徳川に山崎が訊ねる。

 

「エネルギー・ジェネレータ問題なく作動中、システムオールグリーンです!!」

 

「ハイドロコスモジェン砲、作動用意よし」

 

ヤマト艦首部にあるカプセル状の突起が左右に開き、ハイドロコスモジェン砲がせり上がって来る。

 

「中央コンピューター室、データの再計算をして弾道のチェックをしてくれ!!」

 

「了解」

 

コンピューター室ではアナライザーと技術班員たちが激しく明滅するコンピューターをチェックし始める。

 

「エネルギー・ベント、オープン」

 

「ハイドロコスモジェン砲ジェネレータ作動開始!!」

 

「ヤマトの艦首を太陽中心部へ向けろ!!」

 

「了解、艦首角度調整」

 

島の巧みな操艦でヤマトの艦首は太陽へと向けられる。

 

「エネルギーゲージ上昇、内圧限界へ!!」

 

「ハイドロコスモジェン砲発射準備完了!!秒読みに入ります」

 

いよいよハイドロコスモジェン砲の発射準備が整い後は太陽に向けて放つだけとなる。

 

ヤマトでハイドロコスモジェン砲の発射準備が進められている中、まほろばはヤマトの後方でその作業を見守っていた。

 

「いよいよ‥ですね」

 

「何だかこっちも緊張します」

 

「‥‥」

 

時間、エネルギー等の関係からハイドロコスモジェン砲の試射は行われておらず、シャルバート星の技術を完全に信用しての一発勝負となっている。

 

もし、このハイドロコスモジェン砲の砲撃が失敗、もしくは効果が無ければ太陽制御の失敗に繋がり、地球は滅ぶ。

 

いや、それどころか核融合異常増進とは異なる現象が起きて太陽付近にいる自分たちの身も危険な可能性さえある。

 

粛々とハイドロコスモジェン砲の発射準備を見守るまほろばの一同。

 

そして、いよいよ発射準備が整い秒読みが開始された時、

 

「っ!?本艦の後方にワープアウト反応多数!!」

 

新見がまほろばの後方でワープアウト反応を探知した。

 

「なに!?すぐに船籍を調べろ!!」

 

「‥‥ボラー連邦の艦隊です!!ワープで至近距離に出現しました!!」

 

「ボラー!?くそっ、大事な時に!!」

 

ワープアウトしてきたのはボラー連邦の艦隊であり、ワープアウト後にまほろば、ヤマトへ攻撃を仕掛けて来た。

 

「反転!!迎撃しろ!!コスモタイガー隊、緊急発進準備!!」

 

まほろばは急ぎ艦を反転させてボラー艦隊の迎撃に向かう。

 

ヤマトの方でも当然ボラー艦隊の存在を探知した。

 

「ボラー連邦の艦隊がまほろばの後方にワープアウト!!」

 

「なに!?うおっ‥‥」

 

ボラー艦隊の砲撃はまほろばだけではなく、ヤマトにも向けられる。

 

「いかん、土門、ハイドロコスモジェン砲を格納しろ」

 

「は、はい」

 

流れ弾でハイドロコスモジェン砲に命中すれば、太陽制御が不可能になってしまう。

 

古代は急ぎ土門にハイドロコスモジェン砲を格納するように命じる。

 

「島、反転だ!!まほろばと共にボラー艦隊を迎撃する!!」

 

「了解」

 

「コスモタイガー隊発進用意!!」

 

まほろばに少し遅れながら、ヤマトもボラー艦隊を迎撃する。

 

「アルファ星を攻撃するは、惑星探査を妨害する、シャルバート星では民間人を虐殺し、そして太陽制御までも妨害するとはボラーの奴ら、絶対に許さん!!」

 

これまでのボラー連邦の所業からまほろば、ヤマト乗員たちはボラー連邦に対する怒り、苛立ちを覚えるのは当然の事であった。

 

ボラー艦隊を迎撃していると、これまでの艦船のワープアウトとは桁違いのワープアウトがあった。

 

「艦長、敵艦隊後方に大型のワープアウト反応を確認!!‥‥機動要塞です!!機動要塞がワープアウトしてきました!!」

 

「なに!?パネルに映せ!!」

 

「はい!!」

 

まほろばの第一艦橋にあるメインパネルにはまるで巨峰のような形状の機動要塞が出現した。

 

「何だ!?ありゃ!?」

 

「でっかいブドウだ!!」

 

永倉は機動要塞の出現に驚愕し、フェリシアはボラー要塞の色と形状から見た感想を口にする。

 

(彗星帝国はマトリョシカ、暗黒星団帝国のゴルバは蛸壺、そしてボラーは巨峰か?)

 

これまで戦ってきた星間国家の要塞が思わず脳裏を過る良馬。

 

なお、良馬は知らないが、ガミラス戦役時にバラン星手前に配備されていたマグネトロンウェーブを放出していたガミラスの宇宙要塞13号を古代は『宇宙に浮く軽石』と表現したが、その形状は緑色のサツマイモのような形状だった。

 

ボラー艦隊を迎撃しながらも突如、ワープアウトしてきた機動要塞、ゼスパーゼにヤマト、まほろばの一同が驚愕している中、そのゼスパーゼの指令室では、

 

「ハハハハハ‥‥アハハハハハハハ‥‥ヤマト、まほろばよ、地球の最後へボラー連邦からのプレゼントをやろう。ブラックホール砲発射!!」

 

ベムラーゼが高笑いをしながら、ゼスパーゼの主砲とも言えるブラックホール砲の発射を命じる。

 

「はっ。ブラックホール砲発射!!」

 

要塞に存在する多数の球体上の構造物の一つから砲身が出てくると、その砲身から一発のエネルギー砲が発射される。

 

そのエネルギー砲はヤマト、まほろばの頭上を通過して行き、花火の様に弾けるとその空間に小型のブラックホールが突如出現する。

 

そして出現したブラックホールは周囲の星の欠片などを吸い込み始める。

 

「推進力低下!!」

 

「どうした!?機関部に被弾したのか!?それとも機関に何か異常が起きたのか!?」

 

「いえ、ブラックホールです!!」

 

「ブラックホール!?」

 

「はい。ブラックホールが突然出現しました!!」

 

「どういう事だ!?どうしていきなりブラックホールが‥‥」

 

ヤマト、まほろばの乗員一同が信じられないのも当然だ。

 

ついさっきまでこの宙域にブラックホールなんて存在していなかった。

 

だが、現実にブラックホールは存在しており、ヤマト、まほろばを飲み込もうとしている。

 

このゼスパーゼの主砲であるブラックホール砲こそが、かつて管理局の武力制裁艦隊を壊滅に追い込んだ切り札であった。

 

「機関出力最大!!ブラックホールに飲み込まれたら終わりだぞ!!」

 

「は、はい!!機関長、エネルギー増幅を願います!!」

 

「うむ。機関室エネルギー増幅!!」

 

永倉は必死に操舵桿を操作してブラックホールの吸引区画からの脱出を図り、井上も脱出の為に機関室にエネルギーを増幅させる。

 

「しかし、何故何もなかった空間にいきなりブラックホールが‥‥」

 

「あの砲台だ。あの砲台から射出されるエネルギー砲はショックカノン等のエネルギー弾ではなく、ブラックホールを生成する特殊エネルギー弾の様だ‥‥エネルギー弾を敵に当てるのではなく、生成したブラックホールへ相手を飲み込ませる兵器なんだ‥‥」

 

「何とも恐ろしい兵器ですね」

 

これまで戦ってきた星間国家には独自の超兵器が存在してきたが、ブラックホールを生成する兵器は地球では当然初邂逅であるが、強力な超兵器にはかわらない。

 

ブラックホールに飲み込まれたら終わりなので、ヤマト、まほろばは必死に抗うが、そんなヤマト、まほろばをボラー艦隊が放っておく訳もなく、ボラー艦隊はブラックホールの死角から攻撃を加えて来た。

 

戦艦のヤマト、まほろばが必死でブラックホールの吸引から抗っているにもかかわらず、未だにブラックホールの吸引圏内から離脱出来ていないので、推進力が戦艦よりも低いコスモタイガーでは発艦した途端ブラックホールに吸い込まれてしまうので、コスモタイガーを発進させて援護に出したくても出せない。

 

被弾の衝撃で次第にヤマト、まほろばはブラックホールへと追いやられていく。

 

「くそっ、ボラーの奴ら調子に乗りやがって‥‥」

 

「本艦及びヤマト、敵の攻撃でブラックホールへ追いやられています!!」

 

「艦長、このままではブラックホールに吸い込まれてしまいます!!」

 

「くっ‥‥」

 

幸いヤマトもまほろばも機関部への被弾は未だに無いが、このまま攻撃を受け続けたらいつかは敵のラッキーパンチを受ける可能性がある。

 

現状で、未だにブラックホールの吸引圏内から脱出が出来ていない状況下で機関部に被弾でもしたらあっという間にブラックホールの餌食になってしまう。

 

戦況はヤマト、まほろばにとってまさに絶望的だった。

 

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