星の海へ   作:ステルス兄貴

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今年も当作品の拝見ありがとうございます。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

次回の話から作中の年月が若干進みます。




百八十一話 ミッドと地球での出来事 パートⅡ

 

 

フェイトとチンクが通っている士官学校に艦政部所属の局員が来てから数日後、フェイトから件の話を聞いたクロノは士官学校へ訪問したと言う艦政部所属の局員の目的を訪ねるために艦政部所属の庁舎へとやって来た。

 

「失礼、本局次元航行部のクロノ・ハラオウンですが、造艦科のフランソワ・エミール・ヴェルタン氏に面会を頼みたいのだが‥‥」

 

受付にてクロノはヴェルタンとの面会を求める。

 

「少々お待ちください」

 

受付嬢はヴェルタンに連絡を取る。

 

(アポイント無しで来たから無理か?)

 

クロノは今日の訪問について事前にヴェルタンにも艦政部にもアポイントをとっていなかったので、もしかしたらヴェルタンとは会えないかもしれないと思った。

 

しかし、クロノの思惑とは異なり、

 

「連絡が取れました。ヴェルタン技師は現在、七階の資料室におります」

 

「どうも」

 

ヴェルタンからの面会が叶ったので、クロノはヴェルタンが居ると言う七階の資料室へと向かった。

 

「資料室か‥‥何だってそんなところに居るんだ?」

 

ヴェルタンの居る部屋に対してクロノは若干の疑問を覚えた。

 

コン、コン、

 

そんな疑問を覚えつつも兎に角、ヴェルタンに会わなければ話が始まらないので、クロノはヴェルタンが居ると言う七階の資料室の扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

資料室の中から返答があったので、クロノは部屋の中に入る。

 

「失礼します‥‥って、何だ?こりゃ?」

 

資料室とは聞いていたが、その部屋の前には沢山の製図紙が溢れていた。

 

「いらっしゃい、ハラオウン提督」

 

資料室の奥から声が聞こえたので、クロノが向かうとそこには製図板に置かれた製図紙にペンを走らせる二人の男が居た。

 

「あ、あの‥‥」

 

「あっ、すみません。少しだけ待ってもらえますか?もう少しで区切りが良いので‥‥」

 

「は、はい」

 

二人の内、一人の男がクロノに少しだけ待つように言うとクロノはその男の言う通り近くにあった椅子に座り待つ事にした。

 

やがて、ペンを置いた男がクロノの下へとやって来た。

 

「お待たせしました。私がフランソワ・エミール・ヴェルタンです」

 

「クロノ・ハラオウンです。本日はわざわざ面会をしてもらいありがとうございます」

 

「いえ、他の部署とは異なり此処は若干の暇がありますから‥それで本日は一体どんなご用件で来られたのですか?」

 

「実は先日、士官学校に通っている義妹と話す機会がありまして、その際に貴方の話を聞きましてね」

 

「ほぉ~、私の事を‥‥」

 

「ええ。その時、貴方はやけにもう一つの第97管理外世界に興味を抱いたとの事ですが‥‥?」

 

「はい。間違いありません」

 

「‥‥随分とすんなりと認めるのですね」

 

「取り繕っても仕方がないので‥それにもう一つの第97管理外世界に対して興味を抱いたのは事実ですから」

 

「それで、貴方は一体、もう一つの第97管理外世界の何に興味を抱いたのですか?」

 

「私が興味を抱いたのはあの世界で運用されている宇宙艦船です。ハラオウン提督はあの世界の宇宙艦船をご覧になった事や義妹であるハラオウンさんから何か聞いた事はありますか?」

 

「‥‥まぁ、人並み以上には‥‥」

 

クロノとしては迂闊に防衛軍についてあまり周辺に吹聴してはならないと警戒していた。

 

それはフェイト同様、管理局内部にもう一つの地球に興味を抱きすぎて、ちょっかいを出される事を恐れたからだ。

 

実際にクロノはテレザート星付近にてヤマトの切り札とも言える波動砲の威力を管理局の中でも初めて目の当たりにした人物のひとりであり、その防衛軍の機関の原理も端的とは言え教えてもらった。

 

そういった点からも管理局の次元航行艦と防衛軍の宇宙艦船の技術の差は越えられないくらいの差があったのだとひしひしと感じていた。

 

そして、ボラー連邦への武力制裁‥‥

 

『法の番人』 『次元の海の管理者』なんて御大層な名目を言っておきながら、管理局は井の中の蛙か宇宙の道化であった。

 

「人並み程度でもあの世界の宇宙艦船の技術を知っていれば、お分かりになるでしょう?管理局の現状の技術の差を‥‥」

 

「ええ、それについては痛いほどに‥‥ですが、この話も義妹から聞いたのですが、なんでも今度新たなエンジンを採用するとか?」

 

「ハラオウンさんが?話したんですか?」

 

「その点については義妹を責めないでやって下さい。彼女は私も既に知っていると思っていたみたいですから‥‥」

 

「まぁ、貴方のお母さまの点を鑑みると確かにハラオウン提督が既に知っていると思い込んでも不思議ではないですね」

 

フェイトが新型のエンジンの話をクロノに話した件についてはクロノの母親は統括官であるリンディならば、リンディ経由でクロノに新型のエンジンの話が来てもおかしくはないとヴェルタンも納得した。

 

「新型のエンジンの話を知っているならば、話が早い」

 

「と言うと?」

 

「今回、士官学校に通っているハラオウンさんを訪ねたのはその新型のエンジンが関係しているのです。これはハラオウンさんにも話をしており、近々艦政部が公式に発表する内容ですが、管理局はその新型のエンジンを搭載した次世代の次元航行艦を就役する予定となっています」

 

「次世代の次元航行艦‥‥」

 

「ええ。ですが、我々としてはその話について一つの懸念と言うか、造艦技師として納得が出来ない事がありまして‥‥」

 

「なんです?」

 

「‥‥その管理局が就役させようとしている次世代の次元航行艦の設計がボラーの宇宙艦船を基にした設計となっています」

 

「ボラーの!?」

 

ヴェルタンから次世代の次元航行艦の設計についての話を聞くとクロノはフェイトと似たようなリアクションを取る。

 

「はい。私も管理局の人間ですからね。ボラーとの関係はあの武力制裁の話を聞いて知っております。ハラオウン提督は当事者でしたよね?」

 

「ええ‥‥あれはまさに生き地獄の様な体験でした‥‥あの時の戦い‥いや、虐殺では大勢の同僚を失いました。それに大切な恩人とも言える人も‥‥」

 

「私はあの時の武力制裁には直接的に関わってはいませんが、同じ管理局に所属する者として‥艦を設計・製造する者として弱い艦を造ってしまい、大勢の同僚を殺すことになった事を悔やんでいます。新たなる機関、MS機関が開発に成功した知らせを聞いた時、これで管理局は強力な艦を手に入れられると思ったのですが、その艦影がボラーを模した艦なんて、センスのカケラもない悪い冗談ですよ」

 

「た、確かに‥‥」

 

「当初、次世代の次元航行艦を就役すると言う事で、私はハラオウンさんの体験を元にもう一つの第97管理外世界で運用されている宇宙艦船を参考にしようと先日、士官学校へ赴いたのです。しかし実際に案を纏め、私と彼‥‥ルイ・レオンス・ヴェルニーはボラーとは異なる艦影の設計を上司に掛け合ったのですが、今の管理局は一日でも早く次世代の次元航行艦を就役させたいみたいで、我々の設計案を却下してきました」

 

「“海”の上層部からの考えではそうなるでしょうね」

 

「管理局の現状そうせざるを得ないのは分かりますが、管理局はボラーと戦争をしている訳ではありません。確かにいつボラーが攻めて来るか警戒は必要です。それでも原因であるボラーの艦を模してそれを運用するのは管理局の人間として完全に受け入れられますか?」

 

「‥‥」

 

「故に私と彼は例え時間がかかってもボラーを基にした艦ではない別の艦を設計し就役させるつもりであります」

 

ヴェルタンとヴェルニーの二人はその志から本来の設計部門から自ら降りて資料整理と言う仕事に回り、資料室に籠りこうしてボラーを基にした次元航行艦とは異なる別系統の次元航行艦の設計をしていた。

 

「御二人が設計をしている艦はもう一つの第97管理外世界の宇宙艦船を基にしているんですか?」

 

「はい。ヴェルニーが全体の主な設計を担当して艦内や装甲等の細かな設計は私が担当しております」

 

「もし、差し支えなければ一体どんな艦を設計しているのか見せてもらえますか?」

 

クロノとしてももう一つの地球で運用されている艦船‥‥防衛軍の宇宙艦船を基に二人が一体どのような艦影に設計しているのか気になった。

 

「‥‥いいでしょう」

 

ヴェルタンはあっさりとクロノに設計中の艦の設計図を見せる。

 

クロノは“海”の現役提督であり、彼の母親は本局の統括官‥‥

 

もしもクロノが自分たちの設計を推せば、彼がリンディにも推薦し、本局の統括官からの推しも貰えるかもしれないと言う打算があった。

 

「どうぞ、こちらです。とは言え、まだ完全な完成図ではありませんが‥‥」

 

「拝見します」

 

ヴェルタンから渡された設計図には横図ながら防衛軍の宇宙艦船にそこはかとなく似た宇宙艦船の図が描かれていた。

 

(もう一つの地球の宇宙艦船を基にしているだけあってヤマトに何となく似ているな‥‥)

 

(ヤマトか‥‥)

 

クロノの脳裏にはテレザート星付近でハリネズミの様にミサイルで武装した彗星帝国の艦に対して一歩もひるまずに進み、強力な戦略砲の一撃で敵を粉砕した時の姿が蘇る。

ボラーへの武力制裁の時、ヤマトの様な艦が一隻でもいればボラーに勝つとまでは言わなくてもあそこまでの被害を出さなかったかもしれない。

 

「今はまさに絵に描いただけの艦ですが、我々はその艦を実現させたいと思っております」

 

「‥‥」

 

「ハラオウン提督?」

 

「いつ頃になれば、この艦は絵から実体のある艦になる?」

 

「我々二人で設計をしているので、この調子ですと設計だけで数年、そこから造艦の許可が下り、建造を始めるので三年~四年かかります」

 

「そんなにか!?」

 

ヤマトを模した艦が建造される日数を聞き、思わず声が裏返るクロノ。

 

「ええ。ただしそれは最短の時期であり、一番の難点は建造の許可が下りるか‥です」

 

「と言うと?」

 

「ボラー型の次世代の次元航行艦が結果を残せばその艦影を多少の改良をした艦を優先にするでしょう」

 

「た、確かに‥‥」

 

「そうなれば、建造どころかこの艦はそのまま絵に描いた想像図だけで終わります」

 

「‥‥分かった。この件についてこちらでも前向きに検討が出来るように取り計らう。艦政部も現場の人間の言葉なら少しは耳を傾けてくれるだろう」

 

「ありがとうございます」

 

クロノはヴェルタンの目的とその先にある目標を聞いて、彼がもう一つの地球に対して“海”を扇動する様な人物ではない事が確認出来たので、その日は引き上げて行った。

 

クロノが去った後もヴェルタンとヴェルニーは設計作業を進めていたが不意に、

 

「ハラオウン提督はどうやら憑りつかれたようだな」

 

「憑りつかれた?一体何に?」

 

「艦の魅力だよ」

 

「艦の魅力?」

 

「ああ。こう言った艦は人々を魅了する不思議な力がある。実際に我々もそうだろう?」

 

「まぁ、確かに‥‥」

 

「第97管理外世界では船を女性に見立て扱っているらしい」

 

「船を女性に?」

 

「ああ。そういう意味では、まさに艦は人々を魅了する美魔女なのだろう」

 

「美魔女‥ねぇ‥‥」

 

ヴェルニーはヴェルタンが言う艦が美魔女と言う言葉を聞き、自分たちが設計している艦の設計図を見て、

 

「そうですね‥此奴はまさしく人を魅了し、惑わせる美魔女だ‥‥」

 

ボソッと呟きながら口元を緩めた。

 

 

此処で視点は管理局からもう一つの地球へと変わる。

 

管理局にて、“海”が次元航行艦の再建の目途が立ち、再建に進んでいる中、もう一つの地球でも太陽の核融合異常増進騒動からの復興へ進んでいる中、

 

ヤマト、まほろばはドックにてあの過酷な航海の疲労を癒していた。

 

そんな中、今回の地球の救世主であるハイドロコスモジェン砲はヤマトから取り外され、科学技術局にて技術調査が行われることになった。

 

地球、ガルマン・ガミラスでも成功しなかった太陽制御を成し遂げたシャルバート星のハイドロコスモジェン砲はまさに地球にとってはパンドラの箱並みのお宝である。

 

「このハイドロコスモジェン砲の原理って一体どういうモノなんですか?」

 

ヤマトから取り外されたハイドロコスモジェン砲を触れながら良馬は真田に原理を訊ねる。

 

「うーむ、今の地球の科学力で解析できるか分からんが、いつかは解明できるはずだ」

 

真田でもハイドロコスモジェン砲の解析は難しいと言うが、地球に人類が居る限りハイドロコスモジェン砲の解析が出来る日がいつかは来ると言う。

 

「真田さんも大変ですね。ハイドロコスモジェン砲の解析や潜宙艦の解析もあるのでしょう?」

 

「あぁ~確かにやる事が山積みだな。大山の奴が居てくれれば多少は楽だったのだがな‥‥」

 

真田と並ぶ頭脳を持つ奇才、大山敏郎ことトチローはイスカンダルで同惑星の再生事業に親友の古代守と共に着手しており、地球には不在。

 

トチローならば真田とは違う観点からハイドロコスモジェン砲や潜宙艦の解析をしていたかもしれない。

 

「あの、一つ思ったんですけど‥‥」

 

「なんだ?」

 

「このハイドロコスモジェン砲も名前に『砲』がつくからには兵器にあたりますよね?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

「で、思ったんですけど、あの時は太陽が核融合の異常増進が起きていたからこそ、中和されて太陽が元に戻りましたけど、通常状態の太陽にハイドロコスモジェン砲を撃った場合、太陽が収縮して周辺の星は凍結してしまうのではないでしょうか?」

 

「そうだな。そうなるとハイドロコスモジェン砲も波動砲同様、人類が使用するには過ぎた武器なのかもしれないが、地球人類は保有してしまったからには絶対に間違った使い方をしてはならないと言う責任がある」

 

「となれば、ハイドロコスモジェン砲はこのまま解析されないか解析できない方がいいのかもしれませんね」

 

「‥‥」

 

良馬の言葉に真田は神妙な面持ちだった。

 

身の丈に合わない力はいずれ、自分たちに牙を向けて自らを滅ぼすかもしれない可能性を孕んでいる。

 

地球人類は既に波動砲と言う強力な兵器を保有しているが、それに次いで太陽の騒動でハイドロコスモジェン砲を保有する事になった。

 

何時の日かハイドロコスモジェン砲の原理が解析される日がくるのかもしれないが、その時、地球人類がシャルバート星の人たちみたいな精神に成長していれば、ハイドロコスモジェン砲を間違った使い方をする事は無いだろう。

 

今の自分たちには未来の地球人類の成長に期待するしか出来なかった。

 

 

太陽の核融合異常増進騒動が終息し、地下都市に避難していた人類は地表へ戻り、復興をしつつ騒動の前の生活へ戻りつつあった。

 

それは宇宙戦士訓練校も同様の事で、騒動で遅れたカリキュラムを取り戻そうとしていた。

 

揚羽と土門の戦死の報を受けたティアナとうららであったが、二人の事は忘れないが、いつまでも引きづっていても二人は蘇らないで、ある程度は割り切って宇宙戦士になるための訓練と座学を送る日々に戻っていた。

 

そんな宇宙戦士訓練校の飛行科演習場にて、

 

一機の訓練機が物凄い速度で上昇したと思ったら次は急降下し、地上に設置されているゲートの間を高速でくぐっていく。

 

「おぉぉー‥‥」

 

「すげぇ‥‥」

 

「揚羽並みの飛行センスがあるな」

 

練習機の動きを見ている他の訓練生たちも感嘆の声を上げる。

 

やがて練習機は駐機場へと降りて来た。

 

機体が完全に停止し、エンジンが切れた事を確認すると、コックピットのキャノピーが開き練習機からパイロットが降りてくる。

 

「お疲れ、大分上達したじゃない」

 

練習機のパイロットに声をかけてきたのはうららであり、その練習機のパイロットは‥‥

 

「ふぅ~でも大気圏と宇宙じゃあきっと勝手が違うから宇宙空間でも慣らしたいわ」

 

ヘルメットを取ると頬に魚の骨の様な傷が特徴的なオレンジ髪をした女性‥‥ティアナだった。

 

「でも、意外だったな」

 

「ん?何が?」

 

「いや、ティアナって射撃が得意じゃない?だから砲術科に進むのは当然だとして、併用して飛行科のカリキュラムも受けるなんて」

 

「あぁ~‥空にはそれなりに憧れもあったのよ」

 

「へぇ~」

 

ティアナの死んだ兄、ティーダには空戦属性があったからこそ、彼は“空”に所属し、執務官を目指していたが、妹のティアナには残念ながら空戦属性は受け継がれなかった。

 

そのため管理局の士官学校の受験要項を満たしていなかったので、受験すらできなかった辛い経験がある。

 

しかし、この地球では大気圏・宇宙空間の両方で使用可能な戦闘機が存在しており、実力と本人の努力次第では空を飛ぶことが出来る。

 

元々バイクを趣味にしていたティアナにとってスピード感と空を飛ぶことの出来る戦闘機はまさにティアナには憧れる乗り物であり、ミッド時代と異なり折角戦闘機に乗ることが出来る絶好のチャンスだったので、ティアナは砲術科以外に飛行科も受講していた。

 

次世代の宇宙戦士たちは着実に育っていた。

 

騒動の最中にガルマン・ガミラスからの使者として地球圏へやってきたデスラーの娘であるジュラたち特使団一行。

 

太陽の核融合異常増進騒動が終息したので、特使団一行と地球連邦政府代表との間でガルマン・ガミラスと地球との同盟締結についての会談が再開された。

 

公にされてはいないが、あの太陽の核融合異常増進騒動の原因がガルマン・ガミラスのプロトンミサイルの流れ弾である事を地球連邦政府のごく一部の者たちは知っていた。

 

それ以前にガミラスによる地球への遊星爆弾による戦争行為などガルマン・ガミラスとの同盟については大きな壁があった。

 

しかし、太陽の核融合異常増進騒動についてガルマン・ガミラスは地球の為に太陽制御を行った。

 

結果的に太陽制御は失敗に終わってしまったが、優秀な技術士官は命を懸けてまでこの作戦に挑み、地球を救おうとした行動に関しては敬意に値する。

 

それに今現在もガルマン・ガミラスと交戦しているボラー連邦‥‥

 

第二の地球探査の最中で、地球はボラー連邦から完全に敵視されており、今後も太陽系外にある地球の植民惑星や太陽系へ侵攻して来る可能性もある。

 

外宇宙からの侵略に関してガルマン・ガミラスとの同盟は両国間で技術交換を行い軍の装備強化も夢ではない。

 

ガルマン・ガミラスでは既に次元潜航艦も運用しているので、地球の潜宙艦技術も進む。

 

地球の未来を考えるのであるならば、過去の遺恨を断ち切るべきなのだろうが、そう簡単に断ち切れるものではないのも事実であった。

 

会談に臨んでいる地球連邦政府の代表団も連邦市民による反ガミラス感情を何とか抑える必要があった。

 

ガルマン・ガミラスとの同盟締結に関してはまだ先になりそうだった。

 

 

ヤマトとまほろばがその船体をドックにて整備をしている中、乗員たちの一部の人事に異動辞令が下る。

 

まほろばの機関長の井上は年齢も考慮されてまほろばの機関長から宇宙戦士訓練校の機関科の教官職に異動し、通信長を務めていたギンガもまほろばから司令部付きオペレーターに異動となった。

 

「はぁ~‥‥」

 

「ん?どうしたの?ギンガ」

 

中嶋家にて、異動辞令が書かれた書類を見ながらギンガはため息をつく。

 

そこへ、地球におけるギンガの養母である加奈江が声をかける。

 

「あっ、お、義母さん‥‥実は今日軍から辞令が来て‥‥」

 

ギンガは自分がまほろばから地上勤務に異動になった事を話す。

 

「なるほど‥‥でも、これまでの航海でギンガは何度か危ない目にあったんでしょう?地上勤務になったのだからそうした危険な部署から安全な部署に移ったんだから、本来なら喜ぶべきなんじゃない?それに司令部勤務なんて女性軍人にしてみればエリートじゃない」

 

「私は別に昇進とか興味ないし‥‥それに多少の危険があっても星の海を渡る艦に乗っている方が何だか生きがいを感じていたのに‥‥」

 

「でも、私としてはやっぱり、ギンガが無事な事の方が大事よ」

 

良馬しか知らないが、クイント・ナカジマからの転生者である加奈江としてはこうしてギンガと再会することが出来た奇跡に心の中で感謝したのだが、ギンガが危険な防衛軍の軍人となり、しかも宇宙艦隊勤務になってからはその身を案じていた。

 

再びギンガの養母となり、例え血の繋がらない養母であっても娘の心配をしない母親が居るだろうか?

 

本来ならば軍人になる事に対しても反対したかった。

 

しかし、ギンガが軍人を志した時、地球はガミラスの手によって滅亡寸前となっていた。

 

ミッド出身のギンガにとってはあの時、軍に志願しなくても良かった筈だ。

 

それにもかかわらず、ギンガは軍に志願して士官学校へと入って行った。

 

そんな娘の成長した姿に加奈江は心を打たれた。

 

それ故に自分はギンガを強く止めることが出来なかった。

 

他にもギンガとスバル、ゲンヤを残して死んでしまい、転生したこの世界で家庭を築いた事に対してギンガに負い目を感じていた事も要因の一つだった。

 

「それは分かっているけど‥‥」

 

「‥‥もしかして、好きな人と離れる事も関係しているのかしら?」

 

「そ、それは‥‥」

 

「あらあら、何だか顔が赤いわよ。もしかして図星だったのかな?」

 

「うぅ~‥‥」

 

「それで、彼氏とはどこまで行ったの?もうキスくらいは済ませたの?それともその先までやっちゃった?」

 

「‥‥」

 

加奈江の追撃にギンガは顔を真っ赤にして俯く。

 

とは言え、加奈江は既にギンガが良馬と関係を持っている事を察していた。

 

こうしてギンガに直接訊ねているのは加奈江がギンガをからかっているのだ。

 

「ほら、ほら、母さんに言って楽になっちゃいなさい」

 

「そ、それは秘密!!」

 

我慢できなくなったギンガは脱兎の如くその場から駆け出して中嶋家の自分の部屋へと駆け込んで行った。

 

「フフフ‥ギンガもまだまだ初心ね~」

 

そんなギンガの様子を加奈江は微笑みながら呟いた。

 

 

地球が四度目の復興作業に追われつつも人々が元の生活を取り戻そうとしている中、軍に関しても今回の騒動から宇宙艦船の見直し案が検討された。

 

ヨーロッパ、アフリカの探査船団は相変わらず音信不通で未だに地球へ帰還していない。

 

第二の地球探査において各国の戦艦喪失は軍としても建造・保有していた国に関しても威信が傷つけられた。

 

航続距離については戦艦群は問題なく、武装について協議された。

 

喪失した戦艦群の内、遭難確認が出来たのがアリゾナだけだった事もあるが、アリゾナは比較的に原型を留めていた事から戦艦は既に完成形に近いと言う結論が出ていた為、また管理局同様、すぐにでも就役させたいと言う軍の事情から戦艦クラスに関してはアリゾナ、ヤマトを基に設計されることになった。

 

そして大規模な見直し設計をされたのが、巡洋艦、駆逐艦クラスであった。

 

これまでの巡洋艦、駆逐艦クラスは主に太陽系内の防衛活動を主体にしていたが、今回の騒動と今後の宇宙開拓を見越して、航続距離の長距離化と武装の強化に着眼点を置き、巡洋艦、駆逐艦クラスもこれまで防衛軍が建造してきた巡洋艦、駆逐艦よりも船体を大型化する事となった。

 

更に駆逐艦クラスに関しては従来の雷撃主体の戦闘スタイルから大型化に伴い防空戦闘を意識する艦影となった。

 

 

ギンガが新たな辞令を受けてから数日後‥‥

 

ギンガの姿は地球防衛軍本部庁舎内にあるレストランにあった。

 

ギンガの向かい側の席には良馬も居り、二人は少し早めの昼食を摂ろうとしていたのだ。

 

「そうか、ギンガは今後地上勤務か‥‥」

 

「はい‥‥出来れば私自身はまほろばで勤務したかったです」

 

「とは言え、軍の人事に関して口は出せないからな‥‥まぁ、軍に所属している以上、こうした異動辞令は決して珍しい事ではないからな‥‥」

 

良馬もギンガも今後、配置部署が異なる件について残念そうだ。

 

(でも、古代艦長と森さんも何度か異なる部署になっていた事もあったな‥‥)

 

(それでも互いの気持ちが離れていない様子から二人の思う気持ちは強いんだろうな‥‥)

 

(でも、俺とギンガの気持ちも二人には負けない筈だ‥‥)

 

「義母さんは、女性軍人にとって本部勤務はエリートだと言っていましたけど、私は別に昇進とか興味ないし、地球で働くよりも星の海を航海していた方が色んな体験を出来て自分自身の経験にもなっていたんですけどね」

 

「でも、地球勤務になって加奈江さんたちはホッとした様子だったんじゃない?それに桜花ちゃんも長い間、ギンガが宇宙で働いていたから構ってもらえる時間も無かったわけだし地球勤務なら休日は家族で過ごせる時間も取れるでしょう?」

 

「まぁ、その点だけは宇宙勤務よりも地球勤務の方がマシですけど‥‥」

 

家族と時間を共に出来る点が唯一の利点ではあったが、ギンガは宇宙勤務でなくなった本当の理由を恥ずかしくて話せなかった。

 

やがて注文した料理が二人のテーブルに届くと愚痴は止めて二人は料理に舌鼓を打つ。

 

「そう言えば、まほろばはドック明けになったらやっぱりアルファ星に戻るんですか?」

 

食事も一区切りがつき、デザートを待っている中、ギンガはまほろばについて良馬に訊ねて来た。

 

太陽の核融合異常増進騒動前にまほろばはケンタウロス座アルファ星の警備として駐留していた。

 

その最中、第二の地球探査に出るヤマトの護衛としてアルファ星を離れた。

 

騒動が沈静化した今、整備を終えたまほろばは再びアルファ星へ向かってもおかしくはない。

 

「まだ正式な辞令が来てはいないけど、恐らくね‥‥ボラー連邦と言う星間国家が確認出来、その国家が地球に対して牙を向ける事がこの前の騒動で確認出来た。それにアルファ星は既に一度、ボラー連邦からの攻撃を受けているし、アルファ星は地球圏に関しての最前線だからね」

 

「そうですか‥‥その‥気をつけてください」

 

「ああ。ギンガも元気で‥‥」

 

食事が終わり別れる際、互いの空気は若干の哀愁があった。

 

良馬は引き続き、まほろばの艦長職であったが、ギンガは地球勤務‥‥

 

何光年も離れた遠距離恋愛となってしまったが二人の気持ちは古代と雪同様、どんなに離れても良馬とギンガの絆は固いモノとなっていた。

 

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