此処で時系列は現在に戻し、視点はミッドチルダからバジウド星系へと移る。
偵察機型のコスモタイガーからの報告で親ボラー派の輸送船団を発見した。
その報告をバース星の防衛軍駐屯基地へ送るとガルマン・ガミラスより輸送船団への攻撃要請がきた。
ただ八雲一隻だけでは護衛艦船も居る為、キツイと言う事からガルマン・ガミラスからは次元潜航艦が援軍として派遣されることになった。
八雲 艦橋
「会合地点は此処か?」
「はい。バース星から送られて来た座標はこの宙域です」
「‥‥レーダーに反応は?」
「ありません」
「‥‥」
「艦長、早く会合しないと輸送船団との距離が開いてしまいます」
「‥‥あと五分待ってこなければ我々で対処するしかない」
瓢はこれ以上の時間のロスは輸送船団との距離の問題が発生する為、会合に時間制限を設け、その時間を過ぎたら八雲一隻で輸送船団に対処する事にした。
「‥‥あっ、亜空間ソナーに反応!!」
会合する艦艇が次元潜航艦と言う事でレーダー以外に亜空間ソナーを使い周囲の様子を探査していた。
すると亜空間ソナーに反応があった。
「戦術長。波動爆雷の用意だ」
「波動爆雷ですか?ですが、ソナーに反応しているのは会合予定の次元潜航艦かもしれませんよ」
「油断は禁物だ。ボラーにも次元潜航艦は存在しているのだからな」
「りょ、了解」
瓢の言う事も尤もであったので、ティアナは波動爆雷の準備を進めた。
一方、八雲近くの亜空間では潜望鏡からその様子を窺っていた人物が居た。
「ほぉ~瞬時に臨戦態勢をとったな」
「バース星からの報告では地球の艦船でも試作型の艦みたいです」
「艦が試作でもああして、我々の存在を確認した後、すぐに臨戦態勢を取ったと言う事はなかなか優秀な人物が指揮を執っているのだろう。浮上だ!!」
「了解。メンタンブロー」
亜空間に潜んでいた次元潜航艦は通常空間に浮上した。
八雲 艦橋
「亜空間より次元潜航艦、浮上!!」
「艦影はガルマン・ガミラスのUX型次元潜航艦です」
「会合予定の次元潜航艦か‥‥」
「援軍を寄越したのは良いが、それでもたった一隻か‥‥」
「他の次元潜航艦の反応はないか?」
亜空間に他の次元潜航艦の反応が無いか瓢は観測員に訊ねるが、
「いえ、亜空間ソナーに反応はありません」
亜空間に浮上した次元潜航艦以外に次元潜航艦が居るかもしれないと思ったが、どうやら本当に援軍に来たのは浮上した次元潜航艦一隻だけの様だ。
「浮上した次元潜航艦より通信が入っています」
「うむ、繋いでくれ」
「了解」
八雲に次元潜航艦から通信が入り、通信士は通信回路を開く。
すると八雲艦橋にあるメインモニターに次元潜航艦の乗員らしき人物の姿が映し出される。
『UX‐234艦長のクロイツ・ストロネストロです』
援軍として来たガルマン・ガミラスの次元潜航艦の艦長はガルマン・ガミラス星人特有の青い肌ではなく、地球人と同じ色の皮膚の色をしていた。
ストロネストロの姿を見て一瞬、啞然とする八雲の艦橋部の乗員たち。
「ストロネストロ艦長、私が八雲艦長の瓢仁です」
とは言え、向こうが挨拶をしたのだからこちらも挨拶をしなければ失礼だ。
瓢はストロネストロに自らの役職と共に自己紹介をする。
『よろしく、瓢艦長。ん?ああ、もしかして私がガルマン・ガミラス人と皮膚の色が異なると疑問にお思いでしょうか?』
「ええ、まぁ‥‥」
ストロネストロは瓢を含む八雲の乗員たちが抱いていた疑問に気付き、その訳を話し始める。
『私たちの母星である惑星国家ゼスはガルマン・ガミラスの同盟国なのです。よって本艦を含め、ゼスで使用している宇宙艦艇についてはガルマン・ガミラスからの供与がありましてね』
「そうですか‥‥」
(なるほど‥だから青い肌ではなく、私たちと同じ肌の色だったのか‥‥)
ストロネストロの説明を聞き納得する一同。
「それで、早速ですが親ボラー派の輸送船団についてですが‥‥」
『バース星の基地から報告は受けております。敵輸送船団の位置については、我が軍が展開しているスパイ衛星により位置は掴んでおります。予想航路と現在位置はそちらに送ります』
「ありがとうございます。ストロネストロ艦長」
『では、お互いに頑張りましょう』
親ボラー派の輸送船団の予想航路と現在位置の情報が八雲に送られてくると八雲は輸送船団の予想航路へと向かい、UX‐234も亜空間へ潜航して現場へと向かった。
親ボラー派 輸送船団 ヴォルグ 艦橋
「‥‥」
ヴォルグの艦橋ではナタレンコフが神妙な顔つきで眼前の宇宙空間を見ていた。
「ナタレンコフ隊長、どうしました?」
心配になった副官が声をかける。
「先ほど接敵した例の偵察機の動向がどうも気になってな‥‥」
「ああ‥‥確かに迎撃に向かわせた艦載機も戻りませんしね」
「あの偵察機には我々が輸送船団と言う事もバレているだろう‥‥もし、母艦に戻って報告をされたら‥‥」
「ガルマン派の艦隊が来るかもしれない‥‥と‥‥?」
「ああ‥‥各艦に通達。周囲の警戒を怠るな。輸送船にも同様の命令を通達しろ。それと陣形も輸送船を中心に護衛の艦は船団の周囲を固めるのだ」
「はっ!!」
副官はナタレンコフの命令を各艦、輸送船すべてに通達した。
しかし、ナタレンコフの不安は直ぐに的中にすることになる。
「我が船団に接近する物体アリ!!」
「なにっ!?まさかまた例の偵察機か!?」
「いえ、レーダーの反応から戦艦ないし大型の巡洋艦かと思われます!!」
「数は!?」
「一隻です!!」
「一隻だと!?間違いないか!?」
「はい!!」
「くっ、一隻とは我々も随分と舐められたモノだな‥‥」
「いかがなさいますか?ナタレンコフ隊長」
「輸送船団は散開し、護衛艦船は戦闘用意!!返り討ちにするぞ!!」
「了解!!」
警戒態勢をしていた親ボラー派の輸送船団であったが、八雲の存在を探知すると、八雲を迎え撃つために非武装の輸送船を散開させて護衛にあたっている武装艦を集結させた。
ボラー連邦護衛艦
八雲 艦橋
「前方に艦隊反応‥‥間違いありません。例の輸送船団です」
「数は?」
「輸送船・護衛の船を合わせて約三十隻」
「針路このまま‥‥戦闘用意」
「ん?船団に動きあり!!陣形を崩して散開しています!!」
「バレたか‥‥戦術長」
「主砲射撃用意!!」
八雲の主砲が旋回し、仰角を上げる。
「撃ち方はじめ!!」
やがて八雲の主砲がショックカノンを放つ。
八雲の撃ったショックカノンは武装艦ではなく、散開していた輸送船に命中した。
八雲としてラッキーパンチであったが、相手にしてみればたまったものではない。
「十一時方向に敵の護衛艦!!」
「敵輸送船、空間煙幕弾を放ち、逃走を図る模様!!」
戦闘宙域はまさに混乱の渦となる。
「くそっ!!味方の護衛は何をやっているんだ!!」
八雲のラッキーパンチを受けた輸送船の乗員たちの一部は運よく脱出ポッドにて、爆沈した輸送船から脱出するが、
「えっ?」
「み、味方の護衛艦が!!」
脱出ポッドに向かって味方の護衛艦が突っ込んでくるとミサイルを多数放つ。
その内の一発が近くに居た脱出ポッドに命中する。
フレンドリーファイアを行った護衛艦が放った残りのミサイルは八雲へと迫っていく。
八雲 艦橋
「敵ミサイル三発、接近!!」
「別方向へ囮ミサイルを放て!!」
「面舵一杯!!」
八雲は迫るミサイルに対して囮ミサイルを使い別方向へと向け、更に船体を右舷側に向ける。
「輸送船の陰から別の護衛艦!!」
「主砲発射!!」
撃沈した輸送船の陰から護衛艦が現れる。
八雲は主砲を放ち、敵の護衛艦も主砲を撃ってくるが、敵の護衛艦は速力を上げて八雲の攻撃を回避する。
しかもその敵護衛艦は輸送船を盾にするかのように輸送船の横を通り抜けていく。
「あいつら、この船を盾にしやがった!!」
護られるはずの輸送船が護るべき護衛艦の行動により被害を受けているあたりこの護衛部隊の練度の低さが窺える。
ヴォルグ 艦橋
「ええい!!なに同士討ちをしておるか!!」
この味方の行動にはナタレンコフも憤慨する。
「たった一隻の敵艦にあんなにも取り乱しおって!!」
「た、隊長!!」
「なんだ!?」
「敵艦が前に!!」
「なにっ!?」
ナタレンコフの眼前には八雲の艦影があった。
「お、面舵一杯!!」
「面舵一杯!!」
ヴォルグは迫る八雲をギリギリで回避する。
八雲が親ボラー派の輸送船団相手にドンパチを行っている中、この宙域の亜空間では‥‥
UXー234 艦橋
「上は派手にドンパチと賑やかだ‥‥我々は八雲が追い散らした獲物を狩るぞ!!魚雷戦用意!!」
「了解!!」
亜空間からの襲撃者の牙も親ボラー派の輸送船団へ向こうとしていた。
ヴォルグ 艦橋
「反転!!敵艦を追え!!」
「た、隊長?」
「このまま奴、一隻にこれ以上滅茶苦茶にされてたまるか!!アイツさえ沈めれば‥‥」
ナタレンコフとしても味方‥特に輸送船をこれ以上失ったり、傷つける訳にはいかない。
輸送する物資が少なくなればなるほど、反ガルマン派の同志の戦況は悪くなるのだから‥‥
八雲 艦橋
「敵の護衛旗艦らしき艦、反転します!!」
「あの艦だけ形状と大きさが他の護衛艦と大きく違うと思っていたけど、やっぱりアイツが親玉みたいね」
(アイツさえ沈めれば、敵輸送船団は指揮系統を失い更に混乱する筈‥‥)
「敵旗艦、左舷上方より発砲!!」
「右舷へ回避!!」
八雲は右側に船体を捻りヴォルグの攻撃を躱すが。左舷側に敵のショックカノンが掠った。
「三番砲塔撃て!!」
八雲も後部にある三番主砲で応戦する。
ヴォルグ 艦橋
八雲の反撃を受け、ヴォルグは船体下部中央あたりに被弾する。
被弾の衝撃で艦橋は大きく揺れる。
「うおっ!!」
「うわっ!!」
「船体下部中央に被弾!!」
「機関、推進力に影響が!!」
「くっ、なかなかやる‥‥」
反撃を受けナタレンコフは悔しさに顔を歪ませる。
八雲 艦橋
「推力上昇!!上げ舵一杯!!今度は本艦が敵の後方上部へつけろ!!」
「了解!!」
瓢の指示を受け、八雲の航海長は操艦レバーを目一杯手前に下げて艦を持ち上げる。
そして大きく旋回してヴォルグの後部上方につける。
ヴォルグ 艦橋
「敵艦、本艦の後部上方に居ます!!」
「こちらも反転し、艦首を奴の正面に向けろ!!」
ヴォルグはスラスターを吹かし、艦首を上方から迫る八雲へと向ける。
「主砲撃て!!」
回頭を終えるとヴォルグは八雲へ主砲を撃つ。
しかし、八雲は今度、回避行動をとらずにヴォルグへと突っ込んできた。
「な、何て奴だ!?かわさずに突っ込んでくるとは!?」
八雲の行動にナタレンコフは驚愕する。
ヴォルグは主砲を撃ったが、八雲はヴォルグに向けてミサイルを放つ。
「ミサイル、高速接近!!」
「右方向へ回避!!躱したら直ぐに反撃に移る!!」
ヴォルグは右方向へ船体をずらし、ミサイルを回避するが、
「あっ!!またミサイルです!!」
「しまった!!こちらの回避行動を読まれていたか!?全力加速!!」
ヴォルグの回避行動を読んだティアナは最初のミサイルを囮にして本命のミサイルをヴォルグが回避するであろう方向へ放っていた。
ナタレンコフは、方向転換は既に間に合わないと判断し、このままの針路で速力をあげてミサイルを回避しようとしたが間に合わず、ミサイルはヴォルグの後部に多数命中した。
やはり最初の被弾時に機関部に影響が出ていた事が致命的であった。
「わああっ!!」
最初のショックカノンの命中よりも更に大きな衝撃がヴォルグ全体を襲う。
その衝撃でナタレンコフも指揮席から放り出される。
「ウっ‥‥お、俺としたことが‥‥」
指揮席から放り出され身体を打ち、痛みを我慢しつつ起き上がるナタレンコフであるが、身体の痛みよりも此処まで手酷くやられた事の方が悔しくその怒りが勝っている状態となっている。
「ひ、被害は‥‥?」
起き上がり、艦の被害状況を訊ねる。
自分以外の艦橋員たちも席から放り出されている者たちが居た。
「機関部被弾!!推進力が低下しています!!」
「艦のコントロールも不安定です!!」
「くっ‥‥生きているスラスターを使い、何とかして艦首を奴にもう一度向けろ!!体当たりをしてでも奴を仕留める!!」
「りょ、了解‥‥」
「このままむざむざやられる俺ではないぞ‥‥」
ナタレンコフは刺し違えても八雲を沈める覚悟でいた。
八雲 艦橋
「ミサイル第二波、敵艦後部に命中!!機関部に損傷を与えたと思われます!!」
「敵艦態勢を整え。再び本艦に艦首を向けています!!」
「敵も最後の勝負に出たか‥‥砲撃用意!!目標、敵護衛旗艦!!」
「了解!!砲撃用意!!目標、敵護衛旗艦!!
八雲の第一、第二主砲がヴォルグへと向けられる。
そして、二隻はほぼ同時に主砲を放つ。
ヴォルグの主砲は八雲の波動砲と左舷の船体部に命中する。
「うわぁっ!?」
「きゃっ!!」
「くっ‥‥」
敵の主砲が命中したことにより八雲の船体は大きく揺れる。
一方、八雲が放った主砲はヴォルグの艦首にある艦載機の発進口の中と艦橋部に命中した。
艦橋部の命中により、ナタレンコフを含め艦橋の乗員全員が戦死し、艦載機の発進口に命中したショックカノンは、格納庫にあった艦載機のミサイルや爆弾、燃料に引火して大爆発を起こし、ヴォルグは轟沈した。
「敵旗艦の轟沈を確認!!」
「艦の被害状況は!?」
「左舷船体部と波動砲付近を損傷!!」
「艦長、念のため、波動砲の使用は控えて下さい!!」
波動砲付近に被弾し、装甲板が変形したかもしれないので、波動砲を撃てば不具合が起きる可能性があるので、ティアナは瓢に波動砲の使用を控えるように進言した。
と言ってもこの混戦状態で波動砲を撃つ余裕もないのだが、念のためである。
「うむ、諸君、敵の旗艦は撃沈できたが、敵はまだ残っている。波動砲と言う切り札が封じられてもまだまだ本艦の戦闘能力は残されている。戦いはまだ続くぞ!!最後まで油断せずに行くぞ!!」
「はい!!」
「了解!!」
瓢は艦長席より乗員たちを鼓舞し、乗員たちもそれに応えるかのようにキビキビと動くのだった。
ヴォルグと八雲が戦っている時、他の護衛艦がヴォルグの援護に回らなかったのは、二隻が戦っている中、亜空間からの刺客が輸送船団に襲い掛かっていたからだ。
UXー234
「艦首魚雷発射管、一番から六番まで装填!!」
UXー234の艦長、ストロネストロも攻撃準備を行う。
「亜空間魚雷、一番から六番まで装填」
UXー234の艦首部にある魚雷発射室では亜空間魚雷が魚雷発射管へ自動装填されていく。
「亜空間魚雷、一番から六番まで発射準備完了!!」
「潜望鏡を出せ」
ストロネストロは潜望鏡で敵との距離と方向を確認して、諸元入力をさせる。
「発射!!」
「発射」
UXー234から亜空間魚雷が輸送船団に向けて発射される。
八雲とヴォルグが一騎打ちに近い形で戦っているので、護衛艦はヴォルグを援助しようとしたら、突如どこからか魚雷が迫り、輸送船、護衛艦の船体に命中する。
「魚雷だ!!」
「どこから来たんだ!?」
「敵艦はヴォルグと戦っている筈なのに‥‥」
どこからともなくやって来た魚雷に親ボラー派の将兵たちは困惑する。
「第一波命中‥‥続いて第二波、発射用意。それと次は魚雷と共にミサイルも撃て」
「了解」
ストロネストロは次に魚雷の他に艦首上面にあるミサイルでの追加攻撃を下令する。
UXー234が護衛艦の相手をしていたので、八雲はヴォルグとの戦いに集中できたのであった。
「艦長、地球艦がどうやら護衛艦隊の旗艦を沈めたみたいです」
「ほぉ~地球の艦もなかなかやるではないか。我々も負けてはならぬぞ。あの輸送船団の艦、全てを喰らいつくす勢いでゆくぞ!!」
『おう!!』
ヴォルグの撃沈は親ボラー派の輸送船団にしては士気を低下させ、逆に八雲とUXー234の士気を上げる結果となった。
旗艦が撃沈され、通常空間からは見えない亜空間からの魚雷とミサイル攻撃で親ボラー派の輸送船団は反恐慌状態となり、隊列も秩序もあったものではなく、非武装の輸送船は逃亡を開始し、護衛艦も逃亡する艦、旗艦の敵討ちだと言わんばかりに八雲へ戦いを挑む艦など戦場は大混乱となる。
「逃げる艦は放っておけ、まだ交戦して来る敵艦のみ攻撃しろ!!」
瓢は逃げ散る敵を追いかけてはUXー234との連携が難しくなると判断したからだ。
八雲は交戦意思がある親ボラー派の護衛艦を片っ端から撃ち落していく。
敵の護衛艦は被弾しコントロール不能となり、味方と衝突する艦もあった。
その内の一隻が火を噴きながら体当たりで八雲へ突っ込んで来た。
「あ、危ない!!」
「航海長!!取舵一杯!!」
「と、取舵一杯!!」
八雲の航海長が必死に操艦し、回避行動に移る。
しかし、八雲の懸命の回避行動もむなしく、敵の護衛艦は八雲の横っ腹に激突し、敵艦の艦首部が八雲の船体に突き刺さった。
敵の護衛艦の衝突で八雲は被弾した時よりも大きく船体が揺れた。
八雲の横腹に食い込んだまま、敵の護衛艦は猛煙に包まれ爆発が続いている。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぐぁぁぁ!!」
敵護衛艦の艦橋は爆発に巻き込まれ、天井部分が崩落し艦橋員たちはその瓦礫の下敷きとなっていく。
「しょ、諸君、良く戦った‥‥そ、祖国万歳‥‥」
そして、護衛艦の艦長も瓦礫に飲み込まれた。
八雲の艦橋では非常事態を示す赤色灯が灯り、艦内には警報が鳴り響いている。
「左舷、中央部に敵艦、艦首追突!!」
「後部連絡通路破損!!」
「艦尾ミサイル発射室炎上中!!」
「技術班、第一戦闘武装にて現場に急行!!衝突部の隔壁は緊急閉鎖!!敵艦を切り離せ!!」
「艦尾ミサイル発射室、緊急消火装置を作動させろ!!」
「艦内戦闘用意!!戦闘班も第一戦闘武装で技術班と共に現場に急行せよ!!」
「医療班、生活班は負傷者の救助と応急手当てを!!」
表の戦闘は終わったが、敵艦の突入と言う事態に艦橋を含め、八雲の艦内はてんやわんやの大騒ぎであり、そんな中で衝突した敵艦の乗員たちが八雲に白兵戦を仕掛けてくる可能性を考慮してティアナは戦闘班にも武装をして現場に向かわせる。
「艦長、私も現場に向かいます!!」
「うむ、頼んだぞ」
「気を付けてね、ティアナ」
「はい!!」
そしてティアナもヘルメットを被り自らも現場に行く旨を伝え、腰にあるホルスターからコスモガンを抜き、敵艦の衝突現場に向かった。
敵艦との衝突現場では、既に八雲と敵護衛艦の乗員たちとの銃撃戦が繰り広げられていた。
敵の艦種が護衛艦で追突するまでに乗員の大半が既に戦死、もしくは負傷していた事で八雲の艦内に侵入して来た敵の人数はそこまで多くなかったのが幸いした。
「負傷者の退避を優先に!!戦闘班は技術班と医療班を援護!!」
現場に到着したティアナは戦闘班の指揮を執りつつ白兵戦を繰り広げる。
やがて、艦内に侵入してきた敵兵を全て倒し、
「艦長、侵入してきた敵は全て排除しました。現在、負傷者の集計と医務室へ運んでいます」
「御苦労だった。念の為、敵がまだ潜んでいないか周辺区画の探索を念入りに行ってくれ」
「了解」
敵艦衝突現場から負傷者の移送が終わるまで、ティアナたちは敵兵の生き残りが居ないか探査を行う。
そして、負傷者の移送と周辺探査が終わると、
「艦長、負傷者の移送及び周辺の探査終了。生き残った敵は確認できません」
「うむ、分かった。これより敵艦を切り離す。全員を現場から退避させよ」
「了解。これより敵艦を切り離す。この区画は完全隔離する。総員、退避!!」
ティアナは衝突現場に居る戦闘班と技術班は一時退避させる。
「機関室、直ちに制御スラスターを逆噴射、敵艦を切り離せ」
「了解」
戦闘と負傷者の移送、敵の残党の確認が済み、八雲は突き刺さった敵艦との切り離しを行う。
バキバキ‥‥と、金属が擦れるような音と共に八雲に突き刺さった敵艦は離れる。
敵艦との距離を取ると敵の護衛艦は爆発をして消滅した。
「副長‥‥」
「はい」
「‥‥人的被害の確認を‥技術班は応急修理を急げ」
「はい」
「了解」
ギンガは医務室へと向かい、負傷者たちの状況を確認する。
戦闘が行われた事で医務室は血塗れの負傷者で溢れていた。
(やっぱり、この光景だけは慣れないわね)
まほろば時代から戦闘で負傷者した乗員の手当ても手伝ったことがあるが、手当ての甲斐空しくそのまま戦死してしまう乗員たちも見て来た。
彗星帝国戦役の時はギンガも任官したてで要塞都市の攻略戦時は特に負傷者が続出していたことで今でも強烈に脳裏に焼き付いている。
あのような経験は管理局員ではほぼ体験することはないと思ったくらいだ。
ギンガも医療班と共に応急手当てに参加した後、医務長から人的被害についての結果を集計した。
「艦長、負傷者の集計、終了しました」
「そうか‥‥それで、被害は?」
「‥‥戦死者九名‥‥重軽傷者十七名です」
「‥‥分かった。ありがとう」
戦闘が行われたのだから被害は当然出る。
八雲の本格的な戦闘により、初の戦死者が出る結果となった。
先程までドンパチ賑やかな宇宙空間は、先ほどの戦闘が噓のように静まり返っている。
八雲の前部上甲板には祭壇が設けられ、戦死者たちの身柄が納められた棺が置かれた。
整列している乗員たちの前でおごそかに宇宙葬が始まった。
瓢は艦長として弔辞を述べる。
「任務の為に命をかけ志半ばで斃れたた全ての勇姿に送る。君たちの心は我々の心に蘇り、明日の地球の力となるだろう。我々は決して君たちを忘れはしない‥‥忘れない‥‥」
「敬礼!!」
ギンガが号令をかけると乗員たちは戦死者に敬礼を捧げ、
「撃て!!」
ティアナの合図でビームライフルを持った戦闘班員たちが宇宙に向けて弔砲を放つ。
その中を戦死者が納められた棺を持った乗員たちが歩みを進め、次々と船弦から棺を宇宙空間へと流していく。
八雲の隣にはUXー234が航行しており、その甲板には艦長のストロネストロ以下、十数名の乗員たちの姿もあり、彼らも敬礼して戦死者たちの棺を見送った。
宇宙葬を追え、技術班が傷ついた八雲の船体を応急修理している中、
「艦長、UXー234より通信が入っています」
「繋いでくれ」
『瓢艦長、任務ご苦労様でした。それと戦死者に対し、お悔やみを申し上げる』
「ありがとう。ストロネストロ艦長」
『当初の目的である敵輸送船団は大半を撃沈することが出来た。殲滅は残念ながら出来なかったが、上々の結果だろう。それで、貴艦は先ほどの戦闘で随分と損傷したが、今後の予定はどうなっている?』
「バース星での流行り病が沈静化するまでは哨戒任務を続けなければなりませんが‥‥何分、敵艦が突き刺さった事と波動砲付近での被弾が致命的ですので、一度ドックで本格的な修理を行いたいところです」
『そうですか‥‥それなら、我が母星ゼスにて修理補給を行ってはどうだろうか?』
流行り病がまだ沈静化していないバース星に戻るより惑星ゼスで修理を受けた方が、乗員の健康面では安全である。
「よろしいのでしょうか?ストロネストロ艦長」
『ええ、あなた方は共に戦った戦友ですから』
「分かりました。御厚意に感謝いたします」
こうして八雲はストロネストロの厚意により、応急修理と補給の為、ストロネストロたちUXー234乗員の故郷である惑星国家ゼスへ向かうことにした。
勿論、向かう前にバース星の司令部へ一報を入れる事も忘れはしない。
『そうか、初の哨戒任務で戦死者が‥‥』
「はい。八雲の船体と波動砲にもダメージを負いました」
『まさかそこまでのダメージを負うとは‥‥』
「そこで、今回作戦を共にしたUXー234のストロネストロ艦長の御厚意により、惑星ゼスへ赴き、艦の補修を行いたいと思います」
『分かった。任務ご苦労だった』
バース星の司令部からの了承を受け、八雲はUXー234の案内の下、惑星ゼスへと向かった。
八雲一隻が数日の間、哨戒任務から離れるのは正直支障をきたすかもしれないが、流石に壊れたままの八雲でバジウド星系の哨戒任務はキツイだろうと言う判断であった。
それに八雲一隻でこのバジウド星系の哨戒を行っている訳ではない。
UXー234の様に親ガルマン派の同盟国もあり、ガルマン・ガミラス東部方面軍も全てがボラー連邦領へ遠征に向かっている訳ではない。
八雲が補修中、此処は彼らに頑張ってもらう事になるだろう。
ワープを行い八雲は惑星ゼスの近くまで進出した。
「前方に惑星反応‥‥目的地の惑星ゼスです」
「あれが惑星ゼスか‥‥」
「地球やイスカンダルみたいに青い星ね」
ギンガは惑星ゼスを見て、その青さから地球・イスカンダルと似た印象を受けた。
八雲は惑星ゼスへと降下して行き、ストロネストロが指定した艦船ドックへと着陸した。
バース星は極寒の星であったが、惑星ゼスは地球で言う所の沖縄の様な気候の星で一年を通して住みやすい温度の星であった。
海も宇宙から見た様に水平線へどこまでも続く青く澄んでいる綺麗な星であった。
「機関停止」
「ガントリーロックの固定を確認」
「各部総チェックを行え。特に波動砲部分と敵艦衝突部分は念入りに頼む」
瓢が艦内放送で修理作業を命じ、技術班を中心として八雲の乗員たちは修理と点検に入るのだった。
バジウド星系で八雲がイレギュラーに継ぐイレギュラーな任務を行っている中、ケンタウロス座アルファ星産のオスニウム鉱石を満載した輸送船の護衛でアルファ星から地球へ向かったまほろばは間もなく、地球へ到着しようとしていた。
「火星を通過した。通信長、輸送船団の現在位置と地球到着時間を防衛軍司令部へ報告せよ」
「了解」
良馬はギンガの後任で新たに通信長の役職に就いた武部沙織が防衛軍司令部へ通信を送る。
そして、輸送船団を無事に地球へ送り届けたまほろばはドックへと着陸し、輸送船はこの後に荷下ろしがあるので、指定された港湾地区へと着陸していった。
まほろばが着陸した隣のドックにはヤマトの姿があった。
「おっ、まほろばが帰って来たみたいだな」
ヤマトの整備をしていた真田がドックへ入港してきたまほろばに気づく。
「まほろばは最近、ケンタウロス座アルファ星を中心に活動をしていましたからね」
真田と共にヤマトの整備状況を確認していた艦長の古代もここ最近のまほろばの行動を思い出すかのように呟く。
「そう言えば真田さん。今更ながらなんですけど‥‥」
「ん?なんだ?」
「まほろばはどう言った経緯で建造されたんですか?」
古代は本人も言ったが、今更ながらまほろばの建造経緯が気になり、真田に訊ねた。
真田ならば、まほろばの建造経緯を知っていそうで、何ならその建造にも関わっていそうだからだ。
「本当に今更だな」
真田は苦笑しながら古代にまほろばの建造経緯を説明する。
「以前、アンドロメダの艦橋でアンドロメダの建造経緯を話したことがあっただろう?」
「ええ、確か『お偉いさんはヤマトの勝利を機械族の勝利と錯覚している』‥でしたっけ?」
「そうだ。まほろばの建造経緯もそれに似たようなモノで、『ガミラスに勝利した機械族のヤマト‥それを発展強化した艦こそ地球の新たなる守護神となるだろう』‥‥そんなコンセプトでまほろばの設計・建造されたんだ」
「でも、あの時の連合艦隊旗艦はアンドロメダが務めていましたよね?」
「そうだ。まほろばが建造されてから、途中でコンセプトが変わったんだ」
「変わった?」
「ああ、『ヤマトの勝利のカギは波動砲であり、その波動砲を単発式から連装式に備えた艦の方が強いのではないか?』とな」
「確かにあの時の軍令部や政治家の連中なら考えていそうなことですね。それでアンドロメダ級を建造したんですね。でも、そうなるとまほろばの建造は中止になるんじゃあないんですか?」
「その時はまほろばは既に六割程建造されていたし、防衛軍としても軍の再建は急務だったからな。まほろばは連合艦隊旗艦の座に就くことはなかったが、建造されて月村が艦長になった訳だ」
「そんな経緯が‥‥」
古代は真田からまほろばの建造経緯を聞いて当時の政府・軍部の思惑に納得した。
まほろば 艦橋
「本艦は第二ドックへ到着しました」
「ガントリーロック固定確認」
「電源を機関から陸上電源へ切り替え」
「‥‥切り替え完了」
停泊準備が着々と進み、乗員たちは久しぶりの地球の地へ足を着ける。
「さて、俺も降りるか‥‥」
良馬は艦長と言う立場から一番最後にまほろばを降りた。
その際、良馬の視線の先に古代の姿が見えた。
「古代艦長!!」
「ん?ああ、月村艦長」
「ちょっと折り入って話したいことがあるので、少々お時間を貰ってもいいかな?」
「えっ?俺に?まぁ、いいですよ」
良馬は古代に話したいことがあったので、彼に声をかけたのだ。
古代から了承を得た良馬はドックの近くにあるファミレスに入る。
飲み物を頼み、注文した品が届くまで古代は若干気まずさを覚える。
(月村艦長が俺に話って一体何だろう?)
それと同時に良馬が自分に一体どんな話があるのかも気になった。
やがて注文した飲み物が来て、ウェイトレスが去っていくのを確認したら良馬が口を開いた。
「古代君は森さんといつ頃結婚するの?」
「ゴフッ!!‥‥ゴホッゴホッ」
良馬の質問に古代は飲んでいた飲み物を盛大に吹き、気管支に入ったのかせき込む。
「と、突然なんですか!?」
「いや、第二次イスカンダル遠征前に英雄の丘で飲み会をした時、結婚を延長するって言っていたけど、あれから数年が経つし、そろそろかと思って‥‥」
「‥‥」
良馬の言葉を聞き、古代は気まずそうに視線を逸らす。
「ん?どうしたの?」
「いえ、多分、雪も月村艦長と同じだと思います」
「ん?」
「その‥‥俺との結婚について‥‥本来ならば、俺と雪はとっくに結婚をして子供の一人か二人ぐらいはいたと思うんだけど‥‥」
古代と雪は本来、彗星帝国戦役直前に式を挙げる予定であったが、アンドロメダ星雲より飛来してくる巨大彗星と謎のメッセージの解明から地球が新たな侵略者に狙われていると思い改装が終わったばかりのヤマトを半ば奪取するような形でメッセージの発信元であるテレザート星へと向かった。
その後、彗星帝国戦役後に二人は結婚を延期し、第二次イスカンダル遠征、暗黒星団帝国の地球襲来、太陽の核融合異常増進に伴う第二の地球探査とあまりにも色々な出来事がた手続きに起きた事で古代と雪の結婚は延期し続けている。
「何だか、結婚の事を具体的に考えようとすると必ず何か事件が起こって‥‥それも地球の存亡にかかわるような大事件ばかり‥‥」
「なるほど、その様な経緯が重なると結婚に対して消極的になってしまうと‥‥」
「はい。そう言う月村艦長の方はどうなんですか?」
「ん?」
「そろそろ身を固めなくていいのですか?」
「うん、実は話したいと言うのはその点であって‥‥」
「えっ?」
「周囲で婚約者が居るのって古代君だけなんで、結婚のタイミングとか聞きたくてね」
「ああ、そういう事ですか‥‥」
「うん。余談だけど、プロポーズの言葉やシチュエーションとかはどんな感じだった?」
「‥‥俺が雪の事を異性と意識したのはガミラスとの戦いで地球を目前にしている時でした‥‥あの時、デスラーは放射能ガスをヤマトの艦内に送り込んで白兵戦を仕掛けてきました。そんな時に雪はヤマトの艦内工場で造られたばかりのコスモクリーナーを作動させて放射能ガスを消しました。ただその副作用で周囲の空気まで消滅させてしまい、雪は仮死状態になりました」
「コスモクリーナーにそんな副作用が‥‥」
「はい。雪が動かした事によって判明した副作用であり、後に真田さんが修正してくれました。ですが、あの時俺は雪が本当に死んでしまったのかと思いました。それと同時に雪の大切さと自分が抱いている雪への好意に気づきました」
本当に大切なものは失ってはじめて気付く‥‥そんな言葉の通り、古代は雪の大切さをあの時に思い知らされたのだ。
「それからヤマトが地球へ戻った後、俺は直ぐに雪に思いの丈をぶつけ、雪もそれに応えてくれました」
「なるほど、二人の間でそのような事が‥‥」
古代と雪の馴れ初めを真剣に聞く良馬。
「月村艦長の方はどんな経緯があったんですか?」
古代も当然良馬とギンガとの間でどんな経緯があったのかを訊ねて来た。
こちらが聞いて答えてくれたのに、答えないのは失礼にあたるので、良馬と古代に自分とギンガの馴れ初めに至る経緯を話し始めた。
今回登場したUXー234の艦長であるクロイツ・ストロネストロのイメージはSUBMARINE SUPER99のアニメ版に登場したゼ・ストロネストロであり、名前は漫画版のクロイツ・H・ハイムマンからとりました。