星の海へ   作:ステルス兄貴

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十二話 それぞれの思いとそれぞれの戦い ギンガ編

 

 

場面はギンガが桜花とアギトが監禁されたビルに突入する前に戻る。

源三郎は逐次、捜査にあたっている憲兵隊と連絡をとり、捜査の進展状況を聞いている。

そして、ある区画に設置されているNシステムに犯人が使用したと思われる車の目撃情報があり、それ以降この車の目撃はなく、源三郎はこの区画に桜花とアギトが居るものだと判断して、ギンガと紅葉に加奈江の事を任せ自らが桜花とアギトを探そうとした。

車に乗り込むと何故かギンガまでもが乗り込んできた。

 

「き、君はっ!?どういうつもりだ?」

 

「私も一緒に探しに行きます」

 

「し、しかし‥‥」

 

「私はこう見えても元の世界では捜査官をしているんです。きっと、何かのお役に立てる筈です」

 

「君が?‥そうか、分かった」

 

源三郎としては、今は一人でも人手が欲しい為、ギンガの動向を許可した。

ギンガを乗せた車は最後の目撃情報があった区画へと向かった。

しかし、区画とはいえその広さは広大で憲兵隊も捜索隊を送ったが未だに発見できずまた監禁場所は別の区画なのではないかと他の区画にも捜索隊を送っている為、捜索隊の人数は多いとは言えない。

 

ギンガと源三郎も互いに分かれて捜索することにした。

彼女は源三郎と別れた後、周囲に人が居ないかを確認した。

 

(もう二度と使わないって決めたけど‥‥人として生きるって誓ったけど‥‥人として育ててくれた母さんと父さん、そしてスバルにも‥‥でも、ごめんなさい。壊す事にしか特化しなかった大嫌いだったこんな「力」でも、あの子の‥‥あの人達のために役立つならきっと、私は誇ることができるから!!)

 

意を決して、長い間封じ続けてきた力のスイッチを入れ始めるギンガ。

意識して完全な形で発動する。

それによって何が起こるかは、ギンガ自身が一番知っていた。

これまで築いてきた自分、「人間」としての自分。

それを壊してしまうかもしれない恐怖はあるがそれに勝る物を得たのだから。

次元漂流した自分を暖かく迎えてくれたあの家族に家族の一員を失うと言う自分と同じ経験をさせたくない。

覚悟を決めたギンガは、禁忌を破る為に静かに目を閉じる。

次の瞬間、封じ続けてきた力と共に閉じた眼を開く。

開かれたギンガの目は普段のエメラルドグリーンの瞳から金色の瞳に変わっていた。

 

金色の瞳‥‥それはギンガ達、戦闘機人が普段の常人モードから破壊と殺戮の為この世に生を受けた戦闘機人モードになった証でもあった。

しかし、理性を失い凶暴化するわけではない。

戦闘機人の大きな特徴は魔導士の鬼門であるAMFでも戦闘機人独特の能力、inherent skill 通称ISと呼ばれる能力を駆使し、敵を殲滅する事が出来る。

ギンガは再び、目を閉じ意識を集中する。

 

(桜花はリンカ―コアを有していた‥‥それなら魔力反能がある筈‥‥たとえAMFが充満していても戦闘機人モードになればAMFを無視して魔力を探知できる‥‥)

 

(何処?‥‥何処に居るの?桜花‥‥)

 

ギンガが意識を集中し、桜花の魔力を探す。

 

(っ!?見つけた!!待っていて!!桜花!!)

 

そして、桜花の魔力を探知するとその場に向けて一気に駆けだした。

源三郎や捜索隊に連絡をするのを忘れて‥‥

 

やがて、桜花が監禁されていると思われるビルに到着すると、

 

(っ!?桜花の魔力が跳ね上がっている!?一体何が‥‥?)

 

探知していた桜花の魔力が急に魔力レベルが上がったのだ。

 

「桜花!!」

 

ギンガは桜花の身に何か遭ったのだと思い、桜花の下へと急いだ。

そして、

 

「遅れてごめん。助けにきたわ。桜花」

 

邪魔な壁を壊して桜花の居る部屋へと飛び込んだギンガの目には身体の周りに青白い魔力光を身に纏った桜花の姿があった。

そして、床に倒れている小さな女の子(アギト)の姿も‥‥

 

「ギンガさん?」

 

いきなり壁を突き破って来たギンガに男たちはもちろん、桜花も驚いた様子だった。

 

「貴方たち、覚悟はできていますね?生憎今の私は、心底頭にきていますので‥‥ちょっと手加減は出来ませんよ」

 

「何訳の分からねぇことを言っていやがる?女一人が飛び込んで来て何が出来る?」

 

「よくよく見ればこの女もなかなか良い女じゃねぇか、そこのガキ共々、良い声で鳴いてもらおうか!!」

 

一人の男がギンガに襲いかかった。

しかし、

 

ギロッ

 

「っ!?」

 

ギンガがその金色の瞳で男を睨むと急にその男はピタリと固まる。

 

(な、なんなんだ?コイツ?女の‥‥ただの一睨みなのに身体が動かねぇ‥‥)

 

「て、てめぇ! い、今いったい何しやがった!!」

 

「今見た通り、ただ睨んだだけよ」

 

「ふ、ふざけんじゃねぇ、んなハッタリにビビると思うんじゃねぇぞ!! 野郎ども、やっちまえ!!」

 

相変わらず、未知の相手や現象に自分ではなく、部下を先兵に使うリーダーだった。

しかし、戦闘機人モードになったギンガ相手に非魔導師の男達はあまりにも非力で、更に魔力で身体強化した桜花も加わり、誘拐犯は瞬く間に殲滅された。

まぁ、相手も丸腰の女一人と慢心していた事も一因であったが‥‥

誘拐犯を殲滅した後、ギンガは源三郎に渡されていた携帯端末で源三郎を呼び、彼と憲兵隊が来た時には誘拐犯たちは、全員ボコボコにされた状態で床に転がっており、担架に乗せられ憲兵隊本部ではなく病院へと搬送された。

そして桜花を守ったアギトも‥‥

その後、桜花は憲兵隊本部にて両親に今回の誘拐事件の原因の事について事情を聞かれ、老人の食糧を取り戻したことに関しては、何のお咎めもなかったが、その事を何故、黙っていたのかについてお咎めを受け、被害にあったアギトの親、八神・リンフォース・シュベルトと託児所へ詫びを入れにいった。

桜花はこの時、泣きながら土下座までしてシュベルトと託児所の職員の人たちに謝った。

幸い、アギトも命に別状はなく、託児所の子供達も桜花に懐いているため、出入り禁止にすると言うわけにもいかず、厳重注意だけで済んだ。

そして、ギンガも桜花の居場所を突き止めたのに何故、憲兵隊に知らせなかったのかと、源三郎と加奈江にお咎めを受けた。

この時、ギンガは昔、クイントから叱られた時と同じ感覚を受けた。

 

 

桜花たちの誘拐事件が解決してから、暫くして、

 

「加奈江さん」

 

ギンガが加奈江に話かけた。

 

「ん?何かしら?」

 

「私、あの話を受けようと思います」

 

「えっ!?本当に!?」

 

「‥はい」

 

「ありがとう!!桜花もきっと喜ぶわ!!」

 

加奈江は思わず、ギンガに抱き付いた。

ギンガが言ったあの話と言うのは、以前、加奈江から提案された、中嶋家への養子縁組の話だった。

 

「それともう一つ、お願いが‥‥」

 

「えっ?何?‥‥うーん‥‥でも、それは‥‥」

 

ギンガの言うお願いの内容を聞いた加奈江は少し困った表情をする。

 

「お願いします!!中嶋家の一員になり、地球市民の一員となるからには、私も地球の為に役立ちたいんです!!」

 

困惑する加奈江にギンガは、頭を下げてまで、頼み込む。

 

「‥‥」

 

そんなギンガに加奈江は困惑した表情を崩さなかった。

 

 

その日の夜、ギンガは源三郎と加奈江を交えて、話し合いが行われた。

議題内容は勿論、ギンガの中嶋家の養子縁組とギンガが言ったもう一つのお願いの件だった。

養子縁組の件については、問題なく源三郎も賛成してくれて明日にでも手続きに必要な書類を用意する事となったが、もう一つの案件に関しては源三郎も加奈江同様、すぐには採決を下せなかった。

取りあえず、ギンガの中嶋家の養子縁組の件については、そのまま話を進め必要な手続きを行い、ギンガは正式に中嶋家の養子となり、ギンガ・ナカジマと言う名を改め、中嶋ギンガとなった。

ギンガが中嶋家の正式な養子となった日の夜。

夕食の席にて、

 

「今日はみんなに重大な発表があります」

 

と、加奈江が中嶋家のみんな‥‥正確には桜花と紅葉にとある発表をする。

 

「ん?何?」

 

「中嶋家に今回、新しい家族が増えます」

 

「新しい?」

 

「家族?」

 

加奈江の発言に首を傾げる火憐と紅葉。

 

「それは加奈江さんが妊娠したと言う事ですか?」

 

紅葉が最も正解らしい意見で加奈江に質問する。

 

「残念だけど、桜花の弟か妹が出来るのは当分先ね‥‥」

 

「‥‥」

 

加奈江の発言に源三郎は少し頬を赤く染める。

 

「それじゃあどういう事?ペットでも飼うの?」

 

「正解は‥‥」

 

「「正解は?」」

 

「正解は、この度ギンガ・ナカジマさんが桜花の正式なお姉さんになります!!」

 

「「‥‥」」

 

加奈江の正解を聞き、暫し茫然となる桜花と紅葉。

 

「えっと‥‥よろしくね、桜花」

 

ギンガがよそよそしく桜花に挨拶をすると、

 

「「えええええー!!」」

 

二人は驚きの声をあげる。

 

「ほ、本当にギンガさんが私の本当のお姉ちゃんになってくれるんですか?」

 

「え、ええ」

 

目を輝かせる桜花にタジタジな様子のギンガ。

 

桜花としては姉と慕っていたギンガが本当の姉となったので嬉しかったのだ。

ギンガとしては桜花が自分を姉と認めてくれた事は嬉しかったのだが、その様子が故郷、ミッドにいるスバルに被って見えたので、ギンガとしては複雑な心境だった。

 

(ぎ、ギンガこの世界に住む!?一体どういう事なの!?)

 

ギンガの中嶋家の養子入りを聞いて、紅葉は混乱する。

 

(ギンガはアキラと結婚する筈なのに‥‥そもそもギンガから次元漂流したなんて話を聞かないし、一体どういう事なの!?)

 

そもそも前世で知る自分の同僚から次元漂流した話なんて聞いた事がない。

これだけの体験をしたのであれば、前世の自分に話す筈だ。

それなのにギンガは次元漂流した体験を話さず、異世界の地球の家に養子入りをしている。

この後、ギンガは再び次元漂流してミッドに戻ったのだろうか?

紅葉の疑問が解消されるのはまだ先の事だった。

 

 

そして、

 

「ギンガ、本当に行くのか?」

 

食後、桜花と紅葉は既に就寝している中嶋家のリビングにて、ギンガ、源三郎、加奈江の三人が話し合いをしていた。

そこで、三人はギンガが頼んだもう一つのお願いについて再度、話し合いをしていた。

 

「はい。以前、加奈江さんにも言いましたが、地球が大変な時に黙って何もしない訳にはいきません。ですから‥‥」

 

「防衛軍士官学校に入校したい‥‥と?」

 

「はい!!」

 

そう、ギンガが言ったお願い事とは地球防衛軍士官学校への入校であり、将来的には地球防衛軍軍人になりたいと言う事だった。

士官学校へ入学するには地球市民として正規の戸籍が必要だった。

そのため、ギンガはまず中嶋家へ養子入りをしたのだ。

ギンガ自身は内心、管理局が自分を探しに来る事などもう無いとどこかで感じ取っていた。

“陸”の‥‥ましてや一下士官である自分を本局の‥‥“海”の局員が必死になって探しに来るなんて、ほぼありえない。

自分が“海”の所属で魔力レベルがSクラス以上か提督か左官、執務官クラスの階級ならば話は違うだろうが‥‥

兎も角、管理局の救援が来る確率が物凄く低い今となってはいつまでも救助者‥引いては中嶋家の養子という立場で居ては、只のゴク潰しになってしまう。

まして、今の地球はガミラスとの戦時下‥‥周りの人々が苦しい思いをしている中、自分は漂流者だから‥‥別の世界の人間だから関係ないなどと言う真似はギンガには出来なかった。

ただでさえ、食糧事情が厳しい中、中嶋家の人達はちゃんと自分に衣食住を提供してくれる。

この人達のために、自分も何か出来ることをしよう。

自分にも何か役立つことは有るはずだ。

そう思ったギンガが真っ先に思い立ったのが防衛軍軍人だった。

それはこの世界の人達を守ろうと言うギンガの意志の表れだった。

研究所で生まれ、クイント・ナカジマが所属していたゼスト隊によって保護されるまでの六年間、一切外の世界と関わりを持たず、毎日毎日実験の日々‥‥

そんな中、ギンガと妹のスバルは救われて家族を得た。

しかし、家族を得てもギンガとスバルの二人はこの時にも未だに夢と言うモノを持たず、新たに得た家族と言うモノと接してけば良いのかと戸惑う日々が続いた。

そしてようやく家族と言うモノに慣れ始めた頃に母、クイント・ナカジマが任務中に殉職し還らぬ人となった。

皮肉にもその出来事が‥‥ギンガにとって母親を失うことにより、夢というか、人生における明確な目標は見つける事となった。

それは、「母の代わりとなり、自分が妹(スバル)を守る。母が自分達姉妹を救ってくれたように、自分も困っている人を助けるのだ」、と言うモノだった。

母(クイント)の様に強く、そして母(クイント)の様に優しい女性になりたいと目標を掲げ、ギンガは自らも管理局に入ったのだ。

妹のスバルは十一歳の時に巻き込まれた空港火災で、なのはの手によって救助された時に彼女もギンガと同じ思いを抱き管理局へと入った。

ギンガの困っている人を助けたいと言う思いは、例えミッドではない別の世界でも変わることは無かった。

しかし、ギンガの防衛軍士官学校の入学、引いては防衛軍への入隊に関して、加奈江は危険だからと言う理由で渋り、源三郎は加奈江と同じく危険と言う危惧の他にもう一つ、ギンガにスパイ容疑がかからないかが心配だったのだ。

中嶋家の養子となったがギンガは元々、別の星の住人だ。

しかも、彼女はその星で軍と警察を合わせたような組織に所属していた。

ギンガ自身、管理局は自分を探しに来る事はもう無いだろうと思いその事をギンガは他の誰にも言っていない。

源三郎はギンガのそんな事情を知らない。

その為、源三郎はもし、ギンガが所属する組織(時空管理局)がギンガを捜索してきた時、ギンガは地球に残るだろうか?と言う疑惑が残った。

いや、普通に考えれば漂流し救助が着たにもかかわらずソレを拒否し明日をも知れぬ星に留まるバカはおるまい。

ギンガが故郷へ帰れば、この星の技術や情報を報告するだろう。

そしてその組織(時空管理局)がガミラス同様地球に対して、侵略行為に及んだとすれば、地球はガミラスとその組織(時空管理局)との苦しい二正面作戦を展開しなければならない。

今の地球にはとても二正面作戦を展開する余裕はない。

そうなれば管理局がギンガを探しに来る前にギンガの暗殺を考える輩がいるのではないだろうかと、源三郎はそう思ったのだ。

しかし、ギンガのあまりにも真剣な眼差しと態度に中嶋夫妻は等々折れた。

生まれ育った故郷を‥そこに残された家族を捨ててまで、死に底状態の地球のために何かしようと行動するギンガの決意に胸をうたれたのだ。

そこで、源三郎はギンガにあらぬスパイ容疑がかからないよう、内密に藤堂長官に事の次第を話し、藤堂長官も中嶋夫妻同様、ギンガの決意に意を汲んでくれ、ギンガの身の安全を保障してくれた。

スパイ容疑がかからないように措置をしてくれたのだが、やはり危険な職に変わりなく、願わくば、ギンガが任官する時には、ヤマトが無事に地球へ帰還してガミラスとの戦争が終結してくれるか、後方の地上勤務に就くことを中嶋夫妻は願った。

 

翌日、源三郎が士官学校から入学用の願書を持ってきた。

身元請負人・保護者の欄には中嶋夫妻の名が記入され、受験生の欄にはギンガの名前が記入された。

ギンガは故郷、ミッドチルダにて、管理局の訓練校と捜査現場の場数を踏んできた経験から、途中編入となった。

そして今、ギンガが悩んでいるのが、どのコースを受験するかと言う事だ。

本来、ギンガが得意とする陸戦科の科目は任官後、空間騎兵隊に配属される科のみで、そこは、女性の受付を行っていない。

最も養子縁組とはいえ、正式にギンガの親となった源三郎は断じて、男だらけの空間騎兵隊へギンガを入隊させるのには反対の姿勢を貫いた。

士官学校への編入試験、書類の提出期限までまだ期間があったので、どの科へと進むかはもう少し考えることとなった。

 

ギンガが士官学校への入校準備を整えている頃、

タイタンから鉱物資源を満載し、更にタイタンにて鹵獲したガミラスの強襲揚陸艦とその護衛を務めていた三笠が地球へと帰還した。

地球へ運ばれたガミラスの強襲揚陸艦は技術調査された後、そのまま武装輸送艦として使用され、ヤマトが地球に帰還するまでの間、防衛軍の主力の一端を担った。

そして、地球へもたらされた鉱物資源を使い地球防衛軍は宇宙艦隊の再建を開始した。

しかし、一度運ばれてきた資源では新造艦を作る量には足らず、そこで現存する艦の改修へ着手した。

幸い、波動エンジンの設計図は地球(此方)にあり、既に波動エンジンを搭載した艦(ヤマト)の建造とその性能を証明出来、それは現在地球が採用している宇宙艦船のエンジンよりも遥かに性能は上であり、新たに即採用されたのは言うまでもなく、現存艦の機関の変換が順次行われた。

その中には当然、今回の護衛と運送任務を務めた三笠も含まれていた。

改修には三週間ほどかかると、技術部からの報告を受け、その報告を受けた後、司令部に出頭した良馬は今回の輸送、護衛任務での報告書を提出した後、敵巡洋艦を撃沈した功績により昇進したが、あの時、ガミラス艦から聞こえた乗員の悲鳴に関しての報告は敢えて行わなかった。

仮にしたとしても、恐らく軍上層部にてもみ消されるだろうと思ったからだ。

防衛軍上層部としては、ガミラスはあくまで人間ではなく、獣か悪魔の化身‥‥そう思わせたかったのだろう。

 

報告書を提出し終えた良馬は、下宿先である中嶋家へと戻った。

リニスは途中、行く所があると言って良馬とは別れた。

玄関の戸は閉まっており、鍵を開け、声をかけても誰も応答が無かった為、みんな出かけているのかと思い再び鍵をかけ良馬は部屋で休むことにした。

司令部からの帰りの途中、源三郎と司令部内で会い、先に下宿先(家)に戻っている旨を伝えてあるので、強盗には間違われないだろう。

リビングを通り、自分の部屋へ向かおうとリビングに差し掛かった時、テーブルの上の書類が良馬の目に映った。

何気なく見ていたその書類の文字と内容を見た時、良馬は最初、目を見開き段々険しい表情となっていった。

 

司令部の庁舎から自宅へ帰宅中の源三郎は、昼間庁舎で良馬とバッタリ出会った時に、ギンガが家(中嶋家)の養子になった事を話し忘れたと、思ったが、別に急ぐ様な事はないし、地球に帰ってきたってことは、暫く地球に居るだろうから、その時に話せばいいだろうと思っていた。

そして、

 

「ただい‥‥」

 

源三郎が玄関のドアを開け、帰宅したことを告げようとしたその時、

 

「これは!!一体どういう事だ!?ギンガ!?」

 

家の中から、良馬の怒声が聞こえた。

 

「ん?な、何だ?」

 

あの良馬が怒声を上げる事なんて滅多にないため、源三郎は当初、何があったのかと首を傾げた。

しかし、良馬が怒声を浴びせている相手がギンガだと言う事で、彼には何となく、想像がついた。

 

(ギンガの防衛軍入隊の件か?やっぱり‥‥)

 

やれやれと言った感じで我が家の中へ歩みを進めていくと、リビングで案の定、良馬がギンガ相手に物凄い剣幕でギンガに食って掛かっていた。

加奈江や桜花、そして紅葉も間に割り込める状況ではなく、二人の成り行きをジッと窺っていた。

と言うか、普段の良馬から信じられないぐらいの怒気と声で少し怯えている。

 

「中嶋さんの家に養子縁組ってなんだよ!?それに防衛軍の士官学校へ入るだと!?一体どういう事だよ!?」

 

自分が宇宙へ行っている間にまさか、異星人であるギンガが中嶋家に養子入りをしているなんて良馬にとっては寝耳に水であった。

しかも、防衛軍士官学校へ入校すると言うのだから、良馬としてはそれが釈然としないと言うか我慢ならなかった。

それは、何となくだが自分たち防衛軍軍人が余りにも非力だから、無関係だったはずのギンガまでこの戦争に巻き込んでしまったのではないかと言う自己嫌悪的なモノが含まれていた。

 

最初は何故、こんな事をしたのか?という事情を聞き、その後は説得にあたった。

 

「ギンガ、冷静になって物事を見ろ!!『酒を飲んでも呑まれるな』って言葉があるように君は戦時下の地球に来てその空気に呑まれかけているんだ。君がこんな死にかけの地球と生死を共にする事は無い!!」

 

「お言葉ですが、呑まれているからこそ、私は防衛軍に志願したんです!!確かに私は貴方達から見れば、異星人ですから地球の事に関しては部外者化もしれませんですが、だからってこのまま何もしないで居るなんて出来ません!!」

 

「だからって!!」

 

尚もギンガに食って掛かる良馬だったが、

この時の彼は冷静さを失っているように見えた。

そこへ、

 

「良馬、貴女に彼女の意志をどうこうする権利はないわよ」

 

「えっ!?」

 

聞き覚えがある声を聞き、振り返るとそこには忍、リニス、ノエルの姿があった。

 

「し、忍さん?それにノエルも‥‥」

 

何故この場に忍とノエルが居るのかと思っていると、忍が再び口を開く。

 

「良馬、彼女の士官学校入りに関しては、貴方は口を挟む資格は無いはずよ。それは貴方自身が良く分かっている筈よね?良馬?」

 

冷たい笑みを浮かべ、良馬へと訊ねてくる忍。

 

「‥‥」

 

忍に指摘され、良馬はバツ悪そうに忍から視線を逸らす。

それはかつて自分自身が忍の反対を押し切って士官学校入りをした為である。

 

(あの時の忍さんもこんな気持ちだったのだろうな)

 

ここに至って良馬はあの時、自分が士官学校へ行くと言った時、忍が猛反対した時の気持ちがようやく分かった。

それにギンガはもう中嶋家の住人なのだ。

幾ら下宿先の提供者の家とは言え、やはり中嶋家は月村家と何の関わりもない他所の家だ。

他所の家の家庭事情に口を出すのは余りにも野暮と言うモノだ。

自分の過去の事を持ち出され、他所の家の家庭事情と言う事ではもはや良馬にギンガの士官学校入りを止める術はなかった。

渋々と言った様子で良馬はギンガの士官学校への入校の件についてこれ以上抗議はしなかった。

 

「それで?何で、忍さんが此処に?」

 

良馬は少しむくれる感じで忍が中嶋家に来たのかを訊ねる。

 

「良馬が昇進したってリニスから聞いて、そのお祝いに来たのよ」

 

「態々?」

 

「だって、これまで良馬が昇進した時も出来なかったでしょう?だから、今までの分も兼ねて、態々来たのよ」

 

「はぁ~分かりました。それでは、昇進祝い兼ギンガの新しい門出にお祝いをしましょう」

 

良馬は渋々であるが、ギンガの件を割り切って、忍の提案を受けつつ、昇進祝いを受け、ギンガの士官学校入りを認めざるを得なかった。

 

祝宴もそろそろ終盤に差し掛かった頃、

 

「そういえば、ギンガはどのコースを受験するんだ?」

 

良馬がギンガにそのコースを受験するのかを聞いた。

しかし、ギンガはどのコースを受けるか決めかねていた。

そこで、良馬とリニスが相談に乗った。

まず、良馬はギンガが前の組織でどのような事をしていたかを聞き、そして、ギンガの得意な事を尋ねた。

すると、得意な事は陸戦だと言う。

しかし、防衛軍の陸戦は女子禁制なので、次に保有資格について訊ねるとギンガはミッドで二級通信士の免許を保有している事から、良馬は通信科を薦めた。

通信科ならば、艦隊勤務だけでなく、地上でのオペレーター職もあるので、中嶋夫妻もソレを推した。

更にリニスが、医療科の応急処置コースも受けておいた方が何かと役に立つと言い、医療科の応急科を選択。そして最後にギンガたっての希望で航空科を選択した。

まぁ、通信員は時には艦載機に乗り、偵察員として活動する機会もあるので受けておいて損は無かった。

ギンガが受けるコースは通信科をメインに医療科、航空科の三つとなった。

 

「ああ、それと‥‥」

 

士官学校の受験コースが決まった後、リニスがもう一つギンガにある提案をした。

その提案とは、

 

「パイロシューター!!」

 

「電刃衝!!」

 

「くっ‥‥」

 

月村家所有の広大な試作兵器実験場にて、多数の閃光と爆発が起こっている。

空中には管理局のエース・オブ・エースと呼ばれる高町なのはとほぼ色違いのバリアジャケットを身に纏った紅葉と黒いインナースーツの上に白と茶色のコート、頭にはナースキャップの様な帽子を被ったリニスがいる。

そして地上にはバリアジャケットとブリッツ・キャリバーを装備したギンガがおり、空から降ってくる攻撃魔法をその機動力で逃げ回っている。

リニスがギンガにした提案、

それは、このAMFの充満した環境の中での魔力トレーニングだった。

例え、魔法を使う事が無いかもしれないこの世界でも、日々の鍛練を疎かにしないようにとのことだった。

それにこの環境下の中で、鍛練をし続ければ魔力が上がる可能性も大いにあった。

そのため、ギンガはリニスの誘いを受け、このトレーニングに参加したのだが、元々二人は自分よりも魔力が上のため、この環境下でも容赦なく攻撃系魔法をぶっ放せるが、此方はAMFの影響でバリアジャケットを展開するのにも一苦労であり、ギンガがこの環境に慣れるにはもう少し時間が必要だった。

そして、もう一つの理由が濃密なAMFの環境下でリンカーコアが異常に活発な動きと消耗を繰り返しており、その活動の結果、ギンガに多大な空腹感を齎している。

これはギンガが普通の魔導師ではなく、ギンガが戦闘機人という特殊な体質が拍車をかけていた。

食糧事情がひっ迫している今の地球でこの空腹感は厄介な事なので、リンカーコアの制御、之が主な理由でもあった。

 

 

 

 

ここで、時系列は少し時間を巻き戻し、場面は地球からギンガの故郷、ミッドチルダへと場所を移す。

 

 

第58探査部隊が何らかの原因で遭難した事を受け、管理局は少数の艦船を遭難現場に調査兼救助へと向かわせた。

クロノ・ハラオウンが艦長を務めるXV級の次元航行艦クラウディアもその中の一隻だった。

クラウディア以下三隻は第58探査部隊が遭難した現場へと到着した。

ブラックホールや次元震に巻き込まれたのならば、その艦影は影も形もないだろうが、奇跡的に残存している艦がもしかしたらいるかもしれない。

いや、必ず居る筈だ。

それが、救助に赴いた者達の願いであった。

しかし、現場に来た彼らは驚愕した。

てっきり、第58探査部隊はブラックホールや次元震に巻き込まれたのかと思っていたのだが、現場には管理局の次元航行艦を構成していたであろう艦船の残骸が漂っていた。

しかもその破損状況を見て、宇宙の自然現象で破壊されたものではなく、明らかに人為的に破壊されている。

 

「こ、これは‥‥」

 

「どういう事だ?」

 

「ブラックホールや次元震に巻き込まれたのではないのか?」

 

宇宙を漂う友軍艦船の残骸を見て、救助隊の乗員は戸惑うばかり。

そんな中、

 

「ボヤボヤするな!!あの中にまだ生存者がいるかもしれんのだぞ!!すぐに救助作業を開始しろ!!」

 

『は、はいっ!!』

 

クロノがクルーを叱咤し、クルー達は慌てた様子で救助作業を始める。

しかし、皆の賢明な努力もむなしく第58探査部隊には一人も生存者は居らず何とかブリッジの原型を留めていた艦の残骸からブラックボックスを回収する事だけは出来た。

クロノは今回参加した救助隊の艦幹部達と共に本局へ戻る前に回収したブラックボックスの記録を再生した。

すると、映像と音声には第58探査部隊と大マゼラン一帯を支配するガミラス帝国と名乗る艦船のやり取りが確認できた。

その中で、管理局側が一方的にガミラスの領海を侵犯し、警告の為、接近してきたガミラス艦に対して無警告でアルカンシェルを放ち、コレを撃沈。

ガミラス側は管理局を侵略者とみなし、防衛行動の一環で第58探査部隊を殲滅した事が分かった。

これはどう見ても第58探査部隊の自業自得であり、非は管理局側にあるのが明白であった。

 

「‥‥」

 

「こ、これは‥‥!?」

 

「ハラオウン提督、本局へはなんと報告を‥‥」

 

第58探査部隊の遭難の真実を知った者達は戸惑った。

正直に言って、「見なければ良かった」‥‥それが彼らの心境であった。

管理局側が一方的に戦端を開き、その結果返り討ちにあった事実をどう公表すればよいのか判断しかねた。

一歩間違えれば、管理局の大きなイメージダウンになりかねない。

しかし、これはクロノたち現場の人間に判断できる事態ではないので後の判断は、本局の上層部の手に委ねられた。

クロノは最後に本局の正式な発表があるまでこの映像の事実を他言無用とする命令も下した。

それと同時に管理局がこのガミラスに対し武力制裁等と言う愚かなマネをしない事を願った。

それは恐らく今回参加した救助隊のみんなはそう思ったに違いない。

クロノ達、救助隊が第58探査部隊の遭難の真実を知り、困惑したのと同じように本局の上層部や“陸”“空”の幹部局員も今回の件の報告を受け困惑し意見が様々であった。

 

ガミラスに対し、報復せよ。

 

真実を公表しよう。

 

ガミラスとコンタクトをとり、会談の場を設けよう。

 

等の意見が出たが、最終的に下された判断は、

 

「第58探査部隊は突如発生した次元震に巻き込まれ遭難。現海域はこの様な突発的な次元震が起こりうる可能性があるので、今後、この海域における探査は行わないものとする」

 

と、言う真実を闇に葬る事にした。

魔導師至上主義や管理世界拡大・拡張推進派の局員らは今回の判断に対して、「甘すぎる!!何としてでもガミラスに対し武力制裁を行わなければ、管理世界維持等の活動に支障をきたす!!」 と発言したが、映像を見る限り、ガミラスの艦船は管理局の次元航行艦と比べ、速力も火力も段違いであると言われ、しかも今回の一件はどう見ても管理局側に非が有るのは明白である。

更にガミラスを攻略するのに一体何隻の艦船を犠牲にする気か?と穏健派と“陸”の局員から多数の反対意見が出た為、魔導師至上主義や管理世界拡大・拡張推進派の局員らは渋々ガミラスに対しての武力制裁を諦めた。

そして救助に赴いた者達には厳重な緘口令が敷かれた。

幸いガミラスはミッドの正確な位置を特定していない様子で、管理局に抗議も報復もしてくる様子が無かった。

真実を知ったクロノもこれで良いのかと思ったが、ミッド‥‥ひいては管理世界や管理局に無用な混乱を招かない為、遺族には申し訳ないがやむを得ない事だと管理局の方針に従った。

 

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