星の海へ   作:ステルス兄貴

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百九十一話 救援任務

 

 

此処で時系列は元に戻し、視点はミッドチルダからバジウド星系へと移る。

 

バジウド星系内にある惑星ロッサ。

 

この星はボラー連邦系の星間国家であり、反ガルマン感情が強い星であった。

 

ガルマン・ガミラスとしては当然そのような星を放置しておく訳も無く、東部方面軍はこの惑星ロッサ攻略の為に陸戦部隊を派遣して地上よりロッサを占領しようと作戦をたてた。

 

しかし、ロッサの軍は東部方面軍が予想した以上に激しい抵抗を見せ、逆にロッサへ派兵したガルマン・ガミラス側の軍が窮地に陥っていた。

 

 

惑星ロッサ 地表

 

「敵機!!来襲!!」

 

「退避!!塹壕内へ退避しろ!!」

 

ガルマン・ガミラスの陸戦部隊の拠点で対空レーダーが敵機の存在を探知し、地上に居た士官が部下たちに塹壕へ避難するように声を上げる。

 

するとボラー系の航空機が低空飛行をしながら爆弾を投下しながら接近して来る。

 

「左三十度!!敵爆撃機!!」

 

「撃て!!」

 

対空砲が敵の爆撃機を迎え撃つように火を噴く。

 

しかし、敵爆撃機は対空砲をものともせずに地上を爆撃して行き悠々と引き上げていく。

 

敵の爆撃機が完全に引き上げていくのを確認した士官は、

 

「大丈夫か!?怪我はないか!?」

 

部下たちに怪我がないか?

 

負傷者の有無を確認する。

 

「ほ、補給はどうなっているんですか!?来るのは敵ばかりであります!!」

 

すると、震えながら小銃を握りしめた一人の兵士が士官に訊ねてくる。

 

「保存食もエネルギーも底を尽きかけているのに、補給も援軍も来る気配がありません!!」

 

「‥‥」

 

拠点の周囲には破壊されたガルマン・ガミラスの陸上主力兵器であるサルバーS-VI型重戦車を始めとして、メルバーM-III型装甲兵員輸送車、野砲型光線砲の残骸があちこちにある。

 

勿論、対戦相手であるロッサ軍の戦闘車両‥‥ボラー連邦本国及びボラー系の領内で使用されているボラー系統の戦車も残骸と化して放置されている。

 

そんな惨状から既にこの部隊には満足に戦える戦闘車両や野戦重砲、それらを動かすエネルギーさえも残り僅かとなっているのだ。

 

先程、敵の爆撃機を迎え撃った対空砲のエネルギーもいつまで持つのか心もとない。

 

更に自分たちの食料さえも補給が来ないために備蓄が少なくなっている。

 

残っている兵器はコスモガンであるモルドラP-88やライフルぐらいだ。

 

一方、ロッサの軍は先ほどの爆撃機や戦車、ミサイル戦車などの戦闘車両はまだまだ豊富に残されている。

 

 

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ロッサの軍はガルマン・ガミラスの陸戦部隊を真綿でじわじわと首を締めるように長期戦を仕掛けているのだ。

 

「大尉!!司令部はこの星を忘れたのでは!?みんな、我々の事を忘れたのではないでしょうか!?」

 

援軍も補給も来ないこの絶望的な状況に兵士は震えながら士官に訊ねてくる。

 

「大丈夫だ。少なくとも敵は我々の事を忘れてはない。今、踏みしめるこの地はボラー連邦の領土だ!!俺たちは今、ボラー連邦を占領しているんだ!!」

 

「‥‥」

 

「負傷者を収容するぞ!!」

 

「は、はい!!」

 

「各隊!!被害状況を報告!!負傷者は後方へ移送するぞ!!」

 

士官は部下数名を引き連れて友軍部隊の被害状況と負傷者の有無と収容を行った。

 

 

惑星ロッサでのガルマン・ガミラス陸戦部隊の苦戦は東部方面軍司令部でも知る所となっていた。

 

「ガイデル提督、惑星ロッサに展開中の部隊状況ですが‥‥」

 

副官がガイデルに戦況報告書を手渡す。

 

「うむ‥‥戦況は‥‥芳しくない‥か‥‥」

 

「はい。部隊の方からは補給と援軍の要請が来ております」

 

「現状はこの報告書から分かったが‥‥今はボラー連邦領内への侵攻作戦中だ。バジウド星系へ援軍を送る余裕はない」

 

「‥‥やはり、上陸作戦は早急過ぎましたな。周辺惑星を十分に制圧し、補給路を断ち、軌道上からの艦砲射撃をして地上の敵勢力を粉砕した後に上陸作戦を展開した方が賢明でした」

 

ベムラーゼが死にボラー連邦領内への作戦が決まった事でガイデルはまだガルマン・ガミラスに反抗するバジウド星系内のボラー連邦系の惑星国家に対して短期決戦を行い、その後にボラー連邦領内侵攻作戦に集中したかったのだが、ロッサの軍からの思わぬ抵抗に上陸部隊は苦戦し強いられていた。

 

しかし、現状ボラー連邦領内への侵攻作戦が既に実施されている中で、バジウド星系へ大規模な援軍は送れない。

 

「提督。此処は意地を捨ててロッサからの撤退を行ってはいかがでしょうか?」

 

「なに!?撤退だと!?」

 

「はい。援軍も補給もが送れない以上、ロッサに展開している陸上部隊だけではこれ以上の戦果は期待できませんし、このままですと上陸部隊をみすみす犬死にさせてしまいます」

 

「‥‥」

 

「最後に送った援軍の中には本土の親衛隊の部隊も含まれていました。総統閣下の親衛隊を全滅させてしまっては、提督のお立場も‥‥」

 

「分かっておる‥‥くっ、此処はロッサの陸戦部隊救助を本国に頼み込むしかないか‥‥」

 

東部方面軍では現状、ボラー連邦領内侵攻作戦で手一杯なので、ロッサに展開している陸上部隊の救援を本国の艦隊に頼み込むガイデルであった。

 

ガイデルが本国にロッサの件を伝えると、ロッサでの苦戦はデスラーの耳にも当然入った。

 

「キーリング」

 

「はっ!!」

 

「バジウド星系の惑星ロッサでの苦戦と撤退についてだが‥‥」

 

「はっ、ガイデル提督もボラー連邦領内侵攻作戦前に何とか決着をつけたかったようですが、ロッサ軍の思わぬ抵抗と反撃を受けたみたいです。本土の親衛隊の一部を援軍に送りましたが、それでも形成は覆せなかったようです」

 

「ふむ‥それでガイデルが、部隊の撤退を決め、その救援を求めて来た」

 

「現状の東部方面軍の状態では確かに厳しいですからね」

 

「まぁ、百戦して百勝とはいかぬと言う事だ。キーリング、本土の艦隊よりロッサへの救援部隊を選出せよ」

 

「承知しました」

 

デスラーはキーリングに本土艦隊よりロッサ救援艦隊を選出するように命じた。

 

デスラーがロッサに展開している陸上部隊の救援を決めた中、バジウド星系のボラー派でも動きがあった。

 

八雲とUX‐234が殲滅した輸送船団は元々ロッサへ送られる軍事物資であった。

 

その軍事物資がロッサへ届かない事実にバジウド星系のボラー派は焦り、方針をこれまでの長期戦からロッサに展開しているガルマン・ガミラスの陸上部隊を早期に殲滅する方針へと変更した。

 

周辺のボラー派の惑星国家より、連合陸戦隊が結成され、護衛兼攻略支援艦隊も同じく結成された事でロッサの救援任務は困難が予測されることになった。

 

 

ボラー派のとある惑星にて、輸送船に次々と乗り込んでいく将兵たちを見る一人のボラー派軍人が居た。

 

「あれがロッサへ向かう攻略部隊か‥‥」

 

「はい。アルゲイ・メランコフ少将を指揮官とする混成師団、一万七千名。まさに陸戦部隊の精鋭であります」

 

輸送船には陸戦部隊の将兵の他に戦闘車両や野戦重砲などの陸戦兵器も積み込まれていく。

 

「まぁ、補給を絶たれたガルマン・ガミラスの部隊など一日でもあれば方は付くでしょう。それに陸上前には我がツェザレー以下の艦隊が軌道上より艦砲射撃を行います。上手くいけばそれだけで終わる可能性が高いでしょう」

 

「そうだな。この最新鋭艦、ツェザレーがあれば例えガルマン・ガミラスの戦艦が来ても後れを取る事はないな」

 

 

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(問題はあの輸送船団を無傷のままロッサへ連れて行く事だ)

 

ツェザレー艦長のアクセラ・ノヴォッキーはロッサの攻略よりもロッサまでの道のりを心配していた。

 

そんなノヴォッキーが率いる艦艇が以下の通りとなっている。

 

スオロフ級航宙戦艦 ×1

 

アポストロ級航宙戦艦 ×2

 

ロスチラフ級航宙戦艦 ×4

 

護衛艦 ×6

 

輸送船 ×3

 

 

ロッサを巡るガルマン・ガミラスとバジウド星系のボラー派との間で新たな戦いが起きそうな中、ボラー派の輸送船団殲滅作戦にて損害を受けた八雲は共闘したUXー234艦長のストロネストロの母国である惑星ゼスにて補修と乗員たちの休養を行っていた。

 

そんな中、八雲の艦橋にて、

 

「補修が終われば、八雲は再び哨戒任務に戻る事になりますが、どの宙域を哨戒するのですか?」

 

ギンガが瓢に次の哨戒宙域を訊ねる。

 

「バース星の司令部からは特に指定はされていないからな‥‥」

 

バース星、惑星ゼスから提供のあったバジウド星系の宇宙海図を見ながらギンガと瓢は惑星ゼスを出航後、どの宙域の哨戒を行うか検討していた。

 

そんな中、ガミラス時代から使用されていた宇宙艦船が惑星ゼスへ降下して来た。

 

しかし、この惑星ゼスはガルマン・ガミラスと同盟関係にあるので、ガルマン・ガミラスの宇宙艦船が惑星ゼスに来るのは大して珍しくもなく、ガルマン・ガミラスの次元潜行艦を惑星ゼスの軍が使用していたように、もしかしたら惑星ゼスの軍人が使用しているのかもしれない。

 

降下して来たガルマン・ガミラスの宇宙艦船は惑星ゼスの軍基地へ着陸し、基地司令官と面会する事となった。

 

この艦隊を指揮していたのは、旧ガミラス軍にて第8警務艦隊司令官・兼任・『ミランガル』艦長を務めていたネレディア・リッケであった。

 

ネレディアが今回、艦隊を率いて来たのは、彼女が指揮する艦隊がロッサの陸上部隊救援の任務を担う救援艦隊であったからだ。

 

そしてネレディアはその救援艦隊の司令官として艦隊を率いて来たのだ。

 

今回、ネレディアが率いて来た救援艦隊の全容は以下の通りとなっていた。

 

惑星ロッサ 陸上部隊救援艦隊 第一戦隊

 

旗艦 ミランガル (ゲルバデス級航宙戦闘母艦)

 

ゼルグート級一等航宙戦闘艦 (陸上部隊収容のため) ×1

 

デストリア級航宙重巡洋艦 ×3

 

クリピテラ級航宙駆逐艦 ×5

 

リンチェント級航宙駆逐艦 ×6

 

そして、第二戦隊にはフォムト・バーガ—が副司令兼第二戦隊司令官として別動隊を率いて来た。

 

惑星ロッサ 陸上部隊救援艦隊 第二戦隊

 

旗艦 ランベア (ガイペロン級多層式航宙母艦・重武装ユニット装備)

 

 

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ケルカピア級航宙高速巡洋艦 ×1

 

クリピテラ級航宙駆逐艦 ×5

 

ネレディアとバーガーは寄港した惑星ゼスの基地司令官の下へと向かい、今回の寄港目的を伝えた。

 

「そうですか‥惑星ロッサの救援へ‥‥」

 

「はい。出来れば今回の救援を伝えるために惑星ロッサへの伝令の為に次元潜航艦を派遣して頂きたいと思っています。何分、我々は次元潜航艦を有していないので‥‥」

 

本来ならば、次元潜行艦を多数派遣して、惑星ロッサの上陸部隊を救援しても良かったのだろうが、次元潜航艦自体そこまで大型な艦艇ではないので、派遣しても陸上部隊全員を乗せることは出来ない。

 

それに陸上部隊全員を乗せる程の次元潜航艦は残念ながらガルマン・ガミラスでも建造されていない。

 

故に通常の宇宙艦艇で救援へ向かわなければならなかった。

 

そこで、陸上部隊全員をすんなりと乗せる事が出来るように救援艦の中にゼルグート級一等航宙戦闘艦が採用されたのだ。

 

一方で惑星ロッサに居る陸上部隊は救援がこれから向かう事を知らない。

 

なので、ネレディアは惑星ゼス所属の次元潜航艦でまずは救援が来ることを知らせてもらいたいと基地の司令官へと頼んだ。

 

基地の司令官は惑星ロッサの状況を知り、同惑星が危険であると判断しつつも同盟国からの頼みであり、大きな技術の差もあることから了承するしか選択肢はなかった。

 

司令官の命を受けてUXー234が惑星ロッサへ伝令として派遣された。

 

ただ、メッセンジャーとして行くだけでなく、救援が来るまでのせめての繋ぎとして、惑星ロッサへ向かうUXー234には軍事、医療物資と食糧が積み込まれた。

 

危険な地への伝令をしてもらっただけでもありがたい事なので、ネレディアもバーガーもそれ以上の事は頼まず、惑星ロッサへ派遣されたUXー234の帰還を待つ事となった。

 

 

補修の場と物資を提供してもらったお礼に惑星ロッサの司令部へ瓢とギンガは向かいその通路にて、

 

「あら?」

 

「ん?」

 

「えっ?」

 

ネレディア、バーガー、ギンガの三人は久しぶりの再会を果たした。

 

「貴女は‥‥」

 

「ナカジマ?」

 

「ネレディアさんにフォムトさん!?どうして此処に!?」

 

「お前さんこそ、どうして‥‥」

 

「ん?副長、知り合いかね?」

 

「は、はい。第二次イスカンダル遠征の時に‥‥」

 

「ふむ‥‥久しぶりに出会ったのであるならば、積もる話もあるだろうし、司令部には儂が赴こう」

 

「えっ?で、ですが‥‥」

 

「かまわん、かまわん。ハハハ‥‥」

 

瓢はネレディアとバーガーがギンガの知り合いであり、三人のリアクションからこの広い宇宙で奇跡的な再会をしたのだから会話も華が咲くだろうと思い、司令部への礼は自分が行くので、ギンガには暫しの間、再会と談笑に浸るよう気遣った。

 

瓢からの気遣いでネレディアとバーガーに再会し、時間を貰ったギンガは基地内のラウンジにてネレディアとバーガーと会話の一時を過ごした。

 

「改めて久しぶりね。元気だった?」

 

「はい。ネレディアさんもフォムトさんもお元気そうで何よりです」

 

「そう言えばツキムラの奴はどうした?一緒じゃねぇのか?」

 

バーガーはギンガが居るのだから良馬も居るのかと思いギンガに訊ねる。

 

「私は今、良馬さんと別の艦に乗艦しているので、良馬さんはこの星には居ません」

 

「そうか‥‥」

 

バーガーとしてはヤマト、まほろば がガルマン・ガミラス本星に来て以来会っていないので少々残念そうだった。

 

「それで、お二人はどうしてこの星に?」

 

「私とフォムトは本国からある任務を受けてこの星に立ち寄ったのよ。貴女は?」

 

「私は現在、このバジウド星系の哨戒任務を行っておりまして、先日こちらの星に所属している次元潜航艦と共に輸送船団の攻撃任務を行い、戦闘で艦が損傷してしまったので、補修の為にこちらの星で受ける事になりまして‥‥」

 

「輸送船団を攻撃って事は、ボラー派の連中か‥‥」

 

「はい」

 

「ったく、あの連中のしぶとさには敬服するぜ‥‥」

 

バーガーはバジウド星系におけるボラー派のしぶとさを吐き捨てるかのように吐露する。

 

「まぁ、そのしぶとさのおかげで今回の任務が私たちに来た訳だけど‥‥」

 

「あの、差し支えなければお二人がどんな任務を受けたのかお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 

「救援任務よ」

 

「救援‥任務‥‥」

 

「ええ、この近くにあるロッサって言う星に私たちの軍が上陸部隊を派遣したのだけれど、ロッサに展開しているボラー派の軍が意外にもしぶとくて、こっちが押されているみたいなの‥‥今東部方面軍は、ボラー領内侵攻作戦をしていて、ロッサに援軍を送る余裕がなくて‥それでロッサからの撤退が決まって、私とフォムトの艦隊が上陸部隊を迎えに行くのよ」

 

ネレディアから任務の内容を聞いたギンガは、

 

「あ、あの‥‥」

 

「ん?何かしら?」

 

「その任務、私たちにも協力させていただけませんか?」

 

「えっ?」

 

「はっ?」

 

「あっ、勿論、この後艦長と話し合って許可が出ればですが‥‥」

 

「私たちとすれば、戦闘艦が一隻でも多く来てくれるのは嬉しい事だけど‥‥」

 

「ガルマン・ガミラスの方々には太陽制御やシャルバート星、金星宙域での戦闘でも協力をしてもらいましたし、地球と同盟国でありますから、それに困っている人を助けるのも軍人の務めですから」

 

「そ、そう?それじゃあ、お願いできるかしら?」

 

「はい!!」

 

ギンガは瓢にネレディアとバーガーが行う任務の参加を具申する為にラウンジを後にした。

 

 

ネレディアとしてはギンガからの協力は正直ありがた申し出であった。

 

地球の艦の強さは実際にこの目で見たシャンブローを始めとしてこれまでガルマン・ガミラスの軍部内でも噂されていたからだ。

 

ネレディアはギンガの性格から今回の任務の協力を申し出てくることを読んでいたのだろうか?

 

その為、自分たちの任務内容をギンガに教えたのではないだろうか?

 

地球とは同盟関係で任務はロッサの上陸部隊の救援とは言え、任務内容を第三者にベラベラと話すのは軍人としては失格だ。

 

そんな疑問がバーガーの中にあった。

 

そこでバーガーは直接ネレディアに真意を訊ねてみた。

 

「おい、ネレディ」

 

「何かしら?」

 

「お前、こうなる事を読んでナカジマに任務内容を教えたのか?」

 

「まさか、そこまで考えてはなかったわ」

 

「‥‥」

 

ネレディアはバーガーの質問内容を否定する。

 

「救援任務とは言えこれから行くのは戦場よ。本音を言えば、そんな場所へ好き好んであの子を巻き込みたくはなかったわ」

 

「‥‥」

 

そこまで言われバーガーはネレディアの内心を悟った。

 

「フォムト‥‥」

 

「ん?」

 

「‥‥メリアと同じ結末は避けないとね」

 

「当たり前だ」

 

ネレディアとバーガーはギンガが去っていった方向をジッと見ていた。

 

その後、ギンガは司令部から戻って来た瓢にネレディアとバーガーが請け負った任務に就いて話、八雲もその任務に協力する旨を具申した。

 

まだ次の哨戒宙域が決まっていない事やこれまでガルマン・ガミラスから受けた協力、地球とガルマン・ガミラスが同盟関係である点を考慮して瓢はネレディアとバーガーの任務に協力することを決めた。

 

その為、瓢は八雲の乗員たちに次の任務についての説明を行い、次いでミランガルにて今回の救援任務についての説明を受けた。

 

今回の任務地である惑星ロッサはバース星同様、極寒の惑星であった。

 

惑星ロッサが極寒な惑星となっている大きな理由は、ロッサの近くにガス状の暗黒星雲が存在しており、宇宙気流の流れによってこの暗黒星雲より、暗黒ガスがロッサへと流れそれが太陽を遮る事でロッサは極寒な惑星となっているのだ。

 

当然、このロッサの環境、近海の宇宙海図情報はネレディアから瓢に共有された。

 

「ガス星雲が近くにある星か‥‥迂闊に入り込んでレーダーを潰されたら頼りになるのは肉眼となるか‥‥」

 

「ええ、しかしこの暗黒ガスを上手く利用できれば、敵の目を眩ませる事が出来ます」

 

「ロッサ付近にボラー派の宇宙艦隊の存在は確認されているのでしょうか?」

 

「今の所、ロッサ周辺に敵の宇宙艦船の存在は確認できていません。しかし、敵がいつ艦隊を派遣して来るのか?それは流石に情報がないので、上陸部隊の撤収は一日でも早くに実行をしたい所です。ですが、現在かの地にはこのゼス所属の次元潜航艦が伝令と補給に向かっているので、その帰還を待っている形で、なんとも歯痒い事です」

 

伝令なしにロッサへ向かっても迅速に撤収作業が出来るか分からない。

 

もしも撤収作業中に敵襲を受ければ、陸上部隊は勿論の事、撤収に来た艦隊にも大きな被害が及び、撤収どころか救援艦隊もロッサに取り残されてしまう恐れもある。

 

とは言え、敵の増援がいつ来るのか分からない状況で、いざ救援へ向かってみると既に敵の攻撃を受けて全滅していたという可能性もあったので、何もかもが時間との勝負となっていた。

 

その伝令任務を帯びたUXー234はワープにワープを重ねて惑星ロッサへと急いで向かった。

 

そしてロッサの近海にて、今後の任務成功の確率をあげるために使い捨てのスパイ衛星を放出し、暗黒ガスがロッサに掛かるタイミングを見計らいロッサに展開する上陸部隊の拠点に向かった。

 

久々の友軍艦艇の到着にロッサの陸上部隊は歓喜した。

 

そして、少ないながらも物資を運ぶ傍ら、UXー234艦長のストロネストロは司令部にて司令官との面会をして撤収の為の救援艦隊が間もなくこのロッサへ派遣されることを伝える。

 

しかし、この撤収について反対してきたのは親衛隊であった。

 

「撤退だと‥‥!?モノは言いようだな。早い話、尻尾を巻いて逃げると言う事ではないか!?」

 

ロッサに派遣された親衛隊の副官が陸上部隊の司令官とストロネストロに噛みつく。

 

「‥‥」

 

「我が親衛隊に『撤退』 『退却』の二文字はあり得ぬ!!そもそも我々は貴様ら上陸部隊が敵に押されていると言うからこの星に駆けつけたのだ!!それを今更ろくに戦いもせずに引き返せと言うのか!?」

 

「‥‥やむを得ません。敗北を認める事になっても‥‥短期間でロッサを占領できず、こうして戦線が長期化し、頼みの綱である東部方面軍は現在、ボラー連邦領内侵攻作戦中となった今、このロッサはもはや孤立した点に成り果てました。今後の補給も援軍も難しくなることが予想される一方で、敵は長期にわたって我々と戦うことが出来、更に援軍も送り込まれる事も予想されます」

 

上陸部隊の司令官は親衛隊員を前に今後の戦線の泥沼化を指摘する。

 

「総統閣下からも敗戦の責はとらぬと明記された撤退命令書も届いております。生きていれば再び国の為に‥総統閣下の為に戦うことが出来ます」

 

上陸部隊の司令官とストロネストロの説得を聞き、親衛隊の隊長は‥‥

 

「ふむ‥‥作戦終了‥‥と言う事でよかろう」

 

「‥‥」

 

ロッサからの撤退を了承した。

 

本国からの伝令任務を終えたUXー234は負傷者を乗せてゼスへの帰還行動へ入った。

 

「それではUXー234は惑星ゼスへと帰還します。皆様のご武運と撤収成功を祈ります」

 

「うむ、貴官もゼスまでの航海の安全を祈る」

 

伝令としてUXー234は何としてでもゼスへと戻り、ゼスに居るネレディアたちへこの事実を伝えなければならない。

 

UXー234は往路同様、急ぎ惑星ゼスを目指してロッサを出航して行った。

 

ロッサからの撤退は上陸部隊の将兵の間に瞬く間に広がった。

 

「やはり、此処を放棄して撤退するのですか?」

 

「ああ、そうらしい。まぁ、地上はこの雪だから、宇宙では暗黒ガスが漂っているだろう。気候が好転するまでは敵の定期爆撃は来ないだろう」

 

「じゃあ、安心して撤退することが出来ますね‥‥あっ、でも親衛隊の連中はどうなんでしょう?意地を張って『此処で戦い続けるからお前たちも残れ』‥‥なんて言い出してこないでしょうか?」

 

士官と撤退について話していた兵士は親衛隊が出しゃばって撤退話を蹴り、全員玉砕の道をたどるのではないかと不安になった。

 

「どうだろうな‥案外、親衛隊の連中も内心ホッとしているんじゃないか?本音を言えば、こんな星からはさっさと放棄して本国へ帰りたいだろうよ。こだわっているのは面子か体裁だけだろうさ」

 

「そんなもんでしょうかね?」

 

兵士は一般兵だったので、親衛隊員の面子や体裁なんて分からなかった。

 

「まぁ、お迎えが来るまでは敵の陸上攻撃隊が来るかもしれない。久々に来た補給物資だ、撤退の日まで大事に使うぞ」

 

「了解」

 

兵士はUXー234が持って来た物資の整理を始めた。

 

そのUXー234は往路同様、次元潜行とワープを重ね惑星ゼスを目指した。

 

UXー234が惑星ゼスへ帰還し、ネレディアと司令部へ報告を入れると救援艦隊と八雲は直ちに惑星ロッサを目指して出航して行った。

 

ロッサを目指していく中、UXー234が置き土産に残してきたスパイ衛星の一基がロッサへ向かう敵の援軍らしき艦隊の姿を捕捉した。

 

 

ミランガル 艦橋

 

「リッケ司令。スパイ衛星G014がロッサへ向かう敵艦隊らしき艦影を捕捉しました」

 

「敵艦隊?それで規模は?」

 

「はっ、新型の戦艦を旗艦として、アポストロ級航宙戦艦二、ロスチラフ級航宙戦艦四、護衛艦、輸送船で構成されている艦隊です」

 

「輸送船が居ると言う事は、ロッサへの増援とその護衛艦隊か‥‥」

 

「おそらく‥それにこれまで確認されていなかった新型戦艦を投入してきたと言う事はただの護衛艦隊と言う訳ではなく、本格的なロッサの攻略部隊ではないでしょうか?」

 

スオロフ級戦艦の映像を見ながら副官がネレディアにこの艦隊の本当の任務の予測をたてる。

 

「戦力に関しては地球の八雲を含めて五分と五分と言った感じであるが‥‥気象状況は?」

 

「ロッサ本土は降雪で、暗黒ガスもロッサ方面へ流れているようですが、まだ薄いみたいで、濃厚になるのはあと三日ほどかかるみたいです」

 

「ロッサ本土へ行く前に第二戦隊のフォムトと八雲と話あう必要がありそうね」

 

救援艦隊はロッサの手前にある無人惑星に停泊し、ロッサに敵の攻略部隊が接近中である情報を共有した。

 

「攻略部隊か‥‥こんな時に厄介だな」

 

「しかも相手は新型の大型戦艦か‥‥」

 

今回初めて確認されたボラー派の新型戦艦、スオロフ級‥‥

 

このスオロフ級の能力がどれほどの能力なのかが不明な点が不安要素となる。

 

「映像からじゃあ詳しい大きさは判別できねぇが、ノイ・ゼラード級とほぼ同じ大きさか‥‥」

 

「制宙権をとられるとロッサからの撤退は至難の業となるな‥‥」

 

「敵が来たとなると、此処は艦隊を二つに分け、救援部隊と敵の注意を引き付ける揺動部隊にしてみてはどうだろうか?」

 

瓢が艦隊の分散と役割を提案する。

 

「作戦の成功率を上げるにはその方がいいか‥‥」

 

成功を期する為に瓢の案が採用され、親衛隊員と陸上部隊を収容するゼルグード級を率いる第一戦隊がロッサの地表に降下して陸上部隊を収容し、第二戦隊と八雲が敵艦隊を陽動する役目を担う事となった。

 

第一戦隊は暗黒ガスに隠れてロッサの地表へ降下し、陸上部隊を収容。

 

第二戦隊と八雲は第一戦隊がロッサの地表へ降下する前に敵艦隊をロッサ近海から引き離す必要がある。

 

更に暗黒ガスの影響と同時に作戦上、隠密を要する。

 

その為、無線封鎖は絶対条件となる。

 

重武装ユニット装備しているとは言え、ランベアは元々空母だったので、今回の作戦でも通常のガイベロン級より艦載機の数は減らしているが、ちゃんと艦載機は搭載されている。

 

その為、ランベアには陽動の他に第一戦隊との連絡役も担ってもらう。

 

「しかし、無線封鎖は艦載機も同じだとして、暗黒ガスと無線封鎖下の中で、誘導機なしで第一戦隊までたどり着けるか?」

 

「その点につきましては八雲より早期警戒機を誘導機として飛ばし、連絡機を導きます」

 

「だったら、その早期警戒機を連絡機としてロッサへ向かわせた方が手っ取り早いのではない?」

 

「成功率を高める事と暗黒ガスの中での飛行と電子機器操作に集中したいので、ガルマン側にも連絡機を飛ばして頂きたい」

 

「なるほど、分かったわ」

 

この任務には大勢の人の命がかかっているので、失敗は許されない。

 

無駄かと思われる行動でも成功率を上げるには積極的に採用し実行しなければならない。

 

作戦内容が決まり、ネレディア率いる第一戦隊とバーガー率いる第二戦隊と八雲はそれぞれ別行動をとった。

 

 

八雲 艦橋

 

「ミランガル以下の第一戦隊、離れます」

 

「作戦は暗黒ガスの濃度が上がり、ロッサへ向かうまでだ。それまではランベアには休んでもらおう」

 

「了解」

 

「艦長、陽動を確実にするために威力偵察を行ってみてはどうでしょう?」

 

ティアナが瓢に威力偵察を具申する。

 

ミランガル以下の第一戦隊が敵に見つかる前に敵に自分たちの存在を認識させようと言う思惑もあった。

 

「‥‥よろしい、やってみるか。通信長、ランベアに発光信号」

 

「はい」

 

瓢はティアナの意見を採用し、八雲単艦で威力偵察を行う旨を伝える。

 

 

ランベア 艦橋

 

「艦長、八雲より発光信号です」

 

「ん?八雲は何と言っている?」

 

「はっ、『本艦はこれより敵艦隊へ威力偵察を行う。各艦は所定の宙域にて待機されたし』‥‥以上です」

 

「威力偵察だと?」

 

「単艦で威力偵察とは‥‥地球の軍人は無茶をしますな‥‥」

 

「‥‥」

 

単艦で威力偵察へと向かう八雲をバーガーは神妙な面持ちで見つめていた。

 

 

その後、八雲はわざと敵に見つかるような行動をとった。

 

当然敵としては八雲の迎撃をする。

 

 

八雲 艦橋

 

「敵弾、来ます!!」

 

「左舷砲雷撃戦用意!!牽制で良い、無理に宛てる必要もないが、出来れば敵に多少のダメージを与えたい!!」

 

「左舷、本艦より二十度方向に敵戦艦一、護衛艦二隻接近!!」

 

「攻撃準備良し!!」

 

「撃て!!」

 

八雲が撃ったショックカノンは二発、敵戦艦に命中したが距離があった為、かすり傷程度のダメージしか与えられなかった。

 

「気象状況はどうか?」

 

「ロッサ付近の宇宙気流の流れが強まり始めました」

 

「よし、敵勢力の注意は十分に掴めた!!艦首反転、百八十度。最大船速。逃げるぞ!!」

 

八雲は敵が包囲する前にこの宙域から撤退して行き、ボラー派の艦隊も輸送船団の護衛中と言う事で八雲に追撃の艦を送る事も無く、八雲は無事にこの宙域を離脱した。

 

 

ミランガル 艦橋

 

ミランガル以下の第一戦隊は第二戦隊と八雲と分かれた後、ロッサ付近のアステロイド帯で待機していた。

 

艦橋ではロッサのスパイ衛星を通じてロッサ付近の宇宙気象を注意深く監視していた。

 

「司令、ボラー派の通信を傍受しました」

 

「内容は?」

 

「はっ、どうも例の艦隊が襲撃を受けたようです」

 

「フォムトがもう仕掛けたの?」

 

「いえ、通信の内容から襲撃を掛けたのはどうやら地球の艦みたいです」

 

もし、バーガーが襲撃を仕掛けたら通信の内容では『ガルマン・ガミラスの艦隊』と出てくるはずだが、ボラー派の艦隊からは『ガルマン・ガミラスの艦隊』という単語は出てこなかった。

 

その為、ミランガルの通信士は襲撃を仕掛けたのが八雲であると判断した。

 

「暗黒ガスの状況は?」

 

「宇宙気流が強くなり始めました。ガスが晴れるまでは少なくとも三日はかかるでしょう」

 

「よし、各艦に下令、全艦ロッサへ全速急行!!我に続け!!」

 

ミランガル以下の第一戦隊はロッサへと全速で向かった。

 

一方で八雲から威力偵察を受けたボラー派の艦隊は陣形の再編成と被害状況の確認で進撃の一時中断を余儀なくされた。

 

 

ツェザレー 艦橋

 

「どこの星の艦か分からないが、まさか本艦にキズを負わせるとは‥‥」

 

「攻撃もさることながら、操艦も大したモノだ」

 

「まさか、先日の輸送船団を壊滅に追い込んだと言う例の戦闘艦ではないでしょうか?」

 

「しかし、今回の奴の動きからして本気で我々を攻撃してきたわけではなさそうだ」

 

「とすると、威力偵察‥‥って事ですか?」

 

「ああ‥だが、これで奴らの目論見が読めたぞ」

 

「目論見?」

 

「ああ。囮を使って我々をロッサ近海から誘いだし、その隙に別動隊が動き、ロッサにいる上陸部隊を撤収させるつもりだろう」

 

「ロッサの上陸部隊を撤収?」

 

ノヴォッキーは八雲の不自然な行動から別動隊が居り、その別動隊の目的がロッサに居るガルマン・ガミラスの上陸部隊の撤収だと見抜いた。

 

「しかし、あのガルマン・ガミラス軍が撤収するとはどうも考えにくいのですが‥‥」

 

副官は撤退を良しとしないガルマン・ガミラス軍はそう簡単に撤退をするのか疑問だった。

 

「いや、ロッサでの作戦は既に戦略上の重要さを失っている。東部方面軍は今、ボラー連邦領内への侵攻作戦を行っており、バジウド星系での戦闘はガルマン・ガミラス本国軍よりもむしろ、裏切り者のガルマン派の同盟軍が行っている。自国民を見捨てるようなことがあれば、国民、同盟軍に不信を招きかねないからな」

 

「な、なるほど‥‥」

 

「国民の不信が募れば、シャルバート教の信者がテロを扇動しかねない。そうなれば国内平定でボラー連邦領内侵攻作戦なんて頓挫する」

 

「しかし、敵の目的が判明したのであるならば、みすみすロッサの上陸部隊を敵の本国へ還すのですか?」

 

「まさか、そんなことはさせん。敵の目的が判明したのであるならば、そこを利用する」

 

「と言うと?」

 

「輸送船は一時、後方に下げて艦隊を二分する」

 

ノヴォッキーは機器を操作してモニターに自身が立てた作戦を表示して説明する。

 

「囮の艦はロスチラフ級と護衛艦部隊で足止めをし、本艦を含めて残りの艦隊で側面と後方から挟み撃ちにして、短期間で殲滅した後、ロッサの上陸部隊を収容した救援部隊を上陸部隊諸共殲滅して潰す」

 

「承知しました」

 

「行くぞ!!全艦発進!!敵艦隊は上陸部隊諸共すべて宇宙の藻屑にしてやるのだ!!」

 

ボラー派の艦隊もガルマン・ガミラスの救援艦隊+八雲の殲滅の為に行動を開始し始めたのだった。

 

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