星の海へ   作:ステルス兄貴

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百九十二話 救援任務そのⅡ

 

 

バジウド星系にてボラー派の輸送船団を攻撃し、壊滅させるも被弾して補修が必要となった八雲。

 

八雲と敵輸送船団の攻撃を共闘したガルマン派の惑星ゼス所属のUXー234の母星である惑星ゼスにて補修と乗員たちの休養を行う八雲。

 

そんな中、バジウド星系内にあるボラー派の惑星、ロッサにて同惑星に上陸したガルマン・ガミラスの陸上部隊はロッサ軍の思わぬ抵抗と反撃を受け、旗色が悪く戦況はガルマン・ガミラスにとって不利となった。

 

東部方面軍、ガルマン・ガミラス本国はロッサからの撤退を決め、直ちにロッサ上陸部隊の撤収の為に救援艦隊が編成された。

 

その救援艦隊はロッサへ向かう前に惑星ゼスに立ち寄った。

 

救援艦隊の指揮官はかつてシャンブローにて、まほろばと共闘した経験があるネレディアとバーガーであった。

 

ネレディアとバーガーに再会したギンガは二人が何故、惑星ゼスに立ち寄ったのかを訊ねると、ネレディアはギンガに自分たちの任務を話すと、ギンガはその任務の参加協力を申し出た。

 

八雲艦長の瓢もギンガからの提案を受け、八雲はガルマン・ガミラスの救援艦隊と共に惑星ロッサへと向かった。

 

その惑星ロッサでは、ガルマン・ガミラスが上陸部隊の救援を行おうとしている中、ボラー派でも惑星ロッサへ増援を行おうとしていた。

 

ボラー派の動きは救援へ向かったガルマン・ガミラス側もキャッチしていた。

 

その為、救援艦隊はロッサ上陸して上陸部隊の収容を行う部隊とボラー派の艦隊の注意をひく陽動部隊の二手に分かれた。

 

しかし、ガルマン・ガミラス側のこの作戦についてボラー派の艦隊側もガルマン・ガミラスの目的に気づいていた。

 

 

ミランガル 艦橋

 

「僚艦を見失うな!!全艦見張りを厳にせよ!!」

 

惑星ロッサ近くの暗黒星雲から宇宙気流の影響でロッサ付近の宇宙空間には暗黒ガスが漂っており、ミランガル以下の第一戦隊はその暗黒ガスへ突入し、敵の目を欺いく秘匿行動をとる。

 

「左舷に味方艦!!」

 

「面舵一杯!!」

 

ミランガルの左舷側‥至近距離をクリピテラ級航宙駆逐艦が通り過ぎていく。

 

「ふぅ~‥‥間一髪でしたね」

 

「ああ、味方艦のロストもそうだが、衝突でもすれば二重遭難になってしまう。操艦、見張りには十分に注意しろ」

 

しかし、第一戦隊が暗黒ガスへ入っていく姿はボラー派の偵察機によって捕捉されていた。

 

 

ツェザレー 艦橋

 

「偵察機より、入電!!『ゲルバデス級航宙戦闘母艦、ゼルグート級一等航宙戦闘艦以下の中、小艦艇が暗黒ガス内へ突入を確認す』‥以上です」

 

通信士はツェザレー艦長のノヴォッキーへ報告をいれる。

 

「フフ‥読み通りだな。ガルマンの連中、何処かの同盟国の軍艦も援軍に来ているみたいだが、先ほどの艦は別動隊でゲルバデス級とゼルグード級の艦隊をロッサへ向かわせるつもりだな。しかし、小細工をしても無駄だ。ロッサの上陸部隊もこのロッサ近海に展開しているガルマン・ガミラスの艦隊は全て葬るぞ!!」

 

ノヴォッキーはまず、ロッサへ向かった第一戦隊をロッサの軌道上で待ち伏せを行い、ロッサに展開していたガルマン・ガミラスの陸上部隊諸共殲滅しようとしていた。

 

ボラー派の艦隊に動きが読まれているとは知らず、陽動を担う第二戦隊では‥‥

 

 

ランベア 艦橋

 

「バーガー司令。八雲より発光信号です」

 

無線封鎖中なので、艦隊内でも連絡は発光信号にて行われており、八雲がランベア宛てに発光信号を送って来た。

 

「内容は?」

 

「はっ、『本艦はこれより敵艦隊を強襲し、攪乱す。ランベアは当宙域に留まり連絡機発進態勢を整えられたし』‥‥以上です」

 

「ったく、威力偵察の件と言い、今回の強襲と言い、そう言う役目は本来、俺の役目なんだけどな‥‥」

 

ドメル幕僚団に居た頃から、戦線における切り込み隊長を務めて来たバーガー。

 

その時は手柄と同時に自身の死に場所を捜していたが、今となっては大勢の部下を指揮する一司令官の立場となっているので、そう簡単に以前の様な行動はとれなかった。

 

「飛行長、スヌーカーの準備だ。連絡機以外にも艦載機を展開する必要もある。ランベアに搭載されているスヌーカー全部をいつでも出せるようにしておけ」

 

「了解」

 

バーガーはランベアに搭載されているスヌーカー全機の出撃準備をさせた。

 

しかし、ランベアはガルマン星解放戦役後に大改装を行っており、第二甲板には480ミリ三連装陽電子カノン砲塔を二基、330ミリ三連装陽電子ビーム副砲を六基、そして甲板自体を改造し、魚雷発射管を二十四門、ミサイルランチャーを三基兼ね備えたガイベロン級の戦闘空母と言える改装をしたが、第二甲板に砲塔を乗せた為、従来のガイベロン級と異なり、搭載機数は大きく減らしていたが、火力に関しては戦艦並みで機動力についても機関を改装した為、通常のガイベロン級よりもあり、切り込み攻撃を得意とするバーガーとしてはこのランベア重武装ユニット搭載型は使い勝手が良い艦であった。

 

「とは言え、暗黒ガスがこの辺まで流れてきていやがる。これだとレーダーも役には立たねぇな‥‥おい、スマルヒは積んでいるだろう?」

 

「はい」

 

「よし、八雲の前方に搭載している全てのスマルヒを展開して援助してやれ」

 

バーガーは急ぎスヌーカーよりも先に偵察機であるスマルヒを出撃させる。

 

「何かあれば、ランベアよりも八雲に情報を送ってやれ」

 

そして、出撃させたスマルヒには敵の情報はランベアよりも先に八雲へ情報を送るように指示を出した。

 

 

八雲 艦橋

 

「暗黒ガスが此処まで来ている」

 

「近距離レーダー使用不能」

 

「早期警戒機を出せれば良いんですが‥‥」

 

バース星で受け取ったのは、早期警戒機は一機だけであり、その早期警戒機はランベアからの連絡機をロッサに居る第一戦隊への案内機の役割があるので、飛ばすに飛ばせない。

 

「ランベアより艦載機の発艦を確認!!」

 

「なに?もう連絡機を出したのか?」

 

「‥‥いえ、艦載機より発光信号。どうやらランベア所属の偵察機の様で、哨戒活動で本艦をサポートしてくれるみたいです」

 

「そうか‥‥偵察機へ返信。『索敵に感謝する』だ」

 

「了解」

 

八雲はランベアの偵察機に感謝の言葉を発光信号で送った。

 

その後、スマルヒは八雲から先行して哨戒活動を行い、その内の一機がボラー派の艦隊を発見する。

 

「偵察機、三号機より発光信号。敵艦隊を発見したとのことです」

 

「艦数は?」

 

「ロスチラフ級四隻と護衛艦六隻を中心とした小規模の艦隊です」

 

「例の新型戦艦の姿は?」

 

「確認できていません」

 

「艦数がミランガルから送られて来た艦隊数よりも少ないとなると、まさか残りの艦はロッサへ向かった第一戦隊を攻撃に向かったのでは?」

 

「こちらが戦力を二分していることに気づかれたか‥‥敵には鋭い勘か頭のキレる者が居る様だ」

 

「どうしますか?無線封鎖を解除してミランガルに警告を送りますか?」

 

「いや、だとしたらこちらは尚更派手にやるぞ。第一戦隊へ向かった敵艦隊が慌てて引き返すくらいにな」

 

瓢はこのまま偵察機が捕捉した艦隊を短時間で殲滅し、第一戦隊へ向かった新型戦艦を含む残りの艦隊が第一戦隊よりも自分たちへ引き寄せる策をとった。

 

「総員に告ぐ、本艦はこれより敵艦隊との戦闘に入る。本艦を囮として第一戦隊のロッサ突入の援護を行う。偵察機各機へ通信『敵艦隊の方位を送ってもらえ」

 

「通信!?通信封鎖を解除なさるんですか?」

 

「我々は囮だからな。敵さんにはついてきてもらうぞ!!全艦、砲雷撃戦用意!!」

 

八雲はショックカノン、ミサイル、魚雷をいつでも撃てる状態にして敵艦隊へと向かう。

 

敵の動きはスマルヒから逐次送られる。

 

「敵艦、右舷方向。距離一万六千宇宙キロ、T字を描いています」

 

「くっ、暗黒ガスで良く見えない‥‥空間照明弾発射!!」

 

ティアナは偵察機からの情報では敵の姿が見えないので、まず空間照明弾を放ち、敵の姿を確認しようとする。

 

「右砲戦、第一~第三主砲撃て!!」

 

空間照明弾で敵の姿がチラッと見え、ティアナは主砲を一斉射する。

 

当然ボラー派の艦隊も八雲の空間照明弾から、八雲の姿を確認し、応戦して来る。

 

「敵艦発砲!!」

 

「面舵一杯!!最大船速!!」

 

「敵はT字を描いて来る。ならば敵の前面を駆け抜け、艦尾に向かって突っ走る」

 

「敵弾、通過!!」

 

「命中弾なし!!」

 

いくら空間照明弾やシックカノンの光源からボラー派の艦隊も八雲の存在を確認するも正確な位置ではなかったので、八雲に命中弾を与えることは出来なかった。

 

「続けて撃て!!どんどん撃て!!」

 

ティアナは主砲制御室へ連続射撃の命令を下す。

 

「戦術長、敵の後方に出たらもう一度空間照明弾を撃て、それと探照灯も照射しろ」

 

「探照灯も‥ですか?ですが、それだと的にされませんか?」

 

常に光源をつけていると夜間で懐中電灯を振り回し、相手に自分の位置を教えている様なモノだ。

 

ティアナは瓢にその危険性を指摘する。

 

「かまわん。敵も照明弾くらいは持っているだろうし、第一戦隊の方に敵の新鋭戦艦がいるならなるべく派手にやって敵には慌ててもらわないとな」

 

「敵艦、距離を詰めてきます!!」

 

敵艦隊は先ほどの砲撃で八雲に命中弾を与えられなかった事から八雲に急接近して近距離戦に持ち込もうとする。

 

「このまま引き付けて仕留めるぞ」

 

「了解」

 

「撃て!!」

 

相手が近づいて来た事を利用して八雲はショックカノンを接近して来るボラー派の艦隊に向かって放つ。

 

すると、八雲が撃ったショックカノンはロスチラフ級航宙戦艦に命中する。

 

「うわぁぁー!!」

 

「艦尾に命中!!」

 

被弾したロスチラフ級航宙戦艦の船体には大きな衝撃が走る。

 

「か、艦長。敵は単艦ですが、この暗黒ガスの中を高速で我が艦隊の後方へ抜けようとしています!!」

 

「電撃戦はガルマン・ガミラスの専売特許かと思ったが、ガルマン・ガミラスの同盟国にも無茶苦茶な星間国家があるようだな」

 

「敵艦、探照灯を照射!!」

 

「なんだと!?この暗黒ガスの中で探照灯を着けただと!?一体奴らは何を考えているんだ!?」

 

八雲の動きにロスチラフ級航宙戦艦の艦長は戸惑う。

 

しかし、別の艦では、

 

「敵は自分の居場所を俺たちに教えている。チャンスだ!!光源に向かって攻撃しろ!!」

 

八雲が点けた探照灯を攻撃のチャンスと見て攻撃を仕掛けてくる艦もあった。

 

「左舷、後部に敵弾命中!!」

 

「技術班、応急修理に迎え!!」

 

案の定、八雲に敵弾が命中する。

 

「ミサイル撃て!!」

 

ティアナは敵弾が来た方向へミサイルを放つ。

 

「ミサイル命中!!敵護衛艦、撃沈!!」

 

八雲のミサイルは敵の護衛艦を撃沈した。

 

「続けて主砲撃て!!」

 

探照灯で見つけた敵に対してショックカノンも撃つ。

 

「命中弾を与えているのに、反撃してきたぞ!!」

 

「味方の護衛艦が沈んだ!!」

 

八雲の防御力と反撃能力を見て驚愕する。

 

「くそっ、一時艦列を解け!!固まっていると危険だ!!」

 

敵は艦列を解き、分散する。

 

「敵艦、分散し始めました」

 

「よし、今の内にランベアへ連絡機の誘導の為、早期警戒機を発進させろ!!」

 

敵が分散行動を取り始めたのを確認し、瓢は早期警戒機の発進を命じた。

 

「では、艦長。行ってきます」

 

早期警戒機の操縦にはギンガが志願していた。

 

ティアナとしては自分が操縦士を務めたかったが、ボラー派艦隊との戦闘がある事からティアナは戦闘指揮をしなければならなかったので、操縦士を務める事は出来なかった。

 

その為、ギンガがパイロットを志願して通信科から一人、オペレーターとして搭乗する事となった。

 

ギンガと通信科の隊員は急ぎ格納庫に向かい早期警戒機へと乗る。

 

「発進!!」

 

そして、ランベアに向かって早期警戒機は発進した。

 

「私は操縦に専念するから、レーダーや通信関係については貴方に全ての信頼を寄せるから、頑張ってね」

 

「は、はい!!」

 

ギンガは後部座席に居る通信科の乗員を励ましつつランベアに向かった。

 

「早期警戒機の発艦を確認」

 

八雲から離れていく早期警戒機の姿が確認され、

 

「よし、本艦は引き続き、全火器を大盤振る舞いしつつ之の字運動!!敵艦隊をロッサとは別方向へ誘引する!!機関、全速!!」

 

八雲は引き続き、ボラー派の艦隊を挑発しつつロッサから引き離そうとする。

 

ボラー派側も当然八雲が陽動を行っていると分かっているが、このままむざむざと逃がしては今後の自分たちの活動に支障をきたす恐れもあり、何より此処まで挑発されて尻尾を巻いていては軍人としてのプライドが許さない。

 

「全艦に告ぐ、敵艦の動きは明らかに我々をロッサから引き離そうとする挑発行為であるが、このまま敵の好き勝手にしては我々の軍人としての誇りが汚れる。これより本艦隊は追撃を行う!!護衛艦部隊は前面に展開し、奴を追え!!他の戦艦部隊は我に続け!!」

 

分散していたボラー派艦隊は陣形を再編成しつつ八雲に追撃戦を仕掛ける。

 

「いいか、奴を見つけ次第、全力で叩け!!」

 

「了解!!」

 

「暗黒ガスのせいで近距離レーダーは使えない。遠距離。中距離レンジに切り替えろ!!ただし、レーダーだけに頼るな!!見張り員を増やして少しでも奴を捕捉する時間を短縮するのだ!!」

 

暗黒ガスの中を護衛艦部隊は八雲を追っていく。

 

ボラー派の護衛艦部隊の艦橋では見張り員を増やして八雲を捜し始めた。

 

その頃、八雲を発進した早期警戒機はランベアの近くまで来ていた。

 

誤射を防ぐために発光信号と共に味方識別の為に翼を左右に振る、バンク行動をとる。

 

「地球機を確認!!」

 

「事前に決めてあった連絡機を誘導する早期警戒機みたいです」

 

「‥‥副長」

 

「はっ!!」

 

「しばらくの間、艦と艦隊の指揮を執れ」

 

「は?」

 

バーガーは副長に一時的に指揮権を譲渡する。

 

「ふぉ、フォムト司令、いきなり何を‥‥」

 

副長は当然驚愕するし、何故行きなり指揮権を譲渡するのかを訊ねる。

 

「地球の艦が頑張っている中で、司令官の俺がランベアの艦橋で突っ立っているだけじゃあ、立つ瀬ないだろうが」

 

「えっ?あっ、ちょっと、司令官‥‥」

 

そう言ってバーガーはランベアの艦橋を後にする。

 

バーガー自身最初から連絡機のパイロットは自分が務めるつもりだったらしく軍服の下には既にパイロットスーツを着ていた。

 

そしてランベアの第一甲板にバーガーとオペレーターが乗ったスヌーカーがエレベーターにて上げられる。

 

「フォムト・バーガー、発艦する」

 

そして、連絡機であるバーガーが乗ったスヌーカーはランベアを発艦した。

 

スヌーカーの発艦を確認したギンガはそのスヌーカーの右隣につけ、スヌーカーへ通信を入れる。

 

「こちら、八雲所属。早期警戒機、機長の中嶋です」

 

「えっ?ナカジマ!?お前が操縦しているのか!?」

 

スヌーカーを操縦していたバーガーは早期警戒機のパイロットがギンガだった事に驚く。

 

「えっ?フォムトさん!?」

 

一方でギンガも連絡機のパイロットがバーガーであることに驚く。

 

「フォムトさん、司令官ですよね!?艦を離れて大丈夫なんですか!?」

 

「副長に指揮権を一時任せて来た。ウチの副長は優秀だし、いざという時に指揮を執れなかったら、困るだろう。これも成長するための一環だ」

 

「そ、そうですか‥‥」

 

異星の軍艦の指揮権なので、ギンガには深く突っ込めないし、時間がもったいないので、ギンガはそのまま任務に専念する事にする。

 

「しかし、俺の方も驚いたぜ。まさか、ナカジマが艦載機の操縦を出来るとはな‥‥」

 

「地球では意外と女性のパイロットって多いんですよ。今回は私がフォムトさんをネレディアさんの下へ案内します」

 

「ああ、頼んだぜ」

 

早期警戒機とスヌーカーは敵に見つからないように暗黒ガスの中へと入っていく。

 

「航空灯の調整には気を付けてね。派手につけ過ぎれば敵に気づかれるし、消し過ぎるとフォムトさんが私たちを見失ってしまうから」

 

「は、はい」

 

後部座席に居る通信科の乗員に灯火の調整についての注意をする。

 

「灯火とレーダーは、何とかなっていますが、副長こそ、操縦は大丈夫ですか?周囲は暗黒ガスですけど‥‥?」

 

通信科の乗員はギンガに操縦について訊ねる。

 

周囲は暗黒ガスで真っ暗であり、この暗黒ガスの中にアステロイド帯があれば、小さな艦載機など衝突すればあっという間に潰れる。

 

「ええ、大丈夫よ。私、目の良さには自信があるから‥‥」

 

「は、はぁ‥‥」

 

操縦について『大丈夫』と答えるギンガ。

 

そんな彼女の眼は普段のエメラルドグリーンから金色に変わっていた。

 

しかし、ヘルメットのバイザーを降ろしているし、後部座席からはコックピットのギンガの様子を窺う事は出来ないので、ギンガの目の色が変わっていることに気づけるのはギンガ自身だけであった。

 

(戦闘機人モードなら、暗黒ガスの中でも平気で操縦することが出来る‥‥)

 

(こういう時だけ、自分が普通の人じゃなくて戦闘機人である事が良かったって思うけど‥‥)

 

ギンガはかつて、暗黒星団帝国本星への航海の途中、暗黒銀河を通過する際、ユリーシャと競い合うかのように迫りくる岩塊の位置を報告し合ったが、今回も戦闘機人モードとなった事で、暗黒ガスの中でも迷うことなく早期警戒機を操縦し、尚且つバーガーが乗るスヌーカーを誘導している。

 

(でも、それって戦闘機人が兵器としての能力を有している事の照明になるんじゃあ‥‥)

 

自分もスバルもクイントから保護された際、クイントから、

 

「戦闘機人は確かに兵器として研究・開発されたけど、貴女たちは決して兵器ではなく、一人の人間として生きていきなさい」

 

と、兵器ではなく 『ギンガ』 と言う人間として生きていくように諭した。

 

勿論スバルにもだ‥‥

 

だからこそ、自分もスバルも自分たちの出生に対してコンプレックスを抱きつつも自分たちは人間なのだと強い信念を持ち、これまでの生活の中で魔導師としての力は使っても戦闘機人としての力は使わなかった。

 

しかし、ギンガはこの世界で軍人となり、大勢の命を守る為にこれで二度目の戦闘機人としての力を使った。

 

(ううん、魔導師としての力も戦闘機人としての力も破壊する事じゃなくて、守る為の力なんだから、母さんだってきっと分かってくれる筈‥‥)

 

自分が忌み嫌う戦闘機人の力も破壊する兵器としての力ではなく、守る為の力ならば、クイントだって理解してくれる筈だと心の中でそう思い、ギンガはひたすら操縦桿を握りしめ、バーガーのスヌーカーを誘導し続けた。

 

 

その頃、ロッサの地表では‥‥

 

陸上部隊、親衛隊が撤収の為の準備を行っていた。

 

「通信機は念のために最後の間でとっておけ!!」

 

「機密書類・暗号書類は焼却処分。念入りにな!!」

 

「生き残っている戦車は最後尾に回せ!!」

 

「各隊、人員チェックを急げ!!」

 

ロッサの空には暗雲が広がり、小雪がチラホラと降り始めた中、士官たちの大声と沢山の人が動き回る足音が辺りに響いていた。

 

「今日が撤退行動日なのだが、本当に大丈夫なのだろうな?」

 

親衛隊の隊長が陸上部隊の司令官に訊ねる。

 

隊長が言うように今日がロッサからの撤退日なのだが、未だに撤収用の艦艇がロッサに到着していない。

 

撤収作業に入っている兵士たちも何だか焦りの色が窺える。

 

「分かりません。兎も角、輸送艦が無事ならば、地表に降下しつつ決行の打電が入る筈ですが‥‥」

 

「我々は何もできずにただこうして待つだけか‥‥何とも歯痒いな」

 

親衛隊隊長は悔しそうに暗雲が漂うロッサの空を見つめる。

 

そのロッサに居る陸上部隊を救うべく、ロッサの近海ではボラー派の艦隊と八雲が暗黒ガスの中で戦っていた。

 

「集団で一隻を叩くのは武人として気が進まんが、ロッサに展開しているガルマン・ガミラスの勢力を排除する為にやむを得ないか‥‥」

 

「艦長、前方二千に何か動いています」

 

「アステロイド帯ではないな?」

 

「はい、かなりの速度でこちらに接近してきます!!」

 

「なに!?」

 

「味方艦が暗黒ガスで針路を見誤ってはいないか?」

 

敵である八雲は自分たちの先を航行している。

 

それが反転して戻って来るなんて数においてあまりにも無謀である。

 

この護衛艦の艦長は友軍艦艇が暗黒ガスで針路を見誤ったのかと思ったが‥‥

 

暗黒ガスの中からはボラー派の艦とは異なる白い船体をした艦が姿を現した。

 

「っ!?て、敵だ!!攻撃‥‥」

 

攻撃命令を下そうとするが、護衛艦よりも先に八雲のショックカノンが火を噴いた。

 

八雲のショックカノンは護衛艦の艦橋部に被弾し、爆沈する。

 

「前方に爆炎らしき光源を確認!!」

 

爆沈した護衛艦の後部を航行していた別の護衛艦が爆炎によって生じた光源を発見する。

 

「アステロイドにぶつかったのか?それとも敵に命中弾を‥‥」

 

艦橋員が確認を急いでいると、

 

前方から艦橋に向かって青白い光が飛んできたと思うと‥‥

 

凄まじい衝撃は護衛艦を襲う。

 

艦橋に居た者たちは自分たちの身に何が起きたのかを知る前に一瞬の内に絶命した。

 

 

「敵、護衛艦らしき小型艦二隻を撃沈」

 

「だが、護衛艦はまだ居るぞ。それにほぼ無傷の戦艦部隊も‥‥気を引き締めていけ」

 

八雲の艦橋では状況報告があがる。

 

敵艦隊の捜索には八雲以外にランベア所属のスマルヒが協力しており、引き続き敵艦隊の捜索と攻撃を続けられる。

 

二隻の護衛艦の爆沈はボラー派の艦隊でも確認された。

 

「前方に二つの爆炎らしきモノを確認!!」

 

「先行していた護衛艦の内、二隻と連絡が取れません!!」

 

「恐らく二隻は追っていた敵にやられたか、同士討ちをしたかのどちらかでしょう」

 

「‥‥」

 

「前方より高速移動物体がこちらに接近してきます!!」

 

「っ!?」

 

護衛艦隊の包囲網を突破して暗黒ガスの中から姿を見せたのは白い船体をした宇宙艦船であった。

 

「だ、第一、第二砲塔射撃用意!!」

 

ロスチラフ級航宙戦艦が主砲の照準を八雲に合わせようとした時、それよりも先に八雲の艦首魚雷発射管からは魚雷が発射され、先頭を航行していたロスチラフ級航宙戦艦に命中。

 

混乱している隙を突き、八雲は艦隊の中に高速で入り込んで来た。

 

「か、各艦、発砲するな!!同士討ちになるぞ!!」

 

事態を把握した陽動部隊の指揮官は味方艦に発砲を禁止する命令を下すが、

 

八雲はお構いなくボラー派の艦に砲撃やミサイルを撃ち込んでくる。

 

そうなれば、このまま黙ってやられてたまるかと思う艦も当然居る。

 

「見張り員、敵艦を視認しているか?」

 

「はい。敵は本艦前方右舷五十度の位置を高速で航行中」

 

「よし、主砲発射用意!!」

 

「待ってください、艦長。旗艦より発砲禁止の指令が‥‥」

 

「その一瞬のためらいこそが奴の狙いだ!!このまま無抵抗のままやられてたまるか!!此処は奴の裏をかいてやる!!攻撃だ!!」

 

「距離、千二百!!主砲発射準備完了!!」

 

「あっ、待ってください!!味方艦が射線上に!!」

 

「撃て!!」

 

射撃命令と味方艦が射線上に入って来たのはほぼ同時のタイミングだったので、放たれたショックカノンの発射中止命令は当然間に合う筈も無く、この砲撃をしたロスチラフ級航宙戦艦のショックカノンは別のロスチラフ級航宙戦艦に命中してしまい、同士討ちをする事となった。

 

「敵艦、我が艦隊の側面を全速力ですり抜け、暗黒ガス帯より離脱を図る模様!!」

 

「くそっ、このままではすまさんぞ!!全艦追撃!!」

 

護衛艦を複数撃沈され、同士討ちと言う無様な醜態をさらし、その上逃げられたとなれば、粛清モノだ。

 

ボラー派の艦隊は再び八雲を追って暗黒ガス帯の外へ出始めた。

 

暗黒ガス帯の中で八雲が奮戦して居る頃、ランベアでは‥‥

 

「‥‥飛行長」

 

「はっ!!」

 

「スヌーカー隊の出撃は既に完了しているのだな?」

 

「はい。全機、発進準備は既に完了しています!!」

 

「よし、全機発艦させろ」

 

「えっ?」

 

「このまま何もせずに待機していては地球の艦にも司令官にも合わせる顔がない。味方を救う為、本来ならば我々が行う筈の仕事を地球の艦が行っているのだ。ならば、我々もこのまま此処で待機しているだけでなく、戦線に参加して味方撤退の援護にまわるぞ!!」

 

「りょ、了解。攻撃機隊、全機発艦せよ!!」

 

「攻撃機発艦後、本艦も前進し、帰還する攻撃機隊を迎えに行くと同時に戦闘にも参加するぞ!!全艦我に続け!!」

 

ランベア以下の第二戦隊は八雲が引きつれてくるボラー派の艦隊へ向け、前進を開始した。

 

八雲、ランベア以下の第二戦隊がボラー派の陽動艦隊との戦闘に入ろうとしている中、ランベアを発艦したバーガーのスヌーカーと案内を務めた八雲の早期警戒機はミランガルの近くまで来ていた。

 

「近くにゲルバデス級の艦影を確認!!」

 

「ネレディアさんのミランガルで間違いなさそうね」

 

早期警戒機がミランガルを確認したのと同じようにバーガーの方でもミランガルを確認した。

 

「ネレディ、俺だ」

 

「フォムト?貴方が来たの!?」

 

ネレディアはギンガ同様、連絡機のパイロットにバーガー自身が来た事に驚く。

 

「ボラーの奴ら、どうやらこちらの作戦に気づいているみたいで、艦隊を二分している。ロッサに近くには例の新型戦艦も含まれている可能性が高い。大半は第二戦隊の方に行ったが、一隻とは言えあの新型戦艦の能力が分からないから油断は出来ねぇぞ」

 

「分かったわ。連絡ありがとう‥‥連絡機からの情報ではこの近くに例の新型戦艦がいるみたいね」

 

「いかがいたしますか?」

 

「今更此処で見捨てる訳にはいかないわ。ロッサには収容用のゼルグード級と護衛の駆逐艦数隻をロッサに降ろして、ミランガルを含めて残りはロッサ近海で警戒態勢」

 

ネレディアは上陸部隊の撤収と共に新鋭戦艦を迎え撃つ態勢をとる。

 

 

一方で、八雲を追ったボラー派の艦隊が暗黒ガスを出るとそこには複数のスヌーカーが待ち受けていた。

 

「敵機です!!」

 

「くそっ、ガルマンの奴らにはめられたか‥‥対空戦闘用意!!」

 

ボラー派の艦隊は対空戦闘を行うが、そんな中で彼らに更なる追撃者が現れる。

 

ランベア以下の第二戦隊が現場に到着したのだ。

 

 

スヌーカー隊は護衛艦よりも戦艦であるロスチラフ級を真っ先に狙い、ランベアも同様にロスチラフ級へ480ミリ砲を撃ちこんで来る。

 

「ノヴォッキー艦長、陽動部隊より救援要請が入っております」

 

「なんだと?本艦はこれよりロッサの上陸部隊諸共ガルマンの奴らを叩きに行くのだぞ!?」

 

「ですが、艦載機が襲来し、苦戦中とのことです」

 

「くっ、やむを得ん。取舵十度、味方艦隊の救援に向かうぞ」

 

ツェザレーと二隻のアポストロ級航宙戦艦はロッサの近海から友軍艦艇救援の為に向かう。

 

「本艦上方より爆撃機、急降下!!」

 

ノヴォッキーが救援に向かっている最中もボラー派の艦隊はスヌーカー隊の急降下爆撃に晒されていた。

 

「面舵一杯!!躱せ!!」

 

「ツェザレーはまだ来ないか!?」

 

「現在、全速でこちらに向かっている様です!!」

 

「くっ、それまで此方が持つだろうか‥‥」

 

スヌーカー隊の急降下爆撃、ランベア、八雲の砲雷撃で友軍艦艇は次々と数を減らしていた。

 

そして、ロスチラフ級航宙戦艦が二隻にまで撃ち減らされた時、ようやくノヴォッキー率いるツェザレーと二隻のアポストロ級航宙戦艦が現場に到着した。

 

「味方が‥‥」

 

「来るのが遅かったか‥‥」

 

(やはり艦隊を二分したのは間違いであったか‥‥)

 

最初から艦隊を二分せずに八雲、ランベアの第二戦隊かロッサへの救援に向かった第一戦隊のどちらかに的を絞り込むべきだったと今更ながら後悔するノヴォッキー。

 

「こうなればせめて一矢報いてやるぞ!!戦闘用意!!」

 

ノヴォッキーが戦闘命令を下令した時、後方からショックカノンが飛んできた。

 

「後方より砲撃です!!」

 

「なに!?」

 

ノヴォッキーは思わず後ろを振り向く。

 

後方からは戦闘甲板を開いたミランガルと三隻のデストリア級航宙重巡洋艦、二隻のクリピテラ級航宙駆逐艦、三隻のリンチェント級航宙駆逐艦が砲撃をしながら迫って来た。

 

ツェザレー以下の艦艇が友軍艦艇との合流を図ろうとした際、バーガーからの連絡を受けたネレディアは警戒態勢から追撃態勢へと変えてツェザレーを追いかけたのだ。

 

送り狼となった第一戦隊は後方よりボラー派の艦隊を砲撃して来た。

 

更にミランガル以下の砲撃だけではなく、

 

「行くぞ!!ナカジマ!!」

 

「はい!!」

 

ギンガは早期警戒機に装備されている機体上部のレドームと下部のレドームの両方をパージして、バーガーの乗るスヌーカーと共にツェザレーに対して急降下爆撃をしかける。

 

「くらえ!!」

 

「強化対艦ミサイル発射!!」

 

二機の艦載機の急降下爆撃を受けたツェザレーに大きな振動が襲い掛かる。

 

「うぉっ!!」

 

「うわぁぁー!!」

 

「ひ、被害状況を報告せよ!!」

 

「エンジン出力30%低下」

 

「補助エンジン機能停止!!」

 

「艦が傾きつつあります!!コスモジャイロがうまく働きません!!」

 

「砲塔動力伝導機能65%低下!!」

 

「艦内の各所で火災が起き始めています!!」

 

「か、艦長、我が艦隊は前後両方向から挟み撃ちにされてしまいます!!」

 

艦のコンディション、戦況共にボラー派にとっては不利となっている。

 

「て、撤退だ‥‥」

 

ノヴォッキーは苦々しく撤退命令を下し、ボラー派の艦隊は大破したツェザレーを庇うように撤退し始めた。

 

「敵艦隊、撤退行動に入りました」

 

「追撃しますか?」

 

「いや、我々の本来の任務はロッサに居るガルマン・ガミラスの上陸部隊の撤収支援だ。敵艦隊の殲滅ではない。それに、手負いの艦隊は何をするか分からない。此処は敵の増援が来ないか警戒態勢のみで良い」

 

瓢は、追撃戦は無用とし、警戒態勢だけとした。

 

ネレディアとバーガーも瓢と同じ判断であり、追撃命令は下さなかった。

 

やがてロッサから陸上部隊と親衛隊を乗せたゼルグード級が上がって来ると友軍艦艇と合流し、この宙域から撤退した。

 

そして、八雲へ帰還したギンガは‥‥

 

「あぁ~!!またレドームをパージして!!って、しかも機体下部のレドームまでパージをして!!」

 

帰還した早期警戒機の状態を見た整備長は絶叫する。

 

「副長!!どういうことですか!?先日の哨戒任務の時よりもヒドイことになっているじゃないですか!!」

 

「ご、ごめんなさい。でも、急降下爆撃を仕掛ける際、レドームがあると速度が上がらなくて‥‥」

 

「そもそもこの機体は早期警戒機であって通常のコスモタイガーではないんですよ!!」

 

と、整備長からお説教を受ける羽目になってしまった。

 

ロッサ救援艦隊はひとます惑星ゼスへ向かう航路をとった。

 

「今回は何とか無事に切り抜けられたわね」

 

ゼスへ向かう途中、ネレディアはバーガーに通信を入れた。

 

「ああ、今あのゼルグード級には大勢の仲間が生きている。新型戦艦を含む敵を殲滅することは出来なかったし、この報告を聞いて文句を垂れる奴も居るかもしれねぇが、俺は断言できる。この戦いは俺たちの勝ちだとな」

 

「それにしても連絡機で来た時はホント驚いたわ」

 

「地球の艦が俺たちの仲間の為に戦っていたんだ。多少の無理をしてでも動かなければ立つ瀬ないだろう?」

 

「それってやっぱり、地球の艦にあの子が乗っていたから?」

 

「さあな、そこはお前さんの想像力に任せるよ」

 

「もう、肝心なところは、はぐらかすのね」

 

そう言うネレディアであったが、バーガーとの付き合いが長い彼女だからこそ、バーガーの照れ隠しなのだとちゃんと察していたのだった。

 

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