人工衛星都市、ガーラミオで起きた管理局内で暗躍する麻薬事件‥‥
ようやくその主犯と思われる人物であるラトン・エスコバルを追い詰めるも彼は自身の妻に証拠品を預けており、追い詰められた際、彼は妻に証拠品の処分を命じた。
このままでは折角、事件解決まで手が届いたにもかかわらず、証拠不十分となってしまう。
スバルは急いでエスコバルの妻、グリセルダ・エスコバルの部屋へと向かう。
ガチャ、ガチャ、ガチャ、
そして彼女の部屋に辿り着きドアノブを回すが、鍵がかかっていて開かない。
ドン、ドン、ドン、
「グリセルダさん!!開けて下さい!!グリセルダさん!!」
スバルはドアを叩きながら部屋の中に居るグリセルダに声をかけるが、彼女は部屋から出てくる気配が無い。
ドアに耳を付け部屋の中の音を確認するスバル。
戦闘機人なので、目も耳も良いので彼女の部屋の中の音を聴くことが出来た。
すると部屋の中から‥‥
バシャーン!!
何かが水の中に落ちる音がした。
(確かあの人は、『パソコンを風呂に沈めろ』って言っていた‥‥まさか、今の音はパソコンをお風呂に入れた音!?)
(まずい!!書類も処分されたら証拠品が!!)
スバルは部屋の中から聴こえた水音は、グリセルダが証拠品の一つであるパソコンを処分した音だと判断した。
このままではもう一つの証拠品である書類までもが処分されてしまう。
(仕方ない、緊急事態だし!!)
スバルは右手にリボルバーナックルを装備して、思いっきりグリセルダの部屋の扉に拳を叩きつける。
鍵がかかっていたとはいえ、戦闘機人の力いっぱいの拳を受けた扉は轟音と共に鍵諸共破壊された。
部屋の中に飛び込んだスバルの目に映ったのは薪が燃えている暖炉の前で書類を両手に持ったグリセルダの姿だった。
パソコンは水没してしまったが、何とか書類が燃やされる前に部屋の中に入ることが出来たのでスバルは一息つく。
(な、何とか間に合った‥‥)
(あとはあの書類を手に入れれば‥‥)
「その書類を渡してください。それがあれば貴女の旦那さんの罪を告発することが出来ます。麻薬事犯として、管理局内にある麻薬組織の主犯として‥‥」
しかし、老婦人は微笑みながらスバルに言い放つ。
「お嬢さん‥私はラトンを罪人とすることに協力することは出来ません。頼まれた事を実行します」
彼女はあくまでも夫であるエスコバルを守る為に証拠品を処分すると言う。
「グリセルダさん!!それを渡してください!!」
「私はこれを焼きます。止めたければ力づくで私を止めなさい」
「‥‥」
「理非善悪は、私には関係ありません。ラトンが自らの罪を認めぬと言うのなら、私も夫の罪を認める事は出来ません」
ラトンが自らの罪を自白しなければ、グリセルダは証拠品を渡さないし、裁判でも証言はしないと言う。
先程の内線の内容から、エスコバルがグリセルダに頼んだのは証拠品の処分であって自らの罪を告白する事ではない。
証拠品を処分しろと言う事は、自らの罪を認めないと言う事だ。
だからこそ、グリセルダは証拠品を処分しようとしている。
これがエスコバルだったら遠慮なく殴りかかって書類を分捕っていたが、スバルは何故かこの老婦人に殴りかかれない。
この人は確かに旦那の罪を知り、見て見ぬふりを続け今も証拠品を処分しようとしている。
マーティンのためにも、フォルクスのためにも、多くの被害者のためにも、そして彼女自身のためにもスバルは力づくでも老婦人を止めなければならなかった。
それは分かっている。
心の中ではグリセルダの行為にムカッときていた筈なのに、武器もデバイスも持たない老婦人にデバイスを向けても力づくで止めることが出来ない。
もし、この場に居るのがティアナならばクロスミラージュの引き金を引いていたかもしれない。
例え躊躇っても成すべきことを成すだろう。
無力感にさいなまれながらスバルはその場に立ち尽くす。
その間にもグリセルダは書類を暖炉に近づける。
ただ、その動作はあまりも緩慢であり、彼女はスバルに力づくでも止めてもらいたかったのかもしれない。
そんな中、一発の閃光がスバルの傍を横切った。
スバルの横を通り過ぎた閃光は一直線にグリセルダへと向かうと、彼女の背中に風穴を開け、そこから真っ赤な血が服をじわじわと染めていき、部屋には書類が舞い上がり、反対にグリセルダの身体は床へと倒れる。
(非殺傷設定じゃない!?‥‥殺傷設定!?)
(い、一体誰が!?)
一連の動きを見てスバルは誰かがグリセルダを殺傷設定の武器で撃ったのだとようやく悟ることが出来た。
「‥‥」
スバルがゆっくりと後ろを振り向くと、そこにはレーザー銃を手にしたマーティンが立っていた。
(ま、マーティンさん‥‥)
「あ、アストン‥‥」
グリセルダは自分を撃った人物の名を一言つぶやき絶命する。
「グリセルダ‥‥グリセルダ‥‥」
彼は手にしていたレーザー銃を床に落とし、がっくりと両手を床につき項垂れる。
マーティンは死に至るまで自身の愛を拒否し続けた女性の名前を呟く。
自分は彼に声をかけてはならない、かける声が見つからないと判断して、スバルは部屋を出た。
勿論、マーティンが証拠品となる書類を彼女に代わって処分するかもしれない可能性があっただろうが、今の彼にそこまでの行動力はないだろうと判断した。
でなければ、彼女を撃ち殺したりなんかはしない筈だ。
やがて、フォルクスたちがやって来ると彼らはまず証拠品を抑える。
そして、証拠品の書類をまるで赤ん坊のように大切に抱えたフォルクスがやって来た。
「これがあれば、エスコバル退役中将を告発する事ができます。士長には色々と協力してもらい感謝に堪えない」
「いえ‥ですが、これで管理局内に存在する麻薬組織を潰す事が出来ますね」
「うむ‥だが、これはあくまでも氷山の一角かもしれない」
「ん?と言うと?」
「エスコバル退役中将が此処までの麻薬組織を作り上げたんだ‥‥他の者もやっていないとは言い切れないだろう?」
「あっ‥‥」
麻薬組織は何もエスコバルが作り上げた組織一つだけではない。
彼の他にも管理局内にはもしかしたら同じような組織が密かに作られている可能性は十分にある。
「我々の捜査はいたちごっこなのかもしれない。それでも、組織を一つ潰す事で確実に救われる人が居るのだ。我々は決して無駄な捜査だとは思ってはおらんよ」
「そうですね。ところで、マーティンさんはどうなるんですか?」
スバルはフォルクスにマーティンのこの後の処遇について訊ねる。
証拠品が処分されそうになっていたとは言え、マーティンは人を殺めてしまったのだ。
彼には何かしらの処罰があるのではないかと思えてしまう。
「証拠品の保全の為のやむを得ない処置‥‥と言う事になりますが‥‥恐らく彼はそれを否定して、殺意をもって彼女を射殺したと主張するだろう」
「ど、どうして‥‥?そんな、敢えて殺人犯として処罰される事を望むんですか?」
五年前とは違い、今回はマーティンが犯罪の片棒を担いだ訳でもなく、その証拠もない。
逆に今回の事件が公になれば五年前の汚名を晴らせる絶好のチャンスだった。
にもかかわらず、彼は殺人と言う新たな汚名を被るかもしれない事にスバルは信じられなかった。
「恐らく、マーティン退役少将なりの贖罪なのでしょう」
「贖罪‥‥」
彼は五年前にエスコバルを告発しておけば良かったと後悔していた。
裁判では証言できなくとも証拠品の確保という形で間接的に今回の事件の解決に協力すると共に過去の事件における自分なりの決着をつけたのだろう。
それから数日後、ガーラミオから発信された報告は、管理局内に衝撃を与えた。
退役したとは言え、管理局の元将官が麻薬の密造をして、その麻薬を密輸・密売していたのだ。
しかもそれは現役時代から麻薬に関係する犯罪を行い、その他にも物資の横流しも行っていたのだ。
特にエスコバルが所属していた“海”は蜂の巣をつついたような騒ぎで、押収した証拠書類にはエスコバルが作った麻薬組織に所属するメンバーの名簿もあり、次々とそのメンバーは逮捕されていった。
彼が天下りをした次元郵送会社の役員は勿論の事だが、逮捕者の中には現役の管理局‥佐官から将官クラスの局員も居たのだ。
新型のエンジンが開発され、新造艦も続々と建造が行われて、やっと再建が整い始めた“海”にとってこのスキャンダルは致命的で人事が滅茶苦茶となってしまった。
その為、人事担当のレティは逮捕された士官クラスの代わりの人材補填作業に回っている。
一人の人間を動かせばその後任者、更にその後任者の後任者を選ばなくてはならない。
しかし、その作業の中で人事案を作っても直ぐ意味のないものになってしまう。
その理由が、異動候補者が退職願を出してきたり、逮捕されたりするからだ。
人事部のデスクにて、人材配置の作業をしていると退職届、逮捕情報が入るたびにレティの不機嫌のボルテージが上がっていくのが手に取るように分かり、書類を持っていく人事部の局員は戦々恐々しながらレティのデスクへと持っていくのだが、等々理性の対処が追いつかなくなり、
「うがぁぁぁぁー!!なんで!!どいつもこいつも麻薬何て薬物に手を出すのよ!!バカなの!?ねぇ、バカなんでしょう!!バカだから麻薬に手を出したのよね!?それに早期退職するくらいなら、最初から管理局に入るなつぅの!!」
書類をデスクからばら撒きながら声を荒げながら叫ぶ。
その様子から普段のやり手なキャリアウーマン風の印象は全くなく、頬がこけて目は血走っており、まさに疲労困憊と言った様子だ。
「れ、レティ提督、落ち着いてください」
副官がレティを宥めるが、
「これが落ち着いてられると思っているの!?処理をしても次から次に新たな書類に逮捕情報、退職届ばっかりきて、もう対処しきれないわよ!!管理局は過労で私を殺す気なの!?」
スバルやフォルクスたち捜査官は正しい事をした。
管理局員として職務を全うした。
しかし、その結果が人事部におけるこの阿鼻叫喚な有様である。
レティたち人事部所属の局員たちの多忙な日々はもう少し続きそうだ。
だが、多忙なのは何も人事部だけではなかった。
リンディの方も麻薬の製造、密売ルートの摘発作業の為に奔走する事となった。
何せ捜査対象が管理局は勿論の事、エスコバルが民間企業に役員として天下りをしたせいで、捜査対象は民間の輸送会社にも及ぶ広範囲になっているからだ。
この一件は連日ニュースにも取りあげられ、“海”における管理局の信用を再び失墜させる事となったが、逆に解決に導いたのが“陸”である事から、ミッドチルダの地上本部では歓喜と喝采が沸いたと言う。
そして、事件解決の功労者の中に『スバル・ナカジマ』の名前が発表された際、ゲンヤは思わず飲んでいたお茶をリバースするほどの衝撃を受けた程だ。
「ゴホッ、ゴホッ‥ど、どういう事だ!?スバルの奴は休暇の筈だろう!?」
休暇で旅行に出かけた筈のスバルが何故か管理局内を揺るがす麻薬事件の解決に貢献したのだからゲンヤが驚愕するのは当然だ。
「カルタス!!ちょっと来てくれ!!」
ゲンヤは急ぎ、主任捜査官であるカルタスを呼んだ。
「お呼びですか?ナカジマ三佐」
「おめぇさんも今、管理局内で騒ぎになっている例の麻薬絡みの件は知っているだろう?」
「はい。あまりにも突然の発表で、正直自分でも信じられません。まさか管理局内で麻薬の密売が行われていたなんて‥‥」
「“海”の規模や職務内容を鑑みれば、決して珍しい事じゃあねぇと思っていたが、本当に存在していたのは俺も驚いている。それ以上に驚いたのは今回の事件の功労者の中にスバルの名前があった事だ」
「えっ?三佐のお嬢さんが!?」
「ああ‥休暇で旅行に行っている筈なのに一体何がどうして、あんな危ねぇヤマに首を突っ込んだのやら‥‥」
事件の経緯を知らないゲンヤとしてはどうしてスバルが事件に関係し、解決に導いたのか知る由もない。
「しかし、功労者と言う事は大手柄じゃないですか」
「“陸”所属の一管理局員とすれば誇らしいが、父親としては娘には危ねぇヤマにあんまし関わって欲しくねぇんだよ」
「上のお嬢さんの件もありましたからね‥‥」
「‥‥まあな」
カルタスはギンガがもう一つの地球で生存している事実を知らないので、ゲンヤが娘に危険な事件に首を突っ込むことに対してギンガの時のように殉職する事への警戒心が強い事を心中察した。
「それで‥だ。スバルの奴がなんであんな危険なヤマに首を突っ込んだのか?その経緯が知りたい。御苦労だが、その件について調べてくれ」
「承知しました」
ゲンヤはカルタスにガーラミオで起きた事件の詳細を調査させた。
そのガーラミオでは今、観光客以外にマスコミの関係者が殺到しており、ガーラミオにある管理局の支部には沢山のマスコミが押し寄せており、現地の駐在員たちはその対処にてんやわんやとなっている。
そんなマスコミだらけとなったガーラミオの観光地をスバルは伊達メガネと帽子で変装しながら歩いている。
本来自分は休暇でこのガーラミオへやって来たのだ。
事件が解決すれば、捜査の手は完全に自分から離れた。
あとの記者会見や容疑者の護送はフォルクスたちガーラミオ支部所属の局員と“海”の仕事だ。
ただ、自分がこうして変装しながら観光地を歩いているのは、名前が知れ渡ってしまったからだ。
名前だけではどこの誰がスバル・ナカジマなのか分からないかもしれないが、スバルは元機動六課所属でJS事件での貢献実績もあり、その時の実績から顔バレしているので、こうして変装をしているのだ。
素顔を晒していたらマスコミの人たちにあっという間に囲まれて旅行ではなくなる。
実際にホテルを出る前、自身が所属している特別救助隊からはひっきりなしに上官と同僚から連絡が来て、説明する羽目になり朝食抜きとなってしまったぐらいだ。
どうやら、スバルが特別救助隊に所属している事を知ったマスコミが特別救助の隊舎にも押し掛けたようだ。
「このぶんだと父さんの所や家にもマスコミの人たち来ているのかな?」
所属している隊舎に来たのだから、父親が部隊長を務める108部隊の隊舎やミッドチルダ西部エルセアにある実家にもマスコミが来ている可能性がある。
「もし、そうだとしたら父さんやノーヴェたちに悪い事しちゃったな‥‥」
マスコミの対応をしているゲンヤたちの姿を想像すると申し訳ない気持ちとなる。
ミッドチルダに帰ったら帰ったで色々と大変だと思いつつもスバルは事件の捜査で潰された休暇の時間を取り戻す事にした。
スバルがガーラミオでようやく旅行を始めた時、ミッドチルダでは‥‥
学校が終わり、ヴィヴィオ、リオ、コロナが下校している時、
「ん?」
ヴィヴィオが何かを見つけた。
「どうしたの?ヴィヴィオ」
道端に木の棒が一本、ぽつんと落ちていた。
ヴィヴィオが何気なくその棒を拾って見つめていると、
「っ!?」
背後から傘を振り翳すリオがいた。
ヴィヴィオは咄嗟に落ちている木の棒を手に取り、
「紫電一閃!!」
知り合いの騎士の技名を言いながら、リオの胸を胴打ちした。
勿論、威力はセーブしてある。
すると、リオはそのまま両膝を地面に着き崩れ落ちる。
「ば、バカな‥‥」
「もう、リオったら後ろから殴りかかって来ないでよ。危ないよ」
「こうして剣士ヴィヴィオの最強への道が始まったのである‥‥」
すると、コロナがRPGのナレーションみたいなセリフを言う。
「いや、いや、何も始まらないよ」
ヴィヴィオは冷静に棒を持ったまま言い放つ。
「ヴィヴィオ。武器はちゃんと装備しないと意味がないよ」
「リオったら、何を言っているのさ」
リオがヴィヴィオの肩に手を置いて言葉を発するも、ヴィヴィオはそれを無視して歩き出す。
「ヴィヴィオは5のダメージをうけた」
コロナは無表情のままで某RPGみたいなセリフを言う。
しばらくヴィヴィオが棒を手にしながら歩いているとコロナは、
「ヴィヴィオは5のダメージを受けた」
相変わらず某RPGみたいなセリフを言い続けている。
「ヴィヴィオは5の‥‥」
「なんでさっきっから、私はダメージを受けているの!?」
あまりにもしつこいコロナのセリフに対して等々ヴィヴィオはツッコミを入れる。
「ヴィヴィオがちゃんと武器を装備しないからだ」
ヴィヴィオがダメージを受けている訳を教えるリオ。
「えっ?じゃあ何?私はさっきから刃の部分を握りしめていたの!?設定が細かいよ!!」
ヴィヴィオが二人にダメージを受けていた設定に対してツッコムと、リオが壁に寄りかかりながら、
「おっと、彼女。西の町へ行くのかい?だったら私を連れていくといい」
「ん?リオ、何を言っているの?」
「リオ?違う。私の名前は、システィア。この世界の覇権をめぐって争う二人の魔王に対抗すべく三人目の魔王となれる素質を持った人間を探している」
リオの『魔王』と言う言葉にヴィヴィオの脳裏には一瞬、自分の養母の姿が過る。
「無駄に壮大な話だね、家に着く前に終わるの?その話‥‥」
リオの様子から彼女は何かの役に徹しているみたいだ。
「ちゃーらーらーらー、ちゃーらーらーらーちゃーらーらーらー、ちゃーらーらーらー、ちゃんちゃららららちゃんららららちゃーんちゃーん」
すると、リオは何かの歌?みたいなモノを口ずさむ。
「システィアが仲間になった」
「長いよ!!それに何の歌なの!?」
「ほらRPGゲームとかで仲間が増える時に流れるBGMだよ」
「私、RPGやったことないから分からないよ!!」
ヴィヴィオはリオが何かの歌を口ずさんだのかと思ったのだが、実際はゲームのBGMだったみたいで、コロナがヴィヴィオに説明する。
「では、行くぞ!!」
リオが走り出そうとするが、
「システィアは5のダメージをうけた」
コロナがまたもや某RPGみたいなセリフを言う。
「ちゃんと武器を装備しなよ。それで、どこに行くの?コンビニ?」
「決まっているだろう。王様のろころだ!!」
「王様?」
(私は聖王だけどね‥‥)
ヴィヴィオはBRAVE DUELのようなシミュレーションゲームはやったことがあるが、RPGはやったことが無く、そうした知識がないので困惑していた。
そして、ヴィヴィオとリオが暫く通学路を歩いていると、
「モンスターが現れた」
某RPGにいそうなモンスターのポージングをしたコロナが立っている。
「も、モンスターだって、どうする?」
「‥‥無視する」
「無視!?」
リオの対応にヴィヴィオは驚きつつ、二人はコロナの横を通り過ぎる。
「着いたぞ!!ここが城だ!!」
通学路のど真ん中ではあるが、どうやらリオにとっては此処が城らしい。
「よくぞ来た勇者よ」
するとさっきのモンスターと同じポージングをしたコロナが居た。
「なんでみんなそのポーズなの!?」
「お前が中ボスだな!?」
「えっ?中ボスって‥‥」
「よく見破ったな、私が中ボスだ!!」
「中ボスなの!?」
すると、リオがコロナの首にチョップを入れる。
「ワァーやーらーれーたー!!」
チョップを受けたコロナは棒読みなセリフを言いながら地面に倒れる。
「展開が早いよ!!」
そんな二人の行動にヴィヴィオは三度目のツッコミを入れる。
「くっ、なんとか魔王の一人を倒したぞ‥‥」
「えっ!?今のが、魔王!?もうすぐ家に着くからって展開早すぎ!!それに一人って事は他にもまだ魔王が居るの!?」
『魔王』と言うセリフにヴィヴィオの脳内には思わず自分の養母の一人の顔がチラついた。
(まさか、最後の魔王は家のなのはママじゃないよね?)
(なのはママ、冗談が通じないからな‥‥)
いくらお遊びでも、あのなのはに対して、『魔王の役をやって』‥なんて言ったらお遊びではなくなってガチの魔法戦をしなければならなくなる。
「あっ!!」
すると、コロナが何かを思い出したかのようにガバッと起き上がり声をあげる。
「ん?コロナ、どうしたの?」
「カバン忘れた!!」
「あっ、さっきの場所か!?」
「どおりで二人とも手ぶらだと思ったよ‥‥」
このRPGごっこを始めた時、リオとコロナは通学路の上にカバンを置き忘れていた。
「戻れ!!」
急いで三人はカバンを取りに戻り、ヴィヴィオが握られていた木の棒は通学路に投げ捨てられた。
ヴィヴィオたちが通学路を逆走して去った後、暫くすると‥‥
「ん?」
ヴィヴィオが投げ捨てた棒をハリー・トライベッカが見つけた。
「伝説の剣を抜く者が‥‥」
「ついに現れたか‥‥」
「そなたこそ世界を救う勇者」
ハリーと一緒に下校していたリンダ、ルカ、ミアの三人がハリーを褒め称える。
「えっ!?マジで!?」
褒め称えられたハリーは思わず声をあげる。
そして、落ちていた木の棒を手にする。
「行くぞ!!魔王!!」
「来い!!勇者よ!!」
「勇者様頑張って!!」
「魔王の弱点は心臓だ」
何故かハリーたちもRPGごっこを繰り広げる。
そんな事をやっていると、携帯を弄っている一人の女子学生が彼女たちの傍を通った。
『‥‥』
すると、ハリーたちは棒を投げ捨てて何事もなかったかのように、やや頬を赤らめながら歩き出して行った。
通行人に見られて、理性を取り戻したのか?
それともいい年の女子学生がRPGごっこをしているのを見られて恥ずかしくなったのか?
木の棒は再び通学路に放置されたのだった。
ミッドチルダにある通学路でそんな寸劇が行われていた頃、本局にある第零造船所に続く通路をクロノが歩いていた。
この第零造船所は主に特務艦や試験艦の建造を担う造船ドックであり、今回クロノがこのドックを訪れたのはこの先にある第零造船ドックで建造中の艦の進捗状況を確認する為であった。
ドックでは重機が資材を持ち上げ運ぶ音、
金属と金属を打ち付けあう音、
適当な大きさに金属を切断する音、
金属を溶接する音、
など、様々な轟音が鳴り響いている。
「ヴェルタン技師!!」
「ん?ああ、ハラオウン提督!!」
「進捗状況はどんな様子だ!?」
周囲で轟音が鳴り響いているので、自然と二人の声を大きくなる。
「予定よりも3%ほど、遅れています!!やはり、資材も人員も量産艦に回されているので!!」
「そうか‥‥」
管理局‥“海”としてはボラー連邦への武力制裁前の規模に一日でも早く次元航行艦を就役させた事から急ピッチで建造を行っている。
この第零造船ドックでの建造も本来ならば、採決されずに量産艦の建造が予定されていたが、クロノがあちこちを奔走してようやくこぎつけたのだ。
「それで、完成予定日はいつ頃になる!?」
「この艦は私とヴェルニー君の共同で設計し、これまでの次元航行艦とも現在建造されている艦とも異なるコンセプトの艦ですからね!!建造方法、資材・人材の面から言ってあと数年はかかります!!」
(数年か‥‥となると、就役はフェイトが士官学校を卒業する頃になるな‥‥)
「分かった!!くれぐれも事故の無いように続けてくれ!!」
「了解です!!」
新造艦の建造状況を確認し終えたクロノがドックを後にした時、
「クロノ」
「なんでしょう?統括官」
リンディから通信が入る。
「ガーラミオで起きた例の事件については知っているわよね?」
「はい。まさか管理局内に麻薬の密売人が居たとは‥‥しかも組織的に行っていた様で、まさに管理局‥“海”の腐敗の温床とも言える事案ですね」
「‥‥」
どこか他人事のように言い放つクロノにリンディは一瞬、顔をしかめるも普段通りの表情に戻し、
「そ、それで、クロノ。御苦労だけど、ガーラミオまで行って容疑者の護送をお願いしたいの」
「容疑者の護送?しかし、自分の乗艦する艦は新造艦ではなくXV級のクラウディアのままですがよろしいのでしょうか?新造艦ならば、ガーラミオまでの往復時間を大幅に短縮できると思いますが?」
「容疑者は元“海”の将官で、麻薬組織を作り上げた人物よ。組織の残党が容疑者の奪還を実行しないとは言い切れないわ。それで、信用が置ける人物でないと今回の任務を任せられないの‥はやてさんの艦は確かに新造艦だけど、訓練がまだ必要なの‥時間がかかってもいいから容疑者を無事に本局まで護送してちょうだい」
「‥了解しました」
もし、はやての艦がヴォルフラムだったらリンディは、はやてに依頼していたかもしれないが、先日、はやては新たな艦に艦長として着任し、試験航海へ出ている。
まだ慣れない艦での護送任務で万が一容疑者や組織の残党に襲われ新造艦がハイジャックされれば管理局は恥の上塗りとなる。
一方で信用がおけない人物に任せると容疑者に同調して、容疑者と共に逃走してしまう恐れもある。
クロノの艦は新造艦と比べ速力は劣るが、運用し慣れており、クロノを始め乗員は高ランクの魔導師で尚且つリンディは、最近はギクシャクした関係になっていてもクロノとは親子関係なので、息子に絶大な信用をおいていたので、この任務に適材なのはクロノしか任せられないと判断したのだ。
クロノは急ぎ、クラウディアへと向かい出航準備を行った。
此処で視点はミッドチルダからもう一つの地球へと移る。
先日、古代との将来設計について語り合った良馬。
再びケンタウロス座アルファ星に向かう輸送船団の護衛で近々出航かと思われていたが、まほろばの出航に『待った』がかけられた。
「えっ?まほろばの出航が停止!?一体何故です?」
いきなりの出航停止命令を聞き、良馬は司令部にて藤堂にその理由を訊ねる。
「うむ、実はかねてより不安視されていたまほろばの防空能力の件だが‥‥」
「まほろばの防空能力‥‥し、しかし、今更まほろばを改装する必要があるのでしょうか?」
まほろばはヤマトを基準に拡大化させた改・ヤマト級宇宙戦艦であり、主砲の口径と数はヤマトよりも強力となっている。
これまでの航海では問題なく、外部勢力との戦闘では多少の被弾はあったものの十分に戦うことが出来、勝利して来た。
しかし、対艦戦闘能力はヤマトよりも上なまほろばであるが、パルスレーザー砲塔の数はヤマトよりも見劣りする。
「うむ、実は真田君からもまほろばの改装案が出ているのだよ」
「えっ?真田さんから!?」
まさか真田から、まほろばの改装案が出ていた事には驚く。
これまで単艦で行動していたヤマトと異なり、まほろばは基本艦隊行動をしてきた。
だが、あの太陽異常騒動の時のように今後、まほろばが単艦行動を取らないとは言い切れない。
なので、真田はヤマト並みに艦橋下部の両舷にパルスレーザー砲塔の増設を改装案に提示していた。
藤堂から手渡されたタブレット端末には真田が考案したまほろばの改装案の図が表示されていた。
そこにはヤマト同様、パルスレーザー砲塔を増設した完成予定図が表示されていた。
「ヤマトと同じくらいのパルスレーザー砲塔ですね」
「パルスレーザー砲は対艦戦闘では威力不足であるが、対空戦闘では十分な威力がある」
「おっしゃる通りです。かつての戦艦大和も建造当時は両舷に15cm副砲を備えていましたが、戦闘の中心が航空戦力へと移ると両舷の副砲は撤去され、高角砲と機銃を増設した経緯がありますからね」
「ガミラス、彗星帝国でも宇宙艦船は兎も角、航空機も強力な兵装をしていた。今後、そうした勢力と遭遇しないとは言い切れないからな」
「分かりました。そう言えば、アルファ星にて元まほろばの中嶋通信長と会いました。彼女は現在、とある巡洋艦の副長を務めていましたが、その巡洋艦はこれまで防衛軍が建造して来た巡洋艦よりも大型化していましたが?」
「うむ、暗黒星団帝国との一件、今後の宇宙開拓、そして前回の太陽異常の件を踏まえ、戦艦以外の艦、巡洋艦と駆逐艦もこれまでの艦と異なり戦艦と同行できる長距離型への変更も防衛会議の議題にあがってな‥中嶋元通信長が現在、副長を務めている艦はその試作艦と言う訳だ」
暗黒星団帝国の時、雪風・改は無人で自走の他にヤマトからの無線コントロールにて運用していたが、現在防衛軍が使用している01式巡洋艦や突撃駆逐艦、護衛艦では、補給等の問題からあの長距離航海は不向きであった。
太陽異常における第二の地球探査も同様の事が言え、だからこそ、探査船の護衛を戦艦が務めていたのだ。
「しかし、艦を大型化すると言う事は資材も時間もかかる筈です。そんな時にまほろばの改装を行ってもよろしいでしょうか?」
「かまわん。まほろばは、ヤマト同様、地球の切り札の一つなのだからな‥それに改装と言っても時期的には数ヶ月ほどで出来る」
確かに一から艦船を造る訳ではないので、工事も短期間だ。
実際に彗星帝国戦役前におけるヤマトの大規模な改装工事も短期間で終えている。
「まほろばの改装中、君は艤装員長となる」
「承知しました。では‥‥」
良馬は藤堂に敬礼し、部屋を後にした。
「まほろばが改装か‥‥となると、少しの間は地球に居る訳か‥‥ギンガは遠い星の海か‥‥」
ギンガの話が出た事で良馬はふと彼女の事が気になった。
そして、先日古代との話で更にある事が気になって、この地球におけるギンガの実家である中嶋家に電話をいれた。
「あっ、加奈江さんですか?月村です」
「あら?良馬君?久しぶりね、地球に戻って来たの?」
「はい。つい先日‥‥あの、加奈江さん。今お時間取れますか?」
「どうしたの?」
「ちょっと、加奈江さんに聞きたい事がありまして‥‥」
「聞きたい事?良いわ、それでどこに行けばいい?」
良馬は加奈江に聞きたい事が出来、とある喫茶店にて、彼女と待ち合わせをする事にした。
待ち合わせ場所に指定した喫茶店には良馬の方が先に着いた。
そこで、ちょっと人気のないテーブル席に座り、加奈江の到着を待った。
それからしばらくして加奈江が到着した。
ただ、良馬は人気ない席を選んでいたので、店に入って来た加奈江が良馬の姿が見えず、店内を見回していた。
「あっ、加奈江さん!!こっちです!!」
良馬が手を上げながら加奈江に声をかけると、加奈江は良馬が座っているテーブルへとやって来た。
「お待たせ」
そして、加奈江が良馬の対面席に座り、
「コーヒーを頂けるかしら?」
「自分は紅茶を‥‥」
「かしこまりました」
ウェイトレスに飲み物を注文し、それらの注文の品が届くと、
「それで聞きたい事って何かしら?」
さっそく要件を訊ねる。
「実は先日、地球に帰還した日にヤマトの艦長と話す機会を設けまして‥‥」
「ヤマトの艦長と‥一体何の話をしたの?」
「ヤマトの艦長も若干、俺と似た現状でして‥‥」
「?」
「その‥ヤマトの艦長にも婚約者が居り‥‥」
「あら?そうなの?」
「は、はい。プライベートな事なので、誰が婚約者かは言えませんが、その‥参考までに結婚のタイミングについて訊ねたんです」
「ほう、ほう、それで?」
結婚の話と言う事で加奈江は興味を示した様だ。
「二人は本来ならば、とうに結婚している筈だったんですけど、話し合って結婚を伸ばしていて‥‥理由を訊ねると、『結婚の事を具体的に考えようとすると地球の存亡にかかわるような大事件が起こるから』って理由でお互いに結婚へなかなか踏み切れないとの事でした」
「うーん、確かにガミラスとの戦争が終わった後も大きな戦争や災害が続いたものね‥ヤマトの艦長さんと婚約者さんがそう思ってしまうのも無理は無いわね」
「はい。ヤマトの艦長からその事を聞くと、俺もそのことを意識してしまって‥‥一応、ヤマトの艦長も俺もお互いに話し合ってみると言う結論に達しましたけど、ギンガは今、宇宙に居るので、ギンガの前にこうして加奈江さんにも相談に乗ってもらおうかと思いまして‥‥」
「なるほどね」
「それで、ギンガについてなんですが‥‥加奈江さんの前世を含めてなんですが、加奈江さんから見てギンガはその‥‥」
「ん?ギンガがどうしたの?」
「その‥‥結婚はもとより、ギンガは子供を欲しがるでしょうか?」
古代は雪との間に子供を欲しがっていた。
恐らく古代にぞっこんな雪も彼との間に子供を望んでいる筈だ。
もしも予定通りに彗星帝国戦役直前の時期に式を挙げて、結婚していれば古代が言っていたように今頃、奥さんである雪に子供と一緒に暮らしていた事だろう。
しかし、良馬はギンガに自分との間に子供を望んでいるのか今更ながら訊ねていなかった。
自分はギンガの事を愛しているし、ギンガの方も自分の事を好いている。
互いに結婚願望はある筈だ。
だが、子供となると話は若干異なる。
世の中には『子供なんて求めない』と言う夫婦だって居る。
「そうね‥‥」
加奈江は良馬の質問に対して、前世‥クイント・ナカジマの頃だった事を含めて良馬にギンガがどう思っているのか自らの推測を口にした。
宇宙戦艦ヤマト3199の情報が更新され、リメイク版ボラー連邦戦艦A 戦艦B 空母の型名が判明しましたが、いずれこのリメイク版ボラー艦艇を登場させる予定なので、旧ボラー艦艇とは別物扱いとします。