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また、地球防衛軍の次元潜航艦隊司令官兼SS伊ー500の艦長である九鬼のイメージは、栗橋伸祐 先生の作品『黒鉄ぷかぷか隊』の登場人物である九鬼です。
此処で視点は、地球からまほろばが留守にしているケンタウロス座アルファ星へと移る。
アルファ星からバース星の間の宙域ではアルファ星所属のパトロール隊が哨戒任務を行っていた。
アルファ星 防衛艦隊 第二艦隊 第二戦隊 旗艦 ウェストバージニア 艦橋
「っ!?レーダーに反応!!亜空間魚雷です!!」
「な、なに!?」
「亜空間魚雷、カリフォルニアに命中!!」
「オクラホマも被弾!!」
突如、出現した亜空間魚雷の攻撃で僚艦が次々と被弾した。
「全艦、散開!!」
「駆逐艦を向かわせろ!!」
「味方の哨戒艦隊へ緊急伝!!」
艦隊旗艦であるウェストバージニアの艦橋内はまるで蜂の巣をつついたような騒ぎとなる。
「亜空間魚雷、本艦にも接近!!」
「迎撃しつつ回避!!」
ウェストバージニアの艦橋内もそうだが、艦隊自体が混乱する。
「駆逐艦、スチュワート、アンダーヒル、巡洋艦、アトランタ被弾!!」
混乱の中、僚艦が次々と亜空間魚雷の餌食となる。
「なっ!?こ、これは一体‥‥!?」
「何があったんだ‥‥」
結局この亜空間魚雷の奇襲により、第二艦隊第二戦隊は艦隊の半数を失い、味方の哨戒艦隊が来た時、眼前にはボロボロとなった味方艦が漂っていた。
バジウド星系 ボラー連邦系 ベロラージュ 大統領官邸
バジウド星系にある親ボラー連邦系の星間国家の一つ、ベロラージュ‥‥
その星にある大統領府では、軍の高官がバジウド星系における現状を報告していた、
「大統領閣下、友邦惑星国家であるロッサからガルマン・ガミラス軍の陸上部隊は撤退したようです」
軍の高官は、ベロラージュ大統領であるルカジェーコフに先日の惑星ロッサでの出来事を報告していた。
「撤退?つまり、ロッサに上陸したガルマンの連中を皆殺しには出来なかったと言う訳だな?」
「は、はい。残念ながら‥‥」
「まぁ、いい‥‥星一つをガルマンの連中に獲られなかっただけでも『良し』としよう」
「は、はぁ‥‥」
「しかし、ロッサからおめおめと逃げていくガルマンの連中を周辺の同志たちはむざむざと逃がしたのか?」
惑星ロッサの陸上に展開していたガルマン・ガミラスの陸上部隊が撤収する際、親ボラー連邦系の星間国家の艦隊は当然、妨害はしてきた。
しかし、その中にベロラージュ所属の宇宙艦船はいなかった。
自分が統治している星の宇宙艦隊がその撤収妨害作戦に参加していなかった事を良いことに彼は参加していた他の親ボラー連邦系の宇宙艦隊をまるで役立たずと言わんばかりの口調であった。
「ガルマン・ガミラス側も撤収する艦の護衛艦隊を派遣していた様でして、またその護衛にはガルマン・ガミラスだけではなく、他の星系の艦も協力していたようです」
「チィッ、親ガルマン派の連中か‥‥ボラー連邦より多大な恩を受けておきながら、易々とボラー連邦を裏切る卑怯者どもめ!!」
ルカジェーコフはボラー連邦からガルマン派に鞍替えした星間国家に対して忌々しそうに呟く。
しかし、バジウド星系で今でも親ボラー連邦系となっている星間国家は、これまでボラー連邦より様々な恩恵を受けていたが、ガルマン派に鞍替えした星間国家は、ボラー連邦からの支配時代に奴隷の様な扱いを受けて来た星間国家であり、そこをガルマン・ガミラスから解放されたので、ガルマン・ガミラスに恩を感じても自分たちを酷い目に遭わせてきたボラー連邦に対して恩なんて感じない。
だが、ルカジェーコフはボラー連邦の力を借りてこの星の大統領になった男だったので、ボラー連邦に恩を感じ、反対にそのボラー連邦に敵対するガルマン・ガミラス、そしてガルマン派の星間国家に対して怒りを覚える。
「ただ、そのガルマン派の星間国家の一つ、地球に対して次元潜航艦隊はある程度の戦果をだしております」
「ほぉ~例の次元潜航艦隊がな‥‥」
以前、ヤマト、まほろばが第二の地球を探す惑星探査の際、ガルマン・ガミラス東部方面軍の管轄内にある某宙域にて、ヤマト、まほろばはボラー連邦の次元潜航艦隊の襲撃を受けた。
当初は有利に戦況を運んでいたボラー連邦の次元潜航艦隊であったが、まほろばの反撃に遭い、艦隊はB-004を残して全て撃沈された。
そして、生き残ったB-004はボラー連邦本星ではなく、親ボラー連邦系の星間国家であるこのベロラージュへと逃げ込んだ。
ボラー連邦本星へ逃げ帰れば敵前逃亡罪で乗員全員が死刑にされるのは当時のベムラーゼ政権ならば、火を見るよりも明らかであった。
そして、乗艦していた次元潜航艦B-004を手土産にベロラージュへと亡命したのだ。
ベロラージュのルカジェーコフはボラー連邦でも最新鋭艦であるB-004の手土産を物凄く喜び、B-004の乗員たちの亡命を快く迎えボラー連邦本星にも通報はしなかった。
そして、手に入れたB-004を解析する事で、ベロラージュでも次元潜航艦の研究と建造を開始して、ベロラージュ独自の次元潜航艦隊を保有するに至っていた。
その次元潜航艦隊の指揮官にはB-004の艦長、ジオロギー・ルジッキーが艦長から指揮官へと昇進し、バジウド星系にて訓練と共にガルマン・ガミラス東部方面、そしてガルマン派の宇宙艦船を集団戦法で襲い掛かっていた。
今回、ケンタウロス座アルファ星近海で、アルファ星 防衛艦隊 第二艦隊 第二戦隊が突然の亜空間魚雷での襲撃を受けたのもベロラージュ所属の次元潜航艦隊の仕業であった。
「はい。報告ではケンタウロス座アルファ星の近海で、戦艦クラスの大型艦を含め敵艦隊の半数以上を沈めたとの事です」
「ふむ、よろしい。引き続き、ガルマン・ガミラスそしてガルマン派の宇宙艦船への攻撃・殲滅を目指すように宇宙艦隊司令部にはそう伝えるのだ」
「はっ!!」
ベロラージュの次元潜航艦隊の猛攻はアルファ星近海で暫くは猛威を振るう事となる。
ケンタウロス座アルファ星 防衛軍基地 司令部
「そうか、次元潜航艦隊が‥‥」
「はい。第二戦隊旗艦のウェストバージニアからの報告ではいきなりの攻撃だったみたいで、艦隊は大混乱となり、被害も甚大なモノとなりました。ですが、まさかこのアルファ星近海までボラーの次元潜航艦隊が進出しているとはこちらも予想外の事でした」
アルファ星基地司令官のキャゼルヌに報告をしているのは第二戦隊を救助したアルファ星 防衛艦隊 第二艦隊 第一戦隊司令官のジャン・ロベール・ラップ少将である。
「今後の哨戒任務には早期警戒機を用いての哨戒を行い、民間船での航行も本数を減らし、アルファ星から外宇宙への航路は当分停止した方が賢明かと思います」
「うむ、今はまほろばもアルファ星を留守にしている現状だ。君の提案は尤もだな‥‥民間船舶会社には急ぎその旨を伝えよう。民間船に被害を出す訳にはいかんからな‥‥だが、その分アルファ星から太陽系方面へ敵の次元潜航艦隊を通す訳にはいかない。なんとしてでもこの宙域で仕留めなければならない。ラップ少将、貴官の任は重大だぞ」
「はっ!!承知しました」
ラップは報告を終えると自身が指揮を執る第二艦隊を率いて哨戒任務へと出た。
アルファ星~バース星間の宙域を哨戒‥制宙権維持の為に出動したアルファ星第二艦隊 第一戦隊。
哨戒から数日は敵の襲撃も無く、敵影も無く、平穏?な航海が続く。
だが、そんな航海もずっと続く筈もなかった。
アルファ星 防衛艦隊 第二艦隊 第一戦隊 旗艦 メリーランド 艦橋
「司令官、妙な電波を受信しました」
「妙な電波?」
「はい。暗号通信かと思われますが、未だ解読は‥‥」
「ガルマン・ガミラス、地球のモノではないのだな?」
「はい。念の為、彗星帝国、暗黒星団帝国のモノとも照合しましたが、どれも一致はしていません」
「となると、ボラー系の暗号通信だな‥‥全艦に通達。全方位警戒態勢に入れ、警戒機も発艦させろ。特に対次元潜航艦態勢を厳重にせよ」
「はっ!!」
ラップからの命令を受け、艦隊護衛空母、レンジャーからは早期警戒型のコスモタイガーが発進していく。
「早期警戒型のコスモタイガーで次元潜航艦隊とどれほど通じるだろうか?」
「探査機器は性能が良いモノを積んでいますが?」
「それでも、アルファ星基地からかき集めて来たとは言え、僅か十機だ。広大な宇宙空間での哨戒任務には全然足りない。だが、我々の任務は極めて重大なモノだ。何としてでも敵の次元潜航艦隊は殲滅しなければならない」
「承知しております。第二戦隊の仇を討つべく、乗員たちの士気も高くなっております」
「そうか‥‥」
副官の言葉にラップはフッと笑みを零す。
艦隊の士気は高い様だが、士気だけで戦は勝てない。
(とは言え、既にカリフォルニアとオクラホマがやられている)
(敵がどれほどの次元潜航艦を繰り出しているのかさえも分からないこの状況‥‥)
(任務の重要性は理解しているが、その分困難な任務だな‥‥)
ラップは眼前に広がる漆黒の宇宙を見つめつつ、敵の襲撃に備え警戒を強めた。
「聴音、亜空間ソナーに反応はないか?」
「‥‥いえ、反応はありません」
(敵は暗号通信を送っていた)
(となると敵は既に我々を捕捉している)
(敵はいつでも我々に襲い掛かる事は出来ると言う事か‥‥)
(俄然、敵の方が有利と言う事だ)
(我々が勝つには敵を少しでも早く発見する事だが‥‥)
早期警戒型コスモタイガーの数と言う点から見ても第一戦隊の劣勢を覆すには難しかった。
親ボラー連邦系ベロラージュ所属 次元襲撃艦隊 旗艦 B-004 司令塔
「‥‥連絡通り、敵艦隊は本艦頭上の通常空間を航行中」
「司令官、我が艦隊の静粛性は完璧です。地球の亜空間ソナーでは我々を探知できていない様です」
「うむ、ニコラス。敵は罠にかかったな」
「はい。あとは獲物を追い込み仕留めるだけです」
「機関始動、微速前進。追尾する」
「はっ!!」
異次元空間からの狩人はひっそりとラップの艦隊を追尾する。
親ボラー連邦系ベロラージュ所属 次元襲撃艦隊 KU-001 司令塔
「‥時間だ。一番~六番まで、亜空間魚雷発射!!」
「発射!!」
「発射!!」
「発射!!」
「一番~六番まで亜空間魚雷発射完了!!」
「よし、急速潜航」
亜空間魚雷を放ったKU―001は異次元の奥底へと潜航した。
「っ!?亜空間魚雷らしき高速移動物体発見!!」
KU―001が放った亜空間魚雷を早期警戒型コスモタイガーが探知して艦隊へ警告を送る。
『位置は!?』
「艦隊左舷方向、距離七千宇宙キロ!!」
早期警戒型コスモタイガーのオペレーターは急ぎ艦隊に亜空間魚雷の情報を送る。
アルファ星 防衛艦隊 第二艦隊 第一戦隊 旗艦 メリーランド 艦橋
「右舷二時方向にも亜空間魚雷接近!!」
「左舷方向、七時距離五千宇宙キロからも亜空間魚雷接近!!」
「右舷二時方向に潜望鏡発見!!」
「全艦、最大船速!!ジグザク運動をしつつ迎撃!!」
(くっ、やはり敵に先手を取られたか‥‥!!)
ラップは悔しそうに下唇を噛む。
艦隊は陣形を解き、各々の判断で亜空間魚雷の回避と迎撃を行う。
「ネヴァダ被弾!!」
「駆逐艦、ブリストルも被弾!!」
「早期警戒機は敵次元潜航艦の位置を知らせろ!!」
「敵、亜空間魚雷第二波接近!!」
「早期警戒機は敵次元潜航艦を追尾中!!」
「ハムマン、魚雷回避に成功!!」
「左舷九十度方向から亜空間魚雷接近!!避けきれません!!」
メリーランドはドレッドノート級の後期生産型の中でも速力を重視した乙型に分類される戦艦であるが、突然の魚雷攻撃は、メリーランドの快速をもってしても敵の亜空間魚雷からの追跡を振り切るのは難しかった。
メリーランドの左舷方向‥しかも至近距離から亜空間魚雷が迫っていた。
このままメリーランドに亜空間魚雷が命中するかと思いきや、亜空間魚雷の命中コースへ駆逐艦、ハムマンが割って入ってくる。
「っ!?ハムマンが盾になる気か!?」
カチ、カチ、カチ、カチ‥‥
ハムマンはメリーランドに別れの内容の発光信号を送り、亜空間魚雷から旗艦であるメリーランドを守った。
ドーン!!
ズガーン!!
ハムマンの左舷には多数の亜空間魚雷が命中し、船体は真っ二つとなり轟沈する。
親ボラー連邦系ベロラージュ所属 次元襲撃艦隊 旗艦 B-004 司令塔
「諸元入力完了、全魚雷発射管扉開きました」
「発射!!」
第一波、第二波の亜空間魚雷の攻撃で、ネヴァダ、ブリストルが被弾し、ハムマンが轟沈する中、追撃するかのようにB-004も亜空間魚雷を放った。
アルファ星 防衛艦隊 第二艦隊 第一戦隊 旗艦 メリーランド 艦橋
「ネヴァダ再び被弾!!」
「ハムマン、爆沈!!」
「救助艇を出せ!!」
「本艦に魚雷接近!!」
「なにっ!?」
ズガーン!!
轟音と共に大きな衝撃がメリーランドを襲い船体は大きく揺れる。
「左舷、艦首部付近に命中!!」
「技術班!!応急修理!!」
「被害報告急げ!!」
船体に魚雷が命中して艦橋内は大混乱となる。
そこへ再び亜空間魚雷の一本が艦橋付近に命中した。
メリーランドにかつてないほどの衝撃が襲い掛かる。
「ぐはぁっ!!」
「司令官!!」
その衝撃でラップは艦長席から放り出されて、全身を強く打ち意識不明となる。
「軍医!!司令官が負傷された!!急ぎ艦橋へ!!」
司令官であるラップが負傷して指揮不能状態となると、艦隊は更に混乱状態となりもはや敵の次元潜航艦を攻撃するなんて余裕も無くなり、各艦各々の判断で撤退行動をとった。
この戦闘で、第二艦隊 第一戦隊も手痛い被害を受けたのであった。
地球 防衛軍 司令部
「長官、ケンタウロス座アルファ星基地のキャゼルヌ司令官より通信が入っております」
「繋いでくれ」
「了解」
第二艦隊が受けた被害をキャゼルヌは藤堂へ報告した。
「そうか、ボラーの次元潜航艦が‥‥それで、ラップ司令官を含めて負傷者は?」
「司令官のラップ少将は負傷しましたが、命に別条はありません。ですが、第二艦隊は戦力の半数以上を失い、犠牲者も大勢出しました」
「‥‥」
キャゼルヌの報告を藤堂は厳しい表情で聞いている。
「残りの艦船で、アルファ星近海の警戒は引き続き行いますが、民間船の航行は控えるようにしています。地球側もアルファ星方面の民間船の往来は控えるようにしてもらえますか?」
「分かった。現状を鑑みると確かにアルファ星方面への民間船舶の航行は危険だな」
キャゼルヌと藤堂はアルファ星の防衛面についての話し合いをした後、通信を切った。
「‥‥戦艦、まほろばの月村艦長を呼んでくれ」
「承知しました」
キャゼルヌとの通信の後、藤堂は良馬を司令部へ召喚した。
「月村良馬、召喚に応じ出頭致しました」
軍帽を脇に抱え、藤堂に敬礼をして召喚に応じた事を報告する。
「よく来てくれた。先ほど、アルファ星基地のキャゼルヌ司令官から報告を受けてな」
「キャゼルヌ司令から?一体、どんな?」
「実は、ここ最近アルファ星近海ではボラー派の次元潜航艦隊の攻撃が猛威を振るっている様で、アルファ星基地所属の第二艦隊に甚大な被害を受けたとの事だ」
「第二艦隊が!?‥‥そ、それで、第二艦隊司令官のラップ少将は‥‥?ラップ少将は無事なのでしょうか?」
同じアルファ星の防衛面を担当していたので、良馬とラップは顔馴染みの中であり、彼の指揮する艦隊が大きな被害を受けたと言う事で、良馬はラップの身を案じる。
「負傷はしたが命に別条はないらしい」
「そ、そうですか。よかった‥‥」
「しかし、このボラー派の攻撃で第二艦隊の戦力は大きく低下した。残存艦隊をかき集めてもギリギリ一個戦隊かそれ以下の戦力だ」
「そんなに‥‥」
第二艦隊がかなり大きな被害を受けた件について良馬は驚愕する。
「民間船舶の被害は?」
「そちらは今の所確認されてはいない。しかし、今後は民間船舶の運航が著しく制限される」
「民間人への被害を抑えるにはそれしかないでしょうね‥‥」
「それで、まほろばの改装状況は?」
「八割程完了しています。ですが、状況はどうやら逼迫している様子なので、多少の作業は飛びながらでも出来ますが、通常の宇宙艦船ではなく、次元潜航艦隊が相手ならば、万全の状態で臨みたい所です」
「‥出来ればすぐに援軍として、まほろばにはアルファ星に向かってもらいたい」
「承知しました。ただ、もう一つまほろばの他にアルファ星への援軍として随伴したい部隊があるのですが‥‥」
「ん?どの部隊かね?」
「現在、火星沖で演習中の次元潜航艦隊です」
「地球の次元潜航艦隊をか‥‥!?」
「はい。敵が次元潜航艦隊で来るならば、こちらも次元潜航艦を投入したいと思います」
「‥‥」
良馬の具申に藤堂は考え込む。
「分かった。まほろばは火星沖で次元潜航艦隊と合流の後、アルファ星へと向かってくれ」
「はっ!!」
まほろばは、最近になって就役した地球製の次元潜航艦隊と共にアルファ星へ向かうことになった。
ただ、敵の次元潜航艦隊を殲滅するまで、民間船舶の往来に制限が掛かる事、
第二艦隊の将兵に多数の負傷者が出た事で、味方の次元潜航艦隊を引き連れて行くだけでなく、薬などの医療品や消耗品の生活物資もアルファ星へ運ぼうと、良馬は急ぎ手配をした。
更に、真田には‥‥
「真田さん。突然ですみませんが、まほろばは、近々アルファ星へ出航する事になりました」
「えっ?なんだ?もう出航するのか?まだ改装工事は終わっていないだろう?」
真田は突然のまほろばの出航に驚いていた。
「はい。どうやら、アルファ星近海でボラー派の次元潜航艦隊が猛攻を仕掛けているらしく、アルファ星の防衛艦隊に大きな被害が出たみたいです」
「次元潜航艦‥ボラーの方でも量産され始めているのか‥‥」
「そのようです。先ほど、藤堂長官よりアルファ星の現状を聞き、まほろばは、援軍として出航が決定しました。ただ、此方も次元潜航艦隊を引き連れて行くつもりです」
「次元潜航艦には次元潜航艦か?」
「はい。つきましては真田さんに急ぎ用意してもらいたいモノがあるのですが‥‥」
「ん?用意してもらいたいモノ?なんだ?」
「それは‥‥」
「なるほど、だから味方の次元潜航艦隊を連れて行く訳か‥‥」
「はい。目には目を‥次元潜航艦には次元潜航艦をぶつけるつもりです」
良馬からの説明を聞き、真田は納得している様子。
「それで、用意出来ますか?」
「分かった。急いで用意しよう」
「ありがとうございます」
「ただ、数が数だ‥‥少しだけ時間はかかるぞ」
真田は良馬の説明を聞き、彼が頼んだモノを用意してくれるみたいだ。
ただ、この後に一から多数作るので、いくら天才科学者、真田とは言え、短時間で用意するには無理があった。
「こちらもアルファ星への救援・補給物資の手配があるので、少々の時間は大丈夫です」
まほろば側もアルファ星へ運ぶ物資の手配、積み込みがあるので、出航まで少々の時間がかかる事を伝える。
「そうか‥‥」
「あっ、それと‥‥」
「ん?なんだ?まだ何かあるのか?」
「あっ、いえ、こちらは今すぐにと言う訳ではないのですが、防衛軍はようやく次元潜航艦を建造し、就役することが出来ました。そして、今回の様に通常空間では、敵の次元潜航艦の脅威がある中、前線等の補給に大きな支障をきたす恐れがあります」
「うむ。過去の歴史でも潜水艦による通商破壊は前線の兵士にとっては死活問題になるからな」
太平洋戦争におけるガダルカナル島の攻防では、日本はガダルカナル島へ多くの戦力、物資を投入するも、アメリカ軍の航空機の攻撃は勿論、潜水艦の攻撃も日本軍の輸送隊にとっては脅威となり、物資も援軍も行き渡らなくなっていき、日本軍はアメリカ軍との戦いよりも飢えと病気でバタバタと斃れる事になった。
「そこで、輸送目的の大型次元潜航艦は建造できるでしょうか?」
良馬は輸送艦タイプの次元潜航艦の建造が可能であるかを真田に訊ねる。
「大型の次元潜航艦か‥‥」
真田は顎に手を当てて考え込む。
「次元潜航艦を就役させたとは言え、防衛軍は亜空間技術に関してはまだまだ発展途上だからな‥‥いきなり大型の次元潜航艦を建造して万が一にも事故が起きると大変だ」
亜空間ではなく、水の中を潜る潜水艦でも有史以来多くの事故を起こして、大勢の潜水艦乗りたちが命を落としてきた。
まだまだ判明していない亜空間では、そうした事故がひとたび起きれば、遭難者の救助も出来ずにむざむざと生存者を殺す事になる。
「潜水艦にも救難艦の一種で潜水艦救難艦もありますからね。次元潜航艦もそうした救難艦を建造する必要があると言う事ですね?」
「その通りだ。一応、火星沖で演習中の次元潜航艦のデータを火星基地でまとめて亜空間についての解析を行っている。亜空間技術が進んで行けば、次元潜航救難艦やお前の言う大型の輸送型次元潜航艦もいずれは建造されるだろう」
「そこまでの技術に達するまで、まだまだ時間がかかると言う事ですか‥‥」
「まあな、ガルマン・ガミラスも地球と同盟関係にあるとはいえ、向こうも重要な軍事技術をそう簡単に教える訳はないからな」
「確かに原子力潜水艦などは保有国では最重要軍事機密にあたりますからね」
「一先ず、お前さんに頼まれたモノはなるべく早めに用意するし、輸送型の次元潜航艦についても科学技術省でも検討はしておこう」
「ありがとうございます」
その後、真田は良馬から頼まれたモノの開発。
良馬はアルファ星への物資の手配を行いつつ、まほろばの改装作業を続けた。
そして、アルファ星へ運ぶ物資の手配と搬入が終わり、
「月村、お前さんが頼んでいたモノだ。時間が許す限り作っておいたぞ」
「こんなに‥‥ありがとうございます!!」
「此処まで用意したんだ。必ず勝てよ」
「はい!!」
まほろばはまず、火星沖で演習中の次元潜航艦隊と合流すべくまずは火星沖を目指して出航して行った。
なお、余談であるが、良馬は地球に居る間、古代や加奈江と結婚についての相談の中でチラッと話題に出た内容で、自身が不妊体質なのかを確かめるために時間がある時に病院へ赴き、検査を受けた。
その結果、彼は不妊体質ではない事が判明した。
これまでのギンガとの関係で、彼女が妊娠をしなかったのは偶然の出来事であった。
自身が不妊体質ではない結果を知り、ホッと胸をなでおろす場面もあった。
また、地球に戻って来たと思ったら、まほろばの改装指揮に物資の手配など仕事があり、それが終わったと思ったら、またアルファ星へ出撃との事で、ユリーシャはご機嫌斜めであった。
彼女のご機嫌を治すために最後の休暇はユリーシャに付き合うことになった。
尤も良馬は未だにユリーシャを妹感覚で見ており、仕事にかまけて地球にも中々居ない自分に対して寂しさとヤキモチのような感情のせいで機嫌が悪くなったのだと思っていた。
地球を出たまほろばは月軌道において一気に火星圏までワープをして演習中の次元潜航艦隊との合流を図った。
「亜空間ソナー稼働開始」
「はっ、亜空間ソナー稼働します」
合流地点の空間に次元潜航艦の姿は見えなかった。
亜空間に潜航しているのだろう。
しかし、向こうからはまほろばの艦影はしっかりと見えている筈だ。
良馬は新型の亜空間ソナーの稼働を兼ねて味方の次元潜航艦の位置を探る。
一方、まほろばの周辺の亜空間では‥‥
防衛軍 次元潜航艦 司令塔
「戦艦、まほろばを確認‥‥」
「司令官、亜空間ソナーの反応があります」
「流石ね。友軍艦艇との合流地点だからと言って決して油断せずに戦闘状態をとっている‥‥味方識別信号を送って浮上。他艦にもその旨を下令」
「了解」
まほろば 艦橋
「ん?亜空間ソナーに反応あり!!次元潜航艦、まもなく通常空間に浮上するもよう!!」
やがて、周囲に第二次世界大戦時におけるUボートを模したような艦が次々と浮上してきた。
「あれが、防衛軍の次元潜航艦か‥‥」
「艦長、浮上してき次元潜航艦より通信がはいっています」
「メインモニターに繋いでくれ」
「了解」
やがて、まほろばの艦橋にあるメインモニターに一人の女性軍人が映し出される。
「地球防衛軍、特殊次元潜航艦隊所属 旗艦SS伊‐500艦長兼司令官の九鬼イオナです」
女性軍人こと、九鬼イオナは敬礼しながら所属、役職、氏名を名乗った。
「地球防衛軍、アルファ星守備艦隊所属 戦艦まほろば。艦長の月村良馬です。今回は演習中の中、突然アルファ星方面への出撃同行に感謝しております」
「いえ、私たちも司令部からアルファ星の状況を知り、憂いています。今回のアルファ星への出撃は月村艦長直々の御指名と言う事で、私たちも微力ながらお手伝いさせていただきます」
「ありがとうございます。早速ですが、アルファ星への道のりを少しでも短縮したいので、長距離ワープをしたいのですが、可能でしょうか?」
「戦艦程の長距離ワープは無理かもしれません。何分、船体の大きさが制限されているので、エンジンも戦艦程の出力が出せないので‥‥」
「分かりました。では、そちらの最大距離でのワープをこちらも同調して行います。今は一日でも早くアルファ星へ到着したいので‥‥」
「了解です。ただちにワープ準備を行います」
次元潜航艦隊と合流したまほろばは早速ワープを再び行い、アルファ星への道のりを少しでも短くなるようにした。
九鬼たち次元潜航艦隊の乗組員にとっては若干の強行軍になってしまったが、アルファ星の第二艦隊が壊滅的な打撃を受けた事で、アルファ星の防衛力は大きく削がれた。
ボラー派の次元潜航艦隊がアルファ星を通り過ぎ、地球連邦政の領海内に侵入すれば、太陽系内を航行している民間船舶にも被害が出る。
軍艦よりも薄い装甲の民間船舶に亜空間から襲い掛かって来る魚雷はまさに致命的だ。
そんな被害を出さない様にアルファ星へと急ぐまほろばと次元潜航艦隊だった。
地球側のアルファ星近海まで進出したまほろばは基地司令部へ通信を送り、まほろばと次元潜航艦隊の入港許可を求める。
司令部からはすぐに入港許可が下りると、まほろばの乗員たちにとっては見慣れた艦船用ドックへと着陸した。
(あれはメリーランド‥‥)
着陸する中、ボラー派の次元潜航艦隊の攻撃を受けたメリーランドの姿が修理用ドックにあった。
アルファ星基地へ着陸したまほろばと次元潜航艦隊。
まほろばは積んで来た物資を早速艦から降ろす。
「改装中なのに急ぎ来てもらってすまなかった」
司令部へ出頭した良馬にキャゼルヌは礼を言う。
「いえ、長官よりアルファ星の現状が芳しくないと聞きまして、相手が次元潜航艦隊と言う事で、少々準備に時間がかかってしまい、こちらこそ申し訳ございません」
「それで勝算は?」
「科学技術省の真田さんにあるモノを用意してもらいました。それを味方の次元潜航艦の協力を得て使用すれば、すくなくとも相手の位置は探知しやすくなると思うので、そこを次元潜航艦隊と共に挟撃します」
「そうか‥‥」
「それで、ラップ少将ですが‥‥」
「彼は今、軍病院で療養中だ。幸い骨に異常はなく、十日~二週間の入院で済むそうだ」
「そうですか‥‥」
「せっかく、来たんだ。見舞いに行ってやれ」
「そうさせてもらいます。では‥‥」
良馬は司令部で諸々の手続きや報告を終えるとラップが入院中の病院へ、彼の見舞いの為に向かったのだった。