バジウド星系に未だに存在するボラー連邦派の星間国家。
本来、バジウド星系の攻略はガルマン・ガミラス東部方面軍の担当であるが、その東部方面軍は現在、ボラー連邦領内の侵攻を優先的に進めており、バジウド星系の攻略については、ほぼ投げやり‥と言うか放置状態となっていた。
まぁ、ガルマン・ガミラスとすればバジウド星系の攻略など短期間でこなせる自信があるのか?
それとも既にバジウド星系など、攻略する価値もないと見ているのか?
東部方面軍は最低限の戦力を回す程度で戦線を維持している。
しかし、地球側としてはバジウド星系のボラー連邦派の存在はまさに目の上のたん瘤であり、これまで地球圏の最前線であるケンタウロス座アルファ星の近海までボラー連邦派はちょっかいをかけてきた。
ガルマン・ガミラス相手では勝てないと思って、その同盟国である地球ならば勝てると思ってちょっかいをかけてきたのだろうか?
現在、ガルマン・ガミラス東部方面軍がボラー連邦領内の侵攻に力を入れている事から、かつてバース星総督であったボローズの様に銀河系を東進して新天地を求める準備をしているのか?
いずれにしてもバジウド星系に居るボラー連邦派の存在は地球にとって脅威であることは変わらない。
ガルマン・ガミラスが頼れないならば、自分たちの手でバジウド星系のボラー連邦派を一掃してしまおうと考える軍人や政治家が居てもおかしくはなく、最近になってアルファ星へ新たに派遣されてきた作戦参謀のアンドリュー・フォーク准将もその一人であり、彼はアルファ星での防衛会議にて、バジウド星系のボラー連邦派を一掃するための遠征案を議題に持ち出した。
しかし、アルファ星基地の軍人たちの大半はバジウド星系への遠征に反対の意を示した。
フォーク同様、バジウド星系への遠征に賛成した軍人たちは苦虫を嚙み潰したように顔を歪める。
賛成した軍人たちの多くはフォーク同様、安全な地球本土や太陽系内の基地からアルファ星へ派遣されて来たのだが、やはり先日のボラー連邦派の次元潜航艦隊の攻撃からアルファ星が決して安全な星ではないと判断したのか、此処で大きな功績を立てて昇進と共に安全な勤務地へ戻ろうと画策し、提案したのがバジウド星系への遠征計画だった。
そこで、遠征賛成派の軍人たちは一計を案じ、フォークを使者として彼を地球へと送った。
地球に戻ったフォークは早速行動を開始して、地球で行われた防衛会議にて、バジウド星系への遠征が話題に上がった。
当然、アルファ星基地で行われた防衛会議同様、バジウド星系への遠征に対しては反対する者、賛成する者と分かれた。
賛成する者の中には地球連邦政府大統領も居り、防衛軍長官の藤堂、地球連邦政府首相のレベロは遠征に強固に反対を示した。
だが、大統領が遠征に賛成している状況は反対派にとっては雲行きが怪しく、その予感は的中してしまい、地球での防衛会議が行われてから直ぐに、バジウド星系への遠征が正式に決定する事になった。
メガロポリス東京 防衛軍司令部 長官執務室
「「‥‥」」
長官執務室にて、モニターでは連邦政府の発表が行われており、藤堂と古代は沈痛な面持ちでその発表会見を見ていた。
「すまない、古代‥‥」
「いえ、長官も今回の遠征については最後まで反対しておられたと分かっています」
「‥‥もうこうなってしまっては遠征を止める事は出来ない。古代、私は今度の遠征で最小限の犠牲で失敗してくれるよう望んでいる」
「‥‥」
「惨敗すれば、むろん多くの血が無用に流れる。かといって勝てばどうなると思う?」
「地球が侵略国家に成り下がる‥‥と?」
「そうだ。勝利をすれば、確かに地球の領土は広がるだろう。その変わり、主戦派はつけあがり、理性によるものにせよ、政略によるものにせよ、政府、連邦市民のコントロールを受け付けなくなる。軍部が暴走すれば、いずれ地球は破滅の道を歩むことになるだろう」
「‥‥」
地球がかつてのガミラスや彗星帝国の様な侵略国家に成り下がった場合、最初は快進撃を続けることが出来るかもしれない。
しかし、そんな快進撃は今の地球の戦力ではとても長続きするとは思えない。
いくらガルマン・ガミラスと同盟を結んでいるとは言え、そんな侵略国家に成り下っていてはガルマン・ガミラス側もいつまでも同盟関係を続けてくれるか分からない。
もしもガルマン・ガミラスとの同盟が決裂し、敵対関係となれば地球はあっという間に敗北するだろう。
「権力や武力は国家組織である以上、その双方から無縁ではいられない。とすれば、それは無能で腐敗した者より、そうでない者の手に委ねられ、理性と良心にしたがって運用されるべきなのだ」
「ええ、その通りだと思います」
「今回の遠征計画だが、そもそもの発端は一人の作戦参謀から提案だと聞いている」
「一人の‥‥?ですが、いくらなんでも一人の作戦参謀の提案が此処まで大きくなり、最終的に賛成に至るなんて‥‥」
藤堂の話を聞き古代としては信じられなかった。
あの雷王作戦でも北野を始めとしていくつもの作戦案が出され、それらを一つ一つ検討して、最終的に北野の作戦案が採用されている。
それが今回のバジウド星系への遠征はたった一人の作戦参謀の提案が採用されたと言うのだからあまりにも妙だ。
「噂だが、その作戦参謀は私的なルートを通じて直接連邦政府へ持ち込んだ。権力維持の手段として説得した事、動機が自分の出世欲にあったことも明白だ。彼は軍人として元帥の地位を狙っているが、現在の地球ではそのような功績を得る機会はない。ならば、その功績を得る機会を作ろうとしたのだ」
「なるほど」
現在の地球はどこかの星間国家と戦争状態になっている訳ではない。
平時であると、武勲をたてる機会がない。
そうなると昇進試験を受けなければ、昇進は出来ない。
しかし、平時とは言え平時には平時なりに色々と仕事がある。
そんな仕事の合間に試験勉強をしても受かるかは本人の努力次第である。
試験勉強なんてせずに手早く昇進する方法が戦争で武勲をたてることだ。
「古代」
「はい」
「その作戦参謀にとっては君を始めとするヤマトの乗員たちも自分の出世の障害と思っているかもしれない」
「えっ?我々が!?な、何故です!?」
古代としては面識もない作戦参謀から恨まれる覚えはない。
「ヤマトのこれまでの功績とそのヤマトを指揮してきたのは古代、君だからだ」
「‥‥」
ガミラス戦役時は沖田がヤマトの艦長を務めたが、途中から宇宙放射線病により、指揮がとれない身体となり、沖田艦長は指揮権を古代に譲渡した。
それから古代は艦長代理と言う曖昧な立場ながらも指揮を執り続けた。
暗黒星団帝国戦役では、兄の守が正式にヤマトの二代目艦長となり、指揮を執るが、二重銀河から地球への帰路は古代がヤマトの指揮を執った。
そして、太陽異常にて古代は正式に艦長代理から三代目のヤマト艦長に就任した。
第二の地球探査においても第二地球となる星を見つけることは出来なかったが、シャルバート星にて太陽の核融合異常増進を止めるハイドロコスモジェン砲を持ち帰り、太陽異常を解決したので、これも大きな功績となる。
「この際、君自身がどう思っているのかは関係ない。彼の思惑と目的のためにどういう手段をとったか、と言う事が問題なのだ。悪い意味で政治的すぎると言わざるを得ない」
ヤマトのこれまでの実績はあまりにも輝かしい。
彼がその栄光を自らの出世欲の為に利用するならば良いが、ヤマトを自らの出世の障害だと思い、排除しようとするならば、今回の遠征計画を利用してヤマトに無茶な作戦をさせようとするかもしれない。
ヤマトの艦長として古代には乗員たちの生命を守る義務がある。
あまりにも無茶な作戦を提示されたら、身命をとして断固反対する覚悟だった。
バジウド星系への遠征計画が正式に決定された知らせはケンタウロス座アルファ星、の防衛軍基地にも知らされた。
「バカな!?バジウド星系への遠征が決定!?」
「何故、あのようなバカげた作戦が決定となった!?」
「政府や司令部の連中は何もわかっていない!!」
バジウド星系遠征反対派の軍人たちからは遠征に賛成した連邦政府、防衛軍司令部の決定に憤慨した。
「どうやら、フォーク准将の工作は成功したみたいだな」
「ええ、バジウド星系への遠征がこうして決まった今、我々の昇進は間違いなさそうだな」
一方、遠征に賛成した軍人たちは自分たちの昇進が近づいたとほくそ笑んだ。
アルファ星基地にバジウド星系への遠征が正式に決定された知らせが来た時期とほぼ同じ時期にバース星の防衛軍駐屯基地にもその知らせは届いた。
バース星で流行していた流行り病の方も八雲がバース星へ持ち込んだ医療設備やワクチンのおかげで沈静化に向かっていた中での遠征計画決定の知らせは、バース星駐屯基地に大きな衝撃を与えた。
バジウド星系 第四惑星バース星 地球防衛軍駐屯基地
「防衛軍がバジウド星系への遠征!?しかもその目的がボラー連邦派討伐だと!?」
「が、ガルマン・ガミラスとの共同作戦‥と言う事でしょうか?」
「わ、分からん‥‥と、兎に角、ガルマン・ガミラス側にも問い合わせてみよう」
バース星駐屯基地の司令官は急ぎ、同じくバース星に駐屯しているガルマン・ガミラス基地へ問い合わせる。
しかし、結果は、『そんな作戦は聞いていない』 と言う回答が来た。
まぁ、仮にガルマン・ガミラスとの共同作戦ならば、ガルマン・ガミラス側から通知が来るはずだ。
それが無かったと言う事は今回の遠征は地球のみで行うと言う事だ。
「ガルマン・ガミラス側は『知らない』と言って来た」
「で、では、防衛軍のみの作戦と言う事ですか!?」
「どうやらそうみたいだ‥‥」
「ですが、今の防衛軍の戦力で勝てるのですか?それもガルマン・ガミラスの援軍無しに‥‥?」
副官もバジウド星系にあるバース星に勤務しているだけあって、バジウド星系内に存在するボラー連邦派の戦力について地球本土の政治家や司令部勤務の軍人たちよりも知っていた。
「兎に角、哨戒に出している艦を全て呼び戻そう」
「しょ、承知しました」
バース星からの帰還命令はバジウド星系の彼方此方の宙域を哨戒していた八雲も受信した。
八雲艦内でも一時、病気が流行ったが、惑星ゼスにて医療支援を受け、感染した乗員たちも回復して再びバジウド星系にて哨戒任務を続けていた。
そんな中‥‥
八雲 艦橋
「艦長、バース星基地より帰還命令です」
「バース星から‥‥」
「流行り病が沈静化したんだ」
バース星から帰還命令が来たと言う事は、八雲がアルファ星からバース星へ赴き、バジウド星系で哨戒任務をする原因となったバース星での流行り病が沈静化したという証拠だ。
「やれやれ、これでやっと落ち着けるな‥‥」
大型巡洋艦とは言え、一隻で敵対しているボラー連邦派がうろついている宙域を哨戒していたのだから、いつ、どこからボラー連邦派の襲撃を受けるのか気が気でない。
しかも最近ではボラー連邦派も次元潜航艦を運用し始めているので、警戒度は更に増す。
そんな中でようやく落ち着ける星に戻れるし、更にそこからアルファ星、地球へ戻れるかもしれないと思うと多少でも気が緩む。
「そうでしょうか‥‥急な帰還命令‥ただ、単にバース星の流行り病が沈静化しただけではないと思いますが‥‥」
しかし、ギンガはこの帰還命令には何か意図があるのではないかと思った。
バース星の防衛軍駐屯基地からバジウド星系のボラー連邦派への遠征について、問い合わせを受けた同じくバース星のガルマン・ガミラス駐屯基地では、確かに共同作戦を受けてはいない。
ならば、これから共同作戦をとるのか、ガルマン・ガミラスのバース星駐屯基地司令官は上官である東部方面軍総司令のガイデル提督へ今回、地球側が行おうとしているバジウド星系のボラー連邦派に対する遠征を伝えた。
ガルマン・ガミラス東部方面軍 司令部移動要塞
『なに!?地球側がバジウド星系に巣食うボラー連邦派の討伐を行うだと!?』
「は、はい。先ほど、バース星の地球軍基地より連絡がありました」
『むぅ~‥‥あの地球軍が‥‥』
ガイデルとしては専守防衛体質な地球がまさか攻勢に出るとは、地球軍らしくない行動だと思った。
「いかがなさいますか?地球と同盟を組んでいるとなると、我が帝国も同盟軍として援軍を向かわせますか?」
『‥‥地球側から正式に我が帝国に援軍要請は来ているのか?』
「いえ、来ていません」
『ならば、送らずとも良い』
ガイデル提督は地球が行おうとしているバジウド星系への遠征に対して援軍は送らない決定を下す。
「えっ?よ、よろしいのですか!?」
『地球側から正式な援軍要請が来ておらんのだろう?ならば、下手に軍を出せば無用な混乱を生むことになる。地球側から援軍要請が来ればパトロール隊規模の援軍ならば送ってやれ』
「は、はい」
ガイデル提督の決定にバース星のガルマン・ガミラス駐屯基地の司令官は思わず声が裏返る。
正式な援軍要請がなかったとは言え、ボラー連邦、ボラー連邦派のしぶとさ、戦力の多さはこれまでボラー連邦と敵対し、戦って来た自分たちガルマン・ガミラスの軍人が良く知っている。
反対に地球側はボラー連邦の事をあまり知らない。
戦いにおいて、情報は戦局を左右する重要な要素である。
「では、ボラー連邦派に関する情報提供だけでも地球側へ送りますか?」
『うむ、それくらいならばしてやれ』
「承知しました」
ガルマン・ガミラスが行うのは援軍要請が無い限り、援軍は送らず、あくまでも情報提供だけに留まった。
援軍は要請が来なかったので、送らなかったが情報を送ったのは地球がガルマン・ガミラスの同盟国であるからだ。
仮に地球軍の遠征が失敗に終わった場合、敗因調査が行われ、ガルマン・ガミラス側の協力が全くなかったと言われたら、ガイデル自身何かしらのペナルティが課さられると思ったのだ。
援軍要請もなかったにもかかわらず、情報は提供したので、地球軍の遠征が失敗に終わっても情報提供と言う協力はしたので、遠征の失敗にガルマン・ガミラス東部方面軍は関係ない。
「しかし、大丈夫でしょうか?」
「ん?何がだ?」
ガルマン・ガミラスのバース星駐屯基地との通信を切った後、ガイデルの副官もガイデルの傍に控えていた為、先ほどのバース星駐屯基地の司令官との通信内容を聞いていた。
「地球にはあのヤマトとか言う戦艦があります。万が一にも地球軍がバジウド星系に巣食うボラー連邦派を一掃しますと我が東部方面軍としての面子が立たないのではないでしょうか?」
副官としては地球がバジウド星系のボラー連邦派を一掃してしまうとバジウド星系の攻略担当であった東部方面軍の面子に関わるのではないかと心配したのだ。
「ふむ、貴官の言う事は尤もであるが、いくらヤマトが強力な戦艦であっても他の艦がヤマト同様の力を持っていなければ、バジウド星系に巣食うボラー派の一掃など不可能だ」
「そ、そうでしょうか?」
「そもそも、バース星攻略に関しても我が東部方面軍が誇る第十八機甲師団をもってしても数週間かかったのだ。地球軍が我が帝国の機甲師団並みの戦力を有していると思うか?」
地球がこれまでいくつもの星間国家からの侵略を受けた情報をガイデルは既に入手しており、その結果から現状の地球とガルマン・ガミラスとの戦略差には大きな差がある事を彼は知っていた。
「い、いえ‥‥」
「そうであろう?せいぜい攻略できたとしても一つや二つが今の地球の限界点だ。そこまで深刻に考える程ではない」
「は、はぁ‥‥」
ガイデル自身も今の地球の戦力でバジウド星系のボラー連邦派すべてを一掃出来るとは思っていなかった。
一方、バジウド星系への遠征が決まった地球でも遠征の為に、防衛軍の艦船が集まっていた。
その中にはヤマトも含まれていた。
ヤマト 第一艦橋
「それにしてもバジウド星系へ遠征か‥‥」
「防衛軍がまさか侵略行為をするなんてな‥‥」
古代も島もやはりバジウド星系への遠征に対して反対派であった。
「ガミラスの時は、ガミラス星の位置が分からなかった事とデスラーがガミラス本星での決戦を挑んで来た。その結果があのガミラス本星での戦いとなった‥‥」
古代はヤマトの最初の航海で、イスカンダル手前でデスラーの罠にはまり、双子星であるガミラス本星へ引き込まれ、そこで雌雄を決する決戦をした事を思い出す。
「彗星帝国の時はあの都市要塞で地球圏に移動して来たからな‥‥」
真田も彗星帝国との決戦を思い出す。
「暗黒星団帝国の時は地球人類が人質にとられていたから、暗黒星団帝国の母星まで行ったが‥‥」
島は最初のイスカンダルへの航海時の様に地球人類を救う為、手探りで暗黒星団帝国の本星を目指した航海を思い浮かべる。
暗黒星団帝国の件では地球人類を救う為と言う大義名分があったが、見方を変えればあの行為も遠征‥侵攻行為にあたるのかもしれない。
今回の一件もアルファ星がボラー連邦派から攻撃を仕掛けられていると言う点を含めると見方を変えると、連邦市民の安全確保と言えばバジウド星系への遠征に正当性があるのかもしれないが、どうも煮え切らない思いがあった。
今回、地球本土からバジウド星系への遠征に参加するのは、アメリカ艦隊所属のデュエイン・ハルバートン提督麾下の二個艦隊、スペイン艦隊所属のジェラード・ガルシア少将麾下の一個艦隊、そして、日本からはヤマトを旗艦とする太陽系第三外周艦隊がアルファ星へと派遣された。
「凄い数の艦隊だ‥‥」
「ああ、流石に彗星帝国との決戦のため、土星圏に集まった時よりは少ないが、それでもかなりの戦力を今回の遠征で投入するみたいだな」
「ああ‥だが、それでもバジウド星系の平定なんて無理だろうな」
地球に攻める彗星帝国の侵攻艦隊を阻止すべく、当時地球連合艦隊の総司令官であった土方は土星、タイタン基地に防衛軍の全艦艇を集結させた。
その規模はまさに凄まじく、地球がガミラスからの戦争に復興したのだと実感させられる規模であった。
今回の遠征では流石に同じ規模とはいかず、艦艇数は異なるが、暗黒星団帝国との戦い以来、ヤマトとしては久しぶりに艦隊を率いる事となった。
だが、古代はこれほどの艦隊でもバジウド星系のボラー連邦派全てを倒す事は不可能だとこの時点で感じ取っていた。
(長官の言う通り、今度の戦いはいかに味方の損害を少なくして撤退するかだな)
遠征前に藤堂からこの遠征におけるヤマトの役割が益々現実味を帯びている事を感じる古代であった。
古代が不安を思う程、アルファ星、そしてバース星駐屯基地所属の艦隊を含めてもバジウド星系のボラー連邦派すべての拠点を潰すにはやはり心もとない戦力であった。
しかし、遠征賛成派としてはこれだけでも過剰戦力だと思っている者も居るぐらいだった。
だが、今回投入されたのは宇宙艦船ばかりで、そもそも星を制圧するには陸戦部隊が必須にもかかわらず、今回の遠征には空間騎兵隊が含まれていない。
おそらく空間騎兵隊の投入は後々になることだろう。
一方、先にバジウド星系で哨戒任務を急に終えた八雲はバース星へと戻って来た。
八雲 艦橋
「なんだか久しぶりに見た光景だな」
「ああ。惑星ゼスは南国風な気候だったけど、バース星は真冬な気候だからな、風邪ひかない様にしないと‥‥」
「でも、あの星って寒さもありますが、いつも曇っていて何か陰気くさい星なんですよね」
「ああ、分かる。惑星ゼスに滞在した後でバース星に戻るとやっぱりギャップを感じちゃいますよね」
八雲の艦橋では、乗員たちがバース星よりも惑星ゼスの方が過ごしやすい惑星だと話している。
「艦長、今回の突然の帰還命令ですが、どう思いますか?」
そんな中、ギンガは瓢にいきなりの帰還命令に対して意見を求めた。
「私はただ単にバース星で起きた流行り病が沈静化しただけとは思えないのですが‥‥」
「うむ、確かに副長の言う通り、ただ単に流行り病が沈静化しただけとは思えんな‥‥もしかしたら、バース星の周辺で何か起きたのかもしれん」
「バース星にボラー連邦派の艦隊が向かっているとか?」
ギンガの脳裏に蘇ったのはシリウス恒星系、プロキオン恒星系より襲来した彗星帝国の太陽系侵攻艦隊本隊の姿であり、今回のバース星への帰還命令はあの時の再来の様に、バース星にボラー連邦派が徒党を組んで一大戦力を投入して来たのではないかと思った。
「なんにせよ、バース星に着かなければ分からん。ひとまず無事にバース星へ着くことを優先しよう」
「はい」
八雲は急ぎバース星を目指した。
八雲がバース星の地球防衛軍駐屯基地の軍艦停泊用のドックを肉眼で確認できる距離まで来ると、ドックには防衛軍艦艇がほぼ揃っていた。
尤もバース星にはガルマン・ガミラスの駐屯艦隊、元々のバース星所属している残存艦隊が居るので、防衛軍の艦艇はそんなに多くはない。
それに八雲が哨戒任務を行った理由がバース星で流行った病気のせい‥‥
宇宙艦艇勤務の軍人たちも例外なく、バース星に居た際、その流行り病に感染して、バース星の医療施設で入院していた。
バース星のドックに到着すると、艦長の瓢は早速司令部へ出頭するよう命令が来た。
司令部にて、今回の帰還命令について説明がある様だ。
「副長」
「はい」
「君も一緒に来てくれ」
「えっ?」
瓢は司令部の出頭にギンガも一緒に連れて行く事にした。
「航海長」
「はい」
「ワシと副長が戻るまで、八雲の事を頼むぞ」
「は、はい!!」
艦長の瓢、副長のギンガが艦を一時離れるので、その間の指揮権を航海長に一時譲渡した。
そして、何故ギンガを共に連れて行くのかであるが、ギンガは瓢が病気にかかった際、彼に代わり八雲を指揮した事から、ギンガに学ぶ機会を与える為‥経験を与える為に連れて行ったのだ。
バース星駐屯基地司令部の会議室には他艦の艦長や戦隊司令官たちが揃っていた。
「急な帰還命令の中、急ぎ戻って来てもらい感謝する」
バース星駐屯基地司令官が会議室に集まった戦隊司令官、艦長たちに礼を述べる。
「さて、諸君らも気になっている事だろう。今回の急な帰還命令だが‥‥」
基地司令官は早速、今回の帰還命令について語りだす。
「実は、地球の防衛軍司令部より一大作戦が実施される事となった」
基地司令官の言う『一大作戦』と言う言葉に会議室はざわつく。
「司令官、その一大作戦とは一体どんな作戦なのでしょうか?」
「諸君たちもバジウド星系には未だにボラー連邦に与する星間国家が存在している事は知っていると思う」
基地司令官は周囲を見渡す。
会議室に集まった軍人たちも心当たりがある様子だ。
「この度、それらボラー連邦派の星間国家を一掃する作戦が決定された」
基地司令官の『一大作戦』の内容を知り、会議室のざわつきは更に増す。
「質問をよろしいでしょうか?」
すると、一人の軍人が挙手をして、基地司令官に質問する。
「何かな?」
「バジウド星系のボラー連邦派勢力の一掃との事ですが、そうするとガルマン・ガミラスの東部方面軍、もしくはガルマン派の星間国家との合同作戦と言う事でしょうか?」
バジウド星系のボラー連邦派の星間国家は一つや二つではない。
それ故、ガルマン・ガミラスの東部方面軍やガルマン派の星間国家と共にボラー連邦派の星間国家を叩くと思っても不思議ではない。
「‥‥いや、地球の司令部からこの作戦が来た時、ガルマン・ガミラス側にも問い合わせた。返答の結果、今回の作戦にガルマン・ガミラスは情報提供に留まっている」
「つまり、ガルマン・ガミラスからの援軍は期待できないと言う事ですか?」
「ガルマン側の返答からそう判断せざるを得ない」
ガルマン・ガミラス側に援軍要請をすれば、もしかしたらと言う期待があったのかは分からないが、既に援軍要請は断られているのだと思い、改めてガルマン・ガミラス側に援軍要請をすることは最後までなかった。
「ガルマン・ガミラスの援軍が期待できないのは分かりました。それで、ボラー連邦派の星間国家に対する作戦はバース星駐屯艦隊で行うのですか?」
「いや、我がバース星駐屯艦隊、ケンタウロス座アルファ星駐屯艦隊、地球本土から出撃して来る遠征艦隊で行う」
流石にバジウド星系のボラー連邦派の星間国家全てをバース星駐屯艦隊で一掃するのは無理がある。
一応、バース星駐屯艦隊のみだけではない事実に一部の船体司令や艦長はホッとするが、バース星駐屯艦隊、アルファ星駐屯艦隊、地球本土からの遠征艦隊‥‥
これらの戦力を用いてもバジウド星系のボラー連邦派全ての星間国家を一掃できるのか不安がある。
(ケンタウロス座アルファ星駐屯艦隊と言う事は、良馬さんのまほろばも今回の作戦に参加する可能性が高いわね)
まほろばはアルファ星を母港として活動しているので、今回の遠征にアルファ星駐屯艦隊が参戦するなら、ギンガはまほろばも参加する可能性が高いと予測した。
「現在、地球からアルファ星に向けて、遠征艦隊が向かっている。遠征艦隊がアルファ星に到着次第、アルファ星基地とリモート会議を行う予定だ」
まだ地球からの遠征艦隊がアルファ星に到着していないので、遠征艦隊がアルファ星に到着後、遠征についての作戦会議が行われる。
バース星駐屯艦隊は遠征作戦に参加予定ではあるが、アルファ星への招集は受けてはいないので、リモートにて遠征作戦の会議に参加する事となった。
リモート会議まで一時解散となり、会議室に集まった軍人たちはバラバラと会議室を後にして行く。
「やれやれ、いきなりの帰還命令‥副長の言う通り何かあると思ってはいたが、まさか遠征作戦とはな‥‥」
ギンガ同様、瓢も突然の帰還命令に何か事情があるのだろうと思ってはいたが、その内容がまさか遠征作戦とはあまりにも意外だった。
「はい。それにチラッと聞いた説明でも今回の遠征はかなり大規模な作戦になりそうですね」
「うむ、しかし‥‥」
瓢は自らの顎髭を撫でながら煮え切らない様子だ。
「副長は今回の遠征‥成功すると思うか?」
そして、周囲に人気が無い事を確認した後、ギンガに今回の遠征作戦について訊ねる。
「‥‥地球からの遠征艦隊の規模にもよりますが、バジウド星系全てのボラー連邦派の星を一掃するのは地球の戦力だけでは難しいと思います」
バース星駐屯基地司令官の話ではガルマン・ガミラスは情報提供だけであり、ガルマン派の星間国家も今回の遠征には不参加の様子‥‥
出来る事なら、ガルマン・ガミラス、ガルマン派の協力があれば、成功率は上がる。
しかし、今回の遠征作戦では地球側はどうもガルマン・ガミラスやガルマン派の星間国家に協力要請を出していないみたいだ。
「今からでもガルマン・ガミラスに協力要請は出来ないものでしょうか?」
「う~む、正式に作戦が作動し、艦隊が集結しつつある現状、今からガルマン・ガミラスに援軍要請を行っても無用の混乱を引き起こすだろうし、そもそも、ガルマン・ガミラスが今回の遠征作戦に賛同して援軍を送ってくれるのかも不明だからな‥‥」
「‥‥」
やはり、ガルマン・ガミラスからの援軍は期待出来ず、今回の遠征作戦は地球の戦力のみで行う事が決定の様だ。
それからバース星駐屯艦隊はアルファ星に地球からの遠征艦隊が到着するまで待機となった。
ケンタウロス座アルファ星
「地球からの遠征艦隊が今、アルファ星に向かっているらしい」
「そりゃあ、アルファ星とバース星の駐屯艦隊だけではとても遠征なんて無理ですよ」
アルファ星駐屯基地内にある食堂で良馬と永倉は遠征の援軍として地球からの遠征艦隊がアルファ星に向かっている件について話していた。
「いや、地球からの援軍が来ても今回の遠征が成功するかはな‥‥」
瓢同様、良馬も今回の遠征が成功するとは思えなかった。
「せめて、彗星帝国の太陽系侵攻艦隊を迎え撃った時と同等の戦力がなければ心もとない」
「そんなに必要なんですか?」
「遠征賛成派の連中はどうもボラー派の事を舐めている節がある。かつて太陽系に侵攻艦したきた彗星帝国の艦隊も防衛軍に勝る戦力と火炎直撃砲なんて強力な兵器を搭載した艦をもってしても土星で防衛軍に敗れただろう?」
「今度は防衛軍があの時の彗星帝国の艦隊みたいになると?」
「‥‥」
良馬は断言はしなかったが、その可能性が高いと示唆する。
ヤマト、まほろばが第二の地球探査任務でボラー連邦からの妨害を受けつつも探査任務を続行していた事や戦闘報告書でグスタフ艦隊と共闘してボラー連邦の第八親衛打撃艦隊、本国の主力艦隊を破った事、金星付近で国家元首たるベムラーゼの機動要塞と艦隊を破ったから『ボラー連邦って大して強くないんじゃねぇ』みたいな風潮が漂っているのではないかと思った。
「実際にアリゾナはボラー連邦の襲撃を受けてスカラゲック海峡で沈んでいる。それに確認は出来ていないが、ヨーロッパやアフリカの探査船団もボラー連邦の襲撃を受けた可能性が高いと言うのに‥‥」
「認めたくない事実から目を逸らして、妄想に現実を求める‥‥確かにマズイ兆候ですね」
「ああ」
(バース星駐屯艦隊も参加するらしいが、ギンガが乗艦している八雲も今回の遠征作戦に参加するのだろうか?)
ギンガ同様、良馬もバース星駐屯艦隊も参戦する事を聞き、ギンガが副長を務める八雲も参加する可能性があると予測する。
(今回の遠征作戦はあまり深く突き進み過ぎると危険だ)
(地球からの遠征艦隊が到着次第、遠征作戦の確認会議が行われるらしい)
(その時に今回の遠征作戦があまりにお大規模な作戦に‥‥バジウド星系の奥深くへ遠征する危険性を指摘して、ある程度の戦果で終わらせる必要があるな‥‥)
地球からの遠征艦隊が到着後に行われる会議にて、今回の遠征作戦である程度の妥協点を引き出す必要性を覚える良馬だった。