星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百十話 遠征

 

 

バジウド星系に存在するボラー連邦系の星間国家への遠征が決まった防衛軍は、アルファ星、バース星の駐屯基地を発進し、それぞれ決められたボラー連邦派の惑星へと向かう。

 

アルファ星駐屯基地から第一陣として出撃したハルバートン艦隊の陣容は、

 

大型戦闘空母のレキシントンを旗艦として、レキシントンと同型の大型戦闘空母ラングレー。

 

 

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ドレッドノート級改級宇宙空母のヨークタウン、ホーネット。

 

 

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機動部隊を主力に戦艦は、速力を重視したドレッドノート級主力戦艦 後期生産型 乙型のコロラド、デラウェア。

 

攻撃力を重視したドレッドノート級主力戦艦 後期生産型 甲型のニューヨーク、テキサス、コネチカット、ミネソタ。

 

防御力を重視したドレッドノート級主力戦艦 後期生産型 丙型のアーカンソー、イリノイ。

 

 

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巡洋艦十六隻、駆逐艦三十隻、護衛艦二十隻を率いて親ボラー連邦系ベロラージュの領地であるウハリンを目指した。

 

 

レキシントン 艦橋

 

「対潜哨戒を厳となせ、情報ではボラー派の連中もガルマン・ガミラスや我々同様、次元潜航艦を有しているみたいだからな」

 

「了解」

 

艦橋にて、ハルバートンは緊張した面持ちで命令を下す。

 

各空母からはひっきりなしに早期警戒型のコスモタイガーが発進と着艦を繰り返し、対潜哨戒行動をとっている。

 

フォークが見ればきっとハルバートンの行動を『臆病』と言うだろうが、実際にアルファ星駐屯艦隊所属の第二艦隊はそのボラー派の次元潜航艦の襲撃を受けて、手痛い目に遭っているのだから、警戒するに越したことはない。

 

しかし、此処まで厳重に対潜哨戒を行っていたハルバートン艦隊であったが、彼らの動きは異次元に潜む監視者に筒抜けであった。

 

 

親ボラー連邦系 ベロラージュ 大統領官邸

 

「なに?アルファ星から、我が領土であるウハリンに向かって艦隊が出撃しているだと?」

 

「はい。哨戒任務中の味方次元潜航艦がその姿を捉えたとのことです」

 

「彼奴等め、調子に乗りおって‥‥」

 

先日、アルファ星駐屯艦隊に次元潜航艦隊が壊滅的被害を受けたばかりの中、今度は地球側が自分たちの領土へ攻め込んで来た事にルカジェーコフは憤慨する。

 

「それで、彼奴等が向かっているのは此処、ベロラージュか?」

 

「最終目的地は恐らく‥しかし、第一目標はウハリンと思われます」

 

大統領秘書官はモニターに宇宙海図を表示してルカジェーコフへ説明する。

 

「よし、ウハリン基地に非常事態宣言を出せ!!野蛮人どもに我々の神聖な領土へ入り込んだことを後悔させてやれ!!」

 

「はっ、承知いたしました。それで、監視しております次元潜航艦にはいかがいたしましょう?攻撃命令を下令しますか?」

 

「‥‥いや、そのまま監視態勢をとらせろ」

 

ハルバートン艦隊が向かうベロラージュ領、ウハリン防衛基地にはベロラージュから緊急伝で地球艦隊が接近している報告が伝えられ、ウハリン防衛艦隊は直ちに迎撃態勢をとった。

 

一方で、ハルバートン艦隊を異次元から監視している次元潜航艦については、攻撃はせずにこのまま動向を監視して逐次連絡を入れるようにした。

 

ルカジェーコフとしても貴重な次元潜航艦をこれ以上失いたくないはないと言う思いが強かった。

 

ハルバートン艦隊を異次元から追跡・監視するベロラージュ所属の次元潜航艦は逐次、ハルバートン艦隊の同行を本国であるベロラージュへと暗号通信を送っていた。

 

その結果、やはりハルバートン艦隊が向っているのが、ベロラージュ領のウハリンであることは間違いなさそうであった。

 

まさか、異次元から自分たちの行動が相手に筒抜けだと知る由もないハルバートン艦隊は敵の次元潜航艦からの襲撃を受けることなく、第一攻撃目標であるウハリン近海まで進出していた。

 

追尾していたベロラージュの次元潜航艦も自分の存在がバレるのではないかとひやひやしていたのかもしれない。

 

 

レキシントン 艦橋

 

「提督、もう間もなくですな‥‥」

 

レキシントン艦長のホフマンがハルバートンに声をかける。

 

「ああ、しかし、此処まで敵の次元潜航艦からの攻撃がなかったのはどうも気になる」

 

「先日、アルファ星基地所属の艦隊が襲撃を受けましたが、後日味方の次元潜航艦隊と連携して多数の敵次元潜航艦を撃破したと聞きます。その時に壊滅したのではないでしょうか?」

 

ハルバートンは第一攻撃目標とは言え、敵の次元潜航艦の攻撃が全くと言っていいほどなかった事に違和感を覚える。

 

しかし、ホフマンは先日、ラップの第二艦隊とまほろば、防衛軍の次元潜航艦隊の活躍によって敵の次元潜航艦は壊滅した事で、出撃して来なかったのではないかと予測する。

 

「それも一つの可能性ではあるが、我々は敵の次元潜航艦の数を全て把握しているわけではない。本土防衛の為に回したか‥‥それとも我々を敢えて地の利がある宙域まで引き込み、そこから食らいついてくるか‥‥」

 

「‥‥」

 

ハルバートンの意見を聞き、ホフマンの顔は強張る。

 

「提督、艦長、まもなく戦闘予定宙域です」

 

レキシントンの戦術長がハルバートンとホフマンに報告を入れる。

 

「よし、全艦戦闘配置!!各空母に通達、攻撃機隊、発進用意!!」

 

艦内に警報が鳴り響き、乗員たちが慌ただしく艦内を走り回る。

 

「第一、 第二主砲発射準備完了!!」

 

「ミサイル発射準備完了!!」

 

「航空隊、第一陣発進準備完了!!」

 

「各空母へ、準備出来次第発艦させろ!!」

 

「はっ!!」

 

レキシントン、ヨークタウン、ホーネット、ラングレーからは次々とコスモタイガー、コスモタイガー雷撃機タイプが発艦していく。

 

バジウド星系ボラー連邦派への遠征作戦はハルバートン艦隊の攻撃からその幕を上げた。

 

ハルバートン艦隊より発進した攻撃機隊はウハリンの敵基地を空襲した。

 

しかし、事前に情報を掴んでいたウハリン守備隊は万全の防御態勢をとっており、迎撃機と激しい対空砲火に晒された第一攻撃隊は、攻撃の戦果不十分とみると、第一次攻撃隊の隊長は、レキシントンへ『第二次攻撃の必要あり』と打電した。

 

「提督。只今第一次攻撃隊より、入電です!!」

 

「内容は?」

 

「はっ、『敵の防衛網は予想よりも分厚く、攻撃機隊の被害多く、敵施設への攻撃不十分、第二次攻撃の必要あり』‥以上です」

 

「攻撃機隊の被害が多いか‥‥」

 

ハルバートンは第一攻撃機隊からの通信内容に表情を曇らせる。

 

「‥‥この惑星周辺に敵艦隊の反応は?」

 

「偵察機からの報告では、『周囲に敵影なし』との事です」

 

「‥‥」

 

偵察機からの報告を受けて、ハルバートンは考え込む。

 

「提督、このまま第二次攻撃隊を追加で送りますか?」

 

(第一次攻撃隊の被害は甚大‥‥)

 

(敵はまるで、我々の行動を知っているかのようだった‥‥)

 

(しかし、惑星周辺に艦隊の姿はない‥‥)

 

(敵の迎撃が万全だったのは偶然なのか?)

 

「よし、このまま敵基地を攻撃する。第二次攻撃隊の攻撃装備を対地装備に変更せよ」

 

ハルバートンはこれまでの偵察機からの報告を聞き、付近に敵艦隊は存在しないと判断した。

 

そして、第一次攻撃隊の装備が対空・対艦装備だったので、敵施設への攻撃が不十分だったことも第一次攻撃隊の被害を大きくさせた要因かと思ったハルバートンは、攻撃目標を敵艦隊からウハリンの敵基地へと変更し、同基地を徹底的に破壊する為、第二次攻撃隊の装備を対空・対艦装備から、対地装備へと変更させた。

 

「急げ、急げ!!」

 

「早く取り外せ!!」

 

「対地爆弾を持ってこい!!」

 

レキシントン以下の空母の格納庫では整備兵たちが急いで武装の返還作業を行う。

 

勿論レキシントン以外の空母でもそれらの実装の転換作業命令が下る。

 

「なにっ!?対地装備へ転換だと!?」

 

ヨークタウンではレキシントンからの命令に対して、ヨークタウンの第二機動部隊司令官のフレッチャー司令官はレキシントンからの命令に驚愕した。

 

「バカなっ!?貴重な時間を無駄にする気か!?」

 

「ハルバートン提督は一体何を考えているんだ!?」

 

「もし、転換中に敵が来たら‥‥」

 

レキシントンとヨークタウンの艦橋内は全く異なる空気となっており、司令部が混乱する状況となった。

 

作戦中にこの様に意思統一が出来ていない状況は正直危険な兆候だった。

 

だが、この艦隊の指揮官はハルバートンだったので、指揮権を無視する訳にもいかず、フレッチャーは渋々艦載機の兵装変更を行った。

 

「発艦準備完了!!」

 

「よし、各空母へ、準備出来次第発艦せよ!!」

 

第二次攻撃隊の兵装変更が完了し、いよいよ発艦となった時、

 

「っ!?提督!!索敵中の偵察機より受信!!『ポイント17ー4地点にて、敵艦隊を発見。敵は空母を中心とする機動部隊なり』」

 

「っ!?」

 

敵の基地を叩こうとした中での敵艦隊発見の知らせを受けたレキシントンの艦橋は動揺する。

 

「提督、第二次攻撃隊をこのまま敵艦隊へ発進させましょう」

 

ホフマンは攻撃機隊の発進準備は整っているので、このまま第二次攻撃隊を敵艦隊に向けて発進させるように提言する。

 

「しかし、艦長。対地装備のままでは敵艦隊に致命傷は与えられないのでは?」

 

レキシントンの戦術長が疑問を投げかける。

 

「提督、対地装備でも船体に穴は開けられます!!」

 

「ですが、艦長。それでは撃沈までには至りませんよ!?」

 

「‥‥提督、いかがなさいますか?」

 

「‥‥」

 

このまま第二次攻撃機隊を出しても敵艦隊に致命傷は与えられない。

 

しかし、先手は取ることが出来る。

 

ホフマンの意見を採用して、対地装備のままで攻撃機を出すか?

 

それとも時間のロスを承知で確実に敵艦へダメージを与える事の出来る対艦装備へと変更した後に攻撃機隊を出すか?

 

ハルバートンが第二次攻撃隊の装備を考えていると、

 

「提督、ヨークタウンより通信、『直チニ攻撃機隊発進ノ要アリト認ム』‥以上です」

 

敵艦隊発見の知らせはレキシントン以外の艦にも報告されており、ヨークタウンのフレッチャーからはホフマン同様、第二次攻撃隊をそのまま発進させた方が良いと意見具申が入る。

 

「提督、小官も同感です。提督ご決断を!!」

 

ホフマンもフレッチャーの意見を支持する。

 

「提督、此処で敵艦隊を逃すようでは、我々は敵中で孤立する恐れがあります。此処は確実に沈められるよう対艦装備で出すべきです」

 

だが、戦術長は敵艦隊からの攻撃に対して慎重かつ確実性をとり、対地装備をしている攻撃機隊の装備を対艦装備に変更した方が良いとハルバートンへ進言する。

 

「‥‥うむ、戦術長の言う通り、此処は確実に‥‥正攻法でいこう」

 

ハルバートンも確実に敵艦隊を沈められるよう戦術長の提言を受け入れて、攻撃機隊の装備を変更させた。

 

「第二次攻撃隊は敵艦隊へと向かう。対地装備から対艦装備へ変更せよ」

 

「‥‥」

 

ハルバートンの装備変更指示にフレッチャー同様、ホフマンは嫌な予感を覚えた。

 

こうしてまたもやフレッチャーの要求は却下されたのだ。

 

対艦装備から対地装備へ‥そしてまた対地装備から対艦装備へ‥‥

 

この時間のロスがハルバートン艦隊の致命傷となった。

 

ハルバートンの慎重さが此処で仇となってしまったのだ。

 

「ええ!?兵装を変えろ!?」

 

「また変更ですか!?さっき、対地装備に変換したばかりですよ!?」

 

「上からの命令だ!!急げ!!」

 

「着けたり外したり一体どうなっているんだ?」

 

「大丈夫なのか?こんなことしていて‥‥」

 

「これは訓練じゃなくて、実戦なんだぞ?」

 

艦載機の兵装変更をしている整備兵たちもこの転々とする命令に困惑していた。

 

詳しい説明も戦況も分からない状況で、兵装の変更が二転三転とするのだから困惑するのも当然だ。

 

流石に時間が押していると言う事で、兵装変更には整備兵だけでなく、艦載機のパイロットたちも手伝う羽目になった。

 

「発艦準備急げ!!整備長!!急げ!!」

 

「あと五分、あと五分で作業は終わります!!」

 

「うむ、各空母へ準備出来次第直ちに発艦せよ!!」

 

あと五分で作業が終わると格納庫から連絡が来るが、あくまでも武装の変更作業が終わるので、その後に発進シークエンスがあるので、第二次攻撃隊の発進はまだ先となる。

 

しかし、敵はそんなハルバートン艦隊の事情などお構いなしだ。

 

「っ!?敵機、本艦隊の直上!!」

 

レーダー手が艦隊情報から接近する敵影を捕捉する。

 

「なにっ!?」

 

最初から対艦装備をしていた敵の爆撃機がハルバートン艦隊の直上から急降下爆撃を行う。

 

「面舵一杯!!」

 

「面舵一杯」

 

レキシントンを始めとする各艦は直ちに回避行動を取る。

 

「対空戦闘はじめ!!」

 

ハルバートン艦隊は回避行動を取りつつ、敵機撃墜のため、対空弾幕を張る。

 

しかし、敵機はそんな対空弾幕を抜け、味方の被害をもろともせずにハルバートン艦隊へと向かい、次々とミサイルポッドからミサイルを放ってくる。

 

 

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「左舷中部に敵弾命中!!」

 

「火災発生!!」

 

「火災そのまま拡大中!!」

 

「ラングレー被弾!!」

 

「ホーネットも被弾しました!!」

 

敵爆撃機隊はやはり、戦艦、巡洋艦、駆逐艦、護衛艦よりも空母を狙って攻撃をしかけてきた。

 

 

ヨークタウン 艦橋

 

「な、なんと言う事だ‥‥」

 

「ば、バカな‥‥何故、こんなことに‥‥」

 

「レキシントン被弾!!炎上している模様!!」

 

「ラングレー、ホーネットからも爆発を確認!!」

 

レキシントン、ラングレー、ホーネットから離れていたヨークタウンは第一波の攻撃からは運よく生き残ることが出来た。

 

「デラウェア、ニューヨーク、テキサスも被弾!!」

 

「司令官‥‥」

 

「‥‥旗艦被弾につき指揮不能、これより私が艦隊の指揮を執る。ヨークタウン、攻撃機隊全機発艦、敵艦隊を攻撃する。駆逐艦、護衛艦を一部救助に残し、無事な艦は本艦に続け!!針路、敵艦隊!!全速!!」

 

ヨークタウンからは直ちに攻撃機隊が発艦し敵艦隊へと向かう。

 

ヨークタウンから発艦した攻撃機隊は敵の迎撃機、対空網を受けつつも果敢に敵艦隊を攻撃し、敵の空母、戦艦に多少のダメージを与える。

 

敵艦隊との砲雷撃戦の最中、

 

「敵機、第二波接近!!」

 

「来たか‥‥」

 

「我が方の艦載機は消耗が激しい‥‥敵機は三十機以上とのことだが‥‥」

 

「司令官、此処は覚悟を決め、武人として最後まで戦いましょう」

 

ヨークタウンのバックマスター艦長はこの戦いは既に勝敗がついたモノだと分かっていたが、此処までの被害を出しながら敵に一矢報いることなく、撤退しては戦死した仲間に申し訳ない。

 

そもそも敵が近づいている中、撤退するにしてもこの状況下では撤退をするにも至難の業だ。

 

ヨークタウン以下、残存艦隊は敵艦隊との決戦に挑んだ。

 

その結果、ヨークタウンは多数のミサイルを受けて大破した。

 

幸い撃沈には至らずとも自力の航行は不可能となった。

 

「司令官、この艦の命運は尽きました。ご退艦を‥‥」

 

「‥‥近くに居る艦は?」

 

「戦艦イリノイは健在です」

 

「よし、そこに司令部を移す。総員退艦!!」

 

ドレッドノート級でも防御が高い丙型のイリノイは健在だったため、フレッチャーはイリノイを新たな旗艦とする事にした。

 

次々と退艦していく艦橋員たちに向けて、バックマスターは敬礼する。

 

どうやら、彼は艦と運命を共にするつもりのようだ。

 

「総員と言った筈だ。貴官も退艦せよ」

 

「し、しかし‥‥」

 

「これは‥命令だ」

 

「は、はい‥‥」

 

フレッチャーはバックマスターにも退艦するように命じた。

 

フレッチャー、バックマスター以下のヨークタウンの生存者たちはイリノイへと移乗。

 

ヨークタウンは鹵獲防止のため味方駆逐艦の雷撃で自沈処分となった。

 

彗星帝国戦役にて、フェーベの戦いで被弾し、同戦役を生き残った数少ない幸運艦であったヨークタウンも遂にその生涯を終える事となった。

 

フレッチャーが艦隊の指揮権を行使して、旗艦を変更後も敵艦隊と戦っている中、敵の第一波を受けて被弾したレキシントンにも退艦命令が下った。

 

「ハルバートン提督、ホフマン艦長も退艦を!!」

 

「私の判断ミスで大勢の部下を殺し、貴重な艦船を此処まで減らしたんだ。責任は取らなければならんだろう?」

 

「し、しかし‥‥」

 

「そもそも、この遠征自体がおかしかったんです!!」

 

「そうです!!提督や艦長の責任ではありません!!」

 

「ありがとう。だが、私と艦長は最後を此処で見届けねばならない」

 

ハルバートンもホフマンも艦と運命を共にする意志が強く、部下たちが説得しても艦から離れないつもりだ。

 

「ならば私も残ります!!」

 

「私も残ります!!」

 

「私も!!」

 

すると、部下たちは自分たちもハルバートンやホフマンと共に艦と運命を共にすると言い出す。

 

「それは許さん!!残るのは私と艦長だけだ!!」

 

「諸君らは生き延びてこれからの地球と軍を守ってくれ」

 

『‥‥』

 

「時間がない。早く退艦しなさい」

 

ハルバートンとホフマンが見送る中、レキシントンの生存者たちは救助に残った駆逐艦、護衛艦に分乗し、艦を退艦していく。

 

結果的にハルバートン艦隊はこの戦いで、空母四隻全てを失い、巡洋艦一隻が撃沈、五隻が大破、三隻が中破、駆逐艦、護衛艦は合計三十隻が撃沈、十数隻が大破した。

 

艦載機側の被害も甚大で特に搭乗員の犠牲が軍にとっては痛かった。

 

搭乗員以外の人員に関してもハルバートン、ホフマンを始めとして艦長クラスの人員が最後まで指揮を執っていた事から艦と運命を共にするケースが多かった。

 

 

ハルバートン艦隊がウハリンで戦っている中、バジウド星系の別方面でも作戦が実行されていた。

 

今回の遠征作戦の総司令官であるガルシアが乗艦するドレッドノート級主力戦艦 後期生産型 乙型のバアモンデ、アラピレス

 

ドレッドノート級主力戦艦 後期生産型 甲型のエスパーニャ、ペラヨ、ビトリア。

 

ドレッドノート級主力戦艦 後期生産型 丙型のヌマンシア、サラゴサ

 

巡洋艦二十一隻、駆逐艦三十隻、護衛艦十二隻。

 

一方、ヤマトを旗艦とする太陽系第三外周艦隊は元々、ヤマト以外は中、小艦隊を規模とした艦隊だったので、戦艦はヤマトのみで空母、巡洋艦はなく、それ以外の戦力は、パトロール艦六隻、護衛艦四隻、駆逐艦九隻の小規模艦隊であった。

 

この艦隊の目的地はボラー連邦派のレイネであった。

 

古代は道中、良馬からボラー連邦派も次元潜航艦を有している事を伝えられていた為、対潜哨戒を厳重に行うも、艦隊司令官のガルシアは古代の進言をそこまで本気で捉えておらず、対潜哨戒を行っているのはヤマト以下の太陽系第三外周艦隊のみであった。

 

 

ヤマト 第一艦橋

 

「いいか、此処はもう既に敵の領海内だ。どこから攻撃を仕掛けてくるか分からない。特に対潜哨戒は怠るな!!アナライザー、相原、どんな些細な反応も見逃すな!?」

 

『了解!!』

 

古代は亜空間ソナーの使用は勿論、早期警戒型コスモタイガーの他にコスモハウンドまで動かして対潜哨戒を行う。

 

無線封鎖しているので、通信長の相原も探針に反応が無いか、緊張した面持ちで周囲を警戒している。

 

ボラー連邦派はまだガルマン・ガミラスが保有している瞬間物質転送機を有している情報はないが、例のワープミサイルの技術を持っているので、ボラー連邦本国も瞬間物質転送機を手にするのは時間の問題だろうが、その技術をバジウド星系のボラー連邦派の星間国家へ共有するかは分からないが、ガルマン・ガミラス、ガルマン派の星間国家、そして地球が牙を向けて来た事を考えると、既にボラー連邦派の星間国家にも様々なボラー連邦の技術が密かに譲渡されている可能性があった。

 

古代と真田はそうした最悪の事態を想定していた。

 

一方で、艦隊旗艦であるガルシアが乗艦するバアモンデでは‥‥

 

 

バアモンデ 艦橋

 

「ふん、あんなにも艦載機をばかすかと飛ばしおって、敵に発見されたらどうするつもりなのだ?」

 

ヤマトから離着艦を繰り返すコスモタイガーや対潜哨戒を行っているコスモタイガー、コスモハウンドを見てガルシアは忌々しそうにつぶやく。

 

「ヤマト以下の第三外周艦隊はどうやら、対潜哨戒を行っている模様でして‥‥」

 

ガルシアの副官であるバスコ・ビダルフが恐る恐ると言った様子で、ガルシアにヤマトの行動を説明する。

 

「対潜哨戒だと?何をバカな?ここは星の海だぞ?ヤマトの艦長は水のある海と勘違いしているのではないか?」

 

「しかし、ボラー派の連中は既に異次元を航行する特殊艦艇を保有しているとの事です。ガルマン・ガミラス、そして我が防衛軍も少なからず異次元に潜る事の出来る潜航艦があります」

 

どうもガルシアは少将と言う地位の高い階級にいながら前線指揮官ではなく、宇宙艦船の情報に疎いようで、次元潜航艦についての情報を知らず、またその情報を聞いても軽視している様子だ。

 

「ようは潜水艦と似た艦なのだろう?それならば、駆逐艦に対処をさせればよいだけの話ではないか。それをあんなにも大袈裟に対潜哨戒など行いうとは、ヤマトの艦長はよほどの臆病者とみえるな」

 

「は、はぁ‥‥」

 

ガルシアはヤマトの行動を見て、不敵な笑みを浮かべるが、ビダルフはヤマトの行動は、決して大袈裟ではないないと思いつつあった。

 

そして、ソレは現実のものとなる。

 

自分たちが今、航行しているのは広大な星の海‥‥

 

いくらヤマトが厳重な対潜哨戒を行っていても宇宙の広大さと対潜哨戒を行っている艦が少ないと言う欠点があった。

 

 

バアモンデ 艦橋

 

「右舷、四十度より魚雷接近!!」

 

「なにっ!?」

 

バアモンデの右舷より突如、魚雷が出現した。

 

「か、回避!!」

 

「だ、ダメです!!間に合いません!!」

 

バアモンデは艦首に一発、続けて中央に二発、遅れて後部に一発の亜空間魚雷計四本が命中する。

 

また、被弾したのはバアモンデ以外に甲型のベラヨ、巡洋艦十一隻、駆逐艦九隻、護衛艦十隻が被害を受けた。

 

この亜空間魚雷は言わずもがな、ボラー連邦派の次元潜航艦が放った魚雷であった。

 

ベロラージュ所属の次元潜航艦と異なり、レイネ所属の次元潜航艦は果敢にガルシア艦隊、第三外周艦隊へ雷撃をしかけてきた。

 

「い、一体何処からこの魚雷は来た!?」

 

艦隊周辺には雷撃機も駆逐艦の姿も見えない。

 

ましてや友軍の誤射なんて考えられない。

 

ガルシアたち司令部はいきなりの雷撃に狼狽える。

 

「わ、分かりません!?突然魚雷が出現しました!!」

 

「おそらく例の次元潜航艦からの攻撃でしょう!!」

 

「くそっ、ヤマトの奴ら、一体何処を哨戒していた!?役立たずが!!」

 

乗艦が雷撃を受けた事で、ガルシアは対潜哨戒を行っていたヤマトを恨めしく毒を吐く。

 

「破損個所より火災発生!!」

 

「隔壁を閉鎖!!損害箇所の応急修理急げ!!」

 

「ダメです!!機関部に深刻なダメージが発生!!」

 

「隔壁もスプリンクラーも作動しません!!」

 

「司令官、ここは早期に艦を離れるべきかと‥‥」

 

「や、やむを得ないな‥‥」

 

このままこの艦に居ては死ぬと判断したガルシアは早々に退艦命令を出した。

 

いきなりの雷撃を旗艦がくらった事で、艦隊は一時指揮統制が不可能となりパニックとなり、陣形が大きく乱れる。

 

 

ヤマト 第一艦橋

 

「バアモンデ、被雷!!」

 

「そのほかの艦艇にも甚大な被害!!」

 

「くそっ、やはり我々だけでは完全な対潜哨戒は不可能だったか‥‥」

 

目の前で敵の次元潜航艦からの雷撃を受け、被弾する友軍艦艇を見て、古代は悔しそうに呟く。

 

「無事な艦は急ぎ救助活動を!!コスモタイガーは雷撃予想宙域へ向かい、波動爆雷による対潜攻撃を敢行せよ!!」

 

(くっ、長官から友軍を守るように言われて、いきなりこのザマとは‥‥)

 

一度の戦闘でまさかこれほどの被害を受けるとは古代も予想していなかった。

 

ヤマトも対潜攻撃に参加したかったが、古代はそれを堪え、友軍の救助を優先した。

 

コスモハウンドの亜空間ソナーがキャッチした敵の次元潜航艦の情報をコスモタイガーへと送り、情報を受け取ったコスモタイガーが波動爆雷にて敵の次元潜航艦を攻撃、その間に被害を免れた残存艦が味方艦の救助を行う。

 

古代は被害を受けつつも自走可能な艦はそのまま自走してもらいアルファ星へ引き返す指示を出し、第三外周艦隊から撤収艦の護衛の為に何隻かの駆逐艦と護衛艦を護衛につけた。

 

艦隊の戦力を減らす事になるが、ガルシアはその時脱出艇の中に居たので、古代の決断に文句を言える状況下ではなかった。

 

コスモハウンドとコスモタイガーが敵の次元潜航艦を相手にしている間にも救助作業は続けられ、ガルシア以下バアモンデの乗員たちはヤマトに収容された。

 

コスモタイガーからの激しい爆雷攻撃に敵の次元潜航艦も全滅を避けるために撤退した。

 

レイネ所属の宇宙艦隊とガルシア艦隊との第一次遭遇戦は、地球側の敗北と言っていい結果で終わった。

 

ここまでの被害を出したので、古代はガルシアに対して作戦の中止を訴えるも、ガルシアとしては味方に対して著しい被害を出して、敵に与えた損害があまりにも軽微で、なおかつ攻略目的のレイネまで辿り着けていない中での撤退は承服できず、残存艦隊はそのままレイネに向かって進撃する事となった。

 

ヤマトの第一艦橋には右側にガルシアを中心とする艦隊司令部、左側に艦長の古代、そして第二艦橋にはヤマトの航海長兼第二副長である島が、その他の乗員たちも第三艦橋や中央コンピューター室に交信室等の部署に分散移動するなど、異様な空気が漂った。

 

「なんだか、やりにくいな‥‥」

 

この第一艦橋での異様な空気に南部は居心地の悪さを覚える。

 

これまでのヤマトの航海で、彗星帝国戦役時に第十一番惑星に駐屯していた斎藤始率いる空間騎兵隊の生存者を乗せた事があったが、彼らは陸戦の専門家なので、こうして第一艦橋に留まる様な事は無かった。

 

しかし、ガルシアたちは空間騎兵と異なり、一応自分たち同様艦船勤務の軍人であり、ヤマトは現在も作戦の続行中なので、こうして席を共にしているが、今後は作戦に関して古代とガルシアの間で意見の行き違いがあるだろうと艦橋内に居た乗員の誰もが予想した。

 

「古代艦長とあの司令官が一緒の艦橋に居て上手く指揮なんて執れるのか?」

 

南部の呟きを聞き相原がこの先の行く末に不安を抱く。

 

「確かに、あまり馬が合わなさそうだもんな‥‥あの二人‥‥」

 

南部も古代とガルシアの性格から対立は不可避だと思った。

 

その後、ガルシア艦隊は敵の次元潜航艦からの攻撃は受けなかったが、敵艦載機群の攻撃を六度受けた。

 

敵艦隊はヤマト以下の艦隊に捕捉されぬよう、艦載機によるアウトレンジ戦法をとり、じわりじわりと艦隊にダメージを与えてきた。

 

艦隊は対空砲とコスモタイガーの迎撃で退けるも、数を減らしていたガルシア艦隊は更に数を減らす結果となった。

 

特に戦艦よりも戦艦より防御力が低い、駆逐艦、護衛艦などの小型艦艇が攻撃の的となった。

 

しかも敵は時間差をおいて、接近するかと思いきや離れ、離れたと思ったら接近し、アウトレンジ戦法をして、一撃離脱を行い、ガルシア艦隊へストレスと不安感を与えてくる。

 

艦隊に被害と乗員たちへ精神的なダメージ受けつつもガルシア艦隊は目的のレイネまで間もなくと言う宙域まで進出した。

 

「司令官、連日の戦闘で艦隊は半数以下となり、損傷した艦もおりますが、まもなく目的地のレイネです」

 

ビダルフがガルシアに此処まで来れた事を感傷に浸りながら報告する。

 

このまま目的地であるレイネに突入したところで、レイネを攻略できるのか疑問が残るが、味方の屍を乗り越えてやっと艦隊は目的地へ辿り着こうとしている。

 

そんな中、

 

「ん?司令官、ガルマン・ガミラス東部方面軍より暗号通信です」

 

交信室に詰めていたバアモンデの通信員が第一艦橋へ飛び込んで来た。

 

「ガルマン・ガミラスから?それで内容は?」

 

「はっ、『レイネの北、05‐130地点にて、敵機動部隊あり』‥以上です」

 

(えっ?そんな通信こっちでは受信していないけどな‥‥)

 

(機器の故障か?)

 

交信室の通信機器では、ガルマン・ガミラス東部方面軍からの暗号通信を受信したが、第一艦橋の通信機では受信していない。

 

ガルマン・ガミラスからの暗号通信に相原は首を傾げ、通信機が故障したのかと思い機器のチェックを行う。

 

その間、ガルシアはビダルフや艦隊参謀長たちを連れて作戦室へと向かう。

 

「‥‥」

 

古代はそんなガルシアたちを横目で追う。

 

(何か嫌な予感がするな‥‥)

 

ヤマトの作戦室ではガルシアたちが集まり、先ほど受信したガルマン・ガミラスからの暗号通信について意見交換がなされる。

 

「集まってもらったのはさきほど、ガルマン・ガミラスからの通信の件だが‥‥」

 

「この通信文にある機動部隊は我々がこれまで相手にしてきた機動部隊で間違いありません!!」

 

「目的地であるレイネにも地上飛行場はあります。このままレイネに接近しますと、地上と背後から挟み撃ちに遭う危険性があります」

 

「司令官、此処は動かないレイネよりも先に敵機動部隊を潰した方が、リスクは少なくなるのではないでしょうか?」

 

「左様、あの機動部隊に我々は散々煮え湯を飲まされてきました。此処は敵に一矢報いましょう」

 

「同感です。そもそもたったこれだけの艦隊数で惑星一つを陥落させるのはもはや不可能です。ならば、『敵艦隊を撃滅した』と言う実績だけでも‥‥」

 

「司令官、ご決断を!!」

 

「司令官!!」

 

艦隊司令部の幹部たちは既にレイネ突入の意義は無意味と化していると判断した。

 

「‥‥」

 

ガルシアも乗艦を失い、此処まで来るのに多くの被害を出した。

 

ヤマトは歴戦の幸運艦であるが、この先もその幸運が続くか分からない。

 

作戦成功のあかつきには名声と昇進が約束されていたが、此処までの被害を出して何の実績も出せないまま戻れば自分はただの無能で終わる。

 

それならば、ボラー連邦派の惑星を陥落させなくとも強力な敵艦隊を撃破したと言う実績だけでも得て帰ろうと判断した。

 

「古代艦長、行き先を変更する」

 

第一艦橋へ戻って来たガルシアは古代に目的地の変更を伝える。

 

「変更?それでは作戦を中止してアルファ星へ帰還しますか?」

 

行き先をレイネではなく別の所へと向かうと言われたので、古代はてっきり、アルファ星へ帰還するのかと思った。

 

「いや、我々の目的地は背後より迫る敵機動部隊だ」

 

「待ってください。敵機動部隊と渡り合うにしても、その機動部隊の詳細が分からないまま仕掛けるのは危険です。艦隊の中には損傷したままの艦もあるんです。レイネ突入が既に無意味だと言うのなら、此処はアルファ星へ帰還すべきです」

 

レイネへ突入しないのであるならば、作戦を中止してアルファ星への帰還を古代は主張した。

 

「この艦隊の指揮官は私だ!!」

 

「第三外周艦隊は私の艦隊です!!」

 

「その第三外周艦隊を含めて、今作戦の総司令官は私だぞ!?古代艦長!!そもそも兵力低下の原因は貴官が無断でアルファ星に逃げる連中に護衛なんてつけたせいではないか!?」

 

「‥‥」

 

第三外周艦隊の指揮権よりもガルシアの指揮権の方が上であり、傷ついた艦をアルファ星まで送る護衛を出し戦力低下を招いたのも事実だったことだけに古代は何も言えなかった。

 

「信号、艦隊針路330」

 

「信号、艦隊針路330」

 

ガルシアは敵機動部隊へと針路をとったが、艦隊が目指した敵機動部隊は全くの幻であった。

 

ガルマン・ガミラス東部方面軍がヤマトへ暗号通信を送った事実もなかった事が後々判明した。

 

では、この暗号通信はいつ、どこで、誰が、作成したのか?

 

後世における防衛軍戦史の謎の一つとされた。

 

歴史研究家の中にはこの暗号通信は、

 

ガルシア艦隊の司令部の通信員が自らの命可愛さに敵の存在を捏造したのではないか?

 

ヤマト以下の艦隊の接近を恐れたレイネ基地が敢えてヤマトに傍受するように発信したのではないか?

 

など、様々な仮説を唱えた。

 

いずれにせよ、ガルシア艦隊が反転した事で、今回の遠征においてヤマト以下の艦隊がレイネへ突入することはなかった。

 

また、居もしない敵機動部隊を目指した事で、無駄に時間を消費する事になったガルシアは作戦の中止を発令し、ヤマト以下の残存艦隊はアルファ星へ帰還する事となった。

 

しかし、作戦発令中は基本、無線封鎖が行われていたので、彼らがハルバートン艦隊の壊滅した事実を知ったのはアルファ星へ帰還してからの事だった。

 

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