バジウド星系のボラー連邦派の星間国家を一掃するために行われた防衛軍による遠征。
地球からの遠征艦隊がそれぞれの目的地へとアルファ星を出撃していく。
アルファ星駐屯艦隊からも今回の遠征に参戦する。
ただし、アルファ星を無防備にする訳にもいかないので、第一艦隊と第三艦隊、そして次元潜航艦隊はアルファ星の守備の為に残留し、遠征にはラップ少将が率いる第二艦隊が向かう事になった。
本来ならば、損害が出た第二艦隊こそ、アルファ星に残留するべきだろう。
アルファ星駐屯艦隊で行われた作戦会議にて、ラップはそれを問うた。
すると、ラップの第二艦隊が選ばれた理由が、
ボラー連邦派との戦闘経験がある。
第二艦隊には、まほろばが所属している。
たったそれだけの理由で、第二艦隊は遠征に参戦させられることになった。
その第二艦隊の陣容は‥‥
速力を重視したドレッドノート級主力戦艦 後期生産型 乙型のメリーランド、アイル・オブ・スカイ
ドレッドノート級改級宇宙空母の隼鷹、飛鷹
巡洋艦八隻
駆逐艦七隻
護衛艦十七隻
そして、別動隊として、まほろばを旗艦とする部隊で、その陣容は‥‥
戦艦 まほろば
パトロール艦 畝傍
改彗星帝国中型高速空母ホワイトスカウト級の龍驤 龍鳳 神鷹
改彗星帝国高速駆逐艦ホワイトパイカー級駆逐艦 五隻
護衛艦十一隻
となっている。
ラップと共に艦隊陣容を見て良馬は、
「たったこれだけの戦力で、遠征とは‥‥それこそ、かつて土星圏で迎え撃った彗星帝国の侵攻艦隊の様に、今度は我々がボラー派の返り討ちにあうぞ!!それに‥‥」
「それに我々の攻撃目標が、セヴェル要塞、セヴァトス、ペツアモの三か所か‥‥」
「更に余裕があれば、バジウド星系の奥へ侵攻を続けよとか、イカれているのか?」
宇宙海図に表示されている攻撃目標を見てラップも良馬も顔を顰める。
「ああ、どれも距離が近いから数が少ない艦隊でも対処できるだろうって、一ヶ所ずつ叩いていては敵に迎撃の態勢を整える時間を与えてしまう」
「やるとしたら、同時多重攻撃が一番なのだが‥‥」
「セヴェル要塞なら兎も角、後の二ヶ所を同時に叩くのであるならば、艦隊を更に二分しなければならないな‥‥」
ただでさえ、他の艦隊よりも数少ない艦隊を更に二分するのは全滅のリスクを孕む。
「戦力についてはラップ司令官の第一戦隊と俺の別動隊となりますね」
「それが妥当だな」
「ただ、作戦続行が困難だと判断しましたら、直ちに撤退してください」
「月村艦長もな」
「互いに連絡を取れても間に合わないか、送り狼になりますから、ECMポットとレーダー妨害衛星を設置して、互いの星の艦隊の連携を妨害する必要がありますね」
「敵共々自分たちの目と耳を塞ぐ形になるが、ただでさえ戦力に差があるのだからやむを得ないか‥‥」
こうしてラップが率いる第二艦隊もハルバートン艦隊、ガルシア艦隊と共にアルファ星駐屯基地を出撃し、それぞれの攻撃目標へと向かった。
防衛軍がバジウド星系のボラー連邦派の星間国家へそれぞれ出撃した頃、攻撃目標の一つであるボラー連邦派のとある惑星では‥‥
親ボラー連邦派惑星 ペツアモ
第二艦隊の攻撃目標である親ボラー連邦派惑星のペツアモ。
その惑星にも当然、ボラー連邦からもたらされた技術により、宇宙艦隊やコスモタイガーの様に大気圏と宇宙空間の両方を飛行できる航空機も備わっていた。
そんなペツアモの基地の上空では、航空隊が演習をしていた。
地上に居た兵士たちはある一機の航空機の動きに目を奪われていた。
「すげぇ‥‥」
「まだ納入されたばかりなんだろう?あの機体‥‥」
「ああ、試作機だって聞いたぜ」
「それをまるで自分の手足の様に扱うなんて‥‥」
兵士たちが感嘆の声を出す程の航空機は、これまでボラー連邦、そしてボラー連邦派の宇宙軍に採用されている航空機とは異なる機影をしていた。
やがて、演習が終わり、航空機が次々と滑走路へと降りてくる。
そして、他の航空機と違う機影をした例の機体も地上へ降りて来た。
「お疲れ様です!!リトビャク中尉!!」
「ふぅ~」
機体から降りたパイロットはヘルメットを脱ぎ、髪留めを外すとバサっと長い金髪が現れる。
「ご苦労様、整備頼んだわ」
「了解です!!」
その女性パイロットは颯爽と滑走路を去っていく。
整備兵も演習を見ていた兵士たちも目をハートマークにしてその女性パイロットの後ろ姿を見つめていた。
「リトビャク中尉。お疲れの所、申し訳ございません。グレゴール准将がお呼びです」
「ええ、すぐ行くわ」
女性パイロットは基地司令官に呼ばれ、司令官室へと向かう。
「リトビャク中尉です!!」
「はいりたまえ」
「失礼します!!」
部屋の中から応答があると、女性パイロットは司令官室へと入る。
司令官室では、肌の色がボラー星人特有の水色の肌をした男性軍人が待っていた。
なお、女性パイロットは地球人と同じ肌の色をしている。
「中尉、先ほどの演習‥私も此処から見たよ。すばらしいモノだった」
「恐縮です」
「それで、どうだい?新型機、『リューシン₋01』の性能は?あの機体は左右に大型の対艦砲を備えているので、扱いにくいかと思ったが?」
「いえ、まさに極上の機体です。これまで乗っていた戦闘機が鈍足に感じられるほどの性能であります」
「そうか‥‥まだ納入されて短期間ではあるが、君の経験は今後の人材育成に大いに役立つことになるだろう。後で詳細を報告書に纏め上げておいてくれ」
「承知しました」
彼女は基地司令官であるグレゴール准将に敬礼をした後、司令官室を後にした。
そして、彼女はそのまま機体が収容されている格納庫へと向かった。
「あっ、中尉」
「いつも、整備をありがとう」
「い、いえ。自分たちの仕事なので‥‥それでは自分はこれで‥‥」
「‥‥」
整備兵が去り、女性パイロット‥エヴァテリーナ・リトビャクは愛機のコックピットの座席に座る。
(ボラー連邦内でもまだ開発されたばかりの新型機‥‥)
(ボラー連邦が私の腕を認め、授けてくれた勲章‥‥)
(孤児だった私を認めてくれたボラー連邦の為に私は命を懸けて戦ってやる!!)
ベロラージュ同様、このペツアモもボラー連邦からの管理保護と言う名の支配を受け入れた親ボラー連邦派な星であり、リトビャクは試作機とは言え、新型戦闘機のテストパイロットへ自分を推してくれたボラー連邦に対して大変なる恩義を感じていた。
そんな彼女が愛機と共に実戦を迎えるのは、もう間もなくの事だった‥‥
メリーランド 艦橋
「全艦、航行陣形異常なし」
「よし、対潜哨戒は続行せよ」
ハルバートン艦隊、第三外周艦隊同様、アルファ星第二艦隊もボラー連邦派の次元潜航艦を警戒して航行していた。
特にアルファ星第二艦隊は次元潜航艦から被害を受けている経験があるので、警戒するのは当然だ。
「全艦に無線封鎖を徹底させろ。発光信号にて各艦に通達」
「了解」
攻撃目標に向かっている第二艦隊でチカ、チカ、と各艦で発光信号が飛び交った。
対潜哨戒シフトから外れているコスモタイガー隊員たちはガルマン・ガミラスからもたらされた情報から攻撃目標の確認を行っていた。
(搭乗員全員が今回の遠征に賛成している訳ではないからな‥‥)
(侵略の先兵となる訳だから、動揺するだろう‥‥)
(いくら、情報があるとはいえ、常に更新されている訳ではないからそう言った不安要素も加わる)
(搭乗員たちの精神的負担があるだろう)
ラップはメリーランドの近くを航行する空母群を見て、搭乗員たちの精神面を案ずる。
そんな中、
「っ!?レーダーに感あり!!」
「なにっ!?敵か!?」
レーダー手がレーダーに反応があった旨を報告する。
「ボラー連邦の護衛艦クラス‥恐らく哨戒艦です!!」
「要塞のピケットラインに近づいた証拠だな」
「司令官、どうしますか?」
「対潜哨戒を行っているコスモタイガー隊へ発光信号。敵の哨戒艦の位置、方位と共に攻撃命令を出せ」
「了解!!」
「敵が通報する前に潰したい。通信アンテナを最初に狙って攻撃するように伝えてくれ」
「はい」
メリーランドの通信士が発光信号にて、対潜哨戒を行っているコスモタイガーへと信号を送り、コスモタイガー隊は発光信号で知らされた宙域へと向かう。
敵の哨戒艦へ向かったコスモタイガーは高速推進ポットを使い、移動速度を上げ、哨戒艦へと接近し、強化対艦ミサイルで電撃戦を仕掛け、敵の哨戒艦を沈めた。
「コスモタイガー隊が戻ってきました」
「コスモタイガーより発光信号。『我、敵哨戒艦ヲ撃沈セリ』」
「そうか‥しかし、敵の哨戒艦が沈んだと言う事で、敵の要塞の連中も行動を取るだろう‥作戦の開始時間を少し早める。全艦へ発光信号を送れ」
「了解」
まほろば 艦橋
「旗艦、メリーランドより発光信号。『敵哨戒艦ノ撃沈二伴イ作戦時間ヲ早メル』‥以上です」
「よし、コスモタイガー隊発進準備」
メリーランドからの発光信号を受け、良馬は待機中のコスモタイガー隊に発進準備を命じた。
まほろば以外にも各空母も発艦準備を行う。
メリーランド 艦橋
「まほろば、各空母より攻撃機隊、発進準備完了の発光信号を確認」
(この発艦命令は専守防衛の命令ではない‥‥)
(この命令は‥‥侵略の命令だ‥‥)
「‥‥第一次攻撃隊発艦せよ!!」
「第一次攻撃隊発艦!!」
ラップの命令を受け、まほろば、空母群からコスモタイガー隊が発艦した。
親ボラー連邦派 セヴァトス所属 宇宙要塞セヴェル
「行方不明になった哨戒艦の状況はどうか?」
「はっ、最後の定時報告から何の応答もありません」
「最後の定時報告から四時間か‥‥」
「整備兵たちは否定していますが、何かトラブルが生じたのでしょうか?」
「‥‥」
宇宙には人類が遭遇した事の無い事態が起こる事が多々ある。
勿論、整備不良の可能性も捨てきれない。
要塞士官は行方不明になった哨戒艦の安否が気になり、
「消息不明になった哨戒艦の予定航路上を捜索する。パトロール艇の準備をしてくれ」
「はっ!!」
哨戒艦捜索の為、パトロール艇を発進させた。
「レーダー手、反応はあるのか?」
「いえ‥‥」
パトロール艇の艇長がレーダー手に哨戒艦の反応がないか訊ねるが、反応はない。
「艇長、無理ですよ。こんな広大な宇宙空間で、小型の哨戒艦一隻を見つけ出すなんて‥‥」
「遭難者の身にもなってみろ。彼らは今この瞬間も救助が来るのを信じて待っているんだぞ」
「は、はい‥‥ん?艇長」
「どうした?何か見つかったか?」
「いえ、それがレーダーの調子が‥‥」
「通信機にも異常が発生。送受信が出来ません」
「バカな、ついさっきまではちゃんと‥‥」
「ですが、まったく‥‥」
ほんの少し前までレーダーも通信機も使用出来ていたにもかかわらず、いきなり使用出来ない状態となり、艇長もレーダー手も通信士も困惑する。
「まさか、行方不明になった哨戒艦とこの現象は何か関係があるのか?とりあえず、要塞の司令部が出るまで呼び続けろ」
「りょ、了解」
艇長はこの電子機器類の異常と味方の哨戒艦が行方不明になった事と何か関係あるのかと思った。
しかし、その行方不明になった哨戒艦こそ、第二艦隊所属のコスモタイガー隊が撃沈した哨戒艦であり、パトロール艇の電子機器が使用不可能となったのは宇宙要塞セヴェルへ向かっているコスモタイガー隊は飛行しつつECMポットとレーダー妨害衛星を一定の間隔で放出していたせいであった。
まさか、自分たちが駐留している宇宙要塞へ攻撃を仕掛けようとしている者たちが向かっているとは知らず、セヴェルから発進したパトロール艇は行方不明になった哨戒艦の予定航路に到達する前に要塞へ攻撃に向かう途中のコスモタイガー隊と遭遇してしまった。
しかもレーダーは、コスモタイガー隊が放出したECMポットのせいでレーダーが使用できず、パトロール艇の乗員たちがコスモタイガー隊を視認したのは既に肉眼で確認できる距離であった。
「うわっ!?」
「な、なんだ?こいつらは!?」
コスモタイガーの機影はボラー連邦、ボラー連邦派で採用している航空機とは似ても似つかない。
パトロール艇がコスモタイガー隊を視認したように、コスモタイガー隊もこのパトロール艇を視認していた。
捜索をしていたパトロール艇と異なり、攻撃態勢をとっていたコスモタイガー隊。
パトロール艇は攻撃しようとするが一足遅れ、コスモタイガー隊からパルスレーザーを喰らう。
「ぐはっ‥‥」
「こいつらは一体何処から‥‥」
パトロール艇の乗員たちは自分たちを攻撃して来た機体が何処から来たのか分からず乗艇と運命を共にした。
要塞付近で要塞の護衛をしていたピケットラインの艦艇はいつもと変わらない日常の中、暇を持て余していた。
そんな中、宇宙の彼方から自分たちの方向に高速で接近して来るいくつもの小さな粒を見つける。
「ん?なんだ?」
その時、レーダーが使用できなくなる。
「て、敵機だ!!」
「襲撃だ!!」
「警報を鳴らせ!!」
「要塞に緊急伝だ!!」
「だ、ダメです!!レーダーと共に通信機も使用不能です!!」
ピケットラインの艦艇に乗艦している乗員たちが突然のコスモタイガー隊の襲来であたふたしている中、コスモタイガー隊は強化対艦ミサイルでピケットラインの艦艇へ攻撃を加え、強引にピケットラインをすり抜けていく。
攻撃目標の本命はピケットラインに展開する敵の艦艇ではなく、要塞そのものだ。
ピケットラインの艦艇はこの後の第二次攻撃隊か第二艦隊に任せるつもりだった。
攻撃目標であるセヴェルは比較的に大き目な小惑星をそのまま利用した感じの宇宙要塞で、彗星帝国の要塞都市や暗黒星団帝国のゴルバや大型補給基地、ボラー連邦のゼスパーゼよりも小さかった。
「見えたぞ‥‥全機突入!!」
「第二小隊と第四小隊は敵要塞の通信アンテナを攻撃せよ!!」
「了解」
練度の高いコスモタイガー隊の一糸乱れぬ動きで、攻撃目標を定め、コスモタイガー隊は要塞へ攻撃態勢をとる。
親ボラー連邦派 セヴァトス所属 宇宙要塞セヴェル 司令部
「敵の大編隊だ!!」
「ピケットラインを越えて来たのか!?」
「ガルマン・ガミラスの機体ではないぞ!!」
「ガルマンの同盟国だ!!」
「きっとこの近くに敵の機動部隊が居る筈だ!!」
「では、行方不明になった哨戒艦は奴らに!?」
「それは分からん!!今はセヴァトスとペツアモに警報救援要請を出すのが先だ!!」
要塞司令官はコスモタイガー隊の襲来で混乱する司令部を纏め上げようとしつつも近くの親ボラー連邦派の惑星へ救援要請を出すように指示する。
「おい、早く呼び出せ!!お前たちは敵が近づいているのが見えないのか!?」
「それが、通信機がいきなりの不調で、一切の通信が出来ません」
「なにっ!?」
「司令官、敵機が!!」
通信士が通信をいれようとするも通信不能となり、その間にもコスモタイガー隊が要塞の通信アンテナを破壊した。
集中爆撃を受け、要塞が揺れる。
「ぐぉっ!!」
「司令官、通信アンテナが破壊されました!!送受信不能!!」
「くそっ!!迎撃機を出せ!!」
要塞内の艦載機区画では、急ぎ迎撃機の発進準備が行われていた。
「急げ!!」
「早くしろ!!」
「このまま要塞内でやられてたまるか!!」
要塞内にある滑走路では、航空隊がコスモタイガー隊を迎撃しようと発進準備をするが、滑走路目掛けてミサイルが襲い掛かる。
「ひぃっ!?」
滑走路上に待機していた要塞の航空機にミサイルが命中し、そのままパイロットもろとも爆発。
その火は格納庫にあったミサイルや爆弾、燃料へ誘爆し、要塞内の空港もたちまち使用不可能となった。
第一次攻撃隊は攻撃目標を攻撃した後、すぐに撤退行動をとった。
第二艦隊の方では第一次攻撃隊発進に遅れること、三十分後に第二次攻撃隊を発進させた。
メリーランド 艦橋
「第二次攻撃発進完了!!」
「よし、我が艦隊も前進する!!目標はピケットラインの敵艦船だ!!」
第二次攻撃隊を発艦させた後、ラップは艦隊を前進させた。
「右前方、第一次攻撃隊」
第二次攻撃隊は帰還中の第一次攻撃隊とすれ違った。
「編隊は乱れていない。被弾機は少ないようだな」
(第一波攻撃を受けて、敵は態勢を整えているだろう)
(奇襲でなくなる第二次攻撃は第一次攻撃よりも損害が増す‥‥)
(果たして何機が無事に帰れるだろうか‥‥?)
第二次攻撃隊の隊長は、この後に待ち構える自分たちの運命に不安と恐怖が芽生えていた。
そして隊長の予測通り、第二次攻撃では敵の対空砲に晒された。
第一次攻撃で通信アンテナ、滑走路、目視できる対空砲陣地、停泊艦船への攻撃は行うも、全ての対空砲を潰すことは出来なかった。
「24番機墜ちます!!」
雷撃機タイプのコスモタイガーが被弾した後、爆散する。
(この様子では二十‥‥いや、それ以上の機が帰れないかもしれない)
第二次攻撃隊の隊長は被弾して墜ちていく味方のコスモタイガーを見つつ、口惜しさから歯を食いしばる。
第二次攻撃が行われて居る頃、攻撃を終えた第一次攻撃隊が第二艦隊の下へと還って来る。
ラップがピケットラインの敵艦船への攻撃を命じた事で、艦隊が前進し、空母も同行した事で、多少なりとも母艦へ早く帰還することが出来た。
メリーランド 艦橋
「第一次攻撃隊、帰還!!」
「よし、空母部隊はそのまま第一次攻撃隊の収容を急げ!!戦艦部隊はこのまま前進し、ピケットラインの敵艦との戦闘に入る!!」
「はっ!!」
ラップは空母と数隻の護衛艦を残して、そのまま前進する。
一方、第一次攻撃隊を収容する空母部隊では、ドレッドノート級改級宇宙空母の隼鷹、飛鷹は、主推進口の上には着艦専用口があるので、収容作業はすんなりと出来たが、改彗星帝国中型高速空母ホワイトスカウト級の龍驤 龍鳳 神鷹に関しては飛行甲板に着艦した後、エレベーターで格納庫に収容する必要がある。
「下部格納庫、第一次攻撃隊収容急げ!!」
龍驤 龍鳳 神鷹の飛行甲板で第一次攻撃隊の収容作業が慌ただしく行われる。
エレベーターで下部格納庫へと降ろされるコスモタイガー。
「奇襲だったにもかかわらず、これほどの‥‥」
機体につけられた傷を見て、整備兵は驚愕する。
「第一次攻撃隊がこれほど傷ついたのなら、第二次攻撃隊は‥‥」
「第一次攻撃隊収容完了!!」
「ただちに艦隊直掩機燃料補給作業を行え!!」
空母部隊が収容作業、直掩機の準備を行っている頃、第二艦隊はピケットラインに接触していた。
メリーランド 艦橋
「敵、ピケットラインに接触!!」
「敵、護衛艦、哨戒艦を視認!!」
「砲雷撃戦用意!!」
コスモタイガー隊の攻撃にピケットラインも混乱しており、そこへ第二艦隊が襲来したので、ピケットラインの艦船の混乱は増す。
向かってくる敵に挑むか?
それとも今、攻撃を受けている要塞へ戻るか?
ピケットラインの艦艇が決断できぬ中、第二艦隊はピケットラインの艦艇に攻撃を加える。
正面を火力に優れたメリーランド、アイル・オブ・スカイ、まほろばの戦艦群の壁で防ぎ、巡洋艦、パトロール艦の畝傍が両側面からミサイルと魚雷を放つ。
ショックカノンとミサイル、魚雷がピケットラインの艦艇へと迫り、連鎖する火球が漆黒の宇宙空間に爆炎の花を咲かせる。
数十分たらずの戦闘で要塞のピケットラインは壊滅した。
第二艦隊がピケットラインの艦艇を片付けた頃、第二次攻撃隊は帰還行動へと入った。
そんな中、良馬はラップが乗艦するメリーランドの隣へまほろばを着けると有線による交信を行った。
ECMポットによる妨害電波があるので、直接話したければ艦に赴くか、こうした有線通信でなければ出来なかった。
『ラップ司令。第二次攻撃隊の被害次第では今後の作戦に支障をきたす恐れがあります』
「それは確かにあるな‥この後は艦隊を二分するのだからな」
『どこかの作戦参謀殿も言っていましたが、作戦計画の変更を含めた柔軟な対応を検討する必要があると思います』
良馬はラップに作戦に関する意見具申をした。
この後、第二艦隊は艦隊を二分して、ボラー連邦派の惑星へと侵攻する。
このセヴェル要塞攻略はあくまでも前哨戦‥‥
その前哨戦で、艦載機を多く消耗した場合、艦隊を二分しての遠征は残った艦載機部隊に更なる消耗を強いる事になる。
この遠征前の作戦会議において、作戦参謀のフォークも、
「高度な柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する事になろうかと思います」
と言っていたので、その言葉の通りに第二次攻撃隊の帰還数によって第二艦隊は此処で遠征を取りやめるつもりだった。
仮にアルファ星へ早々に帰還してフォークがブーブー文句を言ってきたら、作戦会議にて、フォーク自身が言い放ったあの言葉を返すつもりだった。
やがて、第二次攻撃隊が帰還して来ると、その帰還数はラップと良馬が決めた作戦中止の機数よりも下回っていたので、第二艦隊の遠征は続行する事となった。
そして、二回の航空攻撃仕掛けたセヴァトス要塞であるが、通信設備や対空砲陣地の一部は破壊するも要塞の機能自体は未だに健在であることが戻って来た第二次攻撃隊からの報告で上がった。
「全戦艦に告ぐ、主砲に波動カートリッジ弾を装填」
ラップは要塞の完全破壊のため、戦艦群の主砲に波動カートリッジ弾の装填を命じた。
「波動カートリッジ弾‥‥」
「‥‥」
ラップからの命令を受けたメリーランドの艦橋は空気が凍り付く。
波動カートリッジ弾の破壊力は既に報告で上がっている。
波動砲までとはいかずともその威力はショックカノン以上の威力がある。
戦艦群の全主砲から波動カートリッジ弾を放てば、自走機能、バリア機能が無い敵の要塞相手ならば、100%命中出来るだろう。
その結果齎されるのは敵の要塞に居る将兵たちの全滅だ。
元々この遠征に賛成ではなかったが、こうして遠征に参戦する事になって事で、ラップには第二艦隊に所属する将兵たちの命を預かっており、彼らを一兵たりとも無駄死にさせる訳にはいかず、敵は確実に倒さなければならない。
「アイル・オブ・スカイとまほろばに発光信号を送れ」
「は、はい」
通信士は発光信号でラップの命令をアイル・オブ・スカイとまほろばに送る。
「艦長。メリーランドより発光信号」
「信号内容は?」
「『アイル・オブ・スカイ、まほろばハ波動カートリッジ弾ヲ主砲ヘ装填シ、敵要塞へ砲撃ヲ敢行セヨ』‥以上です」
「要塞に波動カートリッジ弾を‥‥」
「ラップ司令はやる気ですね」
「‥‥」
メリーランド同様、まほろばの艦橋でもラップからの命令に空気が凍る。
温厚なラップの人柄を考えると、これはあまりにも冷徹な命令だからだ。
(ラップ司令は、艦隊司令官として心を鬼にしてこの命令を出したのだろうな‥‥)
良馬は艦隊司令官としてラップがこの命令を下した心情を察する。
「戦術長‥主砲に波動カートリッジ弾を装填せよ」
「は、はい‥‥」
メリーランド、アイル・オブ・スカイ、まほろばの主砲に波動カートリッジ弾が装填されていく。
「は、波動カートリッジ弾‥装填完了しました‥‥」
フェリシアが緊張した面持ちで報告を入れる。
「最大射程距離で砲撃せよ」
第二次攻撃隊からの報告で敵の要塞位置は判明している。
「主砲、一番、二番、用意良し‥‥全主砲射撃用意良し」
「撃て!!」
メリーランド、アイル・オブ・スカイ、まほろばの全主砲から波動カートリッジ弾が放たれる。
三隻の戦艦から放たれた波動カートリッジ弾は要塞の各所に突き刺さる。
ボラー連邦と同一の技術で建造された要塞なので、暗黒星団帝国のゴルバや中間補給基地と異なり波動融合反応は起きなかったが、それでも波動エネルギーが詰まった砲弾を複数浴びたセヴェル要塞は爆発を繰り返し、完全に崩壊していった。
第二艦隊は前哨戦において、コスモタイガー隊に被害を受けるも攻撃目標の敵宇宙要塞の破壊に成功した。
『それではラップ司令官、まほろば以下、別動隊はペツアモに向け出撃します』
最初の攻撃目標であるセヴェル要塞を破壊した第二艦隊は艦隊を二手に分けてそれぞれの攻撃目標へと向かう。
「別動隊の武運を祈る」
まほろばは再びメリーランドへ有線通信を行い、ラップとの最後の通信を行う。
『我々も第二艦隊の武運と無事を祈ります』
通信を終え、通信ケーブルを収容した後、第二艦隊は二手に分かれて、それぞれの攻撃目標へと向かった。
親ボラー連邦派 セヴァトス宇宙艦隊司令部
「セヴェル要塞、セヴァトス要塞、現状の報告をせよ!!セヴァトス要塞、応答せよ!!セヴァトス要塞、応答せよ!!」
「どうだ?要塞との通信状況は?」
「ダメです。先ほどから呼び出しておりますが、応答がありません」
「あの要塞がある宙域は通信電波を妨害するような宇宙気象ではない筈だ」
「要塞の通信機器に何かしらのトラブルが起きたのかもしれませんが‥‥」
昨日までセヴェル要塞との通信環境には何のトラブルはなかった。
しかし、今日は朝から要塞との通信が不通となっていた。
「最後の定時交信では特にトラブルらしい報告は上がっていませんが‥‥」
「念の為だ。付近のパトロール隊を向かわせて確認させろ」
「はっ!!」
要塞を保有していた親ボラー連邦派のセヴァトス宇宙艦隊司令部は要塞付近のパトロール隊を派遣して状況確認をさせた。
定時交信が切れたセヴェル要塞へと向かったセヴァトス所属のパトロール隊はセヴェル要塞へ通信を送りながら要塞へと向かう。
しかし、要塞からの返答は相変わらずない。
「要塞からの返答はあったか?」
「いえ、ありません」
「引き続き、呼び続けろ」
「了解」
パトロール隊の隊長は嫌な予感を覚えつつ、セヴェル要塞へ向かう。
「ん?要塞の付近に何かデブリが多いな‥‥」
「隊長、レーダーの反応が‥‥」
レーダー手が隊長にレーダーの不調を訴える。
「故障か?」
「いえ、この宙域に来るまでは使えたのですが‥‥」
「隊長、通信機にもノイズが‥‥」
要塞に通信を送っていた通信士も通信機器の不調を訴える。
「レーダーに通信機もか?‥‥これはただ事ではなさそうだな」
パトロール隊の隊長が感じていた嫌な予感がますます強くなる。
「全艦に発光信号で知らせろ。全速で要塞へと向かうぞ!!」
パトロール隊は速度を上げてセヴェル要塞へと向かう。
そして、彼らは眼前に広がる光景に唖然とした。
「なっ!?」
「こ、これは‥‥!?」
「せ、セヴェル要塞が‥‥」
「通信アンテナ、ドックに滑走路‥‥停泊中の艦船が‥‥ぜ、全滅だと‥‥!?」
「い、一体何があったんだ!?」
「ま、まさか、ガルマン・ガミラスの襲撃を受けたのか!?」
小惑星を宇宙要塞に改装したセヴェル要塞であったが、元となった小惑星の各所には巨大なクレーターがいくつも出来ており、アンテナやレーダーはひしゃげり、折れて、要塞構造物は周囲の宇宙空間にデブリとして漂っている。
ボラー連邦派である自分たちの要塞が此処まで破壊されたのだから、要塞を破壊したのは当然、自分たちが所属している勢力と敵対しているガルマン・ガミラスの仕業かと思われた。
「と、兎に角、救助と調査だ!!急げ!!」
「は、はい!!」
要塞が何故このような事になったのか?
それは周辺を漂っているデブリの調査、そして生存者からの証言が重要だ。
撃ち落されたコスモタイガーの残骸、そしてコスモタイガーが放出したECMポット、レーダー妨害衛星を発見し、調査した結果、彼らが要塞を襲撃したのが、ガルマン・ガミラスではなく、地球艦隊の仕業である事を知るのはもう少し時間が必要であった。
まほろば 艦橋
(敵要塞との戦闘でコスモタイガー隊は少なからずの被害を出した)
(帰還した艦載機の数で作戦の中止か続投をラップ司令と協議したが、作戦はこうして続投することになった)
(搭乗員の生還した人数で作戦を中止するか、続けるかなんて、なんたる傲慢だ)
(己でなければ殺したいほどだ)
(ラップ司令も今の俺と同じ矜持なんだろうな‥‥)
(いや、艦隊司令であるラップ司令の方が自分自身に対する負の感情が大きいだろうな)
次の攻撃目標へ向かっている中、良馬はこの遠征に対しての不満が募る。
「副長」
「はい」
「乗員の様子はどうだ?」
良馬は新見に乗員たちの様子を訊ねる。
「‥‥正直、士気はあまり高くはありません」
「だろうな‥‥」
新見の報告を受けて、それが予想の範疇であるが、士気が低くても戦闘になれば、乗艦と自分自身の命を守る為に否が応でも戦わなければならない。
「特にコスモタイガー隊員のメンタルが心配だ」
「コスモタイガー隊員のメンタルですか?」
「ああ、軍人になった以上、殺し殺される覚悟は持たなければならない。ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国、そしてボラー連邦‥‥これまで何度も死ぬような目に遭って来たが、こうして生きている」
「ええ、そうですね」
「でも、生き残ったからには次に来る新たな恐怖と戦わなければならない。コスモタイガーは戦艦の装甲と異なり薄い‥‥一発の被弾であっという間に火だるまになるケースも多々ある」
「‥‥」
「彗星帝国との決戦時も多くのコスモタイガー隊員が散った‥‥先ほどの前哨戦で既にコスモタイガー隊には多くの被害を出した。そもそも今回の遠征は死ぬにはあまりにもバカバカしい戦いだ。そんな戦いでラップ司令も俺も大勢のコスモタイガー搭乗員を危険に晒し殺した。そして、それがまだ続くとなるとな‥‥」
「艦長の仰ることは分かります。ですが、艦長の言う通りこの遠征はまだ終わって言いません。敵を倒すよりも彼らを一人でも多く生きて帰す。それが今、艦長がなすべきことですよ」
「‥‥そうだな‥すまなかった。愚痴を聞かせてしまって」
「いえ、艦長を補佐するのが副長である私の役目ですから」
新見は微笑みながら言う。
様々な思いを抱きつつ第二艦隊はそれぞれの攻撃目標へと向かっていた。
おまけ
「‥‥なぁ」
「ん?何っスか?」
ある日、ミッドチルダ西部エルセアにあるナカジマ家にて、DVDを見ていたノーヴェが一緒に見ていたウェンディに声をかける。
「この、ブルー〇リーってやつ、ブルーが名字なのか?」
DVDはジム経営を目指しているノーヴェにスバルが『参考になるかも』と言って渡した第97管理外世界、地球のアクション映画のDVDだ。
そのDVDをノーヴェとウェンディは一緒に見ていたのだが、ノーヴェはそのアクション映画の主演俳優の名前に疑問をもったのだ。
「突然っスね。でもブルーは名字じゃなくて、スリーが名字じゃないっスか?」
ミッドチルダでは、地球で言う所の欧米みたいに名前が最初で名字があとなので、ウェンディはブ〇ースリーの後ろの部分、スリーが名字だと思った。
「でも、スリーが名字だと‥‥ワンとツーはどこに居るんだ?」
「ああ、確かに‥‥うーん‥‥」
二人が悩んでいたところに、
「ん?どうしたの?」
ディエチがやって来た。
「ああ、この〇ルースリーってやつの話で、スリーが名字だとワンやツーは何処にいるのかと思ってな」
(直訳すると青三になるから、どう考えても区切る所が違うでしょう)
「‥‥いや、その人多分名前がブルースで、名字がリーなんじゃない?」
ノーヴェとウェンディに指摘すると同時に青三と言ったディエチの脳裏にかつての姉であるトーレの姿が過った。
スカリエッティの下に居た頃、自分を含めてウーノとスカリエッティ以外、青いボディースーツを身に纏っており、尚且つ自分たちの名前が番号と言う事でディエチの脳裏にトーレの姿が過るのも当然と言えば当然であった。
しかし、ノーヴェとウェンディはディエチの指摘が聞こえなかったのか、
「ブルーファイブあたりがこのジャッキーって奴じゃねぇ?」
「なるほど、言われてみれば確かにその通りっスね」
「‥‥」
他のアクション映画に主演している俳優をブルー一家の一員ではないかと予想していた。
今回の話より登場したボラー連邦系の星間国家に所属する女性パイロット、エヴァテリーナ・リトビャクの容姿は、コードギアスに登場するモニカ・クルシェフスキーをイメージしております。
そして、そんな彼女の愛機は、機動戦士ガンダムSEED DESTINYに登場するセイバーガンダムのMA状態にコックピットを取り付け、脚部を消した機影となっています。
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