星の海へ   作:ステルス兄貴

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今回の話で登場するミリアリア・ハウはガンダムSEEDシリーズに登場するミリアリア・ハウをイメージしております。


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また、リー・コウランはサクラ大戦に登場する李・紅蘭をイメージしております。


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二百十六話 新造艦完成

 

 

士官学校を卒業し、クロノが艦長を務める新造艦の乗員に決まったフェイトはその他の乗員が集まるまでの間、待機となったが、本局の人事部からフェイト宛てに手紙が届いた。

 

「本局の人事部から?あっ、もしかして新造艦の乗員が集まったのかな?」

 

本局の人事部から手紙が来たのだから、きっと自分が乗艦する新造艦についての知らせだと判断する。

 

フェイトが人事部から届いた封筒を開けて中身を確認すると、一枚の辞令書が入っていた。

 

「やっぱり、本局からの辞令書だ。えっと‥‥」

 

封筒の中身に入っていた辞令書に目を通すと、案の定、フェイトには新造艦の乗員を命ずる旨と集合日時が書かれていたのだが、役職部分を見た時、フェイトは目を見開いた。

 

「えっ!?副長!?私が!?」

 

なんと、フェイトが就く役職が新造艦の副長であった。

 

その事実にフェイトは思わず驚愕し声を上げる。

 

「ど、どうして私が‥な、何かの間違いじゃあ‥‥そ、そうだっ!!」

 

この人事は何かの間違いではないかとフェイトは急ぎクロノに連絡をいれた。

 

『なんだい?フェイト』

 

「実はさっき人事部から辞令書がきたんだけど‥‥」

 

『ああ、やっと来たか』

 

フェイトから辞令書と聞いて、クロノは吞気そうだ。

 

「それで、その辞令書の内容なんだけど、なんで私が新造艦の副長なの!?私は士官学校を卒業したばかりの新米なのに!?」

 

『ああ、その事か‥‥』

 

フェイトから自分が何故、新造艦の副長なのか理由を聞かれてもクロノの態度は変わらない。

 

「そうだよ!!それで、なんで私が副長なの!?」

 

『レティ提督から僕たちが乗る新造艦の乗員たちは基本的に訓練校や士官学校を卒業したばかりの若手ばかりだ。それにフェイトはあの機動六課の出身で、執務官としての実績も長く、士官学校を卒業した他に、もう一つの地球での体験をしてきた。それらの実績を考慮した結果、フェイトを新造艦の副長の役職に据えた』

 

「‥‥」

 

一応、士官学校の入学前にフェイトはクロノが言うように多くの実績を残し、様々な経験をして士官学校へ入り、無事に卒業した。

 

そうなると、普通に士官学校へ入って卒業したばかりの新人よりは場数を踏んでいる。

 

それに自分が新造艦の副長になるのは既に本局の人事で決まった事なので、今更文句も言えない。

 

フェイトとしてもクロノ、チンクらと同じ職場になっているので、それをふいにしたくはない。

 

『艦に乗る多くの乗員たちも新人で、乗る艦も管理局が就航している艦とも若干異なるから、誰もが新人だ。当然、それは僕もだ‥それ故に互いに互いをカバーしながらの処女航海になる。だからフェイトも一緒に成長してもらいたい』

 

「う、うん‥‥」

 

(六課に来たばかりのティアナやスバルもこんな気持ちだったんだろうな‥‥)

 

管理局の訓練校を出たばかりのティアナとスバルは当初、ミッドチルダ南部にある陸士386部隊に所属しており、そこで二年の実績を積み、Bランク魔導師試験の試験現場をなのはが見て、新暦75年の4月に稼働する六課に二人をスカウトした。

 

機動六課の隊長陣は管理局でも有名人で固められていた事から、FW陣で所属する事になるティアナにとってはスカウトを受ける事にプレッシャーを感じていた。

 

当時のティアナと同じプレッシャーをフェイトは今まさに感じていたのだ。

 

「あっ、チンクはどんな役職になったんだろう?」

 

クロノとの通信を切った後、フェイトは同期のチンクがどんな役職になったのか気になった。

 

そこで、フェイトは次にチンクへ連絡をいれた。

 

「あっ、チンク?」

 

『フェイトか?どうした?』

 

「さっき、私の下に本局からの辞令書が届いたんだけど、チンクの所にも届いた?」

 

『ああ、ついさっき私の下にも届いたぞ』

 

「それで、中身は見た?」

 

『いや、これからだ。今まさに見ようとして居た所にフェイトから連絡が着たのだ。フェイトはもう中身を見たのか?』

 

「う、うん。それで、新造艦の乗員にする旨の通知と役職が書かれていたんだけど‥‥」

 

『ん?何か変な部署の配置だったのか?』

 

「あっ、いや‥変な部署と言うか‥‥その‥‥」

 

『ん?なんだ?何か煮え切らない様子だが?どうした?』

 

「その‥‥『副長をやれ』って‥‥」

 

『副長と言うと、艦のナンバー2だな』

 

「う、うん。それで何かの間違いじゃないかと思って、クロノに確認したけど、どうやら間違いじゃないみたいで‥‥それで、チンクがどんな役職になったのか気になって‥‥」

 

『そうか‥ならば、私も中身を見てみるか‥‥』

 

チンクは画面越しではあるが、フェイトの目の前で本局から届いた封筒を開封して、中に入っている辞令書を取り出して目を通す。

 

『‥‥』

 

「ん?どうしたの?」

 

辞令書に目を通していたチンクが何か険しい表情をする。

 

『私には戦術長をやれと書いてある』

 

「戦術長か‥‥」

 

『流石にフェイトたちが行ったもう一つの地球やボラー連邦の連中と戦うというわけではないだろうが、やはり緊張するな‥‥』

 

「そうだね‥‥あっ、そうだ、チンクには先に伝えておきたい事があって‥‥」

 

『伝えておきたい事?なんだ?』

 

チンクが戦術長と言う事で、フェイトはクロノ、はやてに聞いた次元の海の現状を話す事にした。

 

「これはクロノとはやてに聞いた話なんだけど、この頃、次元の海で犯罪行為をしている海賊やテロリストたちもどうやらMS機関を入手しているみたいなの」

 

『海賊やテロリストたちがMS機関を!?』

 

「うん。私たちが士官学校に入ったばかりの頃は、MS機関は管理局独自の技術だったのに、在校中にいつのまにかMS機関の技術情報が外部に流出したみたい‥‥多分、技術部の誰かが大金欲しさに情報を売ったんじゃないかって私もクロノもはやてもそう思っている」

 

『‥‥』

 

フェイトの話にチンクは顔を顰める。

 

『つまり、次元の海において海賊やテロリストと戦う時、そいつらも私たちと同レベルの海賊船であると言う訳だな』

 

「多分‥‥はやてはまだMS機関を搭載した海賊船と戦った事は無いって言うけど、実際にクロノの同僚は戦った事があるみたいで、連中は独自の改良をしているみたいだって‥‥」

 

『管理局が新たな力を手に入れている様に海賊やテロリストたちも進化していると言う事か‥‥』

 

「そうなるね」

 

管理局の次元航行艦だけがMS機関を保有していれば、次元の海を荒らし回っている海賊やテロリストをワンサイドゲームで検挙する事が出来たのだが、海賊やテロリストもMS機関の技術を手に入れた事で、決して管理局の優勢と言う訳ではなくなった。

 

「海賊やテロリストたちがもうMS機関を持っているとなると、MS機関の技術流出はもう止められないけど、その原因を放置する訳にもいかないから、技術部に居る人の協力で極秘に捜査もされているみたい」

 

『それは、当然の処置だろうな』

 

「チンクとしてはやっぱり不安?」

 

『不安が無いと言うと嘘になるな‥‥しかし、艦長が経験豊富なハラオウン提督という点が乗員たちの安心点だな』

 

チンクはクロノを経験豊富な提督と評するが、新造艦の建造中、クロノは艤装員長を務めていたので、ここ数年は次元の海の現場を離れている。

 

そう言う意味ではクロノも試験航海の内に次元航行艦乗りとしての勘を取りもどさなければならないので、ある意味で新人艦長と言える。

 

「そうだね。私、チンク、レイセンを始めとして、多くの乗員たちは士官学校や訓練校を卒業したばかりの新人が多いみたいだし」

 

(私とティアナが救助された時、ヤマトもまほろばも乗員は新人が中心だったみたいだけど、その乗員で、あのイスカンダルの航海をやってのけたんだから、やっぱり凄いや‥‥)

 

(そう考えると、私たちが経験する航海は、比較的に難易度は低いんだろうな‥‥)

 

フェイトは自身とティアナが遭難した時のヤマト、まほろばの航海時を思い出す。

 

あの時の防衛軍は彗星帝国との戦いでやっと復興したばかりの地球は都市機能、そして軍部で再び大きな損失を出した。

 

しかも第十一番惑星にはまだ彗星帝国の残党軍が存在している時で、地球本土の復興と軍の再建、第十一番惑星の奪還は地球としては急務であった。

 

そこで、軍部は士官学校、宇宙戦士訓練学校を卒業したばかりの宇宙戦士たちを前線の兵力の補充に当てた。

 

士官学校、宇宙戦士訓練学校で宇宙戦闘を学んだとはいえ、卒業したばかりで、宇宙空間での僅かな訓練期間でいきなり木星圏において彗星帝国の残党軍との本格的な戦闘をする事になり、次いでイスカンダルまでの長期遠征とイスカンダリウムを狙う暗黒星団帝国との戦いを経験することになった当時の新人たちと比べたら、例えMS機関を保有する海賊やテロリストと対峙する事になっても遥かにマシなレベルだとフェイトは判断する。

 

フェイトは知らないかもしれないが、ギンガも彗星帝国戦役前、士官学校を卒業したばかりの際はいきなりまほろばの通信長を務めた実績があった。

 

「でも、私たちも部署の長として一日でもはやく成長していかないと‥‥いつまでもクロノに頼りっぱなしじゃあ、ダメだよね」

 

『うむ、そうだな』

 

いきなり部署の長を務めなければならないと言うプレッシャーを感じながらもいよいよ新造艦の就役の日を迎えた。

 

「本局の制服は着慣れていたけど、色が違うだけで、なんか新鮮味を感じるな‥‥」

 

機動六課、士官学校に入る前、フェイトは本局の執務官を務めていたので、執務官を示す黒い本局の制服を着ていたが、今回は執務官ではなく次元航行艦勤務なので、デザインは変わらないが、制服の色は黒から青に変わった。

 

 

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「フェイトちゃん」

 

「ん?あっ、はやて。はやても来てくれんだ」

 

先日、士官学校の卒業式の日にはやてが祝いの席を設けてくれたことで、彼女がミッドチルダに居るのは分かっていたが、まさか今日の就役式にも来てくれるとは思ってもみなかった。

 

「リンディさんに誘われてな。クロノ君とフェイトちゃんが乗る艦がどんな艦なのかも気になったしな」

 

はやてもリンディから今回の就役式に誘われて出席していた。

 

「フェイトちゃんの本局の制服姿は見慣れていた筈やけど、青いその制服もなかなか似合っとるで」

 

「ありがとう、はやて。はやての方が先輩になるけど、今後は一緒に次元の海で頑張ろうね」

 

「せやな。それじゃあ、私は先に会場に行っとるわ」

 

「うん。今日は来てくれてありがとう」

 

流石にはやては新造艦には乗艦できないので、会場へと一足先に向かった。

 

はやてと別れた後‥‥

 

「フェイト」

 

「あっ、チンク」

 

チンクもフェイトと合流し、彼女に声をかける。

 

当然、チンクも青い本局の制服を身に纏っていた。

 

 

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「新しい制服、良く似合っているよ」

 

「あ、ありがとう。しかし、こうして新しい制服を身に纏うと士官学校とは違った新鮮味を感じるな」

 

「うん、私もそう思った」

 

チンクも新しい制服を身に纏った際、フェイトと同じ気持ちを抱いたようだ。

 

「それじゃあ、集合場所に行こうか?」

 

「うむ、そうだな」

 

フェイトとチンクは集合場所である本局の第零造船ドックへと向かった。

 

新造艦の就役式前に艦内の会議室にて、各部の長の顔合わせと今後の予定確認のミーティングが行われた。

 

「あっ、レイセン。此処に居ると言う事は‥‥」

 

会議室に入ると、レイセンが既に居た。

 

「ああ、この艦の航海長をやる事になった」

 

フェイト、チンク同様、レイセンは航海長の役職に充てられていた。

 

やがて、各部の長が集まり、艦長であるクロノも会議室へと来るとミーティングが始まった。

 

 

新造艦 会議室

 

「諸君、良く集まってくれた。僕は艦長のクロノ・ハラオウンだ。ただ、艦長と言ってもこの艦の建造期間中は艤装員長として本局に詰めていたから出撃は数年ぶりとなり、しかもMS機関搭載艦の乗艦は今回が初となる。つまりは、新人と言っても過言ではない」

 

クロノが会議室に集まった各部の長に就任の挨拶をする。

 

「ただし、この艦はMS機関搭載艦とは言え、現在管理局が就航させている次元航行艦とも異なるコンセプトで建造された艦でもある。故に皆も新人のつもりで、乗務してもらいたい」

 

同じMS機関搭載艦ではあるが、量産型のMS機関搭載艦とこの艦は外見以外に異なる点がある事を伝える。

 

「まず、外見から一目で分かる特徴的なガラス状のドーム。この中には重力望遠鏡、全方位、全天候レーダーが備わっている。これにより、探査能力、索敵能力が通常のMS機関搭載艦よりも約三倍優れている」

 

「三倍‥‥」

 

「それは凄いな‥‥」

 

「相手に気づかれる前に此方が探知できるのは有利に事を進めることが出来るな‥‥」

 

クロノの説明を聞き、感嘆の声を上げる者も居る。

 

「次にMS機関についてだが、こちらも通常のMS機関とは異なる」

 

「あ、あの‥‥」

 

クロノが新造艦に搭載されているMS機関について説明をすると、眼鏡をかけた女性士官が手を上げながら声をあげる。

 

「何かな?」

 

「あっ、私は機関長に任命されたリー・コウランと言います。この艦に来る前は技術部でMS機関の開発・研究をしていました」

 

 

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(この人の発音のイントネーションが、はやてに似ている)

 

フェイトはコウランの発音とはやての発音が似ていると感じた。

 

それはつまり、彼女の口調は日本で言う関西弁に近い発音と言う事だ。

 

(それにしてもこの人は、元技術部の所属‥しかもMS機関の開発・研究をしていた‥‥となると、外部にMS機関の情報を流した可能性もあれば、犯人と顔を合わせていた可能性もあると言う事か‥‥)

 

(あとで、マリエルさんに彼女について聞いてみる必要があるな‥‥)

 

クロノはコウランが士官学校・訓練校を卒業したばかりではなく、元技術部出身と言う事で、MS機関の情報を外部に流出させた可能性、もしくは犯人と一緒に仕事していた可能性を疑う。

 

「艦長はん、通常のMS機関と違う点とはどんな所なのでしょうか?」

 

機関長となれば、やはり自分が乗艦する機関がどういったモノなのか気になる。

 

コウランの質問内容は当然の質問内容だ。

 

「ふむ、この艦のMS機関には試験的装置ではあるが、スーパーチャージャーを備えている。このチャージャーを備える事で通常のMS機関よりも出力があり、次元転移をする時間の短縮が可能となっているのだ」

 

「出力があって、次元転移の時間が短縮‥‥」

 

「そうだ。ただ、そのチャージャーが備わっているためか通常のMS機関より扱いが若干難しいかもしれない。そう言う点では機関科には苦労をかけるかもしれない」

 

「いえ、望むところです。扱いが困難な機械であればこそ、燃えるんで」

 

(この人、絶対に機械マニアだ‥‥)

 

コウランの話を聞き、フェイトは彼女が機械マニアであると思った。

 

「先に機関長の紹介となってしまったが、次は副長。挨拶をいいだろうか?」

 

「は、はい。副長のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。知っての通り、艦長のクロノ・ハラオウンは私の義兄ですが、公私は当然分けていますので、皆さんもそのように接して下さい」

 

勤務時間帯は、自分は艦長の義妹ではなく、この艦の副長なので、副長として接してもらいたいと言う。

 

「戦術長のチンク・ナカジマだ」

 

「えっ?それだけ?」

 

次にチンクが挨拶を行うのだが、チンクは自身の役職と名前だけを名乗るだけとなっている。

 

そこで、フェイトがチンクに何か他に言う事は無いのか、小声で訊ねる。

 

「そ、それだけだ」

 

「‥‥チンク、もしかして緊張している?」

 

「す、少し‥‥」

 

どうやら緊張して何を言えば良いのか分からなかったみたいだ。

 

「マコ・レイセン‥‥航海長‥‥以上」

 

レイセンの自己紹介もチンクと同じ様な感じとなるが、彼女の場合、緊張しているとかではなく、長々と話すのが面倒という感じだ。

 

 

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「通信長を務めますミリアリア・ハウです。以前は本局司令部のオペレーターを務めていました」

 

 

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通信長のミリアリアは士官学校、訓練校の卒業生ではなく、既に本局で勤務経験のある局員であった。

 

まぁ、通信機器に関しては特に特徴的な点はなかったので、従来の通信機器を扱える局員をスカウトしたみたいだ。

 

「本艦はこの後、就役式を終えた後、試験航海に出航する。目的は僕も含め、全乗組員がこの艦に慣れてもらう為だ。本局を出航後は‥‥」

 

各部の長の自己紹介が終わり、クロノはこの後の予定を皆に説明した。

 

ミーティングが終わり、就役式までの残り少ない時間、乗員たちは造られたばかりの新造艦を物珍しい様子で見ている。

 

ただ、フェイトは先ほどの会議室でのミーティングで一つ気になる事があったので、クロノに訊ねる。

 

「ねぇ、クロノ」

 

「なんだい?」

 

「さっきの会議で医療関係者が居なかったけど、乗っていないの?」

 

そう、先ほどの会議ではフェイトの指摘通り、医務長の紹介がなかったのだ。

 

フェイトが世話になった防衛軍の艦、まほろばでは自身のデバイスを作り、魔法を教えてくれた師匠ともいえるリニスが医務長を務めていた。

 

しかし、この艦には医務長が見当たらないのだ。

 

「あぁ~その事なんだが‥‥実は医務官のスカウトが思うように進まなかったんだ」

 

「えええっー!!大丈夫なの!?それ!?」

 

医務官が居ない中での出航にフェイトは思わず声をあげる。

 

ヤマト、まほろばでの戦闘経験をしたからこそ、フェイトは医務官が不在の状態で試験航海とは言え、出航する事に不安になる。

 

「一応、医務室には最新鋭のメディカルマシーンを設置してあるし、今回は試験航海だからそこまで遠距離はいかないから大丈夫‥‥だと思う‥‥多分‥‥」

 

「多分って‥‥」

 

クロノの言葉に益々不安になるフェイト。

 

先程、クロノが言ったメディカルマシーン‥‥これはスカリエッティの技術が基になっている医療マシーンである。

 

JS事件後、管理局はスカリエッティのアジトに家宅捜索へと入り、彼の技術を根こそぎ押収し、解析した。

 

その中で、ナンバーズたちが使用し、メガーヌたち被験者が囚われていた調整ポットが医務関係者の目に留まった。

 

気密性の高いカプセルやポットの中に特殊な成分の液体を満たし負傷者を治療する方法は新たな医療の発展として、研究されており、管理局が次世代の次元航行艦を就役した時にそれらの技術も確立され、管理局の次元航行艦には搭載されている。

 

「いくら、メディカルマシーンがあっても‥‥しかもそれってあのスカリエッティの技術だし‥‥」

 

メディカルマシーンについてやはり基の技術がスカリエッティの技術と言う事でフェイトは不信感が拭えない様子だ。

 

それに最新式のメディカルマシーンとは言え、その数は限りがある。

 

「何とか次の航海までには医務官を探してみるから、今回の航海だけは目を瞑ってくれ、フェイト」

 

不満そうなフェイトの様子を見て、やはり医務官は必要な人材なのだと思ったクロノは、今回の試験航海は医務官不在のまま出航するしかないが、次の航海までには何とか医務官をスカウトする事をフェイトに伝えた。

 

その後、フェイトは就役式の前に艦内を一通り回った。

 

(やっぱり、格納庫も艦載機もないか‥‥)

 

(まっ、当然だよね。管理局はコスモタイガーみたいな艦載機を作ってないし‥‥)

 

艦内を見回っている中、フェイトはヤマト、まほろばにはあったコスモタイガーを格納する格納庫がこの新造艦には設置されていない事に気づく。

 

管理局には防衛軍が運用している宇宙空間・大気圏の両方で使用できる航空機を保有していない。

 

フェイト自身はそう言った航空機の必要性を感じているが、当然そのような代物を“空”の空戦魔導士が採用する訳がない。

 

ならばせめて宇宙空間だけでも使用できる艦載機で妥協してはどうかと思っている。

 

ミッドチルダのどんな高レベルの魔導師でも地球型の人類には変わらないので、真空の宇宙空間では宇宙服なしでは活動は出来ないし、例え宇宙服を装備しても大気圏と同じ様な動きをする事は出来ないだろう。

 

フェイト自身もそう思っている。

 

しかし、管理局は未だにそうした艦載機の開発・研究を行う気配はない。

 

ヴェルタンとヴェルニーも次元航行艦の設計は出来るが、シャトルよりも小型の航空機の設計には若干消極的だ。

 

同じ艦政部造艦科に所属しているオサリバンやパープルトンも同様だ。

 

管理局はあくまでも次元航行艦、次元巡航艦のみの運用だけで十分だと思っている。

 

だが、フェイトは防衛軍が運用しているコスモタイガーの活躍を目撃している。

 

だからこそ、艦載機の必要性を感じているのだ。

 

防衛軍、ガミラス、彗星帝国、そしてボラー連邦は強力な宇宙艦船の他にそうした航空機を保有している。

 

もっとも防衛軍は艦載機のバリエーションとそれら艦載機を搭載するための本格的な空母の建造が求められているが、もしも管理局がボラー連邦や防衛軍に対してリベンジ戦を仕掛けると言うのであるならば、管理局も艦載機や空母を保有しなければ、ボラー連邦へ行った武力制裁と同じ結果になるかもしれない。

 

尤も防衛軍に対しての武力制裁なんてまっぴらごめんだ。

 

そう思いつつ、フェイトは引き続き艦内を見回る。

 

(あっ、シャトルは搭載されていたんだ‥‥)

 

(それにしては随分と変わった形で積まれている)

 

この新造艦は、艦載機はないが、探査・救助用のシャトルは搭載されていた。

 

格納場所はヤマト、まほろばに搭載されているコスモハウンドの様に左舷側の専用格納庫が設けられており、約90度に折りたたまれたデッキに固定されていた。

 

第二の地球探査をした時のヤマトやその後に大規模改装工事を受けたまほろばの姿をフェイトが見ていたら、この独特な搭載方式に納得していただろう。

 

このシャトルの発進方式は、発進時にはスライド式のハッチが開いた後に内部のデッキが展開し、そこから垂直離陸する方式をとっていた。

 

コンパクトにシャトルを搭載する方法として管理局でも斬新な搭載方法となっていた。

 

新造艦には艦載機の他にミサイル・魚雷発射管も装備されていない。

 

そもそもミサイルも魚雷も管理局の定義にあてると質量兵器にあたるので、管理局の法律で質量兵器を禁止しているので、そう言った兵器を管理局の新造艦とは言え、ミサイル・魚雷発射管は装備されていない。

 

(さて、そろそろ就役式が始まる時間だから、会場に行こうっと‥‥)

 

やがて、就役式の時間が近づいていたので、フェイトは会場へと向かった。

 

 

時空管理局 本局 第零造船ドック

 

「本艦の艦名を『ガイア』と命名する」

 

本局にある第零造船ドックにて、いよいよ新造艦の艦名が本局統幕議長のミゼット・クローベルの口から発表される。

 

管理局が就役している次世代の次元航行艦と全く異なるコンセプトで建造された艦ながら、就役式に参加しているのはごく僅かな出席者たちで、マスコミのカメラなども入っていない。

 

折角の新造艦へ勤務になれたのに、マスコミに大々的に宣伝されない事に若干不満そうな新人も居た。

 

しかし、クロノやフェイトにしてみれば、煩わしい取材を受けなくて済むので、不満はなかった。

 

新造艦‥もとい、ガイアの乗員、ミゼットの他にガイアの就役式に参加したのはリンディやレティとうの本局の幹部とヴェルタンとヴェルニーら艦政部造艦科の局員などごく一部の局員だけとなっている。

 

(やれやれ、何で私がこんなくだらない式に出席せねばならんのだ?)

 

艦政部造艦科のトップであるオサリバンも自身の立場から当然この就役式には参加したが、その様子は渋々と言った感じであった。

 

(ふん、見た所、ミゼット閣下はお情けで参加して下さった様だが、新造艦の就役式にしては随分とショボい規模の式だな)

 

(パープルトン君が建造している艦の就役式では、こんなシケタ就役式ではなく、多くのマスコミに三提督方も参列していただく大規模な就役式にすることにしよう)

 

彼としては、本命はあくまでも現在パープルトンがコロニーで建造している方の艦なのだ。

 

(ふん、あのヴェルタンが造ったとされる艦だからどんなモノなのかと思ったが、この就役式の規模から鑑みると杞憂だったようだな)

 

(それにしもあの艦影‥ヴェルタンが設計しては、なんとも粗野で野蛮な艦影だ)

 

オサリバンは眼前に鎮座している新造艦を見て、鼻で笑う。

 

元々この新造艦の元ネタはフェイトが描いたヤマト、まほろばをヴェルタンとヴェルニーが様々な視点から設計した艦であるが、ヴェルニーも最初、フェイトが描いたヤマト、まほろばの艦影を見た時、『古臭い‥全然垢抜けない』と評していた。

 

つまり、管理局の人間には防衛軍が保有・運用している宇宙戦艦の艦影は古臭い、野蛮と言う印象があるみたいだ。

 

勿論それは互いに育った環境の違いが大きく関係しており、管理局は魔法、一部の光学兵器、防衛軍は波動エネルギーを使った光学兵器、ミサイル・魚雷・砲弾の質量兵器を主兵としているので、艦の設計コンセプトが異なるのは当然であった。

 

(管理局の艦としてのエレガントさがないな)

 

ガイアの就役はあくまでも自分にとっては前座に過ぎないと思う事でこの不満を和らげていた。

 

そして、パープルトンが建造している新造艦が完成したあかつきにはガイアの就役式よりも大規模で華やかな就役式にして違いについて、マスコミを使って世間に知らしめてやろうと意気込んでいた。

 

 

時空管理局所属 新型次元航行艦 ガイア 艦橋

 

「敬礼!!」

 

ガイアの艦橋にて、艦長のクロノが艦橋にあがると艦橋に居た一同がクロノへ敬礼する。

 

クロノも返礼すると、皆は腕を降ろす。

 

「総員に告ぐ、艦長のクロノ・ハラオウンだ。これより、ガイアは試験航海の為、出航する。総員、出航配置に着け!!」

 

「総員、出航準備!!」

 

「MS機関始動!!」

 

機関室では、機関士たちが機関操作を行うと、MS機関のシリンダーが動き出し、轟音を奏で始める。

 

「ゲートオープン」

 

「ゲートオープン」

 

「船台ロック解除」

 

「船台ロック解除‥‥」

 

「船台ロック、オールグリーン」

 

「ガイア、発進!!」

 

「ガイア、発進します」

 

就役式の出席者たちが見送る中、ガイアは本局を出航して行った。

 

「総員、手を休めず、そのまま聞いてくれ。本艦はこのまま試験航海へと向かう。僕自身、数年ぶりの出撃となる。慣れない艦に戸惑うかもしれないが、今回の航海の目的は、僕自身を含め一日でも早く、この艦を自分の手足の様に扱える事になるようになる事だ。諸君の奮闘に期待する。以上だ」

 

本局出航後、クロノは乗員たちに向けて、今回の航海の目的と訓示を行った。

 

その後、ガイアは事前に計画された試験航海の航路を辿り、その中で様々な訓練内容を行う予定となっていた。

 

ガイアが試験航海を行っている中、クロノは密かにマリエルに連絡をとった。

 

『およ?クロノ君。どうしたの?確か今、新造艦の試験航海中でしょう?』

 

「ええ、そうですが、マリエルさんに一つ聞きたい事がありまして‥‥」

 

『ん?聞きたい事?何かな?』

 

「新造艦‥ガイアの機関長についてです」

 

『ガイアの機関長と言うと‥‥ああ、コウランちゃんね』

 

「はい。技術部からの異動と言う事で、選考書類には書いていない事‥‥マリエルさんから見て、どんな人物なのかを聞きたくて‥‥」

 

やはり、コウランが技術部の出身と言う事で、どうしても疑ってしまう。

 

その為、クロノは同じ技術部に所属しているマリエルにコウランの人となりを知りたかった。

 

万が一、コウランがMS機関の情報を外部に流している局員、もしくはそう言った不正局員の協力者であった場合、ガイアの情報も海賊やテロリストへ流されるかもしれない。

 

いや、コウラン以外にもそうした不正局員がガイアに乗っていないとも言い切れない。

 

乗員の多くが士官学校、訓練校の卒業生とは言え、ミリアリアやコウランの様に他部署からの異動者も少なからずいる。

 

艦長として乗員を疑いたくはないが、管理局の機密の一つでもあるMS機関の情報が実際に外部へ‥海賊やテロリストに流れている事実がある以上、どうしても疑わざるを得ない。

 

ましてや、このガイアは完成したばかりの新造艦であり、従来の次世代型の次元航行艦と異なる技術を使用している。

 

その技術さえも海賊やテロリストに流されては管理局の信用と同時に民間船への被害が大きくなる。

 

試験航海行いつつ、クロノはガイアの乗員にそうした不正局員が居ないかを確認していくつもりであり、その最初に機関長であるコウランだった。

 

『コウランちゃんは少なくとも不正に関わるようなことはしていないよ。彼女をレティ提督に推薦したのは私だもの』

 

「えっ?マリエルさんが!?」

 

『うん。クロノ君の事だから、MS機関の外部流出について神経質になるだろうと思ってね』

 

「はい。まさにその通りです」

 

『だからこそ、その負担を少なくするために彼女をレティ提督に推薦したんだよ』

 

「お気遣いありがとうございます」

 

『コウランちゃんは、機械と人間は友達って考える子で悪事や他者を傷つける為に機械を利用することを何よりも嫌っている。現にJS事件の時、スカリエッティの所業に関しては物凄く彼に対して嫌悪感を出していたから』

 

「まぁ、フェイトもスカリエッティの事は嫌っていましたし、彼に対して好感度を抱く者は管理局には居ないんじゃないですか?」

 

『そうかもしれないけど、一応、スカリエッティの理論に関しては間違った使い方をしなければ、人類に貢献できる理論もあったのは間違いないよ。『戦闘機人理論』も医療関係‥義手や義足、先天性で障害をもって生まれて来た人に対して、健常者と同じような生活を送れる様な技術なのは確かだと思う』

 

「ええ、実際にガイアへ搭載されているメディカルマシーンの技術は元を辿ればスカリエッティの技術ですからね。ただ、フェイトはスカリエッティの技術と言う事で、嫌悪していましたけど‥‥」

 

スカリエッティの技術もテロではなく、医療方面で活用すれば、沢山の人の命を救う事が出来る事は後々に証明されていた。

 

そう思うと技術者としてはマリエルやコウランは残念に思う事があった。

 

(機関長にはすまない思いを抱いてしまったな‥‥)

 

マリエルのお墨付きをもらった事で、少なくともコウランはMS機関の情報を外部に流す不正局員ではない事が証明された。

 

ただ、表立って疑ったりはしなかったが、コウランを心の内に疑ってしまった事にクロノはすまない思いを抱く。

 

しかし、ガイア乗員全ての潔白が証明されるかMS機関情報の外部流出犯が特定されるまで、クロノの疑心は続きそうだった。

 

(はやてやマリエルさんが協力してくれているとは言え、本局側ももう少し真剣に捜査に取り組んでもらいたいな‥‥)

 

例えMS機関を搭載していたとしても数で押しつぶせば良いと思っているのか?

 

それとも、もう外部流出は止める事が出来ないので、諦めて放置しているのか?

 

クロノは自分が指揮する艦の乗員を疑うくらい神経質になっているにも関わらず、本局側はどうもMS機関の外部流出について、真剣に捜査をする気概が見えない。

 

しかし、クロノたちはこの後に起きたある事件によってMS機関の外部流出事件の発端を掴む事になった。

 




ガイアの医務室い設置されているメディカルマシーンは、ドラゴンボールの登場キャラクターであるフリーザの宇宙船に設置されているメディカルマシーンをイメージしてください。
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