星の海へ   作:ステルス兄貴

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今回ゲスト出演するオードリー・バーンはその名前の通り、機動戦士ガンダムユニコーンに登場するオードリー・バーン(ミネバ・ラオ・ザビ)です。

オードリーはミネバの偽名ですが、今作では偽名ではなく本名と言う設定となっております。


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二百十八話 新たな任務

 

 

スクライア族は、遺跡の発掘を生業とする部族であり、無限書庫の司書長であるユーノ・スクライア、ミッドチルダにある大学で考古学を教えているランティス・スピアーノも同じ部族の出身である。

 

その二人が、以前バシュタールと呼ばれる世界にある遺跡で発掘調査を行った。

 

そして、一枚の粘土板を発掘した。

 

その粘土板にはかつてバシュタールに住んでいた古代民族が書き記した文字盤であり、ランティスはその文字の解読を数年かかって解読することが出来た。

 

粘土板には水惑星アクエリアスと呼ばれる回遊性の水惑星についての事が書かれており、ランティスはその成果をユーノに報告した。

 

解読したランティス本人も当初は古代人が残した文章であり、あまりにも荒唐無稽な内容だと思ったが、古代文明には現代の文明よりも高度な技術があったとされる。

 

その最たるものが、JS事件の際、首謀者であるスカリエッティが発掘・整備した聖王のゆりかごである。

 

故に古代人が残した文章だからと言ってそれが昔の人の世迷言とは言い切れない。

 

『実はスクライア君。あの粘土板にはアクエリアス以外にもう一つの天体らしき情報も記されていたのだよ。尤も途中までしか解読できなかったがね』

 

「途中?もう一つの天体?それってどんな?」

 

途中という言葉にユーノは首を傾げるが、粘土板にもう一つ記されていた天体について気になったので、続きをランティスに訊ねる。

 

『ローレライの魔女‥‥粘土板にはそう書かれていた』

 

「ローレライの魔女‥‥しかし、魔女と書き記されているのに天体なんですか?」

 

魔女と言われてユーノが真っ先に思い浮かぶのが、身近にいる女性の魔導師‥なのは、はやて、フェイトの姿であった。

 

『水惑星であるアクエリアスが記されたモノと同じ粘土板に記載されていたので、天体だと私はそう解釈している』

 

「なるほど‥それで、そのローレライの魔女は一体どんな天体なんですか?」

 

『ふむ、それが一説しか書かれていなくてな‥‥』

 

「どんな事が書かれていたんですか?」

 

『ふむ、それによると「ローレライの魔女が歌をうたう時、生きとし生ける者の命の火は消え去るであろう」‥‥そう記されている。残念ながら、そのローレライの魔女がどんな天体物なのかは、粘土板が欠けているので、分からなかった』

 

「なんか物騒な文章ですね。しかし、文章から察するに本当に天体物なのでしょうか?」

 

ユーノは「歌をうたう」という部分に引っかかりを覚え、そのローレライの魔女が天体物なのかと言う疑問を抱く。

 

「歌をうたうと言うならば、実際に我々のように言語を話す事が出来る知的生命体‥もしくは雄叫びや鳴き声を発する生物だと思いますけど‥‥?」

 

(命の火と言うのは文字通り、命‥魂の事を指すのだろう‥‥)

 

(しかし、歌を聴いただけで死ぬってどういう事だ?)

 

(地球にはバジリスクやメデューサみたいに目が合うと石になる魔獣が創作物の中で描かれているけど、それに類似する魔法生物なのか?)

 

知り合いに地球出身者が多い事から、バジリスクやメデューサなど、目を合わせただけで石になるとされる魔獣が地球の神話や創作物の中に登場する事をユーノは知っていた。

 

(歌を鳴き声と解釈するならマンドレイクみたいなものだろうか?)

 

マンドレイクは地球に自生するナス科マンドラゴラ属の植物であり、古くから薬草として用いられたが、創作物の中では、魔術や錬金術の原料としても登場する植物でもある。

 

創作物に登場する際は根の形が人の形であり、土から引き抜くと世にも恐ろしい悲鳴を上げ、その悲鳴を聞いた人間は死んでしまう‥‥と言う設定がある。

 

しかし、これはあくまでも人が考えた創作物の中の植物であり、地球はもとより管理局が管理しているどの管理世界にこのような植物は存在していない。

 

(幾多の生物が誕生と絶滅を繰り返している様に、この記録を残した古代人が居た時は創作に登場するマンドレイクみたいな植物も存在していたのだろうか?)

 

地球で恐竜が絶滅したようにバシュタールにもかつて創作に登場するマンドレイクみたいな植物が存在していたのかもしれないと思うユーノ。

 

『確かにスクライア君の言う通りだ。しかし、生物が星の地表に住んでいるものだけとは言い切れないのではないか?』

 

「えっ?」

 

『生物の中には次元の海を住処とする生物もいるのかもしれない』

 

「ま、まさか、真空である次元の海で生きている生物なんて‥‥」

 

ユーノは真空の宇宙空間で生きられる生物なんて居る筈がないと思っていた。

 

『しかし、スクライア君。君は次元の海を全て見た訳ではないだろう?』

 

「は、はい」

 

『ならば、真空の次元の海の海でも生息することが出来る生物もいるのではないだろうか?』

 

常識にとらわれないロマンを求めるランティスにしてみれば、まだ確認されていないだけで真空の宇宙空間でも生息することが出来る生物は存在していると信じている。

 

かつてガルマン・ガミラス領に存在していた惑星ファンタム‥一見惑星のような姿をしているが、この惑星自体が一つの生き物‥コスモ生命体であったことから、ランティスの推測は当たっていた。

 

ファンタムはデスラーの怒りを買い、破壊されてしまったが、この広い宇宙にはファンタムのようなコスモ生命体がまだ存在している可能性はある。

 

今後、管理局がファンタムのようなコスモ生命体を発見できるかは不明であるが‥‥

 

しかし、今後コスモ生命体が発見されればランティスの言う真空の宇宙空間で生息することが出来る生物が見つかると言う事だ。

 

「ヴォルデモートについては既にキャロちゃんの協力で、アルザスに存在している可能性がありますが、アクエリアスやローレライの魔女についてはまだ管理局には知らせない方がいいかもしれません。虚言癖だと思われるかもしれませんし、まだ存在が確証された訳ではないので‥‥一応、無限書庫にもアクエリアスやローレライの魔女についての記述がある資料がないか調べてみます」

 

『ああ、頼むよ‥あっ、それともう一つ追加で調べてもらいたい事があるのだが‥‥』

 

「ん?なんでしょう?」

 

『JS事件の際、事件の首謀者であるスカリエッティは『聖王のゆりかご』を切り札として、管理局に決戦を挑んで来たよね?』

 

「はい」

 

『古代ベルカ時代には聖王家以外にも様々な王家が存在していた。聖王家以外で主な王家がシュトゥラ王国の国王「覇王イングヴァルト」の覇王家、ガレア王国を治めていた冥王家‥‥この他にも大小さまざま国と王家があったが、それら王家も聖王家と同じ様に『聖王のゆりかご』のような強力な兵器を有していた可能性はあると思っている』

 

「冥王家に関しては人の屍を利用した自立増殖兵器、マリアージュの存在が確認されておりますし、覇王家に関しては古流武術『覇王流』を生み出していますが?」

 

聖王のゆりかご程ではないが、冥王家、覇王家も兵器・戦う術としてなならば、それぞれの王家で確立させている。

 

しかし、マリアージュも覇王流格闘術もやはり聖王のゆりかごと比べると見劣りしてしまう。

 

戦乱の世のであった古代ベルカ時代ならば、他の国よりもより強力な兵器の開発・保有を求め。研究・開発をする筈だ。

 

それは現代においても変わらない。

 

「教授は覇王家、冥王家も聖王のゆりかごみたいな戦艦を建造していたと?」

 

『当時の時代背景を鑑みるとそうしていてもおかしくはないと思う』

 

「しかし聖王オリヴィエとの関係から考えると、あの覇王‥イングヴァルトがそんな兵器の保有を認めるでしょうか?伝承では実直な人物の様でしたし‥‥」

 

ヴィヴィオのオリジナルである聖王オリヴィエは聖王のゆりかごの生体コアとなりその生涯を閉じた。

 

自身が愛し、その愛する者の命を奪った聖王のゆりかごと同じ様な兵器をイングヴァルトが開発・保有するとは思えなかった。

 

『覇王自身はそうかもしれない。しかし、シュトゥラ王国に住んでいたのは何もイングヴァルト一人ではない。人の人数と同じだけ思惑がある。確かにスクライア君の言う通り、イングヴァルトは聖王のゆりかごのような兵器の開発を禁止していたかもしれない。しかし、戦乱の世でいつ他国から攻められるか分からない疑心暗鬼な時代に王が禁止したと言え、密かに兵器の研究・開発をしている技術者、研究者が居たとしてもおかしくはないだろう?』

 

「ええ、まぁ‥‥確かに‥‥」

 

『なので、一応調べては見てくれないか?シュトゥラ王国、ガレア王国で聖王のゆりかごのような戦艦が密かに建造されていなかったかを‥‥』

 

「分かりました‥やってみます。それでは‥‥」

 

『ああ、よろしく頼むよ』

 

ユーノとしてもアクエリアスやローレライの魔女が本当に存在しているのか内心疑問位思うところがあるが、ランティスの言う通り完全に存在していないと言う確証がない限り、存在している可能性もある。

 

そして、覇王家、冥王家が聖王家のように強力な戦艦を建造していたか?

 

その検証もすることとなった。

 

「うーん‥とは言え、ミッドにあるのかな?」

 

ミッドチルダに存在する主な遺跡群はとうに調べた。

 

しかし、スカリエッティは聖王のゆりかごを発見している。

 

ならば、ミッドチルダにはまだ自分たちスクライア族や管理局が発見していない場所がまだ存在するのかもしれない。

 

ユーノは管理世界でも随一の記録を誇る無限書庫にこれらの記述が残された記録や資料がないか確かめる事にした。

 

 

無限書庫にてユーノとランティスとの間でこのような出来事が起きている中、乗組員の訓練中に海賊の襲撃を受けた貨物船を救助したガイアでは‥‥

 

「艦長はん。解析できたで‥‥」

 

ガイアが撃沈した貨物船を襲撃した海賊船の残骸の調査を行っていたコウランがその残骸の調査が終わった旨を報告してきた。

 

「早いな‥もう終わったのかい?」

 

「正確には全ての残骸を調査した訳やあらへんけど、艦長はんが望んだ結果が出たで‥‥」

 

「‥‥」

 

コウランの言動の意味を瞬時で察したクロノ。

 

「そうか‥やはり‥‥」

 

「せや‥あの海賊船のエンジンは間違いなくMS機関や‥‥」

 

コウランが残骸全ての調査を行わずにクロノへ報告を上げたのはあの貨物船を襲撃した海賊船のエンジンがMS機関であったからだ。

 

「エンジンの残骸がMS機関と同じ部品、同じ構造をしとった‥‥」

 

「分かった。ありがとう‥通信長」

 

「はい」

 

「本局へ今回の海賊の襲撃事件を報告してくれ‥‥特に襲撃してきた海賊船のエンジンがMS機関であった事を含めてな」

 

「りょ、了解」

 

ミリアリアは本局へガイアが救難活動を行った海賊の襲撃事件の報告を本局へいれた。

 

ガイアからの報告は統括官であるリンディの下にも伝えられた。

 

「統括官、訓練航海中のガイアより通信が入りました」

 

リンディの秘書官がガイアから報告が入った事をリンディに伝える。

 

「ガイアから?内容は?」

 

「はっ、どうもガイアは訓練航海中に海賊の襲撃を受けた貨物船からの救難信号を受信、全速で現場に向かい海賊との交戦に突入‥その結果、海賊船二隻を撃沈するも残りの海賊船は逃亡‥ガイアは襲撃された貨物船へと接舷し、乗員の救助活動を行い、バン・ヤナミ医務官を保護したとの事です」

 

「そう‥海賊を取り逃がしたのは残念な事でしたが、生存者の救助を優先した事については間違ってはいないわ」

 

「はい。それと撃沈した海賊船の残骸をガイアで調査した所、その海賊船の機関にはMS機関が使用されていたとの事です」

 

「海賊船の機関がMS機関!?‥‥これまで似たような報告はあがっていたけど‥‥」

 

「ガイアが海賊船を撃沈し、残骸を調査した事でその噂が、噂ではなく事実である事が証明されましたね。しかし、海賊がMS機関を使っていたと言う事は‥‥」

 

「管理局内に裏切り者が居ると言う事ね‥‥」

 

はやて、クロノ、マリエルが予測している事態をリンディも今回の一件で知る事となった。

 

 

『そう‥ドクターバンを‥‥』

 

リンディの下にガイアからの報告が届いていたようにレティの下にもクロノ本人が今回の一件を報告していた。

 

「はい。貨物船、デュベール号の生存者は彼一人だけでした。救助後に彼から今後の事について話を伺った所、まだ勤務地も決まっていなかったと言う事で、ガイアの医務官に就任してもらえるよう交渉をした結果、本人からの了承を頂いたので、レティ提督に正式な辞令書の発行をこうして頼んでいる次第です」

 

バンとの会話の中で、クロノは彼にガイアの医務官への就任を求めており、本人もその話を了承していたので、クロノはレティに正式なバンのガイア医務官での辞令書の発行を頼んでいた。

 

『分かったわ。直ぐに用意するわね』

 

「はい。ありがとうございます」

 

それから直ぐに本局の人事部よりバンのガイア医務官就任を通達する旨の辞令書が発行された。

 

「では、ドクターバン。こちらが本局より発行された正式な辞令書となります」

 

クロノはバンに先ほど、レティへ報告を入れ、正式な辞令書を発行してもらいバンを正式にガイアの医務官として着任してもらった事を告げ、辞令書を手渡した。

 

「今後ともよろしくお願いします」

 

「いえ、こちらこそ‥ハラオウン艦長」

 

イレギュラーな出来事がありながらも不在だった医務官を確保でき、クロノとしては肩の荷が一つおりた。

 

その後、ガイアは当初の予定通りの訓練航海へと戻り、射線上の安全確保を十分にとった後、艦首に装備されているネオ・アルカンシェルの試射も行った。

 

ネオ・アルカンシェルの威力を見て、

 

「やはり、通常のアルカンシェルの威力よりも数段にあがっている‥‥」

 

「もしかしたら、防衛軍が使っていた波動砲と同等のレベルかも‥‥」

 

「だとしたら、ネオ・アルカンシェルの使用は今後、考えるべきだな」

 

もしネオ・アルカンシェルの威力が、防衛軍が使用している波動砲と同レベルの威力ならば、管理局は今後ネオ・アルカンシェルの使用に関しては十分に考慮して使わなければ、管理局は法の番人ではなく無法な侵略者に成り下がってしまう。

 

それから幾日かの日々が過ぎた。

 

その間、事故や救難信号の受信などのイレギュラーな出来事はなく、順調に訓練項目を消化して行き、そして訓練項目がほぼ終了したガイアは一時本局へ戻ろうとした時、その本局から通信が入った。

 

「艦長、本局より入電です」

 

「本局から?繋いでくれ」

 

「はい」

 

ミリアリアが通信回路を開くと、モニターにリンディの姿が映し出される。

 

『ハラオウン提督。ガイアの訓練航海は順調ですか?』

 

「はい。既に今回の航海における訓練項目は終わったので、これから本局へ帰還しようとしている所です」

 

『そんな中で悪いけど、ガイアにある任務を行ってもらいたいのだけれど‥‥』

 

「ある任務?どんな任務でしょうか?」

 

『ある事件の証人を裁判が開かれる世界へ送ってもらいたいの』

 

リンディがクロノへ‥ガイアへ頼んできた任務は裁判に出廷する予定の証人の護衛と輸送の任務であった。

 

「それは良いですけど‥‥ですが、どうしてわざわざ証人を裁判の開かれる世界まで連れて行く必要があるのですか?リモートの参加ではダメなのですか?」

 

クロノはわざわざ証人を裁判が開かれる世界へ連れて行く意味を訊ねる。

 

『‥‥実はその裁判と言うのが、ある幹部局員にも関与が疑われている裁判でリモートの参加では、フェイク動画と疑われて信憑性が怪しくなるの‥‥だから、証人本人を直接、裁判が開かれる法廷まで連れて行かないと証言としての効力がないのよ』

 

「では、転送ポートで裁判が開かれる世界へ送っては?」

 

『この裁判の事件には幹部局員の関与もあるのよ?転送ポートで裁判が開かれる世界へ送って、その世界で証人の身に何かあっては事件の真相は永遠に分からなくなってしまうわ。だからこそ、信頼できる貴方たちにこの任務をやってもらいたいの‥今、証人が居る世界も決して安全とは言い切れないわ。出来るだけ急いで証人を迎えに行って欲しいの』

 

「‥‥承知しました。それで、証人が居る世界は何処なのですか?」

 

『第四管理世界のカルナログよ。それで、裁判が開かれる世界は第二十三管理世界のルヴェラよ』

 

リンディはクロノに証人が居る世界と送る世界を伝える。

 

『そして、この子が裁判に出廷する証人よ』

 

ガイアのモニターには証人の名前、年齢、顔写真が表示される。

 

 

氏名  オードリー・バーン

 

年齢 16歳

 

 

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「承知しました。これよりガイアは第四管理世界へ向かいます」

 

『ええ、よろしくお願いね』

 

「航海長、針路変更。第四管理世界へ向かえ」

 

「了解」

 

リンディから急遽、証人の護衛・移送任務を受けたガイアは証人が居る第四管理世界へと向かった。

 

「第四管理世界と言うとドクターの前の勤務地ですね」

 

「ああ、彼にとっては訳の分からない理由で異動になったのだから、あまり良い思い出はないだろうな‥‥」

 

(キャロにとっての第六管理世界と似たようなものか‥‥)

 

キャロにとって生まれ故郷は幼い頃に追放された世界であり、彼女本人に聞いたが生まれ故郷に対して良い思い出ではない。

 

バンにとってもキャロ同様、前の職場であった第四管理世界にはきっと良い思い出はないだろう。

 

「とりあえず、乗員たちに新たな任務が入った事を知らせるか‥‥」

 

クロノはまだ任務を知らない乗員たちのために艦内放送をいれる。

 

「総員に告ぐ、艦長のハラオウンだ。先ほど本局より通信があり、本艦は急遽裁判の証人の護衛・移送を行う事になった。よって、本艦はこれより証人が待つ第四管理世界へと向かう」

 

「やれやれ、古巣へまた逆戻りか‥‥しかし、証人を乗せるだけならば、艦から降りる事は無いだろう」

 

クロノの艦内放送を聞いてバンは医務室に居れば、古巣の連中に会う事もないだろうと呟いた。

 

第四管理世界に向かっている中、本局では‥‥

 

「私だ‥‥ああ、例の証人の件だ。此処から先、やるかやらないか‥だ。この前も狩りの最中に邪魔が入って貴重な船舶を二隻も失った様ではないか」

 

本局の一室にて、幹部局員が何処かの誰かに秘匿通信をしていた。

 

「あの証人が裁判で洗いざらい吐けば、君たちも色々と不味いのではないか?‥‥不味いのは私も変わらない?ああ、そうだ。だが、頼む者は君たちの他に代わりはいくらでも居る。証人を消しても代わりの証人を立ててば私はそれで済む話ではあるが、君たちが協力をしないというのであるならば、代わり証人には九割の真実と一割の偽りを語ってもらえればそれで済む。その辺の所をよく考えると良い‥‥だが、時間はあまりないぞ。既に証人を迎えに管理局の艦が動いているからな」

 

時間が無いのは幹部局員も同様であり、第四管理世界で待っている証人が裁判へ出廷しては自身の身も破滅してしまう。

 

故に彼は証人の抹殺を誰かに依頼していた。

 

そしてその依頼された方も幹部局員と同じで証人が裁判に出てもらっては困る。

 

両者の利害は互いに一致していたので、幹部局員から依頼された何処かの誰かがその話に乗らざるを得なかったのは言うまでもなかった。

 

 

陰で陰謀が進んでいる中、第四管理世界へ向かっているガイアでは‥‥

 

「裁判で管理局の幹部局員が関係しているとなると、当然その幹部局員の息が掛かった者の妨害があるとみていいだろう」

 

会議室にてクロノはフェイト、チンクらと今回の任務について作戦会議を行っていた。

 

「これまで築いてきた地位が崩れるのだから、その幹部局員としては死に物狂いで妨害して来るだろうね」

 

「妨害どころか証人の命を狙ってくる可能性が高いな」

 

クロノとフェイトはあくまでも証人を裁判のある世界まで連れていかないようにする程度の妨害だと思っている様だが、チンクに関しては証人の息の根を止めて来る程の過激な妨害であると予測する。

 

「命を狙って‥‥って‥‥流石にそこまでは‥‥」

 

「そうか?裁判に出廷させないようにするにはそれが最善だと思うがな‥特にその証人は事件の関係者なのだろう?生きていられると今後も自分のキャリアが脅かされる。それならば、今後のリスクをなくすために証人に消えてもらった方がその幹部局員としては望む展開ではないか?」

 

「「‥‥」」

 

チンクの推測も的を射ており、クロノもフェイトも反論が出来なかった。

 

「第四管理世界では証人のみを受け取るのだな?艦長」

 

「あ、ああ。そうだ」

 

「では、第四管理世界の支部からは証人の護衛は付かないと?」

 

「統括官の話では、そうなっている」」

 

「となると、もし証人を受け取りに行った際、第四管理世界の支部から護衛が付いてきたら、ソイツは警戒した方が良い」

 

「えっ?どういう事?チンク」

 

「本来付く筈の無い護衛が証人と共にやって来るのだ。どう考えても怪しい」

 

「で、でも第四管理世界支部からの心配りって事も‥‥」

 

「第四管理世界支部でも証人が関わった裁判の事は知っているのだろう?」

 

「た、多分‥‥」

 

「幹部局員の汚職が関わっている事件の裁判‥真面目な管理局員ならば、協力するが、面倒事に巻き込まれたくない局員ならば、放置、幹部局員と癒着がある者ならば、幹部局員側に協力する‥‥どちらにせよ、証人と共に誰かついて来るのであるならば、やはり警戒した方が良い。一番なのは、これから向かう第四管理世界支部の支部長が面倒事を嫌う性格で護衛を付けない事が手っ取り早いのだかな」

 

チンクの推測を聞きクロノもフェイトも管理局の一部の者が証人の命を狙ってくるのではないかと本気で思い始めた。

 

「それで、受け取りまでの流れはどうなっているのだ?艦長」

 

「あ、ああ、それについてだが‥‥」

 

クロノはフェイトとチンクに第四管理世界での流れについて話す。

 

「証人が待つ第四管理世界支部には次元航行艦を発着させる施設がない。よってガイアは第四管理世界の民間の発着場に着陸し、車で証人を迎えに行く」

 

「車は第四管理世界支部が用意するの?」

 

「ああ。統括官から第四管理世界支部へは連絡がいっている筈だからな」

 

「‥‥」

 

クロノの説明を聞き、迎えの点についてもチンクは考え込む。

 

「ん?どうしたの?チンク」

 

「いや、迎えの時点で既に妨害は始まっていると見て良いのかもしれないと思ってな」

 

「えっ?それはどういう事?」

 

「妨害して来るのが局員‥しかも幹部クラスならば、情報は常に筒抜けだと思って見た方が良い‥‥彼方が用意した車にも変な細工をされている可能性も考慮して往路は兎も角、復路はレンタカーを借りた方が良いかもしれないし、ルートに関しても変更をした方が良い」

 

「相手の裏をかくって事か‥‥」

 

「うむ。情報に関しては相手に一日の長があるのは事実であるし、何も次元の海で妨害をして来るは限らない。第四管理世界の地上でも交通事故と言う事で証人を始末して来ると考えた方がいい」

 

「分かった。迎えに行くにしても大人数で行けばバレてしまう。危険かもしれないが少人数の方が目立たない。副長、戦術長、第四管理世界で待つ証人を迎えに行くのは君たち二人に頼みたい」

 

「了解」

 

「分かった」

 

「それと支部に向かう途中で戦術長が言うようにレンタカーを借りて来てくれ‥‥そして証人を迎えた後は、公用車からそのレンタカーへと乗り換えてガイアまで来てもらいたい。こちらは直ぐにでも出航できるように整えておく」

 

クロノもチンクの推測を支持して迎えの時点から妨害‥ひいては証人の暗殺がある事を考慮した。

 

やがてガイアは第四管理世界の次元航行船発着場へと着陸した。

 

そして、証人を迎えに行くため、フェイトとチンクが発着場の総合受付へと向かうと、

 

「失礼、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンさんとチンク・ナカジマさんですね?」

 

フェイトとチンクを呼び留める人物が居た。

 

「本局のハラオウン統括官、ガイアのハラオウン提督より連絡を受けております。自分は第四管理世界支部所属のデヴィッド・パトリオット・サリーと申します」

 

第四管理世界支部所属の管理局員であるサリーが二人に自己紹介をする。

 

「次元航行艦ガイア副長のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです」

 

「同じく戦術長のチンク・ナカジマです」

 

「よろしく」

 

「早速なんですが、証人はこちらの支部で待っているとの事ですが‥‥?」

 

「はい。お迎え用の車もこちらに用意してあります。どうぞ、こちらへ‥‥」

 

サリーは二人を発着場の駐車場に案内する。

 

「こちらの車をご使用ください」

 

そして、駐車場に停めてある管理局で使用されている公用車を勧めてきた。

 

「貴方は支部には戻らないのですか?」

 

「自分は此処でお二人を公用車まで案内せよとの任務を仰せつかっておりまして、支部には自分の車で戻りますので‥‥此処から支部までの案内はナビが行います」

 

「‥分かりました。案内ご苦労様です」

 

(やっぱり、チンクの言う通り既に此処から任務が始まっていると思った方がいいみたい)

 

(なんか、違和感を覚えるような奴だな‥‥)

 

フェイトもチンクも此処まで案内をしてきたこのサリーと言う局員に対して違和感を覚える。

 

「では、我々はこのまま支部へと向かい、証人を受け取ります」

 

「はい。任務お疲れ様です」

 

サリーに対して違和感を覚えつつも本来のターゲットである証人が居なければ彼らも仕掛けてはこないと思い、とりあえずフェイトとチンクは用意された公用車に乗り、次元航行船の発着場を後にした。

 

二人が乗った公用車を駐車場から見送ったサリーは、

 

「‥‥はい‥予定通りです。証人を迎えに来た連中は用意した公用車に乗りました。車両ナンバーは‥‥ええ、そうです。支部に向かっている途中は手出し無用で‥‥はい。あくまでもターゲットは証人なので‥‥支部から発着場までの道中で事を起こしてください」

 

何処かに連絡をいれた。

 

「‥‥チンク、尾行の類はある?」

 

運転席から公用車を運転しながらフェイトはチンクに尾行されていないかを問う。

 

「いや、怪しい車はない‥‥まだ証人を乗せていないから仕掛けてはこないだろうが、この車に発信機の類なついていないか調べた方がいいかもしれない」

 

「そうだね‥‥バルディッシュ‥この車から変な電波は出ている?」

 

『いえ。この車には発信機や盗聴器の類の電波は検出されません』

 

「連中もデバイスによる車のチェックは見越しているのかもしれないな」

 

バルディッシュがチェックするとこの公用車には発信機、盗聴器の類は仕掛けられていなかった。

 

まぁ、そんなモノを仕掛けていればデバイスでチェックした時に一発でバレるし何故そのようなモノを管理局の公用車に仕掛けるのかと疑念を抱かれてしまう。

 

「それじゃあ、チンク、復路のレンタカーの手配よろしくね」

 

「ああ、任せろ」

 

第四管理世界支部に向かう途中、フェイトはレンタカーショップに寄り、チンクにレンタカーの手配を頼み、自身はこのまま第四管理世界支部へと向かった。

 

「時空管理局所属、次元航行艦ガイア副長のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。この度、第二十三管理世界で開かれる裁判の証人の護衛と移送を命じられ、証人を迎えに来ました」

 

「それは遠路はるばるご苦労様です。証人はこちらで保護をしております」

 

受付で所属、氏名、来訪目的を告げるとフェイトは直ぐに証人が待つ部屋に案内される。

 

「こちらが、証人の‥‥」

 

「オードリー・バーンです」

 

(十六歳にしては小柄な子ね‥‥)

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。貴女を必ず第二十三管理世界まで送りとどけてみせます」

 

「はい。お願いします」

 

フェイトは証人の少女‥オードリーを見て年齢の割には小柄な子と言う印象を持った。

 

オードリーと合流した後、書類手続きを終え、フェイトは支部の地下駐車場へと向かう。

 

そこには一足遅れてレンタカーでやってきたチンクが待っていた。

 

「艦長からレンタカーショップに話をつけてもらって、スピードが出る車を用意してもらった。ついでに道中、刺客からの襲撃も予想される事を伝えてもらい、万が一破損する事態が起きたら管理局が弁償する旨も伝えてあるから、多少手荒な運転をしても構わない。今回は車よりも証人の生命を第一優先だからな」

 

チンクはフェイトにレンタカーショップでのやりとりを伝える。

 

「流石、クロノ」

 

フェイトは意気揚々とレンタカーの運転席に座り、後部座席にオードリーとチンクが乗る。

 

「あ、あの‥刺客とか生命ってどういうことですか?」

 

後部座席に乗ったオードリーは先ほどのチンクとフェイトの会話から物騒な単語が出て来たので、それについて訊ねる。

 

「ああ、その件についてだが‥‥」

 

フェイトには運転に集中してもらう為、チンクがオードリーに今後予測される事態について話す。

 

「管理局が私の命を!?」

 

「いや、正確には管理局全てではない。貴女が裁判で証言される事件に関係する幹部局員の息が掛かった一部の者たちだ」

 

「‥‥」

 

自分の命が管理局から狙われている事を知り、オードリーは顔色を悪くする。

 

「大丈夫、我々が必ず無事に目的地まで送る。それで、フェイト」

 

「ん?なに?」

 

「彼女にこの支部からの護衛は無かったのだな?」

 

「うん。無かった」

 

「となると、連中は此処か次元航行船の発着場と次元の海で仕掛けてくる可能性が高いな」

 

「次元の海なら、ガイアに分がある。急いで発着場まで行くよ」

 

「ああ、頼む」

 

フェイトはエンジンとアクセルを全開にして地下駐車場を出て次元航行船の発着場を目指した。

 

その頃、次元航行船の発着場から支部へと戻ってきたサリーは、フェイトたちが証人を発着場まで乗せる筈の公用車が支部の駐車場に置かれている事に気づく。

 

(ん?なんだ?まだ出発していないのか?)

 

(ったく、のろまが、さっさと地獄へのデッド・ドライブに出てくれよ。特別ボーナスがかかっているんだからな)

 

駐車場に停まっている公用車を見て思わず舌打ちをした後、支部の庁舎へと入り、オードリーとフェイトたちがまだ居るのかを確認した。

 

「ちょっと聞きたいが、証人はまだ居るのか?」

 

「いえ、さきほど迎えに来たハラオウンさんと発着場へ向かいましたけど?」

 

「えっ?でも、公用車はまだ駐車場に‥‥っ!?ま、まさかっ!?」

 

サリーは慌てて庁舎の受付から表に出る。

 

すると地下駐車場の出入り口から公用車ではなく別の車に乗ったフェイトの姿が見えた。

 

「し、しまった!!奴ら見抜いていやがった!!」

 

用意していた公用車ではなく別の車で出て行った事にサリーは焦る。

 

「ああ、俺だ!!連中、俺たちの裏をかいて別の車で出て行きやがった!!」

 

サリーは急ぎどこかへ連絡をいれる。

 

「車種は‥‥で、車両ナンバーは‥‥」

 

サリーは急いでフェイトたちが乗る車の車種と車両ナンバーを連絡相手に伝える。

 

「ああ、そうだ!!既に証人も車に乗っている!!遠慮せずにやっちまえ!!」

 

そして、サリーは証人暗殺を連絡相手に頼んだ。

 

チンクが予測した事態が第四管理世界の市街地で今まさに起ころうとしていたのだった‥‥

 

 

 

 

おまけ

 

ガイアが本局を出て訓練航海を行っている中、ミッドチルダでは‥‥

 

ある日の夜、クラナガンにある居酒屋にはやてとなのはの姿があった。

 

「フェイトちゃんとクロノ君は今頃、次元の海か‥‥」

 

「何事も無ければいいけど‥‥」

 

今の次元の海は決して管理局の庭先などではなく、未知の危険が蠢くフロンティアと言っても過言ではない。

 

実際に次元の海最強と思われていた管理局は、最弱と言っていい程の醜態をさらしてきた。

 

MS機関を手に入れても決して油断は出来ない。

 

「そう言えば、はやてちゃんは士官学校の卒業式には出たの?」

 

「いや、式には出なかったんやけど、その日の夜、フェイトちゃんの卒業祝いで一緒に飲んだで」

 

「私のその日、仕事が無ければな一緒に飲めたんだけどなぁ~」

 

なのはは、はやて、フェイトと一緒に飲めなかった事を残念がる。

 

「なぁ、なのはちゃん」

 

「ん?なに?」

 

「なのはちゃんは最近、ユーノ君と連絡をとったり、会ったりしとる?」

 

「えっ?ユーノ君と?うーん‥‥そう言えば最近、ユーノ君とは会ってもいないし、連絡もとってないかな?でも、どうして?」

 

「あっ、いや‥その‥‥フェイトちゃんと飲んだ日に、フェイトちゃんから異性関係について聞かれて‥‥」

 

「異性関係?」

 

「うん。誰かと付き合っていないか?なんて聞いて来たから‥‥」

 

「フェイトちゃんは誰かお付き合いしている人が居るの?」

 

「フェイトちゃん、意外と鈍感な所があるからなぁ~‥‥多分、士官学校時代に告白されてもそれが告白だと認識していなかったんとちゃうかな?」

 

「うわぁ~‥その人、可哀そう‥‥」

 

振られるよりも異性として認識されていなかった事に思わず同情してしまうなのは。

 

「それで、なのはちゃんの近しい異性って言うとユーノ君やから、ユーノ君から告白とかされたのかと思ってな」

 

「えっ?私とユーノ君が?ない、ない、ユーノ君はあくまでもお友達だよ」

 

なのはは笑いながらユーノ君との関係を否定する。

 

(うわぁ~なのはちゃんもなかなかえぐいで‥‥)

 

この場にユーノがいなかった事に思わず彼に同情してしまうはやて。

 

「そう言うはやてちゃんは?誰か居ないの?」

 

「わ、私はまだええんや‥‥今は仕事が私の恋人って感じやし‥‥」

 

なのはの問いにはやては気まずそうに視線を逸らしながら言う。

 

「まぁ、私も似たようなモノだし、なにより私にはヴィヴィオが居るから」

 

「そ、そう‥‥」

 

気になる異性が居なくとも気にしない。

 

こうして女子二人の飲み会は、色気はなくとも本人たちが楽しめばそれでいい‥‥

 

二人の飲み会は続くのであった。

 

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