星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百二十話 証人警護 そのⅡ

 

 

管理局の幹部局員が関係している事件の裁判に証人として出廷する人物の警護と移送を任されたガイア。

 

しかし、事件に関係している幹部局員は裁判に証人が出廷すれば身の破滅となる。

 

そこで、彼は自分の息がかかった局員を使うのはもとより、海賊を金で雇い証人の抹殺を企てる。

 

当初、クロノたちは幹部局員の息がかかった局員のみの妨害だけかと思いきや、次元の海へと出て民間船舶が多く航行している航路を選ぶと先日、貨物船を襲撃していた海賊船と同型の海賊船がガイアへと迫ってきた。

 

敢えて民間船舶が多く航行している航路を選んだにもかかわらず、海賊たちは民間船舶には目もくれず、管理局の次元航行艦であるガイアのみを襲撃していた。

 

海賊が民間船舶を無視してガイアを襲撃してきた事からクロノたちは自分たちを襲撃してくる海賊が幹部局員に買収されたのだと判断した。

 

クロノやフェイトとしてみたら、本来取り締まる筈の海域に金を払って殺人を依頼するなんて管理局員としてはあるまじき行為だと思い憤慨する。

 

海賊の狙いがガイア‥というよりも証人であると判断したクロノは、周囲に民間船舶が居るとかえって被害を大きくすると判断し、海賊を引き離すために空間座標も設定せずに次元跳躍を行った。

 

その結果、衝撃で座席から吹っ飛ばされる者が続出し、意思を戻した後も船酔いのような感覚に陥った。

 

しかし、追手の海賊たちはそんなガイアの事情何てお構いなしに追ってきた。

 

 

ガイア 艦橋

 

「本艦の後方に次元跳躍明けの反応を確認!!」

 

「反応は!?」

 

「六隻です!!」

 

「追って来たな、海賊どもめ‥‥全速前進!!このまま奴らを撒くぞ!!」

 

「了解、全速前進」

 

ガイアは速度を上げて追ってきた海賊たちを撒こうとする。

 

しかし、先日の貨物船襲撃事件後に判明したが、今自分たちに襲い掛かっている海賊たちの船もガイア同様、MS機関を搭載している艦であり、なおかつガイアよりも小型の艦なので、速力も旋回性も海賊たちが勝っていた。

 

「敵艦、本艦の左右にそれぞれ展開してきます!!」

 

(挟撃?‥‥しかし、この陣形は‥‥)

 

クロノはガイアとそれを囲む海賊船の陣形を見てある事に気づく。

 

「通信長、左右に展開する敵艦が発砲するタイミングを見逃すな!!」

 

「は、はい!!」

 

「航海長、合図をしたら下げ舵一杯だ!!」

 

「了解」

 

ミリアリアは海賊船の砲塔の動き、エネルギー反応を注視する。

 

やがて、海賊船の砲口にエネルギー反応が現れ、

 

「艦長、敵艦の砲口にエネルギー反応!!」

 

「よし、航海長!!下げ舵一杯!!」

 

「下げ舵一杯」

 

クロノが号令をかけレイセンが操艦レバーを思いっきり下に引く。

 

するとガイアの船体は降下する。

 

そして、ガイアが先程まで航行していた空間に海賊船のビーム砲が交差するが、当たったのはガイアではなく左右に展開していた海賊船だった。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「バカやろう!!何をやっている!?」

 

「撃つな!!」

 

(挟撃をするなら、火戦が互いを避ける様に配置するのが常識なんだよ)

 

(常に自分たちよりも弱い獲物しか相手にしてこなかったからこんな基礎中の基礎も出来ていないようだな)

 

これまで彼らは非武装の民間船舶ばかりを襲ってきて同じMS機関を搭載している武装艦との戦闘なんて経験がなかったのだろう。

 

「残り、四隻です!!」

 

ガイアは同士討ちをしたことで、戦力を減らす事に成功した。

 

「おのれぇ~管理局の犬がぁ~‥‥全艦、散開!!」

 

流石の海賊たちも二の轍を踏まない様に散開し、各自でガイアへと攻撃を仕掛けてくる。

 

「応戦!!」

 

「了解!!」

 

ガイアも海賊船に反撃を試みるが、相手が小型で快速なので、なかなかガイアのジャスティスカノンは当たらない。

 

「ええい、すばしっこい!!」

 

戦闘機人であるチンクの腕をもってしても当たらない海賊たちの船。

 

チンクは苛立ちが隠せない。

 

そんな中、

 

『こちら全天球レーダー室!!本艦前方二時方向に惑星を発見!!』

 

「よし、航海長。惑星方向へ転舵」

 

「了解、二時方向へ転舵」

 

「CICへ、発見した惑星の解析を急げ!!」

 

『了解!!』

 

「後部、煙幕弾発射!!」

 

ガイアの後部からスモーク弾は放出される。

 

スモークによって視界不良になれば再び同士討ちをする恐れがある。

 

それを悟った海賊たちはスモークを大きく迂回してガイアへ迫る航路をとる。

 

しかし、それでもガイアにとって時間を少しでも稼ぐことが出来る。

 

『こちら、CIC。惑星の解析終了!!前方の惑星は地下に洞窟のような穴がいくつもある空洞世界の模様!!』

 

艦橋のモニターには虫食いだらけの果物のような惑星が映し出される。

 

(空洞世界‥かつて管理局が観測していたテレザートの様な世界か‥‥まさかテレザートと同じ世界がこんな所にあったとは‥‥)

 

(しかし、知的生命体が生息している様子はないな‥‥)

 

モニターに映し出される星にはテレザートと異なり人工物らしきモノが一切ない。

 

惑星の様子を見てクロノは前方に映る星に生物は生存していない無人世界だと判断する。

 

(無人ならば、派手にドンパチをしたところで現住生物への被害はないし、空洞世界ならば、奴らを撒くには絶好の環境だ)

 

「航海長、このまま前方の惑星に進め!!」

 

「あの星にか?」

 

「そうだ。どうやらあの星は無人の空洞世界のようだ。あそこなら戦闘をしても現住生物には被害もないし、空洞だらけの世界ならば奴らを撒きやすい」

 

「了解!!」

 

クロノの説明を聞き、レイセンも納得した様子でガイアを前方の空洞惑星へと向かわせる。

 

ガイアが向かっている空洞惑星の光景は船室でオードリーの様子を見守っていたフェイトもモニターにて確認していた。

 

「ん?あれ?なんかこの星見た事がある様な気が‥‥」

 

フェイトはガイアが進んでいる空洞惑星に見覚えがあったが、どこで、いつ、見たのか思い出せなかった。

 

ガイアが降下した空洞惑星は星としての寿命が近いのか惑星表面にも空洞となっている惑星の中にも水はおろか草木一本も生えぬ岩だらけの惑星だった。

 

その星にはテレザートと異なり知的生命体が文明を築いた形跡もなく、この星の誕生から生命が存在していない星のようだった。

 

惑星表面には大きな陥没穴があり、その大きさはガイアが悠々と入れるほどの大きさであり、ガイアはその穴から惑星の内部へと入り込む。

 

その上方をビームが飛び交う。

 

海賊たちが放ったビームはガイアには当たらず惑星の地表へ命中する。

 

すると、惑星内部の岩盤が崩れて行く。

 

やはり、星全体が寿命を迎えようとして脆くなっているのだ。

 

海賊たちも続々とガイアを追いかけて空洞惑星の内部へと降下して来る。

 

この空洞惑星の内部は特殊な構造をしており、穴の開いたスポンジみたいで内部の岩盤は人間の内臓のような得体の知れない何かに覆われていた。

 

しかし、後続から海賊の攻撃を受けているクロノにはそれらを気にする余裕はなかった。

 

入り組んだ惑星の内部はガイアの進路を妨害するような大きな天然の石柱のようなものが上下左右網の様に張り巡らされている。

 

「艦長、少し荒っぽくなるがいいな?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

そんな惑星内部をレイセンは操縦桿と速度を調節するスロットルを操作して進んで行く。

 

こういった難しい環境下での巧みな操艦を出来るのはレイセンの天性の才能なのだろう。

 

ガイアよりも小型な海賊船はその高い機動性を活かして少しでも射線が確保できれば、ガイアに向けてビームを放ってくる。

 

外れたビームが惑星内部の岩盤に当たり、爆発を起こし激しい震動と轟音を立てる。

 

「くそっ、連中はこんな環境下でもお構いなしか!?」

 

「後部第三砲塔、砲撃!!撃て!!」

 

ガイアの後部に備わっている第三主砲が火を噴く。

 

この惑星の構造自体が脆い。

 

例え海賊船に命中しなくても岩盤に当たれば岩盤は脆くも崩れ、その瓦礫はガイアを追って来る海賊船へと降り注ぐ。

 

瓦礫で押しつぶせなくとも進路妨害等で牽制することが出来る。

 

ましてや相手はガイアよりも高速を出している。

 

そんな中で急に瓦礫が降ってきたら、たとえ致命傷でなくとも反射的に避けるために舵をきってしまう。

 

その隙をチンクは見逃すことなく追加砲撃をして一隻の海賊船に致命傷を与える。

 

機関に甚大な致命傷を負った海賊船は惑星の重力に引かれて黒煙と爆炎を出しながら惑星の地表に墜落する。

 

広い宇宙空間ならまだしもこのような限られた特殊な空間では数の優位を発揮するのは難しい。

 

ましてやそれが対武装艦相手の素人では尚更だ。

 

クロノの読みはまさに大当たりだった。

 

前を航行していた仲間の艦が被弾して爆発をしたら後続の艦は避けるのが当り前であるが、狭い空間ではその余裕がない。

 

チンクが仕留めた海賊船を回避しようと後続の海賊船は大きく左に舵をきったが、そこには巨大な岩盤の壁があり、慌てて今度は右に舵をきるが避けきれず、岩盤と船体が当たり、ガリガリと嫌な音をたてる。

 

岩盤に船体をこすり続けた海賊船は、やがて機関部付近から発火し爆散した。

 

すると爆発の衝撃を受けた大きな石柱が倒れ上層部岩が瓦礫となって地表へ降り注ぐ。

 

上から降って来る巨大な岩盤にも海賊船はビーム砲を浴びせるが、自分たちの艦よりも数十倍大きな岩盤には大して意味はなく、岩盤や大量の瓦礫で上を抑えられ、動けなくなった海賊船はやがて岩盤と瓦礫によって押し潰され爆発した。

 

「く、くそぉ~‥‥お、俺の船団が‥‥」

 

残った海賊船は一隻で、その海賊船にはリーダー格の海賊が乗っていた。

 

リーダー格の海賊は自分の部下の船が悉く沈む光景をモニターで確認すると苦虫を嚙み潰したように顔を歪める。

 

「あ、あいつら絶対に許さねぇ!!仲間のようにこの星の瓦礫で埋めてやる!!」

 

仲間の船が沈んだようにリーダーはガイアに直接ビームをあてるのではなく、ガイアの進行方向の石柱や岩盤にビームをあてて瓦礫や岩盤でガイアを押し潰す作戦に打って出る。

 

 

ガイア 艦橋

 

「くそっ、厄介な戦法で来たな‥‥」

 

岩盤や瓦礫によってガイアを攻撃してきた海賊に対してクロノも顔を歪める。

 

その時、惑星のあちこちにあった大きなフジツボのようなモノからクラゲの笠とイカの様な触手をもった宇宙生物がニュルリと出て来た。

 

「本艦の後方にアンノウン出現!!」

 

「敵の増援か!?」

 

「‥‥いえ、それが艦船反応ではありません!!」

 

「艦船ではない?」

 

「はい」

 

「数は!?」

 

「数は‥‥七‥‥十五‥‥二十三‥‥どんどん増殖しています!!更に左右から本艦の進路を塞ぐように出現してきます!!」

 

「‥‥」

 

ミリアリアの報告を受けて、クロノは神妙な顔つきとなる。

 

 

ガイア 船室

 

「あっ、あの生物は!?」

 

オードリーの居る船室にあるモニターでこの生物の姿を見たフェイトは思わず声を上げる。

 

「間違いないアレは‥‥」

 

フェイトはこの生物に見覚えがあった。

 

あれは、ティアナと共に彗星帝国の残党に襲撃され、乗艦していた次元航行艦テリオスが攻撃を受けて大破し、そこを防衛の まほろば に救助されて大マゼラン星雲にあるイスカンダルに向かう事になった。

 

その航海の途中で、アンドロメダ星雲に展開していた彗星帝国の軍勢と遭遇し、その艦隊を引き離すために今、ガイアが入り込んでいる様な空洞惑星に逃げ込んだ。

 

「この星、どこかで見たことがあると思ったけど、あの時の星に似ていたんだ!!」

 

フェイトがこの空洞惑星をどこかで見た覚えがあったのはかつて、まほろば に乗艦していた際に似たような空洞惑星を見たことがあったからだ。

 

まほろば が逃げ込んだ空洞惑星には先ほど、ガイアの後方に出現したクラゲの様なイカの様な宇宙生物が出現した。

 

「もし、あの生物が、あの時の生物と同一種なら不味いかも‥‥」

 

「えっ?」

 

フェイトの様子にベッドで横になっていたオードリーも気になっている様子だ。

 

「あの‥ハラオウンさん。あのクラゲみたいなのは、やはり生き物なんですか?」

 

「うん。しかも次元航行艦にはとても厄介な‥‥」

 

「厄介?」

 

「説明は後で‥‥急いでクロノに連絡をいれないと!!」

 

フェイトは内線電話に飛びつき、艦橋に居るクロノへ連絡をいれた。

 

 

ガイア 艦橋

 

「ん?フェイトから?どうした?フェイト。証人に何かあったのか?」

 

フェイトが自分に内線をいれてきたので、証人の身に何かあったのかと思った。

 

準備無しの次元跳躍を行い、オードリーが酔ってしまったので、クロノがそれに関係しているのかと思うのも当然の反応だ。

 

『艦長!!急いでこの星からすぐに離れて!!』

 

すると、フェイトは大声を上げながらこの惑星から離れるように言う。

 

「ん?それはどういう事だい?フェイト」

 

『今、ガイアの周辺に居るクラゲみたいな生き物は船のエネルギーを吸う生物なの!!』

 

「船のエネルギーを吸うだって!?」

 

『そう!!以前、私とティアナが、まほろば に救助された後、あのクラゲみたいな生物が居る星に今のガイアみたいに逃げ込んだんだけど、その時にあのクラゲみたいな生物は破孔から、まほろば のエネルギーを吸っていたの!!』

 

「それは間違いないんだな!?」

 

『うん!!間違いない!!』

 

「分かった!!情報ありがとう!!」

 

(テレザート周辺にあったバキューム鉱石の生物版か‥‥)

 

フェイトからあのクラゲみたいな生物の特徴を聞き、クロノはかつてテレザートの周辺に存在していたバキューム鉱石を思い出す。

 

あの鉱石も宇宙船のエネルギーを吸う特徴的な鉱石だった。

 

そして、フェイトが言った事が正しければ、今ガイア周辺を飛び交っているあのクラゲみたいな生物はクロノが思ったようにバキューム鉱石を生物に置き換えたような存在だ。

 

「航海長、急ぎこの惑星から脱出だ!!」

 

「了解」

 

レイセンは追手の海賊船も残り一隻となったので、もうこの空洞惑星で逃げ回る必要もないのだろうと思った。

 

「ただし周囲を飛び回っているあのクラゲみたいな生物には接触はするな!!」

 

「えっ?それはどういう事だ?あの生物は、あの外見で船体が傷つくほど堅いのか?それとも絶滅危惧種なのか?」

 

レイセンはクラゲみたいな外見をしているので、仮にガイアがあの生物に衝突してもガイアよりもクラゲみたいな生物の方が傷つくと思った。

 

しかし、クロノがあの生物に接触するなと言うのだから、あの生物が希少生物の可能性もあった。

 

「いや、フェイト‥副長が以前にもう一つの第97管理外世界で世話になっていた時、似た生物を見たらしい‥‥あの生物の特徴は宇宙船のエネルギーを吸うらしい」

 

「宇宙船のエネルギーを吸う!?そんな生物が存在するのか!?」

 

クロノからあのクラゲみたいな生物の特徴を聞き、レイセンも驚愕する。

 

「士官学校で宇宙船のエネルギーを吸うバキューム鉱石とか言う鉱石の存在は習ったが、その鉱石と同じような生物が居るなんて聞いたことないぞ!?」

 

「ああ、僕自身も未だに信じられないが、実際にフェイトは目撃しているんだ‥‥彼女がこの状況下でこんな嘘や冗談を言う意味があると思うか?」

 

「た、確かに‥‥」

 

仮にあのクラゲみたいな生物が、以前にフェイトが見た事のある生物と姿が似ているだけで別の種族だとしても此処まで数が多く集まっていると言う事は自分たちの縄張りに入り込んできた侵入者を撃退しようとしているのかもしれない。

 

レイセンの言う通り、あの見かけによらず身体の皮膚が堅い可能性もある。

 

追手の海賊船も残り一隻なので、どのみちこの惑星からはさっさと離脱した方が良さそうだ。

 

エンジンを吹かしてこの惑星からの脱出を試みるガイア。

 

すると、クラゲみたいな生物の一体がガイアの破孔付近にへばりつき、破孔の穴から触手を伸ばし始める。

 

すると、破孔付近からは火花が飛び散る。

 

「未確認生物が本艦の右舷に接触!!」

 

「なにっ!?」

 

「破孔部分より未確認生物が触手を伸ばして侵入!!」

 

「艦長はん!!エネルギーが急にダウンし始めたで!!」

 

コウランがエネルギーの異常低下を報告する。

 

「やはり、あの生物はフェイトの言う通り、エネルギーを吸うのか‥‥戦術長、右舷にへばりついているあのクラゲを撃ち落せるか?」

 

「うーん‥‥この角度からはで難しい」

 

クラゲみたいな生物がへばりついているのはガイアの左右に装備されている格納式小型レーザー砲塔の死角で撃ち落せない。

 

「艦長はん!!なるべく早くあのクラゲを剥がさへんとガイアのエネルギーが全部食べられてまうで!!」

 

「こうなったら、艦をロールして振り落とすぞ」

 

レイセンがレバーを操作してガイアの船体をぐるりと回転させる。

 

艦内は慣性制御がなされているので、船体がひっくりかえろうが、乗員には影響がない。

 

ガイアは防衛軍のドレッドノート級戦艦とほぼ同等の大きさを誇る次元航行艦であり、これだけの巨艦が船体を振れば、遠心力もそれなりの力となるのだが、ガイアにへばりついたクラゲみたいな生物もそれなりの大きさの為か、ガイアの船体にピッタリとついている。

 

「くそっ、まだへばりついているのか‥‥」

 

船体から離れないクラゲみたいな生物にレイセンは僅かに顔を歪める。

 

 

ガイア 船室

 

「やっぱり、あのクラゲみたいな生物はあの時見た生物と同一種か‥‥」

 

船室の明かりが点滅しているのを見て、フェイトはガイアのエネルギーがあのクラゲみたいな生物に吸われている為、船室の明かりが弱くなったり元に戻ったりしているのだと判断する。

 

「あ、あの‥‥」

 

オードリーは船室の明かりが点滅している事で不安そうな表情と声でフェイトに声をかける。

 

「ああ、あのクラゲみたいな生物の事ね。アレは宇宙船のエネルギーを餌にしている生物よ」

 

「宇宙船のエネルギーを‥‥あのクラゲみたいな生き物が食べているんですか?」

 

「ええ‥多分、口ではなく触手にエネルギーを吸う特殊な器官があってそこから宇宙船のエネルギーを吸っているんだと思う」

 

「ハラオウンさんはあの生き物を以前、どこかで見た事があるんですか?」

 

「一度だけ‥今回で二度目だけど、JS事件の事後処理が終わって、私はある研修に参加した際、彗星帝国って言う星間国家の艦に乗艦していた次元航行艦が襲撃されてね」

 

「あっ、もしかして以前、管理局が言っていたもう一つの第97管理外世界の事ですか?」

 

オードリーの父親も管理局に務めていたし、フェイトがミッドチルダへ戻ってきた際はマスコミが大々的に発表していたので、オードリーも覚えていたのだろう。

 

「そう。乗艦していた次元航行艦が襲撃を受けて、私と当時の補佐官だったランスター補佐官はもう一つ第97管理外世界‥地球の宇宙戦艦に救助されたの‥‥」

 

「宇宙戦艦‥‥」

 

管理局の次元航行艦と異なる名称の艦にオードリーは目を少し見開いく。

 

「ただ、その時、もう一つの第97管理外世界‥ううん、防衛軍はある任務の途中だったから、私とランスター補佐官はそのまま同行する形で防衛軍の宇宙戦艦に乗艦したんだけど、その時の航海でこの星みたいな空洞惑星に行く事があって‥‥」

 

「その空洞惑星にあのクラゲみたいな生き物が居たんですね」

 

「ええ‥‥今思えば、あの時の星もこの星も空洞になっているのはもしかしたらあの生物のせいなのかも‥‥」

 

「あのクラゲのせい?」

 

「エネルギーを吸うあのクラゲが、星に存在するエネルギーを吸い続け、地表はもとより地下のエネルギーも吸い尽くしているとしたら、この星が空洞になっているのも納得がいく‥‥」

 

フェイトは二度も見たあのクラゲが生息していた惑星が空洞惑星になっているのはあのクラゲのような生物が惑星のエネルギーを吸いつくして空洞化して星自体の寿命を縮ませているせいではないかと思った。

 

「世界‥星を食べる生き物‥‥ってことですか?あのクラゲたちは‥‥」

 

「二回しか見ていないけど、私はそう思っている」

 

「そんな生き物が存在しているなんて‥‥」

 

此処は管理局も把握していない未知の宇宙空間なので、宇宙船のエネルギー‥いや、惑星に存在するエネルギーを吸い、星の寿命を縮める生物が存在するなんて管理局員は勿論のこと、管理世界に住む住人が知らないのも無理はない。

 

故にオードリーが驚愕するのも当然のリアクションなのかもしれない。

 

「でも、星を滅ぼすのはなにもエネルギーを吸うあのクラゲだけじゃなくて、人も同じ事が言えると思うよ」

 

「えっ?」

 

「環境破壊や戦争で星がボロボロになっていく事態を引き起こすのは人だもの‥‥」

 

「確かに‥‥」

 

星を食いつぶすのはあのクラゲみたいな生物の他に人間も同じ事が言える。

 

フェイトの言葉にオードリーは納得する。

 

ガイアにエネルギーを吸うクラゲが取り付いたように海賊船にもあのクラゲみたいな生物はエネルギーを求めて襲い掛かる。

 

 

海賊船 艦橋

 

「お、お頭!!後ろからクラゲみたいな生き物が!!」

 

「クラゲだと!?バカを言うな!!此処は海じゃねぇんだぞ!!」

 

部下からの報告に当初は何かの見間違えかと思った海賊のリーダーであったが、

 

「な、なんだ!?こりゃ!?」

 

モニターや艦橋にへばりつくクラゲを見て見間違えではない事に気づくリーダー。

 

「ど、どうしやすか!?」

 

「此処まで追い込んだんだ‥‥こんなクラゲ如きに邪魔されてたまるか!!撃て!!撃ち殺せ!!」

 

リーダーは自分たちの船に寄って来るクラゲみたいな生物を搭載しているビーム砲で撃ち殺そうとする。

 

しかし、クラゲみたいな生物は海賊船のビーム砲をくらっても弾け飛んだり、死んだりはせずにビーム砲のエネルギーさえも自身の身体に取り込んだ。

 

「ビーム砲が効かない!?」

 

「あのクラゲ、ビームを食ったぞ!?」

 

「お、お頭!!エンジンが変です!!エネルギーがどんどん減っていきやす!!」

 

「エネルギーが!?エンジンはちゃんと整備したのか!?」

 

「も、勿論です!!」

 

「じゃあ、どこかぶっ壊れたのか!?」

 

「それが破損個所も見つかりません!!」

 

「だったら、何でエネルギーが減るんだ!?コイツのエンジンは今、管理局が自慢している例のMS機関なんだぞ!!」

 

「も、もしかしてあのクラゲがエネルギーを吸っているんじゃあ‥‥」

 

海賊の一人が船のエネルギーが減っている理由が、あのクラゲみたいな生物にあるのではないかと推察する。

 

「なに?あのクラゲが!?」

 

「へい。さきほど、あのクラゲはビーム砲を喰らった時に、クラゲは弾け飛んだり、死なずにビーム砲のビームを食っていました。エネルギーが異常に減ったのもあのクラゲが船体にへばりついた時だったんで、どう考えても原因はあのクラゲですよ!!」

 

「くそっ、クラゲどもめ、どこまでも俺の邪魔をしやがって‥‥」

 

リーダーは船体にへばりついているクラゲを忌々しそうに見る。

 

「お、お頭!!このままですと船のエネルギーが全部吸い尽くされてしまいやす!!」

 

「おい、お前ら!!今すぐに外に出てあの忌々しいクラゲどもを引き剝がしてこい!!」

 

リーダーは部下たちに船外作業を命じる。

 

『‥‥』

 

しかし、部下たちは互いに顔を見合わせるだけで、誰も船外作業へ行こうとしない。

 

「なにをしている!?さっさと行かねぇか!!」

 

いつまでも船外へ行こうとしない部下たちにリーダーは声を荒げる。

 

「で、ですが、この状況下での船外作業はあまりにも危険で‥‥」

 

「あのクラゲの化け物も居るし‥‥」

 

部下たちは恐る恐る船外作業へ出たくない理由を述べる。

 

そんな部下たちの様子にリーダーは‥‥

 

「おい、てめぇら‥‥」

 

地の底から出たような低い声と共に殺傷設定のシューターを一発、床へと撃ち込み、

 

「今すぐに外に行ってあの忌々しいクラゲどもをぶっ殺すか、俺に殺されるかだ‥‥」

 

リーダーの目つきはまさに血に飢えた肉食獣のような目をしていたので、今すぐに外へ行かなければ、問答無用で自分たちは殺される。

 

しかし、この高速で‥しかも人の身体よりも何倍もでかいクラゲがうようよいる船外に出れば命を落としかねない。

 

外に行っても死‥‥

 

口答えをしても死‥‥

 

海賊たちはどちらかを選んでも地獄しかない。

 

そんな中、

 

「お、お頭!!本船の頭上に!!お頭!!」

 

「うるせぇ!!なんだ!?」

 

オペレーターが悲鳴のような大声をだしてリーダーに何かを伝えようとする。

 

リーダーはデバイスを構えたままオペレーターの方へ振り向くと、海賊船の頭上からクラゲのような生物の中でも特大サイズのモノが降下してきた。

 

「か、回避~!!あんなモンに抱き着かれでもしたら押しつぶされるぞ!!」

 

しかし、海賊船はガイアよりも多くのクラゲのような生物に吸着され、エネルギーを吸われているので、自慢の俊敏性を活かしきれなかった。

 

「だ、ダメです!!エネルギーが少なくて動きが‥‥う、うわぁぁぁぁぁぁぁー!!」

 

「こんな‥‥こんなところで‥‥」

 

リーダーを含め、海賊たちが最後に見たのは自分たちの船を丸のみにするかのように覆いかぶさるクラゲのような生物の姿だった。

 

海賊船は特大のクラゲのような生物に吸着され押しつぶされると爆発し、特大のクラゲのような生物や海賊船に吸着していた多数のクラゲのような生物も一緒に吹き飛んだ。

 

 

ガイア 艦橋

 

「‥‥海賊船、未確認生物と接触‥‥爆沈したもよう」

 

ミリアリアが海賊船の消失を報告するが、艦橋内の空気は沈んでいた。

 

一歩間違えれば自分たちも海賊と同じ末路を辿っていたかもしれないからだ。

 

「航海長、急ぎこの惑星から脱出だ」

 

「りょ、了解」

 

追手の海賊船を全て潰したが、今度はクラゲのような生物から追われる事になり、ガイアは急いでこの空洞惑星から脱出する。

 

惑星の重力圏から離脱してもクラゲのような生物はガイアの船体に吸着している。

 

「ギリギリの所だったが、いい加減あのクラゲを外さないとエネルギーを全て吸い尽くされてしまうぞ」

 

「分かっている。周囲に追手やあの未確認生物の反応は?」

 

「ありません」

 

「よし、艦を一時止めろ。武装隊は第一級戦闘装備でガイアの船体に取り付いている未確認生物を取り外せ。応急班も船体の修理を急げ」

 

クロノは周囲の安全確保をした後、武装隊にクラゲのような生物の処分と応急班には艦の修理を命じた。

 

バリアジャケットの上に宇宙服を着こんだ武装隊は殺傷設定のシューターやディバインバスターでガイアの船体に吸着したクラゲのような生物を攻撃する。

 

すると、海賊船のビーム砲を食ったようにシューターやディバインバスターさえも自身の身体に取り込んでいく。

 

「こいつ、殺傷設定のシューターやディバインバスターまでも食うのか!?」

 

「なんて奴だ‥‥」

 

「しかし、これでは取り外せないぞ‥‥」

 

武装隊員たちが対処に困っていると、

 

「どいて‥‥」

 

『えっ?』

 

声がしたと思い武装隊員たちが振り返ると、そこには宇宙服を着たフェイトおり、手にはライオットフォームのバルディッシュを大きく振り上げていた。

 

武装隊員たちが慌てて射線上から退避すると、フェイトは思いっきりバルディッシュをクラゲのような生物に叩きつけた。

 

ライオットフォームの魔力刃がクラゲのような生物の身体に接触すると、バチバチと激しいスパークが起きる。

 

クラゲのような生物はバルディッシュの魔力刃さえも取り込もうとしていた。

 

「バルディッシュ!!カートリッジロード!!」

 

『イエッサー!!』

 

フェイトはカートリッジを消費して更に魔力を上げる。

 

(こういう時、ヴィータのグラーフ・アイゼンなら簡単に取り外せたんだろうな‥‥)

 

「ふんぬっ!!」

 

知り合いの騎士のデバイスの姿を思い浮かべながらフェイトはバルディッシュを握る手に力を籠める。

 

「どりゃあ~!!」

 

大声と共にバルディッシュを振りかぶると、クラゲのような生物はガイアの船体から引き剥がすことが出来た。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥ハァ‥‥と、取れた~‥‥」

 

息を切らしながら、クラゲのような生物が船体から引き剝がされた事を確認出来たフェイト。

 

「か、艦長‥未確認生物を引き剥がす事に成功しました」

 

そして、現状をクロノへ報告する。

 

「分かった。お疲れ様」

 

クラゲのような生物を引き剝がす事に成功したので、フェイトたちは艦内へと撤収した。

 

その後、応急班が修理を行い、機関部がエネルギーの充填作業が行われている中、クロノは航海科やコウランを除く部署の長たちと共に航路と現在位置の特定と記録を行った。

 

例の生物の記録と共に‥‥

 

コウランは現在、機関部員たちと共に機関部の修理とチェックを行っているので、クロノは作業が終わった後で、コウランに伝えるつもりだ。

 

「しかし、まさか次元の海にあのような生物が居るなんて‥‥」

 

「管理局がまだ海図を作成していないところで良かった‥‥もしも作成中にアイツに襲われていたらどれだけの被害が出たことか‥‥」

 

MS機関を有した海賊船でもあのような末路を辿ったのだ。

 

管理局のMS機関を搭載した次元航行艦も決して例外ではないだろう。

 

「本局に報告を入れて、この周辺の海域は今後、監視・観測世界として、あの生物が民間船舶の航路や近くの管理世界へやってこないようにしなければならない」

 

クロノの言葉に一同は頷く。

 

「副長は、あの生物は宇宙船のエネルギーだけではなく、世界‥星に存在するありとあらゆるエネルギーを吸い尽くすのではないかと推測していた」

 

クロノは更にあの生物の特徴を述べる。

 

「副長が以前、あの生物と最初に出会った星も先ほどの星の様に空洞惑星となっており、構造が脆かったらしい‥‥これはあの生物が星の地表からエネルギーを吸い尽くした後、次に地下に眠るエネルギーを求めていった星がスカスカの空洞となり、星の寿命を縮めたのではないかと言う事だ」

 

「星を食べる生物‥‥ということですか‥‥」

 

「副長の推測が正しければな」

 

「確かにあながち間違いとは言い切れません。記録映像では、海賊が撃ったビーム砲を体内に取り込んでいる様子やガイアの船体にへばりついた個体を引き剥がそうとした武装隊員からの証言ではシューターやディバインバスターの魔力さえも取り込んだみたいですから」

 

「とんでもない生物ですね。しかし、副長の推測がもし当たっているのであるならば、あの生物が生息しているあの世界を監視・観測世界にするのは妥当だと思います」

 

「そうですね。今後、あの世界が急速に崩壊するようならば、副長の推測は正しいと言う事ですからね」

 

全員の意見が一致して、あのクラゲみたいな生物が生息している空洞惑星は、今後管理局の監視・観測世界とする旨を本局へ報告する事とした。

 

「さて、つぎに現在遂行中の任務であるが、追手の情報網と追跡網はかなり広く、綿密である」

 

クロノはあのクラゲみたいな生物が生息している空洞惑星の話題から現在、自分たちが行っている任務について今後の方針を述べる。

 

「この先、第二十三管理世界を目指すが、今後も追手や妨害は予測される。そこで、ガイア自体を囮とし、本命である証人には護衛をつけて別ルートで第二十三管理世界を目指してもらいたいと思う」

 

「別ルート?」

 

「ガイアを囮?」

 

クロノの方針に一同は首を傾げる。

 

「まず、修理とエネルギーの充填が終了次第、本艦は現在位置から一番近いコロニーへと次元跳躍をする。そして、コロニーにて証人と護衛担当者は降りてもらい民間船舶にて第二十三管理世界を目指し、ガイアはガイアで第二十三管理世界を目指し、追手を引き付ける」

 

「なるほど‥‥」

 

「ただし、大人数で行動すれば、かえって目立ってしまう‥‥証人の護衛は第四管理世界で迎えに行ったように少数となる‥‥副長、すまないがもう一度、証人の護衛を務めてくれないか?」

 

「分かりました」

 

「ありがとう。ただ、ナカジマ戦術長はその役職柄、今回は護衛に割くことが出来ない。副長には一人で証人を守ってもらう事になるが、もし不安ならば誰かもう一人くらいはつけるが?」

 

「いえ、艦長の言う通り、人数が増えればそれだけバレてしまう可能性もあるので、証人の護衛は私一人で務めます」

 

フェイトはクロノの意を組み、単身でオードリーの護衛を引き受ける。

 

今後の方針が決まった時、応急班と機関部から報告が上がり、修理とエネルギーの充填が終わったとの事だ。

 

「よし、では直ちに作戦を開始する。総員、次元跳躍の準備だ!!」

 

『了解!!』

 

ガイアは再び任務のために次元跳躍を行った‥‥

 

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