星の海へ   作:ステルス兄貴

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今後もしかしたらフェイトちゃんのライバル?となるかもしれない人物‥‥

フェイトちゃんとチンクの士官学校の同期であるメアリー・スーです。


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二百二十二話 証人警護 そのⅣ

 

 

裁判に出廷する証人警護のために証人と共に第二十三管理へとやって来たフェイト。

 

その裁判では第二十三管理世界支部に所属する幹部クラスの管理局員の不正が含まれている事から保身のためにその幹部局員はあの手この手で証人を抹殺しようとしてきた。

 

クロノとフェイトも証人を守る為に知恵を巡らし、妨害の手を掻い潜って来た。

 

そして、追手を欺くためにクロノは自身が艦長を務める次元航行艦を囮として追手の注意を惹きつけ、フェイトには単独で証人を警護しながら第二十三管理世界へ向かってもらった。

 

第二十三管理世界に着く前にフェイトは民間の次元航行船で向かったのだが、その道中で様々な可能性を考慮して行動したのだが、フェイト自身が自分の知名度に対して無頓着だったことが災いして、第二十三管理世界支部の局員に第二十三管理世界入りしていたことがバレてしまった。

 

裁判で不正を告発されそうになっている幹部局員はフェイト諸共証人を抹殺しようと画策し、まずはフェイトたちの居場所を特定しようと動き、市街地の宿泊施設に対してフェイトの顔写真を配り情報提供を求めた。

 

第二十三管理世界においてホテル業務を営む経営者としては管理局からの通達を無視する訳にはいかず、フェイトと証人のオードリーが宿泊していたホテルの従業員は管理局へと通報した。

 

幹部局員は夜に二人が宿泊している部屋を強襲して身柄を確保しようとする。

 

しかし、そんなピンチの中でもフェイトはサーチャーを使用して何とか追手の追撃をくぐり抜けた。

 

オードリーからの情報で一時、市街地郊外の森の中にある廃墟に身を隠し、夜陰に乗じてフェイトは日中に借りたレンタカーを回収して、その日は車中泊となった。

 

「車の中とは言え、夜は寒くなるかもしれないからコレを使って」

 

エンジンをかけたままにするとエンジン音で追手に気づかれてしまう恐れがある。

 

「ありがとうございます」

 

フェイトはオードリーにバルディッシュの中に仕舞っていた毛布を手渡す。

 

何故、バルディッシュに毛布を収納していたのか?

彗星帝国の残党に襲撃されて防衛軍に保護されて、もう一つの地球へと赴いた後にその地球が暗黒星団帝国に占領されて、占領下を体験した事でサバイバルに必要な道具をバルディッシュの中に仕舞っていた。

 

「裁判に提出する証拠品はバーンさんが持っているのよね?」

 

「はい」

 

「一応、確認させてもらっても大丈夫?」

 

「えっ?ええ‥どうぞ‥‥」

 

オードリーは持っていた鞄からUSBカードを取り出す。

 

もしも、これが第四管理世界に迎えに来たばかりの頃だったら、恐らく彼女はフェイトに裁判の証拠品を見せなかっただろう。

 

しかし、海賊や同じ管理局員からの追撃にフェイトは何度も自分を救ってくれた。

 

その結果、オードリーは、『フェイトならば信じてみようと』 という信頼感が芽生えていた。

 

フェイトはバルディッシュの中から一台のノートパソコンを取り出し早速、オードリーから手渡されたUSBを差し込んで中身を確認する。

 

USBの中には確かに幹部局員が関わった不正の証拠と音声データが入っていた。

 

「念の為、この証拠データの一部をコピーしてもいいかな?」

 

「は、はい。どうぞ‥‥」

 

フェイトは証拠データを何故か全部ではなく、一部だけをコピーした。

 

「ありがとう」

 

ノートパソコン内に証拠データを一部コピーし終えたフェイトはオードリーにUSBを返す。

 

「でも、どうして一部だけをコピーしたんですか?コピーするなら全部の方が‥‥」

 

オードリーは何故、フェイトが証拠データを全部ではなく一部だけをコピーしたのか気になり、彼女に質問する。

 

「それは明日になれば分かるよ」

 

「?」

 

「さっ、明日は色々と忙しくなるから、もう寝た方がいいよ。まぁ、車中泊だからちょっと寝にくいかもしれないけど‥‥」

 

「は、はい‥‥」

 

フェイトはオードリーに休むよう促した。

 

 

その頃、第二十三管理世界管理局支部では‥‥

 

ホテルでフェイトとオードリーを確保できなかった事は直ぐに幹部局員にも通達された。

 

「なにっ!?ターゲットを確保できなかっただと!?」

 

『は、はい。通報のあったホテルの部屋へと突入しましたが、室内にはターゲットの姿はありませんでした!!』

 

「部屋だけでなくホテル内も隈なく捜索したのだろうな!?」

 

『はい。その点も考慮してホテル内を捜索しましたが、ホテル内にもやはりターゲットの姿はありませんでした。一応、駐車場も確認しましたが、駐車場にはターゲットが借りたレンタカーもありません』

 

「バカ者!!管理局のエースとは言え、一人の女ごときに何を手間取っている!?必ず確保するか息の根を止めるのだ!!いいな!!」

 

ホテル突入において自分の息がかかっている局員からの報告に幹部局員は声を荒げる。

 

「くそっ、一体奴らは何処に‥‥?おい、バーンの家には誰か向かわせたか!?」

 

「はい。昼間に既に向かわせております。ですが長い間、人の出入りが確認されておらず、屋内も埃が溜まっていたそうです。念の為、この後でターゲットが戻るかもしれないので、張り込ませてはいますが、未だに戻ってきた報告はありません」

 

フェイトの姿が次元航行船発着場で確認された後、幹部局員は最初にこの世界にあるオードリーの実家にも人を向かわせていた。

 

元々オードリーがこの世界の出身者であり、父親がこの世界にある管理局支部に務めていたので、幹部局員がこの世界にあるオードリーの実家を調べるのは至極当然の事だった。

 

だが、向こうもオードリーの実家に家宅捜索が入るのは当然読んでいたのか、オードリーの実家に人の気配はなかった。

 

「ん?確かホテルの駐車場にターゲットが借りたレンタカーが無かったと報告があがったな」

 

「ええ」

 

「ならば今すぐにホテル周辺‥いや、市街地全ての防犯カメラとNシステムを調べろ!!」

 

「えっ?市街地全てですか!?」

 

「そうだ!!早くしろ!!」

 

(市街地全ての防犯カメラとNシステムを調べろだなんて、一体どれだけ時間がかかると思っているんだよ)

 

支部の局員全員で徹夜をして調べてもかなり時間はかかる。

 

それをやれと言うのだから幹部局員がかなり追い詰められていることが窺える。

 

フェイトが運転する車がNシステムで確認されたのは夜明けが近づいている時間帯であった。

 

「ターゲットが運転する車を確認しました」

 

「証人の姿はあるか?」

 

「いえ、ありません。運転しているのはターゲットのみです」

 

「まぁ、いい。どうせ証人とは合流するだろうからな‥‥それで、奴は何処だ?何処に向かっている!?」

 

「市街地を出て郊外に向かっています」

 

「郊外だと!?そんなところに一体‥‥」

 

「車を確保していたので、郊外で身を隠し車中泊をしているのではないでしょうか?」

 

市街地はすでに自分たちが捜索している事を相手は分かっている。

 

だからこそ、ホテルを逃げ出した。

 

とすれば、フェイトとオードリーが逃げ込むのは人気の無い郊外ぐらいだ。

 

しかもレンタカーを持ち出しているので、雨風は凌げる。

 

「すぐに空戦魔導師を郊外へ向かわせて捜索しろ!!」

 

「は、はい」

 

幹部局員は急ぎ郊外の捜索のために空戦魔導師を郊外へと向かわせた。

 

 

第二十三管理世界の管理局支部に所属している管理局員らは一人の幹部局員の保身のためにこうして過重労働をする羽目になった。

 

郊外に向かった空戦魔導師たちであったが、その人数は限られており、その限られた人数で広大な地域をフェイトとオードリーの二人を捜せと言われてそう簡単に見つかる筈もなかった。

 

翌朝、フェイトの姿は再び市街地の中にあるネットカフェにあった。

 

「○○テレビの運営部長さんですか?先ほど、御社に送くりました音声データですけど、聞いてもらえましたか?‥‥はい。あくまでも一部ですが、あの音声は紛れもなく、とある管理局員の肉声で間違いありません」

 

そして、フェイトは昨夜オードリーから貸してもらった証拠データの一部はネットカフェからこの世界にあるテレビ局の運営部長の下へ送信し、確認の電話を入れていた。

 

「なお、この音声データは他のテレビ局やラジオ局へも送りました。‥‥えっ?この世界の管理局員が来ている?‥‥まぁ、貴方たちこの世界のメディアがこぞって日和るのはそちらの勝手ですけど、この世界以外のメディアから管理局の不正に屈し、加担したマスゴミと叩かれないと良いですね」

 

フェイト自身も自覚はしているが、きっと今の自分は悪い顔をしているのだろう。

 

これまでの追手の規模や動きを見てフェイトは、意外と不正を働いている幹部局員の影響力がフェイトの予想以上であり、追手の規模や影響力を考えるに、今の内にマスメディアを味方につけなければ、幹部局員の圧力によってこの世界のメディアが封じられる可能性があり、オードリーが証拠を提示して証言しても無効とされてしまうかもしれない。

 

万が一、幹部局員に無罪の判決でも下されれば、オードリーの父親の死は無駄死にとなり、オードリー自身も生命の危険がある。

 

それを防ぐためにフェイトも手段は問わずに行動を開始したのだ。

 

昨夜、証拠データを敢えて一部しかコピーしなかったのはマスコミへ送るためであり、全てを知りたければ裁判を傍聴し、真実を放送しろと言うフェイトからのメッセージが含まれていた。

 

 

フェイトがこうしてネットカフェでマスコミ宛てに証拠データの一部を送っている姿は街に設置されている防犯カメラで撮影され、その情報は当然、この世界の管理局支部へと伝わり、このネットカフェにも管理局員たちがフェイトの身柄を拘束するためにやって来た。

 

「ターゲットはこの店に入ったのは間違いないか!?」

 

「はい。防犯カメラの映像で確認しました!!」

 

「くそっ、いつの間に市街地へ戻ってきたんだ?」

 

「あいつらのせいで寝不足だぜ‥‥」

 

フェイトに翻弄されている管理局員たちは寝不足も相まって何だか殺気立っている。

 

「このブースだな」

 

「はい」

 

「よし、行くぞ!!」

 

「管理局だ!!」

 

「大人しくしろ!!」

 

ネカフェに数あるブースの中で、フェイトが居るとされるブースへ突入する管理局員たち。

 

しかし‥‥

 

「い、居ない‥‥」

 

「また空振りかよ!?」

 

ブースの中にフェイトの姿はなかった。

 

防犯カメラがある市街地のネカフェに入るのだから、当然この世界の管理局員たちに見つかる事は想定済みだ。

 

だからこそ、フェイトは店の周囲にサーチャーを展開して、管理局員たちの動きを見張っていたのだ。

 

空振りだった事に管理局員たちは憤慨する。

 

「まだ近くに居る筈だ!!捜せ!!」

 

フェイトが防犯カメラで確認されて、この店のブースに突入するまでそこまで時間はかかっていない。

 

ならば、フェイトはこのネカフェの近くに居る筈だ。

 

管理局員たちは急ぎ店から出てフェイトを捜した。

 

そして‥‥

 

「居たぞ!!」

 

「こっちだ!!」

 

管理局員たちはフェイトを発見して追いかける。

 

空戦魔導師の目を搔い潜るためにフェイトは路地裏を駆け回る。

 

「待て!!」

 

「どうしますか?攻撃しますか!?」

 

「‥‥やむを得ない!!此方の指示に従わないと言うのならば、公務執行妨害とみなす!!ただし、非殺傷設定にするのを忘れるな!!」

 

後ろから自分を追いかけて来る管理局員たちは等々、公務執行妨害を理由にフェイトにシューターを打ち込もうとしている。

 

ただし、本命はあくまでもフェイトではなくオードリーなので、殺傷設定でフェイトを仕留めてはオードリーの行方を知ることが出来なくなってしまうので、非殺傷設定でフェイトを死なない程度に痛めつけて、フェイトにオードリーの行方を尋問しようとしていた。

 

フェイトは自身に身体強化の魔法をかけ、足の速さを上げて河川敷まで来るとゴミとシートで隠していたレンタカーに飛び乗るとエンジンをかけてアクセルペダルを思いっきり踏む。

 

キュルルルル~!!

 

タイヤが空転する大きな音を立ててフェイトが運転するレンタカーは河川敷を猛スピードで走り去っていく。

 

「逃げたか!?」

 

「空戦魔導師と周辺の警邏車に連絡をしろ!!追跡するのだ!!」

 

「りょ、了解!!」

 

市街地の車道を走るフェイトのレンタカーであるが、空からは空戦魔導師が‥‥

 

後方からはサイレンを鳴らしている管理局の警邏車が迫って来る。

 

追い詰められている状況下ではあるが、裁判所まで行けば此方の勝ちだと言う確信がフェイトにはあった。

 

その裁判所では‥‥

 

 

「解散しろ!!解散!!」

 

「裁判の結果は後々、こちらから記者会見の場を設ける!!」

 

裁判所の警備にあたっていた管理局員たちが裁判所に集まっていた数多くのマスコミたちを蹴散らそうとしていた。

 

「こちらには一部ではあるが、管理局員が関係した不正の証拠があるんだぞ!!」

 

「我々マスコミを入れないと言う事は都合のいい判決を下す気か!?」

 

「やはり不正の証拠データは事実なのか!?」

 

「今この場で説明しろ!!」

 

「そうだ!!そうだ!!」

 

裁判所前に集まったマスコミたちはフェイトから送られた証拠データの一部を握っているので、管理局に対して強気に出ることが出来る。

 

管理局員としては集まったマスコミ立に対して非殺傷設定のシューターやディバインバスターを打ち込み解散させたかったが、相手がデモを行っている市民ではなくマスコミたち‥‥

 

当然、テレビカメラも回っているので、そんな中でマスコミたちにシューターやディバインバスターを非殺傷設定とは言え打ち込めば、それがこの世界全土に放送される事となり、そうなれば本局にも当然知られる。

 

そうなれば、本局から執務官や武装隊が派遣されて徹底的な事実調査が行われる。

 

なので、裁判所前に居る管理局員たちはマスコミ連中を追っ払いたくても武力的に追っ払う事が出来なかったので、こうして口頭で解散するように怒気を荒げて言うが、全く効果がない。

 

とは言え、裁判が始まればどの道、事実調査の為、本局から執務官が派遣されるのだが、彼らはとりあえずこの場をなんとか凌ごうとしか思っていなかった。

 

警備の管理局員たちとマスコミたちが裁判所の前で睨みあいを続けていると、

 

ガガガガガガ‥‥

 

キィィィィィィ~!!

 

裁判所に向かってボロボロとなった一台の車が突っ込んで来る。

 

「こっちに来るぞ!!」

 

「危ない!!」

 

「逃げろ!!」

 

止まる気配がない車が自分たちに向かって突っ込んで来ると言う事で、いがみ合っていた管理局員たちもマスコミたちも慌ててその場から逃げ散る。

 

ボロボロとなった車は警護の管理局員とマスコミたちが開けた隙間を通り、裁判所の正面玄関で止まると、車の中から出て来たのはフェイトとオードリーの二人だった。

 

マスコミたちはこの車の突入で管理局員たちに隙が出来た事で裁判所へと挙って入って行く。

 

「あっ、コラ!!」

 

「待て!!」

 

慌てて管理局員たちも追いかけてマスコミたちを排除しようとするも、彼らの勢いはもう止められない。

 

マスコミたちはフェイトとオードリーを取り囲み、インタビューを試みる。

 

「今朝はやくにウチの局に情報提供があったのですが、それは貴女ですか!?」

 

「ウチの局にも同様のタレ込みがあったのですが!!」

 

フェイトは沢山のマスコミたちへ今回の裁判に関するこれまでのいきさつを話し、法廷の場において、マスコミへ送った証拠データの全てを開示する事を宣言した。

 

当然、フェイトの宣言にマスコミは食いついた。

 

そのまま法廷までフェイトはオードリーを警護し、法廷の場でオードリーの父親が残した証拠データの全てが開示される事となった。

 

 

法廷で証拠データの開示が行われているその頃、高級管理局員の社宅では‥‥

 

「ちくしょう!!あのゴロツキのクズ共が!!しくじりおって!!」

 

件の幹部局員が大きなスーツケースに貴金属、札束、着替えを慌てて詰め込んでいた。

 

「最悪だ!!この私の手で直々に殺してやりたいぐらいだ!!くそっ!!」

 

片手にスーツケースの取手、もう片方の手に偽造パスポートを手にして社宅を出ようとした時、

 

「っ!?」

 

カチャ‥‥

 

ギィィィ~‥‥

 

社宅の玄関扉がゆっくりと開くと、

 

「おや?おや?おや?急な引っ越しか?それとも異動命令でも出たのか?」

 

そこに立っていたのは本局から転送ポートでやって来たシグナムたち武装隊の姿だった。

 

第二十三管理世界の裁判の内容については本局の方でも監視をしており、オードリーの父親が残した証拠データの開示が行われた時点で、リンディはシグナムたちを転送ポートにて直ちに第二十三管理世界へと送り込み、幹部局員の身柄確保へと向かわせたのだ。

 

案の定、証拠データが開示‥いや、オードリーが裁判所に到着した時点で彼は急ぎ、社宅へと向かい高飛びのための荷造りをして今まさに逃亡を図ろうとしていたのだが、シグナムたちは一歩早く到着してこうして身柄確保に成功したのだ。

 

「まぁ、いずれ貴様は直ぐにでも引っ越す事になるな‥‥刑務所の牢獄と言う名の場所へ‥な‥‥」

 

シグナムは能面の様に無表情で、視線は氷のように冷たい目で幹部局員を睨みつけている。

 

「ま、待て、君たちは誤解している。あ、あれは、フェイクだ!!意図的に作られた偽物だ‥‥」

 

幹部局員はシグナムたちに言い訳をしつつ、上着のポケットに忍ばせたレーザー銃を取り出し、構えようとしたが、

 

バキッ!!

 

「がはっ!!」

 

シグナムの拳が幹部局員の顔面にヒットする。

 

強烈な拳を受け、幹部局員は床に倒れると同時に彼の上着からレーザー銃とデバイスも床に転がる。

 

シグナムはそんな幹部局員へツカツカと近寄り、胸倉を掴むと、

 

「祈れ‥‥今お前に出来るのは裁判で死刑ではなく終身刑になる事を祈るぐらいだ」

 

冷たくそう言い放ち、

 

「連れて行け」

 

部下たちに幹部局員を連行するように命じた。

 

部下たちが幹部局員を連行していくのを確認したシグナムは、

 

「ターゲットの身柄を確保しました。リンディ統括官」

 

リンディへと連絡をいれた。

 

『ご苦労様、シグナム二尉。後はターゲットを本局へと連行して頂戴。途中、ターゲットの奪還か口封じを図る輩がいるかもしれないけど、その際は遠慮なく対処してもらって構わないわ』

 

「了解しました」

 

リンディとの通信を切り、シグナム自身も幹部局員への護送へと移った。

 

そのシグナムとの通信を行ったリンディは‥‥

 

「ふぅ~‥‥」

 

重い溜息を吐く。

 

「何とか今回の件は片付いたけど、これでまた管理局の評判は悪くなるわね」

 

(もう、いっそのこと後任に役職を譲って引退しようかしら?)

 

今回の裁判では管理局‥それも幹部クラスの局員の不正が明らかとなった。

 

しかもそれが第二十三管理世界のマスコミを通じて恐らく多くの世界へ配信される事だろう。

 

ボラー連邦への武力制裁失敗からようやく立ち直ったばかりの管理局へ沸き上がる数々の不正。

 

すべての局員が不正や汚職を行っている訳ではないし、管理局を立て直そうと奮闘する局員も居る。

 

しかし、大々的にこうした管理局員の不正が明らかになると、大きな事件を解決したり、新たな管理世界を発見した等のプラスのイメージよりもマイナスのイメージの方が伝わるのが早く広域に広がっていく。

 

裁判後における管理局の評判に頭を抱えるリンディであった。

 

此処まで管理局の不正や汚職が明らかとなり、管理局の評判が悪くなっていくと今後の管理局の運営に影を落とす。

 

再起不能となった時、管理局の地位が高ければ高いほど責任問題は大きくなる。

 

そうなる前にリンディは管理局を退役して孫がいる第九十七管理外世界でのんびりと余生を過ごすのも悪くないと思う自分が居た。

 

 

その頃、囮役を引き受けて次元の海を航行していたガイアでは‥‥

 

 

ガイア 艦橋

 

「どうやら、副長は無事に証人を第二十三管理世界の裁判所に届けたみたいですね」

 

第二十三管理世界の様子はガイアにも届いており、艦橋にあるモニターには裁判所でのマスコミや第二十三管理世界の管理局員たちのいざこざの様子が映し出されている。

 

その様子からフェイトがオードリーを無事に裁判所へと連れて行った事が窺える。

 

(さて、大変なのはこれからだな)

 

(今回の一件で、第二十三管理世界の管理局支部には本局からの監査が入り、大規模な粛清の嵐が吹き荒れるだろう)

 

(いや、第二十三管理世界だけでなく、第四管理世界、本局内、ミッドチルダにも監査の手は伸びるかもしれないな‥‥)

 

今回の追手の規模から内通者や協力者は第二十三管理世界だけでなく、第四管理世界は当然の事で、逮捕した者の供述次第では粛清の嵐が管理局中に吹く可能性が高い。

 

(そこは監査部と本局の上層部に任せるか‥‥)

 

今の自分は次元航行艦の一艦長の身なので、管理局の評判には若干の影響があるかもしれないが、監査の仕事は自分の仕事ではないのでクロノは何だか他人行儀のように今回の件の後始末を監査部に委ねる事にした。

 

「さて、副長を迎えに行くか‥‥航海長、針路を第二十三管理世界へ向けてくれ」

 

「了解」

 

クロノはフェイトを迎えに行くためにガイアの針路を第二十三管理世界へと向けた。

 

「しかし、囮役を務めたが、此方には不思議と追手が来なかったな‥‥」

 

チンクがコロニーを出航後のガイアに全くと言っていい程、追跡の手が無かった事を呟く。

 

「まさか、相手は此方の手を読んでいたと?」

 

ミリアリアがチンクに質問をする。

 

「追手がガイアに来ていない事、そして副長が乗っていた車がボロボロであったからな」

 

「副長がこの事実を知ったら怒りそうですね」

 

「確かに‥‥」

 

フェイトの方はかなり激しい追撃が会った事がボロボロとなったレンタカーを見れば一目瞭然であるが、本来追手の注意を引き付ける筈だったガイアには一切その追手が来なかったので、結果論ではあるが、コロニーには立ち寄らず、ガイアで第二十三管理世界を目指した方が良かったまである。

 

第二十三管理世界ではフェイトには色々と苦労をかけたので、ガイアに戻ってきたらフェイトを労ってあげようとクロノを始め艦橋メンバーはそう思った。

 

 

第二十三管理世界はリンディやクロノの予想通り、あちこちで反管理局のデモが起き、管理局員がその鎮圧にあたると火に油を注ぐ感じでボラー連邦への武力制裁失敗後に起きたミッドチルダにおける大規模なデモと同じ様な光景にとなっている。

 

市街地のあちこちから火の手が出ている。

 

(ミッドでも大規模なデモがあったみたいだけど、その時もこんな感じだったんだろうな‥‥)

 

ボラー連邦への武力制裁失敗に伴ってミッドチルダにて起きた大規模なデモ‥というよりも暴動が起きた時、フェイトはもう一つ地球に居たので、その様子はリンディから聞くことになった。

 

混沌としている第二十三管理世界の市街地をフェイトは裁判所の建物から見ている。

 

(JS事件後にレジアス中将が最高評議会とスカリエッティと癒着していた事が話題になっていたけど、ボラー連邦への武力制裁、そして今回の事態はレジアス中将の時よりも管理局への反発があまりにも大きい‥‥)

 

(でも、これは今まで管理局が権力で抑え込んで来た結果なんだよね‥‥)

 

(いくら権力があっても‥‥いくら威張っても力だけでは人の心を支配することは出来ないって事なんだろうけど、管理局はそれを理解する事は出来るのかな?)

 

(ううん、はやてやなのは、クロノみたいな管理局員も居るんだから、きっと大丈夫‥‥)

 

「ハラオウン一尉」

 

フェイトが市街地の様相を見ていると、背後から声をかけられた。

 

「はい」

 

「先ほど、貴女が乗艦している次元航行艦と連絡がとれました」

 

フェイトに声をかけたのは転送ポートで本局からこの世界に来た武装隊の隊員だった。

 

第二十三管理世界の管理局員の大半は現在監察対象となっているので、本局から武装隊が現地の治安維持の為に派遣されていた。

 

「ガイアから?」

 

(ガイアから連絡が着たと言う事が、あっちのほうも無事に追手を振り切ったんだ‥‥)

 

この時のフェイトはガイアの方に追手が全く来ていない事を知らなかったので、フェイトはガイアが追手を振り切るか、撃破したのかと思っていた。

 

「はい。その次元航行艦は現在、この世界に貴女を迎えに来るそうです」

 

「そうですか‥‥分かりました」

 

「ただ、市街地はあの有り様ですから、車での移動は危険なので、此処から次元航行船発着場までの飛行許可が出ましたので、飛んで向かってください」

 

「分かりました‥‥その‥‥あまりこの世界の住民に酷い事は‥‥一応、管理局の評判にも関わりますから」

 

「はい。承知しております」

 

「それでは‥‥」

 

フェイトは飛行許可が下りたので、裁判所から次元航行船の発着場まで飛んで向かう事にした。

 

(あっ‥そう言えば、私この世界で飛行許可がないのに飛行していた‥‥)

 

(後で何かしらの処分が下るのかな?)

 

(それだとクロノに後々迷惑がかからないかな?)

 

次元航行船発着場に向かっている中、フェイトはこの世界で無許可で飛行していた事を思い出した。

 

自分は監察対象ではないが、後々監察聴取を受けたこの世界の管理局員がフェイトの無許可飛行を報告するかもしれない。

 

恐らく防犯カメラを調べればきっと自分がオードリーを抱えてホテルから脱出する映像が残っている筈だ。

 

特に不正を行った幹部局員と関りのある管理局員はフェイトも道連れにするだろうから、フェイトの無許可飛行の件も監査部に報告する可能性がある。

 

(ガイアに戻ったらクロノに相談しよう‥‥)

 

無許可の飛行はすでに行ってしまった事なので、もう取り返しがつかない。

 

しかし、この世界で起きた事は上官であるクロノに報告の義務があるので、フェイトはガイアに戻ったらクロノに報告し、彼の判断に委ねるしかなかった。

 

次元航行船発着場には管理局員が展開していなかったので、市街地程の混乱はなかったが、次元航行船の離発着は停止していた。

 

だが、ガイアに関しては、やはり管理局の次元航行艦と言う事で、特別な許可が下りた。

 

雲を切り裂いて空からガイアが轟音を立てながら次元航行船発着場へと降下して来た。

 

ガイアが着陸し、タラップが降ろされた事を確認したフェイトはそのタラップを上る。

 

ガイアに戻ったフェイトは早速、艦長であるクロノの下へと赴き、第二十三管理世界での出来事を報告する。

 

「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン、戻りました」

 

「ご苦労様。この世界での事はガイアのモニターから確認した。大変だったね」

 

「ええ‥幹部クラスとは言え、有り得ないくらいの包囲網でした。その影響もあってかこの世界ではあの有り様です」

 

「ああ、その件についてもモニターで確認した‥‥まさか、この世界でもあんな大規模なデモが起こるなんてな‥‥」

 

「これも管理局への不満が積み重なっての結果なのかもしれない‥‥と、私はそう思っているよ」

 

「そうだな‥‥新たな力を手に入れて管理局はより一層傲慢になっていたのかもしれない‥‥ここ最近の管理局員の不正や汚職は管理局がボラー連邦への武力制裁失敗から立ち直り、武力制裁前よりも力をつけた結果、生み出された負の結果なのだろう」

 

かつての最高評議会も管理局の発展のためにアルハザードの技術からスカリエッティを生み出し、彼に『プロジェクト・fate』 『戦闘機人技術』を始めとして違法ながらも数々の技術を世に出した。

 

しかし、スカリエッティを生み出したその結果、最高評議会は自らの運命を閉じる結果となった。

 

スカリエッティ自身も最高評議会が生み出した負の遺産だったのかもしれない。

 

「それで、ガイアの方は大丈夫だった?囮役だった事から次元の海でも追手が来たんじゃない?」

 

「あ、ああ‥その事なんだが‥‥」

 

クロノはフェイトに悪いと思いつつもコロニーを出航後にガイアの方には全くと言っていい程、追手が来なかった事を話す。

 

「えっ?何それ?じゃあ、大変だったのは私の方だったの!?」

 

「すまない。追手の規模から次元の海でも大規模な追手が来るモノばかりと思って‥‥」

 

ガイアの方に追手が来なかったのは今更ながら結果論となっているので、クロノに不満を言っても後の祭りである。

 

それに第四管理世界、次元の海での追手の規模から考えてあの時のクロノの判断は決して間違いではなかった筈だ。

 

フェイト自身もそれを納得して、オードリーと共にガイアを降りたのだから‥‥

 

「まぁ、今更だし、あの時はクロノの判断が理にかなっていると思ったからね。最終的にバーンさんを無事に裁判所へ送ることが出来て不正が世に明るみになった事で、良かったと思っている‥‥まぁ、あの世界で大規模なデモが起きた事については予想外だったけど‥‥」

 

フェイトの脳裏には裁判所での出来事が蘇る。

 

裁判でオードリーが提出した証拠が採用されて幹部局員の不正・汚職・犯罪が明らかとなり、幹部局員は裁かれる事になった。

 

あれだけ規模の大きい追手を差し向ける事が出来たのだから幹部局員は管理局の中でもかなりの権力と権限を持っていた筈だ。

 

そんな局員を管理局は擁護することなく切り捨てた。

 

切り捨てたのはフェイトがマスコミに一部とは言え、証拠データを流し、それが世間に知られたのが大きく、管理局としては此処で幹部局員を忖度してしまうと管理局の評判が悪くなると判断したのだ。

 

幹部局員の犯罪が世間に露呈し、バーン親子の目的は達成することが出来た。

 

「ハラオウンさん。此処までの警護、本当にありがとうございました。おかげで、父の無念も晴らすことが出来ました」

 

「いえ、全てバーンさんのお父さんが此処までの証拠を残してくれた事とバーンさんが勇気をもって証人になってくれた事の賜物です。私としても同じ管理局員として今回の事件に関しては恥じると共にあのような犯罪を犯した局員を野放しにする事は許せなかったので、お手伝い出来て良かったです」

 

「また、どこかで会えると良いですね」

 

オードリーはそう言ってフェイトへ手を伸ばす。

 

「はい。また何処かで‥‥」

 

フェイトも手を差し伸べてオードリーと握手を交わした。

 

 

今回の件は幹部クラスの局員の犯罪を明かす事が出来たが、その代償としてオードリーの故郷である第二十三管理世界に大規模なデモを起こすきっかけとなってしまった。

 

フェイトとしては今回の件がきっかけで大規模なデモを起こす結果になってしまった事が心残りとなった。

 

フェイトを収容したガイアは第二十三管理世界の治安維持を本局から派遣された武装隊に任せて、かの世界を離脱した。

 

段々と小さくなっていく第二十三管理世界をフェイトはオードリーの無事を祈りつつガイアの展望デッキより見つめていた。

 

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