星の海へ   作:ステルス兄貴

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今年最後の投稿となります。

今年もありがとうございました。

また来年もよろしくお願いします。


二百二十七話 地球帰還

 

 

コロニー・メルセデスで起きた新造艦強奪事件の主犯であるシーマ・ガラハウの職務経歴書に違和感を覚えたクロノは無限書庫のユーノにシーマについて詳しい情報がないか調べさせた。

 

「えっ?管理局員の情報を調べてくれだって!?」

 

「ああ。正確には『元』管理局員だ」

 

「そんな情報、一体どうするんだい?」

 

クロノが自分に色々と調べ物や資料を求めてくるのは別段珍しくはない。

 

しかし、今日クロノが自分に求めて来たのはとある元管理局員の情報であった。

 

(元管理局員の情報なんてクロノの奴、一体何を考えているんだ?)

 

(その元管理局員を再び管理局にスカウトし直すつもりか?)

 

「ちょっと気になる事があるんだ」

 

「まぁ、いいけど‥‥それで、誰を調べるんだい?」

 

「シーマ・ガラハウって言う元局員だ」

 

「シーマ・ガラハウ‥‥って、ソイツはこの前の新造艦強奪事件の主犯じゃないか!?」

 

「なんだ?無限書庫にも事件や犯人の話がいっているのか?」

 

「本局に居たら嫌でもあの事件の事は耳に入って来るって‥‥それで、あの事件の主犯の何処が気になるんだい?」

 

「レティ提督から主犯のシーマ・ガラハウの職務経歴書を貰ったんだが、士官学校を卒業後に数年間は“海”の部隊に所属しているのだが‥‥最終職歴が『異動』としか書かれていない。これは明らかに異常だと思わないか?」

 

「確かに異動するにしてもどこの部隊へ異動したのか履歴に残る筈だ‥‥」

 

ユーノもクロノの話を聞き、シーマの職務経歴に違和感を覚える。

 

「分かった。急いで調べてみよう」

 

そこで、ユーノはシーマ・ガラハウについて調べ始める。

 

すると、

 

「あ、あれ?」

 

無限書庫の司書長であるユーノでも『シーマ・ガラハウ』についてはアクセスが出来なかった。

 

「これはどういうことだ?」

 

ユーノは首を傾げもう一度、『シーマ・ガラハウ』についてアクセスを試みるもやはりアクセスは出来なかった。

 

「犯罪者とは言え、元管理局員の情報なのに何故、アクセスが出来ない?無限書庫のデータベースなら、有る筈なのに‥‥」

 

その後、ユーノが何度試しても『シーマ・ガラハウ』への情報にはアクセス出来なかった。

 

これはもう無限書庫にあるコンピューターのエラーなどではなく、意図的にアクセス制限がかけられているとしか思えない。

 

「どうだった?シーマ・ガラハウについての情報は引き出せたか?」

 

「いや、何故か『シーマ・ガラハウ』についてアクセスが出来なかった」

 

「出来なかった!?」

 

ユーノがクロノにシーマ・ガラハウの情報が引き出せなかった結果を伝えると、その結果にクロノも驚いていた。

 

「ユーノ、君は無限書庫の司書長だろう?その君がどうして、無限書庫にある情報にアクセス出来ないんだ?」

 

「そんなのこっちが聞きたいぐらいだ!!」

 

ユーノ自身、何故アクセス出来ないのか皆目見当がつかない。

 

「分かった。シーマ・ガラハウについてはこっちで調べてみる。ただ、この件に関してお前はあまり首を深く突っ込まない方が良いい」

 

「言われなくてもこっちはこっちで色々と忙しいんだ。どのみちアクセス出来ない案件なら、これ以上こっちでも調べられないよ」

 

無限書庫でもシーマの情報が掴めなかったので、

 

(人事の事はやはり人事部で調べてもらうしかないな)

 

クロノは人事部のレティにシーマについて調べてもらう事にした。

 

「レティ提督」

 

「あら?クロノ君じゃない。どうしたの?」

 

「先日、メルセデスで起きた新造艦強奪事件ですが‥‥」

 

「ああ、あの事件ね。まさか犯人が元管理局員だったとは驚いたわ。『元』でも管理局員が関係している事件だから、また管理局の評判が下がるわ。リンディもその件で頭を抱えていたわね。あっ、そう言えばリンディ今度、昇進するみたいなの」

 

「えっ!?昇進!?」

 

クロノは突然のリンディの昇進に驚く。

 

「ええ。まだ内定なのだけれど、今度、”海“に新たな部署を設立するみたいなのよ」

 

「新たな部署‥‥機動六課みたいな部署なんですか?」

 

「うーん、ちょっと違うわね」

 

「?」

 

「管理局でも次元航行艦隊‥‥艦隊を編成して運用する部署を作るのよ」

 

「艦隊の編成に運用!?」

 

これまで管理局は次元航行艦を単体で次元の海‥‥宇宙へと出して、管理世界に成り得る世界、ロストロギアの探索を行っており、大規模な艦隊編成はボラー連邦に対する武力制裁の時ぐらいだった。

 

しかし、即席で編成した艦隊など烏合の衆でしかなく、艦の性能もあったが、動きが防衛軍、ボラー連邦の宇宙艦隊と比べると雲泥の差であった。

 

MS機関を開発し、それを搭載した次元航行艦を次々と量産し艦の数を揃え始めた管理局はボラー連邦への武力制裁の時の様に有事の際‥反乱を起こした管理世界、ボラー連邦の様に管理局と戦争状態となった世界に対して武力制裁を専門とする次元航行艦隊部署を設ける事とした。

 

元論、これまでの“海”の活動‥‥管理世界に成り得る世界、ロストロギアの探索を行う部署は残すので、“海”は艦隊運用を行う部署、これまで通り管理世界に成り得る世界、ロストロギアの探索を行う二つの部署となり、リンディはこの二つの部署の統括官を統括する統合統括官に昇進すると言うのだ。

 

「管理局が艦隊運用ですか‥‥宝の持ち腐れのような気がします」

 

「でも、ボラー連邦の時の様に今後も無いとは言い切れないでしょう?あの時の様な悲劇はもう起こらない様にしないと‥‥」

 

「ですが、大きすぎる力は新たな争いを呼びませんかね?僕としては管理局が再びボラー連邦へ復讐戦を仕掛けたり、もう一つ地球へ戦争を仕掛けないか‥それが心配です。管理局は、ボラー連邦は勿論、もう一つの地球に関しても好印象を持っていません」

 

「ええ、そうね」

 

「新たな力をつけた管理局が暴走しなければ良いのですが‥‥」

 

「‥‥」

 

レティもボラー連邦への武力制裁については反対であった。

 

勿論、リンディも同じだ。

 

しかし、当時は世論が、『ボラー連邦討つべし』 と根強く叫んでいた事からリンディもレティも‥あの三提督も止めることは出来ず、管理局はボラー連邦への武力制裁へと踏み切った。

 

当時、管理局はMS機関を有していなかったが、それでも新型艦を進宙させており、管理局は次元の海最強の力を手に入れたと思い込んでいた。

 

だが、結果はボラー連邦のブラックホール砲とボラー連邦の宇宙艦隊に返り討ちに遭う悲惨な結果となった。

 

レティはあの時と同じ様な悲劇を繰り返さない為にも艦隊行動がとれる次元航行艦と乗員は今後の管理局には必要な存在であると思うが、クロノは管理局が再び暴走しないか危惧した。

 

管理局ではないが、防衛軍も先日似たような遠征をして返り討ちに遭っていた。

 

当然その事実を管理局は知らないが、防衛軍でさえガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国と戦い、多くの犠牲を払い再建の軌道にようやく乗れたかと思いきや、一部の政治家と軍部の暴走により、艦、人材を失い、更にはバジウド星系にあるボラー連邦派の星間国家には完全に敵視され、バース星、そしてケンタウロス座のアルファ星がいつボラー連邦派の星間国家に襲撃されてもおかしくはない状況下を作ってしまった。

 

管理局も防衛軍の失敗の様に‥喉元過ぎれば熱さを忘れるように新たな力を手に入れた事で、ボラー連邦への武力制裁失敗の出来事を忘れ去り、新たな戦乱を起こすのではないか?

 

そんな予感がクロノにはあった。

 

「それで話は戻しますが、主犯のシーマ・ガラハウなのですが、職務経歴に怪しい点があり、気になりまして‥‥」

 

内定が出たとは言え、次元航行艦隊が結成されるのはまだまだ先であり、艦体の編成や乗員の育成が必要である。

 

確かにレティの言う通り、ミッドチルダを始めとする管理世界がもう一つの地球の様に外宇宙にある星間国家からの侵略を受けないとは言い切れない。

 

次元航行艦隊が結成されてもその運用を攻撃面ではなく防衛面で使用すれば良いだけの事‥‥

 

管理局の艦体の編成に危惧を抱きつつもクロノは今、目の前の違和感に集中することにした。

 

「気になる点?」

 

「はい。士官学校を卒業後に数年間は“海”の部隊に所属していたのですが、ある期間を機にどこかへと異動になったのですが、異動先が何処の部隊になったのか、職務履歴には乗っていないのです」

 

「その点については私も気になっていたのよ」

 

「実はついさっき、無限書庫の司書長に彼女の事を調べてもらったのですが、無限書庫の司書長でも何故か彼女の情報にはアクセスが出来ない状態となっていました」

 

「スクライア君に調べてもらったの?あの事件の犯人を‥‥」

 

「はい。ですが、無限書庫の司書長と言う立場である彼にもアクセスが出来ないのはあまりにも異常です」

 

「確かにそうね」

 

「なので、人事部のレティ提督に今回、彼女の詳しい経歴を調べてもらいたいく連絡をした次第です」

 

「分かったわ。彼女の異動先の事を調べてみるけど、もしかしたら、この件は時間がかかるかもしれないわね」

 

「いえ、大丈夫です」

 

レティもシーマの職務経歴を改めて確認すると確かにクロノが言う通り、彼女の職務経歴は通常の管理局員と比べおかしい。

 

「うーん‥‥確かにクロノ君が言う通り、彼女の職務経歴は変ね。どうして異動先の部隊の名称が書かれていないのかしら?」

 

人事部の責任者である自分が把握していない人事に首を傾げた。

 

 

ガイア 艦橋

 

「艦長、さっきユーノが声を上げていたけど、何かあったの?」

 

先程のクロノとユーノとのやり取りを聞いていたフェイトがクロノに訊ねる。

 

「ああ、先日起きた新造艦強奪事件の主犯の詳しい情報を集めようとユーノに頼んだのだが、妙な事になってね」

 

「妙な事?」

 

「‥‥何故か、ユーノの奴でも無限書庫にある彼女の情報にアクセス出来なかったんだ」

 

「えっ?アクセス出来ない?」

 

「ああ。流石にユーノが、仕事が忙しいと言う理由でこんな嘘をつくとは思えないからな」

 

「そうだね。それで、どうしたの?」

 

「レティ提督にこの件は調べてもらう事にした」

 

「確かに本局の人事に関してはレティ提督が最適だもんね」

 

フェイトもクロノのやり方に納得する。

 

 

レティがシーマ・ガラハウの過去について調査を始めた頃、ケンタウロス座アルファ星では‥‥

 

 

八雲 食堂

 

「それで、ティアナ。あれからどうだったの?OKしたの?」

 

八雲の食堂で、ギンガが目をキラキラさせながらティアナに北野との関係の続きを訊ねる。

 

(さ、流石スバルのお姉さん‥‥)

 

(こういう所はスバルそっくりね‥‥)

 

もしもスバルがこの話を聞いたら、きっと目の前に居るギンガ同様、目を輝かせながら自分に告白の結果を聞いて来ただろう。

 

そして、目の前に居るギンガと同じリアクションをとっていただろう。

 

そう言う点ではギンガとスバルがやはり姉妹なのだと実感させられる。

 

「は、はい。北野さんと交際することになりました」

 

「そうなの!?おめでとう!!ティアナ!!」

 

「ど、どうも‥‥」

 

ギンガは自分の事の様にティアナと北野の交際を喜び、祝った。

 

ティアナが北野と交際することが決まってすぐに、ギンガは良馬に呼ばれた。

 

 

アルファ星 防衛軍基地 食堂

 

「忙しい中、わざわざ呼び出してしまってすまない」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「それで、今度地球に戻った時、ギンガの実家と俺の実家、それぞれに行き結婚の報告をしようと思っているんだ」

 

「ええ。そうですね。父も母も私と良馬さんの関係を知りませんから」

 

良馬がギンガにプロポーズをしたのはこのアルファ星なので、中嶋家の家族も月村家の家族も良馬がギンガにプロポーズをしたことを知らない。

 

「忍さん、源三郎さん、加奈江さんにはプロポーズをした報告をしないといけないしね」

 

「はい」

 

「‥‥で、その後の事‥挙式についてなんだけど‥‥」

 

良馬は中嶋家、月村家の両家に結婚についての話をした後‥‥

 

挙式について若干気まずそうに言う。

 

「その‥‥ギンガはもしかしたら、挙式はウェディングドレスを期待しているのかもしれないけど‥‥ゴメン、月村家の挙式の形式は決まっているんだ」

 

「そうなんですか?」

 

「あ、ああ‥‥海鳴市の地元の神社である八束神社で挙式をするのが恒例になっていて‥‥だから、ウェディングドレスじゃなくて和装の挙式になるんだ」

 

月村家と八束神社の付き合いは古く、月村家に関連する神事は全て八束神社の神主か巫女が行っている。

 

「彗星帝国戦役後にまほろばで船魂の地鎮祭でも八束神社の神主さんがきたでしょう?」

 

「そう言えば‥‥」

 

ギンガも一度だけ、まほろばで行われた地鎮祭に参加している。

 

「和装の挙式ってどんな式なんですか?」

 

ミッドチルダにあるギンガの実家、ナカジマ家は遠い祖先がなのはやはやての様に日本人であったが、異世界であるミッドチルダの挙式方法は基本、地球における西洋方式が多く、神前式の挙式は馴染みがない。

 

「えっとね、こんな感じだ」

 

良家はタブレット端末でギンガに和装式の挙式の様子を見せる。

 

掛け下も上に羽織る打ち掛けも白色和装の女性と黒の羽織に黒のしま柄に紋付き羽織袴の男性が神社で独特の儀式を行っている様子が映し出される。

 

「な、なんか儀式みたいですね‥‥」

 

「結婚式もある意味では儀式みたいなモノだからね。神前式でも指輪の交換はするから結婚の証は残せる」

 

「この女の人が来ている白い服は?」

 

「それは白無垢。神前式でのウェディングドレスみたいな衣装だ。白無垢以外にも色や柄が華やかな打ち掛けを羽織った色打ち掛け、黒地に松竹梅や鶴とか縁起のいい絵柄が刺繍された着物を着る黒引き振り袖とかもある」

 

良馬はギンガに白無垢以外の花嫁衣裳の画像を見せる。

 

「披露宴は特に決まりはないから、披露宴に関してはドレスで出て良い。ウェディングドレスが着れない代わりに目一杯おしゃれをしてくれ」

 

「わ、分かりました」

 

ウェディングドレスが着れなかった事はちょっと残念と思うが、それ以上に好きな人と結婚できる事の方が嬉しいので、挙式については妥協した。

 

「月村艦長」

 

そんな中、ラップの秘書官が良馬を見つけ声をかけてきた。

 

「ラップ司令官がお呼びです」

 

「分かった。それじゃあ、ギンガまた‥‥」

 

「はい」

 

ラップが自分を呼んでいるとの事なので、良馬は司令官室へと向かった。

 

コン、コン、コン

 

「月村です」

 

「どうぞ」

 

司令官室前で扉をノックして身分を明かすと、部屋の中からラップの声がした。

 

入室許可が出たので良馬は司令官室へと入る。

 

「失礼します。先ほど、秘書官の方よりお呼びとの事なので、参りました」

 

「うむ、実は先日の意見書を防衛会議に提出したのだけれど‥‥」

 

「その反応ですと、やはり良い返答はなかったみたいですね」

 

「ああ。司令部としては、やはり空母よりも戦艦の建造を優先したいみたいだ」

 

「そうですか‥‥まぁ、それは予想の範囲内なので、落胆はそこまで大きくはないんですけど、あの遠征で失った空母の補填ぐらいは必要だと思いますけどね‥‥それに艦載機についても訓練校や士官学校でも飛行科を目指している学生は居るのは事実ですから、艦載機のバリエーションを増やしても良さそうですけど?」

 

「軍の上層部では、ガルマン・ガミラスを完全に信じ切れていないからその点もガルマン・ガミラスとの技術交換に消極的な原因だな」

 

「古代艦長がその場に居たら、反論していたでしょうね」

 

テレサのメッセージが防衛会議で議題にあがった時も軍の上層部や連邦政府の政治家たちが、テレサのメッセージを無視する姿勢を取った時、古代はオブザーバーにもかかわらず、軍の上層部、連邦政府の政治家たちに噛みついた。

 

古代はデスラーを友人として信じており、ガルマン・ガミラスが理由もなくいきなり地球との同盟を解消するとは思っていない。

 

互いに信じなければ同盟関係は維持できない。

 

しかし、軍の上層部や連邦政府の政治家たちのようにかつて絶滅寸前まで追い込まれたことで、ガルマン・ガミラスに対して不信を抱くのも分かる。

 

「藤堂長官もこの件については消極的でしたか?」

 

ヤマトの理解者である藤堂は先見の明があるので、将来防衛軍における空母の必要性は理解が有る筈だ。

 

「長官は沈黙を貫いていた。長官の立場から長官自身も半々なのだろう」

 

防衛軍の長官と言う立場から軍の戦力の復帰は急務であるが、あの遠征の失敗から良馬が意見した空母と艦載機のバリエーションの増加も今後の軍には必要だ。

 

藤堂も判断を決めかねているのだろう。

 

「ですが、少なくともあの遠征で失われた空母の補填くらいはすると思うのですが‥‥?」

 

「それを決めるのも長官を含めた軍の上層部の仕事だ。それに連邦政府はこの前の遠征の失敗の他に今の地球には新たな問題があるみたいで、そっちの問題にも政治家たちは頭を抱えているみたいだ」

 

「新たな問題?」

 

「地球全体の人口減少問題だ」

 

「あぁ~‥‥」

 

地球全体の人口減少については軍人である良馬自身も薄々感じていた。

 

「ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国‥それに宇宙気象にボラーと地球は外宇宙からの侵略が連続起こりましたからね。それはもう、呪われているのかレベルで‥‥」

 

ガミラスからの侵攻だけでなく、ただでさえ地球では少子高齢化に悩んでいる国もあった。

 

外宇宙からの侵略がそれに追い打ちをかけた。

 

ここらで本格的に少子高齢化問題に何らかの対処をしなければ、地球人類が衰退する。

 

「それで、連邦政府も何か対処するのでしょうか?」

 

「噂では一夫多妻制の導入を検討しているみたいだ」

 

「一夫多妻!?それって大丈夫なんですか?」

 

「まぁ、確かに馬鹿げている政策として思えないが、地球の人口を考えるとなりふり構っている余裕もないのだろう」

 

「‥‥」

 

ガミラスからの侵攻を受けた時、地球の未来を思い軍人となったが、別の意味で地球人類の進退に地球の未来に不安を抱く良馬であった。

 

 

その頃、地球では‥‥

 

 

先日、連邦政府で議題にあがった地球全体の人口減少問題に関して、一夫多妻制の導入を検討している話題が連邦政府内だけでなく、世間でも一夫多妻制導入についての話題が上がった。

 

ニュースでもこの話題があがり、連邦政府の政治家たち同様、コメンテーターたちの間でも一夫多妻制について賛否両論の議論がかわされていた。

 

「一夫多妻制か‥‥連邦政府も思い切った事を考えたわね。まぁ、確かに地球の人口減少については対処すべき課題だと思うけど‥‥」

 

海鳴市にある月村家のリビングにて忍がテレビの向こう側で、一夫多妻制について議論するコメンテーターたちの様子を見ながら呟く。

 

「シノブ」

 

「ん?」

 

「イップタサイって何?」

 

そこにユリーシャが忍に一夫多妻制について訊ねる。

 

「一夫多妻制って言うのは、一人の男性が同時に二人以上の妻を持つ制度の事よ」

 

「はてな?」

 

忍の一夫多妻制の説明はユリーシャには伝わらなかったのか、彼女は首を傾げる。

 

「えっと、分かりやすく説明すると‥‥今の世界では一人の男の人に対して結婚できる女の人は一人なの‥‥貴女のお父さんとお母さんみたいに‥‥でも、一夫多妻制って言うのは、一人の男の人に何人もの女の人が結婚できるって言う決まりなのよ」

 

「うーん‥‥そのイップタサイが決まれば、リョーマはギンガ以外の女の人とも結婚するの?」

 

「さあ、それは本人しか分からないわね。一夫多妻制が導入されても絶対に複数の女の人と結婚しなければいけないって訳じゃないみたいだし」

 

「ふぅ~ん‥‥」

 

忍から一夫多妻制の説明を聞いたユリーシャはテレビをジッと見つめる。

 

(一夫多妻制が正式に導入されたら、『月村』の家名に寄って来る輩が増えてくるかもしれないわね)

 

忍としては、一夫多妻制は確かに地球の人口減少問題を解決する手段の一つかもしれないが、月村家としては多妻‥つまり、良馬の奥さんになろうとする女性が増えるのではないかと不安になる。

 

(あの子には一応、異性には気をつけろと幼少の頃から言って来たし、ギンガちゃんなら、まぁ良馬の伴侶としては申し分ないんだけど‥‥)

 

良馬からギンガを紹介してもらった際、彼女の境遇を知り、月村家の人間同様、普通に人間ではない出生に対してコンプレックスを抱いていた。

 

ギンガならば、人ならざる者の辛さ、苦しみを理解していると言う点で、忍は良馬との交際を認めた。

 

しかし、一夫多妻制が正式に導入されるとギンガ以外の女性とも結婚可能となる。

 

勿論最終的判断は良馬が下すのだが、それでもアプローチは数多くくるのではないだろうか?

 

それも良馬本人ではなく、あくまでも『月村』と言う家名のブランド目当てで‥‥

 

(あの頃と比べて世界は大きく変わったわ‥‥)

 

忍はまだ正式に導入されてはいないが、テレビの内容からいずれ一夫多妻制は正式に導入されるであろうと予測していた。

 

そして、自分の青春時代の事を思い出すと、あの頃はまさか世界がこのような世界に変わるとは思ってもみなかった。

 

その後、忍の予想通り連日テレビでは連邦政府が正式に導入するのではないかと言う噂が世間で広まり、一夫多妻制が導入されたあかつきには良馬の伴侶にと娘を持つ企業経営者や財閥の両親からのアプローチが凄かった。

 

(良馬が今、地球に居なくて良かったわ‥‥)

 

忍は良馬が地球を留守にしている事を免罪符として、アプローチを断り続けていた。

 

 

忍が色々と気苦労を重ねている中、同じく中嶋家‥加奈江もこの一夫多妻制導入について思う所があった。

 

(一夫多妻制‥‥地球の人口問題に関して、やっぱり導入せざるを得ないのだろうけど‥‥)

 

(源三郎に私以外に求婚して来る女が居たらどうしよう‥‥)

 

(ううん、源三郎自身も私以外にも好きな女の人が出来たら‥‥)

 

(それにギンガの恋人の月村君‥‥確か実家が大金持ちだから、一夫多妻制なんて導入されたらギンガがないがしろにされないかしら?)

 

加奈江は自身の旦那やギンガの事を案じていた。

 

 

アルファ星よりも地球において一夫多妻制の噂が広がっている中、まほろばと八雲には地球への帰還命令が下った。

 

バース星には防衛軍の他にガルマン・ガミラス軍も駐屯しているが、地球側ではこのアルファ星が今や最前線となっている。

 

バジウド星系のボラー連邦派の星間国家が連合軍を結成して、地球に対して大規模な侵攻を行ってくるかもしれない中、戦艦であるまほろばを最前線から引き離す余裕が今の地球にあるのか少々心配人になる良馬であったが、地球本土、火星防衛艦隊の一部を割き、アルファ星に援軍として派遣した連絡がアルファ星司令部に入ったので、まほろばと八雲が抜けても当面の防衛戦力は維持できるとラップは判断した。

 

何より、ヤマトがアルファ星に残っているのがかなり心強い。

 

後ろ髪を引かれる思いがあったが、乗員の休息やオーバーホールの関係もあるので、まほろばと八雲はアルファ星を後にし、地球へと向かった。

 

(源三郎さんや加奈江さんにギンガの事を伝えなければならないから、今回の地球への帰還は丁度いい機会かもな‥‥)

 

先日、ギンガにプロポーズをしたので、その件を地球に居るギンガの家族に伝えるには丁度いい機会と言う事もあった。

 

恐らくギンガも同じ思いだろう。

 

やがて、まほろばと八雲は久しぶりの故郷である地球へと帰還した。

 

久しぶりの地球と言う事でまほろばを降りて行く乗員たちの表情は明るかった。

 

良馬もドックの整備員に艦を任せ、まほろばを降りる。

 

ギンガも久しぶりの地球に還って来たので、今日は中嶋家に戻って家族との時間をとってもらい、後日に良馬と共に家族へ伝えるつもりだ。

 

ドックにはノエルが車で良馬を迎えに来ていた。

 

「お疲れ様です。良馬さま」

 

「ノエルさんもお迎えありがとう」

 

良馬が車に乗ると、ノエルも運転席に座り、車を走らせる。

 

「留守にしている間、地球を何かあった?」

 

「それについてですが‥良馬さまは今、連邦政府が一夫多妻制の導入を検討している事をご存知でしょうか?」

 

「その話なら、アルファ星にも届いているよ。確かに地球の人口問題は深刻だからね」

 

「はい。それで、まだ一夫多妻制が導入されていないのですが、やはり地球の人口問題から忍さまは、一夫多妻制は導入されると見込んでいる様です」

 

「でも、導入されても絶対に結婚する人数が多数でなければならないって訳ではないでしょう?」

 

「ええ、そうだと思います。ですが、忍さま同様、ご令嬢を持つ様々な企業経営の方や財閥の方々も一夫多妻制が導入されることを見込んで月村家にアピールをしているみたいで、忍さまもその対処に辟易しておられます」

 

「マジで!?」

 

「はい」

 

「‥‥」

 

「良馬さまが思っている以上に『月村』の家名は政財界に大きな影響があると言う事なんです」

 

「‥‥ノエルさん。何か棘のある言い方だな。ノエルさんも俺が軍人になったことに納得していないの?」

 

「いえ、私は良馬さまが選んだ道を否定は致しません」

 

「‥‥」

 

(ガミラスが地球へ侵攻してこなかったら、忍さんの跡を継ぐ為に月村グループ系列の会社に入って、どこかの女の人と政略結婚をしていたのかもしれなかった‥‥)

 

(それだと加奈江さんにもギンガにも会えなかったな‥‥)

 

軍人でない未来もあったのかもしれない。

 

その場合、今の自分とは異なる人の出会いが当然あったのだろう。

 

しかし、軍人となったからこそ、ギンガに会えた。

 

軍人ではない未来を見る術はなく、軍人となった今の自分に後悔はない。

 

「良馬さま」

 

「ん?」

 

「先日までは良馬さまが地球に不在と言う事で、忍さまはアプローチをスルーしていました。ですが、良馬さまが地球に還って来た事が知られると、アプローチが激しくなると思います」

 

「まさか、その対処を俺にしろと?」

 

「まぁ、本来ですとそれが筋なのですが、久しぶりに地球へ還って来た良馬さまにそれは酷なので、良馬さまが地球に還って来た事を悟られないように過ごして下さい」

 

「外出は控えたり、変装しろと?」

 

「そういう事になりますね」

 

「了解」

 

ノエルの言う通り、地球での休暇中に一夫多妻制の導入を見込んだお見合いはやりたくない。

 

まったく外出は出来ない訳ではないが、確かにどこに目があるのか分からない。

 

外に出る際は変装しなければならなさそうだ。

 

 

八雲を降りたティアナの下にうららから連絡が来た。

 

『ティアナ?今、地球に居るって聞いたんだけど』

 

「ええ、ついさっき地球に戻ったわ」

 

『それだったら、一緒に飲まない?久しぶりの再会を祝して』

 

「いいわよ。時間と場所は?」

 

ティアナとしても訓練校を卒業後、うららと会えなかったので、久しぶりに彼女の顔も見たかった。

 

うららはティアナに場所と時間を伝える。

 

それから、待ち合わせ時間となり、ティアナがうららの伝えた居酒屋に向かうと、

 

「ティアナ!!」

 

「うらら、久しぶり」

 

居酒屋の前でうららが手を振り、ティアナを待っていた。

 

訓練校卒業後、二人には積もる話もあるので、早速居酒屋に入り席に着き、飲み物を注文する。

 

「お待たせしました」

 

店員が注文した飲み物を持ってきて、二人はソレを手に取り、

 

「それじゃあ‥‥」

 

「久しぶりの再会に‥‥」

 

「「乾杯!!」」

 

再会の乾杯をする。

 

「うららは訓練校卒業後、どんな事があったの?」

 

「うーん‥‥私は内惑星艦隊所属の護衛艦勤務だったから、太陽系内を航行する輸送船の護衛やパトロール隊を編成しての哨戒任務だったから、卒業仕立ての年で言えば平穏っちゃ、平穏で、悪く言えば暇だったわね。ティアナの方は?確か新型の巡洋艦だったから、乗り心地とか良かったんじゃない?」

 

「まぁ、居住性は良かったけど、任務の方は大変だったわ」

 

「あっ、そう言えばティアナの乗っていた艦ってあの遠征にも参戦したのよね?」

 

「ええ‥‥でもそれだけじゃなかったわ‥‥」

 

「えっ?」

 

「当初の予定だとケンタウロス座のアルファ星までの試験航海だったのが、バース星まで医療物資を届けて、その後はバジウド星系の哨戒任務に敵の次元潜航艦の捜索と撃破、ガルマン・ガミラス軍の撤退支援にさっき、うららも言ったあの遠征‥‥訓練校を卒業したばかりの新人には荷が重い任務ばかりだったわ」

 

「ず、随分と壮絶な初年度ね」

 

ティアナがこなしてきた任務を聞いてうららは顔を引き攣らせる。

 

「ええ‥‥死傷者もだしたし、艦内で流行り病が起きて私自身も感染して寝込んだし」

 

「それは大変だったわね」

 

「まさか、宇宙に出て病気になるとは思わなかったわ。あの時は‥‥」

 

酒や料理を嗜みつつ二人はこれまであった出来事を話していく‥‥

 

そして、酒も進んで行くと‥‥

 

「軍は男所帯な所があるじゃない~?」

 

「そ、そうね」

 

うららが酒に酔っているのか顔を赤くして、何だか愚痴っぽい事を言い出した。

 

「だから~、いい男が居ると思ったにぃ~なかなかいい男が見つからないのよぉ~」

 

「そ、そう‥‥」

 

「ティアナ~あんたの艦で、いい男居ない~?」

 

「もう、あんたは一体何のために軍に入ったのよ」

 

「勿論、地球の平和のためよぉ~でも、そんな平和を目指す私にも出会いと女としての幸せがあっても良いじゃない!!」

 

「え、ええ‥そうね‥‥」

 

酒が進みうららがティアナに絡んで来る。

 

「ティアナ‥‥あんたはどうなの?」

 

「えっ?なにが?」

 

「なにカマトトぶっているのよぉ~男よ、お・と・こ‥付き合っている人は居るの?」

 

「‥‥」

 

ティアナは気まずそうにうららから視線を逸らす。

 

「ん?何よ?そのリアクション‥‥ま、まさか‥‥あんた‥‥」

 

うららは冗談半分でティアナに異性関係を訊ねるが、ティアナのリアクションを見て、うららはティアナに彼氏が居るのだと察した。

 

「えぇーっ!!居るの!?彼氏居るの!?ねぇ、どうなの!?」

 

「う、うん‥つい、先日‥‥」

 

「えっ!?誰!?誰なの!?」

 

うららもギンガ同様、やはりティアラの恋愛事情は知りたいらしい。

 

「えっと‥北野さんって人‥‥」

 

「北野?もしかして北野哲?」

 

「う、うん。そう‥‥」

 

「えぇーっ!?あの北野先輩!?」

 

「知っているの?」

 

「当然じゃない!!北野哲って士官学校を首席卒業した優等生だし、卒業間近に作戦立案もした超エリートよ!!」

 

(へぇ~北野さんって優等生だったんだ‥‥)

 

ティアラはまさか北野がそこまでのエリート優等生だとは知らなかった。

 

ティアラとフェイトが救助されたの雷王作戦の後の事で、その雷王作戦を立案したの北野だとうらら聞いて知った。

 

「そんな人と何処で知り合ったのよ!?」

 

「パルチザン活動をしている時に上官?だったのよ。それで、この前、アルファ星で北野さんと再会して、そこから一緒に食事をしたりして‥‥」

 

「それってデートじゃん!!」

 

「そ、そうなのかな?」

 

「そうだって!!それで、それで‥‥」

 

「それで、北野さんから『付き合ってくれ』って言われて‥‥」

 

「うぅ~いいな~ティアナ」

 

ティアナの恋愛感情を聞いて羨むうららであった。

 

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