星の海へ   作:ステルス兄貴

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あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


二百二十八話 結婚までのカウントダウン

 

 

ケンタウロス座アルファ星から久しぶりに地球へと帰還したまほろばと八雲。

 

その地球において、軍部では先日行われ失敗に終わったバジウド星系への遠征で失われた戦力の復興。

 

そして、連邦政府は地球の人口減少問題についてそれぞれ頭を抱えていた。

 

地球の人口減少問題の解決案として導入が検討されている一夫多妻制度‥‥

 

大昔の地球では貴族や王家などで行われていた風習であるが、医療技術の発達における人類の長寿化によって一夫多妻制度は段々と廃れて行き一部の地域を除いて一夫一妻制が当たり前となっていた。

 

しかし、ガミラスを始めとする外宇宙からの侵略戦争において、地球全体の人口は一気に急降下‥‥

 

このままでは地球人類が外宇宙からの侵略ではなく、自然消滅してしまう。

 

事実、地球以外の星‥イスカンダル星人はその特有の成長速度の為かヤマトがイスカンダルに到着した時、純血のイスカンダル星人は女王であるスターシアだけとなっており、一応、守との間に地球人との混血ではあるが、サーシアとユリーシャが生きているが、純血で言えばイスカンダル星人はもはや絶滅が決まっている。

 

ガミラスや暗黒星団帝国も種を守る為に地球へ戦争を仕掛けて来たが、連邦政府としてはそのような武力による方法ではなく、違った形で何としてでも地球人類の種を後世に存続しなければならない。

 

連邦政府は地球人類の存続のために一夫多妻制度を導入しようと検討するも、一夫多妻制度は検討すればするほど何かと課題がある制度なので、そう簡単に導入は出来ない。

 

そこで、政治家たちはいくつもの草案を出す。

 

一夫多妻制度と言うが、実際は二~三人の限定的な人数としてまずは様子を見る。

 

世界全てではなく、少子高齢化が顕著な一部の国で先行して導入し、人口変動の推移を観察する。

 

一夫多妻制度の導入に消極的な政治家たちも 『条件付きなら‥‥』 という感じで一夫多妻制度の導入へ妥協する姿勢を取る。

 

まだ正式に導入はされていないが、テレビでも連日この一夫多妻制度の導入について、コメンテーターや大学の教授たちが一夫多妻制度の導入について賛否両論を交わしている。

 

しかし、地球の人口を鑑みるに一夫多妻制はいずれ導入されるだろうと忍は察していた。

 

それは忍以外にも先見の明がある企業経営者や財閥の人間も察していた。

 

だからこそ、名家との繋がりを持つために自分の娘を名家に嫁がせたいと思うのは当然の事で、そうした家に生まれた娘の方も自分の役割を知っての事か運命を受け入れている。

 

まぁ、その中には自分の家よりも権力が大きな家に嫁ぐ事‥玉の輿を狙う女性や家族も居た。

 

連邦政府が一夫多妻制度の導入を検討している中、ティアナは訓練校の同期であるうららと訓練校を卒業以来出会い、居酒屋で一緒に飲む。

 

酒が進むにつれ、うららは愚痴を零しながらティアナへと絡み、自分の知らぬ間に彼氏が出来ていた事に驚愕と同時にティアナを羨んだ。

 

ギンガも養子とは言え、久しぶりに地球の実家に戻り、家族団欒の時間を過ごし、良馬も久しぶりの実家へと戻る。

 

まほろばが停泊したドックから実家に戻る道中、良馬はノエルから地球の現状を聞かされる。

 

良馬自身、一夫多妻制の話はアルファ星に居た時から既に知っていたが、月村家には一夫多妻制を見越して様々な企業の経営者や財閥の方々からアプローチが多数来ている事を聞いた。

 

忍は肝心の良馬本人が地球に不在だったので、のらりくらりと躱してきた。

 

しかし、その良馬本人が地球に居たらアプローチが再び来る可能性が高い。

 

ノエルはそれを避けるために周囲には良馬が地球に居ない様に振る舞う事を勧めた。

 

良馬が玄関を開けると、

 

「リョーマ!!」

 

ユリーシャが良馬に抱き着いて来た。

 

「ユリーシャ、元気だった?」

 

良馬としてもユリーシャとは久しぶりの再会であり、彼女は先輩である守から託された娘だったので、彼女の事を気にするのは当然だった。

 

「うん!!リョーマは?」

 

「まぁ、色々とあってちょっと疲れたかな?」

 

その後、食事と入浴を済ませ、寝室で眠っているとユリーシャが良馬のベッドに潜り込んで来たのは言うまでも無かった。

 

翌朝、朝食の席にて、良馬が忍に昨夜、ノエルが語った話題について確認する。

 

「ねぇ、忍さん」

 

「ん?何かしら?」

 

「昨夜、ノエルさんから聞いたけど、色んな家からのアプローチが凄かったって‥‥」

 

「ああ、日本だけでなく、海外からも来たわ」

 

「アルファ星で連邦政府が一夫多妻制の導入を検討しているって聞いていたけど、忍さんは導入されると思う?一夫多妻制‥‥」

 

「そうね‥‥地球の人口減少を見る限り‥‥私は導入されると思っているわ‥一夫多妻制‥‥もっとも私だけでなく、一夫多妻制が導入されることを見越していたからこそ、家にアプローチをしてくる財閥や経営者一族が増えているのよ」

 

「‥‥」

 

「でも、一夫多妻制とは言え、大昔みたいに奥さんを何十人、何百人と囲うのは財政の問題で無理があるわね。流石に家だって何十人、何百人の人を養うのは無理があるもの‥それに子供が生まれれば更に出費がかさむでしょう?」

 

「じゃあ、政府はどういう風に導入すると思う?」

 

「うーん‥二、三人の奥さんでも一夫多妻制じゃない?多分、多くても三、四人くらいじゃないかしら?」

 

「まぁ、一人以上の奥さんを娶ったら、多妻になるからな‥‥確かに何十人もの女性を娶り養うのは大変だろうし、政府の十分な福祉制度がないとあっという間に破綻してしまうな」

 

「あくまでも私の見解だから、絶対とは言えないわ。政府からの発表を待つしかないわね。本当に一夫多妻制を導入するのか?それとも検討した結果、導入は見送り、人口減少を食い止める別の代案を出すのか‥‥」

 

「別の代案か‥‥そんな代案有るのかな?」

 

一夫多妻制が導入されたら連邦政府から全世界に向けてソレが発表されるはずだ。

 

その中には何人までの女性を妻として娶って良いのか、その人数も発表されるだろう。

 

だが、忍や一部の財閥関係者は一夫多妻制を導入すると見込んでいるが、一夫多妻制は財政を含め様々な課題がある制度‥‥

 

忍は連邦政府の政治家ではないので、連邦政府は一夫多妻制の導入を見送る可能性だってある。

 

「ねぇ、リョーマ」

 

すると、今度はユリーシャが良馬に声をかける。

 

「ん?なんだい?」

 

「イップタサイが出来たら、ギンガも私もリョーマとケッコン出来るの?」

 

「‥‥え、えっと‥ギンガは兎も角、ユリーシャは‥どうなんだろう?」

 

ユリーシャの見た目は成人女性なのだが、イスカンダル星人特有の成長速度から、実年齢はまだ一桁代だ。

 

そう思うとユリーシャは結婚してもいいのだろうか?

 

(女性に年齢を聞くのは失礼だけど、スターシアさんに年齢を聞いておくべきだったな‥‥)

 

(って言うか、何、俺はユリーシャを意識しているのさ!?)

 

(彼女は古代先輩から託された大事なゲストなんだから)

 

ユリーシャの母親であるスターシア。

 

彼女は生粋のイスカンダル星人だったので、当然スターシアも幼年期時期は短かった筈だ。

 

イスカンダル星人特有の成長速度を知ったのは地球が暗黒星団帝国に占領されている時期であり、暗黒星団帝国の本星、デザリアム星を破壊した後、守とサーシア、トチローはイスカンダル再興のためにイスカンダルへと向かった。

 

その為、守と一緒になった時、娘のサーシアとユリーシャを妊娠した時のスターシアの年齢を聞くことは出来ない。

 

わざわざスターシアに年齢を聞くために地球から14万8000光年の先にあるイスカンダルへ行く訳にもいかない。

 

ユリーシャから一夫多妻制について言われ、尚且つユリーシャの今の身体つきから実年齢は関係なく、異性として意識してしまう。

 

「えぇ~でも、イップタサイは沢山の女の人とケッコン出来るんでしょう?」

 

「それはあっているけど、日本では結婚出来る年齢が決められているんだよ」

 

年齢制限でこの場を凌ぐ良馬だった。

 

 

その頃、中嶋家では‥‥

 

昨夜、地球へ久しぶりに還ったギンガは家族団欒の一夜を過ごした。

 

地球での非番と言う事でギンガは久しぶりの惰眠を貪った。

 

ギンガが起きてくると、養父である源三郎も義妹の桜花も既に出勤と通学しており、家に居るのはギンガと加奈江の二人となっていた。

 

そして、遅い朝食を摂りながら何気なくテレビを見ていると、報道番組にて連邦政府が一夫多妻制の導入を検討している事を知った。

 

「えっ?一夫多妻制!?」

 

「あら?ギンガは知らなかったの?てっきりアルファ星でもこの話題が入ってきていると思っていたわ」

 

加奈江が意外そうに言う。

 

良馬はラップを通じて地球で一夫多妻制の導入検討を知ったが、地球から距離があるアルファ星では、全ての人に一夫多妻制の話題がまだ浸透していなかった。

 

「それで、この一夫多妻制って本当にやるの?」

 

「うーん‥‥どうなんだろう?確かにニュースで言っている様に地球の人口は減少しているけど、それで一夫多妻制の導入はねぇ‥‥」

 

加奈江は忍とは異なり、一夫多妻制の導入については懐疑的だ。

 

近代の地球同様、一夫多妻はミッドチルダを始めとする他の管理世界でも導入されていない風習だったので、ギンガも戸惑いが隠せない。

 

「も、もし、一夫多妻制になったらどうなるんだろう‥‥」

 

「ま、まぁ、文字通り、一人の男の人が何人かの女の人を妻として娶るって事になるわね」

 

「‥‥」

 

「で、でも、あくまでもそれは建前で、絶対に複数の女性と結婚しなければならないって訳じゃないわよ。これまで通り、一人の女性しか娶らない男の人だっていると思うわ」

 

「でも、良馬さんの家、お金持ちだし‥‥お金持ちの家ってやっぱり、沢山の愛人がいるイメージがあるし‥‥」

 

(私が居なくなっている間に一体、ギンガはどんな生活をしてきたのかしら?)

 

加奈江は前世の自分の死後、ギンガの私生活に突っ込みをいれたかった。

 

「そ、そう言えばギンガ。月村君とはどこまで進んだの?」

 

「えっ?義母さん、私と良馬さんの仲を知っているの!?」

 

ギンガは自分と良馬の関係を加奈江が知っている事に驚く。

 

自分と良馬が交際しているのはごく一部の人間しかしらず、まだ中嶋家の面々には伝えていないので、加奈江が既に知っているのだからギンガの反のは当然のリアクションだ。

 

「うーん‥あれで隠していると思っている方が‥‥あっ、でも源三郎さんも桜花も気づいていないみたいだけど、お母さんの目は節穴じゃないわよ」

 

「あぅ~‥‥」

 

まさか、加奈江に知らぬ間に自分たちの関係がバレている事にギンガは羞恥から顔を赤くして俯く。

 

なお、良馬は既にギンガとの関係が加奈江にバレている。

 

それに加奈江自身の秘密も‥‥

 

「それで、ギンガは一夫多妻制に不安を抱いているみたいだけど、何が不安なの?」

 

「えっと‥‥実は、先日‥‥」

 

ギンガは加奈江にアルファ星で良馬からプロポーズを受けた話をした。

 

「ええっー!!良馬くんからプロポーズされた!!ギンガ、もう、そんな所まで行ったの!?」

 

加奈江としてもまさかプロポーズされていたのは予想外だったので、これには加奈江も驚いた。

 

「でも、プロポーズされたんでしょう?ギンガは一体何が不安なの?」

 

「‥確かに良馬さんからプロポーズされましたけど、お金持ちの家だと繋がりを大切にすると思って‥‥だから、私との婚姻を解約して他のお金持ちの家の女性たちと結婚するんじゃないかと思って‥‥」

 

ギンガは加奈江に不安要素を口にする。

 

「大丈夫よ、ギンガ。もし、良馬くんがそんな風に思っていたら、当の昔にどこかのお金持ちの家のお嬢さんと結婚している筈よ」

 

「‥‥」

 

「それに月村家の御当主の忍さんは厳格な人よ。いくら良馬くんが月村家の人でも、そう簡単に政略結婚なんてさせる筈がないわ」

 

「そ、そうかな‥‥?」

 

「そうよ。ギンガは、今マリッジブルーみたいな状態なのよ」

 

「ま、マリッジブルー?」

 

聞き慣れない言葉にギンガは首を傾げる。

 

「マリッジブルーって言うのは、結婚するという自覚が芽生えることで、家庭を築くことへの不安や迷いが現れてしまう事よ。ギンガにとって結婚は当然、初めての経験だし、良馬くんのお家がお金持ちの家、そして地球が一夫多妻制の導入を検討している事で、不安が増しているだけよ」

 

加奈江の言う通り、交際と結婚は若干異なる。

 

そこに一夫多妻制の導入の検討と月村家が名家だと言うプレッシャーからギンガは加奈江の言う通り、マリッジブルー気味になっていた。

 

(これじゃあ、ティアナに偉そうなことを言えないわね)

 

アルファ星で交際に悩んでいたティアナの相談に乗っていたギンガであったが、地球に戻り、一夫多妻制の話を聞き、一気にマリッジブルー気味になっていた事に思わず自嘲めいた笑みが零れる。

 

そこへ、

 

Prrrr‥‥prrrr‥‥

 

中嶋家の電話が鳴った。

 

「はい。中嶋でございます」

 

加奈江が電話に出ると、

 

『加奈江さん?月村ですけど‥‥』

 

「あら?良馬くん。どうしたの?」

 

「えっ?良馬さん!?」

 

良馬からの突然の電話にギンガはドキッとする。

 

『その‥加奈江さんと源三郎さんに伝えたい事がありまして‥‥』

 

「それってもしかして、プロポーズの件?」

 

『えっ?もう、知っているんですか?』

 

「ええ、ついさっき、ギンガから聞いたわ」

 

『そ、そうですか‥‥と、兎に角、お二人にお話があるので、時間をとってもらいたいのですが‥‥』

 

「分かったわ。源三郎さんには私の方から伝えておくから、時間が分かったら、こっちから連絡を入れるから」

 

『分かりました』

 

加奈江もギンガも良馬が一体何の用で、電話をしてきたのかすぐに察した。

 

「ほら、これでギンガが抱いている不安はマリッジブルーか取り越し苦労って事よ」

 

わざわざギンガの義両親である加奈江と源三郎を交えて婚約破棄を伝えるのも不自然だ。

 

「は、はい」

 

加奈江の言葉と良馬からの電話で、ギンガが加奈江の言うようにマリッジブルーか取り越し苦労なのかと思った。

 

(やっと良馬くんもギンガを貰う気になったのね‥‥)

 

(前世では叶わなかったギンガの結婚式を見られるのね。楽しみだわ)

 

加奈江には良馬が一体何の用で今日、連絡をしてきたのか確信があった。

 

 

地球が一夫多妻制の導入検討で揺れ、良馬とギンガ‥両者の関係がゆっくりであるが、着実に進んでいる中、メガロポリスの市街地にある某ビジネスホテルの一室では‥‥

 

「うぅ~頭いた~‥‥昨夜は少し飲み過ぎたわね~‥‥」

 

ティアナが目を覚まし、ベッドからゆっくりと起き上がる。

 

隣のベッドでは、うららがまだ眠っている。

 

昨夜、うららと居酒屋で飲んで、酒が進んだうららに絡まれた後、ティアナは酔い潰れたうららを近くのビジネスホテルまで運び、自らも同じ部屋で一夜を過ごした。

 

(運よくツインルームに空きがあって良かったわ。流石にシングル二つを借りるとお金が‥‥)

 

(それに酔いつぶれているうららを一人にしておくと危ないからね)

 

(まぁ、うららが起きたら、ホテル代の半額は払ってもらおう‥‥)

 

「とりあえずシャワーを浴びて、酔いを醒まそう‥‥」

 

ホテルの室内に設置されているシャワールームに入りシャワーを浴びるティアナ。

 

頭の上から降り注ぐ温水を浴びている内にだんだんと頭も働いてくる。

 

しかし、時折ズキッとくる二日酔いは治っていない。

 

「後で気付け薬か頭痛薬でも買ってこよう‥‥うららは私以上に酷いかもしれないわね」

 

うらら程飲んでいない自分でさえ、このザマなのだから自分以上に飲んだうららはきっと自分よりもヒドイ二日酔いの筈だ。

 

「ふぅ~‥‥」

 

シャワールームから出て着替え、冷蔵庫にあったミネラルウォーターのボトルを手に寝室に戻ってみると、うららが目を覚ました。

 

「うぅ~‥‥あれ?此処、どこ?」

 

「昨夜一緒に飲んだ居酒屋の近くにあるホテルよ」

 

「ん?あれ?ティアナ?」

 

「おはよう。とりあえず、シャワー浴びて来たら?」

 

「うん。そうする‥‥」

 

ベッドからのそのそと身体を起こしたうららはシャワールームへと向かった。

 

「ふぅ~さっぱりした~」

 

その後、うららもシャワーを浴び終え、寝室に戻って来た。

 

「目は覚めた?」

 

「ええ。それで、何で私たち、ホテルに泊まっているの?」

 

「‥覚えていないの?」

 

「う、うん‥‥」

 

「はぁ~‥‥」

 

うららは昨夜の居酒屋を出たからの記憶はないみたいで、どうして自分とティアナがホテルに居るのかをティアナに訊ねる。

 

「昨夜、居酒屋で一緒に飲んで、あんたが私に絡み酒したとこまで覚えている?」

 

「えっと‥‥」

 

ティアナに言われ、うららはひたすら昨夜の事を思い出そうとする。

 

「ああ!!確かティアナに彼氏が居るなんて深酒をしてそんな妄言を聞いたような気がする!!」

 

「妄言ってなによ!!事実よ!!じ・じ・つ!!」

 

「ええええっー!!あれって本当だったの!?」

 

酒の酔いもあったが、うららはティアナに彼氏が出来たことを何かの間違いだと思っていたが、それはティアナ本人から否定された。

 

「ま、まさか本当にティアナに彼氏が‥‥」

 

「だから居るって言ったでしょう?‥‥ちょっと、なに、ショック受けているのよ」

 

「だ、だってティアナに出来て私に居ないんだもん‥‥」

 

「巡り合わせだから‥‥私だってあの時、パルチザン活動に参加していなければ、顔に傷を受ける事もなかったし、北野さんとも会う事も無かっただろうし‥‥」

 

北野との出会いを思い出し、ほんのりと頬を赤らめるティアナ。

 

「‥‥なんか、彼氏が出来てマウントを取られたと言うか、余裕そうね?ティアナ」

 

「だから、そんなんじゃないってば!!」

 

「ムキになって否定する所が怪しい~」

 

「はい、はい、目が覚めて着替え終わったのなら、チェックアウトして、近くのファミレスで朝ご飯でも食べに行きましょう。ついでにドラックストアによって、頭痛薬が欲しいわ」

 

「頭痛薬?ティアナ、風邪でもひいた?」

 

「二日酔いで頭が痛いのよ‥‥って言うか、うらら。あんたは頭痛くないの?」

 

「えっ?私?全然平気だよ」

 

「嘘でしょう‥‥」

 

自分よりも沢山酒を飲んでいた筈のうららが二日酔いでないことにティアナは顔を引き攣らせた。

 

それから、ティアナは24時間営業のドラックストアで頭痛薬を購入し、うららと共にファミレスへと向かう。

 

「あっ、そう言えばさっきのホテルの宿泊費の半分、貰っていい?」

 

「えっ?いくら?」

 

「3500円」

 

「3500円ね‥‥はい」

 

うららは財布からお金を取り出すとティアラに手渡す。

 

そして、朝食の料理を注文し、その料理が来るまでティアナはファミレスに設置されていた雑誌コーナーから朝刊を持って来ると席でその朝刊を見る。

 

すると朝刊の見出しには例の一夫多妻制についての記事が書かれていた。

 

「えっ?一夫多妻制!?何それ!?」

 

「あれ?ティアナは知らなかったの?」

 

一夫多妻制の見出しを見たティアナは思わず声をあげる。

 

そこへ、ドリンクバーから飲み物を持ったうららが席に戻って来る。

 

うららのリアクションから彼女は既に一夫多妻制について知っている様子だった。

 

「え、ええ‥‥」

 

「そっか、ティアナはアルファ星やバース星に行ってたもんね」

 

「それで、この一夫多妻制ってなによ?どうしてそんな事になっているのよ」

 

「ガミラスとの戦争以降、地球の人口減少問題が浮き彫りになって、このままだと地球人類が消滅してしまうから、それを防ぐために人口を増やさないといけないでしょう?だから、連邦政府は一夫多妻制を導入して地球人口を増やそうって試みをしようとしているの」

 

「それが一夫多妻制の導入ってことね?」

 

「ええ‥‥何人もの奥さんを娶れるのに、私にはその出会いさえないのよ‥‥ハーレムなんて男にとって夢の様な出来事なんじゃないの!?」

 

うららは地球が何故、一夫多妻制を導入しようとしているのかティアナに説明する。

 

それと同時に自分にアプローチしてくる異性が居ない事に嘆いていた。

 

「男の人だって、選ぶ権利があるでしょう」

 

「むかー!!それって私には女としての魅力が無いって言いたいの!?」

 

「いや、そうじゃないけど、適当に選ばれてただ子供を産むための道具に成り下がりたいの?」

 

「そ、それは‥‥」

 

「そんなの女としての屈辱じゃない」

 

「うぅ~‥‥一夫多妻制が導入されたら、うららにだってその内、きっといい出会いがあるって、焦らずに軍人としても女としても今は磨きなさい」

 

「ティアナに諭されるとは‥‥」

 

「あんた、所々私に対して毒を吐くわね‥‥」

 

「でも、やっぱり彼氏が出来ると余裕があるわね」

 

「ん?」

 

「だってそうでしょう?一夫多妻制って事はティアナの彼氏である北野さんもティアナ以外の女の人を彼女にして、後々奥さんにする事も出来るって訳じゃない?」

 

「あっ‥‥」

 

うららの指摘にティアナは思わず一夫多妻制の意味を理解した。

 

(そ、そうよ‥うららの言う通りじゃない!!)

 

(私の場合、婚約者じゃなくて彼女だから、別の女と婚約して、私を捨てる事も可能じゃない!!)

 

(私は本番前の練習台ってこと!?)

 

「あ、あれ?ティアナ。どうしたの?顔色が悪いけど‥‥?もしかして二日酔いが酷くなった?」

 

うららがティアナの様子に違和感を覚えて声をかける。

 

奇しくもティアナはギンガと似た不安を抱くのであった。

 

 

ティアナがファミレスで一夫多妻制の導入について不安を抱いて居る頃、防衛軍司令部の作戦五課にある源三郎のデスクの上にある電話が鳴る。

 

「はい。中嶋です」

 

『あなた、ちょっといいかしら?』

 

「ん?加奈江か?どうした?なんだか嬉しそうに様子だが?」

 

『あら?そう見える?』

 

「あからさまだぞ」

 

モニターに映る加奈江の姿はもう嬉しさを隠しきれないと言った様子で、誰が見ても加奈江の機嫌が良いことが窺える。

 

『フフ、実は今日良馬君から連絡があったの』

 

「ん?月村から?」

 

『ええ、源三郎と話したい事があるのよ』

 

「えっ?月村が俺と?」

 

『そうなの。出来れば近い内に良馬くんと話す時間を設けてもらいたのだけれど‥‥』

 

「分かった。次の週末に時間を設ける」

 

『分かったわ』

 

源三郎から時間を設けた加奈江は、ギンガに振り向き、

 

「今度の週末に時間を取ったわ」

 

「は、はい」

 

「それじゃあ、早速、週末に向けて準備をしましょう」

 

「えっ?準備?」

 

ギンガは加奈江の言葉に首を傾げた。

 

 

一方、メガロポリスにある某ファミレスでは‥‥

 

 

「あっ、北野さん?」

 

ティアナはうららの指摘を受けて不安になり、急ぎ北野へ連絡を取った。

 

『ランスターさん?どうしたんですか?』

 

「じ、実は‥‥」

 

ティアナは今、連邦政府が検討している一夫多妻制について北野に話した。

 

『ああ、噂には聞いていましたが、地球ではそこまで世間に広がっていたとは‥‥』

 

北野も連邦政府が一夫多妻制の導入を検討している事を知っていた。

 

「あ、あの‥北野さんも一夫多妻が行われたら、やっぱり、大勢の女性を侍らせたいと思うのでしょうか?」

 

『えっ?』

 

男性ならば複数の女性を侍らせる所謂ハーレムと言うモノに憧れを抱くのだろうか?

 

『あ、あの‥ランスターさん』

 

「は、はい」

 

『僕は複数の女性全てを愛せる程、器用ではありません』

 

「えっ?」

 

『例え連邦政府が一夫多妻制を導入しても僕は、一人の女性を‥‥貴女を愛しています』

 

「‥‥」

 

北野からの改めた愛の告白を聞き、ティアナの顔は真っ赤になる。

 

「ちょ、ちょっと、ティアナ。あんた顔が真っ赤よ!!やっぱり二日酔いじゃなくて風なんじゃないの!?」

 

「だ、大丈夫よ‥‥」

 

「大丈夫って顔じゃないわよ!!ティアナ!!」

 

ティアナの様子を見てうららが声を上げた。

 

「え、えっと‥北野さん?」

 

『はい。あれ?ランスターさん?』

 

「ああ、ごめん。私、ティアナの友人の日下部です」

 

『は、はぁ‥‥』

 

「ティアナ、ちょっと二日酔いでダウンしちゃったみたい」

 

『ええっ!!二日酔い!?ランスターさんは大丈夫なんですか!?』

 

うららからティアナが二日酔いで倒れたと聞き北野はティアナの身を案じる。

 

「薬を飲ませて横にすれば大丈夫ですよ。それじゃあ‥‥ティアナの事、よろしくお願いします」

 

『は、はい』

 

ティアナが羞恥心の限界を越えてテーブルに突っ伏してしまったので、代わりにうららが北野にティアナの状態を伝え、電話を切った。

 

「愛されているじゃないの、ティアナ」

 

「‥‥」

 

「ホント、アンタが羨ましいわ」

 

一夫多妻制が導入されても北野はティアナ以外の女性を娶らないだろうとうららは思った。

 

 

それから月日が過ぎ、その週の週末‥‥

 

「おはよう‥‥ん?おい、おい、ギンガも加奈江もどうしてそんなにめかし込んでいるんだ?今日は月村が来るんだろう?それなのにどこかに出かけるのか?」

 

朝、起きて来た源三郎がリビングに降りてくるとギンガも加奈江もこれから外出するのかと思うくらいめかし込んでいた。

 

「お母さん、どう?」

 

そこに桜花もリビングにやって来た。

 

「桜花もか?」

 

桜花もギンガや加奈江同様、他所行きの服を着ていた。

 

「一体、何があるんだ?」

 

「それは良馬くんが来れば分かるわ」

 

「?」

 

「さっ、あなたも身なりを整えてね。今日は大切な日なんだから」

 

「えっ?今日は何かの記念日だったか?」

 

(結婚記念日でもないし、加奈江の誕生日でもない、桜花の誕生日でもない‥‥)

 

(ギンガの誕生日‥‥でもないよな)

 

(一体何があるんだ?)

 

源三郎は今日が一体何の日か分からない内に余所行きのスーツに着替えさせられた。

 

「朝飯まだなんだけどな‥‥」

 

「我慢してください。他所行きのスーツを汚す訳にはいかないでしょう?」

 

「やれやれ、月村の奴、一体何を考えているんだ?」

 

中嶋一家が良馬の到着を待っていると、

 

ピンポーン!!

 

中嶋家のインターホンが鳴った。

 

「お?月村の奴が来たのか?」

 

「そうみたいですね。ちょっと迎えに行ってきます」

 

加奈江が玄関まで出向き、応対し、良馬を連れてリビングまで戻って来た。

 

リビングへとやって来た良馬は、普段源三郎が見慣れている軍服でもカジュアルな私服でもなく、高級そうなスーツに身を包んでいる。

 

「ん?なんだ?なんだ?月村までめかし込んで‥‥今日はみんなでどこかに出かけるのか?」

 

「あっ、いえ‥出かける訳ではなく‥‥」

 

良馬はチラッとギンガを見る。

 

すると、ギンガも小さく頷く。

 

そして、リビングのテーブルに良馬とギンガが並んで座り、その大変に源三郎、加奈江、桜花が座る。

 

(おい、おい、おい、この展開まさか‥‥)

 

此処に来て源三郎も何故今日、良馬が中嶋家に来たのか?

 

何故、自分を含めて皆が他所行きの服を着てめかし込んでいるのか?

 

その理由を察した。

 

「中嶋源三郎さん」

 

「お、おう」

 

戦場で敵を前にするかのように真剣な良馬の視線が源三郎を見つめる。

 

その視線に思わずたじろいでしまう源三郎。

 

「娘さんを‥‥ギンガを俺に下さい!!」

 

宣言と共に良馬が源三郎に深々と頭を下げる。

 

すると、ギンガも良馬に倣って彼女も源三郎に頭を下げる。

 

「‥‥」

 

良馬からの宣言に源三郎は暫し、言葉の意味が理解できず、唖然とするが、そこは防衛軍軍人。

 

すぐに正気を取り戻し、

 

「普通なら、この場で『お前の様などこの馬の骨とも分からねぇ奴に娘はやれるか』‥っていう所なんだがなぁ~‥‥」

 

源三郎は照れ隠しをするかのように頭を掻く。

 

士官学校を卒業してから面倒をみてきたので、良馬の人となりは理解している。

 

彼の実家が世界でも有数の名家である事も‥‥

 

「先に言うが‥‥」

 

「は、はい」

 

「お前も知っての通り、俺たち家族とギンガは血が繋がっていない‥‥それでも、俺たちはギンガを本当の家族だと思って接して来た。いくらお前さんの人となりを理解しているとは言え、大事な娘を嫁に出すんだ‥ギンガを泣かせるような真似をしたら、例え天下の月村家であっても俺は容赦しねぇぞ」

 

(源三郎さんならマジで月村家を敵に回してでも俺の首を取りに来そうだ‥‥)

 

源三郎も良馬に負けぬ父親としての覇気で立ち向かう。

 

「「「‥‥」」」

 

加奈江、桜花、ギンガの三人は良馬と源三郎のやり取りをハラハラしながら二人の成り行きを見守っている。

 

「元よりそのつもりです。嬉し泣きはさせても悲しませるような真似はしません」

 

「‥‥ギンガ」

 

「は、はい」

 

「お前さんは良いのか?知っての通り、こいつの実家は世界でも有名な名家だ。そんな家にお前さんは嫁ぐんだ。政府が一夫多妻制を導入しようとしているみてぇだが、それでも、周囲からは嫉妬や財産目当てじゃないかと勘繰られる‥‥家は月村家とは比べるべくもない一般家庭だからな。お前さんにはその覚悟があるか?」

 

「あります。でなければ、良馬さんとの結婚なんて望みません!!」

 

ギンガは源三郎の問いに即答する。

 

「‥‥月村、お前はさっきギンガを悲しませねぇと言ったが、お前はそう言う輩から当然、ギンガを守れるんだろうな?」

 

「も、勿論です」

 

「それに、政府が導入を検討している一夫多妻制‥‥もし、それが導入された時、ギンガ以外の女を娶るなとは言わねぇ。お前にもお前の事情があるだろうからな」

 

月村家程の規模の名家ならば、世界中の財閥関係者が良馬とお近づきになりたいと言う思いはあるだろう。

 

源三郎はその点は理解し、妥協した。

 

「複数の女を娶った時、ギンガを含めて平等に愛せるか?」

 

「‥‥政府が導入検討している一夫多妻制ですが‥確かに家にも事情があり、政略結婚のために結婚を勧めて来る可能性はあります。ですが。よほどの理由がない限り、俺はギンガ以外の女性を娶るつもりはありません」

 

良馬は北野と同じく例え政府が一夫多妻制を導入し、世間では複数の女性と結婚する事が可能であってもギンガ以外の女性は基本的に娶らないと言う。

 

「そうか‥‥分かった」

 

「じゃ、じゃあ‥‥」

 

「‥ああ、ギンガの事をよろしくたのむ」

 

「はい!!」

 

「おめでとう!!ギンガ!!」

 

「おめでとう!!」

 

ギンガの結婚を祝福する加奈江と桜花。

 

「ありがとう、義母さん、桜花」

 

ギンガは感極まって涙目となる。

 

「それで、ギンガとの結婚はお前さんの実家にも伝えるんだろう?今から行くのか?」

 

「あっ‥その件ですが‥‥」

 

忍は加奈江同様、良馬がギンガと結婚したい事をかなり前から知っていたので、今更伝える必要もないだろうと思っていた。

 

「事前にギンガと忍さんとは顔合わせはしているので、あとは源三郎さんの了承を得るだけだったので‥‥」

 

「そうか」

 

「それで、挙式の場所とかはもう決めて有るの?それともこれから決めるの?」

 

加奈江が良馬に挙式について訊ねる。

 

「ああ、その件ですが、ギンガにはもう伝えていますが‥‥」

 

良馬はギンガ以外の中嶋家の面々に挙式は八束神社で行う旨を伝える。

 

「へぇ~教会じゃなくて、神社で‥‥」

 

「はい。ウェディングドレスを期待していたギンガや加奈江さん。ヴァージンロードを一緒に歩きたかった源三郎さんには申し訳ありませんが‥‥」

 

やはり、花嫁の両親としては娘のウェディングドレス姿を見たかったのではないか?

 

ウェディングドレス姿の娘と共にヴァージンロードを歩きたかったのではないか?

 

「いいのよ。ギンガが幸せになってくれるなら」

 

こうして、良馬とギンガの結婚が進んで行く中、連邦政府はようやく一夫多妻制について結論を出した。

 

何度も協議を重ねて生み出した妥協案を採用し、

 

一夫多妻制とするも一人の男性が娶る事の出来る女性の人数は二人までとして、まずは経過観察を行う。

 

尚、宗教・思想等の問題で一夫一妻制が絶対である国、地域は導入しなくてもよい。

 

全ての男性が二人の女性を娶るものではなく、未婚、一人でもこの限りではない。

 

と、された。

 

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