ガミラスとの戦争からはじまった外宇宙からの地球侵略。
外宇宙からの地球を狙う侵略者たちに対して地球は辛うじてその脅威から自分たちの故郷を守り切って来たが、その代償は大きく、地球の人口は減少の一途をたどった。
連邦政府は地球人類の種を後世に残すために一夫多妻制を導入した。
しかし、一夫多妻制を導入したとは言え、大昔の貴族や王家の様に一人の男性が何十人もの女性を娶るのではなく、一人の男性に対して最大二人までの女性を娶る人数制限があるモノであった。
勿論、互いの配慮もあり、恋愛は当人同士の問題なので、絶対に二人の女性を娶らなければならない訳ではなく、あくまでも結婚できる女性の人数が一人から最大二人までに増えただけであり、一夫一婦でも構わない。
地球で一夫多妻が試験的ながらも導入された同じ時期に良馬とギンガの結婚もいよいよ秒読みとなった中、海鳴市にある某レストランにて、良馬とギンガの姿があった。
もっとも良馬はノエルの忠告を受け、今はカツラと付け髭、眼鏡をつけて変装している。
彼が何故、変装をしなければならないのか?
それは連邦政府がこの一夫多妻制を検討している頃から、将来的に一夫多妻制は導入されると読んでいた大企業の経営者や財閥関係者たちが月村家にしつこいくらいのアピールをしていた。
月村家へ嫁入りすれば、月村家と深いつながりが出来、実家の繁栄は約束されたものだ。
なので、このチャンスに是が非でも月村家に嫁入りをさせたいと思う者が多く、良馬が地球に居ると知ると見合い話が持ち込まれる。
見合い相手の良馬が居なければその見合いは出来ない。
なので、良馬は罪悪感を抱きつつも居留守を使っている状態なのだ。
「大変そうですね、良馬さん」
「ノエルさんに聞いていたけど、見合いの話が多くてね」
「受けるんですか?お見合い‥‥その‥もう一人の女の人と‥結婚できますし‥‥」
「お見合い話を持ち込んで来る方々にはすまないけど、今はお見合いを受けるつもりはないよ」
良馬が変装をしている理由をギンガは予め良馬から聞いていたのだが、ギンガとしては何だか別人と食事をしている様な複雑な心境だ。
それほど、良馬の変装がうまいと言う訳だ。
良馬の変装の他にもギンガにとっては、『量が少ないなぁ~』と思われる料理の量であったが、流石にTPOは弁えているので、我慢している。
「式の日取りや当日の作法のレクチャーも概ね順調だね」
「はい。先日、白無垢と言われる着物も試着しましたが、初めて着たので、ちょっと動きにくい服装と言うか、違和感がありました」
「ハハ、今の世では着物はあまり着ない服装だからね。当日だけ我慢してくれ。招待客についても招待状の発送が大変だ」
「そうですね。私たちがお世話になっている軍の関係者は当然で‥‥」
藤堂長官、まほろば、八雲の関係者だけでもかなりの人数になりそうだ。
他にも紅葉や桜花と言った月村家、中嶋家の関係者も当然、式と披露宴には招待する。
そんな中で二人の脳裏には、ある人物の姿が浮かんだ。
「フォムトさん‥‥来てくれるでしょうか?」
「ガルマン・ガミラスも今はボラー連邦との対処で忙しいだろうからな‥‥彼はガルマン・ガミラス本土所属の艦隊に勤務しているだろうから、大事な戦いの中、抜け出してわざわざ地球に来て一個人の祝言を祝いに来てくれるだろうか‥‥?」
「それにネレディアさんともまた会いたいですし」
フォムトの他にもう一人、知り合いとなった女性‥ネレディア・リッケ。
シャンブロ―でバーガーと共にガトランティスと戦い、ギンガはその他にも惑星ロッサにおける撤退支援でも共闘した。
「彼女の亡くなった妹さん‥確かギンガに似ているって言っていたな‥‥例え他人の空似でも祝いの席なのだから、やはり二人は招待したいな」
バーガーもネレディアもガルマン・ガミラスの軍人であり、今のガルマン・ガミラスはボラー連邦領内への本格的な侵攻を行っている最中だ。
やはり、国家元首たるベムラーゼが戦死した事がボラー連邦内には大きな衝撃的な出来事だったので、ボラー連邦領内はあの戦い以降混乱が続いており、宿敵のこの混乱をガルマン・ガミラス‥デスラーが見過ごす筈もなく、ガルマン・ガミラスは今、ボラー連邦領内へ破竹の勢いで進軍している。
ボラー連邦の討伐はデスラーを始めとするガルマン・ガミラスの宿願でもあり、この銀河系を二分する一大勢力を討伐出来たのならば、ガルマン・ガミラスの大きな足掛かりとなる。
しかし、そこは銀河系を二分する一大勢力‥‥
確かにベムラーゼの戦死はボラー連邦領内に大きな混乱を引き起こした。
だが、ボラー連邦側はいつまでも混乱している訳でもなく、当然態勢を整えてガルマン・ガミラスの迎撃に移っている。
当初はボラー連邦側が混乱していた事で優位に進めて来たガルマン・ガミラスのボラー連邦領内への侵攻であったが、ここ最近はボラー連邦側も態勢を戻し、戦線によってはガルマン・ガミラス軍を押し返したり、膠着状態が続いている戦線もある。
「良馬さんはガルマン・ガミラスのデスラーパレスの事を覚えていますか?」
「ああ。あのデスラー総統が中心となって整備した街なだけあってすごい街だった。デスラー総統の統率力とガルマン・ガミラスの科学技術が合わさっている星だから、ボラーとの戦時下でも今も繁栄しているのだろう。でも、どうして?」
「もしも、フォムトさんやネレディアさんが来れなかったら、新婚旅行にガルマン・ガミラスへ行くのも『アリ』かな?と思いまして」
「おい、おい、ギンガ。君は新婚旅行で宇宙一周をする気かい?」
良馬はギンガの提案に思わず苦笑する。
「もちろん、あくまでもプランの一つですよ。それに夢を大きいほどいいじゃないですか」
「うん、まぁ、それはそうだけど‥‥」
レストランで良馬とギンガが式についての打ち合わせ?みたいな事をしている中、月村家では‥‥
「ねぇ、シノブ」
「ん?何かしら?」
ユリーシャが忍に声をかける。
「テレビで言っていたイップタサイなんだけど、男の人は二人まで女の人と結婚出来るんでしょう?」
「ええ、そうね。ようやく決まった‥って感じね。でも、暫くはこれまで通り一夫一妻が主流のままじゃないかしら?」
「二人までの女の人が結婚できるなら、リョーマはギンガの他に誰かとケッコンするの?」
「えっ?ど、どうかしら?」
ユリーシャの問いに忍は曖昧に答える。
「一夫二妻になったけど、どうしても二人の奥さんを貰わなければならない訳でじゃないしね」
「じゃあ、もう一人は私がなる」
「えぇぇぇぇーっ!!」
ユリーシャの大胆な発言に忍は声をあげて驚く。
「ギンガ以外に奥さんが決まっていないなら、私がリョーマと結婚しても問題ないでしょう?」
「そ、それはそうかもしれないけど‥‥ん?‥‥」
忍はユリーシャのこの大胆な宣言に当初は驚愕したが、ある考えが脳裏を過る。
(ユリーシャちゃんはイスカンダル王家の人間だし、血筋的にはむしろユリーシャちゃんの方が上‥‥)
(それにユリーシャちゃんとギンガちゃんが良馬の奥さんになれば、財閥関係者もあれこれ言ってこれないわね)
一夫多妻制が検討されてから舞い込む良馬へのお見合い話‥‥
一夫二妻と決まってからもそれは変わらず舞い込んで来るので忍としては辟易しているのも事実。
良馬がギンガ以外の女性に好意を持っているのか分からないが、もしいなければ残る良馬の妻の椅子をユリーシャに座らせてしまえば、見合い話を持ち込んで来る者も諦めるのではないだろうか?
(良馬が帰って来たら話してみましょう)
ユリーシャの気持ちは先ほど、聞いて理解したので、あとは良馬の気持ち次第だ。
もしもギンガ以外に良馬が好意を抱いている女性が居たら、その場合はユリーシャとその女性どちらにするか彼の決意を聞かなければならない。
当の本人が知らない間に話を進めることは出来ないのだ。
流石に昼間に会ったので、今回は食事と式の打ち合わせだけでイチャイチャせずに実家に戻った良馬。
「ん?ユリーシャ、何か嬉しい事でもあったのかい?」
「ん?そう思う?」
「うん。ユリーシャの雰囲気が物凄く生き生きとしているから‥‥」
「フフ、すぐに分かるよ」
「へ、へぇ~‥‥」
家に戻ると何故かユリーシャの機嫌が物凄く良かった。
その理由を聞くがユリーシャは、はぐらかすだけだった。
そして、夕食が進んで行く中、
「良馬」
「はい。何でしょう?」
「食事が終わったら、話があるの‥‥後で私の部屋に来て頂戴」
「わ、分かりました」
良馬は忍から部屋に呼び出された。
「ノエルさん、忍さんからの突然の呼び出しだけど、一体何だろう?」
良馬としては忍から突然の呼び出しなのだが、呼び出される理由が分からない。
忍と行動を共にしているノエルならば、何か知っているかもしれないので、良馬はノエルに訊ねてみる。
「詳しい事は申し上げられませんが‥‥良馬さまにはある決断をしてもらうことになります」
「えっ?」
ノエルから意味深な事を言われ、思わずキョドってしまう良馬。
「失礼します」
恐る恐る忍の部屋に入る良馬。
ノエルは重要な話と言う事で、部屋の外で待機している。
忍は部屋の中のソファの上に座っている。
良馬は忍と対面するように向かいのソファへと座る。
「そ、それで、忍さん‥話と言うのは‥‥?」
「良馬‥貴方、ギンガちゃん以外に好きな女性は居る?」
「えっ?」
忍の問いに思わずフリーズする良馬。
「い、いきなり何を言い出すんですか?」
しかし、すぐに再起動をして忍に対してその言葉の真意を問う。
「言葉の通りよ‥連邦政府から一夫二妻制が導入されて、男性は二人まで女性と結婚できる訳だけど、貴方はギンガちゃん以外にもう一人、誰か好きな女性を娶るつもりはあるのかしら?」
昼間、ギンガと同じ質問をする忍。
「い、いや、ギンガ以外に好意を寄せている女性は居ないけど‥‥」
(まさか忍さん、もう一人は何処かの誰かとお見合い結婚をさせる気か?)
一夫二妻制の内、一人は既にギンガと結婚するつもりだが、もう一人の結婚相手は決まっていない。
なので、忍が何処かの取引先か財閥関係者の令嬢を良馬とお見合いをさせるつもりなのかと思う。
「ノエルさんから聞いているけど、家へのアプローチが凄いって‥‥だからアプローチをかけている家の中から誰か一人を選べ‥‥って言うの?」
「いえ。そうじゃないわ‥大体、家にアプローチをかけている人たちのほとんどは『月村』の家柄が欲しい人たちばかり‥‥そんな人たちと結婚しても私たちの家の秘密を知ればあっという間に即離婚よ」
「じゃあ、どうしてもう一人の結婚相手について聞くのさ」
「‥‥この際だから、堀を埋めてしまおうと思ってね?」
「ん?」
「良馬‥もし、ギンガちゃん以外に好きな人が居なければ‥‥」
「居なければ‥‥」
忍が真剣な眼差しで良馬を見つめる。
良馬は忍がこのような表情の時、決して冗談を言うつもりはない事を知っている。
故に忍が次に何を発するのか、ドキドキしながら待つ。
そして、忍はおもむろに口を開くと、衝撃的な言葉を発する。
「ユリーシャちゃんをもう一人の奥さんとしてもらいなさい」
「‥‥はぁぁぁぁぁー!!」
最初は忍の言葉の意味を理解できずに黙っていたが、段々と思考が戻って来てその言葉の意味を理解すると良馬は思わず声を上げる。
「ちょっ、忍さん!!何言っているの!?」
「良馬、私は決して冗談で言っている訳じゃないのよ」
「こんな事、冗談で言われた方が悪いよ!!そもそも、ユリーシャの実年齢は一桁代なんだよ!?それを結婚だなんて‥‥」
「でも、あの成長速度はイスカンダル人特有のモノだし、イスカンダルではあの身体つきになったら結婚も出来るんじゃない?実際に健康診断の結果では年齢は兎も角、身体の機能は年相応なのよ」
「‥‥」
「それに、貴方も薄々気づいていたんじゃないの?ユリーシャちゃんの気持ちに‥‥」
「っ!?」
忍から図星を突かれ気まずそうに忍から視線を逸らす良馬。
ユリーシャが守たちと共にイスカンダルへ還らなかった頃は、身体は大きくても精神は実年齢通り子供のままなのだと思い、親元から遠く離れた事で寂しいと思っていた。
しかし、ユリーシャを預かり、実家でひとつ屋根の下で暮らしていく内、彼女のスキンシップが段々と激しくなっていくが、それでも良馬が妹が甘えて来る様なモノだと自分に言い聞かせてきた。
それでも心の隅にはユリーシャを一人の女性として見ていた自分が居た。
当時はまだ一夫一妻制だったので、ユリーシャの気持ちには答えることが出来ず、彼女の気持ちには言い訳ばかりだった。
だが、地球の人口減少問題が段々と本格化し、連邦政府はその打開策として今回、一夫二妻が導入された。
自分はギンガ以外にあともう一人の女性を妻として迎えることが出来る。
ギンガには昼間、『見合い話は受けるつもりはない』 と言った。
ユリーシャは確かに見合いで知り合った女性ではないので、嘘は言っていない。
「ユリーシャちゃんは、もう貴方と結婚する気満々だったわ。でも、貴方がギンガちゃん以外に好きな女性が居たら‥‥諦めてもらうつもりだったけど‥‥」
「‥‥」
「ただ、見合い話全てが貴方に来ている訳じゃないのよ」
「えっ?」
「ユリーシャちゃんは地球では家の遠縁の親戚と言う形で通していて、ユリーシャちゃんが確実に存在している以上、完璧に隠す事は出来ない‥‥何処からか洩れたのか分からないけど、ユリーシャちゃんにも見合い話が来ているのよ」
「‥‥」
良馬としては、自分だけでなくユリーシャにも見合い話が来ていたのは寝耳に水だった。
しかし、彼女がイスカンダル王家の次女であるユリーシャ・イスカンダルであることは月村家の人間を始め、一部の者しか知らず、ユリーシャへお見合いを申し込んで来るの者はユリーシャ・イスカンダルではなく、月村家の遠縁である月村摩耶にお見合いを申し込んでいるのだ。
「‥‥ギンガちゃん以外の女性と結婚出来るなら、ユリーシャちゃんの気持ちに答えてあげたら?貴方がギンガちゃんとユリーシャちゃんと結婚したら貴方にもユリーシャちゃんにも見合い話も来なくなるんじゃないかしら?」
「‥‥一晩‥考えさせてもらえますか?」
「それは良いけど、ユリーシャちゃんをあまり待たせないであげてね」
「は、はい」
忍の部屋を後にして、自室へと戻った良馬。
電気も着けずにベッドに横になり先ほどの忍からの提案?が何度も脳裏を過る。
窓からは月と星の淡い光が差し込む中で一体どれだけの時間、自問をしていると、
カチャ‥‥キィィィ~‥‥
静に良馬の部屋のドアが開く音がした。
「‥ユリーシャかい?」
「う、うん‥そう‥‥」
部屋の中に入って来たのはユリーシャだった。
ユリーシャの姿を確認すると良馬は横になっていた身体を起こす。
すると、ユリーシャは良馬の隣にスッと座る。
「どうしたの?こんな夜更けに‥また一人じゃ眠れないのかい?」
「そうじゃなくて‥‥その‥‥リョーマ、シノブから聞いた?」
「‥‥ああ。もう一人の奥さんにはユリーシャ‥君にしないか?って‥‥」
「うん。私は、リョーマと結婚したい」
「‥‥」
姉のサーシアは自分の叔父に恋愛感情を抱いてしまった。
しかし、その叔父には既に婚約者が居た。
故に姉は潔く身を引いた。
元々叔父に恋愛感情を抱いても実ることは血縁的にも難しかったのだ。
そして、自分もある男性に恋を抱いた。
姉と異なり近親者ではなかったので血縁的には問題はない。
だからこそ、自分は父や姉と違い母の待つイスカンダルへは行かず、地球へとやって来たのだ。
だが、その男性にも自分以外に好きな人が居た。
でも、その程度の障害ですんなりと諦める訳にはいかず、自分はその男性に振り向いてもらいたくて色々とアプローチをかけてきたが、彼は自分の事を一人の女性とは見ていない節があった。
それに地球では、一人の男性に対して一人の女性としか結婚出来ない。
このままでは自分の恋愛は姉同様実らないかと思われた。
しかし、天は自分に味方した。
地球の人口減少で、一人の男性に対して二人の女性まで結婚することが出来るようになった。
一人は自分の恋敵であるギンガで決まりだろうが、もう一人はまだ決まっていない。
ならば、誰か別の女性が彼の隣に立つ前に自分が立たなければ!!
この千載一遇のチャンスを逃す訳にはいかない!!
「ねぇ、私じゃダメ?リョーマのお嫁さんに‥‥」
「‥‥ゆ、ユリーシャ、確かに君は美しい女性に成長した‥で、でも、俺は君のお父さん‥守さんに信頼されて君を預かった‥君と結婚するのは何だかその信頼を利用し、裏切るような気がして‥‥」
「そんなことないよ。私がリョーマを好きになって結婚したいのは私自身の思い‥その私の思いは例えお父様でも邪魔させない。それに私の事を預かったのなら、私をリョーマの傍に置いて」
「でも、いいのか?」
「ん?」
「これはギンガにも言ったが、月村家に嫁ぐと言う事は決して良い事だけじゃない‥‥他の人からも妬まれる。その覚悟はユリーシャにあるかい?」
「私もイスカンダル王家の子‥人から好かれると同時に嫌われる事も覚悟はしている」
普段は体形と反比例するように精神が幼い様な仕草をするユリーシャではあるが、姉のサーシア同様、ここぞと言う場面は肝が据わっている所は流石、スターシアと古代守の娘である事が窺える。
そこへ、後見人である忍の性格も加わっているので、ユリーシャは逞しい性格になっている。
そんなユリーシャの真剣な瞳が良馬をジッと見つめる。
「‥‥分かった。ユリーシャ・イスカンダル」
「はい」
「俺と結婚してもらえますか?」
準備がなく、この日の夜は婚約指輪を用意できなかったが、それでも良馬はユリーシャへプロポーズをする。
「はい!!」
ユリーシャは良馬に抱き着きながら返答する。
その日は当然、ユリーシャは良馬の部屋で一夜を過ごしたが、この日の夜は何もなかった。
そして、翌朝‥‥
「それで、ユリーシャちゃんの件について、考えてくれた?」
朝食の席で忍が早速、良馬にユリーシャの件を訊ねる。
「はい。ユリーシャを貰い受けます」
「そう、それじゃあ、急いで準備しないとね」
「ええ」
良馬の第二の結婚相手がユリーシャに決まった事で、急ぎ準備が行われる事となった。
良馬とユリーシャは互いに変装をしてジュエリーショップへと向かい、婚約指輪を購入し、忍は八束神社に神前式にて花嫁がもう一人追加された旨を伝える。
ジュエリーショップで婚約指輪を購入後、次はギンガの白無垢を注文した着物屋へと行き、追加でユリーシャが着用する為の白無垢を用意する。
ユリーシャは初めて袖を通した白無垢に興味津々と言った様子だった。
(もう一人の結婚相手がユリーシャである事をギンガにも伝えなければならないな‥‥)
そんなユリーシャの姿を見つつ、良馬は若干の変更が必要となったこの後に控える式もそうであるが、もう一つ別に浮気をした訳ではないが、ギンガは恐らく良馬が二人目の妻を娶る事は無いと思っているので、二人目の妻にユリーシャを娶る事にギンガはどのような反応を示すのか良馬としては不安なところがあった。
(それに式には流石にイスカンダルに居る古代先輩やスターシアさんを連れてくるのは無理があるよな‥‥)
ガミラスの妨害が無く、波動エンジン技術が発達したとは言え、『ユリーシャが結婚するので、地球に来てくれ』と言ってそう簡単に来れる程、イスカンダルは近くない。
イスカンダル関係者がスターシア、古代守、サーシアの三人だけでユリーシャの知り合いが地球ではあまりにも少なすぎる。
招待状を送る手間、招待客が増える事を省けるのは利点かもしれないが、これではあまりにもギンガとの差が出てしまう。
(近場に居るユリーシャの関係者‥‥あっ!!)
良馬はイスカンダルよりも近場に居るユリーシャの関係者に一人、思い当たる人物が居た。
もっともその人物にはギンガとの結婚式の招待状を送るつもりであったが、招待客ではなく、結婚相手の身内に変更して参列してもらおうと良馬は着物屋から戻ると早速その人物に連絡を入れた。
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「艦長、艦長宛てに通信が入っております」
「俺宛てに?誰からだ?」
「地球に居る月村艦長です」
「月村艦長?分かった。通信回路を開いてくれ」
「はい」
『やあ、古代艦長』
「月村さん。どうしたんですか?地球で何かあったんですか?」
『ああ‥うん‥多少なりとも関係している』
「ん」
どうにも歯切れの悪い良馬に古代は訝しむ。
『古代艦長は地球では既に一夫二妻制が正式に導入された事は知っているかな?』
「ええ、アルファ星にもその話は来ており、皆、困惑しています」
『森さんとしては気が気でないんじゃないかい?』
「ま、まぁ‥多少は‥‥」
やはり雪もギンガ同様、古代が自分以外の女性も娶るのか気になっている様だ。
『それで、本題なのだがこの一夫二妻制に関係していて‥‥』
「ええ」
『一人は勿論、ギンガなのだが、二人目の事なんだが‥‥』
「月村さんは二人の女性と結婚するんですか?」
『あ、ああ‥‥』
(でも、月村さんの実家は金持ちだからな。一人は恋愛でももう一人はやはり政略結婚なんだろうな‥‥)
(そう言えば、南部の奴も一夫多妻制の導入が検討されてから見合い話が凄いってこの前、愚痴っていたな)
(金持ちは家と家の繋がりが今後の繁栄にも繋がるみたいだから、今回の一夫二妻制の制度は、人口減少の問題の他に経済の問題にも何かしらの影響があるのかもしれない)
やはり、金持ちの家は今回のこの制度を最大限、利用するものだと古代はある意味で納得した。
「それで、二人目は何処の誰と結婚するんですか?やっぱり、何処かの金持ちの家の人なんですか?」
『いや‥ユ‥シャ‥なんだ‥‥』
「えっ?」
良馬は二人目の結婚相手の名前を言ったのだろうが、声が小さくて聞き取れなかった。
「あ、あの、月村さん。声が小さくてよく聞き取れません。もっと大きな声でお願いします」
『‥‥ユリーシャなんだ。二人目の結婚相手は』
「ああ、ユリーシャ‥‥えっ?えっ?ちょ、ちょっと待ってください。ユリーシャってあの子ですよね?兄さんとスターシアさんの娘でサーシアの妹の‥‥」
『あ、ああ』
古代はユリーシャの名前を聞いた当初は、『誰だ?』程度の認識であったが、改めて良馬の二人目の結婚相手の名前が自身のもう一人の姪である事に驚愕する。
「つ、月村さんがユリーシャと‥‥」
『あ、ああ。それで、挙式はギンガと共に行おうと思うのだが、その時、古代艦長にはユリーシャの親族代表として参列してもらいたく、今回連絡した次第だ』
「なるほど‥‥」
(確かにユリーシャの父親である兄さん、母親であるスターシアさんはイスカンダルに居る)
(ユリーシャの結婚は確かに目出度い事だが、イスカンダルに居る兄さんたちに知らせる術はないな‥‥)
(わざわざイスカンダルに行って兄さんたちを地球へ連れてくるのも時間が掛かり過ぎるしな‥‥)
(となると叔父である俺が出ないとユリーシャの親族は誰も出ない事になるな‥‥)
「分かりました。兄さんの名代として参列させていただきます」
故郷から遠く離れた星で一人過ごしている姪のために古代は招待客ではなく、親族として参列する事を決めた。
『ありがとう。詳しい日程が決まったらまた連絡をする』
「了解です」
良馬はアルファ星から地球までの移動時間を考慮にいれつつ古代に連絡するタイミングを計る。
「さて。次はギンガか‥‥」
古代にユリーシャとの結婚報告入れた良馬は次にもう一人の花嫁であるギンガに今回の件を伝えるために彼女へ連絡を入れた。
中嶋家
Prrrr‥‥prrrr‥‥
「はい。中嶋です」
『あっ、月村です。加奈江さん、ギンガ居ますか?』
「あら?良馬くん。どうしたの?」
『その‥ギンガに伝える事がありまして‥‥』
「もしかして、式について?」
『ええ、それに関係していまして』
「分かったわ。ちょっと待っていて」
電話に最初に出た加奈江に良馬はギンガに話があると伝えてギンガに代わってもらう。
「もしもし、良馬さん。どうしたんですか?」
『ちょっと、式で変更点があって‥‥』
「えっ?変更点?」
『ああ‥‥それで直接話がしたい。○○って言う名前の喫茶店に来てくれないか?』
「ええ、いいですけど‥‥」
『じゃあ、待っている』
「どうしたの?ギンガ。良馬くん、何だって?」
「何か結婚式に変更する事があって、今から話したいって‥‥」
「変更点?でも、結構式の準備は進んでいたんでしょう?」
「う、うん。何だろう‥‥」
ギンガは良馬の言う結婚式の変更点が気になり、彼が指定した喫茶店へと向かった。
喫茶店
ギンガが良馬に言われた喫茶店に到着すると、既に良馬は先にいた。
「お待たせしました」
ギンガは良馬の居るボックス席の彼の向かい側に座る。
「いや、大丈夫だ」
「いらっしゃいませ」
ギンガが席に着いたタイミングを見計らって店員がギンガにお冷を持って来る。
「すみません。コーヒーを一つ」
「かしこまりました」
次いでギンガは店員にコーヒーを注文する。
「お待たせしました」
やがて、ギンガが注文した品が届く。
注文した品が届くまでギンガと良馬の間には無言の時間があったが、注文した品が届き、店員がこのボックス席に来ることはない。
故にギンガも良馬も注文した品が届くまで話をしなかった。
「それで、早速ですが電話での話を聞いても良いですか?」
ギンガは早速、電話で良馬が話した結婚式における変更点を訊ねる。
「あ、ああ‥‥」
ギンガの問いに良馬は何だかバツが悪そうな表情を浮かべる。
しかし、いつまでも黙ってはいられない。
自分でギンガをこうして呼び出したのだから‥‥
「じ、実は、ギンガには急ですまないが、もう一人、奥さんを娶る事になった」
「えっ?」
今の地球連邦の法律で、一人の男性が二人の女性と結婚するのは違法でもなければ不倫でもない。
ギンガもソレを理解はしているのだが、でも女として何だか不倫されたような感じで何だか癪に障る。
「そ・れ・で、二人目は、何処の、誰と婚約したんですか?」
「ぎ、ギンガ、何か、怖いぞ‥‥」
「法律が変わってあと一人、良馬さんが結婚出来るのは承知しています。ですが、良馬さんは、『お見合いはしない』 って言ったのに、その舌の根の乾かぬ内に、お見合いをして二人目の奥さんを娶ったんですから、私が機嫌を損ねるのも当然だと思いますけど?」
「い、いや、まってくれ。二人目の結婚相手はお見合いで知り合った訳じゃない。むしろ、ギンガとは何度も顔を合わせている」
「えっ?何度も顔を‥‥?」
ギンガは良馬の二人目の結婚相手が彼と自分と既に顔馴染みであると言われ、『誰だ?』とこれまで自分と良馬の共通の女性を思い浮かべる。
(桜花も紅葉も該当するけど、年齢が結婚出来る年齢じゃない‥‥)
(それともリニスさん?)
(いや、でもリニスさんは良馬さんの使い魔だし、結婚相手とはちょっと違う様な‥‥)
(リニスさんじゃないとすると‥‥ティアナ?まさか、ティアナなの!?)
結婚が出来る年齢で、自分と良馬が顔見馴染みの異性でギンガが思い浮かんだのは自分と同じ、ミッドチルダからの次元漂流者でこの地球に残留を決めたティアナだった。
出身地、境遇も自分とほぼ同じなので、ギンガがティアナの姿を思い浮かべるのも不思議ではなかった。
(ま、まぁ、ティアナなら知らない訳じゃないし、彼女の人となりはよく知っているから、問題ないわね)
(でも、良馬さん。いつの間にティアナと親しくなったんだろう?)
ギンガはすっかり良馬のもう一人の結婚相手がティアナだと思い込んでおり、肝心なライバルの事を失念していた。
「二人目の結婚相手は‥その‥‥ゆ、ユリーシャなんだ」
「っ!?」
(ユリーシャちゃん!?し、しまった!!彼女の存在をすっかり忘れていた!!)
「それで、ユリーシャを二人目の結婚相手にした理由なんだが‥‥」
ギンガがユリーシャの存在を失念している中、良馬はギンガにユリーシャを娶った理由を話し始めた。