星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百三十二話 出産

 

 

良馬とギンガ、ユリーシャ、古代と雪、ティアナと北野の結婚式と、周囲で結婚ラッシュが起きた後、古代と北野はメガロポリス東京に新居を構えた。

 

なお、余談であるが、良馬、古代の他にも、まほろばの航海長である永倉と衛生士の原田もめでたく結婚し、士官学校卒業後に一時的にまほろばへ乗艦した星名も交際中の彼女と結婚していた。

 

そんな結婚ラッシュの中で、北野と結婚し、彼と共に新婚生活を営む中、ティアナは北野の兄、北野誠也とようやく初邂逅した。

 

「哲、すまなかったな。折角の結婚式だったのに出席できずに‥‥」

 

「いえ、兄さんも軍人である以上、任務があり、そう簡単に地球へは戻って来れない事くらい承知していますから」

 

「うむ‥‥それで、君が哲の奥さんだな?」

 

「は、はい。初めまして、ティアナと申します」

 

やはり、北野の兄であるからか、誠也の容姿は北野と似ていた。

 

大きな違いは自分と同じ、左頬に古傷の痕があり、更には目元にも古傷がある事から彼が歴戦の猛者である事が窺える。

 

「その名前から察するに外国の人なのか?」

 

「はい」

 

流石に異世界から来たとは言えず、此処は外国人と言う設定にした。

 

「そうなのか‥日本語が上手なのだな。それに哲から聞いている。君も俺や哲と同じ軍人だと‥‥」

 

「は、はい。北野‥いえ、哲さんとはパルチザン活動をしている時に知り合いまして‥‥」

 

「その頬の傷もパルチザン活動中に?」

 

「はい。敵の総司令官の銃撃を受けて‥‥」

 

「そうか‥‥」

 

女性なのに顔に傷を負い、さらにその傷を残さずにいるティアナに誠也は女性ながら、ティアナは強力な戦士だと認識した。

 

「ティアナさん」

 

「はい」

 

「哲は優秀で真面目なのだが、どうも型にはまりすぎると言うかマニュアル通りな点がある」

 

「ちょっ、兄さん!!」

 

「こんな弟ではあるが、ティアナさん。よろしく頼む」

 

誠也はティアナに深々と頭を下げ、今後も北野と夫婦を続けてくれと頼む。

 

「い、いえ、私の方こそ、哲さんには色々とお世話になりっぱなしで‥‥」

 

その後、ティアナが北野兄弟に料理を振る舞う。

 

「うまい!!哲、こんなにも料理上手な嫁を貰って、全くお前が羨ましいぞ!!」

 

誠也はティアナの手料理を美味そうに食べた。

 

「それじゃあ、俺は基地に戻る」

 

食事が終わると誠也は北野家の新居を後にする。

 

「えっ?もう?もう少しゆっくりしていけばいいのに」

 

「そうですよ。今日、地球に戻って来たばかりなのに‥‥」

 

北野もティアナも誠也を引き留めるが、

 

「いや、流石に新婚さんの家に長居しては邪魔だろう」

 

誠也は北野とティアナに配慮して新居を後にした。

 

「な、なんかごめんね。慌ただしくして‥‥」

 

「いえ、良い義兄さんでした」

 

(哲さん同様、あの人も真面目な人なんだろうな‥‥)

 

容姿もさることながら、性格も似た兄弟なのだと誠也を見てそう思うティアナだった。

 

「兄さんは僕の事をああ言ったけど、兄さんの方も無鉄砲と言うか、無茶をする所がありましてね。弟の僕が見てもハラハラするところがあって‥‥でも、ティアナの言う通り、自慢の兄さんです」

 

「自慢の兄さんか‥‥そう言う所、ちょっと羨ましい‥‥」

 

誠也の姿を見て、ティアナは思わず今は亡き自身の兄であるティーダの事を思い出す。

 

「でも、兄さんはティアナの兄でもあるんですよ」

 

「‥ええ、そうね」

 

ティアナは北野の身体に身を寄せ、二人は誠也の背中を見送った。

 

メガロポリス東京に新居を構えた古代家、北野家と異なり、良馬は海鳴市の月村家にそのまま住み続け、新たに中嶋家から月村家に嫁いだギンガも生活するようになった。

 

ユリーシャは元々、守から託された時から月村家に住んでいるので、特に代わり映えはしていない。

 

それにギンガもよく月村家に泊りに来ているので、その点に関しても大した変化ではなかった。

 

変化と言えば、それはユリーシャが子供の出産方法を知った事なのだが、良馬との子供を強く望むユリーシャは遂に決心をして、ある日の夜、良馬に夜這いを仕掛けた。

 

妻となったユリーシャからのお誘いを断れるはずもなく、良馬はユリーシャをこの夜に初めて抱いた。

 

ユリーシャとの初体験を過ごした翌朝‥‥

 

「‥‥」

 

「りょ、良馬さん?大丈夫ですか?」

 

フラフラした足取りでリビングへやって来た良馬。

 

そんな様子の良馬にもう一人の妻であるギンガが彼に声をかける。

 

彼の様子が何だか心ここにあらずと言った感じなのだ。

 

良馬の傍にユリーシャが居ない事から彼女はまだ良馬の寝室のベッドの中なのだろう。

 

「ぎ、ギンガ‥‥」

 

良馬はリビングのソファにぐったりと座るとギンガに声をかける。

 

「は、はい」

 

「‥‥い、イスカンダル人は‥‥う、うさぎだ」

 

「‥‥は?」

 

良馬が絞り出した発言にギンガは首を傾げる。

 

「えっ?えっ?それはどう言う意味なんですか?イスカンダルの人がうさぎって‥‥」

 

「ギンガはイスカンダル人の特徴を知っているだろう?」

 

良馬はイスカンダル人がうさぎと評した訳を話し始める。

 

「は、はい。確かイスカンダルの人は赤ちゃんの期間が地球の人よりも物凄く短いんですよね?」

 

「そうだ。それはつまり、イスカンダルは地球人と比べて少子高齢化の加速が早い‥‥それがイスカンダルの人口減少の原因なのだろう」

 

第二次イスカンダル航海でイスカンダルの様子を良馬もギンガも見た。

 

そこには近代科学の大規模な都市が広がっていたが、人の姿が一切無いゴーストタウンだった。

 

あの時、イスカンダルに居たのは女王のスターシア、古代の兄でありスターシアの夫である守、その娘のサーシアとユリーシャの四人だけだった。

 

赤ん坊の期間が短ければ、逆に人口が増えるのではないかと思われたが、イスカンダルの歴史で何らかの政変か原因があり、人口増加ではなく、少子高齢が加速して逆に人口減少となり、ヤマトがイスカンダルに到着した時はスターシア一人だけだった。

 

守の妻であり、サーシア、ユリーシャの母親であるスターシアよりも前の‥先代のスターシアがイスカンダルの人口増加を懸念して地球において昔、中国が行った一人っ子政策がイスカンダルでも行われて、イスカンダルの人口減少に拍車がかかったのかもしれない。

 

イスカンダルは地球と同じ青い星であるが、陸地が地球より少ない。

 

なので、人口が増えれば住む場所が無くなる。

 

イスカンダルの技術があれば海上都市の建設や宇宙への移住も十分に考えられるし、実行可能なのだが、イスカンダル王家はそれらの対応策は取らずに滅びの運命を選んだ。

 

それは人口増加の懸念よりもイスカンダルの星としての寿命が差し迫っていた事も関係していたのかもしれない。

 

「ネズミやうさぎなどの小型動物は食物連鎖の中でも中型、大型の肉食動物や猛禽類に捕食されやすいから種を残すために一度に出産する子供の数が多いのと発情時期が長く、性欲が凄い‥‥」

 

「イスカンダルの人も成長速度の特徴から子孫を残す本能が強いと言う事ですか?」

 

「ああ‥恐らく‥‥でも、確証を得た訳ではないが‥‥」

 

(古代先輩、純血のスターシアさん相手に頑張ったんだろうな‥‥)

 

(イスカンダルに戻ったとなると、もしかして今頃ユリーシャの妹や弟が生まれているかもしれないな‥‥)

 

仮に良馬の立てた仮説が正しければ、イスカンダルに残った守はスターシアとの生活の中でスターシアの相手をしていた訳なので、その苦労が窺えた。

 

「でも、ユリーシャちゃんは良馬さんとの子供を望んでいるんですよね?」

 

「あ、ああ‥‥」

 

「ま、まぁ、これもユリーシャちゃんの旦那さんの務めですし、私も良馬さんとの子供は望んでいるので、その事もお忘れなく」

 

「は、はい」

 

ユリーシャだけでなく、ギンガも良馬との子供を望んでいる事をさりげなく言う。

 

そんなユリーシャやギンガに対して良馬は、

 

(二人とも逞しいな‥‥)

 

(古代くんも雪さんに子供を強請られているのかな?)

 

自分やギンガ同様、古代と雪も当初の予定よりも大分月日をおいてようやく結婚したので、雪としは古代との子供を強く望んでいてもおかしくはない。

 

そう思うとギンガ、ユリーシャ、雪は強い女性なのだろう。

 

 

その古代と雪が住まうメガロポリス東京にある古代家の新居では‥‥

 

「はい、進さん」

 

雪は古代と結婚し、姓が古代となったので、古代の事を『進さん』と呼んでいる。

 

そんな、雪は朝食の席で淹れたばかりのコーヒーが入ったカップを古代に差し出す。

 

「あ、ああ、ありがとう‥‥」

 

古代はやや引き攣った顔で差し出されたカップを受け取る。

 

(雪は、料理全般は上手なのだが、コーヒーだけはマズいんだよな‥‥)

 

(しかし、肝心の雪本人は自分の淹れたコーヒーをマズいとは思っていないのが難点なんだよな‥‥)

 

第一次イスカンダル航海の時から雪の淹れるコーヒーはマズいと言う事実がヤマトの乗員たちには認識されていた。

 

紅葉も雪が淹れたコーヒーを飲んだ際、彼女の淹れたコーヒーを『泥水』と評し、

 

島からも『美味しいコーヒーを淹れられるようにしれくれ』と言われた事がある。

 

しかし、それから幾星霜の月日が経っても雪のコーヒーを淹れる腕は全然上がっていなかった。

 

ただ、コーヒーの味はマズいが、それを飲んでお腹を壊して腹痛に悩まされる事がないのが幸いな点だ。

 

(毎晩、雪が求めて来て連日寝不足なのだが、眠気覚ましが雪の淹れたコーヒー‥‥)

 

良馬の予想通り、雪はユリーシャやギンガと同じく古代との子供を望んでおり、毎晩古代を求めている。

 

好きな女性とようやく結婚出来、古代としては本来ならば不満はない筈なのだが、寝不足の末にマズいコーヒーを毎朝出される。

 

それだけが唯一の不満なのだが、傍から見ればそれは羨ましい不満に見えた。

 

 

古代が朝食の席で、唯一雪への不満?を抱いて居る頃、海鳴市の月村邸では良馬がギンガにユリーシャとの初体験について話していると、

 

「ふぁぁぁぁ~‥‥おはよ~」

 

ユリーシャが目ボケ眼でリビングへとやって来た。

 

「お、おはよう。ユリーシャ」

 

「おはよう」

 

良馬とギンガはユリーシャに声をかける。

 

「ユリーシャ、身体に何か違和感や変なことはない?」

 

「うん。それにしてもリョーマ、昨日の夜は凄かった‥‥でも、なんだか不思議な体験だった‥‥」

 

ユリーシャは昨夜の事を思い出すかのように目をうっとりさせる。

 

「ねぇ、リョーマ。今日の夜もしよう」

 

そして、もう夜のお誘いをする。

 

「だ、だめよ。ユリーシャちゃん!!今日の夜は私よ!!」

 

「えっ?」

 

するとギンガが今日の夜の相手は自分だと声を上げる。

 

そんなギンガの様子に良馬は思わず絶句する。

 

「ユリーシャちゃんは昨日の夜、良馬さんとしたのだから、今日は私!!」

 

「むぅ~でも、ギンガはこれまで沢山、リョーマとしたんでしょう?回数が多いギンガは私に譲るべき」

 

「そ、それでも順番は守りなさい!!」

 

ユリーシャとギンガが今日の夜の相手は自分だと主張している中、肝心の良馬は、

 

(相手がユリーシャにしろ、ギンガにしろ、どちらかの相手をするには確実なんだな‥‥)

 

(今日の夕食は、精のつくおかずにしてもらうようにノエルさんに頼んでおこう‥‥)

 

ユリーシャ、ギンガどちらを相手にするにしろ、どちらかの相手をするのは既に確定している事から、ノエルには精力が付く夕食を頼み夜の戦いに臨む良馬なのであった。

 

こうした新婚家庭の面々であるが翌年、それぞれの家庭の女性たちは愛する旦那との間に待望の子供たちを宿す事になった。

 

良馬は地球、そして管理局の歴史史上初、戦闘機人を孕ませた男となり、ギンガも管理局の歴史史上初、妊娠をした戦闘機人となった。

 

雪は普通の地球人であり、ティアナも魔導師ながらもギンガやフェイトの様に特殊な生まれではなかったので、普通の産婦人科に通院していた。

 

しかし、ギンガに関しては生まれが特殊なため、ユリーシャもハーフとは言え地球人以外の血が混じっている事やイスカンダル人特有の成長速度がお腹の中の子にも何かしら影響があるかもしれないので、産婦人科医については忍が絶大な信頼をおける医師、ライザ・矢沢を主治医に任命した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ライザの診察の結果、ギンガの方が先に出産すると診断された。

 

そして、ギンガもユリーシャも病院ではなく自宅出産をする事として、月村家では二人の出産の準備に余念がない。

 

そんなある日の事、

 

『それじゃあ、ギンガさんは自宅出産をするんですね』

 

ギンガはテレビ通信でティアナと話をしていた。

 

モニターの向こう側に映るティアナの姿は自分同様、お腹が大きく膨らんでおり、彼女がお腹の中に新たな生命を宿している事を物語っている。

 

同じ年に結婚し、同じ年に妊娠し、同じ年に出産し、同じ年に新ママとなるギンガ、ティアナ、ユリーシャ、雪は互いに近況を知るために連絡を頻繁に取り合っていた。

 

「ええ‥ティアナも知っている様に私の場合は、私自身の生まれが特殊だから‥‥」

 

『あっ‥‥』

 

ティアナはかつての相棒であるスバルが戦闘機人である事を知っており、その姉のギンガも当然、スバルと同じ戦闘機人である事は簡単に察することが出来る。

 

生まれが特殊過ぎる故に病院での出産はおいそれとは出来なかった。

 

「ティアナも年内には出産だけど、性別とかは調べたの?」

 

『いえ、私も哲さんも生まれてくるまでのお楽しみと言う事であえて調べてはいません。ギンガさんは?』

 

「私も一緒」

 

二人は子供の性別を敢えて調べずにしており、出産した時に知る事にしていた。

 

「ねぇ、ティアナ」

 

『何でしょう?』

 

「もし、私たちがミッドに居たとしたら、こんな生活‥想像できた?」

 

『えっ?ミッドに居たら?』

 

ギンガはもしも互いに次元漂流をせずに、ミッドチルダに居た場合、結婚して妊娠・出産する姿が想像できるかを問う。

 

(ミッドに居たら多分、今頃は執務官になっていただろうけど‥‥)

 

ティアナが次元漂流をした時、彼女の身分は管理局の執務補佐官であり、念願の執務官まであと少しの所まで来ていた。

 

当然、次元漂流をせずに、ミッドチルダに居たら予想通り今頃は執務官として管理局で働いている筈だし、顔に傷を受ける事も無かった。

 

しかし、結婚、妊娠までこぎ着けることが出来ただろうか?

 

一年前、新婚当時もティアナはそんな疑問を持った。

 

『うーん、仮定の話なので、明確な答えは出せませんが、多分、結婚も妊娠もしていなかったと思います』

 

ティアナは執務官になれたかもしれないが、結婚も妊娠もしていなかったのではないかと推測した。

 

『ギンガさんは?』

 

「私もティアナと一緒で結婚をしていなければ、妊娠もしていなかったと思う。ミッドでは、やっぱり戦闘機人って事で嫌悪されそうだから」

 

フェイトとティアナが次元漂流し防衛軍に救助されたばかりの頃、二人から機動六課時代の話を聞き、ミッドチルダで起きたJS事件‥主犯のジェイル・スカリエッティの配下には十二人の戦闘機人たちが居た。

 

クラナガンが舞台となった決戦では機動六課、管理局の局員とスカリエッティのガジェットと戦闘機人との激しい戦いがあった。

 

機動六課、管理局はスカリエッティとの決戦に勝利し、彼の配下である戦闘機人たちは一名を除き、全員が逮捕された。

 

決戦は一日で鎮圧されたが、それでも激しい戦いで、戦闘機人たちの能力の高さが窺えた。

 

逮捕された戦闘機人たちの内、大半が管理局からの司法取引を受けてギンガの実家であるナカジマ家と聖王教会に引き取られたが、その戦闘機人たちの様子をギンガはティアナとフェイトから聞いたが、それなりの生活をしているらしいが、元テロリスト、戦闘機人と言う事で肩身の狭い思いをしているのではないかと思っていた。

 

そうした思いからやはり戦闘機人は忌み嫌われる存在ではないかと思い、そんな自分を好きになってくれる人なんてミッドチルダには居ないだろうと思いギンガはミッドチルダに居たら、自分は結婚していないだろうと推測した。

 

(そう思うとスバルの事が心配ね‥‥)

 

ギンガはミッドチルダに居る妹の身を案じた。

 

『そう言えば、フェイトさんたちも今頃は結婚しているのでしょうか?』

 

ティアナはふと、ミッドチルダに居る元上司たちの現状も気になった。

 

「うーん、どうなんだろう?でも、フェイトさんたちは美人だし、彼氏は居たんじゃないかな?」

 

なのは、フェイト、はやては管理局でも有名なエースたちであり、容姿も魔力も恵まれているので、異性との交流は引く手あまただろう。

 

その気になればすぐにでも結婚出来る筈だし、お見合い話も沢山来ていたのではないかと推測するギンガ。

 

『ですが、少なくとも機動六課時代には居ませんでしたよ‥彼氏‥‥フェイトさんもこの世界に次元漂流するまでは異性との交流は当時、六課に所属し、フェイトさんが後見人を務めていたエリオって言う男子か無限書庫の司書長であるユーノさんくらいしかなかったような気がします』

 

「えっ?そうなの?」

 

ギンガは機動六課稼働前にこの地球に次元漂流をしたので、六課時代の事はティアナとフェイトからの話で知らない。

 

その六課稼働時代でもフェイトたちの周辺には異性の影はあまりにも薄かったとティアナは語る。

 

そんなエースたちの異性関係の薄さにギンガは意外性を覚える。

 

(あの時ははやてさんも初めての部隊運用って言っていたから異性との交流なんてする暇がなかったのかな?)

 

機動六課につては予めゲンヤから聞いていたのでギンガは、はやてとしても初めての部隊運用であり、なのは、フェイトも分隊長と言う地位に初めて就いたので、当時は異性に現を抜かす暇などなく、部隊の運用に手一杯であったのではないかと推測した。

 

『まぁ、フェイトさんがミッドに戻った後は当然、私も知る由もありませんけど‥‥もしかしたら、今は彼氏が居るか、結婚しているかもしれませんよ』

 

ただし、六課が解散してから何年も経った今なら、もしかしたらなのはたちにも彼氏や結婚相手が居るかもしれないと思うティアナ。

 

「そうね」

 

ギンガもティアナの言葉に賛同する。

 

しかし、二人は知らなかった。

 

なのはたちが未だに結婚どころか彼氏も居ない事を‥‥

 

 

「むっ!?」

 

何かを察し、フェイトは周囲を見渡す。

 

「ん?どうした?フェイト」

 

そんなフェイトに対してクロノが声をかける。

 

「今、何かバカにされたような気がして‥‥異性関係について‥‥」

 

「ん?」

 

フェイトの言葉にクロノは首を傾げる。

 

「しかし、フェイト。異性関係を気にしているなら、お見合いをしたらどうだ?」

 

「もう、またその話?」

 

ギンガの推測通り、フェイトには既に何件もの見合い話が来ていた。

 

「母さんも心配しているみたいだ」

 

フェイトに見合い話を持ってきているのは、どうやらリンディの様だ。

 

「義母さんやクロノは結構早い年齢で結婚したからって私までそれに倣う必要はないでしょう?」

 

「まぁ、それはそうなんだが‥‥」

 

(それに管理局にはやっぱり、守さんみたいな人が居ないからな‥‥)

 

(高望みなのかもしれないけど、生涯を共にするパートナーなんだからやっぱり、キチンとしたいし、それで婚期を逃すなら、別にそれはそれでいいけどね‥‥)

 

フェイトは最悪独身でも構わないと思っていた。

 

「はっ!?」

 

「どうかしましたか?」

 

フェイト同様、はやても何かを察した。

 

そんなはやてにグリフィスが声をかける。

 

「なんや、今何かバカにされたような‥‥結婚関係で‥‥」

 

「はぁ‥‥」

 

「ですが、艦長は結婚をしないのですか?」

 

グリフィスは、はやてに結婚について訊ねる。

 

(グリフィス君‥君はルキノとイチャラブな関係やから平然と独身貴族の私にそんな事が聞けるんやな?)

 

(くっ、リア充め!!爆発しろ!!)

 

はやてと異なり、グリフィスは幼馴染のルキノと恋仲関係で彼とルキノも結婚間近となっていた。

 

そんなグリフィスの姿は、はやてとってはあまり見続けたい光景ではない。

 

勿論、部下の結婚なのだから祝福する時は祝福するつもりだ。

 

「ですが、カリムさんやナカジマさんからも艦長宛てに見合い話が複数舞い込んでいる筈ですよね?」

 

フェイト同様、はやてもカリムやゲンヤから教会の騎士を始めとする教会関係者や管理局の関係者を紹介されていた。

 

「うーん、そうなんやけど、なんか『この人や!!』って感じの人がおらんのよ」

 

「はぁ‥‥」

 

(大丈夫なのかな?)

 

(そんな事ばかり言っていると婚期を逃すんじゃあ‥‥)

 

はやての言葉にグリフィスは彼女が婚期を逃すのではないかと心配になる。

 

「それにいくら家柄や魔力が優れていてもお見合い相手が私よりも十歳以上の相手はいくらなんでもないやろう?」

 

「そ、それは確かに‥‥」

 

はやてのお見合い相手は彼女よりも年上ばかりなので、彼女がお見合いに真剣にならないのも分からなくはない。

 

当分、カリムやゲンヤが持ち込むお見合い話は断られ続けるだろう。

 

 

「っ!?」

 

フェイト、はやてが異性関係について何かを察したようになのはも何かを察し、周囲を見渡す。

 

「ん?なのは、どうかしたのか?」

 

ヴィータがなのはに声をかける。

 

「なんか、今バカにされたような気がするの」

 

「えっ?」

 

ヴィータが周囲を見渡すが近くには誰も居ない。

 

「でも、誰も居ないぞ。空耳じゃねぇか?」

 

「うーん‥そうかな?」

 

「でも、そう思うならいい加減、ユーノとくっつけよ」

 

「えっ?なんでユーノ君と?」

 

ヴィータはなのはにユーノとの仲を進展させてみろとなのはに諭すが、肝心のなのは本人がきょとんとする。

 

「えっ?だって、お前とユーノは‥‥」

 

「仲の良い友達だよ」

 

「‥‥」

 

(ゆ、ユーノ‥‥)

 

なのはと親しい異性にもかかわらず、彼女から異性として見られていないユーノに対してヴィータは内心、同情する。

 

 

異世界であるミッドチルダにて、エース級の魔導師三人娘が異性関係、婚姻関係について何かを察した中、引き続きギンガがティアナとテレビ通信をしていると、

 

「うっ‥‥」

 

突如、ギンガがお腹を押さえながら顔色を青くする。

 

『ぎ、ギンガさん?大丈夫ですか?』

 

ギンガの様子にティアナは狼狽える。

 

「だ、大丈夫‥お腹の子がよく動いていて‥‥んっ‥‥!!」

 

『っ!?』

 

これまでお腹の中の子がギンガのお腹を蹴る事はあった。

 

しかし、今回の動きはこれまでとは何だか異なる。

 

『す、すみません!!誰か!!誰か居ませんか!?ギンガさんが!!』

 

モニター越しであるが、ティアナは声を上げる。

 

「はい。どうかしまし‥‥っ!?ギンガさん!!」

 

ティアナの声を聞きノエルがやってくるとギンガの様子に気づく。

 

「大丈夫ですか!?」

 

ノエルはすぐにギンガの傍に寄り添う。

 

「な、なんか‥変‥‥お腹の子が‥‥」

 

ギンガは脂汗を浮かべながら辛そうな声で現状をノエルに伝える。

 

「ま、まさか、陣痛!?い、急いで先生に連絡を!!ティアナさん、突然の事ですみません」

 

ギンガの様子を見てノエルはギンガの身体に何が起きたのかを察する。

 

『い、いえ‥‥頑張ってくださいギンガさん』

 

ティアナはギンガの安産を祈りつつ通話を切った。

 

近い将来、自分にも確実に訪れる事ではあるが、実際にモニターの前で、陣痛で苦しんでいるギンガの姿を見ると心配と不安になる。

 

ギンガの陣痛が始まると、そこからノエルの行動は早かった。

 

急いで主治医であるライザに連絡をとり、次いで旦那である良馬、ギンガの家族に連絡を入れた。

 

「大丈夫ですか?しっかりして下さい。今、先生に連絡しました。急いでこちらに向かってくれるとの事です。良馬さんもご家族の方々も来てくれるそうです」

 

「ありがとうございます、ノエルさん」

 

ノエルはギンガをベッドに横たえる。

 

それから二十分しないうちにライザが到着し、連絡を受けた良馬、リニス、そして中嶋家の面々が駆けつけた。

 

「ギンガが‥陣痛が来たって‥‥だ、大丈夫なの!?」

 

「はい。まだ陣痛が来たばかりなので‥‥今はベッドの上に居ます」

 

「ギンガ、頑張って。今は辛いかもしれないけど、その辛さの先に赤ちゃんが待っているわよ」

 

「う、うん」

 

陣痛が始まってまだ間もない為にまだ赤ん坊が出てくる気配が無い。

 

しかし、陣痛が来たとの事で良馬は慌てている。

 

自分の事ではないが、ギンガの身もお腹の中に居る子の安否も気になって仕方ない。

 

加奈江は出産経験がある為か、慌てずにギンガを励ましている。

 

「ギンガ‥‥」

 

ギンガが陣痛で苦しみに顔を歪ませているのに今の自分には何もできない。

 

(リニス、法術でギンガの痛みを‥‥)

 

(それはダメです)

 

(どうして?)

 

良馬は法術でギンガの陣痛を和らげようとするが、リニスがソレを止める。

 

(痛みはバロメーターになっています。それを取っては力むタイミングが分からなくなってしまいます)

 

(‥‥)

 

「良馬くん、ギンガの手を握ってあげて」

 

「えっ?」

 

「ギンガは今、一人で戦っている。でも、愛する人の温もりを感じることが出来れば、それはギンガにとってそれは大きな力になる筈よ」

 

「は、はい。ギンガ、頑張れ!!」

 

良馬はギンガの手をギュッと握り、ギンガを励ます。

 

「は、はい、頑張ります。良馬さんとの子供なんですから‥‥」

 

「ああ」

 

陣痛で苦しい筈なのにギンガは笑顔で答える。

 

ギンガの優しさと強さに触れ、良馬は彼女を励ますかのようにギュッと手を握り、ギンガと産まれてくる我が子の行く末を見守る。

 

「んっ‥‥ぐぅ‥‥はっ‥‥」

 

「落ち着いてください。息をゆっくりして、ひい、ひい、ふう‥って」

 

「は、はい。ひい、ひい、ふう‥‥」

 

加奈江はギンガの額に浮かぶ汗を拭く。

 

ライザとリニスがギンガの助産を行い、源三郎、桜花は心配そうに部屋の外でギンガの出産の行方を見守っており、忍は良馬のもう一人の妻であるユリーシャの様子を見ている。

 

ギンガにいきなり陣痛が来て出産状態となったので、ユリーシャももしかしたら出産の兆候が見られるかもしれないからだ。

 

「シノブ‥‥」

 

「ん?」

 

「ギンガ、もうすぐ赤ちゃん産まれるの?」

 

「そうね」

 

「‥‥」

 

ユリーシャは彼女にしては珍しく不安そうな表情で大きくなった自らの腹部を撫でる。

 

(ユリーシャちゃんもやっぱり、不安なのね)

 

(まぁ、無理も無いわね。ギンガちゃんにしてもユリーシャちゃんにしても初めての出産だもの‥‥)

 

「大丈夫よ。ギンガちゃんの赤ちゃんはちゃんと産まれるし、ユリーシャちゃんの赤ちゃんも無事に産まれるわ。矢沢先生は名医だもの。ユリーシャちゃんも元気な赤ちゃんを産んで、良馬を喜ばせてあげましょう」

 

「うん」

 

(お母様もギンガと同じ様にして私と姉様を産んだんだから、私だってリョーマとの子を産んで見せるわ!!)

 

出産に対して不安そうなユリーシャを忍が励ますのであった。

 

時間はかかったがようやく赤ん坊に動きが現れた。

 

「あっ、頭が見えてきましたよ!!」

 

「もう少しです!!頑張って!!」

 

あともうしばらくすれば赤ん坊は産まれるだろうが、ギンガの初めてのお産は随分と難産のようだ。

 

「っ‥‥」

 

出産の痛みと力むためか良馬の手を握るギンガの力が次第に強くなり、痛みが原因で加減ができなくなったせいで、良馬の手からは時折、ミシッと鈍い音がする。

 

しかし、彼は一言も『痛い』やギンガの手を放すような事はせずにギンガの手を握ったままだ。

 

(この程度の痛み‥‥)

 

(ギンガはそれ以上の痛みと戦い、俺の子供も生まれようとしているんだ!!)

 

「うっ‥‥あああ!」

 

「ギンガ!!頑張れ!!あともう少しだ!!」

 

「ぐぅぅ!ぁぁぁ!」

 

出産の苦しさを表しながらギンガは唸り、脂汗をびっしょりと流す。

 

そして、もうすぐ生まれる新たな命の為にギンガは必死で痛みに耐えて出産に挑んでいる。

 

そして‥‥

 

「ホンギャア~ ホンギャア~」

 

月村邸に初の産声が響いた。

 

ギンガは出産のために体力を使い果たし、ぐったりとしていたが、視線はしっかりと助産医を務めたライザが取り上げた自身と良馬との間に産まれた子供に向けていた。

 

産まれたばかりの子供は産湯につけられる。

 

そして、バスタオルにくるまれてギンガの隣に横たえる。

 

「元気な女の子ですよ」

 

ギンガと良馬の間に産まれたのは女の子だった。

 

「‥‥」

 

スヤスヤとギンガの隣に眠る我が子を見て良馬は、

 

(地球を守るために軍人となり、今日まで戦って来た‥‥)

 

(俺の手は異星人とは言え、大勢の人を殺し血塗れだ‥‥)

 

子供が産まれ改めて軍人と言う罪深い職業に就いている自分を顧みた。

 

理由はどうあれ、自分は大量殺戮者である。

 

結婚もそうであるが、そんな自分が結婚し、こうして子供を設け、家庭的幸福を得る資格があるのだろか?

 

こうして結婚し、ようやく乗り越えたかと思われるが、子供が産まれた事で良馬の心の中にある葛藤が生じる。

 

「良馬さん」

 

「ん?」

 

「抱いてあげて下さい」

 

ギンガは弱弱しくもはっきりとした口調で良馬に産まれたばかりの我が子を抱き上げて欲しいと言う。

 

「‥‥」

 

良馬は恐る恐る眠る我が子を抱き上げる。

 

(そうだ。地球の人を‥‥大切な人を守る為に軍人と言う罪深い職へと進み、手を汚してきたんじゃないか‥‥)

 

(この子やギンガ、ユリーシャ‥そしてユリーシャから産まれる子、忍さん‥‥大切な人を守る為に‥‥)

 

(自分の人生録が血文字だらけでも、大切な人を守る為なら‥‥)

 

「‥‥産まれて来てくれてありがとう‥‥ギンガ、俺と結婚してくれて‥‥この子を産んでくれてありがとう」

 

良馬はギンガに礼を言った。

 

それから、源三郎、桜花、紅葉も赤ん坊と面会した。

 

「私たちも等々お婆ちゃんとお爺ちゃんね」

 

「あ、ああ‥‥いずれは桜花も嫁に行き、こうして子供を産む時が来るんだろうな‥‥」

 

「もう、源三郎さん桜花はまだ先の事よ」

 

源三郎は自身の孫、そして生まれたばかりの赤ん坊を見ている桜花を見て、しみじみと時の流れを感じ、加奈江はそんな旦那の姿に苦笑する。

 

「うわぁ~小っちゃいね、赤ちゃん」

 

「かわいい~」

 

(この子はあの子じゃないけど、ギンガの子供である事は変わらない)

 

紅葉は前世でその世界のギンガの子供を見ていた。

 

今、目の前に居る赤ん坊は前世のギンガの子供ではない。

 

しかし、ギンガから産まれた子供であることに変わりない。

 

(少し違う出会いになったけど、またあの子に会えた感じね‥‥)

 

その事から紅葉は懐かしさを覚えた。

 

加奈江も源三郎も初めての孫と言う事で喜んだ。

 

特に紅葉同様、加奈江は前世ではギンガの養母だったので、ギンガの結婚も嬉しかったのだが、こうしてギンガの子供‥自分の孫を抱くことが出来たので、もしもこの世に神が居るのであるならば、転生出来た幸運に感謝する。

 

(ユリーシャには血縁者が古代くんだけなのだが、古代くんの方も雪さんが妊娠しているからそれどころじゃないから、ユリーシャの時はその分盛大に祝ってあげよう)

 

ギンガにはこの世界にも新しい家族が出来てこうして出産を祝っているが、ユリーシャの家族は地球から14万8000光年も離れたマゼラン星雲のイスカンダルに居るので、ユリーシャの結婚、妊娠、出産を知らないだろう。

 

だからこそ、ユリーシャの出産の折には、血縁者が出産の場に居ない寂しさを覚えないくらいに盛大に祝ってあげようと決める良馬だった。

 

 

その後、ギンガの出産に続き、ユリーシャ、ティアナ、雪と周囲の女性たちも次々と無事に出産を終えた。

 

ユリーシャと雪は、ギンガと同じく女の子を‥‥

 

ティアナは男の子を出産した。

 

ギンガの子供には誉 (ほまれ) 

 

ユリーシャの子供には友莉葉 (ゆりは)

 

と、それぞれ名付けられた。

 

後々、この子たちが地球と管理局とのいざこざに巻き込まれて行く事を良馬、ギンガ、ユリーシャは知る由もなかった。

 

そして、古代と雪の間に産まれた子供は深雪と名付けられ、

 

ティアナと北野との子供は、哲郎と名付けられたのだった。

 




今回ギンガとユリーシャの主治医となったライザ・矢沢はフィリス・矢沢の子孫と言う設定です。


【挿絵表示】


ギンガの子供の誉の由来は、ギンガの名前の由来が、大日本帝国海軍が中島飛行機に開発させた双発爆撃機『銀河』なので、その子供は銀河の発動機である『誉』からとりました。

ユリーシャは地球では月村家の遠縁の女性、月村摩耶として地球で過ごしていました。

イスカンダルの習慣では生まれた子供は長女はサーシア、次女はユリーシャの名を継ぐことになっていますが、既にユリーシャは地球人として生活しており、サーシアもイスカンダルで存命なので、ユリーシャの『ユリ』を含む名前としました。

ティアナと北野の子供の名前は旧作では北野の名前が『哲』であり、松本作品で「てつ」がある名前の男子で有名なのが星野鉄郎なので、そこから名前をとりました。

古代と雪の子供は公式キャラなので、そのままの出演となります。
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