星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百三十三話 子育て&不穏な予知

 

 

良馬がギンガ、ユリーシャと結婚し、古代が雪と、ティアナが北野と結婚し、その翌年にそれぞれ子供を出産し、新たな家庭を築いた中、軍はガルマン・ガミラスとの協議を重ね、地球はガルマン・ガミラスからガイペロン級多層式航宙母艦の設計図と生産ライセンスを得て、地球はガルマン・ガミラス側にアンドロメダ級の設計図と生産ライセンスを交換した。

 

地球側が新たな空母技術を得た事で、運用する艦載機についても新たな機体の開発が行われた。

 

大艦巨砲主義の軍人たちからは、

 

「空母の技術ライセンスを得たのだから、それで満足しろ!!」

 

「新たな機体を開発する時間と金があるならば、その分を新造艦の建造費にまわせ!!」

 

「従来のコスモタイガーとコスモゼロで十分だ!!」

 

などの意見が飛び出た。

 

大艦巨砲主義の軍人たちが言うように確かにコスモタイガーもコスモゼロも防衛軍が誇る名機だ。

 

しかし、いくら名機とは言え、これから先ずっと名機の座をキープできるとは限らない。

 

かつて日本海軍が自信をもって開発・運用した零戦は長大な航続力と高い空戦性能で、連合軍戦闘機を圧倒した。

 

しかし、1942年にアリューシャン列島で不時着した零戦の機体を回収した米軍は、これを米本土へ持ち帰って修理し、実際に飛行させて徹底分析し、そこから右旋回の操作が難しいことや急降下時にエンジンが止まる可能性があるなど、零戦の弱点が突きとめられた。

 

この分析結果は、連合軍パイロットに伝えられ、その後の戦闘に生かされた。

 

また、F6Fヘルキャットなどの新型機の開発にも反映されたことで、零戦の優位は徐々にゆらいでいった。

 

人が造ったモノに完全・完璧はなく、何かしらの弱点を抱えている。

 

その弱点が敵に露呈されればあっという間に殲滅されてしまう。

 

このように零戦の不敗神話も僅かな期間であり、それは決してコスモタイガーやコスモゼロも例外ではない筈だ。

 

「確かにコスモタイガーもコスモゼロも我が軍が誇る名機だ。しかし、ガミラスがガルマン・ガミラスとなってからもかの星間国家は新たな航宙機を開発し続けている。それはボラー連邦を始めとする強力な星間国家と十分にやり合うためだ」

 

「その通りだ!!技術は日々進化しているのだ。優れた技術が十年後も通じているのか?」

 

「貴官らの言う戦艦だって、ガミラス戦役当時の戦艦など、今では練習艦か記念艦のどちらかではないかね!?」

 

「戦艦だけ、新造艦を造り、航宙機だけ停滞するのはそれこそ、パイロットを無駄死にさせる非人道的な行為なのではないか?」

 

「ぬぅ~‥‥」

 

「くっ‥‥」

 

大艦巨砲主義の軍人たちはまたもや航空主流派の軍人たちに論破された。

 

しかし、だからといって新造艦の建造が停滞・中止になっている訳ではない。

 

バランスの良い建造こそが求められている。

 

ただ、それだけなのだ。

 

これまでの外宇宙からの侵略とは異なるが、地球は現状、未だにバジウド星系に存在するボラー連邦派の星間国家とは戦争状態にある。

 

あの遠征以降、アルファ星とバース星はボラー連邦派の星間国家から度々攻撃を受けている。

 

地球側が撒いた種とは言え、攻撃の脅威があり、連邦市民に脅威がある以上、軍としては市民を守らなければならない。

 

それが軍と言う組織なのだ。

 

地球がガルマン・ガミラスから得た地球型ガイペロン級多層式航宙母艦は、各飛行甲板の前端形状が山形となっており、アングルド・デッキを最上甲板にもち、艦橋も船体の側面に設置されている従来のガイペロン級多層式航宙母艦と異なり、最上甲板の左舷後方に設置されている。

 

 

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建造数は戦艦に比べ少ないが、それでも今後実績を残せば、戦艦よりも空母の方が優先され建造されるかもしれない。

 

空母を中心とした機動部隊には防衛軍の未来がかかっていると航空主流派の軍人たちは機動部隊の働きに期待した。

 

軍がガルマン・ガミラスと技術交換を行って新たな一歩を踏み出そうとしている中、海鳴市にある月村邸では‥‥

 

「ウワーン!!ウワーン!!」

 

「ウェーン!!ウェーン!!」

 

二人の赤ん坊の泣き声が響く。

 

「えっと、お腹空いたのかな?それともオムツかな?」

 

「多分、ホマレはオムツで、ユリハはお腹が空いたと思う」

 

新ママとなったギンガ、ユリーシャは日々子育てに紛争していた。

 

勿論子育てには良馬も協力しているし、忍とノエルも二人のサポートに徹している。

 

イスカンダル人は赤ん坊の期間が短い特徴があるのだが、ユリーシャの娘である友莉葉にもその特徴が受け継いでいるのかと思われたが、友莉葉の成長速度は異母姉妹である誉と変わらない。

 

ギンガはその点が気になり、良馬にその点を訊ねてみると、

 

「友莉葉はイスカンダルの血が流れているとは言え、クォーターで多少なりともイスカンダルの血が薄まっている事と念のために俺の法術でその特徴を抑えている」

 

「法術で?それは一体どうして?」

 

ギンガとしては何故、法術で友莉葉の成長装度を地球人同じ成長速度にするのかを訊ねる。

 

イスカンダル人の様に赤ん坊の期間が短ければ、ユリーシャにしてみれば子育ての時間が短縮できる筈だ。

 

「それはユリーシャ自身が頼んで来たんだ」

 

「ユリーシャが!?」

 

「ああ。友莉葉も誉と同じ幼稚園、同じ学校に通わせたいってね‥‥確かにイスカンダル人の成長速度なら、子育ての時間を短縮できる。その分、誉との時間の差が開いてしまう‥‥ユリーシャはその点を気にしていたんだ。ギンガも産休がずっと続く訳ではない‥いつかは軍務に戻らなければならない。その時、ユリーシャには誉の面倒を見てもらわなければならないだろう?」

 

「あっ‥‥」

 

友莉葉と誉はギンガとユリーシャの二人の母親に育てられており、それは授乳行為も例外ではなかった。

 

赤ん坊の期間が短く実年齢と身体つきが反比例なユリーシャであるが、年齢は関係なく、身体機能は見た目の年相応であり、友莉葉が産まれてからユリーシャは母乳が出るようになり、友莉葉と誉に授乳している。

 

そして、ギンガ自身もそれは同じで、戦闘機人である自分は妊娠・出産出来るのかと思ったが、自分は誉を出産し、ユリーシャ同様、母乳が出るようになり、誉と友莉葉に授乳している。

 

ギンガ自身も戦闘機人である自分でも妊娠・出産が可能と忍から聞いていたが、まさか我が子に授乳も出来るとは思わなかった。だが、その事実はギンガにとっては嬉しい事実であった。

 

「ただし、今後友莉葉の子孫の中には隔世遺伝をしてイスカンダル人の特徴が現れる者も出るかもしれない」

 

と、追記していた。

 

そんな新ママたちが子育てに奮闘している中、ギンガ、ティアナ、雪は現在育休をとっているが、それはいつまでも続くものではない。

 

ならばいっそ軍を退役した方が子供との時間をとれるのだが、三人とも軍を退役はしなかった。

 

三人とも士官と言う立場上、子育ても大切だが、軍の方も自分たちが退役をして他の人たちに迷惑をかけたくないと言う思いから退役と言う選択肢を除外していた。

 

北野家でも息子が産まれると、

 

「哲郎!!今日はこんな電車の玩具を買って来たぞ!!」

 

北野の実兄、ティアナにとっては義兄である誠也が暇さえあれば北野家に赴き、甥っ子である哲郎に玩具を土産として買ってきては、面倒を見てくれる。

 

「義兄さん、わざわざすみません。毎回哲郎にお土産まで‥‥」

 

そんな誠也にティアナは恐縮してしまう。

 

「いや、気にするな。ティアナさんは日々子育てを頑張っているんだ。これくらい何ともない。それに子供は未来の宝だからな」

 

誠也は哲郎をたかい、たかい、しながら微笑む。

 

「そう言えば、哲は育児に協力しているかい?いくら仕事があるからと言って家事、育児を全てティアナさんに任せっきりではないか?」

 

「いえ、そんなことはありませんよ。休日にはちゃんと家事、育児を手伝ってくれています」

 

「そうか‥‥」

 

「あ、あの‥‥」

 

「ん?なんだい?」

 

「義兄さんは、結婚はなさらないのですか?」

 

先程、誠也は『子供は未来の宝』と言った。

 

ならば、誠也自身も結婚をして家庭を築き、子供を持つべきなのではないだろうか?

 

「いや、俺は‥結婚はしない」

 

「えっ?」

 

しかし、誠也は生涯独身を貫くと言う。

 

「ど、どうして?義兄さんほどの人なら結婚なんて簡単じゃあ‥‥」

 

ティアナとしては何故誠也が結婚をしないのか理解できなかった。

 

「俺は前線勤務の軍人だ。そして前線は常に危険が伴う。明日の命も分からない。結婚すれば未練が残る。未練があれば、迷いが出る。そうなれば、いざという時の決断力が鈍る。それは、部下たちの生命にも危険が及ぶ‥‥だから俺は、結婚はしない」

 

「‥‥」

 

「それに北野家の血はこうして受け継がれたからな」

 

誠也は哲郎を抱き上げながらジッと哲郎の顔を見つめる。

 

ティアナは神妙な顔つきで誠也を見つめた。

 

そんな新ママたちの家庭であるが、ギンガとユリーシャは兎も角、雪とティアナは育休中とはいえ家事と子育ては多忙だろうと判断した真田がお手伝いロボットを二人に出産祝いとして製作しプレゼントをした。

 

「みんな、よく来てくれたな」

 

「えっと‥真田さん、そのロボットは?」

 

真田にプレゼントがあると言われ、現在の真田が務めている科学局へとやって来た古代夫婦と北野夫婦。

 

二組の夫婦の前にはアナライザーに似た二体のロボットがあった。

 

古代がロボットについて真田に質問をする。

 

「こいつはパピライザーだ」

 

すると真田はこのロボットが何なのかを皆に説明しだす。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「パピライザー?」

 

「なんか、アナライザーみたいな名前ですね」

 

「名前もそうですが、形状も何だかアナライザーとそっくりだ」

 

「こいつはアナライザーの直系の調査・分析ロボットだからな、形状が似ているのも当然だ」

 

真田はアナライザーに似たロボット、パピライザーの頭部をポンポンと触りながらパピライザーがアナライザーの後続機である事を説明する。

 

「直系と言う事は、このロボットは、アナライザーの後継機と言う事ですね?」

 

「そうだ。これまでのアナライザーの稼働データを基により高い汎用性と人間の生活空間での共存をコンセプトに作ったロボットだ」

 

「人間の生活空間との共存‥‥」

 

かつて、雪風・改を作った大山が言った、

 

『人間が機械を屈服させるんじゃない。ましてその逆でもない。人間と共に助け合うメカニズム』

 

そのコンセプトで大山は雪風・改を造った。

 

そして真田はかつて古代に、

 

『科学は人間の幸せのためにあると言う事を確かめたい』

 

そう言った事がある。

 

「このパピライザーは真田さんの科学の在り方を証明したロボットと言う事ですね?」

 

「まぁ、そうなるな」

 

(スカリエッティも真田さんみたいな考えを持っていたら、違った未来があったんだろうな‥‥)

 

真田の話を聞き、ティアナふと、JS事件の首謀者であるスカリエッティも真田さんと同等の科学者であった。

 

彼の生まれには同情する点はあった。

 

ならばこそ、その優秀な頭脳を平和利用してもらいたかった。

 

しかし、ティアナは知らない‥‥

 

彼が収監されていた刑務所を脱獄して、今はイスカンダルにてミッドチルダにも自分が知る管理世界にもなかった科学技術を前にしている事を‥‥

 

ただ言えるのは新天地にて、彼が生まれ変わっている事を願うばかりだ。

 

「パピライザーは人との生活環境の中に深く関わる事を考慮して、脚部は従来のキャタピラーではなくスポンジタイヤに変えてある。しかもこのタイヤはスパイクを内蔵しているから多少の荒れ地でも行動が可能だ。それに普段は二脚であるが、待機時や階段などの段差を昇る時には補助輪が伸長し、バランスをとる仕様となっている」

 

足がアナライザーやバトライザーと違いキャタピラーではなくタイヤ仕様でも荒地、段差の環境関係なく、パピライザーは行動が可能である事を真田は古代たちに説明する。

 

なので、階段で二階以上の高さでも行動が可能となっている。

 

それにいざとなれば、アナライザー同様、背中の姿勢制御スラスターで飛び上がる事も出来る。

 

「頭部の透明ドームはアナライザー同様、透過型のスクリーンになって各種情報を表示することが出来る。そして人との円滑なコミュニケーションを図るために発音時にはこの口に当たる赤いメーター部分が点滅し、内部に搭載されているスピーカーから音声を発する」

 

アナライザーは頭部のメーター部分が光り、スピーカーから音声が流れる仕組みとなっているが、それでは喋っている様には見えづらい事から真田は、パピライザーは口に当たる部分のメーターのみ点滅する仕様にしていた。

 

「腹部のハッチ内部にはメンテナンスのためのタッチパネルやコネクターの他に、各種ツールや収納スペースが備わっている」

 

買い物の品や子供のおもちゃの収納スペースが腹部に備わっている点はアナライザーとは大きく異なる。

 

本来は採取したサンプルを収納するためのスペースなのだが、日常生活では買い物の品を入れたり、子育て中は子供のおもちゃやおやつを入れるスペースになりそうだ。

 

(うーん、アナライザーの後継機で凄い性能を持っているって事は分かったけど‥‥)

 

真田の説明を聞き、雪はある不安があった。

 

(これまでアナライザーにはスカートを捲られたり、お尻を触られてきたから、子供に悪影響が無いか心配だわ)

 

アナライザーはロボットなのだが、思考回路と行動が時々エロおやじみたいな行動をとるので、そんな行動をとるアナライザーの後継機なので、パピライザーもアナライザーと同じ行動を取るのではないか不安視していた。

 

「あ、あの‥真田さん」

 

「ん?なんだ?」

 

「パピライザーの思考回路もアナライザーと同じなんですか?」

 

そこで、雪は真田にパピライザーの思考回路について質問をした。

 

「ああ、その事か」

 

真田もアナライザーのロボットらしからぬ行動は何度も目にしているので、雪が何を言いたいのかすぐに察した。

 

「このパピライザーは子守り様にチューンしてある。なので、音声を始めとして女性の思考回路を持たせてある」

 

「そ、そうですか‥よかった~」

 

思考回路が女性と言う事でホッとする雪だった。

 

それは雪だけでなく。古代も同じだった。

 

「そもそもアナライザーの思考回路はあまりにも特殊過ぎだ。あいつと同じ思考回路を持つロボットは俺でも作れない」

 

真田でもアナライザーと同じ思考回路を持つロボットの量産は不可能と断言する。

 

あの真田にそこまで言わせるくらいなのだから、アナライザーは貴重なロボットなのかもしれない。

 

「マニュアルはタッチパネルで見ることが出来るが、それでも分からない事があれば俺に連絡をしてくれ」

 

「はい」

 

「ありがとうございます」

 

こうして、古代家、北野家は真田から家事・子守り様のサポートロボットであるパピライザーを受け取った。

 

本来ならば、この手のロボットを購入するとなると何十万、何百万の費用が必要なのだが、自分たちが真田と知り合い関係だったおかげで、タダで手に入れることが出来たのはまさに幸運であった。

 

 

防衛軍がガルマン・ガミラスから空母の建造ノウハウを学び、月村家、古代家、北野家の新ママ、新パパたちが子育てに奮闘中、異世界のミッドチルダでは‥‥

 

本局にある会議場にて、“海”の定例会議が開かれていた。

 

管理局‥“海”は最近になり、大きく部署を分けており、これまでの管理世界になり得る世界、ロストロギアを探索する探索部隊と各管理世界、ミッドチルダ、本局を外宇宙からの侵略から守る艦隊部署となり、その二つの部署においても艦隊所属の局員は探索部隊よりも幅を利かせるようになった。

 

そして、今回の定例会議でも艦隊所属の局員からは新たな艦種となる次元航行艦の建造案が提出された。

 

本局 会議室

 

「MS機関が開発される前は、管理局は次元航行艦と次元巡航艦、二つの艦種の艦を運用してきました。MS機関の生産も順調に進んでおり、その運用に関しても我々は充分に使いこなしていると言っていいでしょう!!故に新たな艦種を建造し、より一層、管理局の艦隊強化を提案するものであります!!」

 

艦隊部署所属の局員が今回の建造案を発表すると、会場に居る艦隊部署所属の局員たちからは拍手が起こる。

 

探索部隊や事務方の局員は特にリアクションをすることなく、聞いていた。

 

(艦種の種類を増やすか‥‥)

 

(まぁ、艦隊運用と言う観点から見れば、分からない訳ではないが‥‥)

 

もう一つの地球が保有している宇宙艦隊、ボラー連邦、それぞれの星間国家は戦艦だけでなく、巡洋艦、駆逐艦、護衛艦、空母、次元航行艦と様々な艦種を保有し、運用している。

 

なので、艦隊を運用し始めた管理局が次元航行艦以外の艦種を建造し保有するのは別に不思議な事ではない。

 

先程、提案をした局員同様、MS機関が開発される前は次元航行艦、次元巡航艦と管理局は二つの艦種を保有・運用していた。

 

しかし、MS機関が開発されたばかりの頃は、まだMS機関を小型化する技術を管理局はまだ有していなかった。

 

だが、ここ最近管理局もMS機関の小型化については研究しており、開発の目途がたったので、艦隊部署は艦種の増加を提案したのだ。

 

しかし、増加を提案する艦種の中に案の定、空母は含まれていなかった。

 

管理局は未だに宇宙・大気圏内を飛行する戦闘機の開発・保有・運用に関して消極的以前に開発する概念もなかった。

 

探索部隊所属のクロノとしては別に興味のない提案だった。

 

クロノも建造案の中に空母の存在がなかった事に関して気づきもしなかった。

 

もしもフェイトがこの会議に出席していれば、空母の存在に気づいたかもしれない。

 

(しかし、建造費がかさむと“陸”との関係がまた悪化するな‥‥)

 

艦一隻を建造するには莫大な建造費と時間がかかる。

 

管理局の予算も限られている。

 

ボラー連邦への武力制裁前までは“海”が予算を貪ってきたが、武力制裁失敗後は“海”と“陸”の立場は逆転し、MS機関が開発されたばかりの頃もギリギリ“陸”は“海”と対等な関係となっていた。

 

だがMS機関が当たり前の存在となってきてからは武力制裁前の様に“海”が段々と予算を貪り始めた。

 

そして、今回の艦種増加の提案は管理局の予算の八割以上を持っていくのではないか?

 

そうなれば、”陸“の予算はなしのつぶてとなり関係が再び悪化する事が目に見えていた。

 

とは言え、艦隊部署としてみれば、艦隊の強化はミッドチルダの安全にも繋がるので、“陸”には文句を言わせないとでも思っているのだろう。

 

艦隊部署からの報告が終わり、次いで探索部隊からの報告となる。

 

部署が大きく二つに分かれた時、“海”の局員のほとんどが艦隊部署を希望した。

 

その為、探索部隊の所属艦、人数はかなり減っていた。

 

艦隊部署の局員から見れば、探索部隊に残っている局員は『変わり者』と言う扱いであった。

 

艦数も人数も最低限しかいないので、探索部隊はボラー連邦への武力制裁前と比べて確たる成果の件数が減っており、それについて報告を挙げると艦隊部署に所属する局員からは、

 

「君たちは一体何をしている?」

 

「次元航行艦で次元の海を遊覧観光でもしているのか?」

 

「良いご身分だな」

 

「こちらは連日厳しい演習を行い、有事の際には命をかけて戦うって言うのに」

 

と、ニヤニヤとクロノたちを小馬鹿にするような目と笑みを浮かべていた。

 

(少し前まではお前たちも同じ仕事をしていただろうが!!)

 

(武力制裁失敗後はボラーの脅威で震えて本局に引きこもっていたくせに、『何が命を懸けて戦う』だ)

 

艦隊部署所属の局員たちの子供みたいな態度にクロノは呆れた。

 

そんな中、はやても何だか肩身が狭そうにしていた。

 

はやても今では“海”に戻り、今では一艦の長なので、今回の会議にも当然出席している。

 

彼女は異動希望で艦隊部署を希望しており、希望通り艦隊勤務となったのだが、探索部隊にはクロノやフェイトが居るので、間接的に自分は大切な友人であるクロノとフェイトをバカにしている事になる。

 

勿論、クロノはその点は分かっているので、はやてに対して怒りや呆れなどの感情はない。

 

 

「どうしたの?クロノ。随分と不機嫌だね」

 

会議後にクロノと合流したフェイトは彼があからさまに不機嫌である事に気づいた。

 

「さっきの会議で何かあったの?」

 

「ああ、艦隊勤務の連中がな‥‥」

 

クロノはフェイトに先ほどの会議での出来事を話す。

 

「うわぁ~それは確かにないね。はやても可哀想‥‥」

 

フェイトはその時のはやての気まずさが手に取るように分かった。

 

「それにいくら艦隊部署が設立されても使いこなせるの?管理局に?」

 

フェイトとしては防衛軍やガミラス、ボラー連邦の様に多種類の艦種が混じる艦隊を管理局が運用できるのかを疑問視した。

 

「まぁ、すぐには無理だろう。この後に控えている合同会議で予算を根こそぎ奪い、艦を建造するにしても、それを運用するにしても時間がかかる」

 

クロノは時間が掛かるが、いずれは出来るかもしれないと可能性を示唆する。

 

「でも、この様子だと荒れるね‥合同会議は‥‥」

 

「それは間違いないだろうな。それどころか今年の公開陳述会でミッドの市民が知れば、また反管理局感情が再燃するかもしれない。『また無駄な税金を使うのか?』って‥‥」

 

フェイトもクロノも“海”がこれからやる事は絶対に間違いなく、“陸”からの反発を招くことになるだろうと予測する。

 

いや、“陸”だけではなく、ミッドチルダを始めとする各管理世界でも反発が起こるかもしれないとクロノは予測する。

 

確かに管理局はあの武力制裁の失敗から立ち直って来た。

 

だが、ここ最近頻発していた管理局員の犯罪が露呈しているので、正直管理局の評判は良くない。

 

しかし、それでも管理局が存続し続けているのは管理局がなければ治安維持が出来ないからだ。

 

ミッドチルダの住人は渋々管理局を支持している感じだ。

 

管理局側もそんな市民感情を当然、理解していた。

 

そして、ベルカ地区にある聖王教会に対して警戒をする。

 

かつてボラー連邦への武力制裁失敗の後、聖王教会が管理局に取って代わって次元の海、管理世界を管理しようとしていると言う噂が周囲に出回ったからだ。

 

聖王教会は高レベルの魔導騎士が何人もおり、管理局も人手が足りないときは教会所属の騎士に出動を要請するくらいだ。

 

警戒するのは当然の事だった。

 

その後に行われた“海” “空” “陸”の合同定例会議ではクロノとフェイトの予想通り、“海”がこれまで以上に次元航行艦の艦種を増やす旨を伝え、その結果予算をごっそりと持っていく事に対して、“陸”からの猛攻があったが、艦隊部署は何処吹く風の様な態度で艦隊強化についてメリットを延々と語り、建造予算を無理矢理押し通した。

 

更にMS機関製造の秘匿性が段々と薄れて来た事で、“海”は各管理世界に次元航行艦の建造施設の拡張を決めた。

 

これまでMS機関を搭載した次元航行艦の建造は本局と建造施設を有する一部のスペースコロニーで行われてきた。

 

しかし、海賊やテロリストが既にMS機関を搭載した海賊船を運用している事からMS機関を秘匿し続け、建造数が抑えられてきたが、それを解禁し、各管理世界に建造施設を増やせば、管理局は次元航行艦を‥戦力を増やすことが出来る。

 

更には現地の雇用促進にもつながると管理局は判断した。

 

(“海”の中でも艦隊部署の横暴が段々と目立ってきたな‥‥)

 

(果たしてこんな奴らが有事の際に役に立つのか?)

 

クロノは管理局の艦隊に対して既に懐疑的になっていた。

 

(はやてもとんでもない部署に所属してしまったな)

 

それと同時に自分とは異なり、艦隊部署へと異動したはやてに同情したのだった。

 

 

管理局の“海”に再び暴走の兆しがみられる中、ミッドチルダのベルカ地区にある聖王教会‥‥

 

その教会の一室にて、部屋の主であるカリム・グラシアは羊皮紙にペンを走らせていた。

 

カリムのレアスキル『プロフェーティン・シュリフテン』が発動したのだ。

 

このレアスキルは、半年から数年先までの事件をランダムに拾い出す‥‥所謂、未来予知という能力だ。

 

しかし、この能力の欠点は半年から数年先までの事件をランダムに拾い出す‥‥つまり、事件が何年の何月何日何時何分に起こるのか正確な時間が分からない。

 

しかも予知の内容が、古代ベルカ語の文章表現につき、解釈によって内容も変わるという難解な点もあり、古代ベルカ式のデバイスを扱うシグナムたちヴォルケンリッターの面々でも解読が難しいらしい。

 

更に的中率は割と当たる占い程度しかなく、聖王教会と“海”の有識者によって判断の参考とされる。

 

だが、カリムは近年、大きな事件をこのレアスキルで予知している。

 

それが新暦75年にミッドチルダで起きたJS事件とボラー連邦との対立と武力制裁の失敗だ。

 

そして、予知内容を書き終えた羊皮紙をジッと見つめる。

 

(これははやてとクロノ提督に再び相談する必要があるかもしれないわね)

 

「シスター・シャッハ」

 

「はい。騎士カリム」

 

「急いで、はやてとクロノ提督を呼んで。大至急」

 

「は、はぁ‥しかし、大丈夫でしょうか?」

 

「ん?」

 

「ここ最近、ベルカ地区のあちこちに管理局のサーチャーや局員が明らかな監視行動を取っています。そんな状況下で騎士はやてやクロノ提督を呼べば、二人が何かしらの反逆行為を行っているのではないかと、管理局に疑われませんか?」

 

「確かに貴女の言う事も尤もです。ですが、この内容を信じてくれそうなのはあの二人くらいしか居ないのです」

 

機動六課設立の真の目的である自分の予知を信じ、“陸”からの批難を受ける矢面に立つ覚悟で、はやては機動六課を設立した。

 

尤もはやて自身、自分の部隊を持ちたいと言う願いもあったので、あの時はカリムとはやての利害が一致した事も六課設立の要因の一つとなっている。

 

「では、場所を変えてみてはどうでしょう?」

 

シャッハは二人をベルカ地区に呼ぶのではなく、互いにミッドチルダの何処かで落ち合って話し合う事を提案した。

 

「わかりました。では、急ぎ連絡と手配を‥‥」

 

「承知しました」

 

シャッハは、急ぎクロノとはやてに連絡を取った。

 

二人とも“海”の次元航行艦の部署に所属している為、モタモタしていると次元の海へと出てしまうかもしれないからだ。

 

何とか二人と連絡がとれたのでシャッハは要件を伝えた。

 

そして、落ち合う場所はホテル・アグスタの一室となった。

 

カリムとシャッハはホテル・アグスタへと向かう時、いくつもの陽動を行い、管理局の隙をついて会合場所へと向かった。

 

ホテル・アグスタ‥‥

 

機動六課稼働中にオークション会場となったホテルで、六課の隊員たちがオークション会場の警護に当たった事のあるホテルであり、はやてとしては懐かしさのあるホテルでもある。

 

そんなホテルの一室にて、カリム、シャッハ、クロノ、はやての四人が集まった。

 

「忙しい中、わざわざ御呼立して申し訳ありません」

 

「いや、かまへんよ」

 

「ああ。それにしても『大至急会いたい』って言うからてっきり教会かと思ったが、まさか別の場所とは‥‥」

 

クロノは会合場所が聖王教会ではなくホテル・アグスタだったことに意外性を覚える。

 

大抵、カリムから呼ばれた時は聖王教会にある彼女の執務室だったからだ。

 

「せやね。まぁ、私としてはもう一度、此処に来るとは思ってもなかったわ」

 

「教会を含め、ベルカ地区全体がどうも最近、管理局の監視の目がありまして‥‥教会に御二人を呼べば何かしらの迷惑がかかると思いまして‥‥」

 

シャッハが二人を教会ではなくホテル・アグスタへ呼び出した訳を説明する。

 

「管理局が監視?それは一体どうして?」

 

はやては管理局が教会を監視する意味が分からず、首を傾げる。

 

「近年、管理局員の不正や犯罪が目立ち管理局の支持の低下がみられますよね?」

 

「あぁ~それは確かに‥‥」

 

「こちらとしては耳が痛い話だ」

 

「それで、一部の界隈では聖王教会が管理局に取って代わってミッドチルダや管理世界を管理するのではないか?と言う噂がたち、管理局が警戒している訳です」

 

「とんだ風評被害だな」

 

「全くや。いらん労力に人と時間を潰すなんて無駄な事を‥‥」

 

クロノもはやても聖王教会が管理局に取って代わる程の力が無い事を知っている。

 

故に管理局が行っているベルカ地区の監視は時間と労力の無駄だと思った。

 

「そんな訳で会合場所を教会ではなく此方のホテルにした次第です」

 

「僕もはやても一部の局員には嫌われているからな。確かにシスター・シャッハの言う通り、教会に疑惑の目を向けている中で僕たちが教会と接触すれば、あらぬ疑いをかけてくるな」

 

クロノもはやても一部の上層部からはいつか自分たちの地位を脅かしかねない危険分子として見られているし、特にかつてクロノの同期であったソラーズの艦長、二コラウフ・ロガンの父親であるイヴァノヴァ・ロガンからは未だに恨まれている。

 

ソラーズは未だに行方不明扱いとなっており、年月から考えると二コラウフの生存はどう考えても絶望的だ。

 

「それで今日、カリムは一体何の用で私らを呼び出したん?まさか、また何か不吉な予知があったんか?」

 

はやてはカリムに会合を設けた理由を訊ねる。

 

「ええ、恐らく今回も管理局‥ひいてはミッドチルダの存続にかかわるかもしれません」

 

「そこまでの内容なんかっ!?」

 

「恐らく‥‥」

 

「早速その内容を見せてもらっていいだろうか?」

 

「はい。こちらです」

 

カリムはクロノとはやてに予知内容が書かれた羊皮紙を見せる。

 

その羊皮紙には以下の言葉が記されていた。

 

 

黒き魔女、海を守る法の城へと迫り、法の城は虚しく焼け落ちる

 

それを先駆けに古き民たち、蒼き世界と共に故郷の地を取り戻さんとかの地へと来訪す

 

 

「「‥‥」」

 

クロノとはやては何度もカリムの予知が書かれた羊皮紙に目を通す。

 

そして、ようやく羊皮紙から顔をあげる。

 

「こ、これは‥‥」

 

「JS事件、ボラー連邦との初邂逅の時と同じレベルの物騒な内容やな‥‥」

 

二人ともあまりの内容に顔が引き攣る。

 

「それで、カリムの解釈は?」

 

はやてはカリムに予知の内容をどう解釈するかを訊ねる。

 

「JS事件、ボラー連邦との邂逅の事例からこの『海を守る法の城』は本局の事を指すと解釈します」

 

「なるほど‥JS事件の時、カリムの予知にあった『大地の法の塔』は地上本部の事を指して、『海を守る法の船』は管理局の次元航行艦の事だったからな」

 

「そんで、『死せる王の下、聖地より彼の翼』は『聖王のゆりかご』やったな‥‥『古い結晶』はレリック、『無限の欲望』はスカリエッティのことを指しとった‥そうすると冒頭の『黒き魔女』は、スカリエッティみたいな広域指名手配犯の事なんかな?」

 

「『魔女』‥と言う事は女性の広域指名手配犯‥‥と言う事か?」

 

「広域指名手配犯で女性となると‥‥」

 

クロノとはやては『広域指名手配犯』 『女性』と言う二つのキーワードで当てはまる人物が居た。

 

「まさか、シーマ・ガラハウか?」

 

昨年、コロニーで建造された管理局の新造艦を強奪した元管理局員の名前と姿が脳裏を過った。

 

「確かにシーマ・ガラハウは黒髪の女やったな‥‥」

 

「しかも高ランクの魔導師だ」

 

広域指名手配犯、女性、黒髪、さらには魔導師と言う共通点から『黒き魔女』はシーマの事を指すのではないかとクロノとはやては判断した。

 

「シーマ・ガラハウ‥‥確か例の新造艦強奪事件の主犯とされる人物ですよね?」

 

「ええ」

 

「それで、そのシーマ・ガラハウなる人物の居所はまだ分かっていないのですか?」

 

シャッハが二人にシーマの行方を訊ねる。

 

「ええ‥あの新造艦強奪事件の後、度々管理局の輸送艦が襲撃される事件が起きており、現場ではあの新造艦の姿が度々目撃されている」

 

「犯人が分かっているのに居場所が分からない‥‥まさにスカリエッティと同じやな」

 

「つまり、その強奪事件の犯人がいずれ本局へ襲撃を掛けると言う事ですか?」

 

クロノとはやての見解を聞きカリムはシーマがいずれ奪った新造艦で本局を攻撃してくるのかを訊ねる。

 

「恐らくは‥‥」

 

「新造艦を造っているコロニーへ襲撃をかまして新造艦を奪うくらいの連中やしな‥‥スカリエッティも陽動とは言え、地上本部に襲撃をかけてきた事例もあるし‥‥」

 

「ですが、“海”では現在、複数の次元航行艦で編成された艦隊部署を創設したと聞きます。当然、本局周辺の警備も厳重の筈‥‥そんな本局へ新造艦とは言え、一隻で襲撃を仕掛けるでしょうか?」

 

シャッハはシーマが本局へ襲撃をしかけてくるとは思えなかった。

 

「シスター・シャッハの言う事も分かります。ですが、『警備が厳重だから襲撃はない』と高を括ると、とんでもないしっぺ返しを受けます。地上本部襲撃がいい例です」

 

「それに新造艦強奪事件時、シーマには協力者がいました。もしも本局へ襲撃を仕掛けてくるとしたら、単艦ではなく多数の協力者と共に襲撃してくる可能性は充分にありえます」

 

はやてはシャッハの言い分も分かるが、それこそが相手の思う壺であり、油断が生じる事を伝え、クロノも本局へ襲撃を仕掛けてくる際、彼女も元“海”所属の局員であることからいくら新造艦とは言え、決して単艦で襲撃は仕掛けず、協力者と徒党を組んで襲撃してくるだろうと推測する。

 

「兎に角、しばらくは本局周辺の警戒を厳中にする必要があるな‥‥」

 

最初の一文をシーマの襲撃があると判断したクロノたちであるが、シーマ以上の脅威が本局に襲い掛かる事を此処に居るクロノたちを含め、管理局の誰もが知る由もなかった。

 

その後も四人は予知の解釈作業を進めるのであった。

 




パピライザーは小説 宇宙戦艦ヤマト黎明期に登場するアナライザーの後続機の分析ロボットで古代家に居るロボットです。
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