海鳴のとある公園にて、一部の主婦たちにおける自分の子供を使ってのあまりにも酷いイベントを偶然にも見たギンガとユリーシャ。
ギンガとユリーシャ、ノエルは嫌悪感を抱くもその主婦たち、そして参加させられている子供たちはソレを酷いと思っておらず、自分の子供のステータス、子供たちは自らの強さの証明と思っていた。
一方、メガロポリス東京に新居を構える古代家の近所に最近、引っ越してきた主婦もかなりぶっ飛んだ思考の持ち主であった。
ご近所トラブルを抱えた雪は旦那の古代にも相談できずに精神的に疲弊していた。
そんな雪のためにギンガは気分転換のためのパーティーを企画して月村邸の庭で焼肉パーティーを開いた。
久しぶりに気兼ねなく友人たちと過ごし、美味しい食事を楽しんだ雪の精神は多少だが、持ち直した。
そんなパーティーの最中で‥‥
「そう言えば紅葉は高校卒業後、大学に進学するの?」
ティアナが紅葉に高校卒業後の進路を訊ねる。
ガミラス戦役時まだ十歳だった少女も今や高校生となっていた。
「いえ、大学ではなく料理かお菓子製作の専門学校に行くつもりです。調理師の資格とお菓子作りのノウハウを学びたいので‥‥学校卒業後にはどこかのお店で修行をして、海鳴の地で翠屋を再開したいです」
紅葉の夢が実家である翠屋の再興なので、進学先が大学ではなく調理系の専門学校なのも頷ける。
「そう‥頑張ってね。紅葉なら出来るわ」
「はい」
(例え世界が違ってもこの子はあのなのはさんの子孫だものね)
ティアナは紅葉が転生者である事を知らないが、あのなのはの子孫ならば、やり通す強い精神力の持ち主であると信じ、いずれこの世界でも翠屋を復興出来るだろうと思った。
ティアナと紅葉が進路について話している時、
prrrr‥‥
雪の通信端末が鳴った。
「通話?誰からだろう?」
雪が通信端末を手に取ってディスプレイを確認すると、そこには『末原埼』と表示されていた。
「こんな時に‥‥」
パーティーを楽しんでいたのに、ご近所トラブルの現況からの通話で折角の気分も台無しだ。
しかし、此処で通話に出ないと次に会った時にネチネチと絡まれるので、雪はげんなりとしながらも通話に出る事にした。
時系列は此処から少し前に戻る‥‥
古代家の近所に引っ越してきた末原埼はいつものようにスーパーに買い物に来ては近所のママ友に会計を押し付けようとしていたが、手頃なママ友が見つからない。
そんな中、目立つ長髪で金髪の女性を見つける。
(あっ、あれは古代さん。この前は私に返金何てふざけた態度とってきやがって!!)
近所でも長髪で金髪の女性と言う事で雪は物凄く特徴が顕著であった。
(旦那が国家公務員だからって調子に乗っちゃって‥‥今日も高貴なる私の買い物代を払わせてやる!!)
そう思って雪の背後にこっそりと近づくのだが、既に雪のトートバッグには買い物品が入っており、既に会計を終えている様子だ。
(ちっ、既に会計を終えてやがる‥‥生意気な奴!!)
会計を終えているのでは、先日の様に自分の会計を雪に押し付けることが出来ない。
(こうなったら、アイツが買い物をしたやつを根こそぎ私に寄付させてやるわ!!)
そこで、末原埼は雪の買い物品を奪おうとした時、
prrrr‥‥
雪の通信端末が鳴り、末原埼は慌てて身を潜める。
誰かとの通話中に自分が集り行為をしたのがバレたら警察を呼ばれてしまうかもしれないからだ。
「あら?ギンガさん‥‥」
雪が通話の相手と会話していると、
「えっ?焼肉パーティー?」
(焼肉パーティーですって!?)
雪の口から『焼肉パーティー』と言う単語が聞こえてきた。
その単語に末原埼は真っ先に食いつく。
「ええ、日付は‥‥はい。その日は大丈夫です。ええ、では進さんと深雪と一緒に行きます。はい、それでは当日に‥‥はい」
通話を終えると雪は足早に帰っていく。
勿論それは末原埼を警戒してのことだった。
その警戒相手である末原埼は、焼肉パーティーの話を聞いて雪から買い物の品を強奪する事も忘れて、
(焼肉パーティー‥‥パーティーなら、大勢で参加した方が古代さんも嬉しいし、楽しいわよね?)
(それに態々この私が参加してあげるんだから、奢ってもらえる筈だわ~♪)
(何しろ、私は古代さんにとって大切なご近所さんだものね~♪)
(確か日付は‥‥って言っていたわね)
末原埼は雪がどこの店で焼肉パーティーをするのかを知らずに一方的な考えで自分もその焼肉パーティーに参加するつもりでいた。
しかも雪を含む他の参加者たちに自分の飲食代を奢らせる前提で‥‥
そして、焼肉パーティー当日‥‥
末原埼は近所にある高級焼肉店へと向かった。
あれから近所にある焼肉店を調べて、パーティーをするのだからこの近所で一番の高級店だと思い込み、子供と共にその高級焼肉店へと来店したのだ。
「すみませ~ん。注文いいですか?」
「はい」
「おすすめのワインってありますか?」
「そうですね。肉料理にはこちら、フランス直輸入のこのワインがお勧めです」
店員がタブレット端末を操作して肉料理にあうワインを勧める。
「それ、ボトルでいくらですか?」
「14890円です」
流石高級店、手頃なワインでも一万を越えていた。
「14890円?‥うーん、あまり惹かれないわね。もっと別のワインはないの?」
「別の‥でございますか?」
しかし、値段を聞き末原埼はやや不満げな様子だ。
「ええ。どうせ奢りだし‥この店で一番高いワインはなんですか?」
末原埼は、今日の支払いは全て雪や他のパーティー参加者たちに支払わせるつもりなので、もっと高いモノを注文しなければ損だと思ったのだ。
「こ、こちらになりますが‥‥」
店員が再びタブレット端末を操作して、この店で一番高いワインの画像を見せる。
「じゃあ、それをボトルでいただくわ」
「かしこまりました」
店で一番高いワインをグラスではなく、ボトルで注文し、
「それと、肉は上カルビに上タン‥あと、希少部位なんかもあれば、じゃんじゃん頂戴」
「は、はい」
末原埼は値段を見ずに、しかも雪たちが店に居ないにもかかわらずワインの他に高級な肉や希少部位を目一杯注文する。
この時、彼女は雪たちが後からこの店に来るのだろうと思っていたからだ。
それから末原埼親子は高い肉、高い飲み物を大量に飲食した。
そして、この親子が店に入店してから数時間が経過した。
流石にお腹いっぱい食べたのでもう帰ろうとしたのだが、肝心の雪たちの姿が見えない。
此処のお会計を雪たちにしてもらわなければ店を出る事が出来ないので、末原埼は雪に通話をいれた。
『も、もしもし?』
通話口の向こうからは雪の引き攣った声がしたが、末原埼は構わずに要件を伝え始める。
「あっ、もしもし?古代さん?貴女いつになったら店にくるの?」
『は、はい?店?店ってなんですか?』
通話口の向こうからは雪の困惑する声がする。
そもそも雪たち古代一家は今日、海鳴の月村邸でパーティーをする予定だったので、店に行く予定はない。
夕食も普通に家に帰って食べるつもりなので、店での食事の予定はない。
「何を言っているのよ。知っているんだからね。古代さんたちが今日、焼肉パーティーをするって」
『‥‥なんで末原埼さんが今日のパーティーの事を知っているのかはおいておきますが、確かに今日私たちはパーティーに来ていますよ』
「えぇ~でも店の中に居ないじゃない。隠れてないで出て来てよ。私たちもう帰ろうと思っているんだけど?」
『ん?帰りたいのなら、お会計をして帰ったらどうですか?』
「私、今日財布を持ってきてないのよ。だから古代さん、代わりに此処の支払いを頼みたいのに、店の中に居ないじゃない」
『えっ?いえ、パーティーの会場は知り合いの方の家の庭なんですけど‥‥?』
会話が噛み合っていなかったが、末原埼が雪に店で自分たちが食べた飲食代の話を聞いて合点がいった。
そして雪は今、自分たちが居る場所を告げる。
勿論、正確な場所は教えない。
一応、メガロポリス東京から海鳴市は離れているが、あの末原埼の性格から月村家にも集りに来られたら月村家の人たちに迷惑がかかると判断したからだ。
月村家が金持ちだと知れば、彼女の性格から自分が雪のご近所さんと言う理由だけで、絶対に月村家にお金や高価な品物をクレクレする事が目に見えているからだ。
「はぁぁ!?ちょっと!!あなた、何を言っているのよ!?」
通話口の向こうからは末原埼の焦った声がする。
『えっ?でも、折角の招待でしたし、友人たちとこうして会うのも久しぶりでしたから‥‥』
「庭ってなによ!?普通はお店で食べるモノでしょう!?」
『いや、別に私が何処で何を食べようとそれは自由だと思いますけど‥‥?』
「それなら、今すぐに来てよ。店の場所と名前は‥‥って所よ。近所だし直ぐに来れるでしょう?」
雪が自分たちの居る店に来ない事が分かっても、近所の何処かの家に居るのなら来れる距離だと思い、パーティー会場から抜け出して会計をする為に自分たちが居る店に来て会計をしろと言うが、
『いえ、私たち今、メガロポリス東京ではなく、県外に居るのですぐにはいけませんし、そもそも末原埼さんが食べたのなら、お会計も貴女が支払うべきなんじゃないんですか?』
雪は正論を末原埼にぶつける。
そもそも物理的に雪は末原埼親子が居る店に行ける距離ではない。
「さっきも言ったでしょう?私、財布を持ってきていないのよ!!」
『財布も持たずになんで飲食店に入って食事をしたんですか?』
末原埼の行動に雪は呆れる。
「そ、それは‥‥古代さんが焼肉パーティーをするって言うから‥‥」
『それで、好き勝手に食事をして、その飲食代を私に支払わせようと?貴女はどこまでも卑しい人なんですか?そもそも今日のパーティーも招待されてもいないのに来る気だったんですか!?』
雪としても末原埼の言動に対して日頃の鬱憤が此処で爆発した。
仮に会場が海鳴の月村邸でなくともこの人は招待されてもいないのに、パーティーに乱入して好き勝手に飲食をして、その代金を自分たちに支払わせる気満々だったことに雪の怒りのボルテージは上がる。
そういう意味では、今日のパーティー会場が末原埼にバレなくてホッとする雪。
『と・に・か・く、私たちは今、友人たちとパーティーを楽しんでいますし、すぐに行ける距離でもないので、そちらの事はそちらで何とかしてください!!』
「そ、そんなっ!?待ってよ、このままじゃあ無銭飲食で警察に捕まっちゃうじゃない!!ねぇ、助けてよ!!私たち、ご近所仲間じゃない!?困った時はお互い様でしょう!?」
末原埼は縋るような声で雪に懇願するが、
『知りませんよ。だったら旦那さんを呼んで支払ってもらったらどうですか?それに私は貴女から助けてもらった事は一度もありませんけど?それでは』
「ちょっと!!待ちなさいよ!!ちょっと!!古代さん!!」
雪は付き合いきれないと判断して、末原埼との通話を切った。
切る直前も通話口の向こうからは彼女の絶叫がしたが、雪としては彼女の飲食代を支払う義務何てない。
本当に払えなければ、先ほど言ったように事情を話して旦那に来てもらって飲食代を払ってもらえればいい‥‥
雪はそう判断した。
「ふぅ~‥‥」
末原埼との通話を終えた雪は一息つく。
「何かあったんですか?」
そこへ、ギンガが雪に声をかけてきた。
「ううん、なんでもないわ」
「そうですか」
「ええ‥さっ、折角のパーティーですもの、もっとたくさん食べましょう」
「はい」
雪は晴れ晴れとした表情でギンガと共に料理が置いてあるテーブルへと向かった。
一方、雪から通話を切られた末原埼はと言うと‥‥
「‥‥」
チラッとテーブルの上に置かれた伝票を見ると、そこには何十万にもなる数字が書かれている。
(ど、ど、ど、どうしましょう‥‥)
(財布は持ってきていないし‥‥)
仮に彼女が財布を持ってきたとしても支払うのは厳しい金額だ。
財布も無く、雪からの支援も期待出来ない。
雪が提案したように旦那に言えば、飲食代は支払えるだろう。
しかし、何かの記念日でもなく、何の理由もなく、何でこんな高級店で高額な食事をしたのかを旦那に問われる。
絶対にだ。
追い詰められた末原埼が取った行動は‥‥
「いい?お母さんが『走れ』って言ったら、全速でお店の出口に向かって走るわよ」
「えっ?どうして?」
食い逃げであった。
店の外まで出てしまえば何とかなるとでも思っていたのだろう。
「ど、どうしてって、お母さん。今日、お財布を忘れちゃったのよ。仕方ないの」
彼女は子供の手を引いて姿勢を低くしながら店の出口へと向かいつつ、店の外に出るタイミングを計る。
そして、
「は、はしれ~」
子供に指示を出し、全速で店の外へと出ようとするが、高級ワインをボトルで何本もガブガブ飲んでいた為、酔っぱらった足では速く走る事も出来ず、ましてや子供を連れての食い逃げなので、
「お客さん、待って下さい。お支払いがまだですよ」
あっさりと店員に捕まった。
「ぐ、ぐぬぬう~‥‥お、お財布を忘れちゃったの。だから、家に取りに行くから待っていて」
「では、住所と名前、電話番号‥身分証明書などの提示をお願いします」
店の外に出てそのまま食い逃げされては店側としても困るので、店員は末原埼に住所、氏名、電話番号を訊ね、それに間違いないか身分証明書の提示を要求する。
「え、えっと、名前は、古代‥‥」
此処で末原埼は雪の名前を言おうとするが、彼女は雪のは知っていても古代家の住所を知らない。
しかも連れていた子供が、
「えっ?ママ、家は古代じゃなくて、末原埼でしょう?」
本名を言ってしまう。
「‥‥どういう事でしょうか?」
店員の目つきがより一層、厳しいものに変わる。
結局、末原埼は背後から店員からのキツイ視線を受けながら旦那に連絡をして、飲食代を支払いに来てもらった。
しばらくすると彼女の旦那が仕事を切り上げて店にやって来た。
「一体どういう事なんだ?食事に来て、財布を忘れるとは‥‥しかも何だ!?この金額は!?」
伝票を見た末原埼の旦那は目玉が飛び出るくらい驚愕した。
「大体なんでこんな高級店で食事なんかしたんだ!?お前や子供の誕生日でもないのに!?」
「そ、それは、えっと‥‥」
「ひとまず、事情は家で聞こう」
クレジットカードで会計を済ませると、末原埼の旦那は妻と子供を連れて自宅へと戻った。
そして、自宅で今回の食事の件を問う。
「それで、何で財布を持たずに高級店に行って、あんな馬鹿みたいな金額になったんだ?」
「じ、実は私は嵌められたのよ」
「嵌められた?」
「ええ、近所の古代さんが今日あの店で焼肉パーティーをやるって‥‥それで、飲食代は全部、私が持つから、末原埼さんは財布を持って行かなくても大丈夫って言うから‥‥」
末原埼は店での一件は雪が自分を嵌めた為に起きたと旦那に伝える。
しかし、旦那の方は妻が嵌められたかもしれないと言うのに何だか冷めた顔で妻の話を聞いていた。
「本当にあの店で古代さんが焼肉パーティーをやり、飲食代は自分がもつと言ったのか?」
「ちょっと、妻である私の事を疑うの!?そうでなきゃ、何もない日にあんな高級店なんかに行かないわよ!!」
「お前、その話は本当なのか?」
未だに末原埼の旦那は妻を疑っている。
「しつこいわね!!本当だって言っているじゃない!!」
「‥‥はぁ~‥お前、俺が何も知らないと思っているのか?」
末原埼の旦那は低い声を出す。
「えっ?な、何よ‥‥」
旦那の態度に先程までヒートアップしていた末原埼の動きがピタッと止まる。
「此処に引っ越しして来てから一週間くらい経った後で、何故か外に出るたびに近所の人たちが俺を避けたり、遠巻きにヒソヒソと話をしている姿を何度も見ているんだぞ」
「そ、それは‥‥ほら、あれよ。私たち他所から引っ越してきたじゃない?だから、ご近所さんもどんな人かちょっと警戒していたのよ」
「ほぉ~‥‥警戒ね‥‥まぁいい、話を続けるぞ‥‥それであまりにも気になったんで先日、ご近所さんを捕まえて事情を聞いたんだ‥‥」
「えっ?そ、そうなの‥‥?」
末原埼は旦那から目を逸らすが、その視線は泳いでおり、顔中冷や汗をかいている。
まさか、旦那がご近所さんから事情を直接聞いていたのは予想外だったのだろう。
「ああ‥‥それで聞いた話だが‥‥お前、ご近所さんから乞食みたいな集り行為をしているみたいだな?」
「そ、そんなことは‥‥そ、そうよ!!きっと貴方に嘘を吹き込んでいるのよ!!」
「そのご近所さんはお前とのやり取りを録音や録画していたみたいだが?あれは明らかにお前の声、お前の姿だったぞ」
「‥‥」
これまで集って来たご近所さんが自分との会話を録音・録画していたなんて末原埼にとってはまさに青天の霹靂だった。
証拠の音声、映像が残されているのでは、どう転んでも旦那に誤魔化す事なんて出来ない。
「はぁ~‥‥お前、引っ越し前の所でも同じことをして、近所から白い目で見られていたのに‥‥あの時は、俺は滅茶苦茶恥をかいたって言うのに、此処でも同じことを繰り返して‥‥」
末原埼の集り行為はメガロポリス東京に来てから初めてではなく、メガロポリス東京に来る前の土地でも同じことをして、近所から村八分状態となり、気まずくなって引っ越してきたみたいだ。
一度、大きな失敗をしたにもかかわらず、同じことをまた引っ越し先で行ったのだからこれはある種の病気なのかもしれない。
「それにご近所さんから聞いた話だと、お前、近所のスーパーも出禁になっているらしいじゃないか」
「‥‥」
「スーパーを出禁になっているから、最近の飯が宅食サービスや出前ばかりなのか?」
「‥‥」
旦那の問いに俯き、何も言えない末原埼。
その態度から近所の噂が事実なのだと察する旦那。
「とりあえず、お前が迷惑をかけたご近所さんに謝罪をしろ」
「は、はい」
「その後、お前みたいな意地汚い女の旦那と思われたくない。それに子供にも悪影響だ。離婚してくれ、親権も俺が取るからな」
「り、離婚!?そ、それだけは‥‥」
「離婚されるような事をするからだろう!?」
「わ、私は少しでも家計の足しになればと思って‥‥」
「その結果がこれか!?ご近所さんから白い目で見られ、スーパーも出禁になって‥‥もう、付き合いきれないんだよ!!お前の行動のせいで子供が幼稚園でいじめられるかもしれないんだぞ!?」
「そ、そんなぁ~‥‥」
等々旦那から離婚を突きつけられてしまった末原埼だった。
しかも子供の今度の影響を考慮されて親権まで奪われてしまう。
その後、彼女は旦那と共に迷惑をかけた近所の家々に謝罪行脚する事となった。
月村邸での焼肉パーティーから数日後、末原埼家の前には再び引っ越し屋のトラックが二台停まっていた。
「古代さん」
「あっ、どうも‥‥」
雪が怪訝な顔で引っ越し屋のトラックを見ていると、ご近所のママ友が雪に声をかけてきた。
「末原埼さんの所、離婚して引っ越しをするんですって」
「えっ?離婚!?引っ越し!?」
離婚と言う単語を聞いて驚く雪。
「あそこの奥さんの行為、旦那さんは知らなかったみたいで、ソレを知った旦那さんが大激怒しちゃってね」
「はぁ~‥‥」
(まぁ、常識のある人なら、あんな行為を続けている様な人を奥さんに持ったら、別れたくもなるわね)
末原埼の旦那に同情した。
「古代さん?ですか?」
すると、一人の男が雪に声をかけてきた。
「え、ええ‥そうですけど‥‥」
「この度は元妻が失礼な事を致しました」
すると、男性は雪に深々と頭を下げた。
この男性の言動から彼が末原埼の旦那なのだと察した。
そして、末原埼の事を『元妻』と呼んでいることから末原埼夫妻が離婚したと言うのは事実なのだと判明した。
「い、いえ‥‥でも、大変でしたね」
「はい。なんで元妻があのような事をするようになったのか‥‥あっ、此方は元妻が迷惑をかけたお詫びです」
すると、末原埼の旦那は雪に一通の封筒を差し出す。
雪に封筒を渡すと末原埼の旦那は引っ越し屋のトラックの下に行くと子供と共に何処かへと引っ越して行った。
そして、もう一台のトラックにも末原埼が乗り、旦那と子供が乗ったトラックとは別の方向に向かって走って行った。
末原埼家は妻の行動のせいで一家離散となってしまった。
末原埼家の子供には両親の離婚と言う辛い結末になってしまったが、迷惑なご近所さんが引っ越した事で、雪たちの生活に平穏が訪れたのは言うまでもなかった。
雪のご近所トラブルから少しして、良馬の下にまほろばの航海長である永倉から妻である真琴(旧姓:原田)が子供を出産したと言う報告を受けた。
先日行われた焼肉パーティーを開く前、永倉一家も招待されたが、その時には真琴が臨月だったので、永倉はパーティーを欠席していた。
「ギンガ」
「はい」
「まほろばの航海長の永倉くんを覚えているかい?」
「ええ。確かまほろばの衛生士の方と結婚したんですよね?」
「ああ。二人の間に子供が産まれたみたいなんだ」
「えっ?そうなんですか?それはおめでたい事ですね」
「うむ、それで出産祝いを持って行こうと思うのだけれど、何が良いかな?」
「子育てが始まる訳ですから、やっぱり子育てに必要な物が良いですね」
ほんの僅かであるが、子育てをする母親として先輩のギンガは永倉家の出産祝いには子育てに使う物が良いと提案する。
ギンガがリストに纏めると、良馬はそのリストを基に出産祝いの品を買う。
産まれたばかりの赤ん坊が居る家に大勢でおしかけては迷惑になるかもしれないので、月村家を代表して永倉の下には良馬が向かった。
「あっ、良馬さん」
「ん?」
「永倉さんの奥さんに伝言を頼みたいのですが‥‥」
「ああ、いいよ」
良馬はギンガから真琴に伝言を頼まれ、出産祝いを持って永倉家へと向かった。
永倉家
「あっ、艦長」
「どうも。この度は出産おめでとう。これは、出産祝いだ」
「ありがとうございます」
玄関で永倉の出迎えを受けて永倉家にあがる良馬。
「あっ、艦長」
「出産祝いを持ってきてくれたんだ」
「わざわざありがとうございます」
「いや、いや、俺も今年、父親になったばかりだからね。同じく赤ん坊が生まれたのだから祝福はするよ。それで、男の子?女の子?」
「息子です。『翼』って名前なんです」
永倉家の生まれた子供は北野家同様、男児だった。
「そうか‥‥」
良馬がチラッと部屋にあるコルクボードを見るとそこには永倉と真琴の結婚式での写真が中心に貼られていたが、周囲にある写真はコスプレイベントの写真が多かった。
「あっ、真琴さんにギンガから伝言を預かっていたんだ」
「伝言?」
「うん。えっと‥‥」
良馬がギンガから伝言を託されたメモを見ると、
「真琴さんへ、生後十二ヶ月を過ぎるまで、土曜日の正午頃、海鳴にある‥公園には決して近づいていけません。行けば子供が怪我をするかもしれません」
と、書かれていた。
「ん?どう言う意味でしょう?」
メモを見た真琴は首を傾げる。
「俺は直接見た訳ではないけれど、何でも土曜日にその公園では、子供を使って何らや最悪なイベントが行われているらしい‥‥ギンガが注意したにもかかわらず、先日、摩弥が子供を連れて行ったみたいで、それを知ったギンガに大目玉をくらっていたよ」
「最悪なイベント‥‥それって警察で取り締まれないんですか?」
「イベントが続いていると言う事は違法性を問える件ではないのだろうけど、子供のためを思うなら行かない方が良いだろう」
「分かりました。忠告ありがとうございます」
警察が取り締まれる件ではないと言う事で違法なイベントではないのだろうが、それでも子供のためなので、永倉一家はギンガからの忠告を守る事にした。
「ただいま。ギンガ、真琴さんにはちゃんと言っておいたよ」
まだ生まれたての赤ん坊が居たので永倉家に長居はせずに訪問を終えた良馬は、ギンガにちゃんと伝言を残してきたことを伝える。
「ありがとうございます。これで、永倉さんのお子さんがあの野蛮なイベントに参加せずにすみます」
ギンガとしては永倉の家の子供‥翼がベビーファイトに巻き込まれないと思うとホッとした。
「それで、永倉さんのお子さんは男の子でしたか?それとも女の子でした?」
「男の子だよ。目元は奥さんの真琴さんに似ていたけど、身体つきはお父さんである永倉くんに似て、筋骨隆々な逞しい男児になるんじゃないかな?」
良馬は成長した翼の姿を想像してみた。
「もしかして将来は、誉や友莉葉の旦那さんになったりして‥‥」
ギンガは冗談交じりに翼と自分の娘たちが結婚するのではないかと言うが、
「‥‥」
良馬はその発言を聞いてピシッと無言になる。
(うーん‥今なら、古代先輩の気持ちが分かる気がする‥‥)
ユリーシャがイスカンダルではなく地球に行くと言った際、守は良馬に釘をさしてきたが、当時の良馬は守の忠告を履き違えていたが、こうしてユリーシャと結婚してからあの時の守の言葉の意味を理解することが出来た。
(娘を持つ父親ってこんな感じなのか‥‥)
(古代先輩同様、古代君もこうなるのかな?)
守がユリーシャの件で自分に釘をさしてきたように、古代も深雪の異性関係にモヤモヤとした感情を将来抱くのかと思った。
新ママたちが育休中で、まほろば、ヤマトは地球でオーバーホール中であっても良馬や古代たちも休みと言う訳ではない。
軍人なので、常在戦場の気持ちを持ってトレーニングは日々こなさなければならない。
それにオーバーホール後の航海計画や訓練日程、消耗品の補充・経理などやる事は沢山あるのだ。
そんなある日、良馬が基地内になる射撃場で射撃訓練をしようと愛用しているコスモガンは抜き、安全装置を解除して的に銃口をあてて引き金を引くが、
カチッ、カチッ、カチッ、
銃口からはビームが出てこなかった。
「あ、あれ?エネルギー切れか?」
安全装置を再びかけてエネルギーマガジンを確認すると、エネルギーは充分にあった。
「ん?」
眉をひそめつつもう一度、安全装置を解除して的に銃口を向けて引き金を引くが、
カチッ、カチッ、カチッ、
やはり、銃口からビームは出てこない。
「故障したのかな?」
良馬は射撃場に隣接している作業台に向かい、一度コスモガンをバラして故障の原因を探る。
しかし、部品の欠損や破損は確認できず、もう一度コスモガンを組み立てて射撃場へと戻り、射撃を行おうとするが、
カチッ、カチッ、カチッ、
やっぱり銃口からビームは出なかった。
「これは本格的に壊れたかな‥‥軍に入ってからずっと愛用していたのだが‥‥」
このコスモガンとは長い付き合いで、いくつもの死線を共にくぐり抜けて来た戦友でもあったのだが、等々寿命が来てしまった様だ。
名残惜しさがあるが、コスモガンは軍人として自分の身を守る為の重要な装備なので、壊れたままの銃では自分の身を守れない。
良馬は基地内の備品庫へと向かい新しいコスモガンを貰う事にした。
備品庫にはコスモガンを始めとする武器の他に様々な装備は生活必需品、消耗品、医薬品、非常食などが置かれている。
その中の銃器を取り扱う部署に来て新しいコスモガンと壊れたコスモガンを交換しに来た。
「すみません。コスモガンが壊れてしまったので、新しいコスモガンと交換して下さい」
カウンターの上に壊れたコスモガンを置き、新品のコスモガンと交換してもらうように言うと、
「はい、はい、おぉ、これは14年式コスモガンですね‥随分と使い込んでいる。それに手入れも行き届いているね」
初老の備品係が良馬の壊れたコスモガンを見て良馬がこのコスモガンをどのように扱って来たのかを察する。
「それでは身分証明書を見せて下さい」
壊れたコスモガンを引き取り、新しいコスモガンと交換するにあたって身分証明書の提示を求める備品係。
「どうぞ」
「‥はい、確かに‥‥それで、どのコスモガンにするかね?」
良馬が備品係に身分証明書を提示し、コンピューターで確認をとり、身分が証明されると備品係は良馬にどのコスモガンにするかを訊ねて来た。
「最近じゃあ、14年式のコスモガンから14年式を小型軽量化した97式コスモガンが主流になってきているからね。お兄さんも艦隊勤務なら、小回りが利く97式にするかい?それとも此奴と同じ14式にするかい?他にも外国産のコスモガンもあるよ。まぁ、外国産の場合は官給品と異なるから、購入費はかかるがね」
「外国産‥‥」
海外のコスモガンと聞いてちょっと興味が沸く良馬。
「どんな国のコスモガンがあるんだい?」
軍では士官がポケットマネーで個人の装備品を購入するのは珍しくはなく、官給品ならば、無料で手に入るが個人装備ではお金がかかる。
それでも個性や自分が使いやすい装備をするのは自身の生存率をあげる事にもつながる。
見るだけはタダなので、参考までに良馬は外国製のコスモガンを見せて貰う事にした。
「これはアメリカ、コルト社製のコスモガン。14式や97式と違ってリボルバー型のコスモガンだ」
14式、97式はオートマチック型の外見をしたコスモガンであるが、コルト社から出たコスモガンはリボルバー形式のコスモガンで、14式、97式よりも大きい。
銃自体が大きいので、威力もありそうだ。
実際、良馬がコルト社製のコスモガンを手に取ってみたが重量もそこそこあった。
(ちょっと大きく重量もあるな‥‥野戦なら兎も角、艦内の白兵戦ではちょっと使いづらいかもしれない)
「これもアメリカ、レミントン社製の44口径のコスモガン。コルトよりも的中率が高いって噂だ」
先程のコルト社のコスモガンより一回り小さいリボルバー型のレミントン社製のコスモガンを取り出す備品係。
「アメリカ製以外にもあるのかい?」
「勿論、あるとも。これはドイツ製のコスモガン。かの有名なモーゼルC96を模したコスモガンになっている」
今度はリボルバー型から14式、97式と同じくオートマチック型のコスモガンを見せる備品係。
そのコスモガンは備品係の言う通り、かつてドイツが作ったモーゼルC96に似ている外見をしていた。
「それと、こいつもドイツ製のコスモガン‥ワルサーP38を基にしたコスモガンだ」
続いて取り出したのもドイツ製のコスモガンで、ドイツ製拳銃ではモーゼルC96と同じく、ドイツ製拳銃では有名な拳銃とされるワルサーP38に似たコスモガン。
「フランス製のコスモガンも入荷していて、アメリカ製のモノと同じリボルバー型のコスモガンだよ」
次に取り出されたのはフランス制のコスモガンなのだが、やや古風な作りをしたリボルバー型コスモガンだった。
(大きさではアメリカ製のコスモガンよりも使いやすいそうだな)
フランス製のコスモガンはアメリカ製のコスモガンと同じリボルバー型であったが、大きさではフランス製のコスモガンの方はアメリカ製のコスモガンよりも一回り小さかった。
「それで、どれにするかね?」
外国製のコスモガンはこれで全部みたいで、備品係はどのコスモガンにするかを良馬に訊ねて来た。
「アメリカ製のコスモガンはちょっと大きすぎるな」
「まぁ、確かに艦に乗っているお兄さんじゃあ、不便かもな」
アメリカ製のコスモガンはその大きさから却下した。
「C96モデルもホルスターに入れて席に座るとかさばりそうだ‥‥」
ドイツ製のモーゼルC96に似たコスモガンは構造的に却下。
「それじゃあ、前と同じ14式にするかい?」
「うーん‥でも、折角だし‥‥それじゃあ、このモデルワルサーP38を貰おう」
「まいど~」
良馬は折角の機会なので、愛用していた14式からドイツ製のワルサーP38モデルのコスモガンを手に入れた。
「それじゃあ、早速登録をするよ」
「お願いします」
備品係はワルサーP38モデルの登録作業をした後、良馬に手渡す。
「料金は‥‥」
ワルサーP38モデルは官給品ではないので、料金が発生する。
良馬は備品係に料金を支払う。
「もし、何か問題があったらいつでも言っておくれ、一年間は保証期間内だよ」
「分かりました」
新たなコスモガンを手に入れた良馬は早速、射撃場へと向かい試射を行う。
バキューン!! バキューン!! バキューン!!
「14式よりも速射性が高い、それにビームの弾道も安定している」
試射をしてみてワルサーP38モデルの性能に感嘆する良馬だった。