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まほろばへ新たに着任した医務長の石田幸香はAS編にてはやての主治医だった石田幸恵(ヤマト世界)の子孫と言う設定です。
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ギンガが誉を、ユリーシャが友莉葉を出産してから三年の月日が経った。
その間、紅葉は高校卒業後にパティシエの専門学校へと進学し、ギンガの義妹の桜花は体育系の大学へと進学した。
地球はガルマン・ガミラスとの同盟関係を深めて、技術交換を積極的に行い、地球の科学技術は飛躍的発展を遂げた。
しかし、相変わらず地球はバジウド星系のボラー連邦派と小競り合いを続けており、ガルマン・ガミラスも未だにボラー連邦本星を陥落できずに銀河系中心部はガルマン・ガミラスとボラー連邦と二分している戦いが続いていた。
良馬、ギンガ、ティアナも何度もバジウド星系やケンタウロス座アルファ星近くで、ボラー連邦派の小規模な艦隊と戦闘を繰り広げた。
そんな中、ギンガに司令部への出頭命令が出た。
「司令部からの出頭命令‥‥一体なんだろう?」
ギンガとしてはいきなりの司令部への出頭命令が出た事で一体何の件なのかさっぱり分からないが、司令部からの出頭命令を無視する訳にもいかないので、ギンガはメガロポリス東京にある司令部へと出頭した。
防衛軍司令部の庁舎でギンガはティアナと出会った。
「あら?ティアナ」
「あっ、ギンガさん」
「ティアナも司令部に何か用なの?」
「はい。出頭命令が出たので‥‥」
「ティアナも?」
「『も?』って事はギンガさんも?」
「ええ。でも、一体何なんだろう?」
「私も心当たりが無いんですよね」
二人は出頭命令に心当たりが無いまま、受付で出頭した事を告げる。
「月村ギンガさんにティアナ・ランスター・北野さんですね?‥はい、確かに出頭命令が出ていますね。四階の人事部へ行ってください」
「「人事部!?」」
受付から人事部に向かうように言われ、思わず声を上げる二人。
そして、受付から人事部へと向かうギンガとティアナ。
「まさか、人事部からの呼び出しだなんて‥‥」
「人事となると、どこかの部署に異動ってことかもね」
「昇進なら良いんですけどね‥‥」
折角、人事部からの出頭命令なので、昇進話ならば階級と給金が上がるので、異動よりも昇進の話が良い。
そう思って、人事部の部署へと到着する。
「月村ギンガです」
「ティアナ・ランスター・北野です」
「待っていたよ。これが新たに二人に下された辞令だ」
人事部の人間から二人は辞令書を受け取り、目を通すギンガとティアナ。
ギンガの辞令書には、
『 辞 令
220×年 〇〇月〇〇日付けで、宇宙巡洋艦八雲 副長の任を解き、宇宙戦艦まほろばの艦長を命ずる。 』
ティアナの辞令書には、
『 辞 令
220×年 〇〇月〇〇日付けで、宇宙巡洋艦八雲 戦術長の任を解き、宇宙戦艦まほろばの副長を命ずる。 』
と、書かれていた。
「「えっ!?」」
辞令書を見たギンガとティアナは目が思わず点となる。
「なお、御二人とも異動と同時に一階級の昇進となります」
部署異動の他に先ほど話していた昇進について、一階級の昇進となった。
「わ、私がまほろばの艦長!?」
「私も副長って‥‥」
「こ、この人事、何かも間違いじゃあ‥‥」
「いえ、長官からの正式な辞令です」
ギンガは思わず何かの間違いではないかと人事部の人に確認するが、この人事は間違いではない様だ。
「私の方は間違いないのでしょうか?」
ティアナも念の為、確認をするが、
「北野さんもこの辞令に間違いはありません」
「そう‥ですか‥‥」
ティアナの辞令も間違いではなく正式な辞令だった。
辞令書を受け取り、今でもそれが信じられないギンガとティアナ。
「ほ、本当に私がまほろばの艦長‥‥」
「私なんて副長ですよ‥‥」
「ん?ちょっとまって、私がまほろばの艦長となると良馬さんはどうなるの?」
ハッとなり、ギンガは思い出したかのように呟く。
良馬は、まほろばの艦長であったのだが、今回の人事異動で自分がまほろばの艦長となった。
ならば、まほろばの艦長であった良馬はどこの部署に異動になったのか?
気になったギンガは急いで良馬に連絡を入れた。
「良馬さん!!」
『ん?どうした?ギンガ』
「実はついさっき異動辞令が来て‥‥」
ギンガは良馬についさっき、自分がまほろばの艦長の役職を受けた事を伝える。
『そうか‥それじゃあ、今夜はギンガの昇進を祝わないとな』
「それよりも私がまほろばの艦長となると、良馬さんはどこの部署に異動になったんですか?」
『ん?俺か?俺は、暫く内勤みたいだ。まぁ、それも少しの間で、すぐに宇宙艦隊勤務に戻るさ』
「そ、そうですか‥‥」
『何、弱気になっているのさ。今度はギンガがまほろばの艦長なんだ‥‥まほろばの事、頼んだよ』
「は、はい‥ですが、私に艦長なんて務まるか‥‥」
『大丈夫だよ。ギンガは、まほろばで通信長を務め、八雲でも瓢艦長に変わって何度か指揮を執っていると聞いたぞ。自信を持って、俺だってまほろばの艦長になった頃は不安だったけど、何とかなったし艦長が不安だと乗員も不安がる』
「は、はい」
良馬はギンガのまほろば艦長の就任を祝うと同時に不安がっているギンガを励ました。
その日の夜、月村邸ではギンガの昇進とまほろばの新艦長就任のパーティーが開かれた。
そしてそのパーティーには新たに副長となったティアナも呼ばれた。
「それでは、ギンガちゃんのまほろば艦長就任とティアナちゃんの副長就任を祝して乾杯~!!」
『乾杯!!』
忍が乾杯の音頭を取り一同がグラスを掲げる。
「いやぁ~それにしてもギンガちゃんがまほろばの艦長か‥‥女性軍人としてはかなりの出世じゃない?」
「は、はぁ‥‥でも、艦長になる不安もありますが、何だか良馬さんからまほろばを奪った気がして‥‥」
まほろばは建造当初から良馬が艦長を務めて来た艦‥‥
その艦長職を良馬から自分になった事で、ギンガとしては自分が良馬からまほろばを奪ったような気がしてならない。
「いや、まほろばは防衛軍の‥地球連邦政府の所有する艦であり、俺の所有物ではないし、そもそも軍は部署異動が屡々異動がある組織なのだから、ギンガが気にする事は無いよ」
長い間、まほろばの艦長を務めて来たが、ただ長期間まほろばの艦長をしていたというだけであって決してまほろばが良馬の艦ではないので、彼はギンガに気にすることはないとフォローを入れる。
後日、まほろば所属士官の新人事が明らかとなった。
それは以下の通りの人事で、
艦長 月村ギンガ
副長 ティアナ・ランスター・北野
戦術長 日下部うらら
航海長 アーノルド・ノイマン
通信長 メイリン・ホーク
機関長 柳原麻侖
技師長 アルバート・ハインライン
船務長 宮藤芳佳
医務長 石田幸香
飛行長 山本玲
ギンガは以前にまほろばに乗艦した経験があるが、就役から今日までまほろばに乗艦している士官は今回、まほろばの飛行隊の隊長に昇進した山本のみとなっており、多国籍な顔ぶれとなっていた。
(訓練校卒業後のスバルの気持ちが何だか分かる気がしたわ‥‥)
ティアナは訓練校の同期であるうららと同じ艦に乗艦できる事を知り、嬉しそうだった。
やはり、長い時間行動を共にする中で乗艦に知り合いが居るのは安心感がある。
新たな人事となり、乗艦の多くが戦時経験があるとはいえ、いきなりボラー連邦派との前線に配備する事は出来ず、少しの間は訓練航海となる。
真新しい女性用艦長制服に身を包み、白い艦長帽を被ったギンガはまほろばの第一艦橋にあがる。
「敬礼!!」
副長のティアナが号令をかけ、艦橋に居る皆がギンガに敬礼する。
ティアナも青い士官服に身を包み、副長を示す水色の軍帽を被っている。
ギンガも艦長席の前で皆に返礼する。
「これより、本艦は太陽系内にて乗員の熟練訓練を行った後、ケンタウロス座アルファ星へと進出、その後は作戦指示を待つ事になるでしょうが、恐らくバジウド星系のボラー連邦派との戦線に参列する事になります。最初は慣れない艦で戸惑う事は多々あると思いますが、地球の為、全員の奮戦に期待します‥‥出航用意!!」
ギンガが訓示を行い、まほろばは出航準備へと入る。
「出航用意!!総員、出航配置につけ!!」
「全システムチェック」
「全システムチェック」
「システムチェック」
「‥‥艦内全機構異常なし、エネルギー正常」
「補助エンジン内圧力上昇、始動十秒前」
「補助エンジン動力接続」
「補助エンジン動力接続‥‥スイッチオン」
まほろばの波動エンジンにエネルギーが注入され、エンジンからは唸り声があがる。
「ガントリーロック解除」
「ガントリーロック解除‥ガントリーロックオールグリーン」
「ゲートオープン」
「ゲートオープン」
「微速前進0.5」
「微速前進0,5」
「まほろば、出航」
エンジンが始動して、まほろばはゆっくりと水路を航行していく。
「出港水路に進入‥‥」
「補助エンジン、第二戦速へ‥‥」
やがて水路からまほろばは大海原へと踊り出す。
天気は快晴ながらも風があり波がやや立っていた。
艦首から波音を立てて海を航行するまほろば。
ヤマト同様、水上艦を意識して作られた構造をしているので、海上を進むまほろばの姿は中々絵になっている。
「波動エンジン内圧力上昇、エネルギー充填90%」
「補助エンジン最大戦速へ」
「波動エンジン内、エネルギー充填100%」
「現在、補助エンジンの出力最大」
「波動エンジン内、エネルギー充填120%、フライホイール始動」
機関室では波動エンジンのシリンダーが轟音を上げながら回転し始める。
「波動エンジン点火、十秒前、九‥八‥七‥六‥五‥四‥三‥二‥一‥‥フライホイール接続、点火」
まほろばの後部にあるメインノズルからは勢いよくエネルギーを噴射して海面から浮上する。
「大気圏内航行、主翼展開」
ヤマトとほぼ同型のまほろばは大気圏内を上昇航行する際、船体に収納している翼を出して航行する。
「大気圏離脱十秒前‥主翼収納‥‥」
大気圏を出ると宇宙航行に切り替える。
そして、展開していた主翼は艦内に収納される。
「波動エンジン、大気圏外出力へ‥‥」
地球を背にまほろばは太陽系内の宇宙空間を航行する。
それからは月月火水木金金の曜日日程の如く、厳しい熟練訓練が始まる。
訓練を繰り返しながら木星圏まで進出したまほろば。
(木星圏か‥‥)
(そう言えば、第二次イスカンダル遠征の時、此処で雷王作戦が実施されて大変だったな‥‥)
(それに此処で連続ワープエンジンの実験機を初めて見たわね)
(今では当たり前になっている連続ワープ機関だけど、ガミラスからの技術供与でそれが実現して、短期間の間にそれを実用させる地球の技術はやっぱり凄いわ)
木星圏での過去の出来事を思い出していると、
「艦長、ガニメデ基地より通信です」
近くにある木星の衛星の一つ、ガニメデに設営されている基地、ガニメデ基地から通信が入った。
その通信内容と言うのが‥‥
「暴走した実験デバイスの停止?」
『そうだ』
「暴走って、一体何があったんですか?」
『実は‥‥』
以前も火星圏~木星圏で、HWVED搭載型波動エンジンの開発実験を行っていたように今回も火星圏~木星圏の間で実験を行っていた。
まほろばが木星圏に到着する少し前‥‥
既に通過している火星圏のフォボス基地にて、
火星圏 フォボス基地 管制塔
「主制御最終シークエンス、スタート」
「マイクロチャンバー内、質量増加を確認。臨界まであと三分‥あと二分‥‥」
「ニュートリノ放出量増加中」
「重力波発生」
「マイクロチャンバー内、質量最大」
「そのままの質量を維持せよ」
「質量安定しています」
「成功だ。波動エンジンとは異なるエネルギー機関‥‥ライトフライヤー‥‥」
「これが人類の新たな歴史の幕開けになりますね」
「ああ」
フォボス基地の管制塔に居る研究者たちの間で歓喜の声があがる中、
「ん?主任、マイクロチャンバー内の質量が増加!!規定値を越えています!!」
「何だと!?」
「い、いかん!!実験中止!!デバイスを緊急停止させろ!!」
「は、はい」
研究者が実験デバイスのコンピューターを止めようとするも、
「停止コードを受け付けません!!」
「な、なんてことだ‥‥」
フォボス基地の管制塔にあるモニターには暴走してワープしてしまう実験デバイスの姿が映し出された。
「ライトフライヤーのワープアウト地点の予測をせよ!!急げ!!」
「りょ、了解‥‥予想ワープアウト地点は木星圏、ガニメデ付近!!」
「急ぎガニメデ基地に緊急伝!!」
「は、はい!!」
フォボス基地での実験デバイスの暴走は直ぐにガニメデ基地に通達された。
『‥‥と言う訳だ。その暴走した実験デバイスに対して迅速な対応が出来るのは、貴艦なのだ。実験デバイスのワープアウトと同時に早急に対処してもらいたい』
「分かりました。ただ、そのデバイスの情報を可能な限りこちらに送ってください」
ギンガはガニメデ基地に今回の事件の発端となった実験デバイスの情報を求めた。
『分かった。直ぐに送ろう』
実験デバイスと言っても何の情報も無く対処するのは無鉄砲だ。
情報があるのなら、それを有効活用すれば問題なく任務をこなすことが出来る。
「艦長、ガニメデ基地より暴走中の実験デバイスの情報データが来ました」
「見せて」
「はい」
「‥‥マイクロブラックホールをエネルギー源とした実験デバイス」
ガニメデ基地より送られて来た情報に目を通すギンガ。
マイクロブラックホール技術については第二次イスカンダル遠征にて、暴走したイスカンダルの軌道を安定させるためにガミラスが超質量を捕獲して、マイクロブラックホールを精製した後、ソレを使用して行った重力制御が、地球が初めて見たマイクロブラックホールの使用方法であった。
ガミラスは暴走したイスカンダルの軌道修正に使用した他にかつて地球人類を始めとする地球生物を絶滅寸前にまで追い込んだあの遊星爆弾もマイクロブラックホール技術で精製していた。
トチローや真田もマイクロブラックホール技術で遊星爆弾を精製できる事を理解していた。
マイクロブラックホール技術は地球人類にとってトラウマの様な技術でもあった。
しかし、マイクロブラックホール技術は結果的に暴走したイスカンダルを止めることが出来た。
マイクロブラックホール技術はまさに毒にも薬にもなる技術であった。
そして、地球は今回、このマイクロブラックホールの莫大なエネルギーに目をつけ、波動エンジンとは異なるマイクロブラックホールのエネルギーを源とするエンジンの開発を行っていたのだ。
「‥技師長、この実験デバイスについて貴方の意見を聞きたいのだけれど?」
ギンガは実験デバイスの情報を技師長のアルバートの意見を求める。
「はっ、私の見解では無人とは言え、エネルギー源にマイクロブラックホールを使用している限り、攻撃をして止めるのは非情に危険と判断します」
アルバートは撃沈による事態の収束は勧められないと言う。
実験デバイスは無人なので、例え撃沈しても人的被害はない。
もっとも有人であったのなら、暴走後、すぐにエンジンないし運用コンピューターの電源を切れば暴走は収まっていた筈だ。
人的被害を考慮して無人設定にしたのが、仇となった。
とは言え、HWVED搭載型波動エンジンの稼働実験の際も一度目は起動してから直ぐに爆発し、二度目は起動に成功するが、艦内に数十Gと言う強力な重力が計測され、これがもしも有人だったら、乗艦していた人間は挽き肉になっていた。
そうした経緯があるので、今回の実験デバイスも無人運用をするのは当然の処置であった。
「マイクロブラックホール技術って、そんなに危険なんですか?」
ティアナがアルバートにマイクロブラックホールの危険性を質問する。
「マイクロブラックホール技術はガルマン・ガミラスから得たばかりの技術で、地球ではまだまだ発展途上の技術だ。取り扱いを間違えたらそれこそ大きな被害を齎す。マイクロブラックホールを集める縮退作業中でもほんの僅かな衝撃でもマイクロブラックホールは爆発する。故に縮退作業も細心の注意を払う必要がある。なので、マイクロブラックホールをエネルギー源としている今回の実験デバイスに対して外部から大きな衝撃を与える行為は非情に危険と言う訳だ」
「は、はぁ‥‥」
アルバートはマイクロブラックホールについての長い説明を早口でティアナに伝える。
「でも、そうするとどうやって止めるんですか?」
「直接実験デバイスの内部に乗り込んで、中のエンジンかコンピューターを止めるしかなさそうね」
ギンガが暴走している実験デバイスを止める方法は実験デバイスの内部に入り、エンジンを止めるしか方法がないと判断する。
「しかし、どうやって実験デバイスの中に入り込むんですか?」
「それについては、我に秘策ありだ」
実験デバイスの内部への侵入に関してアルバートは何か策があるようだ。
「情報から得た実験デバイスの装甲の厚さとこれまでの実験データからギリギリ耐えられる衝撃を計算したエネルギーを積んだミサイルで、実験デバイスの船体の一部を破壊して突入口を形成し、そこからデバイス内部へと入り込み、実験デバイスを止める。いかがだろうか?艦長」
「分かりました。技師長は直ちに突入用のミサイルを生産してください」
「承知した」
ギンガはアルバートの作戦案を採用した。
「次に内部突入要員に関してですが‥‥」
実験デバイスの内部に入り、エンジンもしくはコンピューターを止めるのだから実験デバイスの中に入る人員が必要だ。
ギンガは内部に入る突入要員の募集をかけると、
「その役は私がやります!!」
「えっ?ちょっとティアナ!?」
実験デバイスの内部へ進入する突入要員にはティアナが志願する。
そんなティアナにうららはギョッとする。
「ティアナ、あんた本当にやるつもりなの!?」
「誰かがやらないといけないんでしょう?部下に仕事ばかりおしつけていたら、士官として示しがつかないし、その内に寝首をかかれるわよ。それにもし、この場にアイツらが居たらきっと志願していたと思うわ」
「‥‥」
ティアナの言う『あいつら』とは土門と揚羽なのだとうららは察しがついた。
と言う事で、実験デバイスの内部に進入して中のエンジンもしくはコンピューターを止める役はティアナとなった。
「それにしてもライトフライヤーなんて随分と変わった名前ね」
ティアナは今回暴走した実験デバイスの名前に首を傾げる。
「なんだ?副長は知らんのか?」
すると、ミサイルのエネルギー量を計算しているアルバートがティアナに声をかけてきた。
「ライトフライヤーと言うのは大昔、世界初の飛行機パイロットの兄弟であるライト兄弟が開発した飛行機の名前だ。恐らくマイクロブラックホール技術を初めてエンジン転用した今回の実験デバイスもライト兄弟の偉業からあやかろうと命名したのだろう」
アルバートは今回の実験デバイスの名称が初めてのマイクロブラックホール技術を使用した機関と言う事で、ライト兄弟が飛行に成功した飛行機の偉業にあやかろうとして命名したものと推察した。
作戦を立てて準備をしていると、
「空間歪曲反応を確認!!」
「来たわね‥‥」
いよいよ今回の事件の原因である実験デバイス、ライトフライヤーがこの木星圏にワープアウトしてきた様だ。
やがて、ライトフライヤーは通常空間にワープアウトしてその姿をまほろばの前に姿を現す。
「あれが‥‥」
「実験デバイス、ライトフライヤー‥‥」
「何だかデカい飛行船みたいな形だな」
ライトフライヤーの船体はまほろばよりも巨大でその形状はツェッペリン級飛行船に類似していた。
「航海長、ライトフライヤーに並走」
「了解」
「技師長はライトフライヤーに突入口を形成できる箇所を探査」
「了解」
アルバートはライトフライヤーの船体を探査して破壊出来そうな箇所を探る。
「艦長、判明した。船体中央部に物資搬入用のハッチがある。そこならば比較的、衝撃を受けても問題ない」
「うん。では、その付近にミサイルを発射」
「ターゲットロックオン‥発射!!」
まほろばからアルバートがエネルギー量を抑えたミサイルがライトフライヤーに向けて放たれる。
ミサイルはライトフライヤーの船体中央部に命中する。
エネルギー量、命中箇所、共にアルバートが計算し尽くしていたので、ライトフライヤーは爆発することなく航行し続けている。
「航海長。このまま、まほろばを並走しつつライトフライヤーへ接近、接舷ハッチを強制接舷。ライトフライヤーに副長を乗せるまで状態を維持できる?」
「何とかやってみます」
無茶な注文であったが、ノイマンはそれを実行した。
「接舷ハッチ、ライトフライヤーに接続」
接舷ハッチをライトフライヤーに繋げたまま航行するが、かなり無茶で難しい航行なので、いつまでもこのままでの航行は出来ない。
「副長、ライトフライヤーに接舷したけど、この状態は長くは維持できない。直ぐにライトフライヤーに乗り移って!!」
「了解」
事前に接舷ハッチの箇所で宇宙服を着て待機していたティアナは背中に背負ったジェットパックを吹かしてライトフライヤーに乗り移る。
「副長のシグナル信号を確認、ライトフライヤーに乗り移った模様」
「接舷ハッチ収容」
「接舷ハッチ収容」
ライトフライヤーと接続していたハッチがまほろばへと収納されていく。
ハッチを収容してもライトフライヤーを止めれば、簡単にまほろばへ戻れるので、いつまでもハッチを接続している危険な状態で航行するよりも並走状態の方がいくらか安全なので、ハッチを収容したのだ。
「‥艦長、まずい事になった」
ティアナがライトフライヤーに乗り込んだ後、ライトフライヤーの動向を監視していたアルバートが深刻そうにギンガに報告をいれる。
「ん?どうしたの?」
「ライトフライヤーの針路が木星圏のコロニー群に向かっている」
「っ!?それって‥‥」
「このままのコースを辿れば、コロニー群とライトフライヤーが衝突する」
「通信長、急いで副長に連絡!!」
「りょ、了解」
メイリンは急ぎライトフライヤー内のティアナに連絡を入れる。
ライトフライヤー内
『副長!!』
「ん?通信長?どうしたの?」
『ライトフライヤーの針路が木星圏のコロニー群に向かっています!!このままですとコロニーと衝突してしまいます!!』
「なっ!?」
『作業を急いで下さい!!』
「了解」
ティアナは急ぎライトフライヤーのブリッジを目指す。
そんな中、
「っ!?ライトフライヤーの機関に高エネルギー反応!!」
「ライトフライヤー加速!!」
「くっ、こんな時に余計な暴走を‥‥」
ライトフライヤーの更なる暴走にギンガは顔を歪める。
「副長、このままではブリッジに到着してコンピューターを止めるのは不可能だ」
ティアナの現在位置とライトフライヤーのブリッジの位置からティアナがどんなに急いでもブリッジに着き、そこからコンピューターの停止作業は時間的に不可能であるとアルバートは判断した。
『それじゃあ、どうするの?』
「幸い副長が居る地点にはエネルギー伝導管がある。その伝導管を切れば、エネルギー供給が止まり、ライトフライヤーは停まる筈だ」
『エネルギー伝導管を!?でも、それを傷つけて大丈夫なの!?』
「問題ない。ライトフライヤーは外部の攻撃には対処出来ないが、内部の衝撃には安全装置が働くようになっている。特にエネルギー関係の箇所はいくら暴走しているとは言え、その安全装置は問題なく働くかもしれない」
『ちょっとした賭けになりそうね‥‥でも、このままだとコロニーにぶつかって終わりなのよね?それだったら、一か八かやってみるしかないわね』
アルバートから説明を受けたが、確実に安全装置が働くと言う確証はない。
しかし、これまでの報告から四の五の言っていられる状況でもない。
此処はアルバートの言葉とライトフライヤーの安全装置の性能に賭けてみるしかない。
「クロスミラージュ、サーベルモード」
『OK』
ティアナは待機状態のクロスミラージュをサーベルモードで稼働させて、
「やぁ!!」
エネルギー伝導管に斬りかかる。
エネルギー伝導管の金属とクロスミラージュの魔法刃がぶつかり合い、眩い光と火花、バチバチと言う音が鳴る。
ティアナがサーベルモードのクロスミラージュでエネルギー伝導管に斬りかかり、僅かな亀裂を入れると、
『エネルギー伝導管二異常震動ヲ確認!!』
『緊急停止装置ヲ作動サセマス』
『エネルギー弁、強制封鎖シマス』
機械的な音声がライトフライヤーの艦内に響くと暴走していたライトフライヤーの機能が止まっていく。
「ライトフライヤー、エンジン停止を確認」
「だが、艦長。ライトフライヤーのエンジンが止まっても静止するのに暫くの時間と距離が必要となる」
ライトフライヤーのエンジンを止めるのが少々遅かった。
「航海長、まほろばの船体をこのままライトフライヤーに横付けして!!機関長は右舷スラスターとメインノズルの出力を最大噴射!!まほろばの船体を使ってライトフライヤーを押し出して、コロニーとの衝突コースをずらす!!」
「了解!!」
「あいよ!!任せときな!!」
「通信長、ライトフライヤー内の副長に通達。しばらくの間、衝撃が走るから何かに捕まっていいる様にと!!」
「は、はい」
メイリンはティアナにまほろばの船体を横付けしてライトフライヤーの船体を押してコロニーとの衝突コースを少しでもずらそうとする旨を伝える。
「まさか、まほろばをぶつけて衝突コースをずらすなんて、ギンガさんも随分と無茶するわね」
メイリンからまほろばの行動を聞き、近くにあった手すりをギュッと握りしめながらギンガの行動に思わず苦笑してしまう。
やがて、まほろばはライトフライヤーの右舷側に再び船体を押し付ける。
もっとも今度は接舷ハッチを接続せずにまほろばの船体をライトフライヤーの右舷側に押し付ける。
船体同士が接触した際、まほろば、ライトフライヤーの両方に衝撃が走る。
「右舷スラスター、メインノズル出力最大!!」
「了解!!機関室、右舷スラスター、メインノズル、出力最大!!」
まほろばの右舷スラスターとメインノズルからは勢いよくオレンジがかった輝きを閃かせる。
まほろば、ライトフライヤーが接近して来る木星圏のコロニー群でも、二隻の反応をキャッチしていた。
木星圏 コロニー群 管制塔
「大変です!!二隻の宇宙船がこちらに向かってきます!!」
「なにっ!?」
「宇宙船、当コロニーとの衝突コースです!!」
「直ちに居住民に避難指示だ!!」
「了解!!」
『全居住者へ!!只今、当コロニーに宇宙船が接近しております!!衝突の危険があります!!居住者の方々は速やかに避難してください!!』
『落ち着いて行動をしてください!!衝突まで時間があります!!落ち着いて、近くのシェルターへ避難してください!!』
管制塔からコロニー内の住民に避難指示が出るが、宇宙船がコロニーに衝撃するかもしれないと言う放送を聞いて、住民たちはパニックとなり、大急ぎでシェルターへと逃げて行く。
「ライトフライヤー、軌道偏差角、0.06‥0,08‥0,09‥コロニー目視距離内に接近」
コロニーとの距離は近づいているが、まほろばの噴射でライトフライヤーのコースも徐々にズレてきている。
やがてコロニーとの距離をすれすれでまほろばとライトフライヤーは通過していく。
「偏差角0,2で衝突を回避‥‥」
「終わった‥‥」
「ふぅ~‥‥」
艦橋内に安堵した空気が流れるが、
「安心するのはまだ早いぞ‥‥」
「えっ?」
「ん?」
「コロニーとの衝突コースは避けられたが前方に小惑星だ」
「っ!?主砲、一番から三番まで波動カートリッジ弾装填!!」
ギンガは急いで前部の主砲に波動カートリッジ弾を装填させて小惑星を粉砕させる。
まほろばから放たれた波動カートリッジ弾はまるで吸い込まれるかのように小惑星へと向かい、命中。
小惑星の一部に大きな穴を開け、その穴からライトフライヤーとまほろばは突き抜けた。
やがて推進力を失ったライトフライヤーは完全に静止する。
「ライトフライヤー、完全停止」
「今度こそ、終わったな」
「あとはライトフライヤーの中に居る副長を迎えに行くだけね」
ライトフライヤーが完全に止まった事で暴走の脅威が収まり、ティアナの移乗も簡単に出来る筈だ。
メイリンがティアナに全て終わった旨を伝え、ティアナはまほろばへと帰還した。
「お疲れ様、ティアナ」
まほろばに戻って来たティアナにギンガは労いの言葉をかける。
「エネルギー伝導管を切れって言われた時はヒヤヒヤしましたよ。それにコロニーや小惑星にぶつかりそうになっていましたし‥‥」
今回も管理局員では決して経験する事は無い体験をしたティアナであった。
ライトフライヤーの暴走事件はニュースでも取り上げられ、この新型実験デバイスの暴走を止めたまほろばの活躍がクローズアップされた。
それにより、まほろばの乗員の家族・関係者は鼻が高いと思うのも当然であった。
また、まほろばの二代目の艦長が女性と言う事でギンガと同じ女性軍人、士官学校・訓練校の女性訓練生、これから軍人を目指そうとする女性にとってギンガ、ティアナは憧れの的となった。
地球 海鳴市・月村邸
『今回の事件は防衛軍日本艦隊所属、宇宙戦艦まほろばによって暴走は止められました』
ライトフライヤーの暴走事件のニュースを見た忍と良馬は、
「ギンガちゃん凄いわね。まほろばの艦長に就任したばかりでイレギュラーな事件に巻き込まれたけど、それを解決するなんて」
「うん。誉、お母さん、宇宙で大きな事件を解決したみたいだぞ。凄いな」
ギンガを褒め、娘の誉にギンガの活躍を話した。
ギンガ、ティアナがまほろばの二代目艦長、副長となり、初航海で華々しい活躍をした頃、二人の故郷であるミッドチルダでは、大きな異変が起きようとしていた‥‥