星の海へ   作:ステルス兄貴

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今回、本局に管理局の歴史史上最大の災害が訪れます。

三提督はsts時には既にご高齢だったので、sts時から幾年の月日が流れた今作において、三提督全員が鬼籍に入った展開となりました。




二百三十九話 本局崩壊

 

 

ギンガがまほろばの二代目の艦長、ティアナが二代目の副長に就任した頃、二人の生まれ故郷である異世界、ミッドチルダでは‥‥

 

ベルカ地区にある聖王教会の騎士、カリムが三年前に予言した『黒き魔女、海を守る法の城へと迫り、法の城は虚しく焼け落ちる』‥‥

 

この予言をカリムから聞いたクロノとはやては、その年に管理局所有のコロニーで起きた新造艦強奪事件の主犯、シーマ・ガラハウが本局に襲撃して来るのではないかと解釈した。

 

だが、管理局の多くの者がカリムの予言何て真に受けてはいなかった。

 

しかし、“海”は 『シーマ・ガラハウの襲撃から本局を防衛するため』 と言う名目で多額の予算を要求した。

 

その割合は、“陸” “海” “空”で1.5:8:0.5と言う割合であった。

 

JS事件前ならば、“陸”の予算が大きく削られるのが当たり前であったが、ボラー連邦の武力制裁失敗から“海”の信用は失墜し、反対に“陸”が発言権を強くする事となった。

 

MS機関開発後は“海”もかつての勢いを盛り返し始めたが、レジアス中将の後任であるロールスロイス本部長が“海”から予算確保を取り付けた事から“陸”はある程度の予算を確保することが出来た。

 

他にも“陸”が予算を確保できたのはもう一つ別の理由があった。

 

“陸”がある程度の予算を確保することが出来たので、今度は“空”が低予算の憂き目に遭う事となった。

 

三年前、カリムが例の予言をしてから、多額の予算を確保した際、“陸”と“空”は当然反発をしたが、本局が墜ちれば管理局の根本が崩れる事になる。

 

ボラー連邦への武力制裁失敗直後、管理局の存在が危うくなるのではないかと言う懸念があった。

 

なので、“陸”も“空”も“海”のこの強引な主張に強くは言えず、それを良いことに“海”は多額の予算を確保することに成功した。

 

一応、カリムが予言した出来事は彼女のレアスキルが発動してから半年~数年以内の時期に起きる可能性があり、その予言の的中率も100%ではないと言う欠点もあるが、“海”は数年以内と言う期限を設けて多額の予算を確保することに成功したのだった。

 

そして、多額の予算を確保した“海”は、本局を大きく改装した。

 

シーマから本局を守る為と言う名目の下、次元航行艦を数多く建造する為、本局の造艦スペースを拡張させた。

 

“海”としては数年以内と言う期限付きではあるが、シーマが本当に本局へ襲撃して来ようが、来なかろうが関係なく、多額の予算、戦力の増強が出来るこの機会を最大限に利用したのだ。

 

本局の改装、そして次元航行艦の建造‥その作業は交代制でほぼ休みなく行われた。

 

しかし、そんな無茶苦茶な作業を続けていれば、作業員の集中力が欠如して、注意散漫になるのも不思議ではない。

 

ある日、本局にて‥‥

 

ドカーン!!

 

本局の一角で大爆発が起きて、本局全体が揺らぐ。

 

爆発と同時に本局内で警報が鳴り響く。

 

「な、なんだ!?」

 

「爆発か!?」

 

「シーマ・ガラハウの襲撃か!?」

 

本局内は突然の爆発でパニックとなり、この爆発の原因がカリムの予言にあった内容で、シーマ・ガラハウの襲撃かと思われた。

 

本局内がパニックとなり、周辺では次元航行艦が警戒行動を取る。

 

やがて、調査が行われるとこの爆発の原因が判明した。

 

その爆発原因が‥‥

 

「第三十三造艦ドックでの爆発‥‥これがさっきの爆発の原因?テロではなくて事故なの?」

 

リンディの下に爆発原因の調査結果が伝えられた。

 

「はい。ここ数年、本局内の改装工事に次元航行艦の建造で、作業員にはかなりの無理をさせてきましたからね」

 

「はぁ~‥三提督の方々がいらっしゃってくれればこんな事は起きなかったかもしれないわね」

 

リンディは今回の爆発原因の調査報告書を見て溜息をつく。

 

これまで管理局の強硬派を抑え込んで来た三提督‥‥

 

しかし、その三提督の方々は全員が既に鬼籍に入っていた。

 

法務顧問相談役であったレオーネ・フィルスは脳梗塞。

 

武装隊栄誉元帥のラルゴ・キールは老衰。

 

本局統幕議長を務めたミゼット・クローベルは風邪を引きそれが原因で、肺炎を併発してしまい病死した。

 

強硬派としては目の上のたん瘤であった三提督が鬼籍に入った事で、これまで三提督に抑えられていた過激だったり、強引な手段も取れるようになった。

 

ここ数年の“海”の予算確保についてもやはり三提督が鬼籍に入った事が影響していた。

 

ストッパー役であった三提督が全員この世から居なくなってしまった事で、リンディはこの先の管理局の未来に不安を抱く。

 

「それで、被害の方は?」

 

「爆発が起きた第三十三ドックは爆発により完全に使用不能。同ドックで建造していた次元航行艦は大破して放棄。付近のドック及び施設も同様の被害を受けて使用不能。人的被害は第三十三ドックで作業していた作業員は全員死亡し、その他にも多数の死傷者が出ており、今後この人数は増える見込みとの事です」

 

「‥‥」

 

被害報告を聞き、リンディは頭を抱えたくなる。

 

「シーマ・ガラハウの襲撃ではなかったとは言え、此処までの被害を出したからにはマスコミにも今回の事故の情報を伝えなければならいと思いますが‥‥」

 

秘書は恐る恐る今回の事故をマスコミに伝えなければならないと言う。

 

「そうね。下手に隠したりしたら、また隠蔽体質だとか報道や記事にされかねないわね‥‥今回の事故の被害者たちの身元確認も急いで頂戴」

 

テロやシーマの襲撃ではなかったにしろ、此処まで大きな事故を起こして、多数の人命が喪われたのだから、管理局としては説明をしなければ示しがつかない。

 

「承知しました」

 

それに被害者本人、被害者遺族へのアフターケアも行わなければならない。

 

その為には被害者の身元確認と遺体収容を行わなければならないし、事故原因と調査状況、再発防止策をマスコミに伝えなければならない。

 

しかし、事故現場のドックが完全に吹っ飛んでしまい、生存者も居ない状況なので、一体何が事故の原因なのか事故原因の調査にも時間がかかりそうだ。

 

一先ずリンディは秘書に詳細な情報収集を命じ、マスコミへの報道用原稿を書き始めるのだった。

 

本局での爆発はその原因が判明する前に管理局内やその関係先の間に広がった。

 

『スクライア君、本局内で事故があったと聞いたが大丈夫かね?』

 

本局内に設置されている無限書庫に務めているユーノにランティスが連絡をしてきた。

 

ラティスは管理局員ではないが、ユーノの様に管理局関係者に少々顔が利くのか、本局で起きた事故の件を既に知っていた。

 

「はい。事故が起きたのは無限書庫から離れた場所だったので、僕も他のスタッフも無事です」

 

ユーノはランティスに自分を含めた無限書庫で働いている司書たちの無事を伝える。

 

『思ったのだが、無限書庫のデータ‥あれはミッドの別の何処かにバックアップしておいた方が良いのではないか?』

 

無限書庫に収納されている情報データや記録は管理局がこれまで携わって来た事件、裁判記録、ロストロギアの情報や記録だけでなく、これまでのミッドチルダの歴史や管理世界の歴史を始めとする様々な情報やデータ、記録が収納されている。

 

それらの情報、記録は歴史家の中では貴重なモノも含まれている。

 

なので、今回の様な事故が万が一にも無限書庫がある区画で起きれば貴重な情報・記録が永遠に失われてしまう。

 

「僕も管理局に何度も無限書庫のバックアップ施設をミッドに作るように進言したのですが‥‥」

 

『断られているのか?』

 

「はい。『予算の都合やら』 『盗難の問題が‥‥』 とか言って‥‥」

 

ユーノ自身、今回の事故が起きる前から無限書庫のバックアップ機能の必要性を管理局に言っていた。

 

しかし、管理局側はユーノの進言を何かと理由をつけて断っていた。

 

無限書庫の記録の中には管理局の特定の局員でしかアクセスできないモノもある。

 

それらの記録は無限書庫の司書長であるユーノを始めとして、無限書庫の職員、同じ管理局員でもアクセスすることは出来ない。

 

そうしたあからさまなプロテクトがかけられている事にユーノもこれらの記録は公に出来ない記録‥‥

 

管理局の上層部が関与して来た不正・汚職なのだと察した。

 

バックアップ施設をミッドチルダに造った場合、無限書庫にある全ての情報・記録をその施設にコピーして保管するのだ‥‥

 

万が一にもハッキングや盗難の憂き目に遭えば、管理局が長年に渡って行って来た不正が世間にバレてしまう。

 

しかし、本局ならばミッドチルダよりもそうした情報が流れだす可能性が低い。

 

管理局が無限書庫のバックアップ施設を作りたがらない理由は予算やセキュリティの問題よりもこうした黒い情報が外部に流れ出る事を恐れているからなのだろうとユーノは推測していた。

 

『そうか‥‥まぁ、管理局のやり方について一大学職員の私には発言権は無いから何も言えないが、君が無事だった事は何よりだ。また時間が出来たら一緒に飲まないか?』

 

「いいですね。その時は色々とお話を聞かせて下さい」

 

『ああ、それでは‥‥』

 

ユーノとランティスは飲み会の約束をして通信を切った。

 

 

ランティス以外にも本局に居る者の安否を心配する者は居た。

 

「はやてちゃん!!さっき本局で事故があったって聞いたけど大丈夫!?怪我はない!?」

 

教導隊の隊舎で、本局内で原因不明の爆発が発生した知らせを聞いたなのはは居ても立っても居られず、本局に居るであろうはやてに連絡を入れた。

 

『いやぁ~ほんま驚いたわ~。いきなりドーンと凄い音と揺れが来たと思ったら、本局内は大音量の警報と大勢の人らでパニックになってな。あの時の空港火災の時を思い出したわ~』

 

はやてはなのはに新暦71年に起きた空港火災を思い出したと言う。

 

本局の規模が大きく、外は真空の空間なので、あの時の空港火災程の火災は起きていない。

 

モニターに映るはやての様子から、ユーノと同じく彼女も怪我はないようだ。

 

「それで、一体何があったの?」

 

『まだ、情報が錯綜して、詳しい事は分からへん。一部ではテロではないかって言われとるわ』

 

「テロ!?」

 

本局の爆発原因がテロかもしれないと言う事になのはは思わず声をあげる。

 

『まぁ、まぁ、落ち着いてやなのはちゃん』

 

「でもテロって事は本局内にテロリストが居るかもしれないし、もしかしたらまた事件が起こるかもしれないでしょう!?」

 

なのはは本局内にまだテロリストが潜んでいる可能性を示唆する。

 

『せやから、本局内には今、武装隊が事故の調査をしとるから‥すぐにこの事故の原因も分かる筈や。それと、さっきフェイトちゃんとクロノ君とも会ったで』

 

「えっ?フェイトちゃんとクロノ君に!?」

 

『うん。二人とも私と同じく怪我はなかったから安心してや』

 

「そう‥よかった」

 

はやてからフェイトとクロノの無事を伝えられ、ホッとするなのは。

 

『また何か分かったら、連絡するわ。それじゃあね、なのはちゃん』

 

「う、うん」

 

はやてもこの後で色々と大変なんだろうと察して通信を切るなのは。

 

一方、なのはとの通信を終えたはやてはクロノに通信を入れた。

 

「クロノ君」

 

『はやてか』

 

「さっき起こった本局内での爆発やけど、まさかあの爆発がカリムの予言にあった事なんやろうか?」

 

『うーん‥それについてはまだ何とも言えない。この爆発原因が事故によるものなのか?それともテロによるものなのかが判明しないと判断がつかない』

 

クロノの言う通り、もしもこれが事故による爆発ならば、カリムの予言とは解釈しにくく、テロの場合、テロリストの特徴によってはカリムの予言に当てはまると解釈してもよさそうだ。

 

いずれにしてもこの爆発原因が一体何なのか分からなければ、判断がつかない。

 

はやてとクロノはこの爆発原因が何なのか調査結果を待つ事にした。

 

その日の夕方には本局で起きた爆発原因について、ニュースで大々的に放送されて、管理局の公式発表では、この爆発原因がドックで起きた事故によるモノだとされた。

 

爆発事故の現場である第三十三ドックにて作業中に何らかの原因で発火、それが一気にドックを含む周辺施設を巻き込んで爆発したのだと見解付けた。

 

勿論、この発表報道をはやてとクロノは見ていた。

 

「爆発事故か‥‥」

 

「現場が完全に吹き飛んで、生存者が居ないとなると、本当に事故だったのかも分からないな‥‥」

 

あの爆発以外に爆発は起きていないので、テロリストが爆弾を第三十三ドックに仕掛けたとは言えないかもしれないが、自爆テロと言うテロもある。

 

一人のテロリストが第三十三ドックで自爆テロを行えばそれは事故ではなくテロとなる。

 

当然自爆したので、犯人は死亡し身元不明となる。

 

現に爆発現場の第三十三ドックに居た作業員は全員が死亡しており、遺体の身元確認も出来ない状況だ。

 

「でも、此処は管理局の公式発表を信じるしかないんとちゃうか?」

 

「ん?」

 

はやては今回の爆発の原因は事故であると言う管理局の発表を信じる事にする様だ。

 

「カリムの予言は今年一年が期限や‥この爆発がテロと認定されたら、シーマの襲撃を警戒する警戒網が解除されてしまう‥‥もし、今回の爆発が本当に事故だったら‥そんでシーマが今も何処かで本局への襲撃を虎視眈々と狙っていたら‥‥」

 

「‥‥」

 

「あと一年だけ、何とかこの警戒網を維持せなアカンと私は思うんよ」

 

「‥そうだな」

 

今年一杯は念の為、本局内、本局周辺の警戒網は維持したいと考えるはやて。

 

JS事件の時に起きた地上本部、機動六課隊舎の同時襲撃の時と同じ轍を踏まないようにしたいと言う気持ちがあったからだ。

 

管理局‥“海”としても今回の爆発をテロと認識してしまうとこれがカリムの予言と当てはまってしまい、予算がこの月一杯で打ち切りになってしまうので、今回の爆発は事故として処理してもらった方が、“海”としては都合がよかったのだ。

 

管理局が公式に今回の爆発を事故と処理し、事故の遺族や負傷者に保証手続きを行うと同時に爆発で壊れた修理作業がすぐに開始された。

 

勿論、修理作業と同時に本局の改装、次元航行艦の建造も休むことなく行われる。

 

本局の修復作業が進む中、

 

「総合統括官。予定されていました演習視察でありますが、いかがいたしましょうか?」

 

リンディの秘書は彼女に予定されていた演習視察について訊ねる。

 

あの爆発事故で本局は修復作業中でごたごたしている。

 

そんな中で総合統括官であるリンディが本局を留守にして良いのか秘書は気になったのだ。

 

「分かっているわ。でも、演習視察は本局の事故の前から予定されているし‥‥」

 

本局の事故はリンディにとっても管理局にとってもイレギュラーな出来事であった。

 

演習の視察に関して絶対にリンディが居なければならないと言う訳ではないが、

 

「‥‥演習には予定通り視察に行きます。視察に行く事を前提にプログラムが組まれているのでしょう?」

 

「は、はい」

 

「では、予定通りでいいわ。私が居なくても二人の統括官が居るのだから、問題はない筈よ」

 

「承知しました」

 

リンディは予定通り、演習の視察へ赴くことに決めた。

 

ギシッ‥‥ギギギギギ‥‥

 

ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 

リンディが演習視察を決めて、本局の修復作業が行われている中、本局内では不気味なきしみ音や小さな地震の様な振動が続いた。

 

「何だか此処最近、変な音がしないか?」

 

「ああ‥それに時々揺れる事がある‥‥」

 

本局内で働いている局員たちもこの異音や揺れを感じていた。

 

「今、大規模な修復作業に改装工事も並行してやっているんだろう?だったら、異音も揺れもその工事のモノじゃないか?」

 

不安視する局員が居る一方で、異音も揺れも工事によるものだと楽観視している局員も居た。

 

そもそも本局は通常の宇宙空間とも異なる異空間にあるので、まず地震なんて起きない。

 

故に本局が揺れるとなると何らかの原因が有る筈だ。

 

しかし、誰もこの異音も揺れの原因を調査する気配が無ければ、この異音も揺れの原因についての報告も来ない。

 

ならば、楽観視している局員が言うようにこの異音も揺れも本局で行われている工事によるものではないかと最初は不安視していた局員たちも段々とそう思い始めた。

 

やがて幾日かが過ぎ、管理局の艦隊演習の日を迎え、演習に参加する次元航行艦、そしてリンディも演習視察の為、本局を出航して行った。

 

その演習には、はやてが艦長を務めるジャガーノートもこの演習に参加するために本局を出航して行った。

 

そして、クロノが艦長を務めるガイアも探査任務のために本局を出航して行った。

 

演習に参加する次元航行艦、ガイアを始めとする探査任務を行う次元航行艦が本局を出航して行く中、本局内にある無限書庫では、

 

「それじゃあ、行ってくる」

 

ユーノはこの日、非番だったので先日のラティスとの約束通り、今日の日中は互いに考古学談議をして、夜には一緒に酒を飲もうと決めていた。

 

なので、ユーノは交代の司書と引継ぎをして、無限書庫から転送ポートでミッドチルダへと向かった。

 

ユーノがミッドチルダへと向かう時も、

 

ギシッ‥‥ギギギギギ‥‥

 

ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 

本局内の通路を歩いている時、どこからともなく異音と揺れがした。

 

「またか‥‥全く工事関係の人ももう少し周りの事を配慮してもらいたいものだ」

 

ユーノもあの爆発事故以降、本局内で起こる異音と揺れの原因が修復作業と改修作業によって生じているのだと思っていた。

 

演習に参加する次元航行艦、この日ユーノの様に非番となり交代して、転送ポートでミッドチルダを始めとする他の管理世界へと向かったり、ミッドチルダを始めとする様々な管理世界から本局へ用事でやって来た局員や管理世界の住人たち‥‥

 

普段と変わらない本局の光景がそこには広がっていた。

 

しかし、その日常的な光景は本局付近を哨戒していた一隻の次元航行艦からの通報で一変する事になる。

 

シーマの本局襲撃が予想されていた事で、ここ数年の間は本局周辺には絶えず、管理局の次元航行艦が哨戒を続けていた。

 

そして、この日も本局周辺では次元航行艦が数年前から今日まで続けられている哨戒活動を行っていた。

 

 

本局周辺 哨戒中 次元航行艦 艦橋

 

「ん?艦長、右舷方向に反応」

 

哨戒中だった一隻の次元航行艦のオペレーターがレーダーに何かの反応を見つけた」

 

「味方の次元航行艦か?」

 

「いえ、違うみたいです」

 

「まさか、シーマ・ガラハウか!?詳しく探査しろ」

 

「了解‥‥接近中の反応は艦船ではありません。とてつもなく。巨大で‥底知れないエネルギーを持っている様です。既に計測器が壊れ、正確な測定が出来ません!!」

 

(艦船ではなく、巨大なエネルギー量の塊‥‥)

 

(しかも本局があるこの空間で?)

 

「計測器が壊れてしまったのではやむを得ない。少々危険だが、現場に向かい正体を突き止める。航海長、針路変更」

 

オペレーターからの報告を受けて、艦長は接近中のエネルギーの塊の正体を探るべく、エネルギーの塊がある方向へと向かった。

 

やがて、ソレは次元航行艦の乗員たちの目の前に姿を現した。

 

「な、なんだ!?アレはっ!?」

 

ソレを目の当たりにした艦長は声を振るわせながら呟く。

 

本局がある異次元空間に突如として現れたソレは、真っ黒な渦がゆっくりと回転しながら近づいて来る。

 

その大きさはとてつもなく大きく、本局さえもたちまちその渦の中に飲み込んでしまうくらい大きい。

 

「ほ、本局に緊急伝!!」

 

艦長はこの異常物体が本局に迫りつつあることを伝えようとした時、

 

ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 

「な、なんだ!?」

 

完全体が激しく揺れ出した。

 

「本艦に物凄い吸引力が発生!!例の物体へ引き寄せられています!!」

 

「機関最大出力!!振り切るんだ!!」

 

次元航行艦はあの黒い渦へと吸い寄せられていた。

 

艦長はエンジンをフルパワーにして振り切ろうとする。

 

しかし、次元航行艦は離れるどころか益々黒い渦に接近していく。

 

「機関長!!エンジンを吹かせ!!このままではあの黒い渦に吸い込まれてしまうぞ!!」

 

「艦長!!機関は既に全開で!!オーバーブーストも目一杯です!!」

 

機関室からの報告で、既にMS機関は出力を最大にあげているにもかかわらず、黒い渦を振り切れていない。

 

エンジンを此処まで吹かして振り切れないとなると、もうこの艦の運命は決まっていた。

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁー!!』

 

次元航行艦はそのまま黒い渦の中に飲み込まれて行った。

 

そして、この艦は黒い渦に飲まれる前、本局に対して緊急伝を打てていなかった事が、この先の悲劇と被害に繋がる結果となった。

 

哨戒に出ていた次元航行艦が黒い渦に飲まれ遭難したが、本局はまだ危機が迫っている事を知らない。

 

しかし、この黒い渦が本局に近づくにつれて、本局内での異音と振動の間隔が短くなり、大きさも比例するかのように大きくなっていく。

 

ゴォォォーっと大きな振動が来たと思ったら、大地震が来たかのように本局全体が大きく揺れ出す。

 

本局内に居た人々もこれは明らかに修復、拡張工事で起きた振動ではないと察する。

 

ギギギギギ‥‥

 

ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 

天井や壁の一部がパラパラと落ちて来る。

 

時期に壁面ガラスにもパキッと罅が入って来る。

 

本局がこの空間で建造され、運用されてから長い歴史上、このような事態は初めての事だ。

 

既に本局のあちこちに亀裂が走り、機械部分からは火花が飛び始める。

 

この非常事態に本局内はパニック状態となる。

 

上部の構造物からは壁やガラスが雨の様に降り注いでくる。

 

下に居り、パニック状態となっている人々がそれら瓦礫の下敷きとなり絶命する者、重傷を負う者とパニックが拡大していく。

 

あちこちから火の手も上がり始める。

 

本来ならば、局員たちが無限書庫の司書や本局内にある店の従業員、用事で本局に来た一般人の避難誘導をしなければならないにもかかわらず、その局員たちでさえ、避難誘導を放って本局内を逃げ惑っている。

 

「助けてくれ!!」

 

「死にたくない!!」

 

「誰か助けて!!」

 

「どこに行けばいいんだ!!」

 

悲鳴をあげて右往左往する人々。

 

誰かが『向こうは安全だ!!』と言えば、我先に人を押し倒して先へ進む。

 

一方で『いや、こっちが安全だ』と言えば、今度はそちらへと走っていく。

 

誰一人としてこのパニック状態を治めようとする者が居ない。

 

本局内に設置されていた転送ポートも機械にダメージを受けて既に機能不全状態となり、転送ポートでの脱出は不可能となっている。

 

明かりに関しても全ての電灯が点滅を繰り返し、いつまで明るさを保てるのか分からない。

 

明かりが消えれば、本局内は暗闇とかし、混乱に拍車がかかる。

 

残る脱出手段は本局内のドックに停泊している次元航行艦での脱出だ。

 

その次元航行艦のドックでも混乱が起きており、ドック付近に居た人々、次元航行艦勤務の局員たちはドックに停泊している次元航行艦へと殺到する。

 

「待ってくれ!!」

 

「乗せてくれ!!」

 

「緊急発進する!!どけ!!」

 

ドックと次元航行艦を繋いでいるタラップには次元航行艦に乗り込もうとする大勢の人々が詰め寄る。

 

そんな人々を次元航行艦のハッチでは、局員たちが押し返そうとする。

 

タラップから切り離さなければ、艦は発進することが出来ないからだ。

 

「邪魔だ!!どけ!!」

 

「他の艦に行け!!」

 

「この艦はもう一杯だ!!」

 

「下がれ!!下がるんだ!!」

 

タラップから退くように局員たちが促すが、人々はタラップから降りようとせず、逆にどんどん自分たちに詰め寄って来る。

 

「くそっ、やむを得ん!!」

 

「退かないお前らが悪いんだからな‥‥」

 

局員たちはいよいよ追い詰められ、レーザー銃やデバイスを起動させて殺傷設定のシューターや銃撃でタラップに居る人々を撃ち始めた。

 

他の次元航行艦では、タラップを人々ごと引きちぎるように発進させる艦もあった。

 

タラップは大勢の人々と共にドックの底へと落ちて行く。

 

本局内の管制塔では、本局周辺の哨戒に出ている次元航行艦を呼び戻して、本局内に居る大勢の人々の救助を要請するが、崩壊している本局へ戻れば自分たちも巻き込まれると判断し、本局に戻る艦は居らず、それどころか次々と本局がある異空間から退避していく。

 

本局の異常事態は演習に向かっている次元航行艦隊にも伝えられた。

 

「本局で異常事態!?」

 

「はい。これまで経験したことが無い事態みたいで、転送ポートは既に使用不能、建物も崩壊が進んでいるみたいで、死傷者も多数出ているみたいです」

 

通信参謀から知らせを聞いたリンディは驚愕する。

 

先日の爆発事故以上の事態が今、本局で起きている。

 

(一体、本局で何が起きているの?)

 

リンディは通信内容から本局で何かが起きている事を察したのだが、それが一体何が原因で起きているのか分からない。

 

だが、確実に言えることは本局が今、阿鼻叫喚の生き地獄状態なのだと言う事だ。

 

「総合統括官、今すぐに演習を中止して本局に戻りましょう!!」

 

知らせを聞いてリンディに本局へ引き返すように進言する者が居れば、

 

「何を言う?今ここで戻れば、本局で起きている異変に我々も巻き込まれるぞ!!」

 

「そうだ。二次被害を大きくさせるつもりか?」

 

と、今更本局に戻ってもどうする事も出来ず、むしろ今の状態の本局に戻れば逆に被害を大きくさせるので、戻るのは危険だと主張する者も居る。

 

リンディとしては判断に迷った。

 

人としては、助けを求めている人たちに救助の手を伸ばすのは当然だ。

 

しかし、今本局に戻ったところで、本当に助けられるのか?

 

戻る事を拒否している局員が言うように二次被害に巻き込まれる危険性の方が高い。

 

総合統括官としては、無傷の艦隊を二次被害を防ぐために此処は戻らない方が正しいのかもしれない。

 

リンディが判断に迷っていると、

 

『リンディさん!!』

 

はやてがリンディに通信を送って来た。

 

リンディが本局の事態を知っているのだから、当然はやても知っている。

 

『リンディさん、本局の状況やけど‥‥』

 

「ええ、私の方でもさっき、連絡がきたわ」

 

『はやく本局に戻った方がええんやないですか!?』

 

はやてはリンディに本局に戻って救助をするべきだと主張する。

 

「それは分かっているわ。でも、通信内容から今の本局はまさに阿鼻叫喚の地獄よ。そこに戻ったら、二次被害をもたらすかもしれないわ。総合統括官としてむざむざと被害を受ける事を分かっていて、大勢の人や艦船を本局に行かせる訳にはいかないわ」

 

リンディは、はやてと通信を行い、やはり二次被害の懸念から折角無事な艦隊をみすみす危険があると分かっている本局へ戻す事について消極的だ。

 

『それなら、全艦でなくても少数の艦で本局に何が起きているのか偵察行動を兼ねて行くのはどうでしょう?安全が確保され次第、救助に向かう感じで‥‥』

 

はやてはまず偵察を行い、本局の状況と本局が危機に迫っている原因の調査を行い、安全になったら艦隊を本局に引き返す妥協案を提示する。

 

「‥‥」

 

リンディは暫し考え込むが、

 

「分かりました。はやてさんの意見を採用します」

 

やはり、本局の様子が気にならない訳ではなく、また助けを求める人々を見捨てる事も出来なかったリンディは、はやての意見を採用し、まずは偵察と言う事で艦隊の一部を本局へ引き返す事にした。

 

このまま次元航行艦を一隻も向かわせずに本局を見殺しにするような事になれば、後々に非難を浴びるのは必須。

 

しかし、一隻でも救助に向かわせれば、例え生存者が居なくても救助に向かわせあと言う事実があるので、見殺しにした訳ではないと言う面目が立つ。

 

リンディにはそうした打算もあったからこそ、はやての案を採用したのかもしれない。

 

『リンディさん、その偵察任務、私がやります』

 

そして、はやてはその偵察任務を引き受ける旨をリンディに伝える。

 

「えっ?でも‥‥」

 

危険な偵察任務にはやてを向かわせることに躊躇するリンディ。

 

『偵察任務の提案をしたのは私です。その責任は私にありますから‥では』

 

はやてはリンディに敬礼をして通信を切ると、艦を反転させて本局へと戻った。

 

演習に参加する次元航行艦以外に探査任務へと出た次元航行艦にも本局の異常事態は受信していた。

 

「本局が!?」

 

「はい。事態はかなり切迫しているみたいです」

 

「艦長、どうします?」

 

フェイトがクロノにこのまま知らぬ存ぜぬを突き通して探査任務をするか?

 

それとも本局に引き返して救助に赴くか?

 

クロノの答えは決まっていた。

 

「航海長、反転180度、本局へ救助に赴く!!急げ!!」

 

本局に居る大勢の人々を救うために本局へ引き返す決断を下す。

 

「反転180度」

 

レイセンは艦を反転させて本局へ向かう。

 

 

その頃、ミッドチルダにある大学‥‥

 

ユーノと同郷のランティスが考古学を教えている大学の研究室にユーノの姿があった。

 

研究室の主であるランティスとユーノは考古学談議に花を咲かせていると、

 

「教授!!」

 

研究生の一人が血相を変えてやって来た。

 

「なんだい?そんなに慌てて」

 

「た、大変です!!テレビを付けて下さい!!」

 

「テレビ?」

 

訝しみつつランティスがテレビをつけると、

 

『詳しい情報はまだ入っておりませんが、只今、時空管理局・本局に何らかのアクシデントは発生している模様です。市民の皆さん、管理局の指示があるまで転送ポートを使用は控える様、お願い致します。繰り返しお伝えします。時空管理局・本局に何らかのアクシデントが発生した模様です。管理局の指示があるまで転送ポートを使用は控える様、お願い致します』

 

テレビ画面の向こう側ではアナウンサーが本局で異変が起きた事を伝えていた。

 

「なっ!?本局でアクシデントだって!?」

 

「しかも転送ポートの使用を停止する程とはかなりの事態ではないか?」

 

ユーノは慌てて無限書庫に居る同僚と連絡を取ろうとするが、通じない。

 

他の同僚や無限書庫にかけてもやはり通じない。

 

「やっぱり、本局で何かがあったんだ‥‥」

 

ユーノは顔を青くして呟く。

 

司書長として同僚の安否が気になるのは当然だ。

 

同僚とも無限書庫とも連絡がつかず、転送ポートも使用が出来ない現状、ユーノには何も出来なかった。

 

 

その本局のある異空間では、黒く大きな渦が本局に近づいていた。

 

それは生きているブラックホールの様にも見えたが、その正体は巨大な暗黒彗星だった。

 

暗黒彗星は本局に近づいていくとその強力な吸引力の作用によって、本局を構成する構造物が剥がれ落ちて巨大な黒い渦の中に吸い込まれていく。

 

その中には本局内に居た人々も例外なく吸い込まれていく。

 

タラップに居た人々を見捨ててまで本局を脱出しようとした次元航行艦も成す術無く吸い込まれていく。

 

この世の生き地獄の光景がその空間に広がっていた。

 

 

本局へ引き返していたはやてのジャガーノートとクロノのガイアは途中で合流し、互いに本局の救助に来た事を確認した後、警戒しつつ本局がある異空間に転移すると、そこは普段自分たちが見慣れている空間ではなかった。

 

青緑色の異空間は漆黒の空間へと変貌しており、紫電が時折走る。

 

「な、なんだ?これは!?」

 

「転移する空間を間違えた?」

 

「いえ、座標は間違いなく本局がある空間です」

 

周囲の異様な光景に皆が唖然としていると、

 

ゴゴゴゴゴゴゴ‥‥

 

「な、なんだ!?」

 

「本艦に強力な吸引力が作用しています!!」

 

「なにっ!?」

 

ガイアとジャガーノートは何かに吸い寄せられるかのように漆黒の空間を流されていく。

 

「逆噴射だ!!急げ!!」

 

二隻の次元航行艦は艦首部の噴射口から勢いよく噴射して謎の吸引力に逆らおうとする。

 

「前方に巨大な物体を探知!!」

 

「モニターに出せ!!」

 

「了解!!」

 

「な、なんだ?あれは‥‥?」

 

ガイアの艦橋になるモニターには黒く渦を巻く巨大な何かが映し出される。

 

ジャガーノートの方でもきっと探知してこの暗黒の物体を見ている事だろう。

 

「吸引力はあの物体から出ています!!」

 

「ブラックホールか?」

 

黒く周囲にある物体を吸引する存在‥‥

 

その二つの特徴からクロノの脳裏に過ったのはブラックホールだった。

 

「で、でも、どうして此処にブラックホールが!?」

 

本局のある空間にどうしてブラックホールが出現したのか分からない。

 

(まさか、ボラー連邦か!?)

 

クロノは何もない空間に突如、ブラックホールが出現した経験を体験している。

 

それは、ボラーに対する武力制裁の時、ボラー連邦本星近くでの事だ。

 

本星を守っているであろうその機動要塞にはブラックホールを生成する特殊な砲台が設置されていた。

 

その威力はすさまじく、武力制裁に参加した管理局の次元航行艦の多くが生成されたブラックホールによって消滅させられた。

 

あの時の経験から本来ブラックホールが無い空間に突如として発生したブラックホール‥‥

 

クロノが、ボラー連邦が仕掛けて来たと思っても不思議ではない。

 

そんな中、モニターのスピーカーからは女性のすすり泣くような声が聞こえた。

 

『っ!?』

 

それを聞き、皆は思わず身震いをする。

 

やがて、すすり泣く様な声はグオオーンと嵐か台風の時に吹く暴風の唸り声みたいな音にかわる。

 

「な、なに?今の声‥‥」

 

フェイトは思わず周囲を見渡すが、泣いている女性の姿なんて見えない。

 

「どうやらあれは、ただのブラックホールではないみたいだが‥‥通信長、ジャガーノートに通信を入れてくれ!!」

 

「了解」

 

ミリアリアがジャガーノートとの通信回路を開くと、モニターの一部にはやての姿が映し出される。

 

「はやて、君もあのブラックホールの存在は確認できていると思う。残念だが、本局への救助活動は‥‥断念しよう」

 

クロノは重々しくはやてに本局への救助活動を断念する事を伝える。

 

『で、でも‥‥』

 

「まだ今は何とか次元転移でこの空間から脱出できる。しかし、このままあのブラックホールに接近すれば、成す術なくブラックホールに吸い込まれてしまう‥‥艦と乗員の安全のためなんだ‥‥分かってくれ‥‥」

 

『‥‥』

 

はやても悔しそうにしているが、彼女自身分かっている。

 

艦の制御がギリギリ可能な今の内にこの空間から脱出しなければならない事を‥‥

 

このままではクロノが言うように本局への救助活動どころか自分たちがあのブラックホールに吸い込まれてしまう。

 

『‥‥りょ、了解や』

 

はやても自分と艦の乗員の安全確保の為、救助活動を断念してこの空間からの退避を選択した。

 

ガイアとジャガーノートは本局に居る大勢の人々を助けられなかったと言う後悔と苦悩、後ろ髪を引かれる思いを抱きつつ、次元転移をしてこの空間から脱出した。

 





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