星の海へ   作:ステルス兄貴

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ヤマトⅢに登場した晶子は藤堂の孫娘。

2202に登場した早紀は藤堂の娘と言う設定だったので、晶子の母親として早紀を採用しました。

ただ2202時点の早紀は27歳だったのですが、20代の晶子が居ると言う事で、今作の早紀は原作よりも年齢が40代と年上な設定となっております。


二百四十三話 相原のプロポーズ

 

 

数年前、まだ誉と友莉葉が乳飲み子の時、近所の公園で行われていた同年代の子供たちを使っての競技、ベビーファイト‥‥

 

自分の子供こそ、最強であると信じている母親たちのプライドをかけた戦いなのだろうが、ギンガからしてみればただの野蛮な行為だった。

 

しかし、そのベビーファイトが行われていた公園以外でも似たような事が行われているとママ友であり、ギンガにとってはかつての同僚である永倉真琴から情報提供があった。

 

前回はユリーシャ本人が、まさか白昼堂々と自分の子供を使ってそんな野蛮な行為をしている訳がないと思い、友莉葉を連れて行ってみれば、ギンガの言う通り公園では本当に自分の子供を使って戦わせる野蛮な行為が行われており、友莉葉も巻き込まれてしまった。

 

かろうじて友莉葉が泣かされることはなかったが、ギンガに知られて大目玉をくらった。

 

なので、今回は自分の子供を連れて行かなければセーフだと思い、ユリーシャは真琴からの情報提供があった公園へ一人で見に来た。

 

すると、

 

「秀樹君の勝ち!!」

 

「やったわ!!」

 

「きぃぃぃ~悔しぃ~いぃ!!」

 

「‥‥」

 

フェンスに囲まれた砂場の中では、二人の幼児がボロボロの状態となっており、一人は声を上げ、目からは大粒の涙を流して泣いており、もう片方の子はボロボロながらも母親に抱き上げられてキャッ、キャッと笑みを浮かべている。

 

負けた方の子の親は金切り声を上げて悔しがっている。

 

その光景はまさに数年前、あの公園で見たベビーファイトとほぼ同じ光景だ。

 

唯一違うのは戦っていた子供の年齢があの時の公園で見た乳飲み子ではなく、今の誉や友莉葉と同じ三歳くらいの子も居れば、それよりも小さな子も居り、子供の年齢の層はあの公園のベビーファイトとは幅広いのだが、自分の子供を戦わせている内容は変わりない。

 

その光景を目の当たりにしたユリーシャは早々にその場から去った。

 

「ま、まさか、あの公園でも同じことを‥‥地球の人って此処まで好戦的な人だったっけ?」

 

地球人の認識を変えるかのような行為にユリーシャは疑問を抱きつつ帰路についていると、

 

道端の草を食べている全裸の男の子がユリーシャの前に居た。

 

(えっ?あの子、どうして裸なの?)

 

(それに道にある草を食べているのかな?)

 

(もしかして、家にお金がなくて服もなく、食べるものもないのかな?)

 

ユリーシャが呆然と草を食べている男の子を眺めていると、

 

「ああ、つとむちゃん!!また草何て食べて!!」

 

草を食べている男の子の家族らしき女の子がやって来た。

 

家族らしき女の子は当然服を着ている。

 

(あ、あれ?あの子はちゃんと服を着ている‥‥)

 

(じゃあ、どうして男の子の方は服を着ていないのかな?)

 

(もしかして、これが虐待?ってやつなのかな?)

 

家族の方はちゃんと服を着ているが、男の子の方は服を着ておらず、道端に生えている草を食べている事から男の子が家で虐待されているのではないかと推測するユリーシャ。

 

(と、とりあえず、事情を聞いてみないと分からないよね)

 

ユリーシャは男の子が本当に虐待されているのか訊ねてみる事にした。

 

「あ、あの‥‥」

 

「はい?」

 

ユリーシャが恐る恐る男の子の家族らしき女の子に声をかける。

 

女の子の方は声をかけて来たのが同性と言う事でそこまで警戒している様子ではない。

 

「その子、どうして裸なの?」

 

「ああ、実は家の弟、服を着るのを嫌がるんです」

 

すると、女の子は弟である男の子が服を着ない理由を話す。

 

「でも、風邪ひかない?」

 

「ええ、今の所は風邪をひいていないので‥‥」

 

女の子が言うには男の子は今の所は裸でも風邪はひいていないようなので、家族の方でも放置しているみたいだ。

 

「でも、どうして道端の草何て食べているの?」

 

服を着ていない理由は本人が服を着るのを嫌がると言う事で理解できたが、もう一つの疑問があるので、ユリーシャは次に何故、道端に生えている雑草を食べているのかを問う。

 

「え、えっと‥‥その‥‥や、野菜が好きなんです」

 

「‥‥」

 

何故、弟が道端に生えている草を食べているのかは流石に姉である彼女も分からないのか、それっぽい理由を述べた。

 

ユリーシャが反応に困っていると、

 

「こんにちは、つとむ君」

 

「ん?」

 

「えっ?」

 

「らー」

 

一組の親子が現れ、弟に声をかけてきた。

 

父親らしき人物は胴着を着ており、子供の方は草を食べ続けている弟と同い年くらいの男の子で、坊主頭に太い眉毛、そしてキックボクサーの様な半裸姿である。

 

「我が息子、吉野ヶ埼拓郎。埼玉では無敗を誇る自慢の息子だ」

 

(サイタマ?海鳴以外でも、子供を戦わせているの?)

 

息子自慢を含めた自己紹介を聞いてユリーシャは海鳴市以外の街でも自身の子供を戦わせている行為が行われている事を知る。

 

「君の噂は聞いておるよ。なんでも物凄く強いらしいね‥‥だからこそ、君には我が息子の糧になってもらう。行け、拓郎」

 

埼玉でも巡り廻るってつとむの噂が流れており、海鳴に途轍もなく強い三歳児が居ると言う噂を聞いて吉野ヶ埼親子は埼玉から海鳴にやって来たのだ。

 

そして、拓郎はつとむと戦う気満々である。

 

「逃げて、つとむちゃん!!」

 

姉は弟に逃げるように言うが、

 

「まだ、草を食べている‥‥」

 

ユリーシャは未だに道端に生えている草を食べているつとむを見ている。

 

「それは奴の作戦じゃ、構わずに攻めなさい」

 

吉野ヶ埼はつとむの行動は相手を油断させる作戦だと判断し、息子に攻めるように伝える。

 

すると、拓郎はつとむの後頭部を拳で殴る。

 

つとむは殴られた箇所を痛そうに手で押さえるが、泣く事は無くチラッと拓郎を見るが相手にすることなく再び草を食べ始める。

 

そこで、拓郎がもう一度、つとむの後頭部を拳で殴る。

 

「ちょっと、後ろから殴るなんて卑怯よ!!」

 

姉が吉野ヶ埼親子にクレームをつけるが、殴られたつとむ本人が全く拓郎を相手にしないので、拓郎もお手上げ状態となっている。

 

「何をしておる。早い所決めろ」

 

吉野ヶ埼の方は中々息子がつとむを泣かせられない事に業を煮やす。

 

すると、これまでずっと道端の草を食べていたつとむが振り返り、拓郎に近づくと‥‥

 

「めぎー」

 

「ほいらぁぁぁぁぁぁー!!」

 

拓郎の瞼を抓った。

 

「うわっ、痛そう‥‥」

 

ユリーシャは抓られている拓郎を見て思わず両手で口を覆いながら呟く。

 

「つとむちゃん!!止めて、血が出ているわ!!」

 

拓郎の眼部から出血があり、姉が慌てて止める。

 

「らー」

 

「ぎゃおおおお!!」

 

拓郎が泣いた事で勝負はつとむの勝利となり終わった。

 

吉野ヶ埼は泣き喚く息子を抱えてすごすごと帰って行った。

 

「つとむちゃんも帰るわよ」

 

姉の方も弟の手を引いて帰って行った。

 

ユリーシャも帰路に就いたのだが、やはり自分の子供を戦わせる親の心情は理解できなかった。

 

「ねぇ、シノブ」

 

「ん?なに?」

 

「人はどうして戦うのかな?」

 

「えっ?どうしたの?急に‥‥」

 

「ギンガやマコトから自分の子供を戦わせている親の話を聞いて‥‥」

 

「ああ、なるほど‥‥そうね。戦いを始める者には自分の力を試してみたい、自分の欲しいモノを力づくで奪いたい、そんな思いから争いが始まるわ‥‥でも、そんな暴力から大切なモノを守る為に戦う事だってあるのよ。良馬やギンガも私たちを‥地球を守る為に戦っているの‥だから、戦う事全てが悪いって事じゃないのよ」

 

「う、うん」

 

忍の言葉を聞き、多少なりとも戦う行為に妥協点を見出したユリーシャであった。

 

 

海鳴で第二次ベビーファイトブームが一部の主婦層に広まりつつある頃、メガロポリス東京では‥‥

 

ギンガが二代目まほろば艦長となり、アルファ星へ出航後、ヤマトの方でも整備、補修、補給が行われ近々アルファ星に向けて出航と言う中、古代の下を一人の男が訪ねた。

 

その男とは‥‥

 

「失礼します」

 

「おう、来たな相原」

 

ヤマト通信長の相原であった。

 

「あれ?雪さんは?」

 

相原が古代家に入ると、家の中に雪の姿はなく、娘の深雪の面倒はパピライザーがみていた。

 

「軍の人事部に呼ばれて今は留守にしている」

 

「人事部?雪さん異動になるんですか?」

 

「まぁ、人事部からの呼び出しだからな」

 

雪はこれまで、ヤマトの船務長以前は中央病院の看護師と務め、第一次イスカンダル航海時にはヤマトの船務長、ヤマトがイスカンダルから帰還後は藤堂長官の秘書を務めたりと様々な部署を異動していた。

 

そして、今回新たな配属先が決まったのか、雪は人事部に呼び出しを受けた。

 

「雪さんがヤマトからどこか別の部署に異動ってことですか‥‥ってことは今後のアルファ星の任務では雪さんが不在になりますね」

 

「そうだな」

 

「古代さんとしては大丈夫ですか?雪さんが居なくて‥‥」

 

「軍に在籍しているからには異動はつきものだからな。仕方ないさ」

 

暗黒星団帝国戦役以外、雪はヤマトに乗艦していたので、雪がヤマトから降りるかもしれない事に相原は何だか寂しさを覚える。

 

しかし、古代は良馬同様軍人である以上、異動は必ず起こる事態なのだと割り切っていた。

 

とは言え、正直に言うと古代も相原同様、雪がヤマトを降りるのは辛かった。

 

「それで、今日は一体何の用で来たんだ?」

 

雪の話題を切り上げて本題を相原に訊ねる古代。

 

「実はその‥古代さんに聞きたい事がありまして‥‥」

 

「ん?聞きたい事?なんだ?」

 

「その‥‥古代さんは‥‥ゆ、雪さんにどうやってプロポーズをしたんですか?」

 

「えっ?」

 

相原が意を決して本題を切り出すと、その内容を聞いて古代は思わず素っ頓狂な声を出す。

 

「いきなりどうしたんだ?」

 

「実は‥僕もそろそろ身を固めようと思いまして‥‥」

 

「そういえば、相原は藤堂長官のお孫さんと交際していたな‥‥」

 

「はい」

 

ガルマン・ガミラスの惑星破壊ミサイルが太陽に直撃して、太陽異常が起きた際、南十字島に居た相原は空港で運命的な出会いをした。

 

その相手こそが、藤堂の孫娘である晶子であった。

 

太陽異常がシャルバート星から齎されたハイドロコスモジェン砲によって解決後、相原と晶子は正式に交際をした。

 

それから相原の周囲では結婚・出産ラッシュが続いた。

 

しかも自分が乗艦しているヤマトは近いうちにアルファ星に向けて出航する。

 

アルファ星は地球圏では対バジウド星系におけるボラー連邦派の星間国家との最前線‥‥

 

一度出撃すれば、次はいつ地球に戻れるのか分からない。

 

交際年月、そしてアルファ星への出航が重なり、このまま晶子との関係をなぁ、なぁ、の状態でいると、晶子が誰かにとられてしまうのではないかと最近で相原もちょっと焦りだしたのだ。

 

何しろ、晶子は防衛軍長官である藤堂の孫娘‥‥

 

本来ならば、自分の様な一介の士官ではなく軍の上層部若しくは連邦政府の閣僚レベルの人物が結婚相手にふさわしいのだろうが、藤堂は晶子の気持ちを優先しており、自分との交際を認めている。

 

しかし、祖父である藤堂が認めていても晶子の両親はどう思っているだろうか?

 

相原の心の中には晶子との結婚まで様々なモヤモヤとした重いと障害があった。

 

そこで、相原は身近な既婚者である古代にアドバイスや経験談を貰おうと古代家を訪問したのだ。

 

「うーん‥‥プロポーズと言われてもな‥‥」

 

相原の相談を受けて古代は後頭部を手で掻きながら悩む。

 

元々古代と雪は相思相愛の仲だったので、あまりプロポーズの必要性が薄かった。

 

「まぁ、定番なのが夜景の綺麗なレストランで婚約指輪を渡すって感じなのだろうけど‥‥」

 

古代は悩んだ末に恋愛ドラマにありがちなシチュエーションを口にする。

 

「なんだかありがちな感じもしますけど‥‥」

 

相原も古代の言うシチュエーションはありがちだと思った。

 

「そうか?」

 

「はい」

 

「うーん‥‥」

 

その他のシチュエーションを古代は考えるが、なかなか思い浮かばない。

 

そこへ、

 

「ただいま」

 

雪が帰って来た。

 

「ああ、おかえり」

 

「あら?相原君。いらっしゃい」

 

「あっ、どうも、お邪魔しています」

 

雪はリビングに居た相原に気づき声をかける。

 

相原の方も雪に挨拶をする。

 

「それで、相原君。どうしたの?」

 

相原が古代の下に来た理由を訊ねる雪。

 

「実は‥‥」

 

古代が雪に相原の訪問理由を伝える。

 

「まぁ、そうなの?」

 

雪は理由を聞いて驚くもなんだか嬉しそうだ。

 

「それで、晶子さんにプロポーズをする最高のシチュエーションを考えているのだが、なかなか良い案がなくてな」

 

「うーん‥でも、晶子さんって、相原君の事、好きなんでしょう?」

 

「えっ?あっ、はい‥‥そうだと思います」

 

これまでの晶子との交際から、彼女が自分に好意をもっている事は窺える。

 

勿論、自分も晶子の事は好きだ。

 

「それなら、わざわざシチュエーションなんて考えなくてもいいんじゃない?好きな人からプロポーズをしてもらう事がなによりも晶子さんにとっては嬉しい事だと思うけど?」

 

「そうなんですか?」

 

「うーん‥‥私は晶子さんじゃないから絶対とは言えないけど、進さんに置き換えてみると、私は嬉しいかな」

 

一応、晶子と同性である雪の意見なので、貴重な意見であるだろう。

 

「分かりました。貴重な意見、ありがとうございます」

 

古代と雪からの意見を貰い相原は礼を言う。

 

「あっ、それともう一ついいですか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「いや、僕が言うのもちょっと変ですが、古代さんと雪さんはどうして結婚をするまで結構な間があったんですか?」

 

彗星帝国戦役直前に古代と雪が結婚間近なのは当時のヤマト乗組員‥特に第一艦橋員は周知の事実であった。

 

しかし彗星帝国戦役後、入院していたヤマト乗組員が退院した日、英雄の丘で退院報告をした際、二人は決まっていた結婚を無期延期にした。

 

それから、二人は年単位の期間、結婚を延期していた。

 

結婚を延期するには何か理由があるからだろうが、その理由は当人同士しか知らない。

 

野暮かもしれないが現在、二人は結婚して子供まで設けているので、今聞いても大丈夫だろうと相原は思ったのだ。

 

「まぁ、あの時も言ったが、彗星帝国との戦い後、結婚なんてあくまでも形式の一つであり、俺も雪も互いに傍に居る事こそが大切な事だと自覚したんだ‥‥それともう一つ俺が雪との結婚に踏み入れない理由があった」

 

「それは一体何です?」

 

「彗星帝国との戦いから、どうも俺たちが結婚しようとすると地球に重大な危機が訪れて、きっと俺自身が雪との結婚に消極的になっていたのかもしれないな‥‥」

 

彗星帝国戦役後に第二次イスカンダル航海を含めて暗黒星団帝国との戦いに太陽異常における第二の地球探査、そしてバジウド星系のボラー連邦派との抗争と地球は近年、大きな危機や星間国家との戦いが続いていた。

 

決して古代若しくは雪が戦いや厄災を運んでいる訳ではないのだが、こうも連続的に続くと変に意識してしまう。

 

「そんな中、どういう心境の変化で雪さんと結婚したんですか?」

 

結婚はあくまでも儀式、通過点なのだが、子供を設けるにはやはり世間的には結婚していた方が体裁はいい。

 

特に二人は軍でもあのヤマトに乗っていたと言う事で有名人なのだから‥‥

 

「実は、月村さんと結婚について色々と意見を交わす機会があってな‥‥」

 

「月村さん?って言うと、まほろばの艦長の?」

 

「ああ。今は奥さんのギンガさんが艦長を務めているらしい。当時の月村さんも俺と似た状況でな、プロポーズする機会を考えていて、それで彼と意見を交換している内に段々と俺も雪との結婚を強く意識するようになって‥‥」

 

「雪さんとの結婚に至ったと?」

 

「ああ」

 

「‥‥」

 

(やっぱり俺も、もう少し前にプロポーズするべきだったかな?)

 

古代の話を聞いて、良馬や古代たちが結婚式をあげたくらいの時期にプロポーズをしておくべきだったと今になってちょっと後悔した。

 

 

「色々とご意見ありがとうございました」

 

その後、相原は古代と雪から馴れ初め話を聞き、古代家を後にした。

 

「しかし、相原がプロポーズか‥‥」

 

相原が古代家を後にした後、古代は思わず呟く。

 

相原とは第一次イスカンダル航海からの付き合いで、これまでの軍人生活で色々とあったが自分同様、その相原が家庭を持とうとしている事に感慨深い。

 

「でも、それを言うなら私たちも‥でしょう?」

 

「そうだな」

 

「相原君のプロポーズ‥上手くいくと良いわね」

 

「ああ」

 

古代と雪はお互いに肩を寄せ合い、相原のプロポーズの成功を祈った。

 

 

(あっ、そう言えばまだ晶子さんのご両親とも会ったことが無かった‥‥)

 

(それに俺も母さんに晶子さんを紹介していなかった‥‥)

 

古代家を出た後、相原はまだ晶子の両親‥藤堂の娘か息子に挨拶をしておらず、反対に自分も母親に晶子を紹介していなかった事に気づいた。

 

晶子と長い交際期間を設けつつも彼女の両親と出会えなかったのは、相原がヤマト‥宇宙艦船勤務であり、地球に戻ってもそれは不定期な期間であり、一度宇宙に出ると再び地球にいつ戻れるのか分からない。

 

故に相原も晶子もお互いに出会った時には二人の時間を優先していたので、お互いの親に紹介・挨拶をしていなかったのだ。

 

しかし、プロポーズを控えている今、お互いの親に会う必要がある。

 

「よ、よし、次のデートで晶子さんにプロポーズを決めるぞ!!」

 

結婚までの道のりにおける重要なポイント‥プロポーズを次で行うと決心する相原であった。

 

晶子にプロポーズを決めると決意した相原の行動は早かった。

 

彼女にデートの約束をする為に連絡を入れる。

 

なお、晶子は現在、宇宙開拓省の事務員として働いている。

 

太陽異常が起きた際、藤堂は防衛軍の長官職と宇宙開拓省の中に設けられた宇宙移民局の局長を兼任し、晶子は藤堂の秘書として彼をサポートしていた。

 

ハイドロコスモジェン砲によって太陽異常が収まった後、藤堂は防衛軍の長官職に戻るが、彼女はそのまま宇宙開拓省で働いていた。

 

軍関係ではやはり宇宙戦士訓練学校・士官学校を卒業しなければならないが、宇宙開拓省は省庁の公務員職なので、宇宙戦士訓練学校・士官学校を卒業しなくても入省でき、宇宙に関する職業ならば相原との接点がある仕事なので、晶子としてはまさに理想の職場であった。

 

「はい、藤堂です。あっ、相原さん‥ええ、その日は大丈夫です。はい‥‥ええ‥では、その時間、その場所で‥‥」

 

相原から電話をもらい、その内容がデートのお誘いだった事に晶子は胸を躍らせる。

 

「今の電話、相原君かね?」

 

そんな浮かれている晶子の様子を見て、藤堂は電話の相手を予測しつつ彼女に声をかける。

 

「ええ。相原さんからデートのお誘いを受けたの」

 

「そうか‥‥なぁ、晶子」

 

「ん?何でしょう?お爺様」

 

「その‥そろそろ、晶子も将来について考えてみてはくれたか?」

 

「将来?でも、私は今、宇宙開拓省でちゃんと働いていますよ」

 

晶子は真面目なのだが、少々天然な所があり、藤堂の言う『将来』を履き違えていた。

 

「いや、そうではなく‥その‥‥結婚について‥だな」

 

「結婚?」

 

藤堂自身も周囲の者が結婚・出産をしていくのを見て、自分の孫娘の将来を案じていた。

 

「相原君との交際期間も随分と経つではないか、だからそろそろ‥‥」

 

相原を認めていない訳ではないが、二人がいつまでも結婚する素振りがない事から、ちょうど相原からデートの誘いが来た晶子に進展を含めて結婚について訊ねてみたのだ。

 

「‥‥」

 

流石の晶子も藤堂の言う事を理解して、神妙な面持ちになる。

 

「いや、決して相原君を認めていないと言う訳ではないのだよ」

 

藤堂は晶子の結婚相手に相原が不足ではない旨はちゃんと伝える。

 

「でも、お母様は認めてくれるでしょうか?相原さんの事を‥‥」

 

「‥‥」

 

晶子の言葉に今度は藤堂が黙る。

 

晶子が相原に自分の両親を会わせていない理由は相原との時間を共有していたいと言う理由の他にどうやら晶子の母親に何か事情がある様だ。

 

「晶子、お前はどうなんだ?」

 

「えっ?」

 

「相原君がお前にプロポーズをしてきた時、それを受ける気持ちはあるのか?」

 

「私は‥‥結婚するなら相原さん以外考えられません」

 

晶子は真剣な表情で藤堂を見つめる。

 

「そうか‥‥ならば、私もこれ以上は言わん‥‥ただ、お前と相原君との結婚は応援させてもらうよ」

 

「ありがとうございます。お爺様」

 

図らずも晶子へのプロポーズを考えている相原と孫の結婚を望んでいる藤堂の助言によって晶子も相原との結婚を意識するようになった。

 

それから数日後‥‥

 

相原と晶子は先日の約束した通り、メガロポリス東京にてデートと洒落込んでいた。

 

映画を見たり、ショッピングを行う二人‥‥

 

ただ、相原は今日、晶子にプロポーズをすると決め込んでいた事から妙にソワソワして落ち着きがなく、晶子の方も先日、祖父から結婚についての話題から相原を妙に強く意識してしまい落ち着きがない。

 

互いに妙な空気がある中、日が落ちて相原は事前に予約したレストランへと晶子と共に入る。

 

有名高級店なのだが、相原はレストラン内でのプロポーズはしなかった。

 

レストランと言う事で自分たち以外にも利用客が居るので、周囲の目が気になるのだ。

 

とは言え、この後でプロポーズを控えているとなると本来の美味い筈の料理の味も分からなかった。

 

レストランを出て夜の街を歩く二人。

 

「料理、美味しかったですね。相原さん」

 

「えっ?ああ、そうですね‥‥」

 

晶子は先ほどのレストランでの食事で料理を味わう余裕があったみたいだ。

 

「あ、晶子さん。そこの公園で少し休みませんか?」

 

相原は近くに会った公園に晶子を誘う。

 

その公園は開けており、夜と言う事もあり、人も少ないが、メガロポリス東京にある事から外灯が多く設置されており、比較的明るい。

 

ベンチに座った相原の心臓の鼓動は緊張で波打つ速さであった。

 

(落ち着け‥落ち着くんだ、俺‥‥)

 

(俺はヤマトで沢山の修羅場を経験して来たじゃないか‥‥)

 

第一次イスカンダル航海、彗星帝国戦役、暗黒星団帝国戦役、第二の地球探査、バジウド星系への遠征など、相原はヤマトで何度も命を懸けるような戦いを経験し、生き残って来た。

 

それらの過去の経験と比べたら晶子にプロポーズをするくらいなんともない筈であったが、震えと冷や汗が止まらない。

 

深呼吸をして、呼吸と整え上着の内ポケットに手を伸ばして、ポケットの中にあるリングケースに手をかける。

 

勿論、そのリングケースには半年分の給料をつぎ込んだ婚約指輪が入っている。

 

リングケースをギュッと握りしめる。

 

後は、晶子にプロポーズの言葉と共に内ポケットから差し出すだけだ。

 

(よ、よし、いくぞ!!)

 

呼吸を整えて一気に行動へと移す。

 

「あ、晶子さん!!」

 

「は、はい」

 

「ぼ、僕と結婚してください!!」

 

相原は晶子に婚約指輪が入ったリングケースを差し出すと共にプロポーズの言葉を放った。

 

「‥‥」

 

晶子は一瞬、相原が何を言っているのか?

 

自分が何をされたのか理解できずにキョトンとしていたが、時間が経つにつれ晶子は相原の言動を理解して、

 

「は、はい。私でよければ‥‥」

 

晶子はリングケースを差し出す相原の手を両手で優しく包み、相原からのプロポーズを受け入れた。

 

「ほ、本当に‥‥?」

 

相原は震える声で晶子に訊ねる。

 

「ええ」

 

晶子は相原の問いに頷く。

 

「よ、よかった~‥‥」

 

晶子に自分のプロポーズを受け入れてもらい、相原は深く息を吐いた。

 

「ただ‥‥」

 

「ただ?」

 

「一つ問題が‥‥」

 

「えっ?」

 

「その‥‥私の母が私たちの結婚を許すか心配で‥‥」

 

「晶子さんのお母さん?」

 

「はい‥‥後日、私の母と会ってもらえますか?」

 

「も、勿論です!!」

 

後日、晶子の母親との邂逅を取り付け、相原は晶子を藤堂家まで送り、その日は解散となった。

 

「~~♪~~~♪~~♪~~~♪」

 

藤堂家に戻った晶子は終始ご機嫌な様子で鼻歌を奏でていた。

 

「ん?どうした?晶子。何か良い事でもあったのか?」

 

そんな晶子の様子に気づいた藤堂が声をかける。

 

「フフ、見て、私、等々相原さんからプロポーズをされたの~」

 

晶子は藤堂に先ほど、相原から貰った婚約指輪を見せる。

 

「おお、そうか‥‥ついに相原君も覚悟を決めたか‥‥」

 

プロポーズを決めた相原を褒める藤堂。

 

「それで、今度お母様にあってもらうつもりよ」

 

「うむ‥しかし、早紀がお前と相原君との結婚を許すかどうか‥‥」

 

「この結婚は私の意志で決めた事よ。例えお母様でも文句は言わせないわ」

 

「そうか‥お前も成長したな」

 

孫娘の成長に嬉しさを感じる藤堂であった。

 

それからまた数日後‥‥

 

ヤマトのアルファ星への出航も間近と言う事で相原と晶子は短期決戦で晶子の母親と話をつけなければならなくなった。

 

「うぅ~‥緊張するな‥‥」

 

スーツに身を包んだ相原は晶子の母親との邂逅場所である料亭の出入り口にて武者震いをする。

 

「大丈夫ですよ、相原さん」

 

そこに着物姿の晶子が相原の腕に自らの手を絡める。

 

「お母様でも私たちの未来を妨害する権利はない筈です。藤堂の家から勘当されても私は相原さんと共に歩むつもりです」

 

晶子は相原を信念が籠った目で見つめる。

 

「晶子さん‥‥そうですね。僕も晶子さんと共に未来を歩みます。例え、晶子さんのお母さんから嫌われても‥‥」

 

晶子から勇気を貰い、彼女と共に晶子の母親‥早紀が待つ部屋へと向かう。

 

襖を開けるとそこには晶子同様着物姿の女性が待っていた。

 

(この人が晶子さんのお母さん‥‥)

 

晶子さんの母親と言う事で四十代ほどなのだろうが、見た目は実年齢よりも若く見える。

 

相原と晶子は対面するようにして座る。

 

「貴方が晶子と交際をしている男性?」

 

「は、はい。相原義一と申します」

 

「晶子の母、藤堂早紀です」

 

互いに一礼をして自己紹介を交わす相原と早紀。

 

「先日、父と晶子から電話を貰った時は、驚きました。まさか、私の知らない間に晶子が男性と交際をしているなんて‥‥」

 

「「‥‥」」

 

「晶子‥‥」

 

「は、はい」

 

「私は常々言っていた筈ですよ。『軍人である男性とは結婚するな』と‥‥それなのに、貴女と言う人は軍人である男性と交際をするなんて‥‥」

 

「‥‥」

 

早紀の指摘を受けて晶子は俯く。

 

「あ、あの‥‥」

 

「はい?」

 

そんな晶子に居たたまれなくなり、相原は早紀に声をかける。

 

「どうして、軍人とは結婚できないのでしょう?じ、自分の周りの同僚も軍人ですが、結婚をしている者が大勢います」

 

「どうやら、晶子は話していないみたいですね。私自身‥そして、晶子の父親も軍人でした」

 

「えっ?」

 

今日まで晶子の家族の内、相原が知っていたのは祖父が防衛軍の長官である藤堂であると言う事だけで、晶子の両親がどんな人物なのかを相原は知らなかった。

 

そして、晶子の両親が自分と同じ軍人であると言う事を今日知った。

 

「晶子さんのご両親が軍人‥‥でしたら、何故結婚相手に軍人はダメなのですか?」

 

相原は早紀と晶子の父親が自分と同じ軍人ならば、どうして晶子の結婚相手が軍人ではダメなのか、その理由を訊ねる。

 

「軍人だからこそ、ダメなのです」

 

「えっ?」

 

「私は先ほど、晶子の父親が軍人『でした』と過去形で言いましたね?」

 

「は、はい‥‥ん?でしたって事は、まさか‥‥」

 

「夫は‥晶子の父親はガミラスとの戦争で戦死しました。夫の他に私の母‥晶子にとっては祖母もガミラスとの戦争初期に自殺をし、当時まだ幼い晶子を育てるのには苦労しました‥‥」

 

「‥‥」

 

「貴方もあの戦争を経験しているのなら、分かる筈です。軍人と言うのがいかに危険な職業であるかを‥‥」

 

「はい。分かります。イスカンダルへの航海、彗星帝国との戦いでは自分も死にそうな経験をしました」

 

「私自身、矛盾をしていると分かっていても地球を‥晶子を守る為に軍に身を置いていますが、いつ夫と同じ末路を辿ってもおかしくはありません。だからこそ、娘の晶子には私と同じ思いをしたくない‥‥相原さん、晶子のためを思うのであるならば、どうか、晶子との結婚は思いとどまってもらえますか?」

 

早紀は深々と頭を下げて相原に晶子との結婚を諦めてくれと頼んで来た。

 

いくら、晶子の母親とは言え、その頼みは当然相原も晶子も了承できる頼みではなかった。

 

「お母様、お母様の頼みでもそれは出来ません」

 

晶子が早紀にはっきりと相原との結婚を諦めるつもりはないと告げる。

 

「自分も晶子さんを諦めるつもりはありません」

 

相原も早紀の頼みを突っぱねる。

 

「‥晶子、いいの?軍人は決して安全な職業ではないのよ。いつ、貴女の父親と同じ末路を辿ってもおかしくはないのよ」

 

早紀は次に晶子へ相原への結婚のリスクを問う。

 

「お母様、確かにお母様の言う通りで、宇宙には多くの危険がある事を私はあの太陽異常の件を始めとして、ガミラス、彗星帝国、暗黒星団帝国の侵略を受けて理解しています」

 

「それならなおさらの事、軍人の夫を迎え入れるは止めないさい。お父様を失った時の悲しみをまた体験することになるのよ」

 

「それはお母様も同じではありませんか‥私もお爺様もお母様が亡くなったら当然、悲しいです」

 

「‥‥」

 

早紀は自身でも矛盾していると言ったし、それを分かっている。

 

「それを理解しているなら分かるでしょう?軍人を夫に持つリスクが‥‥」

 

早紀は何が何でも相原と晶子との結婚を認めようとしない。

 

そこへ、

 

「早紀、もういいだろう」

 

藤堂が現れて早紀を諌める。

 

「お父様‥‥まさか、お父様まで晶子とこの方との結婚を認めると言うのですか?」

 

「早紀、晶子はお前が思っている以上に強い子だ。お前の言う最悪のケースも覚悟しているし、相原君もそう簡単に死ぬような男ではない」

 

「‥‥」

 

藤堂、相原、晶子がジッと早紀を見つめる。

 

「あぁ~もう、なんだかこの状況だと私一人が悪者みたいじゃない!!」

 

早紀がはっちゃけた様に叫ぶ。

 

「晶子、本当にいいのね?軍人の旦那をもつ事に後悔しないのね!?」

 

早紀は晶子に最終確認をするかのように訊ねる。

 

「はい。お母様」

 

「‥‥相原さんって言ったわね」

 

「は、はい」

 

「晶子を悲しませるような真似をしたら、許さないわよ‥‥社会的に抹殺するだけじゃ済まさないわ‥産まれて来た事を後悔するくらいの制裁をするから」

 

「は、はい‥‥」

 

(この人の言う事だから、あながち嘘ではなさそうだ‥‥)

 

こうして、藤堂、相原、晶子の説得と覚悟の末、二人の正式な結婚は認められた。

 

ヤマトがアルファ星への出航を控えていると言う事で、二人の結婚準備は慌ただしくも迅速に行われたのだった。

 

相原側の出席者はヤマトの乗員を始めとする近しい者たちで、晶子は職場の上司、同僚、学校での友人たちが主な参列者であった。

 

相原の母親は、ガミラス戦役時に市街地で起きた暴動に巻き込まれ、亡くなった父親の遺影を手に参列し、息子の結婚式に大粒の涙を流し、二人の人生の新たな門出を祝福した。

 

「いやぁ~相原が結婚か‥‥」

 

「しかもお相手が長官の孫娘とはなぁ~」

 

「人生って分からないもんですね~」

 

ヤマトの第一艦橋のメンバーは相原の結婚について意外性を覚える。

 

「まぁ、元々あの二人は例の太陽異常の際に知り合ったみたいだし‥‥」

 

「それじゃあ、あの太陽の異常事態が起きなければ、二人は出会わなかったってことになりますね」

 

「そういう事になるな‥‥」

 

「相原にとってあの太陽異常はまさに怪我の功名って事か‥‥」

 

太田、南部、島の三人が相原と晶子の出会いについて語る。

 

「相原、晶子さん」

 

「あっ、古代さん、雪さん」

 

「結婚おめでとう。相原君、晶子さん」

 

「ありがとうございます。古代さん、雪さん」

 

「ありがとうございます」

 

二人に祝福の言葉をかける古代と雪に相原と晶子は一礼をする。

 

しかし、古代としては自分もそうだが、相原は結婚をしたことで、同じ艦に乗っている以上、自分は雪と晶子、二人の女性の人生を同時に背負っている事となった。

 

雪や晶子を未亡人にする訳にはいかない。

 

故にヤマトの艦長として、そう簡単にヤマトを沈めるような指揮はとれない。

 

いや、自分や相原、雪、晶子だけではなく、自分はヤマトの乗員とその家族、そして大切な人の人生さえも背負っているのだと、相原と晶子の結婚式に参列をして、改めてヤマトの艦長と言う重責を自覚するのであった。

 




復活編の続編が描かれていれば、ヤマトⅢ以降の相原と晶子の関係が描かれていたかもしれませんが、復活編は事実上未完の上で終了となっていそうなので、二人の関係が続いているのか?それとも破局したのかが不明だったので、今作では継続しており今回結婚と言う形にしました。

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
  • お友達のままで
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