星の海へ   作:ステルス兄貴

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二百四十六話 護衛任務

 

 

バジウド星系にある浮遊大陸群宙域での戦闘で、ガルマン・ガミラス東部方面軍第十八機甲師団はボラー連邦派の新造艦戦艦、ズーラヴァの攻撃を受けて司令官のダゴンを含めて壊滅的打撃を受けた。

 

しかし、地球の新造戦艦、ヱクセリヲンとヒューベリオンの拡散波動砲を受けてズーラヴァを含め壊滅し、ボラー連邦派は組織的抵抗をする手段を失った。

 

後日、ガルマン・ガミラスからバジウド星系のボラー連邦派の星間国家に向けて降伏勧告が発信された。

 

それからバース星にて、降伏調印式が執り行われた。

 

なお、ガルマン・ガミラスからの降伏勧告にて、バース星の降伏調印式に参加しなかった星間国家については敵対勢力と見なし、今後は降伏・捕虜なしの殲滅行動を取ると付け加えられており、ボラー連邦派の星間国家のほとんどがバース星で行われた降伏調印式に参加した。

 

参加したボラー連邦派の星間国家に対して、ガルマン・ガミラスはそれぞれの星間国家に自治は認めたが、宇宙戦闘艦の建造数・保有数には大きく制限をかけ、それぞれの星間国家には領事館を設置させ、宇宙艦隊と武官の駐留を認めさせた。

 

この降伏調印式にて、ガルマン・ガミラス、地球にとって目の上のたん瘤のような存在であるバジウド星系のボラー連邦派の星間国家は事実上消滅したも同然であった。

 

バジウド星系が平定された事でガルマン・ガミラスはボラー連邦へ本格的に攻略を集中でき、地球側はアルファ星が攻撃を受ける危険性が無くなった。

 

 

ガルマン・ガミラス、地球がバジウド星系を平定した頃、ミッドチルダでは‥‥

 

 

ミッドチルダの首都、クラナガンにある一軒の喫茶店‥‥

 

そこには管理局が誇るエース・オブ・エースの高町なのは、次元航行艦ジャガーノートの艦長、八神はやて、次元航行艦ガイアの副長、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンの三人の姿があった。

 

「それで、なのはちゃん。話ってなんや?」

 

今回、この喫茶店にはやてとフェイトを呼んだのはなのはの様で、はやてはなのはに呼び出した理由を訊ねる。

 

「う、うん‥実は‥‥」

 

なのはは顔をやや俯かせながらもじもじと身体を揺らし、頬を若干赤らめ今日、二人を呼び出した理由を話し始める。

 

「実は私、ユーノ君とお付き合いをする事になって‥‥」

 

「は?」

 

「えっ?」

 

なのはの言葉を聞いて、はやてとフェイトの目が点になる。

 

「「ええええっー!!」」

 

最初はなのはの言葉の意味を理解出来なかったが、徐々に彼女の言葉の意味を理解していくと思わず二人は声を上げる。

 

「ちょっ、ユーノ君とお付き合いって、それは一体どういう事やなのはちゃん!?」

 

「ユーノとお付き合いって‥‥それって、その‥男女の仲‥カップルって事!?」

 

「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて」

 

はやてとフェイトのリアクションに対してなのはは、事情を話す前にまずは二人を落ち着かせる。

 

「えっと、まずユーノ君が本局で起きたあの事件で生き残った後、無限書庫で一緒に働いていた人たちが事件に巻き込まれてしまって酷くショックを受けて‥‥」

 

「そりゃあ、自分だけ生き残ってしまってはなぁ‥‥グリフィス君はまだショックを受けているし‥‥」

 

「私もユーノの気持ち分かるわ」

 

母をあの事件で亡くしたグリフィスはまだあの事件の事を引きずっている。

 

家族を失ったのだから、分からない訳ではない。

 

フェイトもティアナと共に彗星帝国の宇宙艦船から乗艦していた次元航行艦が攻撃を受けて遭難した際も自分たちだけが生き残ってしまった事に罪悪感を覚えた事がある。

 

なので、フェイトにはユーノの気持ちは理解できた。

 

「それでユーノ君、職場と住む家を無くしちゃって‥‥ユーノ君、本局の中にあった居住地に家があって‥‥」

 

「ああ、そう言えばそうだったな‥‥」

 

「私もリンディ義母さんもそうだったよ」

 

はやてはクラナガンの住宅街に住居を構えていたが、ボラー連邦への武力制裁失敗の際、暴徒たちの手によって焼き討ちされてしまったが、今は再建されているが、フェイトはリンディと共にユーノ同様、本局内にあった居住地区に住居を構えていた。

 

しかし、ローレライの魔女の襲来によって本局が崩壊し、リンディとフェイトも住居を失ったので、クラナガンにあるマンションの一室を借りた。

 

もっともフェイトは今、港湾地区に停泊しているガイアの副長室を主な居住地としている。

 

「それで、私とヴィヴィオは教導隊の寮を出てマンションを借りて、そこのユーノ君を誘ったの‥あの時のユーノ君、放っておいたら何だか危ない様な気がして‥‥」

 

「なるほど」

 

「確かにグリフィス君もルキノが付きっきりやから、変な行動は起こしていないけど、確かに一人っきりやと何をするか分からんからな‥‥」

 

「それで、ユーノ君と一緒に住んで居てみて分かったんだ‥‥これまでユーノ君は友達だと思っていたけど、あの事件でユーノ君が死んじゃったと思った時、物凄く悲しかった‥‥でも、ユーノ君が生きているって分かってホッとしていた事‥‥憔悴していたユーノ君の姿を見ていて、『私が何とかしてあげないと』って思って‥‥それからかな、ユーノ君の事を友達じゃなくて、一人の男の人って意識し始めたのは‥‥」

 

「「‥‥」」

 

なのはの馴れ初めを聞いてはやてとフェイトは神妙な面持ちとなる。

 

友人として彼氏を持った事については祝いたい。

 

ユーノの人柄は自分たちも知っているし、この三人の中ではなのはがユーノと共にした時間が長い。

 

ただ、女としては友人に先を越された事に対する羨ましさがあった。

 

フェイト自身も何だかんだ言って彼氏持ちとなったなのはがちょっと羨ましかった。

 

「なのはちゃんは、その‥‥ゆ、ユーノ君と将来的に結婚しようと思っているんか?」

 

「う、うん。まだ付き合ったばかりだけど、ユーノ君が望むなら、私はユーノ君の御嫁さんになるつもりだよ」

 

「そ、そうか‥‥」

 

なのはから、ユーノと付き合う旨を聞いたはやてとフェイト。

 

なのはは、お付き合いの先も見据えていた。

 

「それじゃあね」

 

なのはが二人よりも先に喫茶店を後にした。

 

「‥‥なぁ、フェイトちゃん」

 

「ん?なに?はやて」

 

「フェイトちゃん、この後予定ある?」

 

「えっ?特にないけど‥‥どうして?」

 

「それじゃあ、ちょっとこの後、飲みに行かへん?」

 

はやてはフェイトを飲みに誘う。

 

「ま、まぁ、いいけど‥‥」

 

フェイトとしてもこの後は特に予定はなかったので、はやてからの誘いを受け、二人はとある居酒屋へと向かった。

 

そして二人が居酒屋に着くと‥‥

 

「うわぁぁぁぁぁん!!なのはちゃんの裏切りものぉぉぉぉぉぉー!!」

 

はやては号泣しながらジョッキに注がれた酒を一気に煽った後に絶叫する。

 

「ズルいでぇ!!なのはちゃん!!一人だけ、結婚前提の彼氏が出来るなんてぇー!!」

 

「まぁ、まぁ、落ち着いてはやて。なのはとユーノは私たちよりも長い付き合いなんだし、ユーノの人柄は良く知っているから、むしろユーノならなのはを任せても良いんじゃない?なのはの友達なら、羨むだけじゃなくてちゃんと祝福してあげないと」

 

「なんや、フェイトちゃんは随分と冷静やな。昔はなのはちゃんloveやったのに‥‥」

 

フェイトの指摘を受けてジト目で彼女に詰め寄るはやて。

 

「そりゃあ、私もなのはの話を聞いて、羨ましいと思いつつ寂しさもあったけど、いつまでも学生気分じゃあダメだよ。それに私は半ば結婚は諦めているしね」

 

「ええんか?フェイトちゃん。結婚を諦めるなんて‥‥フェイトちゃんほどの別嬪さんなら、引く手数多やろう?」

 

「結婚=絶対の幸せじゃないし、結婚をしないで仕事を頑張っている女性も居るし‥‥」

 

「フェイトちゃんは何や、やたらと物事を達観出来るようになったな‥‥」

 

フェイトの冷静な言動にはやては段々と酔いも醒めて来た。

 

「やっぱり、もう一つの地球での生活が大きな転換点になったのかな」

 

「もう一つの地球か‥‥」

 

確かにフェイトの言う通り、もう一つの地球での生活はフェイト、そしてティアナにとって人生の大きな転換点になったのだろう。

 

現にティアナはミッドチルダには戻らず、もう一つの地球への残留を希望したくらいだ。

 

「それで、はやてもなのはが羨ましいのなら、お見合いやマッチングサイト、結婚相談所でもいいから相手を探してみたらどう?」

 

「お見合いか‥‥」

 

聖王教会の弾圧があってから、はやての下には、教会関係者からのお見合い話は無くなり、代わりに管理局の様々な部署からの見合い話が舞い込んで来る。

 

しかし、はやてとしてはどうも踏み切れない。

 

それらの見合い話には権力の駆け引きが見え隠れしているからだ。

 

マッチングアプリや結婚相談所もいまいち信じられない所がある。

 

年齢問題も迫ってきているが、やはり女子としては運命的な出会いを期待してしまう。

 

「どうも、管理局関係の見合い話は将来の権力闘争に利用されそうで踏み切れないんや」

 

「あっ、それ分かる」

 

フェイトもはやて同様、管理局関係の見合い話には裏の目的がある様に見えており、基本的に断っている。

 

「でも、彼氏に結婚か‥‥そう言う意味では、ギンガも幸せそうだったな‥‥」

 

フェイトはボソッともう一つの地球に居るギンガが幸せそうに思えた。

 

ギンガの生存は自分とナカジマ家の中でもごく一部の人しか知らない極秘事項なので、ギンガがもう一つの地球で今、どんな風に暮らしているのかは想像するしかない。

 

「ん?フェイトちゃん、何か言った?」

 

フェイトの小言は、はやてに全て聞き取れなかったが、フェイトが何かを言った事は聞き取れた様だ。

 

「あっ、いや、もう一つの地球の話題が出てティアナはどうしているのかな?と思って‥‥」

 

フェイトはギンガの他に、もう一人、あの地球に残留したティアナも今、どんな生活をしているのか気になった。

 

「せやな‥もう一つの地球は、科学技術はミッドよりも進んでいるけど、やっぱ魔法は存在しない世界やし、魔導師として生きづらい世界やないといいけど‥‥」

 

「そうだね。でも、優しい人も多かったし、あの地球にいる時、ティアナも結構楽しんでいたし‥‥」

 

「そうなんか‥‥はっ!?まさか、ティアナ、もう一つの地球で彼氏を作っているんじゃあ‥‥」

 

「そ、それは分からないし、確認しようがないよ」

 

はやてはティアナも、もう一つの地球で彼氏が出来ているのではないかと勘繰る。

 

しかし、はやての勘はまさに的中しており、ティアナは彼氏どころか結婚をして旦那と息子も居るのだが、フェイトの言う通り、今の自分たちにティアナの現状を確認する術はなかった。

 

はやての自棄酒に付き合いつつ、フェイトは二人だけの飲み会を楽しんだ。

 

 

本局がローレライの魔女で崩壊した後、管理局の次元航行艦はミッドチルダの港湾地区にある港や空港の一部を貸し切りそこに停泊している。

 

フェイトが副長を務めるガイア、はやてが艦長を務めるジャガーノートも例外なく、港湾地区に停泊していた。

 

「‥‥」

 

フェイトはガイアの甲板から向かい岸の様子をジッと見つめている。

 

其処は現在、“海”が新たに本局を建設している土地で、旧機動六課隊舎跡地であった。

 

新暦75年四月に八神はやてが部隊長として一年の運用期限がある試験部隊であったが、同年の九月にスカリエッティの配下であるナンバーズと多数のガジェットの襲撃を受けて隊舎は大破し、はやては仮の隊舎として廃艦処分となった巡航艦アースラを臨時の隊舎として残りの期間を運用した。

 

機動六課の運用後、アースラは役目を終えて解体処分され、大破したままの機動六課の隊舎はそのまま廃墟として残されていた。

 

しかし、ローレライの魔女の襲来で本局が消滅し、“海”はこの事態を受けて、本局があった異次元空間ではなく、ミッドチルダ本土に新たな本局を建設する事を決め、旧機動六課隊舎跡地にその本局のビルを建設する事に決めた。

 

そして、現在旧機動六課隊舎跡地では何台もの工事車両が出入りをして、何台もの重機が新たな本局ビルを建設している。

 

機動六課稼働時には周辺はとても静かな環境であったが、今は工事車両の轟音が近くの港に停泊しているガイアまで聴こえる。

 

「フェイト、此処に居たのか?」

 

建設中の本局ビルをフェイトが見ていると、クロノが背後から声をかけてきた。

 

「あっ、クロノ‥‥」

 

「ん?建設中の本局ビルを見ているのか?」

 

「うん。機動六課の稼働時にはまさか、あそこが新しい本局になるなんて考えもしなかったよ」

 

「そうだな。僕もだ‥‥」

 

「工事はどれくらいかかるのかな?」

 

「そうだな‥“海”もあの時の頃とは違うからな‥‥」

 

機動六課稼働時、“海”の主な任務は他の管理世界の防衛、新たな管理世界に成り得る世界、ロストロギアの捜索が主な任務であった。

 

しかし、今の“海”はこれまでの任務の他に多数の次元航行艦を組んだ艦隊部署も設立されている。

 

なので、これらの部署を一つの庁舎ビルに入れるとすると、かなりの大きさになる。

 

それこそ、ミッドチルダの象徴ともいえる地上本部ビルよりも巨大な建物になりそうで、そんな巨大なビルを作るとすれば、建造年月もそれなりの年月になる。

 

「少なくとも五年くらいはかかるんじゃないか?」

 

「そっか‥‥」

 

「フェイト、任務が入った。ミーティングをするから来てくれ」

 

「分かった」

 

クロノがフェイトに声をかけたのはガイアに新たな任務が入ったからだ。

 

本局が崩壊したからといって“海”の仕事が無いわけではない。

 

本局が崩壊し、数多くの人命、次元航行艦を失う結果となってしまったからこそ、“海”はあまりにも多忙だった。

 

 

時空管理局所属 次元航行艦 ガイア ミーティングルーム

 

「今回、ガイアに与えられた任務は輸送船の護衛だ」

 

クロノがミーティングルームに集まった各部の長に今回の任務の説明をする。

 

「本局が崩壊し、管理局の力が弱まったという情報が流れ、次元の海では海賊やテロリストが民間の次元貨物船や次元客船、非武装の輸送船を襲撃する事件が多発している。次元の海の航路安全が確保されるまで、探査任務は無期延期とされ、我々探索部隊は当面、輸送船舶の護衛が主な任務となる」

 

「艦隊部署はそうした護衛任務は行わないのですか?」

 

チンクがクロノに質問する。

 

「よほどの事態が起きない限り、艦隊部署は引き続き艦隊編成と演習をするらしい」

 

輸送船船舶の護衛は基本、探索部隊所属の次元航行艦が行い、艦隊部署所属の次元航行艦はそう言った護衛任務は行らないが、よほどの事態‥‥護衛対象の輸送船舶の数が多い、探索部隊の次元航行艦が全て出払っている、一流の凶悪な海賊が潜む海域を航行する場合など、次元航行艦一隻で護衛を行う事に不向きな任務の時のみ、艦隊部署の次元航行艦は護衛任務に参加すると言う。

 

(なんだ?それは?職務怠慢ではないか?)

 

(ただでさえ、次元航行艦の数が不足しているというのに、稼働できる艦船の数を制限させる程の余裕が今の管理局にあると思っているのか?)

 

チンクはクロノの説明を聞き、管理局の次元航行艦の数が限られている中、艦隊部署の次元航行艦は理由が無い限り、動かずにいる。

 

逆に探索部隊所属の次元航行艦はほぼフル稼働状態‥‥

 

乗員の休息や船体の整備・補給などの行動を探索部隊は取るなとでも言う命令にチンクは内心呆れる。

 

「それで、護衛対象とその行き先の情報は?」

 

レイセンが今回の護衛対象の情報を求める。

 

「護衛対象は‥‥」

 

クロノは今回、ガイアが護衛する輸送船舶の情報を共有する。

 

「‥‥以上だ。出航は明日の0600時だ」

 

ミーティングを終え、ガイアの乗員たちは明日の任務のため、出航準備に取り掛かった。

 

そして翌日、ガイアは予定時間にミッドチルダを出航し、途中でとあるスペースコロニーにて、護衛対象の輸送船舶と合流し、目的地へと向かう。

 

その最中、一隻の大型輸送船に対して一隻の巡航艦に五隻の次元警邏艦を護衛している光景を目にする。

 

「随分と護衛している艦の数が多いな‥‥見た所、管理局所有の輸送艦の様だな」

 

「あれだけの護衛をつけているって事はあの船の積み荷はよほど大事な積み荷ってことだよね?」

 

「でも、護衛に就いているのが巡航艦と警邏艦って、艦隊部署はやっぱり、けち臭いな」

 

護衛の数から輸送船舶の積載物の重要性を理解でき、単艦ではない所を見ると、艦隊部署の艦がわざわざ護衛を務めているのだろうが、その戦力が次元航行艦ではなく、巡航艦と警邏艦ばかりと言う所を見ると、戦力を出し渋ったのかもしれない。

 

そう言う点を見ると、やはり艦隊部署の任務への真剣さの欠如が窺える。

 

「艦長、輸送船舶の出航準備が整いました」

 

「よし、出航だ」

 

ガイアは護衛対象の輸送船舶と共に目的地へと向かった。

 

「‥‥」

 

航行中、フェイトは最近起きているとされる海賊の襲撃事件について調べていた。

 

(襲撃されている輸送船舶は主に管理局所有の輸送艦、それに民間では‥‥ホーリーラインズ社所有の貨物船に客船が多く狙われている‥‥)

 

(管理局は兎も角、民間ではこのホーリーラインズって会社の船が被害にあっている‥‥どうしてだろう?)

 

次いでフェイトは民間企業で多くの被害を受けているホーリーラインズ社について調べる。

 

(なるほど、次元海運会社でホーリーラインズ社は一番多く次元航行船を所有しているからか‥‥)

 

民間企業で多くの被害を受けている理由はホーリーラインズ社が他の次元海運会社よりも次元航行船を多く所有しており、所有する船舶が多ければ、確かに運行している船も多いので、被害に遭う確率は高くなる。

 

しかし、それでもどこか不自然さを覚える。

 

(元々は中古の次元航行船三隻の小さな会社だったのが、短期間で大きな会社へと変化している‥‥)

 

(いくら、社長や社員が優秀でも会社の成長速度があまりにも早すぎる‥‥)

 

(ん?この会社、管理局からの依頼もかなりの数を受けているんだ‥‥)

 

会社のホームページの取引先企業・組織の中に『時空管理局』と書いてあり、実績でも管理局からの依頼数が多かった。

 

(成長速度は管理局が依頼をたくさんしているから?)

 

戦力が低下し、管理局員が不正・汚職をしてもやはり次元世界では『時空管理局』のネームバリューは健在で、そんな管理局の御用達の会社とくれば、世間からの信用も自然と高くなり、他の会社もこのホーリーラインズ社に荷物の輸送を依頼してくるようになり、会社の売り上げ、規模は大きくなり、増え続ける依頼を賄うために所有する次元航行船も増えて行く。

 

管理局がこの会社の発展に貢献し、次元航行船も融通したのかと思いつつ、自分たちが今行っている仕事に集中する事にした。

 

ガイアと輸送船舶がコロニーを出て数日、海賊の襲撃もなく平穏な航海が続いていた。

 

「今回は海賊の襲撃はなさそうだな」

 

「艦長、それは目的地に着いてから言ってください。まだ仕事中なんですから」

 

平穏な航海が続いている為か、クロノは若干緊張感が緩んでいた。

 

そこをフェイトが窘める。

 

「そ、そうだな。すまない」

 

海賊たちも護衛初日よりも何日間か日を開けて、護衛の気が緩んだ時期に襲撃をかけてくる。

 

「っ!?艦長、レーダーに反応!!」

 

「なにっ!?方位測定!!」

 

「了解」

 

フェイトがレーダーにあった反応を探る。

 

「三時の方向、上方十五度から接近‥‥このまま航行を続けますと、互いに航路が交差します」

 

「‥相手の映像を捕捉できるか?」

 

「光学映像最大スコープで表示します」

 

ガイアの艦橋にあるメインモニターには一隻の次元航行船の映像が映し出される。

 

「次元航行船?」

 

「いや、そう見えるだけで、海賊の偽装とも考えられる。船体識別コードの確認。通信長は相手の船に船籍、積載物、目的地の詳細について交信し確認せよ」

 

「は、はい」

 

海賊の活動が横行する中、護衛無しで非武装の次元航行船が一隻で航行するのは不自然に見えた。

 

「船体識別信号、確認できません」

 

「通信も応答がありません」

 

「ますます怪しいな‥‥」

 

あまりにも基本的すぎる不審船にクロノは接近する次元航行船が海賊の偽装船だと判断する。

 

「総員戦闘配置。護衛対象の輸送船舶にも警告を送れ」

 

「了解」

 

不審船、ガイア、護衛対象の輸送船舶の距離は徐々に近づく。

 

「航海長、本艦を輸送船舶の前に‥‥戦術長は火器を敵のジャミングに備え、マニュアルモードに変更」

 

クロノは不審船の敵対行動にいつでも対処できるように戦闘準備を行いつつ護衛対象の輸送船舶が被害を受けぬようにガイアを輸送船舶の前面に展開させた。

 

やがて、不審船も目視確認距離まで接近し、ガイアの正面に来た。

 

「不審船まもなく、目視確認距離」

 

「不審船より発光信号を確認。内容は‥‥遭難信号です」

 

「あの船の海賊は昨日、今日で海賊稼業でも始めた新人海賊か?あまりにも教科書通りの襲撃のやり方すぎる」

 

遭難信号を送っているのも自分たちの船に異常が起きて、船舶識別信号も通信も送れる状況下ではない事を相手に伝え油断させる手段の一つだと教えている様な仕草だ。

 

そんな不審船の態度にチンクは呆れつつ照準を不審船に向けてロックする。

 

万が一、相手に先手を取られてもガイアの装甲ならばたいしたダメージはないと踏んでいる。

 

「艦長、不審船に変化が!!」

 

「やはりな‥‥」

 

不審船の船体からは何門もの砲塔が船体の中から出て来た。

 

この不審船自体も相手を油断させるために武装は船体に格納するタイプの改造船だった。

 

「不審船、速度をあげて接近!!」

 

「不審船発砲!!」

 

「輸送船舶へ現海域からの離脱を指示、戦術長相手から情報を得たい。なるべく撃沈しないようにしてくれ。相手の足と攻撃手段を奪え」

 

「了解」

 

ガイアは不審船の攻撃をものともせず、護衛対象が戦闘空間から離脱するまでの時間を稼ぐための楯となる。

 

「ジャスティス・カノンの出力を下げて‥‥この部分に打ち込めば、大丈夫だろう」

 

その間、チンクは相手を沈黙させるためにジャスティス・カノンの調整と照準を合わせる。

 

「輸送船舶は?」

 

「敵砲の射線軸から退避完了しました」

 

「よし、戦術長。攻撃開始!!」

 

「ジャスティス・カノン発射!!」

 

ガイアから不審船に向けてジャスティス・カノンが発射されて見事命中。

 

しかも予め出力を調整されていたので、不審船を撃沈することなかった。

 

「不審船、沈黙。エネルギー系統にダメージを負った模様」

 

「周囲に居る管理局の次元航行艦に連絡。不審船と乗員の拿捕を依頼」

 

ガイアはまだ護衛任務の最中なので、不審船の臨検を行う時間的余裕がなかったので、不審船の臨検は他の次元航行艦に任せる事にした。

 

不審船の対処で多少時間をロスしたが、護衛対象は無事だったので、現場に他の次元航行艦が到着次第、航海を再開するガイアであった。

 

ガイアが不審船の対処を行っているその頃、別の宙域では‥‥

 

宇宙空間‥管理局で言う次元の海を一隻の大型輸送艦、周囲に管理局の巡航艦と警邏艦が陣形を組んで航行していると、

 

『船団に告ぐ、停船せよ、停船せよ。此方の指示に従わぬ時は攻撃する』

 

「艦長、停船命令が‥‥」

 

「なにっ!?何処からだ?」

 

「六時方向より、所属不明艦接近!!」

 

『船団に告ぐ、停船せよ、停船せよ。此方の指示に従わぬ時は攻撃する』

 

再び停船命令がくる。

 

「全艦、戦闘用意」

 

輸送艦を護衛している管理局の巡航艦、警邏艦は戦闘態勢をとる。

 

「ジャスティス・カノン発射準備!!」

 

『船団に告ぐ、停船せよ、停船せよ。此方の指示に従わぬ時は攻撃する』

 

三度停船命令が来るが、管理局の艦はソレを無視して、自分たちに近づいて来る不明艦に向けてジャスティス・カノンの砲口を向ける。

 

「撃て!!」

 

『撃て!!』

 

管理局の艦と不明艦が撃ちあう‥‥

 

 

ガイア 艦橋

 

「艦長、あと三十分で引継ぎの次元航行艦が到着します」

 

「よし‥報告書はもう作成して有る。あとは到着した艦に渡せば‥‥」

 

クロノが着々と引継ぎ準備をしていると、

 

「艦長、救難信号を受信しました!!」

 

今度は偽装ではなく、本物の救難信号をガイアは受信した。

 

「スピーカーに繋げ!!それと発信源も探知!!」

 

「は、はい」

 

ミリアリアは受信した救難信号をスピーカーに繋げ、同時にこの救難信号がどこから発信されているのかを探知する。

 

『‥‥デー‥‥メー‥‥こち‥ら‥‥輸送‥艦‥‥げんざ‥‥海賊‥‥襲撃‥‥受け‥‥護衛‥‥は‥‥滅‥‥メーデー‥‥本艦の位置‥‥メーデー‥‥メーデー‥‥』

 

スピーカーからは輸送艦の通信士の悲痛な救難信号の声が響く。

 

「発信地点判明しました」

 

ミリアリアはクロノにこの救難信号が何処から発信されているのかを報告する。

 

「此処から現場までの距離は?」

 

「約九時間かかります」

 

「九時間‥‥」

 

襲撃されている事からどんなに急いでも間に合わない。

 

「艦長、襲撃を受けている輸送艦ですが‥‥」

 

ミリアリアが更に情報を調べると、現在海賊の襲撃を受けている輸送艦について調べる。

 

それはガイアがミッドチルダを出航する際に見た護衛を複数組んでいたあの輸送艦であった。

 

「あの艦か‥‥」

 

「でも、あの輸送艦には多数の護衛が就いていた筈だが‥‥」

 

次元航行艦ではないが、巡航艦に複数の警邏艦があの輸送艦には護衛として手配されていた事をクロノはミッドチルダで見ている。

 

(複数の海賊が徒党を組んで襲撃してきたのか?)

 

護衛が多数ついていたので、海賊も多数で襲撃をかけてきたのかとクロノは予測する。

 

「艦長、救助は?」

 

フェイトは襲撃を受けている輸送艦の救助に向かうのかをクロノに訊ねる。

 

「い、いや、無理だ‥‥時間的に物理的にも‥‥」

 

此処から現場までどんなに急いでも間に合わない。

 

通信の内容も妨害電波が出ているのか所々音声がとんでいる。

 

その中でも護衛の艦が既に壊滅しているような単語も聞き取れた。

 

それに自分たちにはまだ護衛している輸送船舶を目的地まで安全に連れていくという任務がある。

 

状況的にどう転んでも、頑張っても今、襲撃を受けている輸送艦への救助には行けなかった。

 

『メーデー‥メーデー‥‥メー‥‥‥』

 

その間も輸送艦は海賊からの襲撃を受けていたのだろうが、輸送艦からの救難信号は途絶えた。

 

「「「「「‥‥」」」」」

 

ガイアの艦橋に居た者たちは輸送艦がどうなったのかを察した。

 

その輸送艦に乗艦していた乗員たちの末路も‥‥

 

「か、艦長‥引継ぎの次元航行艦が到着しました」

 

重苦しい空気の中、ミリアリアが援軍の到着を確認し、報告する。

 

「そうか‥‥分かった」

 

クロノは到着した次元航行艦に後の処理を任せ、護衛対象の輸送船舶と共に現宙域を離脱した。

 

その後は海賊の襲撃もなく、ガイアは無事に護衛対象の輸送船舶を目的地に送り届けた。

 

しかし、重苦しい空気は変わらず残っていた。

 

ガイア艦内の食堂でフェイトはミルクティーをスプーンでかき混ぜながら輸送艦を救えなかった事、クロノが半ば海賊に襲われている輸送艦を見捨てた事への葛藤を抱いていた。

 

そこへ、

 

「フェイト、大丈夫か?」

 

チンクが声をかけてきた。

 

「う、うん‥‥」

 

声をかけられてフェイトは慌てて顔をあげるが、その顔色は優れない。

 

「やはり、さっきの事か?」

 

「うん‥‥」

 

「‥‥分かっている。艦長は半ば輸送艦を見殺しにしたかもしれないが、一番悔しい思いをしているのは艦長だろう。助けを求めている者に救助の手を差しのばすことが出来なかった悔しさ、結果的に輸送艦の乗員を見殺しにしてしまった悔しさを抱いたが、艦長にはこの艦の乗員、そして護衛していた輸送船舶の安全を守る義務があった」

 

「‥‥」

 

「あの状況で護衛対象がいなければ、艦長は例え間に合わなかったとしてもガイアを現場に向かわせていただろう。しかし、あの時はガイアの他に守らなければならないモノがあった。艦長として任務を途中で放棄して、その護衛対象を危険に晒す事は出来なかったんだ。フェイト‥いつか、お前もはやての様に艦を指揮する時、この様な状況にならないとは言い切れない筈だ」

 

「‥‥」

 

フェイトはチンクの言葉を黙って聞いている。

 

フェイト自身、感情に任せてクロノを責めはしなかった。

 

それはチンクの言う事が決して間違っていないからだ。

 

そして、フェイト自身も内心ではクロノの行動に間違いがないと思っていたからだ。

 

「時には苦渋の決断を下さなければならない。それが艦長なのだろう」

 

「うん‥そうだね‥‥」

 

今回の任務は成功したのだが、どこか苦い経験を残した航海となった。

 

護衛対象の輸送船舶を無事、目的地に送り届けたガイアは次の航海のために急ぎ補給と補修が行われた。

 

その最中、クロノは輸送艦を襲撃してきた海賊についてその後、分かったことが無いかを本部に訊ねる。

 

すると、彼らは闇バイトで集められた素人集団であることが判明した。

 

(やはり、素人だったか‥‥襲撃のセオリーが教科書通りみたいだったからな‥‥)

 

しかし、依頼者についてはいくつものブローカーを通じ、しかも連絡を取るアプリがタイマーによって自動消去される仕組みになっており、彼らを雇った黒幕にたどり着くのは時間がかかるか、事実上不可能に近かった。

 

そしてもう一つ、クロノは多数の護衛をつけていたにもかかわらず、輸送艦を襲撃した海賊についても問い合わせた。

 

予想通り、船団は護衛艦部隊を含めて全て全滅し、生存者はゼロだった。

 

現場へ救援に向かった次元航行艦の調査では、運よく一つのブラックボックスが損傷なく回収出来、解析が行われた。

 

その結果、驚愕の事実が判明した。

 

クロノは多数の護衛をつけていた輸送艦を襲撃して来たのだから、海賊も徒党を組んで襲撃してきたのかと思った。

 

しかし、襲撃してきた海賊は一隻だった。

 

そして、襲撃してきた海賊は‥‥

 

「こ、この艦はっ!?」

 

襲撃者の艦の姿を見て、クロノ思わず声をあげる。

 

「し、シーマ・ガラハウ‥‥奴があの船団の襲撃者だったのか‥‥」

 

船団を襲撃して来た海賊船は数年前、コロニーから奪われたあの戦艦であった。

 

そして、その艦を奪っていたのが、他ならぬシーマ・ガラハウだった。

 

「となると、今回、ガイアを襲撃してきたあの素人海賊はシーマの手下?いや、あの時の戦闘のやり口を見る限り、シーマの手下があんな素人なわけがない‥‥」

 

ガイアは新造艦奪取の際、シーマの手下と一戦交えた事がある。

 

結果的にシーマの手下を撃破する事は出来たが、その時の戦闘と今回の戦闘では戦場の違いがあるものの、乗員のレベルは段違いであった。

 

そうなると、今回ガイアを襲撃して来たあの海賊がシーマの手下とは思えないが、

 

(まさか、シーマは海賊の育成を行っているのか?)

 

海賊事件全ての黒幕にシーマが関わっているとは思えないが、やはりシーマが別件とは言え、海賊事件にシーマが関わっているとなるとそう思えてしまう。

 

それはクロノ以外の管理局員もきっと同じ思いを抱くだろう。

 

(シーマは我々がガイアを使いこなしていくように、着実にあの艦を使いこなしていると言う事か‥‥)

 

シーマがあの艦をコロニーから奪ってから数年の月日が経っている。

 

自分たちがガイアの取り扱いに慣れてきている様にシーマもあの時、コロニーから奪った艦を使い慣れてきている。

 

(今後の任務の最中で、シーマと遭遇した場合、苦戦が予想されるな‥‥)

 

船団がシーマに襲撃された事で、ガイアも今後の任務の最中で、シーマと遭遇しないとは絶対に無いとは言いきれない。

 

もしも任務の最中にシーマと遭遇したらどう対処すべきだろうか?

 

今回の件はクロノの‥いや、管理局の新たな悩みの種が芽となって発芽がした証明となった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
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