星の海へ   作:ステルス兄貴

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今作では、水惑星アクエリアスは地球ではなく、ミッドチルダへと向かっている展開となっております。


二百四十九話 異変 ミッドチルダside

 

 

煌めく星々‥‥

 

この無限に広がる大宇宙には数々の命が生きづいている‥‥

 

そして、それらの命の誕生には宇宙の巨大な神秘と自然の摂理がある。

 

地球、そしてミッドチルダ‥‥いや、生命が存在している星々全てがその例外ではない。

 

全ての次元世界の基点とされるミッドチルダも何十億年もの大昔‥星として生まれたばかりの頃は、魔法はおろか、生命も存在しておらず、地表にはゴツゴツとした岩とドロドロとした灼熱の溶岩しかなかった。

 

そんなミッドチルダが生まれて間もない頃、遥か彼方の宇宙から回遊して来た水の惑星アクエリアスがまだ命を持たぬミッドチルダの直ぐ傍を通った‥‥

 

その時、引力の干渉によってミッドチルダに水を齎した。

 

アクエリアスから齎された水には命の芽が含まれていた‥‥

 

命の芽はやがて、バクテリアから魚類、両生類、爬虫類、哺乳類へと進化して行き、ミッドチルダに生命と魔法を生み出した。

 

しかし、管理局はおろかミッドチルダに居る人たちは生命の誕生にこの水惑星アクエリアスが関わっているなんて、知る由も無かった。

 

だが、管理局‥ミッドチルダに居る人たちは生命の誕生の起因を知る事となる‥‥

 

水惑星アクエリアスは現実に姿を現し、ミッドチルダへと接近しつつあった。

 

当然、管理局を始めとしてミッドチルダに居る人々はこの事実を知らなかった。

 

ミッドチルダの人々が水惑星の接近を知らない中、銀河系中心部では、突如出現した小宇宙‥いや、もう一つの星系の出現で、銀河系中心部‥核恒星系の辺りにて、多くの星々の衝突が起きていた。

 

核恒星系内にあるデスラー総統のガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦は‥共に壊滅の危機を迎えていた。

 

銀河系で異変が起きている中、管理局が認知している空間でも異変が起きていた。

 

大小規模の次元震が頻繁に起こっていたのだ。

 

このような異変は管理局が創設してから初めて見る現象であり、民間の次元航行船運行会社はただでさえ海賊の襲撃被害が多い中、次元震が頻繁に起こるようではおちおち船を出す事も出来ない。

 

ローレライの魔女で本局が壊滅し、転送ポートが使用できない以上、他の世界へ向かうには現状、次元航行船でしか移動手段がない。

 

管理局としてはこの次元震が頻繁に起こる原因を突き止めて対処しなければならない。

 

海賊と次元震の影響で民間の次元航行船はほとんどが運休となり、管理局の次元航行艦も民間船舶や輸送艦の護衛任務が減ったので、探索部隊の次元航行艦はこの頻繫に起こる次元震の解明のためにミッドチルダを出航する事となった。

 

その調査の中にはクロノが艦長を務めるガイアも含まれていた。

 

そして、調査とは別であるが、はやてが艦長を務めるジャガーノート以下、巡航艦三隻、警邏艦四隻も即応部隊としてミッドチルダを出航する。

 

ミッドチルダを出航してから数日間、調査に出た他の次元航行艦からは、

 

『この座標にて、次元震を確認』

 

『此方の座標に次元震の兆候あり』

 

と、次元震の情報が入る。

 

しかし、次元震の影響なのか通信にはノイズが入っており、いずれはこう言った情報が入りにくくなるかもしれない。

 

「どうして、此処まで次元震が頻繫に起こっている?この次元の海で一体何が起こっているんだ?」

 

次元震が起きた、もしくは次元震が起こる兆候がある座標を見てクロノは呟く。

 

この次元震の影響は今、銀河系で起きている銀河交叉による影響であり、この銀河交差が起きた原因‥‥それは管理局の次元航行艦がこれまで行っていた次元転移が原因であった。

 

そもそも管理局が認知している地球は二つ‥‥

 

この広大な宇宙ならば、地球に似た星があっても不思議ではない。

 

実際にミッドチルダの環境は魔法の存在を除けば地球と似ている。

 

だが、管理局は二つの地球を認知している。

 

二つの地球の歴史、地理もほぼ同じ流れを辿っている。

 

そんな偶然は決してあり得ないとは言い切れないが、確率は物凄く零に近い。

 

つまり、管理局は自分たちも知らぬ間に次元の壁を越えて平行世界を行き来していたのだ。

 

その平行世界の行き来が長年の間、空間に大きな負担をかけており、この年に等々限界を越えてしまい空間の接点がねじ切れてしまい爆発、巨大な次元震を引き起こし、もう一つの銀河系を別次元の空間に次元転移させてしまった。

 

今回の銀河系交叉はその結果起きた言わば人災のようなものだった。

 

しかし、管理局、地球連邦、ガルマン・ガミラス、ボラー連邦はその原因を知る由もなく、自然に起きた大災害として認知していた。

 

そして、もう一つの銀河系の次元転移にける影響の余波がミッドチルダ周辺にも影響を与え、大小規模の次元震を頻繫に引き起こしていた。

 

もう一つの銀河系が次元転移を完全にしたので、この次元震の影響は時間が経てばいずれは収束するが、それがいつなのかを管理局は当然理解していない。

 

「そもそもだが、艦長。次元震の発生原因を調査すると言うが一体何処へ向かえばいいのだ?」

 

操縦席のレイセンがクロノに目的地を訊ねる。

 

「それが分かれば苦労はない」

 

次元震は頻繫に起こっているとは言え、あちこちで不定期に起き、その規模も大小と様々で、まるで共通点がない。

 

人工的に引き起こされた形跡もない事から、これらの次元震は全て自然に起きている。

 

しかし、自然に起きていると言う事は何かしらの原因が有る筈だ。

 

その原因を調査するためにこうしてミッドチルダを出航したのだが、次元震発生の原因の根源となっている場所が分からない以上、こうしてあてもなく航海するしかない。

 

そんな中、突如ガイアの至近距離で次元震が引きおこる。

 

「っ!?次元震反応!!極めて至近です!!」

 

「なにっ!?そんな兆候は見られなかったぞ!!」

 

「ですが、次元レーダーには今まさに次元震の反応があります!!」

 

「くっ、緊急次元転移だ!!急げ!!報告は後で良い!!座標設定もしなくていい!!」

 

「だが、艦長。座標設定なしで次元転移何てすれば、どこに出るのか分からないぞ。もしも、危険な場所だったら‥‥」

 

「その時はその時に考えればいい!!今は一刻も早く此処から逃げる事だけを考えろ!!」

 

「りょ、了解」

 

至近距離での次元震に巻き込まれでもしたら、その衝撃で艦がバラバラになる。

 

クロノは座標設定なしでの次元転移を命じる。

 

しかし、レイセンはそのリスクをクロノに伝えるが、彼は次元震が迫っている現状、悠長に座標設定を行っている余裕などない。

 

クロノの圧におされてレイセンは座標設定を無しに次元転移を行い、ガイアは間一髪で次元震に巻き込まれることなく、回避した。

 

 

ガイアが次元転移した少し前、ディンギル星系と呼ばれる管理局、地球連邦、ガルマン・ガミラス、ボラー連邦も発見していない星系の中にある第四惑星のディンギル‥‥

 

そのディンギル星に危機が迫っていた。

 

ディンギル星の近くに突如回遊惑星が姿を見せたのだ。

 

回遊惑星は光速の二分の一の速度でディンギル星へと接近した。

 

そして、ディンギル星と回遊惑星の引力が干渉しあって、回遊惑星からは巨大な水柱がディンギル星へと向かい、大粒の雨がディンギル星に注いだ。

 

あまりにも大量の水を浴びたディンギル星は海水の量が急激に上がり、平地を次々と水没させていく。

 

水没していくディンギル星‥‥

 

そんな中、都市部の一部が突如浮き上がり、ディンギル星全体を覆う分厚い雨雲を突き破って、何処かへと飛び去って行った‥‥

 

このディンギル星の至近距離に現れた回遊惑星こそ、水の惑星アクエリアスであり、ディンギル側がアクエリアスを観測する間もなく、水没を許してしまったのは、アクエリアスがディンギル星の至近距離に突如として出現した事だった。

 

銀河系で起きている銀河交叉とミッドチルダ周辺で頻繫に起きている次元震‥‥

 

それらの宇宙災害に宇宙を回遊しているアクエリアスも巻き込まれ、ディンギル星の至近距離にワープアウトした事で、ディンギル側はアクエリアスの発見が遅れて何の対処も出来ぬまま水没する事態となったのだ。

 

そんなディンギル星の近くにガイアは次元アウトした。

 

 

次元アウトしたガイアの艦橋は静かで航海計器のメーターが光っているだけだ。

 

艦橋ではクロノ、フェイトをはじめ全員が意識を失い座席から放り出されている者もいた。

 

やがて眼を閉じていたフェイトの目蓋がピクッと痙攣するように動くと、ゆっくりと目蓋が開かれる。

 

両眼を開いたフェイトの視界には天井がぼんやりと見えていたが、次第に焦点があってくる。

 

フェイトが上半身を起こした時、背中を中心に身体にズキッとした痛みが襲い掛かって来る。

 

「いたっ!!」

 

次元震から逃れるためにいきなりの次元転移をしたその衝撃で座席から放り出されて身体を打ったみたいだが、骨折などの負傷はなさそうだし、決して我慢できない痛みではない。

 

周囲を見渡すと皆は、まだ意識を失っている。

 

(まぁ、あの状況じゃあ無理もないよね)

 

フェイトは起き上がり、航海長のレイセンの肩を揺する。

 

レイセンをまず起こそうとしたのは、艦の操艦もあるし、なによりも彼女は寝起きが悪いからだ。

 

艦を操艦する航海長がいつまでも寝てもらっては困る。

 

「航海長、航海長、起きて」

 

「うーん‥‥あと三十六時間‥‥」

 

「それじゃあ、困るよ!!今すぐ起きて!!」

 

先程よりも強く揺すって無理矢理レイセンを起こすフェイト。

 

「う、うーん‥‥ふ、副長?」

 

そして、ようやく目を覚ましたレイセン。

 

「航海長、怪我はない?大丈夫?」

 

「背中が痛いが特に怪我はなさそうだ」

 

レイセンもフェイトと同じく背中から倒れたみたいで、背中に打ち身のダメージはあるが、彼女も骨折等の大怪我はしていないみたいだ。

 

「私は他の皆を看るから、航海長は操艦と現在位置の確認をして」

 

「了解だ」

 

のっそりと起き上がったレイセンは早速現在位置の特定にはいる。

 

フェイトは艦橋の床に倒れている乗員を起こし始める。

 

目が覚めた後もしばし呆然としている。

 

「どうやら助かったみたいだな‥‥」

 

クロノも起き上がり、現状を確認し、此処があの世ではない事を実感する。

 

「うん。緊急次元転移は成功したみたい」

 

「それで、此処は何処なんだ?」

 

「今、航海長が調べている」

 

「他の部署の被害は?」

 

「そっちも今、確認しているよ」

 

「艦長、副長、近くに惑星がある」

 

現在位置の特定をしていたレイセンがガイアの近くに星がある事を報告する。

 

モニターには灰色の密雲にすっぽりつつまれた一つの惑星の姿が映る。

 

この惑星こそディンギル星である事を当然、クロノたちは知る由もない。

 

「現在位置もかなりの遠方に来たみたいだ。座標が特定できない」

 

ディンギル星系には管理局がこれまで辿り着いた星系ではなく、ガイアが初めて足を踏み入れた星系であり、ガイアにとって未知の領域だった。

 

「次元震の原因‥と関係なさそうだが、念のため探査してみよう」

 

どうみてもこの星が次元震の原因とは言えない。

 

しかし、眼前の星が有人惑星だった場合、その星の文明レベル、魔法の有無だけでも確認しようとした。

 

ガイアは前方の惑星に接近し、地表の様子を探査する。

 

そして、モニターに惑星の様子が映し出されるとクロノたちは絶句する。

 

「なっ!?」

 

「なにこれ‥‥」

 

映し出された映像はまさにパニック映画さながらの様子だった。

 

すさまじい滝の様な豪雨が降り、地表は海のように大洪水で水没している。

 

「凄いスケールの洪水だ‥‥ミッドや管理世界じゃあ、考えられない規模だ」

 

チンクもこの惑星の現状に息を呑む。

 

「よほど異常な気象変動が起きたのだろうが、これほどの規模の気象変動が起きるとは‥‥それともこれほどの規模の気象変動がこの世界では当たり前なのか?」

 

しかし、眼前にある惑星はこれまで管理局でも確認されていない惑星の気象なので、もしかしたら異常気象とも呼べるこの気象が前方の惑星で起こる通常の気象とも言える。

 

「艦長、惑星地表に人工物らしき建造物を発見」

 

「住人の姿も確認できます」

 

映像の中には明らかに人工物らしき建造物も見えるが、それさえも殆どが水没している。

 

建物にはこの星の住民らしき人の姿もあるのだが、津波に飲み込まれ、助けを求めるかのような仕草をとりつつ虚しく流されていく。

 

この映像を見る限り、この異常気象が眼前の惑星で起きる通常の気象現象とは異なり、文字通り突然起きた異常気象だと誰もが悟った。

 

地球で伝えられている旧約聖書の中にある『ノアの箱舟』‥その話の中で起きた大洪水もきっと眼前の惑星で起きている異常気象と同じ様な大洪水なのだろう。

 

ノアの箱舟では、ノアとその家族、多種の動物を乗せて大洪水の災害から免れることが出来たが、眼前の惑星の住人たちにはその箱舟がなく、水流に成す術なく流されていく。

 

「艦長、前方の世界への降下を具申します」

 

「あの世界にか?」

 

「はい。例え、未確認の世界であっても溺れている人々を見捨てるのは、人の道として外れているのではないでしょうか?それに救助が出来れば、あの世界についての情報も得ることが出来ます」

 

「‥‥」

 

眼前の惑星に住む人々が水に流されていく映像を見て、フェイトはクロノに救助作業を具申する。

 

フェイトの言う事は間違ってはいない。

 

だが、あの豪雨と洪水の中での救助作業はあまりにも危険だ。

 

クロノはモニターを険しい表情で見ながらどうしたものかと考える。

 

そんな中、母親らしき女性が自分の子供を抱きしめながら洪水から逃げている姿が目に映る。

 

クロノ自身、妻と子がいるので、決して今の光景が他人事とは思えなかった。

 

「分かった‥航海長、前方の世界に前進」

 

「りょ、了解」

 

クロノは前方の惑星に住む住民の救助を決めるとレイセンは注意深くガイアを前進させる。

 

ガイアは惑星を覆っている灰色の密雲の中へ降下して行き、たちまちガイアの姿は密雲の中に入り宇宙空間から見えなくなった。

 

惑星の大気圏の中も分厚い雲で覆われており、やっと雲を抜けるとバケツをひっくり返したような豪雨がガイアの船体を打ち付ける。

 

雷も鳴り響き、風も吹き、ガイアの船体が時折揺れる。

 

「航海長、艦の安定を保て」

 

「わ、分かっているが、この風でなかなか安定しない‥‥」

 

レイセンは必死に艦を安定させようと奮戦する。

 

「あっ、あそこに人の姿が確認できます」

 

モニターには都市部の建物もほとんどが水没し、僅かに見え隠れする建物の上部で懸命に助けを求める人の姿が認められた。

 

それは神殿か寺院らしき奇妙な形をした塔で、バルコニーらしき場所で数十人の人が確認できる。

 

「内火シャトル発進準備」

 

「艦長。私が指揮をとります」

 

「えっ?副長が!!」

 

救助にフェイト自らが行くと言い出した。

 

それに対してクロノは驚愕する。

 

「この世界の救助を具申したのは私です。ならば、救助には私が行きます」

 

そう言ってフェイトは艦橋を駆け出し、内火シャトルがある格納庫へと向かった。

 

搭乗員が集まると豪雨の中、内火シャトルはガイアを発進し、救助へと向かう。

 

人々が居るバルコニーに内火シャトルを横付けするが、豪雨と風、波の影響で内火シャトルが安定しない。

 

「バルディッシュ」

 

フェイトはバルディッシュを起動させてバリアジャケットを纏うと内火シャトルの外に出て直接救助へと向かう。

 

内火シャトルからもロープが出される。

 

フェイトはまず、子供を抱えている女性を子供と共に抱き上げて空を飛び内火シャトルへと運ぶ。

 

再びバルコニーへと行くと、フェイトが空を飛ぶ姿を見て、ロープにつかまって救助されるよりも確実だと思った人々が他者を押しのけながらフェイトに殺到して来る。

 

「ちょっ、ちょっと落ち着いて!!」

 

流石のフェイトも一度に何人もの人を抱き上げて内火シャトルへ運ぶのは出来ない。

 

(こんな時、スバルかノーヴェが居てくれたら‥‥)

 

スバルとノーヴェの魔法の一つ、ウィングロード、エアライナーがあれば、救助活動はもう少しスムーズに出来たと思うフェイトであった。

 

しかし、この魔法はほぼ唯一無二の魔法と言っていい程、希少な能力の魔法であり、ミッドチルダをはじめとして管理局が把握している管理世界でもスバルとノーヴェ以外確認されていない。

 

内火シャトル内のガイアの乗員で空戦属性を持っているのはフェイトだけだったので、フェイトはできる限りの人数を抱えて空を飛んでの救助を行うが、豪雨と水流はフェイトの体力を物凄く奪っていく。

 

新暦71年に起きた空港火災でギンガを助けた時とは状況が違い過ぎる。

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」

 

息も絶え絶えでありながらもフェイトは再び外に出て救助活動を再開しようとする。

 

そこへ、

 

「副長、あとは我々に任せて、少し休まれては?」

 

シャトルの乗員がフェイトを気遣い休むように進言する。

 

「う、ううん‥‥まだ‥‥まだ、助けを求めている人が‥‥」

 

「ですが、副長が途中で倒れられては折角の要救助者も副長も波に飲み込まれてしまいます。そうなっては意味がありませんよ」

 

「‥‥」

 

確かに乗員が言う事も当たっている。

 

「あとは我々に任せて下さい」

 

乗員はフェイトを強引に座らせて、救助活動を再開する。

 

やがて、救助活動も終わり、シャトルのハッチが閉められる。

 

フェイトが救助したこの星の住人を見渡す。

 

ガイアのモニターで確認した時よりも救助者は少ないように感じる。

 

しかし、ガイアが要救助者を確認し、内火シャトルで現場に向かうまで少々の時間があった。

 

自分たちは救えなかったと言う気持ちがフェイトの中にはあった。

 

だが、別の見方をすれば誰一人助けることが出来なかった訳ではない。

 

あの悪天候の中でこれだけの人数を助けることが出来た。

 

そうポジティブに捉えなければならなかった。

 

(ん?この星の人たちの肌の色、変わっているな‥‥)

 

ガイアへ向かっている中、フェイトは要救助者の姿をまじまじと見た時、この星の住人の肌の色が地球やミッドチルダの住人と異なる色をしていた。

 

地球とミッドチルダの住人の肌の色は同じ色だが、フェイトがもう一つの地球にて、あの地球が辿った歴史で見たガミラス、彗星帝国の人も地球、ミッドチルダの人とは肌の色が異なっていた。

 

そして、あの地球で体験した暗黒星団帝国下の占領下でも暗黒星団帝国の人を見たが、その人たちも肌の色も容姿も地球、ミッドチルダの人と大きく違っていた。

 

(やっぱり、次元の海には色んな人が存在しているんだな‥‥)

 

やがて、ガイアが肉眼でも確認できる距離まで来ると、ガイアの左側面にある内火シャトルの格納扉が開き、内火シャトルの受け入れ態勢を取る。

 

内火シャトルがガイアの格納庫に着陸してあとは搭乗口のハッチから要救助者をガイアの艦内に誘導するだけだ。

 

その時、

 

突如、秒速四十メートルはあろうかと言う突風が巻き起こり、それによって大津波が発生したかと思ったらガイアの右舷側から直撃した。

 

レイセンもいきなり起こった津波に対処しきれなかった。

 

ましてや今は内火シャトルを収容したばかりで下手に艦を動かせる状態ではなかった事もあり、まさに最悪のタイミングで起こった出来事であった。

 

ザパーン!!と大きな波音と共に大きな振動が内火シャトルを襲う。

 

フェイトは近くで横になっていた原住民の少年を抱きかかえるとタックルするような格好で搭乗口まで飛んだ。

 

その間にも内火シャトルはガイアの乗員、救助したこの星の住人と共に荒波の中に飲み込まれていった。

 

「‥‥」

 

あまりにも一瞬の出来事だった為、少年を抱えたままの姿勢でフェイトは呆然としていた。

 

「副長、大丈夫ですか!?」

 

「お怪我は‥‥あ、あれ?内火シャトルは‥‥?」

 

「ま、まさか堕ちたんですか?」

 

そこへ、整備員が来ると、本来ある筈の内火シャトルが無い事に違和感を覚える。

 

フェイトは整備員に少年を医務室に連れて行くように言うと、艦橋へ急いで向かった。

 

救助活動で体力が消耗している筈なのにフェイトは必死に艦橋へと向かう。

 

艦橋ではびしょ濡れ姿のフェイトが駆け込んで来たので、皆はギョッとした。

 

しかし、フェイトはそんな皆のリアクションに構っている暇はなく、

 

「艦長、急ぎ救命艇の出動を要請します!!」

 

海に落ちた乗員たちと原住民の救助のため、フェイトはクロノに救命艇の出動を具申する。

 

しかし、クロノが下した決断は、

 

「‥‥副長、残念だが救命艇は出せない」

 

海に落ちた乗員たちと救助した筈の原住民たちを見殺しにする判断であった。

 

「なっ!?どうしてですか!?犠牲者の収容もしないと言うのですか!?いえ、中にはまだ生きている人も居る可能性が‥‥」

 

「副長、今救命艇を出しても間違いなく二重遭難となり、犠牲者を増やす結果になる。それにこの世界に居れば、ガイア自体も危険だ‥‥艦長としてこれ以上の犠牲を出す訳にもガイアに居る乗員を危険に晒す事も出来ない」

 

「‥‥」

 

「航海長、直ちにこの世界から脱出だ」

 

「りょ、了解」

 

レイセンとしても後ろ髪を引かれるような思いがあったが、クロノの言う通り、このままでは荒波に呑まれてガイア自体が海中に引きずり込まれる可能性もあった。

 

ガイアは急速に離脱していく。

 

「副長、それで誰一人も救助できなかったのか?」

 

水没した世界から十分に離れた後、クロノはフェイトに要救助者は誰も居なかったのかを訊ねる。

 

「いえ、少年が一名‥‥今は医務室で診察中だと思います」

 

「分かった。とりあえず副長、着替えてきなさい。そのままでは風邪をひく」

 

「は、はい‥‥」

 

「戦術長、暫く艦の指揮を頼む」

 

「えっ?艦長は何処に?」

 

「医務室‥救助された少年を見舞いたい」

 

「分かりました」

 

クロノはチンクに一時艦の指揮権を委ねると医務室へと向かい、フェイトは自室に戻り、シャワーを浴び着替えた後、医務室へと向かった。

 

フェイトが医務室に到着すると救助された少年は無菌カプセルの中で眠っていた。

 

「その子の様子はどうですか?ドクター」

 

フェイトが医務長であるバンに少年の様子を訊ねる。

 

「今、検査結果が出た所だ。特に目立った外傷もなく、病原菌も見つからない。ついでに身体検査をしてみた所、皮膚の色を除いては身体の組成が我々ミッドに住む人間と一緒なのだよ」

 

「えっ?ミッドの人と?」

 

「では、彼にもリンカーコアが?」

 

「いや、リンカーコアの存在は確認できなかったから、この子は非魔導じゃな」

 

「そうですか‥‥」

 

「それにしても変わった皮膚の色じゃな‥‥」

 

バンはカプセルの中で眠る少年の顔をまじまじと見つめる。

 

「確かに群青色の肌の人間何て管理世界でも居ないですからね‥‥」

 

クロノも地球、ミッドチルダの人と肌の色が異なる人種はボラー連邦の人間以来二度目である。

 

「艦長‥ちょっと話が‥‥」

 

「ああ。それじゃあ、ドクター。後は頼みます」

 

「うむ」

 

クロノはフェイトが何の話があるのか大体察しがついた。

 

それは、先ほどの惑星での救助活動にほかならない。

 

「最終的に救助できたのはあの子一人‥‥その為に払った犠牲はあまりにも大きすぎた‥‥あの時、私が救助活動を具申しなければ、救助活動に参加した乗員たちは死なずに済んだはずなのに‥‥」

 

救助活動が終わった時は、モニターで確認出来た人数よりも少ない救助者であったために間に合わなかった罪悪感があったが、こうしてガイアに戻って来てみれば救助者一人に対して払った代償があまりにも大きすぎた。

 

フェイトの罪悪感はますます募るばかりであった。

 

「いや、最終判断を下したのは僕だ。乗員が死亡したのならば、それはフェイトのせいではなく、僕のせいだ」

 

『気にするな』とは言えないが、深く気にし過ぎてこの後の任務に支障をきたされても困る。

 

クロノとフェイトの間に重苦しい空気が漂う中、

 

『艦長、展望観測室から連絡が入りました』

 

ミリアリアがクロノに展望観測室から報告が入った旨を伝える。

 

「展望観測室から?内容は?」

 

『それが、先ほどの水没している世界が爆発、消滅したようです』

 

「あの世界が!?」

 

「爆発!?」

 

クロノもフェイトもその報告を受けて驚愕する。

 

「一体何が有って爆発なんて‥‥」

 

確かにあの世界は異常気象レベルの水害があった。

 

しかし、それが原因で世界一つが爆発するなんて考えられない。

 

そもそもあの異常気象も文字通り異常だった。

 

『それと、もう一つ移動している世界を発見した模様です』

 

「移動している世界?」

 

『はい。我々の航路とほぼ並行した軌道を進んでいます。航跡から先ほどの水没した世界の至近距離を通ったと思われます』

 

「あの世界の至近距離を‥‥」

 

「もしかして、あの世界が水没したのはその移動している世界の影響じゃあ‥‥」

 

「展望観測室へすぐにデータ解析をしてもらってくれ」

 

『了解』

 

ガイアの艦橋下部にある特徴的なドーム状の中に展望観測室が備えられている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

展望観測室勤務の乗員たちはクロノからの指示を受けて移動している世界‥回遊惑星について分析を行う。

 

『計測シタ質量カラ見ルト、移動シテイル世界ハ巨大デ大量ノ水ヲ含ム世界ト思ワレル。水世界全体ノ三分の二ハ水デ構成サレテオリ、現在、水世界ハ光速二分の一ノ速度デ、ミッドチルダ方面へ接近シツツアリ』

 

「ミッドチルダに!?‥‥それで、この水世界とミッドチルダの最接近日時は?」

 

『現在ノ位置、速度カラ、ミッドチルダトノ最接近時期ハ、六千年後ト推測サレル』

 

「ろ、六千年後‥‥ふぅ~、かなり時間があるな」

 

コンピューターを操作している乗員は回遊している惑星がミッドチルダの近くに来るのが六千年後の未来と言う結論にホッと胸をなでおろす。

 

「兎に角、この情報を艦長に伝えるか」

 

乗員はクロノに移動している水世界についての情報を報告する。

 

「なにっ!?巨大な水世界だと!?」

 

クロノは艦橋にてその報告を受ける。

 

『はい。世界全体の三分の二が水を溜めている世界で、先ほどの水没した世界の至近距離を通過した航跡を辿っており、現在その水世界は、二分の一光速の速度でミッドチルダへと向かっています。ただ、この世界がミッドチルダの至近距離まで来るのに現在の位置、速度から割り出した結果、六千年後の先になります』

 

「そうか、少なくとも近日中にその水世界がミッドに来るわけではないのだな?」

 

『はい』

 

「分かった。ありがとう」

 

「もしかして‥‥」

 

乗員とクロノの会話を聞いていたフェイトが有る仮説を立てる。

 

「ん?どうした?副長」

 

「さっきの水没した世界だけど、その水世界が近くを通ったんだよね?」

 

「ああ。航跡ではそうらしいな‥‥っ!?ま、まさかっ!?」

 

「うん。あの世界が水没したのは、その水世界が至近距離を通った時、互いの引力の関係であの世界に大量の水が降り注いだとしたら‥‥」

 

「あの世界で起きていた異常気象は移動している水世界の影響だったのか‥‥恐ろしい世界だ」

 

「でも、あの水世界がミッドの近くに来るまで六千年の時間があるんでしょう?だったら、十分に対策を考える時間はあるね」

 

「そうだな。それだけがせめてもの救いだな。しかし、それが分かった以上、ミッドに報告しなければならない。通信長」

 

「はい」

 

「今回の一件を全て記録データに纏めてミッドに次元光速通信で送れ」

 

「分かりました。ただ、此処はミッドからそれなりに離れているので、次元光速通信で送ってもミッドが受信するのに数日程の時間差があります」

 

「それでも良い。何の情報がないよりはマシだ。今すぐに送ってくれ」

 

「はい」

 

ミリアリアは急ぎ、水没した世界、ミッドチルダに向かっている水世界をクロノのメッセージ付き通信をミッドチルダへ送った。

 

「それと、今後のコース追跡の為に水世界に追跡ビーコンを打ち込め」

 

「了解」

 

ガイアは水世界に対してビーコンを発信する発信器を打ち込んだ。

 

 

ミッドチルダの地上本部ビルの一角に設けられた“海”の分室がクロノの通信を受信したのはそれから数日後の事だった。

 

 

ミッドチルダ クラナガン 時空管理局 地上本部ビル “海”分室

 

「総合統括、ガイアのハラオウン提督より次元光速通信を受信しました」

 

「クロノから?」

 

「はい。ミッドからかなりの距離があったみたいで、次元光速通信ですが、発信されたのは数日前です」

 

「次元光速通信で数日‥確かにかなりの距離ね。それで内容は?此処最近起きている次元震の原因が分かったのかしら?」

 

「再生してみます」

 

オペレーターはクロノからの次元光速通信の内容を再生する。

 

すると、通信内容は今、ミッチルダ周辺で起きている次元震の原因ではなく、とある移動性の水世界の報告であった。

 

『この水世界がミッドに接近した時、只今報告した世界と同様にミッドは水没するものと思われます。時間的にはまだ六千年後の先の出来事です‥‥』

 

「次元震の原因を探査していたら、とんでもない事が判明しましたね」

 

オペレーターがクロノの報告を聞き、当初の調査目的とは異なるが、六千年後のミッドチルダに迫る水世界の存在を伝える事になった。

 

「次元震の発生原因について、ハラオウン提督は何か報告はあった?」

 

「いえ、次元震については報告はありません」

 

「そう‥‥ハラオウン提督に帰還命令を‥結構ミッドから離れているみたいだから、そろそろ補給の問題もあるでしょうから」

 

「了解」

 

オペレーターも次元光速通信でガイアに帰還命令を送った。

 

リンディもオペレーターもこの帰還命令を受信するのは数日後である事を見越しての帰還命令であった。

 

 

その頃、ガイアは数日の間、ディンギル星系を探査していた。

 

ガイアには次元震の発生原因の調査があるのだが、それは何もガイアだけに与えられた任務ではないし、少年をミッドチルダへ連れて行っても良いのだが、肌の色が異なる異世界人となると研究対象にされる恐れもあるので、この星系を調査すれば彼と同じ民族がこの星系に住んで居る可能性もあるので、もしも少年と同じ民族が居れば、その人たちに少年の事を任せたいと言う思いがあった。

 

そんなディンギル星系を航行しているガイアの左舷後方から接近して来る艦隊がいた。

 

移動要塞母艦を旗艦とし、周囲には重武装戦艦、高速巡洋戦艦の戦艦部隊八隻、空母六隻の機動艦隊だ。

 

その移動要塞母艦の艦橋では観測員が艦隊の近くで航行する物体を発見し、司令官らしき長身の青年へと報告を入れる。

 

「殿下、船籍不明の艦を発見いたしました」

 

「船籍不明?我らがディンギルの艦ではないのだな?」

 

「はっ、エネルギー反応も艦影も我が帝国のモノとは異なります」

 

報告を受けた青年は座席からスッと立ち上がるとメインモニターを凝視する。

 

「ふむ、確かに我らがディンギルの艦ではないな‥‥どこの星の艦か知らぬがなかなか美しい姿ではないか‥‥」

 

「まことに‥‥」

 

「しかし、我らの前に現れるものは全て敵だ‥‥ハイパー放射ミサイルをもって撃滅せよ。撃て!!」

 

移動要塞母艦の側面にある発射台からハイパー放射ミサイルがガイア目掛けて次々と発射された。

 

自分たちが狙われているとは知らぬガイアは未だにディンギル星系の調査を続けていたが、突如としてガイアのレーダーに映った光点を見つけたフェイトがクロノに報告をいれる。

 

「本艦、左舷後方に未確認生命体を複数探知‥こ、これは艦隊です!!」

 

「なにっ!?艦隊だと!?」

 

「は、はい。っ!?後方の艦隊より飛来物群、本艦に接近!!」

 

そして、フェイトは自分たちに迫って来るハイパー放射ミサイルの反応も追加で報告する。

 

「対艦戦闘用意!!総員、戦闘配置に着け!!ジャスティス・カノンは拡散モードに切り替えろ!!」

 

「了解!!」

 

「くそっ、いきなり警告もなしに攻撃して来るとは‥‥」

 

艦内に警報が鳴り、乗員たちはバタバタと駆け足で部署へと急行する。

 

「ジャスティス・カノン、発射準備完了!!」

 

「撃て!!」

 

ガイアは管理局が建造した艦なので、当然ミサイルなどの質量兵器は搭載していない。

 

なので、迫りくるミサイルに対処するには主砲であるジャスティス・カノンで対処しなければならない。

 

(連中は一体何者だ!?)

 

(この海域周辺に住む現地住民か?)

 

(となると、救助した少年と同一の民族なのか?)

 

(だとしたら、通信を送って攻撃の停止と少年の引き渡しを‥‥)

 

クロノは迎撃しつつ自分たちに攻撃をしかけてくる艦隊が何者なのかを考えていると、迎撃網を掻い潜ったミサイルの一発がガイアの艦底部に命中した。

 

「敵飛来物。本艦、艦底部に命中!!」

 

「くっ、総員衝撃に備え!!」

 

(やはり飛来して来たのはミサイル‥質量兵器か!?)

 

しかし、そのミサイルは着弾後爆発しなかった。

 

「不発弾か?」

 

クロノは命中したミサイルが不発弾かと思った。

 

だが、それは不発弾ではなかった。

 

命中したミサイルはガイアの艦底部の装甲を溶かし、内部に弾頭を深く突き刺すと爆発した。

 

爆発による衝撃波は艦底部の隔壁を破壊すると同時にガイアの艦内に人体には有毒な放射性物質をまき散らす。

 

艦底部に居た乗員の何人かはミサイルによって出来た破孔で艦外に吸い出され、またある者はミサイルが噴射した放射性物質を浴びてバタバタと倒れていく。

 

『艦長、艦内の放射線量が異常な数値を出しておる!!』

 

そこへ、ドクターバンがクロノに放射線量の異常を訴える。

 

「放射線!?」

 

『そうだ。先程命中したミサイルには人体に有毒な放射性物質を含んでおる!!大至急全員に次元防護服を着用させてくれ!!』

 

「分かった」

 

「飛来物第二波、接近!!」

 

「迎撃を続けつつ、防護服を着用せよ!!」

 

クロノは急ぎ艦内に次元防護服‥地球で言う所の宇宙服の着用命令を下す。

 

乗員たちは交代で急ぎ次元防護服を着用していく。

 

それはクロノやフェイトたち艦橋要員も例外なくだ。

 

艦橋員でクロノが最後にヘルメットを着用した瞬間、ガイアの艦橋付近にミサイルが命中した。

 

たちまち高熱で装甲を溶かして、艦内に放射性物質をまき散らしながら爆発を起こす。

 

その衝撃は艦橋にも届き、艦橋員たちは座席から放り出される。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「エイミィ‥‥カレル‥‥リエラ‥‥」

 

クロノの脳裏には妻と子供たちの姿が過った。

 

艦橋付近に命中し、艦を動かすためのメインスタッフ全員‥いや、次元防護服を着ていようと着てなかろうとガイアの乗員全員が昏倒した事で、ガイアは機能を停止し、近くにあったディンギル星系の第九惑星の引力に引かれて同惑星へと墜落していった。

 

同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について

  • 付き合っちゃえ
  • お友達のままで
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