太陽系を含む銀河系では、二つの銀河系が交叉する大異変が起き、ミッドチルダ周辺では、大小様々な規模で次元震が起こる異変が続出。
この宇宙に起きる意見の原因を調査するために地球連邦政府、時空管理局どちらも調査に乗り出していた。
そんな中、ヤマト、まほろばが銀河系中心部核恒星系にあるガルマン・ガミラス帝国の崩壊を目にした直後、近くの宙域で恒星の爆発に巻き込まれ、座標設定なしのワープで逃げるが、ヤマト、まほろばは離れ離れになってしまった。
一方、時空管理局所属のガイアはディンギル星系第四惑星のディンギルにて、同惑星が水没する現場に遭遇。
その惑星に残された人々の救助活動を行うも、最終的に救助出来たのは現地の少年一人だけで、その救助活動におけるガイア乗員の犠牲があまりにも大きかった。
そして、ガイアはディンギル星にて多くの犠牲を生み出した原因とされる水没させた水の惑星、アクエリアスを発見し軌道を調査。
結果、ディンギル星の水没の原因、そしてアクエリアスがミッドチルダに向かっている事を突き止めた。
その結果を現在、ガイアの母港となっているミッドチルダに報告し、数日の間、救助した少年と同じ民族が居る星が無いかディンギル星系を調査していると、ガイアは突如ミサイル攻撃を受けた。
ミサイルの内部には人体に有害な放射性物質がたっぷりと含まれており、ガイアに命中したミサイルは艦内を放射性物質塗れにしていく。
その威力は宇宙服を着た状態でも仮死状態にする程の威力であり、ガイアの乗員たちはバタバタと昏睡していく。
やがて、艦を動かす人間が全員昏睡した事で、ガイアはディンギル星系第九惑星へと墜落していった。
ガイアを攻撃して来たのは、ディンギル星で救助した少年と同じ星の艦隊であり、移動要塞母艦の艦橋では、指揮官である青年、ルガール・ド・ザールがモニターに映る墜落していくガイアの姿を見てニヤニヤと笑みを浮かべていた。
「折角の美しい艦もああなっては惨めなものだな」
ザールは後方に控える参謀に訊ねるかのように呟く。
「はい。おっしゃる通りです」
「しかし、あれだけのハイパー放射ミサイルを放って、命中したのが二発だけとはな‥‥」
「よほど、あの艦の操舵手の腕前が優れていたと言う事でしょうな」
「だが、どんなに美しい艦だろうが、どんなに優れた操舵手が乗っていようが、この私の敵ではない」
「はっ、ごもっともでございます」
「殿下、先ほど撃墜した艦はディンギル星系第九惑星に墜落していきました」
「ほう。あの死の星が、あの艦の墓場となる訳だな」
「そのようです」
「よし、引き上げるぞ」
「はっ」
ガイアの墜落を確認したディンギル艦隊は反転して何処かへと去って行った。
一方、ディンギル星系第九惑星へと墜落していくガイアは‥‥
墜落した第九惑星は岩だけの星であった。
水も大気もない星なので、当然生物も存在しておらず、大きさも地球の月とほぼ同じ大きさの星だった。
まるで奈落の底に落ちて行くかのようにガイアはその星へゆっくりと墜落していく。
艦内は静まり返っており、あちこちに乗員たちが床や座席に座ったままの状態で昏睡している。
やがて、ガイアの艦底が岩肌に衝突すると、艦内では大きな衝撃が起きる。
すると、その衝撃を受けて何かのスイッチがカチッと入った。
そのスイッチが入った音を聴いた者は当然居なかったが、ガイア‥クロノたちにとっては非常に重大な意味を持つスイッチであった。
それは艦橋内の操艦席で起きた。
ガイアの操艦席には非常事態を想定して、自動運航装置が備わっていた。
さっきのスイッチがその自動運航装置が入った音であった。
自動運航装置が入った事で、第九惑星に墜落していくガイアは息を吹き返したかのようにMS機関が稼働し始める。
艦橋でもメーターが光り出す。
ガイアはガイア自身の意志があるかのように‥‥まるで生きているかのように第九惑星の引力圏を脱し、飛んで行った。
ミッドチルダでは、ガイアがディンギル軍の襲撃を受けた事を知らず、通信が入ってこないのもガイアとミッドチルダとの距離が離れすぎていると思っていた。
ガイアが恐らく母港であるミッドチルダを目指している中、ヤマトも一路、地球を目指して航行していた。
「周囲にまほろばがワープアウトした形跡はないのか?」
「はい。ありません」
古代はヤマトの周囲にまほろばの反応が無いか太田に訊ねるも、ヤマトの周囲にまほろばの反応はなかった。
ガルマン・ガミラスまで航海を共にし、近くで起きた恒星同士の衝突で発生した衝撃波から逃れる為、ヤマトとまほろばは座標設定なしのワープで切り抜けた。
しかし、互いに座標設定をしていなかったので、ワープアウト後もヤマトの近くにまほろばの姿は見つからない。
自分たちは運よく恒星等の障害物やブラックホール付近の危険宙域にワープアウトすることなく、通常空間へ無事にワープアウトすることが出来た。
だが、まほろばはどうだろうか?
「相原、まほろばに通信を送れ。まほろばの現状を知りたい」
「それが、先ほどから通信を送っているのですが、応答がありません」
「ヤマトの通信圏内にまほろばが居ないだけなのか、それとも‥‥」
真田も最悪のケースを想定する。
ただ単にまほろばがヤマトの通信可能圏内に居ないだけならば、まだギンガたちまほろばの乗員が生きている事になるが、古代たちの脳裏に過る最悪のケースの場合、まほろばは‥‥
「古代、一先ず地球圏に戻ろう」
「えっ?」
島が古代に帰還を具申する。
「もし、まほろばが無事ならば、きっと月村艦長も地球圏への帰還を命令する筈だ。まほろばを捜すにしても宇宙はあまりにも広大過ぎるし、なによりも手が足りない」
まほろばが生きていたら、ヤマトと逸れてしまったので、きっとギンガは地球圏まで戻り、ヤマトと合流もしくはヤマトを待つ筈だと島は判断する。
仮にまほろばが遭難していた場合でもヤマト一隻で捜索するにはあまりにも手が足りない。
「それに、ガルマン・ガミラスの惨状を地球や月面の大使館に報告しなければならない」
「そ、そうだな‥‥」
(ジュラさんにとっては辛い話になりそうだな‥‥)
何より、ガルマン・ガミラスまでの航海を地球へ報告しなければならない。
だが、ガルマン・ガミラスの惨状はジュラにとっては辛く悲しい出来事だ。
新たな故郷、そして父親であるデスラーの死亡を伝えなければならない。
しかし、ガルマン・ガミラスの崩壊はいつまでもひた隠しに出来る事実ではない。
「分かった。一先ず、ケンタウロス座アルファ星まで向かおう‥‥」
ケンタウロス座アルファ星にはギンガの旦那である良馬も居る。
もしも、まほろばが遭難しているとしたら、良馬がいの一番でまほろば捜索に志願するに違いない。
良馬、そして地球への報告を兼ねてヤマトはケンタウロス座アルファ星へと向かった。
各々が目的地を定めて、宇宙を航行している中、動いているのが全て人工物とは限らない。
ディンギルを水没させた水惑星アクエリアス‥‥
アクエリアスは今も光速二分の一の速度で宇宙空間を移動し、ミッドチルダへと向かっていた。
惑星一つを水没させ、死に至らしめたと言うのに、宇宙空間を移動しているアクエリアスの姿は宇宙を漂う青い宝石の様に美しかった。
青白く滲むように光り、アクエリアス本星の周囲には氷塊のリングが三つ交差して取り巻いている。
そんなアクエリアスの後方に、まるでアクエリアスを追尾しているかのように動く小さな黒い点が一つあった。
いや、小さいと言ってもアクエリアスと比較すれば小さいだけであって、人間のスケールに当てはめれば、その小さな黒点は巨大な人工的に作られた都市衛星であった。
下部と側面はごつごつとした岩の塊であるが、上部は近代都市の様な建造物、後部には山がある。
その正体は水没するディンギルから脱出したディンギルの方舟ともいえる都市衛星ウルクである。
今や還るべき星を失ったディンギルの生き残りは自分たちの星を滅ぼしたアクエリアスを追っていた。
アクエリアスを追っているウルクに向かって、宇宙空間から艦隊が近づいて来た。
接近して来た艦隊は先ほど、ガイアを攻撃して来たザール率いる艦隊であった。
ザールの艦隊は母星であるディンギルの水没を受け、自分たち以外に宇宙へ脱出した同胞が居ないか?
哨戒に出ている部隊が居ないか、捜索に出ていた。
その捜索の最中でガイアは運悪く発見されてしまい、ミサイル攻撃を受けてしまったのだ。
「‥‥」
移動要塞母艦の艦橋からザールはアクエリアスを睨みつける。
「皮肉なモノだな、参謀」
「はい?」
ザールは不意に参謀に話しかける。
「見たまえ、あの水惑星を‥‥我々の母星を破壊した水惑星にまるで隠れるように航行しているのだ‥‥我が栄光のあるディンギルが、たかが水如きに滅ぼされたのだ‥‥」
ザールにそう言われ、参謀もアクエリアスに視線を向ける。
「我々の母星を滅ぼした死神の星ですね‥‥ですが、あの水惑星は美しいです」
「確かに君の言う通りだ。参謀‥‥実に美しい星だ。死神の星だからこそ、美しいのかもしれないな」
ザールと参謀がアクエリアスを眺めていると、
「殿下、ウルクへの入港準備が出来ました」
オペレーターがザールにウルクへの入港準備が整った事を報告する。
「よし、全艦帰投」
ウルクの前方下部の岩盤の中にある軍港へと艦隊は入って行く。
ウルクに帰還したザールは迎えの車に乗り、ウルクの右舷前方にある総統府へと赴いた。
「参謀‥‥」
「はっ」
「父上は‥‥大総統は我が母星、ディンギルが滅んでしまった事をどう思っているのだろうか?」
「‥‥」
ザールの問いに参謀は答えに詰まる。
「周辺の宙域を捜索したが、同胞は見つからなかった‥‥つまり、生き残っているディンギル人はこのウルクに居る者たちだけだ‥‥今や我々は還るべき星もない宇宙の放浪者となってしまった‥‥」
「大総統の事ですから、恐らく何か考えがあると思いますが‥‥」
ザールの言う通り、自分たちは故郷を失い宇宙を彷徨う放浪者となった。
一国を担う国家元首である大総統ならば、国民を導く義務がある。
このまま無暗に宇宙を彷徨っているだけでは、いずれウルクのエネルギーも尽きてしまう。
ウルクのエネルギーが尽きる前までにどこか移住出来る星を見つけなければならない。
「そもそもウルクは何故、あの水惑星を追いかけるように航行しているのだ?父上は一体何を考えている?」
ウルクの運航指揮権は大総統にある。
そのウルクがまるでアクエリアスを追跡するかのように航行している。
ザールとしては例え美しい星であっても、眼前の水惑星は自分たちの故郷を奪った本来ならば憎むべき星の筈だ。
「まさか、父上はあの水惑星に移住する気ではないだろうな‥‥」
「さ、さあ、大総統のお考えは私には判りかねます」
参謀がそう答えたと同時に車は総統府の入り口に着いた。
車から降り、総統府の通路を歩くと警備の兵士たちが一斉に直立不動の姿勢でディンギル式の敬礼をして、ザールを出迎える。
ザールと参謀は彼らに返礼をすることなく、通路を歩いていく。
そして、大総統が待つ総統府の司令室へと向かう。
そこには複数の幕僚と共にディンギル帝国の国家元首であり、自身の父親であるルガール大総統がまさに威風堂々と言った様子でモニターに映るアクエリアスを見つめていた。
ザールは自分を出迎えた兵士たちには返礼をしなかったが、流石に父親とは言え、国家元首である大総統にはディンギル式の敬礼をする。
「ルガール・ド・ザール‥‥我が母星の命運を見届けたか?」
背後に立つザールの気配を察し、ディンギル帝国の国家元首、ルガール大総統はディンギル星の最後について息子に訊ねる。
「大総統‥‥我らが母星ディンギルは特殊な組成と大量の水が結びついた結果、あれから大爆発を起こして消滅いたしました‥‥おそらく、母も弟も‥‥一族もその際‥‥」
ザールは父親に自分たちの故郷、そして家族の最後を報告する。
肉親の悲惨な運命と父親であるルガールの事を思ってか、流石のザールも言葉を濁す。
しかし、ザールから妻ともう一人の息子、大勢の国民が辿った末路を聞いてもルガールの表情は全く変わらないどころか、
「やむを得まい‥‥この世は強い者のみ栄えるためにのみある。弱い老人や女、子供など滅びて当然」
ザールは父親のその言葉を聞いて表情が強張る。
自分の眼前に居る父親は自身の妻やもう一人の息子が死んでも何とも思っていない。
自身が統治していた星が滅んでも一切動揺もしない。
例え息子の前であっても動揺、悲しむ姿を見せずに強い統治者の姿を見せる事で、統治者として国と星を統治していた。
自分の父親ながら、その冷酷な姿に背筋に寒気が走る。
「滅んでしまったものは今更後悔してもどうにもならないのだ。ルガール将軍」
「は、はい」
ザールは慌てて返答する。
そして、自分の狼狽を隠すために話題を変える。
「大総統、実は探査任務中に所属不明の戦闘艦を発見し、これを撃破いたしました」
「うむ」
息子があげた戦果さえもむしろ当然と言う反応だ。
「諸君、我々はあの水惑星アクエリアスによって、宇宙の放浪者の運命を課せられた。しかもこの都市衛星ウルクのエネルギーには限界がある」
(アクエリアス‥‥あの水惑星はそんな名前だったのか‥‥)
ルガールからあの水惑星の名を初めて知るザール。
「幸いにしてアクエリアスの水の中には我が機動艦隊のエネルギーを補充するのに十分な反波動粒子態があり、そこにエネルギー吸収プラントを建設する事で解決はつく」
ウルクに収容されているディンギル軍宇宙艦隊のエネルギー問題に関しては、アクエリアスにプラントを建設すれば、問題なく行動できる事がルガールの口から語られる。
(なるほど、父上は宇宙艦隊のエネルギー問題を解決するためにアクエリアスを追っていたのか‥‥)
自分たちの星を滅ぼしたアクエリアスを追っている理由をザールは宇宙艦隊のエネルギー問題の解決の為だと判断する。
「最大の課題は移住先を見つける事だ」
故郷を失った自分たちの課題はやはり、新たな故郷を見つける事だ。
ルガールも当然、その問題に取り組むつもりの様だ。
「諸君、見よ」
ルガールが指揮卓を操作すると、モニターはアクエリアスからある星系図に変わる。
その中で一つだけ点滅している点がある。
「これは、此処から三千光年離れた星系図だ。そして、点滅しているのはミッドチルダと呼ばれる星だ」
点滅している星を拡大投影すると、モニターには複数の月のような衛星が浮かぶ星の姿が映し出される。
「おぉ‥‥」
「あれが、ミッドチルダ‥‥」
「なんと美しい星だ‥‥」
幕僚たちはモニターに映るミッドチルダの姿に感嘆の声を漏らす。
「私はあのミッドチルダに移住する事に決めた。だが、我々がミッドチルダに移住すれば、原住民たちは我々に戦いを挑んで来るであろう‥‥我々には果てしない戦いを行う余裕は無い」
アクエリアスに宇宙艦隊のエネルギー吸収プラントを建設してもウルク自体のエネルギー問題や保有する人的、戦力的な問題があるので、ディンギル軍にとって長期作戦は不利となる。
「そこで、私はある作戦をたてた」
再び指揮卓を操作してアクエリアスとミッドチルダのある星系図の両方を表示する。
「幸いにしてアクエリアスはミッドチルダに向かっている。我々が持つ超エネルギーでアクエリアスをワープさせ、短時日でミッドチルダに居る人類を絶滅させ、水の引いた後に移住‥その為にはミッドチルダに居る人類をかの惑星に封じ込めなくてはならない。ルガール将軍」
「はい」
「お前をミッドチルダ制圧艦隊の指揮官に任命する」
「はい。ありがとうございます」
新たな任務、新たな役職を受けたザールは総統府を出ると直ちに将兵を招集させると同時に麾下の艦隊の出撃準備を命じる。
「参謀、いよいよ本格的な戦いが始まるぞ‥‥これまでの様な反乱分子や我が帝国領内に入り込んだネズミ退治ではなく、一国の軍を相手にする戦争だ。フフフ‥血が騒ぐな」
「は、はい」
ザールは拳をギュっと握りしめ、目はギラギラと獣の様な目つきとなり、口元はニヤリと笑みを浮かべていた。
そんなザールの姿を見て、参謀は、
(やはりこの方は根っからの軍人なのだ)
そう思った。
父親であるルガールは軍事、政治の中枢を握る大総統と言う地位の他に大神官と言う地位も兼任している。
しかし、親子でもザールには神官と言う神職は似合わない。
この人は戦場でこそ輝いて見える。
それと同時にあきらかにルガールの冷たい血をちゃんと受け継いでいると思った。
ルガールと参謀が先ほどまで乗艦していた移動要塞母艦の艦橋まで上がると乗員たちが航海計器を始め各部署のチェックを行っている。
「殿下、全艦発進準備完了いたしました」
そして、各艦の出撃準備が整う。
「よし、出撃する。総員出航配置につけ!!」
「機関始動!!」
「出撃!!」
(ふっ、あのようなちっぽけな星の軍など簡単に制圧してご覧に入れます)
ウルクの下部からはザールが乗艦する移動要塞母艦、戦艦、空母、水雷艇母艦の戦闘艦隊が次々とミッドチルダを目指して出撃して行く。
ザールを含め、彼らはミッドチルダにも宇宙軍が存在する事を前提としていたが、彼らが目指すミッドチルダには軍ではなく、治安維持組織である時空管理局が存在している事を知る由もなく、あくまでも自分たちの相手はミッドチルダに存在するであろう宇宙軍と戦闘するものだと思っていた。
ザール率いるミッドチルダ制圧艦隊がウルクを出撃した頃、ウルクの総統府では、ルガールが技術士官からアクエリアスワープ作戦についての説明を受けていた。
「システムをご説明申し上げます。我がウルクの岩盤が含む曲線反重力波を増幅し、放射装置で放射、アクエリアスのコアに共鳴震動を発生させ、一気にワープさせるのです。ただし、あれだけの質量を持った星をワープさせるので、一回のワープは約150光年が限度です。」
「うむ」
「一回のワープ終了後に次のワープエネルギー補充まで二十四時間が必要です。したがって150光年のワープが二十回、我々がミッドチルダに到達まで二十日間かかります」
「このウルクから抽出できるエネルギーでは、それが限界だろう‥‥」
何の障害もなく作戦が推移する期間として最短で二十日かかる事にルガールは現状のウルクのエネルギー観点からやむなしと判断した。
どう頑張っても現状、出来る事が限られる。
しかもアクエリアスをワープさせるだけではなく、そのアクエリアスの水上もしくは水中に宇宙艦隊の為のエネルギー吸収プラントも建設しなければならず、その建設作業も迅速に行わなければならない
この二つの作業をむしろ、二十日の間で実行できる事に満足しなければならないのだ。
「ウルクの現状から二十日後には何としてでもミッドチルダを水没させなければならない。直ちに第一回目のワープを行え!!」
「はっ!!」
「増幅用放電盤、スイッチオン」
「アクエリアスへの放射開始」
ウルクの後方にある山間部の下部に設けられている放射装置からアクエリアスに向けてワープ光線が放射される。
すると、青白いアクエリアスの姿は太陽の様にオレンジ色へと変化していく。
アクエリアスに向けてワープ光線が放射されている間、ルガールの姿は総統府からワープ光線が放射されている山間部の頂上にある神殿に来ていた。
ルガールの眼前には自分たちが信仰する巨大な大魔神像が鎮座している。
全体が黒灰色の石で出来ており、その顔は人間とも獣とも思える。
表情はすさまじい怒りの形相をしている。
大魔神像の両側にはレリーフの浮き出た太い柱が何本もたっており、その柱の下には祭壇があり、そこには消える事の無い火が灯っている燭台がある。
神殿内は全体的に薄暗く、天井が高い。
ルガールは大魔神像の前の祭壇に歩み寄る。
誰も居ない神殿内にコッ、コッ、コッ、と足音が響く。
そして、ルガールは両手を広げ、
「神々の王よ‥‥神々の王よ。汝に告ぐ、ディンギルの民のために此度の作戦を成就あらしめよ!!ディンギル帝国の‥ルガール王国の復活を!!ディンギルに栄光を!!」
大魔神像に今回の作戦が成功する様に祈りを捧げた。
祈祷を終え、神殿から総統府に戻って来た時、アクエリアスは周りを取り巻いているリングは消えており、アクエリアス自体も赤く薄くなっている。
やがて、アクエリアス自体が消えた。
「アクエリアス、ワープ終了。続いて都市衛星ウルク、ワープに入ります」
アクエリアスがワープしたので、ウルクもアクエリアスワープアウト地点に向けてワープを行う。
ウルク全体が淡い緑色に発光すると、陽炎の様に歪むとウルクもワープして、宇宙空間から消えた。
宇宙の一角にて、突如空間がグニャリと歪み青白いスパークが弾け、何かが宇宙空間に出現する。
それは、ガルマン・ガミラス付近にて緊急ワープを行ったまほろばであった。
まほろば 艦橋
「うっ‥‥うーん‥‥」
ギンガは艦長席でコンソールに突っ伏していた所で意識を取り戻す。
(どうやら、あの世ではないみたいね‥‥)
窓の外に広がる宇宙空間を見て、ギンガは無事にワープアウトしたのだと判断する。
艦橋メンバーはまだ目を覚ましていない様子で、先ほどの自分の様にコンソールに突っ伏していたり、座席から放り出されて床で伸びている者も居る。
「一先ず、皆を起こさないと‥‥」
ギンガは艦長席から立ち上がり、副長席のティアナを起こす。
「ティアナ、ティアナ、起きて」
「うーん‥‥ぎ、ギンガさん?」
「大丈夫?どこか怪我とかしていない?」
「は、はい。大丈夫です‥‥」
「ティアナも皆を起こすのを手伝ってくれる?」
「分かりました」
ギンガとティアナがまだ目を覚ましていない艦橋メンバーを起こしていく。
「どうやら助かったみたいだ‥‥」
「ええ、緊急ワープは成功したみたいね」
まほろばもヤマト同様、惑星に衝突したり、近くにブラックホールがあるような危険宙域ではなく、通常の宇宙空間にワープアウトすることが出来た。
「それにしても此処はどこなんでしょう?」
「航海長、艦を止めて現在位置の確認を、通信長は地球とヤマトに現状を報告、機関長と技師長はエンジンと艦の各部の損傷の有無の確認をお願い。航海長補佐は周囲にヤマトの反応があるか確認して」
「了解です」
「了解だ」
「合点承知」
「分かりました」
目を覚ました乗員たちに次々と指示を出すギンガ。
「艦長、周囲にヤマトの反応はありません」
「同じく、ヤマト、地球に通信を送っても返信がありません」
林とメイリンがそれぞれ報告をあげる。
ヤマトが周囲に居ないのは互いに座標設定無しでワープをしたので、仕方がないと思ったが、地球との通信が不通と言う点に疑問を抱く。
(タキオン通信が届かないくらい遠くに来てしまったのかな?)
「航海長、現在位置は掴めた?」
「それが現状、どこなのか座標が掴めません」
「掴めない?」
「はい。地球、ガルマン・ガミラスがこれまで集めた航海情報がある宙域ではないみたいでして、座標データがありません」
「なるほど‥‥」
「どうします?艦長、今度は座標設定をしてワープをしてみますか?」
ノイマンが座標を設定してから再びワープをして地球を目指してみるかと訊ねる。
「うーん‥‥座標設定がない宙域からのワープを行って大丈夫かな?失敗すれば、三次元と四次元の間に挟まれて危険な状態になるかも‥‥」
「‥‥」
此処に来たのは全くの偶然であり、偶然は何度も起きる現象ではない。
ノイマンもギンガが言う事を理解しており、表情を強張らせる。
そんな中、
「艦長、大変だ」
艦の異常を調べていたアルバートが慌てた様子でギンガに報告する。
「どうしたの?」
「艦の異常なんだが、まずはこれを見てくれ」
艦橋のモニターにはまほろばの状態が表示される。
すると、艦のあちこちに異常を示す部分が赤色で表示される。
「いたるところがボロボロね」
『艦長、こちら機関室!!波動エンジン、エネルギー伝導管に異常発見!!』
機関室からも柳原が機関の異常を報告してくる。
「恒星の爆発による衝撃波と座標設定なしのワープ‥そして、ワープ空間を抜け出る際、艦全体に力の歪みがかかってしまったのだろう。だが、事前に装甲を改修しておいたおかげで、この程度で済んだのだ」
「それじゃあ、装甲の改修がされていなかったら‥‥」
うららが地球出航前に装甲に何の改修を施していなかった場合の事態をアルバートに訊ねる。
「ワープアウトした時点でかなりのダメージを負うか、最悪の場合、バラバラになっていたかもしれない」
「うわぁ~‥‥技師長、ありがとうございます」
最悪の事態を聞き、うららはアルバートに礼を言う。
「兎も角、エンジンが動かない以上、どうしようもない。波動エンジンだけでも至急、応急修理とりかかろう」
「お願いします」
機関部と技術部が波動エンジンの修理に取り掛かっていると、
「っ!?本艦の至近距離に空間歪曲反応を確認!!」
まほろばの近くで空間歪曲反応があった。
それはつまり、何かがまほろばの近くでワープアウトしてきた事を知らせる。
今のまほろばは波動エンジンを修理している状態で動かせない。
(もしも、ボラー連邦勢力の戦闘艦だったら‥‥)
此処が何処なのか分からないが、万が一地球連邦と敵対する勢力の戦闘艦だとしたら、かなりマズイ。
波動エンジンが修理中なので、動けないし当然波動砲も撃てない。
艦橋内に緊張が走る。
「総員戦闘配置!!」
艦は動かせないが、ミサイル、魚雷は撃てる。
ショックカノンも撃てないが、砲弾による実弾は撃てる。
それに航空隊も出撃すれば、それなりに戦える筈だ。
ギンガは突発的事態に備えて、戦闘準備を命じる。
一体何がワープアウトしてくるのか?
艦橋内の一同がモニターを凝視していると、一隻の戦艦らしき艦がワープアウトしてきた。
「戦艦らしき艦影を確認、数は一隻」
「一隻?所属は?」
「‥‥地球、ガルマン・ガミラス、ボラー連邦、彗星帝国、暗黒星団帝国、時空管理局‥従来のライブラリーに該当する艦はありません」
「これまで地球が遭遇した事の無い勢力の艦って事かしら?モニターに映せる?」
「はい」
モニターにはワープアウトした艦の姿が映し出される。
「ん?」
「これは‥‥」
モニターにはそこはかとなく地球の戦艦に似ている艦の姿が映し出される。
「なんか、防衛軍の戦艦に似たフォルムですね‥‥」
「でも、エネルギーパターンは防衛軍のモノではないのでしょう?」
「はい。どちらかと言うとボラー連邦、時空管理局に似たパターンです」
「ボラーに管理局の?」
「はい」
「‥‥通信長、不明艦と通信できる?ボラー連邦、時空管理局の周波数で」
「やってみます」
メイリンが不明艦とコンタクトを取ろうとするも、
「不明艦、応答ありません」
相手からは応答がない。
「艦長、不明艦のコースですが、このままですと本艦と衝突します!!」
「なっ!?機関長、技師長、波動エンジンの修理はまだかかりそう!?」
『あと十五分はかかるが、どうかしたのか?』
「ワープアウトした不明艦が本艦との衝突コースなのよ!!」
『それはまずいが、まだ艦は動かせない。衝突に備えてくれ!!』
アルバートもこの状況下ではどうしようもない。
「総員、不明艦が本艦との衝突コースを進んでいる。現在、本艦は波動エンジンの修理中で動かせない。総員、衝撃に備え!!通信長、不明艦に引き続き通信を!!」
「了解」
ギンガは乗員に衝突の衝撃に備えるように急ぎ、艦内放送を入れ、メイリンには不明艦とコンタクトを取るように命じる。
流石に向こうが攻撃をして来る気配がないので、下手に攻撃する事も出来ない。
そして、不明艦の右舷側の艦首とまほろばの左舷側の艦首が接触した。
すさまじい衝撃がまほろばを襲う。
「うわっ!?」
「くっ‥‥」
不明艦はまほろばと衝突して停止する。
「みんな、大丈夫?」
「は、はい‥‥」
「な、なんとか‥‥」
「大丈夫です‥‥」
「不明艦は!?」
「本艦の艦首部に衝突後、完全に停止したもよう」
不明艦はまほろばと衝突しても何のリアクションも起こさない。
「艦長、どうしますか?」
衝突しても未だに何のリアクションも起こさない不明艦の対処を訊ねるティアナ。
「うーん‥‥」
ギンガは暫し考えた後、
「調査をしてみましょう」
ギンガは不明艦の調査を決める。
「えっ?本気ですか?艦長」
うららがギンガに問いかける。
「通信も応答がなく、衝突してもリアクションがない‥‥不明艦の乗員に何かあったのかもしれない。それに波動エンジンの修理が終わらないと艦も動かせないし、座標情報がないこの状況下で、あの不明艦は此処周辺の情報を持っているかもしれない」
あの不明艦が自分同様、緊急ワープでワープアウトしてきた可能性もあるが、何らかの情報を持っている可能性もある。
乗員の救助と情報収集を兼ねて不明艦の調査を提案したのだ。
いや、そもそも何のリアクションもしてこなかった事からあの不明艦が無人艦と言う可能性もある。
まず、センサーにて不明艦の艦内のチェックをすると、
「艦長、不明艦の艦内の放射線の数値がかなり高い数値を記録しています」
「放射線が?‥‥ガルマン・ガミラスみたいに放射線の量が多い星から来たのかしら?」
「それに倒れている乗員らしき姿も確認出来ました」
「タラップを接舷し、コスモクリーナーを起動。艦内の放射線量を地球と同じ量に調整した後、乗員の救助活動を開始」
「了解」
不明艦の船体側面にハッチらしき扉を発見し、そこへタラップを強制接舷させ、まほろば艦内のコスモクリーナーを稼働させて不明艦の艦内の放射線量を減少させる。
「放射線量、地球基準に減少」
「戦闘班と生活班、乗員の救助へ‥‥医務班はいつでも医療行為が行えるように準備しつつ待機」
放射線量が地球と同じくらいの量になったので、不明艦の艦内へいよいよ調査兼救助の為、ギンガは各部署に指示を出す。
「艦長、私も不明艦の調査に向かいます」
ティアナが不明艦の調査に志願する。
「ちょっ、ティアナ。あんたアグレッシブ過ぎない?」
そんなティアナにうららは呆れながらも苦言を言う。
「エネルギー波長が管理局に似ているって事が気になっているのよ」
「管理局に?」
「ええ。うらら、貴女も一緒に来る?」
ティアナはうららに不明艦の調査へ同行するか誘う。
「しょうがないわね。艦長、私も不明艦の調査に向かいます」
うららもティアナと共に不明艦の調査へと向かう。
こうして不明艦の調査へと向かったまほろばの乗員たち。
ティアナは艦橋へ、うららは機関部へと向かう。
『艦長、こちら日下部。艦内部は一部を除き、荒れた様子は見られません』
「乗員の様子は?」
『宇宙服らしき防護服を身に纏っています。ただし、何名かは制服のままで、宇宙服を未着用の乗員は死亡しています』
一体彼らの身に何が起きたのか?
それは彼らが目を覚ました時に聞けばいい。
一先ず、救助とこの艦がどこの艦なのかを調査するのが先だ。
宇宙服を着て倒れている乗員はまほろばへと運ばれる。
一方、艦橋へと向かったティアナの方は‥‥
「‥‥」
「副長、どうしました?」
「あっ、ううん。なんでもないわ」
通路を歩いていると、外部は兎も角、内部は管理局の次元航行艦に似ている事に気づく。
(やっぱり、この艦‥管理局の次元航行艦?)
(私が管理局を辞めてから管理局が新たに造った艦って事?)
(まぁ、その可能性は充分にあり得るけど‥‥)
(一体誰が指揮を執っているんだろう?)
ティアナはこの不明艦が管理局の次元航行艦なのではないかと疑惑が強くなってきた。
やがて、ティアナは部下の乗員たちと共に不明艦の艦橋に辿り着いた。
そこで、ティアナは運命的な再会を果たすのであった‥‥
同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について
-
付き合っちゃえ
-
お友達のままで