ミッドチルダに水惑星アクエリアスが接近しつつある中、そのミッドチルダへの移住を企てるディンギル。
しかも彼らは講和によって領地の割譲を申し込むのではなく、アクエリアスを人為的に接近させてミッドチルダを一時水没させて、ミッドチルダに住む住民全てをアクエリアスによる水害で絶滅させた後で、ミッドチルダに移住しようと考えていた。
そんなディンギルによる魔の手が忍び寄っている事をミッドチルダはまだ‥いや、管理局は知らず、アクエリアスの水害から全ての住民たちを避難させようと避難船団を組織していた。
そして、避難船が出航する次元航行船発着場では、当然混乱が起きていた。
発着場には運よく第一次避難船に乗船する為の住民たち、チケットを求めてやって来た住民たち、取材するマスコミ関係者、警備にあたる管理局員、乗船場のスタッフなど沢山の人でごった返していた。
次元航行船の発着場には沢山の人々が居るのは当然であるが、次元航行船も多く停まっていた。
大きさも形も様々で、中には管理局の輸送艦も含まれていた。
これらの船舶は管理局が民間の船舶会社から徴用した次元航行船であり、船種と大きさによって最大搭載人員、最大積載量がバラバラであった。
そこで管理局は船の大きさによって乗船できる人数、積み込める荷物の重さを決めたが、個人が持てる荷物の重さは船の大きさに関わらず統一していた。
なのは、ヴィヴィオ、アインハルト、ヴィクトーリアの様に第一次避難船に乗船予定だったにもかかわらず、それを敢えてキャンセルをして乗船チケットを他の人に譲った者も居たが、大半はチケットが届くとこれ幸いとそのチケットを使ってミッドチルダからの脱出をしようとしていた。
避難船に乗る為の乗船ゲートに続く通路には沢山の人たちの長い列が出来ている。
そんな人たちに、
「チケットを譲って下さい!!」
「お願いします!!」
「ええい、触るな!!」
「お金は払いますからどうかチケットを譲って下さい!!」
「どけ!!うっとおしい!!」
と、今後の避難順序に不安を覚えた人たちが第一次避難船に乗船する人たちにチケットを強請る光景もあった。
しかし、乗船する人たちは一早く水没するミッドチルダから逃げたいがために縋って来る人たちを払いのける場面もあった。
乗船場のスピーカーからはひっきりなしに様々な内容のアナウンスが流されており、乗船場の外でも拡声器が取り付けられた車両が外まで並んでいる人たちにアナウンスをしている。
『携帯品は御一人様、五キロ以内です!!渡航法で決められた危険物は御持ち込出来ません!!乗船ゲートの手前に荷物検査ゲートがあります!!そこで手荷物検査を必ず受けるようにお願い致します!!』
『乗船する際には、管理局から発行されたチケットが必要です!!パスポートのみ、若しくはその他の乗船チケットでの乗船は出来ません!!』
『チケットと共に身分証明書の提示もお願いします!!』
『搭乗ナンバー、九〇八三一五~九〇八四〇〇の方は七十一番ゲートにお廻り下さい』
一人持てる荷物の制限アナウンスがこうしてあるにもかかわらず、列に並ぶ人々の中には明らかに五キロ以上の荷物を持っている人も居た。
重量オーバーの荷物を持ち込んだ人たちはゲートの荷物検査で引っ掛かるが、そう簡単に苦労して持って来た荷物を捨てられるものではない。
なにしろ今持って行かなければ、全ての財産は水中に没してしまうのだ。
人々が持って来た荷物は、持って来た本人にとっては最も大切な物ばかりなのだ。
その為、荷物検査のカウンターでは、検査官と避難民との間で言い争いが起きている。
「少しくらい重量オーバーした所で大した問題はないだろう!?」
そして、この荷物検査カウンターでも検査官に一人の中年男性が食ってかかっていた。
「ダメです!!重量オーバーしたら、次元航行船は出航できなくなります。最大積載量ギリギリで運航するんですから!!」
検査官は首を横に振りながらきっぱりと断りを入れる。
「ちょっとくらい余裕はあるだろう?たった一キロなんだぞ?このトランクに入っているのは私の命よりも大事なコレクションなんだ!!」
「ダメです!!貴方一人を認める訳にはいきません!!皆さん、ギリギリの重さの荷物を持ち込んでいるのです!!例え一キロだろうと一グラムだろうと、規定された重さ以上の荷物は持ち込めません!!」
検査官はそれでも断る。
一応、中年男性のコレクションは渡航法で禁止されている危険物ではなかったが、重さが一キロオーバーしているので、荷物を減らす必要があるみたいだ。
「どうしても認めないのか?」
検査官から頑なに拒否され、中年男性は声を低くしながら訊ねる。
「どうしても‥です。早く荷物を纏めて下さい。後が痞えているんですよ!!」
「貴様、私が誰なのか知らないのか!?私は、ミッドでも有名な企業の社長なんだ!!貴様のような下っ端職員なんて、私がお前の上司に言えば一発で解雇する事だって出来るのだぞ!?貴様だって仕事を続けたいだろう?ならば、私に融通を利かせろ!!」
この発言から検査官に食って掛かっている中年男性は会社の経営者の様だ。
(なるほど、だからブランド物のスーツに靴を履いているのか‥‥)
検査官は中年男性の正体を知って、中年男性の身なりが良い事に合点がいく。
冷静な検査官の反面、中年男性は悉く自分の要求が拒否された事で、怒気をあらげながら検査官をクビにするとまで脅しをかけてきた。
しかし、そんな脅しに屈する検査官ではなく、
「例え経営者だろうが、聖王だろうが、関係ない!!此方の指示に従えないと言うのなら、一発シューターを撃ち込むぞ!!それとも命より大事なコレクションを次元航行船に乗せてあんた自身はミッドに残るか!?」
主導権はあくまでもこちら側にあると言うで、検査官も怒気をあげて中年男性に詰め寄る。
「くっ‥‥」
自らの権力を振りかざしても首を縦に振らない検査官に対して中年男性は顔を歪める。
「な、ならば‥‥」
中年男性は何かを思いつたのだが、その行動に検査官は思わず唖然とする。
なんと中年男性はおもむろに着ている服を脱ぎ始めた。
「ちょっ、あんた!!何をしている!?」
検査官は慌てて中年男性の行動を止めようとする。
後ろに並んでいる女性の中には悲鳴をあげる人も居た。
両手で目を覆いつつも指と指の隙間から服を脱いでいる中年男性をジッと見ている女性も居た。
だが、中年男性はそんな周囲の悲鳴も奇異の視線も検査官の言葉も無視してあっという間にパンツ一枚姿になる。
「この脱いだ服を計ってくれ!!靴もだ!!」
「あ、あなた、一体何を考えているんです?」
検査官は顔を引き攣らせながら訊ねる。
「荷物を減らす代わりだ!!」
「‥‥」
検査官は、もうめんどうくさくなり、中年男性が言うがままに服と靴の重さを計る。
後ろにはまだ搭乗を控えている人たちが大勢居るからだ。
「えっと‥‥一キロと十五グラムです」
「よし、これで文句はないだろう!?」
「は、はぁ‥‥」
「それはそっちで処分しておいてくれ」
パンツ一枚姿で手には大事なコレクションが入ったトランクを持った中年男性はそのまま搭乗口へと向かって行った。
「‥‥次の方、どうぞ」
検査官は次に控えている人を通す。
「なぁ、これどうする?」
同僚が次の人の荷物検査をしている間、後ろに居た別の検査官たちは先ほど中年男性が脱いだ服や靴をどうするか決めあぐねている。
「『処分して良い』って、言っていたし処分しちまおうぜ」
「そうだな」
ブランド物のスーツと靴であったが、中年男性が身に纏っていた事から、売れないと判断した検査官たちは処分する事にした。
この荷物検査ゲートだけでなく、他のゲートにおいても検査官と避難民との間で言い争いが起きており、並んでいる人たちの間でも喧嘩や混乱が起きていた。
「おい、こら!!押すな!!」
「押していないわよ!!」
「なんだと!!」
「おい、俺の足を踏んだのはどいつだ!?」
「荷物が引っかかっているぞ!!」
「お父さんどこ!?」
「ママ、トイレに行きたい!!」
「うちの子が見当たらないんだ。捜してくれ!!」
こうした混乱がありつつもやがて、第一次避難船団は船内に一杯の避難民と荷物を乗せて次々と次元航行船発着場を出航して行く。
次元航行船の発着場が混沌としている中、通っている学校は既に休校状態となっており、ヴィヴィオは午前中もこうして自宅のマンションに居た、
そんなヴィヴィオが自宅のマンションにあるベランダから空を眺めていると、空に吸い込まれるかのように避難船団の姿が浮き上がり、次第にその姿は小さくなっていき、やがて消えた。
「どうしたの?ヴィヴィオ」
空をジッと眺めているヴィヴィオになのはが声をかける。
「ミッドから避難していく人たちの次元航行船が見えたの」
「ああ、そう言えば今日だったね」
なのはたちも本来は第一次避難船団の避難船へ乗船予定であったが、本人たちの希望により、乗船をキャンセルして別の日にしてもらっていた。
「ねぇ、なのはママ‥‥」
「ん?なに?ヴィヴィオ」
「本当にこの青い空が雨雲で真っ黒になってミッドを沈めちゃうの?なんか信じられないな‥‥」
「うん。そうだね」
なのはもヴィヴィオと共に空を見上げる。
今のミッドチルダの空模様はヴィヴィオが言うようにミッドチルダ全てを水没させるのが信じられない程の快晴であった。
ミッドチルダで第一次避難船団がミッドチルダを出航した頃、
まほろば、ガイアが修理を行っている第61管理世界スプールスでは‥‥
まほろばの監視を行っているジャガーノートの艦長室では、はやてがプライベート回線にてリンディと通信を行っていた。
内容は先ほど、まほろばのコンピューターで解析したガイアを襲撃してきた犯人についてだ。
「リンディさん、ガイアを襲撃してきた犯人についてですが、襲撃されたガイアの映像を解析した結果、ガイアを襲撃してきた犯人はボラー連邦ではありませんでした」
『えっ?ボラー連邦じゃない!?』
リンディとしては、ガイアを襲撃してきた犯人はボラー連邦かと思っていたので、はやての報告には驚いた。
「それと話はちょっと変わりますが、まほろばの月村艦長と話す時間があったのですが、どうやらもう一つの地球でもボラー連邦とは敵対関係にあるみたいです」
『もう一つの地球もボラー連邦と?』
「はい。なんでも地球連邦が開拓した星をボラー連邦が突然攻撃を仕掛けて来たのが切っ掛けみたいで、決定打はボラー連邦との敵対国と地球連邦が同盟を結んだ事みたいです」
『そう‥まさかもう一つの地球とボラー連邦が‥‥』
はやての報告を聞いてリンディの中にある考えが浮かぶ。
(管理局も、もう一つの地球と同じくボラー連邦と敵対している‥‥)
(共通の敵であるボラー連邦と言う存在があるのなら、それを口実に地球連邦とは同盟を築く事は出来ないかしら?)
管理局と同じくもう一つの地球がボラー連邦と敵対関係にあるのなら、『管理局・地球連邦の共通の敵である、ボラー連邦を倒す』と言う名目で地球連邦と同盟ないし、交流を持つことが出来ないかとリンディは考える。
しかし、地球連邦、管理局共に同じ星間国家を敵視しているとは言え、互いに不信感を抱いている仲でもあるので、交流を持つのは困難な道のりである。
これがガミラス戦役時ならば、違っていたかもしれない。
それに管理局も今はアクエリアスの接近と言う問題に直面しているので、地球連邦とコンタクトを取るにしてもまずは眼前の問題の解決をしなければならない。
『それで、ガイアを襲撃してきた犯人がボラー連邦でないとすると、一体何処の誰がガイアを襲撃して来たと言うの?』
「艦影からボラー連邦ではないと判断しましたが、ガイアを襲撃してきた勢力についてはどこの勢力なのかは不明です。月村艦長もガイアの襲撃犯については見覚えが無い艦影だと言っていました」
『そう‥‥ん?ちょっと、待ってはやてさん。月村艦長にガイアの襲撃映像を見せたの?』
リンディは、はやての報告内容から彼女がギンガに‥部外者にガイアが襲撃を受けている映像を見せたのかを問う。
「はい。ガイアのコンピューターでは、完全に解析することが出来なかったので、まほろばに‥月村艦長に協力を求めました。その結果、ガイア襲撃犯がボラー連邦ではないと判明しました。それにもう一つの地球とボラー連邦が敵対関係にある事も知りました」
『‥‥』
リンディは外部情報を第三者に教えた件を聞いて顔を顰める。
「私自身も月村艦長に解析を依頼する前は情報を第三者に教える事に情報漏洩を危惧しました。しかし、次元航行艦の性能だけでは限界があったのも事実です。なので、解析に関しては情報を拡散させない事を条件に外部協力案件として私が処理させてもらいました」
外部協力案件と言う言葉を聞き、リンディはもう何も言えない。
PT事件の際、自分もなのはに外部協力者として事件解決を手伝ってもらった過去があるからだ。
「それで、月村艦長の見解では、ガイアを襲撃してきた艦の動きから一介の海賊やテロリストではないとも言っていました。やはりどこかの星間国家の仕業であり、アクエリアスをミッドに近づけているのも、もしかしたらこの連中かもしれません。そして、ガイアを襲撃してきたのは、この連中がアクエリアスを移動させている場面を目撃したと思い込んでいた為ではないかと‥‥」
『目撃者の口を封じるみたいね』
「ええ、まさにそんな感じです」
『‥‥』
「‥それと、ガイアに深刻なダメージを与えたこの勢力が使用していたミサイルですが、まほろばの技師長さんが調べた結果、これもかなり厄介な代物と言う事が判明しました」
『厄介な代物?』
「はい。まほろばがガイアの救助を行った時、ガイアの艦内には通常よりも数値が高い放射線が検知されました。それがこのミサイルのせいだったんです」
『放射線ですって!?』
「はい。流石に魔導師のバリアジャケットでも放射線は防げません。故にガイアの乗員たちは防護服を着ましたが、それでも仮死状態になる強力なモノです」
『確かにそれは厄介ね‥‥』
「もし、管理局がこの勢力と戦う事になれば、このミサイルには十分注意を払わなければなりません」
『そうならないようにするしかないわね』
「それで、ミッドチルダの状況はどうなっていますか?」
『最悪の一言よ。地上本部ビルや次元航行船の発着場には連日、市民が押し寄せるし、ついさっき、第一次避難船団がミッドを出発したのだけれど、出発前も発着場や荷物検査場でも喧嘩や手荷物制限で検査官に食って掛かる人も大勢居たみたいでね‥第二次、第三次の時も面倒な人を相手にするのかと、検査官がうんざりしていたわ』
「うわぁ~‥‥それは‥‥何と言うか‥‥」
リンディからミッドチルダの様子を聞いて、顔を引き攣らせるはやて。
『こっちも敵性勢力の存在が確認できたと言う事で、警戒態勢に入るわね。情報ありがとう、はやてさん』
「はい」
リンディとの通信を終えると、彼女の姿がモニターから消える。
「‥‥」
はやてはその後、しばし何も映らないモニターをジッと見つめるが、徐に再度通信機能を立ち上げて盗聴・盗撮を防止するためにセキュリティレベルを最大に上げる。
これから行う通信はそれぐらい他の誰にも聞かれたくないし、見られたくない通信なのであった。
ミッドチルダ 西部地方 エルセア ナカジマ家
ナカジマ家のメンバーはまだ避難船の乗船チケットが届いていないが、いつでも避難出来るように荷造りをしていた。
そんな中、
『八神はやてさんから映像通信が届いています』
ナカジマ家の通信端末が着信を知らせる。
「ん?八神から通信?繋いでくれ」
ゲンヤが音声返答をすると、通信端末のモニターにははやての姿が映る。
『ゲンヤさん。今、ええですか?』
「おう、八神か?どうしたんだ?」
『ちょっと、話したい事が‥‥』
「ん?なんだ?随分と深刻そうな顔つきだな」
『あの‥‥』
はやてがゲンヤに要件を伝えようとした時、
「ねぇ、父さん!!これ持っていく?」
ゲンヤの後ろにスバルの姿が映った。
『スバル、今ナカジマ家に居るんですか?』
「ああ、荷造りをするから手伝いに来てもらったんだ」
『‥‥それじゃあ、スバルもええですか?それとこの通信は出来るだけ、ゲンヤさんとスバル以外に聞かれたくはないので、どこか別室でええですか?』
「あ、ああ‥分かった。ディエチ、俺とスバルはちょっと八神と話す事があるから、少しの間、荷造りの事を任せていいか?」
「うん。分かった」
「いいよ」
通信端末を持ってゲンヤはスバルと共にリビングからゲンヤの書斎へと入った。
「それで、八神。俺とスバルに何か用があるみたいだが、一体なんだ?」
『その前に、ゲンヤさんの使っている通信端末はセキュリティがしっかりとしていますか?』
「一応、ウィルスソフトは更新している」
管理局を定年退職したとは言え、長年捜査官としての用心深さは健在の様だ。
「それで、八神さん。私と父さんに話ってなんですか?」
改めてスバルがはやてに要件を訊ねる。
『ギンガの事です』
「‥‥」
「っ!?」
はやてからギンガの名前を聞き、ゲンヤは反応を抑えたが、スバルはビクッと反応してしまう。
「ギンガがどうしたんだ?もう、亡くなって随分と経つが?」
ゲンヤとスバルはギンガの生存を知っているが、はやては知らないと思い表向きの発表‥ギンガは死んでいると言う姿勢をとる。
『‥ゲンヤさん‥スバル‥‥実は、私‥ギンガと会ったんです』
しかし、はやては緊張した面持ちでゲンヤとスバルに自分はギンガと出会った事を告げる。
「なっ!?」
「ギン姉と‥‥八神さんが?」
流石のゲンヤもこのはやての告白には息を呑み、スバルは唖然とする。
「八神さん!!どこで‥‥どこでギン姉と会ったんですか!?」
ゲンヤよりも一早く再起動したスバルは通信端末に顔を寄せて、はやてに何処でギンガと出会ったのかを詰問する。
『ちょ、スバル、近い!!近いって‥‥』
モニター一面に映るスバルの顔のドアップに思わず引くはやて。
「スバル、一旦落ち着け‥‥それで、八神、お前さんは一体何処でギンガと会った?」
ゲンヤが改めてはやてに訊ねる。
「次元の海です」
「次元の海‥‥何でギンガはそんなところに‥‥」
『ゲンヤさんは此処最近、ミッド周辺で頻繁に起きている次元震について知っていますよね?』
「ああ、連日ニュースで取り上げられていたからな」
『“海”もこの多発する次元震の調査のためにあちこち次元航行艦を出しました。その中で、ハラオウン提督が艦長を務める次元航行艦はとある星系で何者かの襲撃を受けました』
「えっ?ハラオウン提督の艦って確かチンク姉が乗っていた筈じゃあ‥‥」
『せやな。それで、ハラオウン提督の艦は何とか第61管理世界の近くまで離脱したんやけど、そこでもう一つの地球の艦が居て、救助されたみいや』
「じゃあ、チンクは無事なんだな?」
『はい。それで、ハラオウン提督の艦を救助したもう一つの地球の艦を指揮していたのがギンガやったんです』
「えっ?ギンガが!?」
「それってギン姉がもう一つの地球の艦の艦長って事ですか!?」
『そうやで、スバル。ついでに言うとその艦の副長はティアナやった』
「えっ!?ティア!?」
「ランスターの嬢ちゃんにも会ったのか‥‥」
『はい』
ギンガだけでなく、ティアナとも再会していた事に驚くスバル。
「ズルいですよ!!八神さん!!ギン姉だけでなく、ティアとも会うなんて!!」
『偶然なんや、スバル。堪忍してや』
「はぁ~私も“海”に行けばギン姉とティアに会えたのかな‥‥」
『でもスバルが特別救助隊にいたからこそ、助かった人も大勢おるんやから、そんな一時の事で将来に繋がるキャリアをフイにしちゃアカンよ。それにゲンヤさんとスバルも私にギンガが生きとった事を黙っておったやろう?』
はやてはスバルを窘めつつ、ギンガが生きていた事を自分に黙っていた件についてジト目でゲンヤとスバルを見つめる。
「「‥‥」」
ギンガの生存の件はフェイトからの助言もあり、あまり知られたくは無かったのだ。
ただ、はやては自分たちナカジマ家と繋がりのある人物だったので、ギンガの生存を伝えなかった件についてはすまないと思った。
その気まずさから二人は、はやてから視線を逸らす。
「それで、ギンガとランスターの嬢ちゃんは今、第61管理世界に居るのか?」
『はい。ギンガの艦がエンジントラブルを起こして今、修理中です』
「それなら、第61管理世界に行けばギン姉とティアに会えるんですね!?」
スバルはギンガとティアナに会えるかもしれない事から目を輝かせる。
「いや、スバル。残念だが、第61管理世界には行けないぞ」
「えぇぇぇぇー!!どうして!?」
ゲンヤがスバルの希望を打ち砕くかのような事を言ってスバルは思わず声を上げる。
「管理局から通達があっただろう?水世界がミッドに近づいているから、住民の避難のために当分、次元航行船は全て避難活動に専念するって」
「あっ‥‥」
ゲンヤからミッドチルダの現状を言われて言葉を詰まらせるスバル。
アクエリアスの接近が無ければ今すぐにでも第61管理世界行きの次元航行船に飛び乗っていたのだろうが、現状、次元航行船すべてはミッドチルダからの避難用に使用されているので、今すぐに第61管理世界へ行きたいと言っても行けないのが現状だ。
転送ポートも使用できないので当然、行けない。
「うぅ~手を伸ばせば会えそうなのに‥‥もう、はやてさん!!こんなの生殺しですよ!!これなら知らない方が良かったです!!」
会えそうなのに会えない現状にスバルは不満を零す。
「ギンガに俺たちがそっちまで行くまで待ってもらう‥‥ってのは出来ないよな」
『ええ、向こうの予定もあるやろうし、何より“海“の一部の勢力がギンガの艦を狙っているみたいやし‥‥』
「管理局がギン姉の艦を?」
「考えられなくもねぇな」
スバルは管理局がまほろばを狙う理由が分からず首を傾げるが、ゲンヤは不思議と思わなかった。
「えっ?どうして?」
「スバル、もう一つの地球の艦は確認された時から管理局の次元航行艦よりも性能が優れていたんだ。今は新型のエンジンが開発されたみてぇだが、管理局としては今後の参考でもう一つの地球の艦ってはのは喉から手が出る程欲しがる筈だ」
『流石、ゲンヤさん。その通りです。一応、ハラオウン総合統括官から航行や乗員の生命を保証する保証書は発行してもらったんですけど、やはり一部の高官らは諦めきれずにギンガの艦を拿捕したがっているみたいです』
「でも、管理局がギン姉の艦を拿捕したら、ギン姉やティアは残れるんじゃあ‥‥」
『スバル、ギンガはそもそもミッドでは殉職扱いされているんや。そんでもう一つの地球の軍人‥‥管理局はもう一つの地球の情報を得るためにギンガやティアナに拷問や自白剤を使う事も考えられるんやで』
「スバル、俺もそう思う」
「‥‥」
スバルとしては自分が所属している組織がそこまでの事をするのかと言う思いがあったが、ゲンヤもはやてもソレを否定せずにむしろ肯定までしてくる。
『実は、ギンガと会った時にモニター越しでええから、ゲンヤさんやスバルと会わへんか?と誘ったんですよ』
「それでギン姉はなんて‥‥」
『通信が万が一、盗聴・盗撮をされていれば、自分の正体がバレてゲンヤさんやスバルに迷惑をかけてしまうかもしれない‥と言って、会うのを断りました』
「「‥‥」」
まほろばの通信機では、ミッドチルダのナカジマ家の通信端末に通信は送れない。
ジャガーノートかガイア、管理局の施設でなければ通信を送れないので、ギンガをまほろばから管理局の施設へ連れて行く必要がある。
だが、その場面を見られたら、まほろばを狙う“海”の高官に付け入る隙を与える事になる。
『もしも、管理局がまほろばに手を出せば、もう一つの地球と管理局は戦争になってまう。ましてや今のミッドは水世界が接近しとる危機に瀕しとる状況や‥‥そんなら、ギンガたちには自分の世界に帰って貰うのが一番なんや‥‥それに‥‥』
「それに?」
はやてはアクエリアスが接近している最中で地球連邦との戦争は避けるべきだと諭すと同時に何だか含みのある言い方をする。
『‥‥ギンガとティアナ、実はもう一つの地球の地球で結婚しとるんや。待っている家族が居るから何としてでも無事にもう一つの地球に帰せなアカンのや』
「えっ?」
「はっ?」
はやてのこの発言にゲンヤもスバルも目が点になる。
「け、け、け、け、結婚だと!?」
「ギン姉とティアが!?」
そして、再起動した時は、はやてがギンガとティアナに再会した事を告白する時と同じ‥‥いや、別の意味で驚愕するゲンヤとスバル。
「ほ、本当なのか!?八神!!ギンガが結婚しているって言うのは!?」
「そ、そうですよ。それにティアも結婚している‥だなんて‥‥」
ゲンヤもスバルもギンガとティアナが本当に結婚している事に疑問視している‥‥と言うか、信じられないって感じの様子だ。
『本当はギンガたちがもう一つの地球に戻った後で、二人に伝えようと思ったんですけど、ついでだと思って‥‥』
「それで、はやてさん。ギン姉とティアが結婚しているって本当なんですか?」
『実際にギンガとティアナの旦那さんと会った訳じゃあないんやけど、二人に渡そうと思って、ギンガとティアナから貰った画像を見る限り、結婚しとるのは本当みたいや』
「「‥‥」」
はやてからギンガとティアナが結婚している事が事実である事を知るとゲンヤとスバルは唖然とする。
『モニター越しやけど、確認しますか?』
「あ、ああ‥頼む‥‥」
「うん。見ます」
はやては二人が結婚したのは事実だと言うが、ゲンヤとスバルは実際に自分たちの目で確認しなければ、信じられなかった。
モニター越しではあるが、はやてがギンガとティアナから貰った二人の結婚式の画像をゲンヤとスバルに見せた。
「「‥‥」」
二人はその画像をジッと見つめる。
「ほ、本当に‥‥結婚していたのか‥‥ギンガ‥‥」
「ティアのウェディングドレス姿‥‥」
白無垢姿のギンガ、ウェディングドレス姿のティアナを見てゲンヤとスバルはギンガとティアナが結婚している事実を知って認める。
「あ、あの‥はやてさん」
『ん?なんや?スバル』
「ギン姉が着ているこの白い服ですけど、ウェディングドレスじゃあないですし、何かギン姉の他にもう一人、似たような白い服を着ているみたいなんですが、これはどういう事でしょう?」
『これは白無垢って言う私の故郷の結婚衣装やな。それで、ギンガの他にもう一人、白無垢を着ているのはもう一人の花嫁さんや』
「もう一人の花嫁?」
『もう一つの地球は、長年の戦争で人口減少が顕著になって、一夫二妻制を採用したみたいなんや』
「なるほど、それで花嫁が二人って言う訳か‥‥うーん‥それでもな‥‥」
ゲンヤとしてはギンガの結婚式に参列できず、画像でしか知る事の出来ない状況であり、なおかつ今、ギンガが住んで居る世界では一人の旦那に対して最大で二人の妻がいる事が合法となっている。
ギンガの父親として出来るならば、ギンガの旦那にはギンガを集中的に愛してもらいたいと言う親心があった。
「あれ?もしかして、ギン姉の旦那さんって、月村艦長ですか?」
スバルは防衛軍と管理局との交信で良馬と何度か顔を合わせているので、良馬の顔は知っており、ギンガの結婚式での画像では良馬とのツーショットもあったので、はやてに確認するかのように訊ねる。
『そうやで』
「ん?スバルはギンガの結婚相手を知っているのか?」
「うん。フェイトさんとティアが遭難した時、もう一つの地球の軍の人と交信したんだけど、その時の軍人さん」
「ギンガは軍人と結婚した訳か‥‥それにギンガ自身も軍人とはな‥‥」
ギンガの状況はまさに自分と今は亡き妻、クイントと似ていた。
自分もクイントも管理局員であり、ギンガとその旦那は共にもう一つの地球の軍人‥‥
(せめて、ギンガには俺のようにはなって欲しくはないのだが‥‥)
結婚したギンガには自分の様に生涯のパートナーを失うような経験をして欲しくはないと思ってしまうのもゲンヤの親心だった。
「それで、こっちの男の人がティアの旦那さんなんですね?」
(なかなかのイケメン‥‥ティア、どうやって結婚したんだろう?)
スバルがウェディングドレス姿のティアナの隣に居るタキシード姿の北野がティアナの旦那なのかをはやてに訊ねると同時に結婚の経緯が気になった。
『ティアナが言うにはそうみたいやね』
「ギンガやランスターの嬢ちゃんは向こうの世界で幸せにくらしているみたいだな」
『ええ、向こうの世界での生活を聞く限り、ギンガもティアナも今は幸せに暮らしているみたいです。子供も居ますし』
「「えっ?」」
はやては再びゲンヤとスバルに驚愕の爆弾を投下する。
「八神。ちょっと待て、今、子供って言ったな?」
「子供ってギン姉とティアに‥ですか?」
『そうやで』
「それって‥養子‥なのか?」
ゲンヤは戦闘機人であるギンガが子供を産めたのか不安視しており、ギンガの子供と言われてその子供が養子なのではないかと思って訊ねる。
『いえ、ギンガがお腹を痛めて産んだ子供みたいです』
「そうか‥腹を痛めて産んだのか‥‥」
「ギン姉が子供を産めたって事は、もしかして私も‥‥」
『そうなるな。ギンガが産めたのなら、スバルもちゃんと子供を産めるって事や』
「そ、そっか‥‥私も‥‥」
自分が普通の人間ではないと言うコンプレックスを抱いているスバルとしても普通の女性と同じく子供を産める事を知ったスバルは嬉しそうだった。
「八神、ギンガの子供の画像はあるのか?」
『あります。見ますか?』
「ああ‥頼む」
「お願いします」
はやてはゲンヤとスバルにギンガ、ティアナの妊娠・出産、子育て、子供の画像を見せる。
お腹の大きくなったギンガの画像は、ギンガがお腹を痛めて子供を産んだ何よりの証拠であった。
ティアナは魔導師ではあるが、ギンガやスバルと異なり普通の人間なので妊娠してもおかしくはないが、こうして親友が妊娠・出産している事を知ると考え深い。
「まだ、幼いが容姿はギンガに似ているな」
ゲンヤはギンガと一緒に写るギンガの子供‥誉をしみじみとした表情で見る。
ギンガの子供は自分にとっては孫にあたり、スバルにとっては姪にあたる。
しかし、地球連邦とミッドチルダが交流を持たぬ現状では、こうして画像でしか自分の孫に会えない事に何とも歯がゆい。
「ティアは男の子を産んだんですね」
ゲンヤが誉の画像を見ている中、スバルはティアナの子供‥哲郎の画像を見る。
『うん。しかもフェイトちゃん以上にティアナは親バカになっとってな。この画像を貰った時に、延々と自分の子供と旦那の自慢話に付き合わされたわ‥‥』
「へ、へぇ‥‥あのティアが‥‥フェイトさん以上の‥‥」
機動六課時代、同じ部隊に所属していたスバルは、フェイトがエリオ、キャロ、ヴィヴィオの三人を可愛がっている事を知っている。
そのフェイト以上に自分の子供と旦那を自慢するティアの姿がスバルには想像できなかった。
(いいなぁ~ギン姉とティア‥‥)
『隣の芝生は青く見える』と言う言葉があるが、はやてから見せてもらったギンガとティアナの画像を見る限り、ギンガとティアナの今の生活が物凄く充実しているように見えてしまうスバルであった。
同僚を失い傷心のユーノ、そんな彼の身を案じたなのはの今後の進展について
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付き合っちゃえ
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お友達のままで